東急株式会社の基本情報

会社名東急株式会社
業種陸運業
従業員数連23583名 単1525名
従業員平均年齢43歳
従業員平均勤続年数14年
平均年収7767497円
1株当たりの純資産1317.32円
1株当たりの純利益105.84円
決算時期年3
配当金17.5円
配当性向38.8%
株価収益率(PER)17.4倍
自己資本利益率(ROE)8.3%
営業活動によるCF1453億円
投資活動によるCF▲1010億円
財務活動によるCF▲719億円
研究開発費※129000000円
設備投資額※176.54億円
販売費および一般管理費※12267.53億円
株主資本比率※225.1%
有利子負債残高(連結)※311755.26億円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。(1)グループ理念当社グループは、「美しい時代へ―東急グループ」をグループスローガンとして掲げるとともに、「グループを共につくり支える志を持ち、共有する理念」として、以下のとおり「グループ理念」を定めております。(グループ理念)「存在理念」:美しい生活環境を創造し、調和ある社会と、一人ひとりの幸せを追求する。「経営理念」:自立と共創により、総合力を高め、信頼され愛されるブランドを確立する。〇市場の期待に応え、新たな期待を創造する。〇自然環境との融和をめざした経営を行う。〇世界を視野に入れ、経営を革新する。〇個性を尊重し、人を活かす。もって、企業の社会的責任を全うする。「行動理念」:自己の責任を果たし、互いに高めあい、グローバルな意識で自らを革新する。 (2)サステナブル経営の方針当社は、「安全・安心」、「まちづくり」、「生活環境品質」、「ひとづくり」、「脱炭素・循環型社会」、「企業統治・コンプライアンス」をサステナブル重要テーマ(マテリアリティ)として設定しており、これらに向き合い、「未来に向けた美しい生活環境の創造」および「事業を通じた継続的な社会課題解決」に取り組んでいくという“サステナブル経営”を経営の基本姿勢としています。 (3)中期3か年経営計画2024年度を始期とする中期3か年経営計画を2024年3月に発表しました。本計画では、今後起こりうる経営環境変化に能動的に対応すべく、安定的で成長力ある事業ポートフォリオを構築しながら資本効率向上と財務健全性維持の両立を図るとともに、株主資本コストを意識した経営を推進し、持続的な企業価値の向上と事業間連携の深化によるコングロマリットプレミアムの創出を図ります。また今回、『Creative Act.創造力でしなやかに“世界が憧れるまち”を』を、本計画期間に限らないビジョンワードとして設定しました。従業員ひとりひとりが輝ける会社となり、お客さまへの優れたサービスの提供と明るい未来の創造を目指していきます。本計画の概要は以下の通りです。 (目指すビジネスモデル)交通/不動産を軸とした事業間シナジーと再投資により持続的成長を実現する長期循環型事業 (基本方針)外部環境の変化が継続する中、本計画の3か年を再起動の期間と位置づけ、事業戦略・コーポレート戦略の推進により経営基盤を強化するとともに資本効率等を重視する経営への転換を図り、持続的な企業価値の向上につなげる。 (重点施策)1)既存事業の収益力向上による内部成長の実現(各事業の利益創出力・競争力の強化)・「移動」を通じた社会価値提供と収益性の両立・バリューアップ投資と事業間連携による利益創出力の強化2)持続的成長のための「成長投資継続」(事業領域の拡大)・不動産開発事業を通じたエリア価値の継続的な向上・不動産販売事業拡大とバリューチェーン強化、資産ポートフォリオ戦略・海外事業の継続推進、GX投資3)連結経営/事業推進基盤の強化・人材戦略、デジタル戦略の推進、事業ポートフォリオ管理と経営資源配分の最適化 (経営指標)具体的な数値目標については以下のとおりです。なお、2023年度実績を踏まえ、2024年度の数値目標については2024年5月公表業績予想を記載しております。 定量指標2024年度予想2025年度計画2026年度計画EPS100.14円96.00円116.00円ROE7.4%7.0%8.0%ROA(総資産事業利益率)3.3%3.2%3.5%東急EBITDA1,969億円2,000億円2,100億円営業利益880億円850億円950億円親会社株主に帰属する当期純利益600億円580億円700億円有利子負債/東急EBITDA倍率6.2倍6.3倍6.1倍 従来は、規模の指標として、「営業利益」、「東急EBITDA」、健全性指標として「有利子負債(※)/東急EBITDA倍率を重視して参りましたが、本計画では資本効率を重視する経営へ深化させ、最も重視する経営指標を、「EPS」、「ROE」、「ROA(総資産事業利益率)」の3つと定めております。また、「EPS」、「ROE」の分子となる「親会社株主に帰属する当期純利益」も、重視する指標に加えております。当社の株主資本コストは、2024年3月時点推計値として、CAPM(資本資産価格モデル)および株式益利回りより算出し、5.1%~6.5%と認識しており、規模拡大のみならず効率性や財務健全性を重視し、株主資本コストを意識した経営を推進してまいります。 〇経営指標(当社独自の指標等)採用に関する補足「ROA(総資産事業利益率)」の分子とする事業利益は、営業利益に、収支が会計ルール上、営業外収益で計上されてしまう海外事業や空港運営事業等の利益も加算した利益を指しております。なお、事業利益の算出方法は、以下のとおりです。事業利益=営業利益+上場会社を除く持分法投資損益+不動産事業等に係る受取配当東急EBITDAは、大規模工事の竣工等による営業利益の変動を補正したうえで、事業スキームの多様化を反映し、当社の稼ぐ力をより正確に表す指標として採用しております。なお、東急EBITDAの算出方法は、以下のとおりです。東急EBITDA=営業利益+減価償却費+固定資産除却費+のれん償却費+受取利息配当+持分法投資損益※ 有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計 (投資計画・株主還元の考え方)投資計画については、3か年合計で約5,100億円を計画しております。内訳としては、鉄道事業投資に1,500億円、バリューアップ投資を含めた既存事業投資として1,300億円、不動産開発投資を始めとした成長投資として2,300億円を見込んでおります。2024年度は中期3か年経営計画の方針に基づき、約1,400億円の設備投資を予定しております。また、株主還元の考え方について、配当方針としては、安定配当を継続するとともに、利益成長に応じた配当金の持続的な増加に取り組み、中期3か年経営計画期間中の下限を21円と設定しております。その上で、2024年度はこの考え方に基づき年間22円の配当を予定しております。また、中長期的には、業績や資金状況もふまえつつ、配当性向30%を意識してまいります。これに加え、資本政策を機動的かつ積極的に実施していきます。本計画3か年通算での総還元性向も勘案しつつ、自己株式取得の実施時期、規模を検討いたします。
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(業績等の概要)(1)業績当期における我が国経済は、原材料価格やエネルギー価格の高騰、金利上昇リスクなどの影響により、経済の先行きは不透明な状況で推移したものの、新型コロナウイルス感染症による行動制限が緩和されたことなどにより、社会経済活動には緩やかな持ち直しの動きがみられました。このような状況のなか、当社グループにおいては、2021年度を始期とし、『変革』を基本方針とする中期3か年経営計画に基づき、足元の事業環境変化への対応と構造改革の推進による収益の復元に取り組んでまいりました。当連結会計年度の営業収益は、交通事業やホテル・リゾート事業を中心に、利用者数の回復が見られたことなどにより、1兆378億1千9百万円(前年同期比11.4%増)、営業利益は949億5百万円(同112.8%増)、経常利益は992億9千2百万円(同109.6%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、持分法投資利益の増加などにより、637億6千3百万円(同145.3%増)となりました。セグメントの業績は以下のとおりであり、各セグメントの営業収益は、セグメント間の内部営業収益又は振替高を含んで記載しております。なお、各セグメントの営業利益をセグメント利益としております。 (交通事業)東急電鉄㈱では、これまでに築き上げた経営基盤をより一層強靭化させ、リアルな「移動」体験がもたらす価値を通じて社会貢献し続けるべく、安全・安心のさらなる追求をはじめとした自然災害対策や車内防犯カメラの高機能化、踏切障害物検知装置の性能向上、鉄道施設の保守高度化に向けた状態モニタリング機能の導入等、439億円の設備投資を実施いたしました。また、2023年3月の東急新横浜線開業により相鉄線との相互直通運転を開始し、広域鉄道ネットワークが拡充され、所要時間の短縮や新幹線アクセスが向上いたしました。2023年度は約2,800万人のお客さまにご利用いただきました。さらに、2023年8月より、更にスムーズな乗車サービスを提供するため、クレジットカードのタッチ機能やQRコード(※)を利用して乗車するサービス「Q SKIP」の実証実験を開始し、現在は世田谷線の各駅と東急新横浜線・新横浜駅を除く東急線全駅にて実施しています。2024年5月からは、クレジットカードによる後払い型乗車サービスも開始いたしました。※「QRコード」は㈱デンソーウェーブの登録商標です。観光列車「THE ROYAL EXPRESS」は、2023年7~9月に北海道での第4期運行を行ったほか、2024年1~3月に、初めて四国・瀬戸内エリアでの運行を行い、観光振興・地域活性化に取り組みました。このほか、東急電鉄㈱は、脱炭素社会の実現に向け、日本初の取り組みとして2022年4月より東急線全路線での運行に係る電力を実質再生可能エネルギー由来とし、実質CO2排出量ゼロの電力に置き換えております。この取り組みが評価され、環境省より令和5年度気候変動アクション環境大臣表彰を受賞いたしました。東急電鉄㈱の輸送人員は、定期・定期外ともに前年を上回り、定期で6.4%増加、定期外で6.4%増加し、全体では6.4%の増加となりました。また、輸送人員の回復に加え、運賃改定や構造改革の効果もあり、交通事業全体の営業利益は275.6%増の320億円となりました。連結子会社の輸送人員は、伊豆急行㈱で10.2%増加いたしました。バス業では、東急バス㈱の輸送人員が4.4%増加いたしました。この結果、交通事業全体の営業収益は2,136億7千4百万円(同16.1%増)、営業利益は320億7千万円(同275.6%増)となりました。 (東急電鉄㈱の鉄軌道業の営業成績)種別単位第154期第155期2022.4.1~2023.3.312023.4.1~2024.3.31営業日数日365366営業キロ程キロ110.7110.7客車走行キロ千キロ148,247156,173輸送人員定期外千人445,985474,541定期千人542,898577,602計千人988,8831,052,143旅客運輸収入定期外百万円73,42289,548定期百万円46,91955,438計百万円120,341144,986運輸雑収百万円15,05614,767収入合計百万円135,397159,753一日平均収入百万円371436乗車効率%42.242.8 (注) 乗車効率の算出方法乗車効率=輸送人員×平均乗車キロ× 100客車走行キロ平均定員 (不動産事業)不動産事業では、不動産販売業におけるマンション販売が好調に推移したことや、不動産賃貸業において拠点駅に駅直結物件を多く保有する当社の優位性を背景に低空室率を維持したことなどにより、営業収益は2,865億8千5百万円(同30.0%増)、営業利益は487億3百万円(同68.8%増)となりました。2024年3月に竣工した、田園都市線・南町田グランベリーパーク駅に直結する地上34階、地下1階建、総戸数375戸の分譲マンション「ドレッセタワー南町田グランベリーパーク」は、販売開始以降好調に推移し、全住戸完売となりました。 また、2024年3月、当社が組合員として参加する横浜駅きた西口鶴屋地区市街地再開発組合が施行する大型複合施設「THE YOKOHAMA FRONT」(地上43階、地下2階)が竣工いたしました。本事業は、グローバル企業の就業者等に向けた住宅を整備することで、産業の国際競争力の強化や国際的な経済活動の拠点の形成を目指すものとして、日本で初めて「国家戦略住宅整備事業」として認定されました。 さらに、2023年8月、田園都市線・池尻大橋駅周辺エリアで活躍するクリエイターとともに大規模リノベーションを手掛けた「大橋会館」が全館開業いたしました。シェアオフィス、ホテルレジデンスなどが融合した複合施設で、渋谷駅至近の池尻大橋エリアの魅力をより一層向上してまいります。 海外では、2023年7月、ベトナム・ビンズン省の省都ビンズン新都市にショッピングセンター「SORA gardens SC」(延床面積21,500㎡)を開業いたしました。「暮らしにさらなる彩りを」をコンセプトに日本で培った商業施設運営ノウハウを活かし、地域一体開発を行っているビンズン新都市において、人々が集う新たなコミュニティの拠点となることを目指します。このほか、当社は、渋谷駅東口エリアに、多種多様な人々が行き交い、交流を誘発する拠点となる複合ビル「渋谷アクシュ(SHIBUYA AXSH)」(地上23階、地下3階)の開発を進めており、2024年7月8日に開業いたします。低層部の商業エリアは飲食店舗を中心とした入居を予定しており、広場とともに人々が集い憩える空間を実現します。5~23階は渋谷エリアでニーズの高い、駅につながる利便性の高いハイグレードなオフィスを提供し、すべてのオフィス入居テナントが決定済みです。 (生活サービス事業)当社は、生活サービス事業を街の生活基盤として沿線価値の向上に寄与するものと位置づけるとともに、収益力の向上に取り組んでまいりました。同事業は、魅力ある施設づくりに加えて、お客さまの期待を上回る商品やサービスの提供に努めるとともに、交通事業、不動産事業をはじめとする各事業との相乗効果を発揮するため、グループ間連携をさらに促進しております。リテール事業においては、マーケットの変化に対応するため構造改革を推進するとともに、お客さまのニーズの多様化などに対応した新業態開発を進めております。ICT・メディア事業においては、2023年11月、高齢者が安心して生活できる街づくりを目指し、東急セキュリティ㈱は神奈川県大和市と「地域の見守りと安心できるまちづくりに関する協定」を締結いたしました。これにより東急セキュリティ㈱は、東急線沿線エリアの全自治体との協定締結を完了いたしました。今後も各自治体との協力体制のもと、地域見守りの取り組みを進めてまいります。㈱東急レクリエーションが、全国20サイト183スクリーンを展開するシネマコンプレックスチェーン「109シネマズ」が、公益財団法人日本生産性本部が実施する2023年度顧客満足度指数調査において、4年ぶり3回目となる映画館業種部門第1位を獲得いたしました。今後も皆さまの映画鑑賞を通じた、生活価値の向上を目指してまいります。生活サービス事業では、㈱東急百貨店において、本店営業終了に伴い減収となったものの、㈱東急ストアや㈱東急レクリエーションなどにおける需要回復などにより、営業収益は5,188億1千万円(同0.3%増)、営業利益は131億1千1百万円(同18.3%増)となりました。(ホテル・リゾート事業)ホテル・リゾート事業では、都心エリアのホテルを中心にインバウンド需要の取り込みなどによる利用者数の回復があり、稼働率は75.7%(同+5.8ポイント)となりました。この結果、営業収益は898億3千4百万円(同26.9%増)、営業利益は7億5千4百万円(前年同期は41億1千9百万円の営業損失)となりました。2023年度は、新規開業が3店舗(BELLUSTAR TOKYO、HOTEL GROOVE SHINJUKU、SAPPORO STREAM HOTEL)、閉店1店舗(赤坂エクセルホテル東急)がございました。また、2024年4月には、当社として初の取り組みとなる分譲型ホテルコンドミニアム事業の1号物件として、沖縄県の那覇空港近くに「STORYLINE瀬長島」を開業いたしました。4店舗の開業に加えて、2023年度に「渋谷ストリームエクセルホテル東急」の「SHIBUYA STREAM HOTEL」へのリブランドも含め計5店舗が、より個性の際立ったホテル群「DISTINCTIVE SELECTION」の店舗として新たに営業を開始しております。今後も、お客さまの多様なニーズにお応えするため、必要な設備投資を着実に実行するとともに、ホテル経営や投資を検討するクライアントの皆さまに、幅広く柔軟なブランド選択肢を提供することにより、新たな事業成長を実現してまいります。 (2)キャッシュ・フロー当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は415億5千7百万円となり、前連結会計年度に比べて269億5千9百万円減少いたしました。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益943億6千5百万円に減価償却費867億4千5百万円、法人税等の支払額113億6千1百万円などを調整し、1,453億3千4百万円の収入となりました。前連結会計年度に比べ、税金等調整前当期純利益の増益等により、499億3千万円の収入増となりました。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出1,140億9千7百万円等があり、1,010億円の支出となりました。前連結会計年度に比べ、固定資産の取得による支出が減少したこと等により、534億3千万円の支出減となりました。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済等により、719億5千7百万円の支出となりました。 (3)財政状態当連結会計年度末の総資産は、受取手形及び売掛金の増加等により、2兆6,520億7千3百万円(前期末比380億6千1百万円増)となりました。負債は、有利子負債(※)が、1兆2,555億2千7百万円(同319億9千1百万円減)となり、1兆8,224億9千1百万円(同121億4千8百万円減)となりました。純資産は、自己株式の取得があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により、8,295億8千1百万円(同502億9百万円増)となりました。 ※ 有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計 (生産、受注及び販売の状況)当社グループの各事業は、受注生産形態をとらない事業が多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため生産、受注及び販売の状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (1)業績」における各セグメント業績に関連付けて示しております。(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。(1)経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容2023年度は、事業環境変化への対応と構造改革の推進による収益の復元を掲げた、中期3か年経営計画の最終年度でありました。その中で、交通事業やホテル・リゾート事業を中心に、想定を上回る利用者数の増加が見られたことなどにより、期首に掲げた利益目標を達成することができました。施策面では、2021年度より『変革』を基本方針とする中期3か年経営計画に基づき、足元の事業環境変化への対応として、需要の拡大やニーズを的確に取り込むことで収益の復元、損益分岐点の改善を目指した事業構造改革に取り組みつつ、ポストコロナを見据えた施策も講じました。交通事業では、鉄道事業において東横線ワンマン運転開始等の効率的な運営に取り組んだほか、運賃改定の実施等により、恒常的に利益創出を可能とする収支構造へ転換を進めてきました。また、2023年3月の東急新横浜線開業により、広域的な鉄道ネットワークを構築し、沿線エリアの更なる価値向上に取り込んでおります。生活サービス事業、ホテル・リゾート事業においては、㈱東急百貨店、㈱東急ホテルズの構造改革をはじめ、各グループ会社の重点施策を確実に進捗させており、特にホテル・リゾート事業については、2023年4月より、ホテル運営に特化した新会社、東急ホテルズ&リゾーツ㈱を設立すると共に、ブランドラインナップも新たに再編・拡充することで、お客様の多様なニーズに応えられる体制を構築しております。2023年度の業績は、コロナ禍からの事業環境の段階的な回復や各事業の構造改革の進捗、付加価値創造の効果に加えて、不動産事業におけるマンション販売の増加等により、営業収益は、連結全体では期首に掲げた目標(以下、期首に掲げた目標値との比較とする)から72億円増収の10,378億円、営業利益は、249億円増益の、949億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、持分法投資利益の増加などにより、237億円増益の637億円となりました。また、営業利益の増益に伴い、東急EBITDAは2,036億円、有利子負債/東急EBITDA倍率は6.2倍となり、中期3か年経営計画において掲げていた全ての目標を達成しております。2024年度の連結業績予想につきましては、交通事業やホテル・リゾート事業を中心に移動需要の継続的な回復やインバウンド需要の増加等、引き続き良好な環境が継続することを見込んでいるものの、不動産販売業における前年度大規模マンションの引き渡しの反動減に加え、従業員の待遇改善、ベースアップ等による賃上げや需要回復に対応した採用人数拡充に伴う人件費の増加などを織り込むことにより、営業収益は前年度から171億円増収の10,550億円、営業利益は前年度から69億円減益の880億円を見込んでおります。また、経常利益は前年度から92億円減益の900億円(同9.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度から37億円減益の600億円となる見通しであります。 (2)資本の財源及び資金の流動性2024年度を始期とする中期3か年経営計画では、今後起こりうる経営環境変化に能動的に対応すべく、安定的で成長力ある事業ポートフォリオを構築しながら資本効率向上と財務健全性維持の両立を図ってまいります。経営指標については、規模拡大のみならず、効率性や財務健全性を重視し、株主資本コストを強く意識した経営を推進いたします。2026年度にはROE8%、中長期ではROA(総資産事業利益率)4%を目標として掲げております。本中期経営計画における3か年合計のキャッシュ・フロー計画は、営業キャッシュ・フロー4,700億円、入替等の資産売却等700億円等、合計5,500億円のキャッシュイン、投資キャッシュ・フロー5,100億円、株主配当400億円等、合計5,500億円のキャッシュアウトを計画しております。投資キャッシュ・フローの内訳は、鉄道事業投資に1,500億円、バリューアップ投資を含めた既存事業投資として1,300億円、不動産開発投資を始めとした成長投資として2,300億円を見込んでおります。このうち、2024年度は、鉄道事業投資に480億円、既存事業投資に450億円、成長投資に470億円、合計で約1,400億円の投資を計画しております。 当社における資金調達については、国内外における金利上昇など、今後の金融市場の動向に留意が必要な局面の中で、中長期的な安定調達手段の確保とともに、固定比率上昇と調達年限長期化の推進による調達金利の上昇抑制、市場性調達の活用による調達コストの極小化に引き続き努めてまいります。2023年6月には、戦略的な資金調達の手段として、ゼロクーポンで調達コストを抑えることができるユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債を総額600億円発行するとともに、約300億円、16,524,300千株の自己株式取得を実施しております。これにより、資本効率の改善と、市場環境の変化に耐えうる堅固な財務基盤の維持・向上の両立を図っております。また、当社の“サステナブル経営”を推進する資金調達手段として、「サステナブルファイナンス・フレームワーク」を策定しており、2023年度も本枠組みを活用したサステナビリティ・リンク・ローンによる資金調達を実施いたしました。2022年3月公表の「環境ビジョン2030」で掲げた、2050年CO2排出量実質ゼロに向けたCO2排出量削減目標をKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)及びSPT(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)として設定しており、「次の100年」に向け、社会とともに持続的に成長することを目指しております。運転資金の調達については、短期社債(コマーシャル・ペーパー)及びキャッシュマネジメントシステムでの調達枠を設定しており、積極的に活用することで調達コストの削減を図るとともに、危機対応型のコミットメントラインを設定し、不測の事態へも対応可能な状況にあります。株主還元について、2024年度を始期とする中期3か年経営計画における配当方針としては、安定配当を継続するとともに、利益成長に応じた配当金の持続的な増加に取り組み、中期3か年経営計画期間中の下限を21円と設定しております。その上で、2024年度はこの考え方に基づき年間22円の配当を予定しております。また、中長期的には、業績や資金状況もふまえつつ、配当性向30%を意識してまいります。これに加え、資本政策を機動的かつ積極的に実施していきます。本計画3か年通算での総還元性向も勘案しつつ、自己株式取得の実施時期、規模を検討いたします。 ※1 有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計※2 設備投資・投融資の金額については、投資計画の進捗説明を主眼とし一部組替を行っており、「キャッシュ・フロー計算書」とは数値が異なります (3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績、現在の状況に応じ合理的に判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社は、創業以来、事業を通じて社会課題の解決に取り組み、時代の変化に適合しながら、国や都市・地域の発展とともに着実に成長してまいりました。今後も、社会環境の変化に対応しながらサステナブル経営を行うべく、2024年度を始期とする中期3か年経営計画を推進しております。当社および連結子会社では、交通、不動産、生活サービス、ホテル・リゾートの各セグメントにおいて多様な事業展開を行っており、多額の固定資産を保有するとともに、設備投資・投融資等、継続的な投資を実施しております。したがって、当社および連結子会社においては、固定資産を中心とした資産ポートフォリオの管理、とりわけ減損損失の判定が、重要な会計上の見積りに該当いたします。減損損失の判定にあたっては、事業や物件ごとに資産のグルーピングを行い、収益性や市場性、用途変更や除売却等の意思決定の有無等により兆候判定を行っております。また減損損失の認識・測定においては、将来キャッシュ・フローを直近の実績や事業計画等の意思決定に基づいて合理的に見積りを行うほか、不動産等の時価のある資産については必要に応じ鑑定等の外部評価に基づく適正な価額を用い、投資額や帳簿価額の回収可否について判定を行っております。なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

※本記事は「東急株式会社」の令和6年年3期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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