会社名 | 株式会社 商船三井 |
業種 | 海運業 |
従業員数 | 連9795名 単1243名 |
従業員平均年齢 | 37.3歳 |
従業員平均勤続年数 | 12.5年 |
平均年収 | 16754644円 |
1株当たりの純資産 | 6496.19円 |
1株当たりの純利益 | 722.85円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 220円 |
配当性向 | 27.6% |
株価収益率(PER) | 6.38倍 |
自己資本利益率(ROE) | 12.23% |
営業活動によるCF | 3142億円 |
投資活動によるCF | ▲3552億円 |
財務活動によるCF | 497億円 |
研究開発費※1 | 16.45億円 |
設備投資額※1 | 889.18億円 |
販売費および一般管理費※1 | 1697.31億円 |
株主資本比率※2 | 40.2% |
有利子負債残高(連結)※3 | 10355.96億円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社が判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針 当社は、商船三井グループの企業理念、グループビジョン、価値観・行動規範(MOL CHARTS)を以下の通り設定しています。 脱炭素化を始めとする環境意識の高まりや、企業として社会のサステナビリティに貢献することへの期待が高まるなか、輸送にとどまらない事業領域への拡大やそれに伴う価値観の変化を反映し、更なる成長を実現するために、社会における当社グループの存在意義、目指す姿、および価値観を確認したものです。 (2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 当社は、2023年度にグループ経営計画「BLUE ACTION 2035」を策定し、2035年度のありたい姿(グループビジョン)の実現へ向けて取組を開始しました。 初年度は、3つの主要戦略(ポートフォリオ・環境・地域)のうち、ポートフォリオ戦略では2035年度に目指す事業ポートフォリオの実現に向け、液化ガス事業や不動産事業を中心に順調に投資を進め、安定収益型および非海運事業のアセット比率を増やしました。環境戦略では、2023年4月に更新した環境ビジョン2.2のアクションプランに沿って、2050年におけるグループ全体でのネットゼロ・エミッション達成に向けた取組を継続しています。地域戦略では、グローバルな事業推進体制への移行を目指し、専任の執行役員を各地域に配置して各地域の営業・コーポレート組織の強化を進めました。 その結果、2023年度は税金等調整前当期純利益が2,954億円となり、「BLUE ACTION 2035」のPhase 1における最終年度(2025年度)の目標として定めた2,400億円を初年度で大きく超える結果となりました。 当社グループのサステナビリティ経営は、長期的な戦略に基づき、社会課題や環境面からも受容できる、持続的な成長の実現をめざすものです。企業理念・MOL CHARTSの精神に沿って「BLUE ACTION 2035」に取り組むことで、サステナビリティ課題を解決し、さらには企業価値の向上、最終的にはグループビジョンの実現へと繋げていきます。 「BLUE ACTION 2035」では、長期的な外部環境の変化を分析し、当社グループの強みを再確認した上で、2035年のありたい姿をグループビジョンと定義しています。2035年にグループビジョンを実現するためのメインシナリオが事業ポートフォリオ変革です。2035年に向けて事業ポートフォリオ変革を推進する為、“3つの主要戦略”に加えて、その基盤整備にもあたる“サステナビリティ課題への取組”のうち最重点5項目を「BLUE ACTION 2035」の中心に据えています。 “サステナビリティ課題への取組”の詳細については第2 事業の状況 2「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。 「BLUE ACTION 2035」では、2035年度をグループビジョン実現の時期とし、ゴールまでの期間を3年+5年+5年の3フェーズに分けて中間目標を設定しています。グループビジョン実現へ向けて、毎年Core KPIをモニタリングしながらアクションプランを更新していきます。 <BLUE ACTION 2035で目指す事業ポートフォリオ> BLUE ACTION 2035で目指す姿として以下2点を設定しています。 ?海運不況時でも黒字を維持できるポートフォリオへの変革 ?成長投資の積上げと株主の期待に応える利回り(ROE 9~10%)の両立 これらを達成するための事業ポートフォリオとして2035年度時点で「税引前利益 4,000億円/総資産 7.5兆円」と「市況享受型:安定収益型= 40:60 のアセット比率」の目標を設定し、リバランス計画を策定しています。 海運市況と損益の相関性が高い市況享受型事業において海運好況時には高リターンを得る一方、安定収益型事業の比重をより高め、海運市況軟調時でも黒字を確保することを目指します。安定収益型事業では、海運の長期契約のみならず、海運業と市況サイクルが異なる非海運事業もさらに成長させていきます。 <BLUE ACTION 2035における主要なテーマ>BLUE ACTION 2035では3つの主要戦略とサステナビリティ課題への取組の内最重点5項目を中心に据えています。各戦略・項目の要点は以下の通りです。(1)ポートフォリオ戦略・事業別ROA目標を設定し、個別投資採算基準もそれに沿ったものとする。利益規模だけでなく資本効率の改善を図り、全体としてROA資本コストを上回るROAを達成すべく、高リターンを期待する市況享受型事業に継続投資する一方、相対的に低リターンながら安定収益型である事業への投資の傾斜を高める。・IFRS(国際会計基準)の早期適用に取り組む。・効率的なポートフォリオ変革のため、スピード感を持ってM&Aを推進する。(2)地域戦略・事業ポートフォリオ変革を支えるグローバルな事業推進体制へ移行する。・地域組織主導のM&A・非海運を中心とした新規事業開発を促進する。 (3)環境戦略(サステナビリティ課題「環境」への取組)・環境ビジョン2.2(2023年4月に更新)の下、環境への取組をリードする存在であり続ける。 ・2020年代の外航ゼロ・エミッション船就航に向けた準備も進める。 ・燃料需要家としての立場を活かして燃料調達・サプライチェーンに参画し海運業界におけるクリーン燃料サプ ライチェーンの構築を後押しする。 (4)サステナビリティ課題への取組 「安全」・安全ビジョン(2024年1月に策定)の実現に向け、2025年度までの主な取組となるアクションプラン (Safety Vision 1.0)を策定。安全の土台を強固なものにする。 (5)サステナビリティ課題への取組 「人財」・Human Capital(HC)ビジョン(2023年4月に策定)の下、グループ・グローバルで一元的な人財計画を推進する。・Phase 1(2023~2025年度)の3年間を「変革期」と位置づけ、2025年度末までの目標達成へ向け、行動計画「HC ACTION 1.1」(2024年2月に更新)に沿った取組を進める。 (6)サステナビリティ課題への取組 「DX」(Digital Transformation)・DXビジョン(2023年2月に策定)の下、全体ロードマップに加えてPhase1の3か年における行動計画「DX ACTION 1.1」(2024年1月に更新)も策定。ビジネスとカルチャーの両面から変革を推進する。 (7)サステナビリティ課題への取組 「ガバナンス」・グループビジョンの実現を支えるガバナンス全般の高度化を推進する。 <BLUE ACTION 2035 Phase 1の具体的なアクションプラン> 「BLUE ACTION 2035」では2035年までの期間を3年+5年+5年の3フェーズに分けて中間目標を設定しています。各事業本部の2035年に向けた方向性とPhase 1(2023~2025年度)のアクションプランは以下の通りです。 ドライバルク事業2035年に向けた方向性:貨物構成の変化に対応しつつ市況エクスポージャーを戦略的に取って、好況時には高リターンを獲得する。Phase 1の具体的なアクションプラン:・脱炭素・低炭素化社会の進展により創出される新規貨物・拡大が見込まれる既存貨 物の輸送需要取り込み(バイオ燃料、穀物、肥料、スクラップ鉄など)・世界経済のサプライチェーン・トレードパターンの変化に対応するグローバルな営業ネットワーク整備・貨物需要・トレードパターン・船腹需給の変化に適切に対応するためのインテリジ ェンス機能の強化・GHG排出削減に寄与する環境対応船整備の強化・高いリターンを実現するための市況エクスポージャー許容度の引き上げエネルギー事業2035年に向けた方向性:エネルギーシフトの大きな流れに積極的に対応し、Green Transformationをリードする存在であり続ける。Phase 1の具体的なアクションプラン: ≪タンカー・ケミカル船≫・Methanex社との提携なども活かした、船舶燃料としてのクリーンメタノールの調 達、事業機会の獲得・代替燃料船隊による脱炭素ソリューションの提供≪液化ガス船≫・今後の需要増を見据えLNG船の中短期契約向け船隊を整備、一定の範囲内で市況リスクテイクを進める・LPG/アンモニア船隊の整備 ≪海洋事業・洋上風力発電≫・欧州中心に広がる見通しのCCUS事業(二酸化炭素回収・貯留)へ参画・台湾・日本での洋上風力発電への参画実績を積み上げ、周辺事業の取り込みに繋げる製品輸送事業2035年に向けた方向性:コンテナ船・自動車船の競争優位を磨く一方、物流への積極投資で非海運分野での成長を遂げる。Phase 1の具体的なアクションプラン:≪コンテナ船≫・ONE発足を通じて獲得した規模のメリットの維持・拡大・環境・デジタル戦略を柱とする更なる優位性の構築≪自動車船≫・環境への対応をリードし顧客の評価を高め、パートナーとして選ばれる存在となる・増加する中国・インド発ビジネスでの優位性構築≪物流≫・宇徳・商船三井ロジスティクスをコアと位置づけ、両社を中心に成長を図る・海外M&Aによる事業拡大ウェルビーイングライフ事業2035年に向けた方向性:不動産・フェリーに加えクルーズなどの多彩な事業群を形成し、非海運分野の柱に育てる。Phase 1の具体的なアクションプラン: ≪不動産≫・国内:アセットタイプの拡充、再開発・街づくりに取り組む・海外:ベトナム・豪州の事業拡大に加え、東南アジア諸国・インドへ進出 ≪フェリー≫・経営統合(商船三井さんふらわあ設立)のメリット最大化・貨物・旅客それぞれのマーケティング強化 ≪クルーズ≫・新規投入船「MITSUI OCEAN FUJI」のサービス開始・国内顧客に加え、インバウンドを中心に海外顧客の基盤を拡大する <BLUE ACTION 2035の定量目標(利益計画・財務計画・投資計画・株主還元策)>(1)利益計画 利益計画については、第2 事業の状況 4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」 (7)「経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。(2)財務計画・投資計画 財務計画・投資計画については、第2 事業の状況 4「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」 (7)「経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況」をご参照ください。(3)株主還元策 株主還元策については第4 提出会社の状況 3「配当政策」をご参照ください。 <コンプライアンス上の対処すべき課題> 当社グループは、2012年以降、完成自動車車両の海上輸送に関して各国競争法違反の疑いがあるとして、米国等海外の当局による調査の対象となっております。また、本件に関連して、当社グループに対し損害賠償及び対象行為の差止め等を求める集団訴訟が英国等において提起されています。このような事態を厳粛に受け止め、当社グループでは独禁法をはじめとするコンプライアンス強化と再発防止に引き続き取り組んでまいります。 なお、当社におけるコンプライアンスに関する取組については第4 提出会社の状況 4コーポレート・ガバナンスの状況等 (2)役員の状況 ④「業務の適正を確保するための体制の概要」に記載のとおりです。 <アドバイザリーボード> 当社は、経営戦略の更新・改善およびリスク管理の観点から優先度の高い分野について社外の有識者から意見を得ることを目的として、2024年4月から社長のもとにアドバイザリーボードを設置しています。今年度は以下5名の有識者を選任しました。 氏名主な経歴専門分野石井 菜穂子氏東京大学グローバルコモンズ担当総長特使未来ビジョン研究センター特任教授サステナビリティ江藤 名保子氏学習院大学法学部教授地政学上月 豊久氏前・駐ロシア日本国特命全権大使地政学的場 大輔氏デジタル・ブレイン・イネーブルメント株式会社 代表取締役DX小柴 満信氏前・当社社外取締役技術経営 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績 前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減額/増減率売上高 (億円)16,11916,279159 / 1.0%営業損益 (億円)1,0871,031△55 / △5.1%経常損益 (億円)8,1152,589△5,526 / △68.1%親会社株主に帰属する当期純損益 (億円)7,9602,616△5,344 / △67.1%為替レート\134.67/US$\143.43/US$\8.76/US$船舶燃料油価格 ※US$745/MTUS$621/MT△US$125/MT※平均補油価格(全油種) 当期の対ドル平均為替レートは、前期比\8.76/US$円安の\143.43/US$となりました。また、当期の船舶燃料油価格平均は、前期比US$125/MT下落し、US$621/MTとなりました。 当期の業績につきましては、売上高1兆6,279億円、営業損益1,031億円、経常損益2,589億円、親会社株主に帰属する当期純損益は2,616億円となりました。 売上高は、ドライバルク事業において市況悪化等に伴う減収となりましたが、エネルギー事業等の貢献や円安基調の影響により、前期比増収となりました。 経常損益は、持分法適用会社OCEAN NETWORK EXPRESS社が行うコンテナ船事業において、運賃市況が低位に推移した影響により前期比で大幅な減益となりました。一方、エネルギー事業においてはタンカーの各船種で市況が好調を維持し、オフショア事業、LNG船事業、LNGインフラ事業等においても新規契約や既存の長期契約から安定的な収益を上げたため、前期比増益となりました。また、自動車船事業においても完成車需要が底堅く推移し、前期比増益となりました。 親会社株主に帰属する当期純損益には船舶売却益や関係会社株式売却益等が含まれますが、経常利益段階におけるコンテナ船事業の大幅な業績悪化の影響を受け、前期比で減益となりました。 セグメントごとの売上高及びセグメント損益(経常損益)、それらの対前期比較及び概況は以下のとおりです。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更したことに伴い、前連結会計年度については変更後の報告セグメント区分に組み替えて比較を行っています。当該報告セグメントの変更の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報)」をご参照ください。上段が売上高(億円)、下段がセグメント損益(経常損益)(億円)セグメントの名称前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減額/増減率ドライバルク事業4,2963,955△340 / △7.9%576372△204 / △35.4%エネルギー事業3,8874,378491 / 12.6%395669273 / 69.0%製品輸送事業6,2666,187△78 / △1.2%7,0361,255△5,780 / △82.2% うち、コンテナ船事業53056333 / 6.2%6,201515△5,686 / △91.7%ウェルビーイングライフ事業9941,04652 / 5.2%679023 / 34.6% うち、不動産事業39540812 / 3.1%81865 / 6.5%関連事業47749114 / 3.0%26293 / 12.4%その他19821820 / 10.1%184325 / 141.4%(注)「売上高」は外部顧客に対する売上高を表示しております。 ① ドライバルク事業 ケープサイズ市況は、上半期には、鉄鉱石出荷が好調に推移したものの、中国の経済回復懸念などにより上値の重い展開が続き、西アフリカの雨期によるボーキサイトの出荷停滞で市況が下落する局面もみられました。一方で下半期は、高止まりする鉄鉱石価格を背景に市況は上昇し、底堅く推移しました。 パナマックス以下の市況は、上半期には石炭や穀物の荷動きが比較的堅調に推移した一方、ケープサイズ同様、中国経済への懸念からセンチメントは悪化し、低調に推移しました。下半期に入り、パナマ運河の渇水に伴う通航制限や中東情勢悪化によるスエズ運河通峡回避の影響で船腹需要が引き締まり市況は回復に転じました。 ドライバルク事業全体としては、効率運航によるコスト削減や過去計上した貸倒引当金の戻し入れなどの利益貢献もありましたが、前期の好市況には及ばず、前期比で減益となりました。 ② エネルギー事業<タンカー> 原油船は、一年を通じてOPECプラスの協調減産の影響で中東出しの荷動きが振るわず、需給が緩んだ状態が常態化したものの、ロシア産原油輸入回避によるトンマイルの伸長と米国やブラジルなどの非OPECプラス諸国からの代替的な原油供給増が継続し、市況は好調を維持しました。 石油製品船、ケミカル船及びLPG・アンモニア船についても、対ロシア制裁によるトレードパターンの変化を受け、米国・インド・中東から欧州に向けた長距離輸送が増加しトンマイルが伸長しました。更に紅海情勢に伴う航路変更により船腹需給はひっ迫し、市況は好調を維持しました。 好調な市況環境に加えて、安定的な長期契約の履行やコスト削減に努めた結果、タンカー事業全体では前期比で増益を達成しました。 <オフショア> FPSO事業は、既存の長期貸船契約により引き続き安定的な利益を確保する中、新規貸船契約の開始及び貨物輸送船CTV(Cargo Transfer Vessel)の稼働も寄与し、前期比で増益となりました。 <液化ガス> LNG船事業は、既存の長期貸船契約や新規契約獲得により、前期並の安定的な利益を確保しました。LNGインフラ事業のうち、FSRU事業は、既存船の投入先変更及び稼働準備に伴い前期比では減益となりました。発電船事業においては安定的な利益を計上しました。 ③ 製品輸送事業<コンテナ船> 当社持分法適用会社であるOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.においては、新造船の大量竣工による供給増や欧州などでの消費回復の遅れにより、運賃市況が低位で推移し、前期比で大幅な減益となりました。 <自動車船> 新型コロナウィルス感染症に起因して停滞していた各国経済が回復する中、自動車のサプライチェーンが正常化したことで完成車輸送需要は堅調に推移し、一年を通じて需給は引き締まった状況が続きました。港湾混雑や一部海域の避航の影響を受けたものの、柔軟に配船計画を見直すことにより前期比で増益となりました。 <その他製品輸送> 港湾事業は、国内ターミナル事業は堅調に推移した一方、海外ターミナル事業は荷動きの低迷及び欧米のターミナル会社を譲渡したことにより、コンテナ取扱量は減少しました。ロジスティクス事業は航空・海上貨物輸送需要減退を背景とした市況軟化により利益水準が低下し、前期比で減益となりました。 ④ ウェルビーイングライフ事業<不動産事業> 当社グループの不動産事業の中核であるダイビル㈱において、新規物件取得や保有物件の建替えなどに伴う費用増はあったものの、物件稼働率上昇、新規取得物件からの増収などにより前期並の利益を確保しました。 <フェリー・内航RORO船> ㈱商船三井さんふらわあにおいて、貨物輸送は減少しましたが、新型コロナウィルスの第五類移行や、新造LNG燃料フェリーの就航を主因に旅客輸送は大幅に増加しました。物流・旅客事業の合計では減益となりましたが、償却年数の変更の影響により前期比で増益となりました。 <クルーズ事業> 新型コロナウィルス感染防止による行動制限の緩和に伴い、旅行需要の回復基調が継続し、前期比で損益を改善しました。 ⑤ 関連事業 曳船事業では、作業料金改定と作業数が堅調に推移したことにより、前期比で増益となりました。 ⑥ その他 その他の事業には、船舶運航業、船舶管理業、貸船業、金融業などがありますが、前期比で増益となりました。 (2)生産、受注及び販売の実績 当社グループ(当社及び連結子会社。以下同じ。)は「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載したとおり、6つの事業区分からなり、提供するサービス内容も、多種多様であります。従って、受注の形態、内容も各社ごとに異なっているため、それらをセグメントごとに金額、数量で示しておりません。当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更したことに伴い、「前期比(%)」は、前連結会計年度について変更後の報告セグメント区分に組み替えて算定しております。当該報告セグメントの変更の詳細は、「第5 経理の状況1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報)」をご参照ください。 セグメントの売上高セグメントの名称当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)金額(百万円)前期比(%)ドライバルク事業395,57792.1%エネルギー事業437,839112.6%製品輸送事業618,79398.8% うち、コンテナ船事業56,376106.2%ウェルビーイングライフ事業104,699105.2% うち、不動産事業40,827103.1%関連事業49,182103.0%その他21,818110.1%合 計1,627,912101.0% (3)財政状態 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ5,563億円増加し、4兆1,205億円となりました。これは主に投資有価証券が増加したことによるものです。 負債は、前連結会計年度末に比べ1,242億円増加し、1兆7,508億円となりました。これは主に長期借入金が増加したことによるものです。 純資産は、前連結会計年度末に比べ4,320億円増加し、2兆3,696億円となりました。これは主に為替換算調整勘定が増加したことによるものです。 以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末に比べ、3.1ポイント上昇し、57.1%となりました。 (4)キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べて、221億円増加し、1,131億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、次のとおりです。 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益が2,954億円となったこと等により3,142億円(前期5,499億円)となりました。 投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△3,552億円(前期△2,819億円)となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金による収入等により497億円(前期△2,817億円)となりました。 (5)財務戦略 2023年3月に策定した経営計画「BLUE ACTION 2035」において、海運不況時でも黒字を維持できる事業ポートフォリオへの変革に取り組み、着実に利益を積み上げる計画です。Phase1と位置づけております2023~2025年の3年間で約12,000億円の投資を計画しておりますが、成長投資を実行する過程においても、財務規律を維持する方針です。具体的には、ネットギアリングレシオは、0.9~1.0にコントロールしていきます(有利子負債額はIFRS導入後に織り込むべき将来傭船料などオフバランス資産(約9,000億円)を含んだものを想定。なお、本数値は当社が一定の想定の下に試算した概算値で、IFRSを正式に適用した場合の算出値とは相違する可能性があります)。 ① 資金調達の方針当社は事業活動を支える資金調達に際して、調達の安定性と低コストを重視しております。また、金利変動リスクや為替変動リスク等の市場リスクを把握し、過度に市場リスクに晒されないように金利固定化比率や借入通貨構成を金利スワップや通貨スワップ等の手法も利用しながら、リスクを許容範囲に収めるようにしております。 ② 資金調達の多様性当社は調達の安定性と低コスト調達を実現するために、調達方法の多様化や調達期間の分散を進めております。直接調達については、2023年度には新規の国内普通社債発行を実施しており、2023年7月に90億円、2024年1月に200億円(ブルーボンド)を発行しました。 2024年3月末の国内普通社債発行残高は735億円、劣後特約付社債発行残高は500億円となっております。円滑な直接調達を進めるため、当社は国内2社及び海外1社の格付機関から格付を取得しており、2024年3月末時点の発行体格付は格付投資情報センター(R&I)「A」、日本格付研究所(JCR)「A+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(Moody’s)「Ba2」となっております。また、短期債格付(CP格付)についてはR&I/JCRより「a-1」/「J-1」を取得しております。当社は社債発行残高の上限として1,000億円の社債発行登録、CP発行枠として1,500億円を設定しているほか、政府系や内外金融機関との幅広い取引関係をベースとする間接調達により、運転資金や設備資金の需要に迅速に対応できるものと考えております。更に、安定的な経常運転資金枠の確保・緊急時の流動性補完を目的に国内金融機関から円建て及び米ドル建てのコミットメントラインを設定しており、資金の流動性確保に努めております。当社の環境戦略を資金調達の面から支えるESGファイナンスについては、2024年1月にJCRから最上位評価である「Blue1(F)」を取得したブルーボンドとして、普通社債200億円を発行しております。また、2023年12月~2024年3月にかけて、計6件のトランジション・ローン及びトランジション・リンク・ローンを組成しております。 ③ 資金需要当社グループの運転資金需要のうち主なものは、各事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業の運営に関わる労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。また、設備資金需要としては、船舶への投資に加え、非海運事業の拡大方針に則った不動産・物流設備・フェリー等への投資があり、当連結会計年度中に3,362億円の設備投資を実施しました。 ④ グループ資金の効率化当社及び主要子会社間でキャッシュマネージメントサービス(CMS)を導入しており、グループ内の資金効率化を図ることにより、外部借入の削減に努めております。 (6)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。その作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者はこれらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。・契約損失引当金 詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。・固定資産の減損 当社グループは、資産又は資産グループが使用されている事業の経営環境及び営業活動から生ずる損益等から減損の兆候判定を行っており、減損の兆候が識別された場合、減損損失の認識の判定を行い、必要に応じて回収可能価額まで減損処理を行うこととしております。将来の市況悪化等により減損の兆候及び認識の判定の前提となる事業計画等が修正される場合、減損処理を行う可能性があります。・貸倒引当金 当社グループは、売上債権及び貸付金等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しております。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。 (7)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況 当期の業績は、経常利益2,589億円、親会社株主に帰属する当期純利益2,616億円となり、前年度に歴史的な好業績を記録したコンテナ船事業における運賃下落により大幅減益でしたが、ROE12.2%、ギアリングレシオ0.55倍(ネットギアリングレシオ0.51倍)となり、グループ経営計画「BLUE ACTION 2035」の初年度として概ね順調な滑り出しでした。 コンテナ船事業は、北米向けの積高が大幅改善しましたが、新造コンテナ船が多く竣工したことによる船腹過剰や欧州の消費回復の遅れにより、運賃市況が低位に推移し、前期比で大幅減益となりました。ドライバルク事業は、長期契約や過去計上した貸倒引当金の戻し入れ等による利益貢献がありました。しかしながら、パナマ運河の渇水による通峡制限やスエズ運河通峡回避に伴い、船腹需給が引き締まりつつも、中国経済に対する悲観的観測により上値が重い市況が続き、前年度比で減益となりました。エネルギー事業は、LNG船事業・海洋事業の安定利益に加え、原油船、石油製品船、ケミカル船において対ロシア制裁によるトレードパターンの変化、スエズ運河通峡回避に伴う航路変更により、船舶需給が逼迫し、市況が高水準で推移したため、前期比で増益となりました。自動車船事業では、柔軟な配船計画の見直しと輸送台数増加により、前期比で増益となりました。不動産事業では、新規取得した大手門タワーの稼働やその他物件の稼働率上昇、前期比で増益となりました。フェリー・内航RORO船事業では、貨物輸送は減少しましたが、新造LNG燃料フェリーが就航したことから旅客輸送が大幅に増加し、前期比で増益となりました。 2024年度は、中国経済の減速懸念、インフレ・利上げによる世界経済の景気停滞懸念等がある中で、エネルギー事業、製品輸送事業は好調に推移していく一方、ドライバルク事業及びウェルビーイング事業は前期比で減益を見込んでいます。ロシア・ウクライナや中東情勢等の地政学的緊張や世界的なインフレ・金融不安等、当社グループを取り巻く事業環境の不確実性は引き続き高いですが、「BLUE ACTION 2035」に基づき、グローバルな社会インフラ事業への飛躍に向けて邁進します。 経営計画の主な内容は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。なお、「BLUE ACTION 2035」で掲げるCore KPI・利益計画・投資計画・財務計画は以下の通りです。 <Core KPI> グループ経営計画「BLUE ACTION 2035」では、その目標の達成状況を判断するための指標(Core KPI)として、3つの財務KPI・5つの非財務KPIを設定しています。 <利益計画> 「BLUE ACTION 2035」では2035年度4,000億円という利益目標を設定しており、Phase 1(2023~2025年度)の期間では経営計画で掲げた目標を堅持する方針としています。なお、将来的な国際会計基準(IFRS)の適用を想定し、利益目標の数値は税引前当期純利益(*)としています。(*)日本会計基準を前提に算出しており、国際会計基準(IFRS)を適用した場合の算出値とは相違する可能性があります。 <投資計画> 「BLUE ACTION 2035」では、2023~2035年度の累計で約3.8兆円の投資を想定しています。うち、Phase 1(2023~2025年度)の3年間では総額1.2兆円の投資(*)計画を設定しました。市況享受型・安定収益型のバランスをとりながら、2035年度の目標達成へ向けて1.1兆円超の投資を既に意思決定しています。その中でも、当社および世界のGHG削減に貢献する環境投資については6,580億円を意思決定しています。(*)いずれも対象期間中に発生する投資キャッシュアウト額を示す。 <財務計画> 2023年度の業績とONEが計画する特別配当を取り込むことで、3年間累計の営業キャッシュ・フローが当初計画比で約1,500億円上振れする見込みです。これに伴い、1,400億円の追加投資余力を捻出しており、中古船や大型M&A案件等の機会に備えます。 また、当社の株主還元方針は、積上げた利益で積極投資を行い、利益を拡大し、企業価値を高めていく従来の方向性から変更はありません。Phase1(2023~2025年度)では配当性向30%、1株当たりの最低保証配当額を150円とする方針を維持し、海運市況サイクルが低位を推移するときでも配当額が過小となることを防ぎつつ安定配当に努めます。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において当社グループが判断したものです。 |
※本記事は「株式会社 商船三井」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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