大日本印刷株式会社の基本情報

会社名大日本印刷株式会社
業種その他製品
従業員数連36890名 単9589名
従業員平均年齢44.6歳
従業員平均勤続年数20.9年
平均年収8298269円
1株当たりの純資産2514.77円
1株当たりの純利益(連結)238.9円
決算時期年3
配当金54円
配当性向18.9%
株価収益率(PER)8.87倍
自己資本利益率(ROE)(連結)9.62%
営業活動によるCF1327億円
投資活動によるCF▲367億円
財務活動によるCF▲874億円
研究開発費※1111.24億円
設備投資額※1230億円
販売費および一般管理費※14276.14億円
株主資本比率※245.6%
有利子負債残高(連結)※31561.88億円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】DNPグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものであります。 (1)会社の経営の基本方針DNPグループは、サステナブルな社会の実現を目指し、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」ことを企業理念に掲げています。この理念に基づき、持続可能なより良い社会と、より心豊かな暮らしを実現するために、長期を見据えて、自らがより良い未来をつくり出すための事業活動を展開していくことを「経営の基本方針」としています。さまざまな活動を通じて、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値を創出し、それらの価値を生活者の身近に常に存在する「あたりまえ」のものにしていきます。人々にとって「欠かせない価値」を生み出し続けることで、DNPグループ自身が「欠かせない存在」になるように努めており、こうした姿勢を「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントで表明しています。DNPグループは、「経営の基本方針」に沿った取り組みを通じて、持続的に事業価値・株主価値を創出していきます。また、事業活動の評価指標としてROEやPBRなどを用いて、価値向上の達成状況を評価・分析し、次の施策の効果を高めていきます。 (2)中長期的な会社の経営戦略DNPグループは、「経営の基本方針」に基づき、2026年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画を2023年4月から実行しています。この計画では、「事業戦略」を中心に持続的な価値創出の具体策を実行するとともに、それを支える経営資本の強化に向けて「財務戦略」と「非財務戦略」を推進し、事業価値・株主価値を高めていきます。 <三つの戦略>〔1:事業戦略〕〔1-1:中長期の事業ポートフォリオの考え方〕「事業戦略」では、市場成長性・魅力度と事業収益性を基準として、目指すべき中長期の事業ポートフォリオを明確にしています。市場成長性・魅力度が高い「成長牽引事業」(*1)と「新規事業」(*2)を「注力事業領域」と位置付け、この領域の事業にリソース(経営資源)を集中的に投入し、必要な組織・体制なども十分に整備して、利益を一層拡大させていきます。また、DNP独自の強みを進化・深耕させるほか、DNPならではの社会・関係資本である多様なパートナーとの共創(DNPと異なる強みを持った企業とのM&Aなど)も加速させて、「No.1」の獲得に努めていきます。 *1 成長牽引事業:デジタルインターフェース関連、半導体関連、モビリティ・産業用高機能材関連  *2 新規事業:コンテンツ・XRコミュニケーション関連、メディカル・ヘルスケア関連一方、市場成長性・魅力度の伸びは低水準ながら収益性の高い「基盤事業」(*3)については、事業プロセスの効率向上などによって、安定的なキャッシュの創出に努めていきます。また、現状では市場成長性と収益性がともに低い水準にある「再構築事業」(*4)については、生産能力や拠点の縮小・撤退を含めた最適化を進めるとともに、注力事業領域へのリソースの再配分や、独自の強みを有した製品・サービスの強化などを推進していきます。 *3 基盤事業:イメージングコミュニケーション関連、情報セキュア関連 *4 再構築事業:既存印刷関連、飲料事業 〔1-2:各セグメントにおける戦略〕〇スマートコミュニケーション部門当部門では、投下資本とキャッシュ創出のバランスを見ながら効率的・効果的な投資を行うほか、DNP独自の強みを活かし、国内外の企業との協業やサービス開発を進めていきます。また、紙メディアの印刷関連については、再構築事業の一つとして市場規模に対応した合理化・適正化をさらに進めます。新規事業の「コンテンツ・XRコミュニケーション関連」では、リアルとバーチャルの空間をシームレスかつセキュアに行き来できるメタバース上のDX(デジタルトランスフォーメーション)サービス等を実現し、人々の体験価値を高めていきます。国内外の多様なIPホルダーやクリエイターとの連携を深め、高精細画像処理やセキュリティ基盤を活かしたデータ処理の技術などの強みも活かし、人々のコミュニケーションの価値を高める新規市場を創出していきます。また、着実に収益を積み上げる基盤事業として、写真プリント等の多様な製品・サービスを展開する「イメージングコミュニケーション関連」や、国内トップシェアのICカードや各種認証サービス等の「情報セキュア関連」の事業で、グローバルな投資を拡大していきます。そのほか、企業・自治体等の業務効率化やDXのニーズを捉え、業務プロセスを最適化して関連業務を受託するBPO事業の拡大を図ります。 〇ライフ&ヘルスケア部門成長牽引事業である「モビリティ・産業用高機能材関連」では、世界シェアトップのリチウムイオン電池用バッテリーパウチのEV向けのグローバル展開について、海外拠点への積極的な設備投資などを推進します。この製品とモビリティ(移動用車両)向けの多様な内外装加飾材を中心に事業を展開し、数十年先を見据えて、EVの航続距離の延伸や自動運転、快適な移動空間の実現に取り組んでいきます。新規事業の「メディカル・ヘルスケア関連」では、各種印刷物や包装・半導体等の事業で培った画像処理やカラーマネジメント、無菌・無酸素充填、ミクロ・ナノ造形、精密有機合成などの技術を掛け合わせ、原薬製造・製剤・剤形変更・医療パッケージ製造などの製薬サポート事業を展開していきます。関連するパートナーとの相乗効果の最大化にも取り組み、画像診断やオンライン診療などのスマートヘルスケア事業の拡大に努め、人々の健康寿命の延伸に貢献していきます。包装関連事業等については、拠点の再編などによる収益性の改善・向上を図るとともに、「DNP透明蒸着フィルム IB(Innovative Barrier)-FILMR」等の独自製品や環境に配慮した各種包材のグローバル供給能力の拡大などに努めていきます。 〇エレクトロニクス部門当部門では、積極的な設備投資を推進するとともに、DNP独自の強みを活かした新製品の開発、社外のパートナーとのアライアンスによる半導体サプライチェーンへの提供価値拡大などによって、事業の拡大を加速させていきます。成長牽引事業の一つ「デジタルインターフェース関連」では、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクやディスプレイ用光学フィルムなど、世界トップシェアの製品を中心に、技術革新の最新の潮流も捉えて、リアルとバーチャル、アナログとデジタルをつなぐ新しい価値を創出していきます。もう一つの成長牽引事業「半導体関連」では、自動運転や遠隔教育・遠隔医療、クラウド環境やデータセンターの広がりなどによって全世界のデータ流通量が飛躍的に増大するなか、半導体サプライチェーン全体に不可欠なファインデバイスを開発・提供していきます。 ■中期経営計画における主な経営目標指標中期経営計画における経営目標(2024年3月期~2026年3月期)実績(当連結会計年度)営業利益850億円936億円ROE8%以上9.6% 〔2:財務戦略〕持続的な事業価値と株主価値の創出に向けて、安定的な財務基盤を構築・維持した上で、キャッシュを成長投資に振り向けるとともに、株主還元にも適切に配分していきます。 〇キャッシュ・アロケーション戦略注力事業領域への積極的な投資と個々の事業の効率化を推進し、成長投資の原資となる営業キャッシュ・フローを安定的に創出していきます。資産効率の改善に向けては、政策保有株式の売却を加速し、遊休不動産の縮減にも着実に取り組んでいきます。また、有利子負債の活用を含む適切な資金調達方法を検討するなど、資金効率の最大化に努めていきます。創出したキャッシュは、注力事業領域に集中的に投資するとともに、経営基盤の構築に向けた投資にも配分していきます。長期にわたって企業活動を推進し、社会や人々に価値を提供し続けていくため、成長投資の推進と株主還元のバランスを考慮した上で、株主還元にも積極的に配分していきます。 〔3:非財務戦略〕〇人的資本の強化DNPグループは、引き続き「人への投資」を積極的に進めていきます。2022年には「人的資本ポリシー」を策定しており、「人への投資」を企業価値の向上にさらに明確に結びつけ、グローバルでの「人的創造性(付加価値生産性)」を飛躍的に高めていくための取り組みを進めています。価値創造に向けた社員のキャリア自律支援と組織力の強化に向けて、DNP版「よりジョブ型も意識した処遇と関連施策」を展開しています。また、複線型のポスト型処遇、キャリア自律支援に向けた人的投資、競争力の高い報酬の水準と体系の維持・確保、組織開発の充実などを進めています。健康経営については「DNPグループ健康宣言」に基づき、多様な個の強みを引き出すチーム力の強化とマネジメント改革に取り組んでいます。「DNP価値目標(DVO:DNP Value Objectives)制度」や組織のエンゲージメントを高める施策を展開し、社員の幸せ・幸福度を高めるよう推進しています。事業戦略に基づく適材適所の人材配置の実現については、タレントマネジメントシステムを活用したICT人材・DX人材のスキルレベルの可視化、人材ポートフォリオに基づく採用・育成、人材再配置に必要なリスキリングの強化などを進めていきます。また、DNPグループは、社員のあらゆる多様性を尊重し、一人ひとりの多様な強みを掛け合わせることが価値の創出に欠かせないと考え、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進を重要な経営課題の一つとしています。D&I推進の基本方針である「多様な人材の育成」「多様な働き方の実現」「多様な人材が活躍できる風土醸成」の具現化に向けた施策をさらに進めていきます。 〇知的資本の強化DNP独自の強みと、DNPとは異なる強みを持った社外のパートナーとの連携を活かして、知的資本を強化していきます。研究開発の方針として、DNP自身がつくり出したい「より良い未来」の姿を描き、それを起点とした“未来シナリオ”を実現するため、独自の技術等の強みを強化・連動させて、新製品・新サービスの開発・提供につなげていきます。注力事業領域を中心とした新規テーマの創出、基盤技術の強化と新製品開発、オープンイノベーションによる戦略的な技術の獲得と製品化・事業化などを推進します。ライフ&ヘルスケア部門をはじめ、3つの事業セグメントで海外での事業展開・マーケティング・研究開発の強化にも努めます。また、多様な事業を通じて獲得してきた特許等の知的資本の新製品・新サービスへの展開、社内外の強みを積極的に掛け合わせる組織風土の構築・醸成なども進めて、既存事業と新規事業の両方で新しい価値を創出していきます。DNPグループにとっての「DX」は、アナログとデジタル、リアルとバーチャル、モノづくりとサービスなど、異なる分野での強みを融合し、独自のビジネスモデルや価値を生み出すことであると位置付けています。新規事業の創出と既存事業の変革、生産性の飛躍的な向上、社内の情報基盤の革新などを進めていきます。 〇環境への取り組みDNPグループは常に、事業活動と地球環境の共生を考え、地球環境問題への対応を重要な経営課題の一つに位置付けています。「価値の創出(事業の推進)」と「基盤の強化」の両輪で環境関連の課題の解決に取り組み、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に貢献していきます。「価値の創出(事業の推進)」については、環境負荷の低減と事業の付加価値の向上をともに実現する事業ポートフォリオへの転換、環境をテーマとした新規事業の創出、低炭素材料・素材の開発・活用、製品単位のCO2排出量の算定と削減、循環型社会に向けたリサイクルスキームの構築、リサイクル材の活用促進などに取り組んでいきます。「基盤の強化」では、環境負荷の見える化、再生可能エネルギーの導入、環境負荷を考慮した省エネ設備への投資、生産拠点の最適化、プラスチックを中心とした資源の効率的な利用、原材料のトレーサビリティの確保、生態系への負荷の低減などに取り組んでいきます。 〔4:ガバナンス〕DNPグループは、環境・社会・経済の急激な変化など、経営に大きな影響を与えるリスクを評価して中長期的な経営戦略に反映し、そのリスクを事業機会に転換していくプロセスの強化に取り組んでいます。この取り組みを加速させるため、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を運営しています。当委員会では、中期経営計画の実行の過程で環境・社会・経済の急激な変化を捉え、適切に経営戦略に反映していくため、経営会議・取締役会に報告・提言しています。
経営者による財政状態の説明
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 (1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度におけるDNPグループの状況の概要は次のとおりであります。 ① 経営成績の状況当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内の雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しやインバウンド需要の拡大等により、景気に緩やかな回復が見られました。一方で、株価・為替の急激な変動、地政学リスクの長期化、原材料や燃料等のコストの高止まり、米国をはじめとする各国・地域の政策動向、国内の物価上昇など、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。また、地球環境や人権問題等への対応、AI(人工知能)やXR(Extended Reality)等の先進技術などによって、ビジネスはより複雑かつ多様になり、競争も激化しています。DNPグループは、環境・社会・経済の急激な変化やリスクに対応するだけでなく、自らが長期を見据えて変革を起こし、「より良い未来」をつくり出す事業活動を展開しており、独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、多様なパートナーとの連携を深めて、事業領域の拡張と業績の向上に努めています。当期は2023-2025年度の3か年の「中期経営計画」の2年目として、「事業戦略」「財務戦略」「非財務戦略」に基づく具体的な取り組みを通じて、持続的な事業価値・株主価値の創出に注力しました。事業戦略では、中長期にわたって強みを発揮できる事業ポートフォリオの構築を進めるとともに、注力事業領域を中心に新しい価値の創出を加速させています。財務戦略では、創出したキャッシュを事業のさらなる成長のための投資と株主還元に適切に配分していきます。非財務戦略では、「人的資本の強化」「知的資本の強化」「環境への取り組み」を中心に推進し、サステナブルな成長を支える経営基盤の強化を図っています。三つの戦略のより詳細な内容は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略 <三つの戦略>」に記載しています。また、常に経営環境の変化を見極めながら、グループを挙げて事業継続マネジメント(BCM)の徹底を図り、企業活動の持続的な推進に努めています。 これらの結果、当連結会計年度のDNPグループの売上高は1兆4,576億円(前期比2.3%増)、営業利益は936億円(前期比24.1%増)、経常利益は1,159億円(前期比17.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,106億円(前期比0.2%減)となりました。また、DNPグループが収益性指標の一つとしている自己資本利益率(ROE)は9.6%となりました。 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。 (スマートコミュニケーション部門)イメージングコミュニケーション関連は、写真プリント用の昇華型熱転写記録材が欧米市場で好調に推移しました。また、国内の証明写真サービスや欧米での撮影サービスの増加もあり、前年を上回りました。情報セキュア関連は、1つのICチップで接触型と非接触型の規格に対応可能なデュアルインターフェイスカード等のICカードが堅調に推移したものの、BPO(Business Process Outsourcing)の大型案件が減少し、前年を下回りました。マーケティング関連は、長年培ったマーケティング施策の実績や知見とデジタルの強みを掛け合わせた価値の提供に努めましたが、紙媒体の市場縮小の影響もあり、前年を下回りました。出版関連は、図書館運営業務が受託館数の増加により堅調に推移したものの、雑誌等の市場縮小の影響などにより、前年を下回りました。なお、出版印刷事業は、意思決定の迅速化及び部門間の連携強化とともに、市場環境の変化の先取りをしていくため、2025年4月に組織再編を行い、製造・販売一体の事業推進体制に移行しました。 コンテンツ・XRコミュニケーション関連のうち、コンテンツ関連は、国内外で人気の知的財産(IP:Intellectual Property)を活用した大型企画展の主催をはじめ、イベント・物販ビジネスや、日本のIPの海外展開など、新たな価値の創出に努めました。XRコミュニケーション関連は、専門の強みを持つ社外のパートナーとの連携などに力を入れています。こうした取り組みやDNPの先進技術などが高く評価され、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)における「日本政府館」のバーチャルパビリオンの企画制作に採択されました。今後も多様なパートナーとの共創を拡げ、仮想空間(メタバース)の活用を通じて、不登校の子どもの教育機会や居場所の創出など、社会課題の解決や体験価値の提供に向けてさらに事業を強化・拡大していきます。その結果、部門全体の売上高は7,155億円(前期比0.5%減)となりました。営業利益は、紙媒体等の市場縮小による減収の影響を受けたものの、為替のプラス効果、人的資本や固定資産の適正化などの事業構造改革により、346億円(前期比32.5%増)となりました。 (ライフ&ヘルスケア部門)モビリティ・産業用高機能材関連は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが、スマートフォンやタブレット端末等の新機種用を中心にIT向けの需要が伸長しました。一方、車載向けは、2024年10月以降に需要の回復が見られたものの、年間を通じて電気自動車(EV)市場の需要停滞の影響が大きく、前年を下回りました。太陽電池関連は、世界的な需要の高まりにより、封止材を中心に好調に推移しました。自動車用部材の加飾フィルムは、内装用製品の販売が好調に推移しました。M&Aも積極的に行っており、2025年1月に、多様な成形品製造技術を駆使して、独自の自動車部品や産業機器向けの加飾部品等の事業を手掛ける株式会社光金属工業所の完全親会社であるHKホールディング株式会社の全株式を取得しました。2025年2月には、二次電池外装材・包装材などを手掛ける株式会社レゾナック・パッケージング(株式会社DNP高機能マテリアル彦根に社名変更)の全株式を取得しました。各社とDNPグループが培ってきた経営資源や技術・ノウハウなどの強みを掛け合わせることで、顧客への対応力をさらに強化し、競争力を向上させていきます。包装関連は、原材料の値上げの影響を受けたものの、価格転嫁が進展したことに加え、スナックや日用品向け包材、ペットボトル用無菌充填システムなどが増加しました。また、「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGINGR」や各種機能性包材の開発・販売にも注力し、前年を上回りました。メディカル・ヘルスケア関連は、医療用パッケージの開発・販売に注力しました。また、メディカル・ヘルスケア業界向けの物流拠点として、2025年4月に、東京都に「小豆沢(あずさわ)センター」を開設しました。各企業が個別に行っている医薬品・医療機器の保管からセット作業、配送までをBPOとして請け負うことにより、低コストで物流の効率化を実現いたします。また、この施設は、商業印刷関連の製造拠点をメディカル物流向けに転用したもので、投資の効率化を実現するとともに、事業ポートフォリオの変革につながっています。生活空間関連は、高い耐久性とデザイン性を両立させた外装材「アートテックR」が国内外で好調に推移したものの、国内の新設住宅着工戸数(持家)の減少などによって住宅向け内装材が減少し、前年を下回りました。飲料事業は、北海道外のボトラーへの販売が減少したものの、主要な販売チャネルでの価格改定の効果や、自動販売機・コンビニエンスストア・Webサイトでの販売が好調に推移し、前年を上回りました。その結果、部門全体の売上高は4,960億円(前期比5.0%増)となりました。営業利益は、包装関連事業の売上増加に加え、固定費の圧縮等のコストダウン、為替のプラス効果なども寄与し、237億円(前期比78.2%増)となりました。 (エレクトロニクス部門)デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが前期の旺盛な開発需要からの反動で減少したものの、光学フィルムが液晶テレビ用パネルの大型化にともなう出荷面積の拡大等で堅調に推移し、前年を上回りました。なお、当期は、福岡県北九州市の黒崎工場内に新設したメタルマスクの生産ラインが稼働を開始しており、タブレット端末やノートPC、車載デバイスでの有機ELディスプレイの採用拡大の状況を先取りしていきます。半導体関連は、市場の回復によって半導体製造用フォトマスクが堅調に推移し、前年を上回りました。その結果、部門全体の売上高は2,477億円(前期比5.3%増)となりました。営業利益は、デジタルインターフェース関連を中心に注力事業の売上が増加しましたが、メタルマスクの生産ライン増設による設備費増加の影響を受け、573億円(前期比1.4%減)となりました。 ② 財政状態の状況当連結会計年度末の資産、負債、純資産については、総資産は、現金及び預金の増加や、退職給付に係る資産、有形固定資産の減少などにより、前連結会計年度末に比べ377億円減少し、1兆9,178億円となりました。負債は、未払法人税等の増加や、支払手形及び買掛金、繰延税金負債の減少などにより、前連結会計年度末に比べ98億円減少し、7,090億円となりました。純資産は、当期純利益による増加や、剰余金の配当、自己株式の取得、その他有価証券評価差額金、退職給付に係る調整累計額の減少などにより、前連結会計年度末に比べ279億円減少し、1兆2,087億円となりました。 ③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ160億円増加し、2,506億円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,686億円、減価償却費537億円などにより1,327億円の収入(前連結会計年度は725億円の収入)となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出570億円、投資有価証券の取得による支出878億円、投資有価証券の売却による収入1,193億円などにより367億円の支出(前連結会計年度は183億円の収入)となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出648億円、配当金の支払額150億円などにより874億円の支出(前連結会計年度は1,186億円の支出)となりました。 ④ 生産、受注及び販売の実績a.生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)スマートコミュニケーション部門440,083△3.1ライフ&ヘルスケア部門412,648+6.5エレクトロニクス部門228,299△0.8合 計1,081,031+0.9 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。 b.受注実績当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)スマートコミュニケーション部門592,923+0.6126,863+8.6ライフ&ヘルスケア部門443,396+1.2122,357+5.7エレクトロニクス部門246,275+0.940,570△2.7合 計1,282,596+0.8289,792+5.7 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。 c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)スマートコミュニケーション部門713,977△0.5ライフ&ヘルスケア部門495,855+5.0エレクトロニクス部門247,776+5.3合 計1,457,609+2.3 (注)セグメント間取引については相殺消去しております。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点によるDNPグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容DNPグループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、前連結会計年度(以下「前期」)に比べて327億円増加し、1兆4,576億円(前期比2.3%増)となりました。売上原価は、前期に比べて82億円増加して1兆1,193億円(前期比0.7%増)となり、売上高に対する比率は前期の78.0%から76.8%となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べて64億円増加して2,446億円(前期比2.7%増)となり、この結果、営業利益は前期に比べて181億円増加して936億円(前期比24.1%増)となりました。営業外収益は、持分法による投資利益の減少等により前期に比べて20億円減少して263億円(前期比7.3%減)となり、営業外費用は、前期に比べて11億円減少して40億円(前期比22.0%減)となりました。この結果、経常利益は前期に比べて172億円増加して1,159億円(前期比17.4%増)となりました。特別利益は、投資有価証券売却益の増加等により、前期に比べて445億円増加して1,304億円(前期比51.8%増)となり、特別損失は、減損損失の増加等により前期に比べて360億円増加して776億円(前期比86.8%増)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,106億円(前期比0.2%減)となりました。 DNPグループの経営成績に重要な影響を与えた要因は以下のとおりです。当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内の雇用・所得環境の改善による個人消費の持ち直しやインバウンド需要の拡大等により、景気に緩やかな回復が見られました。一方で、株価・為替の急激な変動、地政学リスクの長期化、原材料や燃料等のコストの高止まり、米国をはじめとする各国・地域の政策動向、国内の物価上昇など、景気の先行きは依然として不透明な状況にあります。また、地球環境や人権問題等への対応、AI(人工知能)やXR(Extended Reality)等の先進技術などによって、ビジネスはより複雑かつ多様になり、競争も激化しています。 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。スマートコミュニケーション部門については、イメージングコミュニケーション事業や金融機関向けのICカードが増加したほか、図書館運営業務も堅調に推移しましたが、紙媒体の市場縮小の影響を受けて出版印刷物や商業印刷物が伸び悩んだことに加え、BPOの大型案件が減少し、結果、部門全体の売上高は前期比0.5%減の7,155億円となりました。営業利益は、紙媒体等の市場縮小による減収の影響を受けたものの、為替のプラス効果、人的資本や固定資産の適正化などの事業構造改革により、前期比32.5%増の346億円となりました。営業利益率は、前期の3.6%から1.2ポイント上昇し、4.8%となりました。ライフ&ヘルスケア部門については、包装関連事業は、価格転嫁が進展したことに加え、スナックや日用品向け包材、ペットボトル用無菌充填システムなどが増加し、前年を上回りました。生活空間関連事業は、国内の新設住宅着工戸数(持家)の減少などによって住宅向け内装材が減少し、前年を下回りました。モビリティ・産業用高機能材関連は、太陽電池関連が、世界的な需要の高まりにより、封止材を中心に好調であったほか、自動車用部材の加飾フィルムも、内装用製品の販売が好調に推移しましたが、年間を通じて電気自動車(EV)市場の需要停滞の影響が大きかった車載向けのリチウムイオン電池用バッテリーパウチが減少し、前年を下回りました。飲料事業は、主要な販売チャネルでの価格改定の効果もあり、前年を上回りました。メディカル・ヘルスケア関連は、医療用パッケージの開発・販売に注力しました。その結果、部門全体の売上高は前期比5.0%増の4,960億円となりました。営業利益は、包装関連事業の売上増加に加え、固定費の圧縮等のコストダウン、為替のプラス効果なども寄与し、前期比78.2%増の237億円となりました。営業利益率は、前期の2.8%から2.0ポイント上昇し、4.8%となりました。 エレクトロニクス部門については、デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが前期の旺盛な開発需要からの反動で減少したものの、光学フィルムが液晶テレビ用パネルの大型化にともなう出荷面積の拡大等で堅調に推移し、前年を上回りました。半導体関連は、市場の回復によって半導体製造用フォトマスクが堅調に推移し、前年を上回りました。その結果、部門全体の売上高は前期比5.3%増の2,477億円となりました。営業利益は、デジタルインターフェース関連を中心に注力事業の売上が増加しましたが、メタルマスクの生産ライン増設による設備費増加の影響を受け、前期比1.4%減の573億円となりました。営業利益率は、前期の24.7%から1.5ポイント低下し、23.2%となりました。 セグメント資産の状況については、スマートコミュニケーション部門は前期末に比べて、613億円減少して7,532億円(前期末比7.5%減)となりました。ライフ&ヘルスケア部門は前期末に比べて、631億円減少して4,847億円(前期末比11.5%減)となりました。エレクトロニクス部門は前期末に比べて、956億円増加して3,857億円(前期末比33.0%増)となりました。報告セグメント合計では前期末に比べて、288億円減少して1兆6,237億円(前期末比1.7%減)となりました。 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報DNPグループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前期末に比べ160億円増加し、2,506億円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整当期純利益1,686億円、減価償却費537億円などにより1,327億円の収入(前期は725億円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出570億円、投資有価証券の取得による支出878億円、投資有価証券の売却による収入1,193億円などにより367億円の支出(前期は183億円の収入)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出648億円、配当金の支払額150億円などにより874億円の支出(前期は1,186億円の支出)となりました。 a.財務戦略の基本的な考え方DNPグループは、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値の創出のため、成長領域を中心とした事業へ集中的に事業投資(研究開発投資、設備投資、戦略的提携やM&A投資)を行うとともに、それらを支える人財投資に経営資源を投入していきます。そのほか、資本効率の向上、財務基盤の安定化と株主還元の実施など、さまざまな資本政策を総合的に勘案して推進していきます。 b.DNPグループの資本の財源DNPグループは、主に営業活動により確保されるキャッシュ・フローにより、成長を維持・発展させていくために必要な資金を確保しております。設備投資資金などの資金需要については自己資金で賄うことを基本としておりますが、自己資金に加え、他人資本も活用し、成長投資資金を調達していきます。 c.DNPグループの経営資源の配分に関する考え方DNPグループは、成長領域を中心とした注力事業への投資などを進めていきます。重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源泉等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)新設等」に記載のとおりであります。また、利益の配分については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定DNPグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

※本記事は「大日本印刷株式会社」の令和7年年3期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

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連結財務指標と単体財務指標の違いについて

連結財務指標とは

連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。

単体財務指標とは

単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。

本記事での扱い

本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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