会社名 | 日本郵船株式会社 |
業種 | 海運業 |
従業員数 | 連35243名 単1312名 |
従業員平均年齢 | 39.8歳 |
従業員平均勤続年数 | 13.9年 |
平均年収 | 13788290円 |
1株当たりの純資産 | 5772.5円 |
1株当たりの純利益 | 468.13円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 140円 |
配当性向 | 26.4% |
株価収益率(PER) | 8.7倍 |
自己資本利益率(ROE) | 8.9% |
営業活動によるCF | 4014億円 |
投資活動によるCF | ▲2856億円 |
財務活動によるCF | ▲1634億円 |
研究開発費※1 | 35.81億円 |
設備投資額※1 | 180億円 |
販売費および一般管理費※1 | 2385.89億円 |
株主資本比率※2 | 43.1% |
有利子負債残高(連結)※3 | 8068.04億円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針 当社は、存在意義、社会的使命として“Bringing value to life.”を企業理念に掲げています。 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標 当社グループは、2023年3月に中期経営計画“Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定し、2030年に向けた新たなビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を掲げ、その実現を目的とする2026年度までの4年間の行動計画にもとづき事業を進めています。ESGを中核に据えた成長戦略を推進し、経営戦略としては、各事業における機会とリスクを踏まえた事業戦略の方向性(両利きの経営:AX、及び事業変革:BX)を定めるとともに、人的資本の更なる充実・グループ経営の変革・ガバナンスの強化(CX)、デジタル基盤の整備推進(DX)等のコーポレート基盤の強化に加え、脱炭素に向けた取組みの加速(EX)を推進します。事業投資計画としては、中期経営計画策定時点において2026年度までに予定していた1.2兆円規模の事業投資を1.3兆円規模に増額して実施します。当連結会計年度末時点で中期経営計画期間中の投資が決定している案件は約7,500億円です。 (“Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標) 2023年度実績中期目標(2026年目途)当期純利益2,286億円2,000~3,000億円ROIC8.3%6.5%以上ROE8.9%8.0~10.0% (株主還元策) 当社は、株主の皆様への安定的な利益還元を経営上の最重要課題の一つと位置付け、連結配当性向30%を目安に1株あたりの配当下限金額を年間100円として、業績の見通し等を総合的に勘案して利益配分を決定します。また、投資機会と事業環境を勘案したうえで、自己株式の取得を含む機動的な追加還元策の実施を判断します。配当の詳細については「第4 提出会社の状況 3配当政策」をご参照ください。 自己株式の取得については、2023年8月3日の取締役会決議に基づき、2024年3月7日までに49,096,700株(取得価額の総額 約2,000億円)の取得を完了しました。なお、取得した自己株式は2024年4月30日に全株消却しました。翌連結会計年度(2025年3月期)においては、取得価額の総額(上限)を1,000億円、取得する株式の総数(上限)を35百万株、株式取得期間を2024年5月9日から2025年4月30日として自己株式の取得を決定しました。また、取得した自己株式は全株消却することを決定しています。 (3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題① 中期経営計画の遂行 地政学リスクの高まりを受け混迷を極める世界情勢の中、「物流を止めない」を合言葉に、エネルギー、医療物資や生活必需品を世界中に届け、人々のライフラインを守るべく “Bringing value to life.” を企業理念(ミッション)とし、新たに掲げたありたい姿(ビジョン)「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を目指して、中期経営計画? “Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing -” を進めています。 両利きの経営(AX)と事業変革(BX)から成る「基軸戦略」の下、既存中核事業を深化させると同時に新規成長事業を進化させ、これを「支えの戦略」となる人材・組織・グループ経営の変革(CX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)が支えます。 ■中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing -” 完遂への取組み 経営戦略であるAX~EXの2023年度の主な進捗状況は以下の通りです。2024年度についても「既存中核事業の深化」と「新規成長事業の開拓」を加速してまいります。 ◆脱炭素戦略に基づく新燃料トライアルと次世代燃料船 アンモニア燃料タグボートのイメージ 当社グループは、持続可能な社会の実現に向けて世界の脱炭素化を牽引するとの決意の下、高い志と脱炭素化のための取組みを積極的に推進していく姿勢を力強くグループ内外に明示すべく、2023年11月に「NYK Group Decarbonization Story」を公開しました。2050年度の「ネット・ゼロ エミッション」達成を長期目標とし、2030年度には2021年度と比較して45%のGHG削減を目指します。その一環として、2024年度から、二酸化炭素の排出量が実質ゼロとみなされるバイオ燃料を、既存の重油焚き船舶の航行で長期的に使用するトライアルを本格実施します。これまでの短期間トライアルから前進し、バイオ燃料を長期間(3か月以上)使用した際の安全性や安定調達などの総合的な検証を行います。将来的にはバイオ燃料による安全航行を確立し、バイオ燃料の開発促進にも寄与します。 また、目標達成に向けた船舶燃料転換シナリオに基づき、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からグリーンイノベーション基金として助成を受けて開発したアンモニア燃料タグボートが横浜港で運航を開始します。これはアンモニア燃料商用船として世界初の取組みであり、当社グループが保有・運航するアンモニア燃料船としても1番船となる見込みです。アンモニア燃料商用船に続き、当社はコンソーシアム各社と2023年12月に世界初となる国産エンジンを搭載したアンモニア燃料アンモニア輸送船(AFMGC: Ammonia-fueled Medium Gas Carrier、以下「本船」)の建造に関わる一連の契約を締結しました。本船は2026年に竣工予定で、本船全体として80%以上のGHG削減率を目指します。日本の海事産業を挙げて世界の海運の脱炭素化をリードし、脱炭素社会に向けた社会的要請に応えるべく、シミュレーションモデルやデジタル設計技術等のDXを駆使しながら、積極的に脱炭素船隊への先行投資を実施します。 ◆洋上風力関連事業での脱炭素への貢献 洋上風力発電向け作業員輸送船「RERA AS」 脱炭素化と日本の再生可能エネルギーの普及へ貢献するため、当社グループの強みである技術力やオフショア事業で培った知見・ネットワークを活かし、欧州パートナーとも協業しながら、自己昇降式作業台(SEP)船や作業員輸送船(CTV)など日本における洋上風力発電のバリューチェーンを支えています。2023年7月より、石狩湾新港にてCTVの運航を開始し、また、洋上風力発電の発展が見込まれる秋田県及び北海道に支店を開設し、地方自治体との連携協定を締結しました。また、洋上風力発電の保守管理作業員や船員を育成する「風と海の学校 あきた」を秋田県男鹿市に開所しました。加えて、国内造船業と舶用工業の活性化を狙い、地域産業の発展に貢献するべく、当社として初めて株式会社小鯖船舶工業へCTVを発注しました。地方創生を含めた当社グループにおける洋上風力発電関連事業の営業体制強化を進めています。 ◆自動運航船の開発と社会実装への挑戦 当社グループは30社を超える企業や組織と Designing the Future of Full Autonomous Ship (DFFAS)コンソーシアムを組み、2020年2月より公益財団法人日本財団が進める無人運航船プロジェクト「MEGURI2040」に参画開始し、2022年2月には船舶交通の非常に多い海域を含む沿岸距離航行の自動運航実証実験に世界で初めて成功しました。現在はフェーズ2にあたるDFFAS+コンソーシアムとして参加を継続しており、今後、船舶自動運航の技術向上はもちろん、法律・ルールの整備、社会からの理解の獲得、マーケット創造といった社会実装に向けた課題にもチャレンジします。2023年4月には船舶事業グループを新設し、今迄培ってきた技術を広く社外へ展開し、海事クラスターの諸課題の解決と、安全で持続可能な造船・海運に貢献すべくチャレンジしてまいります。 ◆宇宙事業開発への挑戦 不確実性が高まる時代において、当社グループを支える人材の交流とさらなる育成を目指し、新しい市場・顧客創造について学ぶ場であるNYKデジタルアカデミー発の新規事業として、三菱重工業株式会社と共同で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「革新的将来宇宙輸送プログラム」に応募・採択され、3者で「再使用ロケットの洋上回収研究」をテーマとした共同研究をはじめました。現在は、ロケットの洋上打上げと回収に加え、打ち上げた衛星から収集したデータの船舶・港湾への活用や、ロケットや衛星の陸上輸送など、総合物流企業の経営資源を用いた幅広いサービスの提供も視野に入れ、様々なパートナーと研究を進めています。 ◆物流事業での積極的な投資 TAYLORED SERVICES PARENT CO., INC.の物流倉庫内自律走行搬送ロボット 物流事業における成長戦略の一環として、既存事業の利益を新規事業に投資して成長を目指す「両利きの経営」を実現すべく、積極的な投資を進めています。2023年3月には当社グループの郵船ロジスティクス株式会社の米国法人が米国西岸を中心にフルフィルメントやトランスロードサービスを提供するTAYLORED SERVICES PARENT CO., INC.とその傘下子会社を買収しました。また、2024年2月には郵船ロジスティクス株式会社の英国法人がEコマース事業者向け配送プラットフォーム事業会社であるGLOBAL FREIGHT SOLUTIONS LTD.を傘下にもつ英国の持株会社NOEL TOPCO LTD.を買収しました。加えて、同英国法人にて当社グループとして最大規模の物流倉庫の長期リース契約を締結し、2025年に開業予定です。自律走行する搬送ロボットや自動でラックに貨物を出し入れする機能を完備するなど、最先端のシステムを採用したオペレーション自動化倉庫となっており、物流事業におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)を進めています。M&Aも積極的に活用した大胆な成長戦略を推進し、当社グループの成長エンジンとして強化してまいります。 ◆中核であるLNG事業の強化と、安定供給への貢献 LNG輸送船 社会の要請に応える輸送インフラ企業として、素材や既存エネルギーを安定供給する責務を果たし続けるべく、LNG輸送船への投資を続けています。当社はLNG輸送を中核事業の一つと捉え、重点投資分野と位置付けています。海上荷動きの拡大や、ロシア・ウクライナ情勢を受けて、エネルギー安全保障に対する意識が高まったことに伴う船腹需要の増加を見込み、エネルギー会社などの船腹需要を積極的に取り込み継続的な投資を推進します。また、船舶運航データレイク(NYK Ship Data Platform)等を活用した安全で効率的な船舶運航を実現しながら、既存中核事業の深化を進めてまいります。 ◆ガバナンスの更なる進化とグループ35,000人の能力を活かす挑戦 当社グループは、経営体制を強化しESG経営を確実に支えるためガバナンスの更なる進化を進めています。当社は2023年6月の定時株主総会にて定款変更の決議がされたことにより、監査等委員会設置会社へと移行しました。取締役会の機能強化のため、取締役会の決定権限の一部を業務執行取締役へ委任することで迅速な意思決定を実現しています。 また、グループ35,000人の能力を活かす挑戦として「すべてのグループ社員が個々の能力を最大限発揮し生き生きと活躍できる企業であることで、持続可能な社会の実現に貢献する存在であり続ける」をありたい姿と定義し、「個のスキルを活用し共創する組織」と「多様な人材による様々な事業への挑戦」を目指し、タレントマネジメントや組織活性化、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の人材施策を進めてまいります。 ◆「DX銘柄」、「DXグランプリ企業」に選定 当社は、経済産業省、株式会社東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構が主催する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2023」において「DX銘柄」に選ばれ、さらに特に優れた取組みを行っている「DXグランプリ企業」に選定されました。ESGを中核に据えた経営戦略を、デジタルとデータの力を活用して実現している当社グループのDXの取組みが評価されました。 ② 遵法の徹底 当社グループは、遵法の徹底を最重要事項と位置付け、当社と国内外にある様々な事業を展開するグループ会社を対象にグローバルなガバナンス体制の構築を目指しており、以下の対策を着実に実行し、法令に則った公正な事業の遂行を徹底することに全力を尽くしてまいります。・米州・欧州・東アジア・南アジアの各拠点にRegional Management Officeを設置・ベストプラクティスの共有や課題の速やかな解決を図るため、Regional Governance Officerの下に法務担当や内部監査人を配置・国内外グループ会社が制定している行動規準に対する誓約書の取得等の活動を継続・独占禁止法の遵守を徹底すべく、社内各部門・グループ会社にヒアリングを実施し、これらを踏まえた独占禁止法に関する行動指針の作成、研修の実施・コンプライアンス委員会や遵法活動徹底委員会の開催を通じ、独占禁止法対応に加え贈収賄・ハラスメント防止等、包括的な法令遵守体制の整備・強化 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】1.経営成績等の状況の概要 当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりです。(1)経営成績の状況 (単位:億円) 前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率売上高26,16023,872△2,288△8.7%売上原価21,05919,739△1,319△6.3%販売費及び一般管理費2,1372,38524711.6%営業利益2,9631,746△1,216△41.1%経常利益11,0972,613△8,484△76.5%親会社株主に帰属する当期純利益10,1252,286△7,839△77.4% 平均為替レート135.07円/US$143.82円/US$8.75円 円安平均消費燃料油価格US$760.72/MTUS$620.83/MT139.89US$ 安 (概況) 当連結会計年度の業績は、売上高2兆3,872億円、営業利益1,746億円、経常利益2,613億円、親会社株主に帰属する当期純利益2,286億円となりました。なお、営業外収益で持分法による投資利益として996億円を計上しました。うち、当社持分法適用会社であるOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.(“ONE社”)からの持分法による投資利益計上額は534億円となりました。 <セグメント別概況> 当連結会計年度のセグメント別概況は以下のとおりです。(単位:億円) 売上高経常利益前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率前連結会計年度当連結会計年度増減額ロラジイスナテ|ィ&クス事業定期船事業2,0071,923△83△4.2%7,906678△7,227航空運送事業2,1801,611△569△26.1%61557△557物流事業8,6247,022△1,601△18.6%542259△283不定期専用船事業12,40812,316△91△0.7%2,1041,702△401その他事業不動産業3331△2△6.7%13152その他の事業2,3452,196△149△6.4%52014 当連結会計年度より、報告セグメント別の経営成績をより適切に反映させるため、各セグメントに帰属する利息額等の算定方法を変更しています。各セグメントの売上高に与える影響はありません。なお、前連結会計年度の経常利益は、変更後の測定方法に基づき作成したものを開示しています。 <定期船事業> コンテナ船部門:第3四半期までは欧米を中心とした金利上昇、インフレ等により貨物需要が低迷したことに加え、新造船竣工によって船腹供給量が増加したことで、市況は低調に推移しました。第4四半期においては、紅海情勢に起因する需給逼迫により市況が上昇しましたが、通年では前連結会計年度の水準を下回りました。ONE社においても、通年では運賃が大幅に下落したことにより、利益水準は前連結会計年度を下回りました。 ターミナル関連部門:国内では、コンテナ船のスケジュールが正常化したことにより、取扱量は前連結会計年度比で増加しました。海外では、9月末に北米西岸ターミナルの関係会社株式を売却したことにより、取扱量は前連結会計年度比で減少しました。 以上の結果、定期船事業全体では前連結会計年度比で減収減益となりました。 <航空運送事業> 9月半ばから12月半ばにかけて一時的な需要の回復が見られましたが、通年では需要の低迷が継続し、また国際旅客便の回復に伴う供給スペースの増加により、運賃水準は前連結会計年度比で低下しました。 以上の結果、航空運送事業では前連結会計年度比で減収減益となりました。 <物流事業> 航空貨物取扱事業:下期はアジア発を中心に荷動きの回復が見られたものの、通年では取扱量は前連結会計年度比で減少し、利益水準は低下しました。 海上貨物取扱事業:年間を通じて長距離航路を中心に荷動きが低迷し、また市況下落により販売価格が低下したことにより、取扱量は前連結会計年度比で減少し、利益水準は低下しました。 ロジスティクス事業:北米域内における一般消費財の底堅い需要や、欧州域内でのEコマース・ヘルスケア・自動車関連産業の好調な荷動きにより、安定的に推移しました。 以上の結果、物流事業全体では前連結会計年度比で減収減益となりました。 <不定期専用船事業> 自動車事業部門:港湾混雑やパナマ運河の通航制限、中東情勢の影響等が続く中、完成車生産台数の回復及び堅調な販売により、輸送台数は前連結会計年度並みの水準となりました。自動車物流は欧州やインド、メキシコ、東南アジアの一部地域において取扱台数が前連結会計年度比で増加しました。 ドライバルク事業部門:ケープサイズは、8月まで中国の景気低迷の影響を受けましたが、9月以降は季節的な需要や中国の追加景気刺激策によりセンチメントが好転したことに加え、大西洋水域の船腹需給が引き締まったことにより、通年の市況は下期が牽引し前連結会計年度の水準を上回りました。パナマックスサイズ以下は、石炭と穀物の荷動きは堅調に推移し、市況は12月以降に前連結会計年度を上回る水準となったものの、通年では好調だった前連結会計年度の水準を下回りました。このような環境下、先物取引を用いた市況変動リスク低減に取り組み、長期契約獲得による収入の安定化と効率的な運航によるコスト削減に努めました。 エネルギー事業部門:VLCC(大型原油タンカー)の市況は、第2四半期は主要産油国による減産や季節的な不需要期のため軟化しましたが、需要期の第3四半期以降は米国・中南米出しの輸出が伸びたことで回復したことにより、通年では前連結会計年度の水準を上回りました。石油製品タンカーにおいては、ロシア・ウクライナ情勢の影響により航路の長距離化が継続したことで、船腹需給が引き締まりました。VLGC(大型LPGタンカー)の市況は、米国からアジア地域への長距離輸送が増加し、パナマ運河の通航制限により船腹需給が引き締まった結果、9月に過去最高値を更新しました。第4四半期には米国からの輸送需要が鈍化したことで市況は下落しましたが、通年では前連結会計年度の水準を上回りました。LNG船は、安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移しました。海洋事業は、FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、ドリルシップ、シャトルタンカーが順調に稼働しました。 以上の結果、不定期専用船事業全体では前連結会計年度比で減収減益となりました。 <不動産業、その他の事業> 不動産業:前連結会計年度比で減収増益となりました。 その他の事業:燃料価格低下に伴い燃料油販売事業が低調に推移したものの、船用品・船用資材販売事業は堅調に推移しました。客船事業においては、11月中旬から電気関係機器の新換装を含む船体整備を実施しました。その結果、その他の事業全体では前連結会計年度比で減収増益となりました。 (2)キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて513億円減少し、1,448億円となりました。 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益3,188億円、減価償却費1,416億円、持分法による投資損益△996億円、利息及び配当金の受取額1,715億円等により4,014億円(前年同期8,248億円)となりました。 投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△2,856億円(前年同期△2,529億円)となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローは、短期及び長期借入金の増加、自己株式の取得や配当金の支払い等により△1,634億円(前年同期△5,812億円)となりました。 (3)生産、受注及び販売の実績 当社グループは国際的な海上貨物運送業を中核として多角的事業を展開しているため、生産、受注の各実績を求めることが実務的に困難であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。 当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)定期船事業192,35395.8航空運送事業161,18673.9物流事業702,29981.4不定期専用船事業1,231,65499.3不動産業3,12793.3その他の事業219,60493.6計2,510,22591.0消去(122,984)85.5合計2,387,24091.3(注) 売上高に対する割合が10%以上の顧客はいません。 2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりです。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。(1)財政状態及び経営成績等の分析 当連結会計年度末の総資産は、船舶を中心とする有形固定資産や投資有価証券の増加等により、前連結会計年度末に比べ4,779億円増加し、4兆2,547億円となりました。有利子負債は、短期借入金の増加等により2,197億円増加して9,138億円となり、負債合計額も3,096億円増加し、1兆5,614億円となりました。純資産の部では、利益剰余金が866億円増加し、株主資本とその他の包括利益累計額の合計である自己資本が2兆6,503億円となり、これに非支配株主持分429億円を加えた純資産の合計は、2兆6,933億円となりました。これらにより、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)は0.34に、また自己資本比率は62.3%となりました。なお、D/Eレシオ算定上の有利子負債は連結貸借対照表上に計上されている負債のうち、借入金、社債、コマーシャル・ペーパー及びリース債務を対象としています。経営成績については「1.経営成績等の状況の概要(1)経営成績の状況」をご参照ください。 (2)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況 当社グループは、2023年4月から開始する4カ年の中期経営計画として“Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定しました。“Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標並びに2023年度実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標及び(3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題」をご参照ください。 (3)キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性① キャッシュ・フローの状況 「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。 ② 資金需要 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの不定期専用船事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業や航空運送事業等の運営に関する労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。一方、設備資金需要としては、中期経営計画における船舶脱炭素化投資など既存事業への投資、新規事業やM&A投資を予定しています。当連結会計年度中には3,358億円の設備投資を行いました。 ③ 財務政策 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、財務の健全性を損なうことなく、また、過度に特定の市場リスクに晒されることなく安定的に確保するために、金融機関からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行による調達を行うこととしているほか、船舶に関してはリース等を活用しています。 当社グループの主要な設備である船舶投資については、営業活動によって個々の船舶が将来収受する運賃もしくは貸船料収入の通貨や期間にあわせた長期の借入のほか、社債発行により調達した資金や内部留保した資金も投入しています。運転資金については、主に期間が1年以内の短期借入並びにコマーシャル・ペーパーの発行により調達することとしていますが、一部長期の借入によっても調達しています。2024年3月31日現在の短期及び長期借入金の残高は6,560億円で、通貨は円のみならず米ドル等の外貨建借入金を含んでおり、金利は変動及び固定です。また、資本市場から調達した社債の残高は、2024年3月31日現在1,070億円となっています。 当社グループは、資金の流動性確保に努めており、2024年3月31日現在1,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に加え、予備的借入枠として円建て及び米ドル建てコミットメントライン(借入枠)を有しているほか、キャッシュマネージメントシステム等を活用しグループ内金融による資金効率向上にも取組んでいます。 なお、当社は国内2社、海外1社の格付機関から格付を取得しています。2024年3月31日現在の負債格付(長期)は、日本格付研究所(JCR):「AA-」、格付投資情報センター(R&I):「A」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:「Ba1」となっています。 (4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。その作成にあたっては経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。 当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。① 収益の認識 当社グループの収益の認識は、主に一定の期間にわたり充足される履行義務として、航海期間及び輸送期間における日数等に基づき進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しています。 ② 貸倒引当金 当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。 ③ 投資の評価について 当社グループは、金融機関や取引先等の株式を保有しています。これらの株式は、市場価格が存在する株式等に関して原則として市場価格にて評価を行い、市場価格の存在しない株式等に関しては投資先の財政状態等を勘案し、価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。 ④ 減価償却資産の償却 当社グループは、有形及び無形の減価償却資産を保有しています。これらの減価償却資産は、合理的と判断される償却方法及び償却期間で償却されていますが、実際の資産価値の減価は会計上の減価償却による貸借対照表価額の減少とは異なる場合があります。 ⑤ 退職給付 従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社グループは毎年数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じて、その時々の市場環境等をもとに調整を行っています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 繰延税金資産 当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上されます。 ⑦ 固定資産の減損 当社グループは、原則として事業用資産においては投資の意思決定を行う事業ごとにグルーピングを行い、賃貸不動産、売却予定資産及び遊休資産等においては個別物件ごとにグルーピングを行っています。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としています。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき算定しています。 (5)今後の見通し<定期船事業> コンテナ船部門:輸送需要の本格的な回復には時間を要し、また新造船竣工がピークを迎えることにより需給バランスの軟化が見込まれますが、上期は紅海情勢に起因する喜望峰ルートの利用が継続し、船腹需給が引き締まった状態が続くことを想定しています。 <航空運送事業> アジア発北米向けの貨物需要は堅調な見通しですが、当連結会計年度(2024年3月期)に予定していた一部の整備が翌連結会計年度(2025年3月期)へ延期になったこと等により、コスト増加を見込んでいます。なお、2024年3月22日付の適時開示のとおり、一部の国・地域における当局による競争法の審査が継続していることから、日本貨物航空株式会社とANAホールディングス株式会社との株式交換の実行時期が2024年4月1日(予定)から2024年7月1日(予定)に変更となりました。 (注)上記は当連結会計年度末における見通しです。その後、日本貨物航空株式会社とANAホールディングス株式会社との株式交換の実行時期が2024年7月1日(予定)から2025年3月31日(予定)に変更となったことを2024年6月10日に適時開示しています。 <物流事業> 航空貨物取扱事業・海上貨物取扱事業:取扱量は当連結会計年度比で増加するものの、運賃水準の低下により利益水準は低下することを見込んでいます。 ロジスティクス事業:北米域内を中心に引き続き堅調な需要を見込んでいます。 <不定期専用船事業> 自動車事業部門:欧州を中心に景気後退の懸念があり、またロシア・ウクライナ情勢や中東情勢等の地政学リスクにも注視が必要であるものの、輸送需要は引き続き強い見通しです。 ドライバルク事業部門:ケープサイズの市況は、中国向けの鉄鉱石の荷動きやギニア出しのボーキサイトの輸送需要に支えられ、概ね当連結会計年度と同水準となることを見込んでいます。パナマックスサイズ以下の市況は、当連結会計年度の水準を上回ることを想定しています。 エネルギー事業部門:VLCCは、業界全体で新造船の竣工が限定的であり、また老朽化に伴う解撤が進むことにより船腹需給が引き締まり、市況は当連結会計年度比で上昇することを想定しています。VLGCの市況は、好調であった当連結会計年度の水準は下回るものの、引き続き高水準で推移することを想定しています。また、LNG船は中長期契約による安定収益及び新規プロジェクトの開始に支えられ、堅調に推移する見通しです。 以上を踏まえ、翌連結会計年度は当連結会計年度比で減収減益を見込んでいます。 |
※本記事は「日本郵船株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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