会社名 | キヤノン株式会社 |
業種 | 電気機器 |
従業員数 | 連169151名 単23931名 |
従業員平均年齢 | 44.1歳 |
従業員平均勤続年数 | 19年 |
平均年収 | 8324359円 |
1株当たりの純資産 | 1610.54円 |
1株当たりの純利益 | 476.12円 |
決算時期 | 12月 |
配当金 | 140円 |
配当性向 | 29.2% |
株価収益率(PER) | 7.6倍 |
自己資本利益率(ROE) | 32.5% |
営業活動によるCF | 4511億円 |
投資活動によるCF | ▲2753億円 |
財務活動によるCF | ▲1567億円 |
研究開発費※1 | 278.72億円 |
設備投資額※1 | 911.58億円 |
販売費および一般管理費※1 | 3763.99億円 |
株主資本比率※2 | 54% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1)経営理念当社グループは、企業理念として、世界中のステークホルダーの皆さまとともに歩む「共生」を掲げています。「共生」とは、文化、習慣、言語、民族などの違いを問わず、すべての人類が末永く共に生き、共に働き、幸せに暮らしていける社会をめざすものです。この「共生」の理念のもと、当社グループは、世界の繁栄と人類の幸福のため、企業の成長と発展を目指し企業活動を進めています。 (2)マテリアリティ 当社は、時代とともに変化する社会の動きを捉えながら、企業理念である「共生」のもと、人間尊重、技術優先、進取の気性と言った企業DNAと、自社の強固な財務基盤や豊富な人材、高い技術力など、様々なリソースを有効に活用し、健全なコーポレート・ガバナンスを保ちながら事業を展開してまいりました。 当社のこれまでの取り組みや中長期経営計画に沿った様々な事業活動の中から、当社が取り組むべきと考える重要事項の中で、ステークホルダーの皆さまの関心が特に高い「新たな価値創造、社会課題の解決」ならびに「地球環境の保護・保全」を重要課題(マテリアリティ)として抽出しました。また、さらにこれら2つのマテリアリティに取り組む上で支えとなるテーマを「人と社会への配慮」として集約し、3つ目のマテリアリティとしました。当社では、ステークホルダーの意見を参考に、マテリアリティの妥当性の確認や見直しを行うほか、社会に対する当社の事業活動のインパクトを分析し、企業活動のより一層の充実を図っています。 特定したマテリアリティ項目 新たな価値創造、社会課題の解決・人々の健康や病気の予防に貢献する医療技術の開発・社会の安心・安全に資するセキュリティ技術の進化・写真や映像分野における人々の豊かさや楽しさにつながる 製品/技術の開発 地球環境の保護・保全・省エネルギー化の促進/再生エネルギーの活用・使用済み製品のリユース・リサイクル・廃棄物の削減/水域・土壌の汚染防止 人と社会への配慮 人権と労働・差別やハラスメントの防止、基本的人権の尊重・適正な賃金と労働時間の管理 社会貢献・事業活動を生かした社会貢献活動・次世代の育成支援 (3)中長期経営計画:グローバル優良企業グループ構想フェーズⅥ 当社は、「共生」の企業理念のもと、永遠に技術で貢献し続け、世界各地で親しまれ、尊敬される企業を目指し、1996年に5カ年計画『グローバル優良企業グループ構想』をスタートしました。 2021年を初年度とする新5カ年計画「グローバル優良企業グループ構想 フェーズⅥ」(以下、フェーズⅥ)では、「生産性向上と新事業創出によるポートフォリオの転換を促進する」を基本方針に、テクノロジーとイノベーションによって新たな価値を生み出し、コンシューマーの分野ではより豊かな生活を、オフィスやインダストリーの分野ではより快適なビジネス環境を、そしてソサエティの分野ではより安心・安全な社会づくりをめざします。 ①産業別グループの事業競争力の徹底強化 当社が保有する多岐にわたる技術や資産を最大限活用することを目的として、2021年に技術的に親和性のある複数の事業本部をプリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの4つのグループに再編成しました。産業別グループ内では各事業・グループ会社がもつ技術や人材の連携を深めて、将来技術の開発や生産技術の強化など新たなイノベーションを創出し、事業の進化・拡大に取り組んでいます。2023年10月に開催したキヤノンの総合技術展である「Canon EXPO」では、事業ポートフォリオの転換を支える産業別グループの技術と当社が目指す技術の方向性を紹介しました。今後は当社がこれまで培ってきた独自技術に加えてオープンイノベーションやM&Aも活用することにより、時代のニーズに応える新たな価値を創出し、複雑化、多様化する社会課題の解決に貢献することを目指します。 2021年と2022年はコロナ禍や半導体をはじめとした部品不足、物流逼迫への対応を優先しておりましたが、2023年に入りこれらの状況が落ち着きを見せたことから、当社は計画していた成長戦略を再開・加速しています。加えて今後は開発、生産、販売の経費構造を全面的に見直して経費水準を最適化するプロジェクトを進めていくことで、一層の事業競争力強化を目指します。 各グループにおける、フェーズⅥの主な戦略・施策の進捗状況は以下の通りです。 プリンティンググループ アナログからデジタルへのシフトにより今後も大きな成長が見込まれるカタログ印刷等の商業印刷分野と、ラベル印刷やパッケージ印刷等の産業印刷分野では、プリンティンググループの総力を挙げて商品ラインアップの強化とワークフロー・ソフトの拡充に取り組んでいます。2023年は特に自動化機能を強化したカットシート機の「imagePRESS V1350」を始めとする「Vシリーズ」や、白インクを追加したことでさらに多様なメディアへの印刷を可能にした「Colorado Mシリーズ」が顧客から高く評価され、販売台数を大きく伸ばしました。今後は「Canon EXPO」で反響の大きかったB3サイズ対応インクジェットデジタルプレス機「varioPRINT iX1700」や産業印刷向け水性インクジェットラベル印刷機「LabelStream LS2000」をラインアップに加え、業界の高度な印刷ニーズに応えていきます。 DX(デジタルトランスフォーメーション)が進展したことでオフィス環境でのペーパーレス化が進みましたが、仕事に関する思考や情報共有において紙がもたらす価値は変わることなく、人間の知的な活動を支えるうえで今後も一定の役割を果たしていくと考えております。コロナ禍を通じてリモートワークが日常となり、サテライトオフィスや自宅など働く場所の分散や働き方の多様化が進みましたが、オフィス、ホームの分野では、働く場所で制約を受けない安心・安全・快適なプリンティング環境・サービスへのニーズが高まっています。プリンティンググループでは、多様なシーンに合わせてどのような環境においても高い生産性、利便性、セキュリティ環境を提供すべく、当社製の複合機、レーザープリンター、インクジェットプリンターとクラウドを連携したオンデマンドプリンティング環境を提供しています。2023年はオフィスにおける中核のプリンティング機器として、オフィス複合機の需要は底堅く推移しました。当社は高効率と低消費電力の両立に加えてサイバーセキュリティを強化した「imageRUNNER ADVANCE DX C3900シリーズ」などをラインアップに加えました。レーザープリンターとインクジェットプリンターでは、ビジネスから在宅までの幅広いニーズに対応するためラインアップを拡充しましたが、在宅需要のピークアウトに加え中国や欧州での景気悪化の影響を受けて市場が縮小しました。プリンティンググループでは、引き続きお客様のニーズに合わせた商品・サービスを拡充し、オフィス、ホームの分野において世界No.1を目指します。 メディカルグループ 近年、世界の医療を取り巻く環境は技術面でめざましい発展を遂げる一方、医師不足、高齢化社会、医療費の高騰、医療の地域格差などさまざまな課題に直面しています。メディカルグループでは「画像診断事業」、「ヘルスケアIT事業」、「体外診断事業」の分野に特に注力し、優れた製品・サービスを提供することで社会の変化に合わせた医療課題の解決や価値提供を行うことを目指しています。 画像診断事業では、ディープラーニング技術を用いて設計した画像再構成技術や、複雑化する医療従事者の診断ワークフローを支援する自動化技術を搭載した製品を開発するなど、医療従事者と患者の負担の軽減と高品質の画像の提供を目指して製品・サービスを提供してきました。2023年には、ディープラーニングを用いた「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」をさらに進化させた超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」と、先進自動化技術により操作性向上を追求した自動化技術「INSTINX」を搭載し、同時に被ばく線量をさらに低減し、撮像時間を短縮したCTの新製品「Aquilion One / INSIGHT Edition」を発売するなど、さらにラインアップを強化しました。 当社は次世代技術の研究開発にも積極的に取り組んでいます。2019年より、公益財団法人京都大学iPS細胞研究財団との共同研究でiPS細胞の製造に寄与する装置の開発を進めています。2023年11月には、物質を高精度に識別し、カラーで表示できる機能により高い画質性能と被ばくの低減など医療現場にさらなる価値をもたらすことが期待されているフォトンカウンティングCT(PCCT)の早期実用化に向け、広島大学やオランダのラドバウド大学メディカルセンターと共同臨床研究に関する基本合意を締結しました。さらに2023年11月には生物医学研究と臨床ケアに高い専門性を有する米国のクリーブランド・クリニック財団と、医用画像ソリューションおよびヘルスケアIT技術の開発を目指す戦略的研究パートナーシップに合意しました。このように幅広い領域でグローバルな共同研究活動にも積極的に参画しながら、医療に新たな価値を提供できる技術の開発に注力します。 体外診断事業の領域では、2023年に体外診断用医薬品を手掛けるミナリスメディカル株式会社及びMinaris Medical America, Inc.(以下、あわせて「ミナリスメディカル社」と総称)をグループに迎えました。今後はキヤノンが保有する自動分析装置技術とのシナジーを活かしながら、当該事業の強化を図ります。 また、メディカル事業では収益性の向上を図るため、全社組織として「メディカル事業革新委員会」を立ち上げました。開発から生産、調達、物流、企画・管理までの全てのオペレーションにおいて、当社の持つリソース、ノウハウを投入し、収益体質の改善を図ります。 イメージンググループ スマートフォンの普及によりデジタルカメラ全体の市場は大きく縮小したものの、フルサイズのセンサーを搭載したミラーレスカメラの販売はコロナ禍でも堅調に推移し、高画質の写真に対する需要の底堅さを示しました。世界屈指の光学技術を有する当社は、こうした需要に応えるカメラ・交換レンズを今後も順次市場に投入し、高画質を重視するプロ・ハイアマチュアユーザーを対象の中心に、ミラーレスカメラにおいても世界No.1の地位の確立をめざしてきました。2023年には、「EOS Rシリーズ」より本格的な静止画・動画撮影を手軽に楽しみたいエントリーユーザー向けに「EOS R50」、「EOS R100」といった新製品を発売し、ラインアップのすそ野をさらに広げました。また、近年スマートフォンやSNSを使用した映像コミュニケーションがより一層活発になっており、手軽かつクオリティの高い動画撮影のニーズが高まっています。当社では従来のカメラ製品の動画撮影機能をより充実化させるとともに、2023年に発売したVlog(ビデオブログ)撮影に特化した「PowerShot V10」など、新しいコンセプトの製品をラインアップに加えることでより幅広いユーザーの期待に応えます。 放送や映像制作の分野では、IPストリーミングの需要が増大を続けていることから、高画質リモートカメラシステムのラインアップを強化します。 ネットワークカメラ事業では、世界有数のメーカーであるアクシス社や映像管理ソフト・ベンダーのマイルストーンシステムズ社、映像解析ソフト・ベンダーのブリーフカム社など、優れた技術を持つグループ会社を擁しております。今後もグループの総力を挙げて多様化するニーズを捉えながらセキュリティ分野におけるプレゼンスを強化します。また同時に、生産現場での検品業務、集配センターでの欠品検知、インフラ点検、店舗や展示会場での混雑具合の検知など、従来のセキュリティ目的を超えて、各種業務に対する映像を活用したDXを提供する製品・サービスの展開を図ります。 近年様々な分野で仮想現実映像、立体映像、360度映像などの利活用が進み、新たな映像体験市場の拡大が期待されています。当社では、複数の撮影画像から3D空間データを再構成する「ボリュメトリックビデオシステム」、高画質な180°3D VR映像を手軽に撮影できる「EOS VRシステム」、現実世界とCG映像をリアルタイムに違和感なく融合するMR(Mixed Reality:複合現実)製品の「MREAL」などの3Dイメージング技術を用いた製品・サービスを拡充していくことで、新たな映像体験市場の活性化と事業領域の拡大を図ります。 インダストリアルグループ AI、IoT、電気自動車、5Gなどデジタル化やスマート化が進んだ現代社会では半導体は不可欠のデバイスとなり、今後も半導体とその製造装置に対する需要は多様化し、拡大すると見込まれます。インダストリアルグループは、半導体露光装置の安定供給、半導体メーカーの生産性向上、半導体の性能向上に引き続き貢献します。中長期的な半導体露光装置の需要増加に対応するため、2025年の稼働を目標に宇都宮事業所の隣地に新工場を建設し、半導体露光装置の生産能力を大幅に増強します。顧客の生産性向上に貢献する取り組みとしては、2022年に半導体露光装置ソリューションプラットフォーム「Lithography Plus」の販売を開始し、半導体メーカーでの歩留まり改善や稼働率向上を支援しています。また、2023年10月にはナノインプリント(NIL)半導体製造装置「FPA-1200NZ2C」を発売しました。NIL方式は、従来の露光方式と比べて製造工程がシンプルで、最先端半導体デバイス製造での消費電力低減とコスト削減効果が期待されます。今後は半導体デバイス製造用途向けの販売を推進するとともに、国内外の研究機関や半導体メーカーと協力し、NILの長所を生かせるアプリケーションの拡大を図ります。 ディスプレイ製造装置については、液晶では生産性向上と高精細化を進め、有機ELでは今後成長が期待される中型パネルやスマートグラス向け製造装置の開発を加速します。 その他にも当社と子会社であるキヤノントッキ、キヤノンアネルバ、キヤノンマシナリーが持つ超精密位置合わせ、超高精度加工、真空システムといったコア技術を融合して新たな装置を開発し、インダストリアルグループの事業領域拡大を目指します。 ②本社機能の徹底強化によるグループ生産性の向上当社では事業の競争力の強化と拡大を図るため、人事制度を改定し、より一層の競争原理を働かせることで管理部門の生産性を向上するとともに、当社の事業の付加価値を一層高める先端技術のリサーチ力強化など、本社機能の強化に取り組んでいます。2023年からは、当社の技術を牽引することが期待される技術者を「トップ・サイエンティスト」として任用する「高度技術者認定」制度を設け、新規事業創出に貢献できる人材の確保・育成を推進しています。また当社では、これまで培ってきたあらゆる技術を活用して材料やコンポーネントなどの領域で事業化を進めるなど、全社横断的な視点での新規事業創出にも取り組み、収益拡大への貢献を目指しています。さらに今後は、自社技術の開発に加えて外部の最先端技術を積極的に取り入れるべく、産学連携、外部企業とのパートナーシップを通じたオープンイノベーションやM&Aを活用し、一層の業容拡大を図ります。 (4)中期経営計画連結業績目標 当社は、フェーズⅥ期間最終年度である2025年度の連結業績目標として、売上では当社史上最高を記録した2007年を上回る売上高4兆5,000億円以上、利益では営業利益率12%以上、当期純利益率8%以上の達成を目指します。 事業ポートフォリオの転換を評価する指標として、当社では連結売上高に対する新規事業※1売上高の比率を設定しています。今5カ年計画の3年目となる2023年は、ウクライナ情勢や中東での軍事衝突など不安定な状況が継続しましたが、長期にわたり経済活動を制限したコロナ禍の収束などにより、世界経済は緩やかに回復しました。不安定な状況が続くなかで当社は、製品の供給不足からの回復とメディカルやネットワークカメラをはじめとする新規事業が堅調に推移したことに加え円安が追い風となり、3期連続となる増収増益を達成しました。新規事業の売上高は成長を続けており、2017年と比較すると連結売上高に占める構成比が22%から28%に上昇するなど、事業ポートフォリオの転換の効果が着実に表れています。2025年にかけて、さらなる新規事業売上高の成長をめざします。 また当社は、企業価値向上をより一層加速させるため株主資本利益率(ROE)を重視しております。コロナ禍の2020年に3.2%まで落ち込んだROEはその後の業績回復により改善し、2023年は前年比0.1ptの改善となる8.2%となりました。今後は着実なコストダウン活動や経費の最適化による収益性の向上、棚卸資産の削減や生産拠点の集約等を通じた資産の圧縮、負債・資本の最適バランスの追求といった取り組みを進めることで、2025年にはROEを10%以上に向上させることを目指します。 ※1新規事業には、キヤノンプロダクションプリンティング、キヤノントッキ、アクシス、キヤノンメディカルシステムズなど、フェーズⅠ以降に取得した主要な事業会社の事業と、フェーズⅥ期間中の事業化を目指す新規事業を含めています。 2021年実績2022年実績2023年実績2024年見通し 2025年目標売上高3兆5,134億円4兆314億円4兆1,810億円4兆3,500億円 4兆5,000億円以上営業利益率8.0%8.8%9.0%10.0% 12%以上当期純利益率6.1%6.1%6.3%7.0% 8%以上 ROE7.9%8.1%8.2%8.9% 10%以上 現行事業・新規事業売上比率 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の状況の概要 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。 ①財政状態及び経営成績の状況 (経営を取り巻く経済環境) 当連結会計年度の世界経済は、ウクライナ情勢や中東での軍事衝突など不安定な状況が継続しましたが、長期にわたり経済活動を制限したコロナ禍の収束などにより、緩やかに回復しました。地域別に見ますと、米国では良好な雇用情勢や実質所得の増加を背景に、個人消費が堅調に推移しました。欧州では、インフレや金融引締めの継続に伴う景気の下押し圧力が依然として強く、景気は低迷しました。中国では、不動産市場の低迷に加え個人消費も回復力に乏しく、景気は減速傾向が続きました。その他の新興国については、個人消費やサービス産業を中心に堅調に推移しました。我が国では雇用や所得環境の改善を背景に、個人消費に持ち直しの動きが見られるなど、景気は緩やかに回復しました。 このような状況の中、当社関連市場においては、部品不足や物流逼迫による製品の供給不足が解消した一方で、インフレに伴う金融引締めや中国や欧州経済の低迷、地政学的リスクの高まりにより需要が弱含みました。製品別に見ますと、オフィス向け複合機は、中国の市況悪化による影響はありましたが、その他の地域では引き続き業務効率の高いプリント機器への根強いニーズを背景に、需要は底堅く推移しました。インクジェットプリンターは在宅での印刷需要の減少、レーザープリンターは企業の投資抑制による影響を受けました。医療機器は、我が国や欧州を中心に堅調に推移しました。カメラ市場は、高品質な映像表現を求めるプロやハイアマチュアの需要が底堅く推移し、ネットワークカメラ市場は成長が継続しました。半導体製造装置市場は、引き続きメモリ向けの需要は弱含みましたが、パワーデバイス、アナログデバイス、センサー向けなどを中心に成長しました。FPD製造装置市場は、パネルメーカーが投資を控えている影響で縮小傾向が継続しました。 平均為替レートにつきましては、米ドルは前期比で約9円円安の140.85円、ユーロは前期比で約14円円安の152.20円となりました。 (当連結会計年度の経営成績) 経営指標 (億円) 第122期第123期増減率(%)売上高40,31441,8103.7%売上総利益18,27819,6897.7%営業費用14,74415,9358.1%営業利益3,5343,7546.2%営業外収益及び費用△10154-税引前当期純利益3,5243,90810.9%当社株主に帰属する当期純利益2,4402,6458.4% 1株当たり当社株主に帰属する当期純利益 基本的236.71264.2011.6%希薄化後236.63264.0811.6% 当連結会計年度は、製品の供給不足からの回復や、ネットワークカメラを始めとする新規事業が堅調に推移したことに加え、円安による好転影響もあり、当期の売上高は、前期比3.7%増の4兆1,810億円となり、過去最高の2007年に次ぐ水準となりました。 売上総利益率は、部品価格や物流費のコストダウンが進んだことに加え、円安影響により、前期を1.8ポイント上回る47.1%となり、売上総利益は前期比7.7%増の1兆9,689億円となりました。 営業費用は、販売活動が正常化したことによる販売関連費用の増加に加え、円安による外貨建ての営業費用の増加も影響し、前期比8.1%増の1兆5,935億円となりました。その結果、営業利益は前期比6.2%増の3,754億円となりました。 営業外収益及び費用は、昨年大きく発生した為替差損が減少した影響により、前期比で164億円好転し、154億円の収益となりました。これらの結果、税引前純利益は前期比10.9%増の3,908億円、当社株主に帰属する当期純利益は前期比8.4%増の2,645億円となり、3期連続の増収増益を達成しました。 基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ27円49銭増加し264円20銭となりました。 (セグメント別の経営成績) 以下の情報はセグメント情報に基づきます。セグメント情報に関する詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注23 セグメント情報」を参照ください。 プリンティングビジネスユニット経営指標 (億円) 第122期第123期増減率(%) プロダクション3,6214,01210.8% オフィス8,8729,83510.8% プロシューマー10,1689,550△6.1%外部顧客向け売上高合計22,66123,3973.2%セグメント間取引6564△2.7%売上高合計22,72623,4613.2%売上原価及び営業費用20,60221,1782.8%営業利益2,1242,2837.5%税引前当期純利益2,2622,3513.9% プリンティングビジネスユニットでは、プロダクション市場向け機器は、新製品imagePRESS V1350が加わりラインアップが拡充したこと、またColoradoシリーズの新製品も好評を博したことなどにより、販売台数は前期を上回りました。オフィス向け複合機は、供給不足からの回復が進み、また低中速カラー複合機のimageRUNNER ADVANCE DX C3900シリーズを中心に販売が堅調に推移し、販売台数は前期を上回りました。インクジェットプリンターは、在宅需要が一巡した影響により、高水準であった前期の販売台数を下回りました。レーザープリンターは、カラーの中高速機で好評を得た製品があったものの、全体としては企業の投資抑制が影響し、販売台数は前期を下回りました。 これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比3.2%増の2兆3,461億円となりました。税引前純利益は、コストダウン活動や物流費の削減が進んだことなどにより、前期比3.9%増の2,351億円となりました。 メディカルビジネスユニット経営指標 (億円) 第122期第123期増減率(%)外部顧客向け売上高合計5,1305,5237.7%セグメント間取引315389.8%売上高合計5,1335,5387.9%売上原価及び営業費用4,8235,2228.3%営業利益3103162.1%税引前当期純利益3193210.8% メディカルビジネスユニットでは、コロナ禍で控えられていた大型装置の投資が回復し、特に我が国や欧州地域において、MRI装置やX線診断装置、超音波診断装置の販売が好調に推移したことにより、当ユニットの売上高は前期比7.9%増の5,538億円となり、過去最高の売上となりました。税引前純利益は、販売力向上のための要員増強などに積極的に投資をした結果、前期比0.8%増の321億円となりました。 イメージングビジネスユニット経営指標 (億円) 第122期第123期増減率(%) カメラ5,0955,4446.9% ネットワークカメラ他2,9363,1718.0%外部顧客向け売上高合計8,0318,6157.3%セグメント間取引41△60.0%売上高合計8,0358,6167.2%売上原価及び営業費用6,7697,1605.8%営業利益1,2661,45615.0%税引前当期純利益1,2801,46414.4% イメージングビジネスユニットでは、レンズ交換式デジタルカメラは、一昨年発売したEOSR6 MarkⅡや昨年発売のエントリーモデルEOS R50やEOS R100など、ミラーレスカメラの新製品を中心に堅調に推移しました。レンズも、引き続きRFレンズが好調に推移しました。ネットワークカメラは、堅調な需要に加え用途の多様化を背景に販売活動を強化し、増収となりました。 これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比7.2%増の8,616億円となりました。税引前純利益は、付加価値の高いミラーレスカメラの売上構成比が高まったことやネットワークカメラが好調に推移したことから、前期比14.4%増の1,464億円となりました。 インダストリアルビジネスユニット経営指標 (億円) 第122期第123期増減率(%) 光学機器2,4032,125△11.6% 産業機器80591313.4%外部顧客向け売上高合計3,2083,038△5.3%セグメント間取引8410929.7%売上高合計3,2923,147△4.4%売上原価及び営業費用2,7122,561△5.6%営業利益5805861.0%税引前当期純利益592592△0.1% インダストリアルビジネスユニットでは、半導体露光装置は、引き続きパワーデバイス向けを中心に好調に推移しており、販売台数は前期を上回りました。一方、FPD露光装置は市況悪化に伴ってパネルメーカーが投資を控えている影響で、販売台数は前期を下回りました。 これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比4.4%減の3,147億円となりました。税引前純利益は、前期比0.1%減の592億円となりました。 (当連結会計年度の財政状態) (億円) 第122期(2022年12月31日)第123期(2023年12月31日)増減資産合計50,95554,1663,210 負債合計17,46518,109644 株主資本合計31,13133,5302,399 非支配持分2,3592,527168 純資産合計33,49036,0572,567負債及び純資産合計50,95554,1663,210株主資本比率(%)61.1%61.9%0.8% 当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末から3,210億円増加して5兆4,166億円となりました。円安の影響に加えて、ミナリスメディカル社等の買収によりのれんやその他取得資産が増加しました。また生産能力や効率性の向上を目的とした設備投資を継続したことにより固定資産は増加しました。 負債は前連結会計年度末から644億円増加して1兆8,109億円となりました。当連結会計年度では、東芝メディカルシステムズ(株)(現キヤノンメディカルシステムズ(株))を買収した際の買収資金を完済したことにより、長期債務は減少しましたが、運転資金の増加に伴って、短期借入金は増加しました。 純資産は、前連結会計年度末から2,567億円増加して3兆6,057億円となりました。当社株主への配当や自己株式の取得による減少の一方で、当社株主に帰属する当期純利益の積み増しにより利益剰余金は増加し、また円安によりその他の包括利益累計額は増加しました。 これらの結果、当連結会計年度末の株主資本比率は前連結会計年度末より0.8ポイント上昇して61.9%となりました。 ②キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響分を合わせて、前連結会計年度末から392億円増加し、4,013億円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー) 増益になったことや棚卸資産を削減したことで運転資本が改善したため、前連結会計年度末から1,886億円増加して、4,512億円の収入となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー) 体外診断用医薬品や自動分析装置に関する事業を展開するミナリスメディカル社の買収のほか、生産能力や効率性の向上を目的とした設備投資を継続したことにより、前連結会計年度末から946億円増加し、2,754億円の支出となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー) 前連結会計年度の期末配当と当連結会計年度の中間配当を増配したことで、配当金の支払いが前連結会計年度と比較し115億円増加し、さらに1,000億円の自己株式の取得による支出もあり、前連結会計年度と比較し99億円増加し、1,567億円の支出となりました。 また、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した、いわゆるフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度から940億円増加し、1,758億円の収入となりました。 詳細については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ⑤流動性と資金源泉 b.現金及び現金同等物」に記載のとおりであります。 ③生産、受注及び販売の実績a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度比(%)プリンティング1,796,38990.4メディカル559,705100.4イメージング886,888104.6インダストリアル331,52993.4その他及び全社59,08591.5消去△85,019-合計3,548,57795.6 (注)1. 金額は、販売価格によって算定しております。 2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。 b. 受注実績当社グループの生産は、当社と販売各社との間で行う需要予測を考慮した見込み生産を主体としておりますので、販売高のうち受注生産高が占める割合は僅少であります。従って受注実績の記載は行っておりません。 c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度比(%)プリンティング2,346,076103.2メディカル553,780107.9イメージング861,625107.2インダストリアル314,71995.6その他及び全社189,79189.4消去△85,019-合計4,180,972103.7 (注)1. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。2. 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとお りであります。 相手先第122期(2022年1月1日から2022年12月31日まで)第123期(2023年1月1日から2023年12月31日まで)販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)HP Inc.484,11112.0420,24610.1 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年3月28日)現在において判断しております。 はじめに 当社は、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアル、その他の製品を世界的に事業展開する企業グループであります。また、企業の成長と発展を果たすことにより、世界の繁栄と人類の幸福に貢献することを、経営理念としております。①主要業績評価指標 当社の事業経営に用いられる主要業績評価指標(Key Performance Indicators。以下「KPI」という。)は以下のとおりであります。(収益及び利益率) 当社は、真のグローバル・エクセレント・カンパニーを目指し邁進しておりますが、経営において重点を置いている指標の1つに収益が挙げられます。以下は経営者が重要だと捉えている収益に関連したKPIであります。 売上高はKPIの1つと考えております。当社は主に製品、またそれに関連したサービスから売上を計上しています。売上高は、当社製品への需要、会計期間内における取引の数量や規模、新製品の評判、また販売価格の変動といった要因によって変化し、その他にも市場でのシェア、市場環境等も売上高を変化させる要因です。さらに製品別の売上高は売上の中でも重要な指標の1つであり、市場のトレンドに当社の経営が対応しているかというような内容を測定するための目安となります。 売上総利益率は収益性を測るもう1つのKPIと考えております。当社はフェーズⅥの基本方針のもと、事業競争力を徹底的に強化し、価格競争力を持つ収益性の高い商品の提供を図っています。さらに、内製化や、設計・生産技術・製造現場が三位一体となった組み立ての自動化等のグループ一丸となった原価低減活動を推進しています。当社では、売上総利益率の向上に向けて、引き続きこれらの施策を推進してまいります。 営業利益率、税引前当期純利益率及び売上高研究開発費比率も当社のKPIとして考えており、これらについて当社は2つの面からの方策をとっております。1つは、販売費及び一般管理費そのものを統制し低減に努めていること、もう1つは将来の利益を生み出す技術に対する研究開発費を一定の水準に維持していくことです。現在の市場における優位性を保持しつつ、他市場における可能性も開拓していくために必要なことであり、そうした投資が将来の事業の成功の基盤となります。(キャッシュ・フロー経営) 当社はキャッシュ・フロー経営にも重点を置いております。以下の指標は、経営者が重要だと捉えているキャッシュ・フロー経営に関連したKPIです。 在庫回転日数はKPIの1つであり、サプライチェーン・マネジメントの成果を測る目安となります。棚卸資産は陳腐化及び劣化する等のリスクを内在しており、その資産価値が著しく下がることで、当社の業績に悪影響を及ぼすこともありえます。こうしたリスクを軽減するためには、サプライチェーン・マネジメントの強化により、棚卸資産の圧縮及び製品コスト等の回収を早期化させるために生産リードタイムを短縮させ、一方で販売の機会損失を防ぐため適正水準の製品在庫を保持していく活動の継続が重要であると考えられます。 また有利子負債依存度も当社のKPIの1つであります。当社のような製造業では、開発、生産、販売等のプロセスを経て、事業が実を結ぶまでには、一般に長い期間を要するため、堅固な財務体質を構築することは重要なことであると考えます。今後も当社は主に通常の営業活動からのキャッシュ・フローで、流動性の維持や設備投資に対応してまいりますが、大きな成長投資を決断した際には借入金を活用することも想定しております。 総資産に占める株主資本の割合を示す株主資本比率も、当社におけるKPIの1つとしております。株主資本を潤沢に持つことは、長期的な視点に立って高水準の投資を継続することにつながり、短期的な業績悪化にも揺るがない事業運営を可能にします。特に、研究開発に重点を置く当社にとっては、財務の安全性を確保することは、非常に重要なことであると考えられます。一方で、成長投資のため負債を有効活用するなど、資本構成の最適化にも留意してまいります。(株主資本収益性) 株主資本に対する当期純利益の割合を示す株主資本利益率も、当社におけるKPIの1つとしております。事業構造の見直しや経費の効率化により、収益性の向上を図り、在庫水準の適正化や生産拠点の集約化により、資産効率の向上を図ってまいります。また、財務の健全性を維持しながらも成長のための投資を実現するため、負債の有効活用を行うなど、適正な資本構成を構築し、株主資本の収益性を向上させてまいります。②重要な会計方針及び見積り 当社の連結財務諸表は、米国会計基準に基づいて作成されております。また当社は、連結財務諸表を作成するために、種々の見積りと仮定を行っております。これらの見積り及び仮定は将来の市場状況、売上増加率、利益率、割引率等の見積り及び仮定を含んでおります。当社は、これらの見積り及び仮定は合理的であると考えておりますが、実際の業績は異なる可能性があります。また、パンデミックや地政学的リスク、さらにはインフレに伴う景気減速のリスク等により、当社の業績が経営者の仮定及び見積りとは異なる可能性があります。当社は、現在当社の財政状態及び経営成績に影響を与えている会計方針を適用するにあたり、以下の事項がより重要な判断事項であると考えています。a.長期性資産の減損 基準書360「有形固定資産」に準拠し、有形固定資産や償却対象の無形固定資産などの長期性資産は、帳簿価額が回収できないという事象や状況の変化が生じた場合に、減損に関する検討を実施しております。帳簿価額が割引前将来見積キャッシュ・フローの総額を上回っていた場合には、帳簿価額が公正価値を超過する金額について減損を認識しております。公正価値の決定は、見積り及び仮定に基づいて行っております。b.有形固定資産 有形固定資産は取得原価により計上しております。減価償却方法は、定額法で償却している一部の資産を除き、定率法を適用しております。c.棚卸資産 棚卸資産は、低価法により評価しております。原価は、国内では平均法、海外では主として先入先出法により算出しております。d.リース 当社は、貸手のリースでは主にオフィス製品の販売においてリース取引を提供しております。販売型リースでの機器の販売による収益は、リース開始時に認識しております。販売型リース及び直接金融リースによる利息収益は、それぞれのリース期間にわたり利息法で認識しております。これら以外のリース取引はオペレーティングリースとして会計処理し、収益はリース期間にわたり均等に認識しております。機器のリースとメンテナンス契約が一体となっている場合は、リース要素と非リース要素の独立販売価格の比率に基づいて収益を按分しております。通常、リース要素は、機器及びファイナンス費用を含んでおり、非リース要素はメンテナンス契約及び消耗品を含んでおります。一部の契約ではリースの延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約の大部分は、顧客の割安購入選択権を含んでおりません。 借手のリースでは建物、倉庫、従業員社宅、及び車輛等に係るオペレーティングリース及びファイナンスリースを有しております。当社は、契約開始時に契約にリースが含まれるか決定しております。一部のリース契約では、リース期間の延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約には、重要な残価保証または重要な財務制限条項はありません。当社のリースの大部分はリースの計算利子率が明示されておらず、当社はリース料総額の現在価値を算定する際、リース開始時に入手可能な情報を基にした追加借入利子率を使用しております。当社のリース契約の一部には、リース要素及び非リース要素を含むものがあり、それぞれを区分して会計処理しております。当社はリース要素と非リース要素の見積独立価格の比率に基づいて、契約の対価を按分しております。オペレーティングリースに係る費用は、そのリース期間にわたり定額法で計上されております。 e.企業結合 企業買収は取得法で処理しております。取得法では、取得した契約資産及び契約負債を除く、全ての有形及び無形資産並びに引き継いだ全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率、資本収益率、及びその他の利用可能な市場データに基づく見積りなどの、重要な判断や見積りを伴います。また、将来キャッシュ・フローの予測は、被買収会社の実績や、過去及び将来に想定される趨勢、市場や経済状況などの多くの要素に基づいております。取得した契約資産及び契約負債は、基準書606「顧客との契約からの収益」に準拠し認識及び測定しております。f.のれん及びその他の無形固定資産 のれん及び耐用年数が確定できないその他の無形固定資産は償却を行わず、代わりに毎年第4四半期に、または潜在的な減損の兆候があればより頻繁に減損テストを行っております。全てののれんは、企業結合のシナジー効果から便益を享受する報告単位に配分されます。報告単位の公正価値が、当該報告単位に割り当てられた帳簿価額を下回る場合には、当該差額をその報告単位に配分されたのれんの帳簿価額を限度とし、のれんの減損損失として認識しております。報告単位の公正価値は、主として割引キャッシュ・フロー分析に基づいて決定されており、将来キャッシュ・フロー及び割引率等の見積りを伴います。将来キャッシュ・フローの見積りは、主として将来の成長率に関する当社の予測に基づいております。割引率の見積りは、主として関連する市場及び産業データ並びに特定のリスク要因を考慮した、加重平均資本コストに基づいて決定しております。2022年第4四半期及び2023年第4四半期に行った減損テストの結果、個々の報告単位の公正価値は帳簿価額を超過しており、減損が認識された報告単位はありません。しかし、メディカル報告単位に帰属するのれんについては、公正価値が帳簿価額を超過する割合が他の報告単位と比べて低くなっており、将来キャッシュ・フローが想定よりも減少した場合、減損損失を認識する可能性があります。なお、当該報告単位に帰属するのれんの帳簿価額は565,687百万円となっております。当該報告単位の将来キャッシュ・フローの見積りは、今後の医療機器市場の成長や事業活動地域の成長を考慮した上で立案された中期経営計画に基づいております。 耐用年数の見積りが可能な無形固定資産は、主としてソフトウェア、商標、特許権及び技術資産、ライセンス料、顧客関係であります。なお、ソフトウェアは主として3年から8年で、商標は15年で、特許権及び技術資産は9年から21年で、ライセンス料は7年で、顧客関係は14年から16年で定額償却しております。 g.法人税等の不確実性 当社は、法人税等の不確実性の評価及び見積りにおいて多くの要素を考慮しており、それらの要素には、税務当局との解決の金額及び可能性、並びに税法上の技術的な解釈を含んでおります。不確実性に関する実際の解決が見積りと異なるのは不可避的であり、そのような差異が連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。h.繰延税金資産の評価 当社は、繰延税金資産に対して定期的に実現可能性の評価を行っております。繰延税金資産の実現は、主に将来の課税所得の予測によるところが大きく、課税所得の予測は将来の市場動向や当社の事業活動が順調に継続すること、その他の要因により変化します。課税所得の予測に影響を与える要因が変化した場合には評価性引当金の設定が必要な場合があり、当社では繰延税金資産の実現可能性がないと判断した際には、繰延税金資産を修正し、損益計算書上の法人税等に繰り入れ、当期純利益が減少いたします。i.未払退職及び年金費用 未払退職及び年金費用は数理計算によって認識しており、その計算には前提条件として基礎率を用いています。割引率、期待運用収益率といった基礎率については、市場金利などの実際の経済状況を踏まえて設定しております。その他の基礎率としては、昇給率、死亡率などがあります。これらの基礎率の変更により、将来の退職及び年金費用が影響を受ける可能性があります。 基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。これにより実際の結果は、通常、将来の年金費用に影響を与えます。当社はこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果との差異は将来の年金費用に影響を及ぼす可能性があります。 当連結会計年度の連結財務諸表の作成においては、給付債務の計算に使用する割引率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で1.5%、3.7%を、長期期待収益率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で3.2%、5.7%を使用しております。割引率を設定するにあたっては、現在利用可能で、かつ、年金受給が満期となる間に利用可能と予想される高格付けで確定利付の公社債の収益率に関し利用可能な情報を参考に決定しております。また長期期待収益率の設定にあたっては、年金資産が構成される資産カテゴリー別の過去の実績及び将来の期待に基づいて収益率を決定しております。 割引率の低下(上昇)は、勤務費用及び数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるとともに、利息費用を減少(増加)させます。割引率が0.5%低下した場合、予測給付債務は約733億円増加します。割引率の低下(上昇)による影響は、数理計算上の他の前提条件の変更による影響と同様に、翌期以降に繰り延べられます。 長期期待収益率の低下(上昇)は、期待運用収益を減少(増加)させ、かつ数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるため、期間純年金費用を増加(減少)させます。長期期待収益率が0.5%低下した場合、期間純年金費用は約55億円増加します。 これにより年金制度の積立状況(すなわち、年金資産の公正価値と退職給付債務の差額)を連結貸借対照表で認識しており、対応する調整を税効果調整後で、その他の包括利益(損失)累計額に計上しております。 j.収益認識 当社は、主にプリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの各ビジネスユニットの製品、消耗品並びに関連サービス等の売上を収益源としており、それらを顧客との個別契約に基づき提供しております。当社は、約束した財またはサービスの支配が顧客に移転した時点、もしくは移転するにつれて、移転により獲得が見込まれる対価を反映した金額により、収益を認識しております。 プリンティングビジネスユニットの製品(オフィス向け複合機、レーザープリンター、インクジェットプリンター等)及びイメージングビジネスユニットの製品(デジタルカメラ等)の販売による収益は、製品の支配を顧客がいつ獲得するかにより、主に出荷または引渡時点で認識しております。 また、メディカルビジネスユニットの製品(CT装置やMRI装置等)及びインダストリアルビジネスユニットの製品(半導体露光装置やFPD露光装置等)の販売にあたり、機器の性能に関して顧客検収を要する場合は、機器が顧客の場所に据え付けられ、合意された仕様が客観的な基準により達成されたことを確認した時点で、収益を認識しております。 当社のサービス売上の大部分は、プリンティングの製品及びメディカルの製品のメンテナンスサービスに関連するものであり、一定期間にわたり認識しております。プリンティングの製品のサービス契約は、通常、顧客は、機器の使用量に応じた従量料金、固定料金、または、基本料金に加えて使用量に応じた従量料金を支払う契約であり、修理作業及び消耗品の提供を含んでおります。プリンティングの製品のサービス契約による収益の大部分は、顧客への請求金額が、履行義務の充足に伴い顧客に移転した価値と直接対応していることから、顧客への請求金額により収益を計上しております。メディカルの製品のサービス契約は、通常、顧客は、当社が提供する待機サービスの対価として、固定料金を支払っており、当社は契約期間にわたり均等に収益を認識しております。 プリンティングの製品に関するサービス契約の多くは、関連する製品販売契約と一体で実行されます。製品及びサービスの取引価格は、独立販売価格の比率に基づいて各履行義務に配分される必要があり、その配分には判断が伴います。独立販売価格は、市場の状況及びその他観察可能なインプットを含む合理的に入手可能な全ての情報に基づき、配分の目的に合致するように設定された価格のレンジを用いて見積もられています。製品またはメンテナンスサービスの取引価格が設定されたレンジを外れる場合は、見積独立販売価格に基づき取引価格は配分されることになります。契約獲得の追加コストは、関連するプリンティングの製品が販売された時に、費用として認識しております。 転用可能性がなく、かつ完了した成果に対して顧客から支払いを受ける強制力のある権利を有している一部の産業機器の販売契約(以下「長期契約」)に関する収益は一定期間にわたり認識しており、コストを基礎とする進捗度に基づき、完成時の見積り利益の当期進捗分を含む収益が当期に認識されます。未完成の長期契約に関する損失は、損失が発生することが明らかになった期に認識されます。長期契約に関する作業実績や作業状況、想定される収益性の変化や最終的な契約条項がコストや収益の見積りに与える影響は、それらが識別され合理的に見積り可能になった期に認識されます。将来コストや完成時の利益に影響を与える要素は生産効率、労働力や資材の利用可能性とコストを含み、これらの要素は見積もりの正確性に影響し、将来の収益と売上原価に重要な影響を与えることがあります。 財またはサービスの移転と交換に当社が受け取る取引価格は、値引き、顧客特典、売上に応じた割戻し等の変動対価を含んでおります。変動対価は、主として、販売代理店や小売店が主要顧客であるイメージングの製品の販売に関連しております。当社は、変動対価に関する不確実性が解消された時点で収益認識累計額の重要な戻し入れが生じない可能性が高い範囲で、変動対価を取引価格に含めております。変動対価は、過去の傾向や売上時点におけるその他の既知の要素に基づいて見積もっており、直近の情報に基づき定期的に見直しております。また、当社は、販売後の短期間、顧客に製品の返品権を付与することがあり、当該返品権により予想される返品を考慮し決定された取引価格に基づき収益認識をしております。 当社は、連結損益計算書の収益について、顧客から徴収し政府機関へ納付される税金を除いて表示しております。 k.信用損失引当金 信用損失引当金は、過去の信用損失の経験と合理的かつ裏付け可能な予測を踏まえつつ、基準書326(「金融商品-信用損失」)に基づいて、全ての債権計上先を対象として計上しております。また当社は、破産申請など顧客の債務返済能力がなくなったと認識した時点において、顧客ごとに信用損失引当金を積み増しております。債権計上先をとりまく状況に変化が生じた場合は、債権の回収可能性に関する評価はさらに調整されます。法的な償還請求を含め、全ての債権回収のための権利を行使してもなお回収不能な場合に、債権の全部または一部を回収不能とみなし、信用損失引当金を取り崩しております。 l.環境負債 環境浄化及びその他の環境関連費用に係る負債は、環境アセスメントあるいは浄化努力が要求される可能性が高く、その費用を合理的に見積ることができる場合に認識しており、連結貸借対照表のその他の固定負債に含めております。環境負債は、事態の詳細が明らかになる過程で、あるいは状況の変化の結果によりその計上額を調整しております。その将来義務に係る費用は現在価値に割引いておりません。 m.新会計基準 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注1 (24)新会計基準」に記載のとおりであります。③当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容a.売上高 当連結会計年度は、ウクライナ情勢や中東での軍事衝突など不安定な状況が継続しましたが、長期にわたり経済活動を制限したコロナ禍の収束などにより、緩やかに回復しました。こうした中、製品の供給不足からの回復や、ネットワークカメラを始めとする新規事業が堅調に推移し、売上高は前連結会計年度比3.7%増の4兆1,810億円となり、過去最高の2007年に次ぐ水準となりました。製品売上高及びサービス売上高は前連結会計年度比でそれぞれ、2.6%増の3兆3,146億円、8.4%増の8,663億円となりました。 当連結会計年度の海外での売上高は、連結売上高の78.4%を占めます。海外での売上高の計算は、円と外貨の為替レートの変動に影響されます。製品の現地生産及び海外からの部品や材料調達等によりその影響を抑えておりますが、為替レートの変動は当社の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。 当連結会計年度の米ドル及びユーロの平均為替レートはそれぞれ140.85円及び152.20円と、前連結会計年度に比べて米ドルは約9円円安、ユーロは約14円円安で推移しました。米ドルとの為替レートの変動により約893億円の売上高増加、ユーロとの変動で約915億円の売上高増加、その他の通貨との変動で約77億円の売上高増加影響がありました。その結果、当連結会計年度の為替による売上高の増加影響は約1,885億円となりました。 b.売上原価 売上原価は、主として原材料費、購入部品費、工場の人件費から構成されます。原材料費のうち海外調達される原材料については、海外の市場価格や為替レートの変動による影響を受け、当社の売上原価に影響を与えます。売上原価にはこれらの他に有形固定資産の減価償却費、修繕費、光熱費、賃借料などが含まれております。当連結会計年度は部品や物流価格も落ち着きを見せ下期からはコストダウンが進展しました。その結果、売上高に対する売上原価の比率は、当連結会計年度は52.9%となり、前連結会計年度54.7%より1.8ポイント低減しました。 c.売上総利益 当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度と比べ7.7%増加の1兆9,689億円となりました。また売上総利益率は、前連結会計年度より1.8ポイント好転し47.1%となりました。売上総利益の増加は、部品価格や物流費のコストダウンが進んだことと円安影響によるものです。 d.営業費用 営業費用は、主に人件費、研究開発費、広告宣伝費であります。営業費用は、販売活動が正常化したことによる販売関連費用の増加に加え、円安による外貨建ての営業費用の増加などにより、前期比8.1%増の1兆5,935億円となり、当連結会計年度売上高に対する経費率は前連結会計年度より1.6ポイント悪化し、38.1%となりました。 e.営業利益 当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度比6.2%増加の3,754億円でありました。営業利益率は0.2ポイント好転して9.0%となりました。 f.営業外収益及び費用 当連結会計年度の営業外収益及び費用は、昨年大きく発生した為替差損が減少した影響により、前連結会計年度から164億円好転し、154億円の収益となりました。 g.税引前当期純利益 当連結会計年度の税引前当期純利益は3,908億円で、前連結会計年度比10.9%の増益となりました。また、売上高に対する比率は9.3%でした。 h.法人税等 当連結会計年度の法人税等は140億円増加し、実効税率は27.2%でした。実効税率が日本の法定実効税率を下回っているのは、主に試験研究費の税額控除や海外子会社で適用される税率が日本の法定実効税率より低いためです。 i.当社株主に帰属する当期純利益 当連結会計年度の当社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比8.4%の増益である2,645億円となりました。また、売上高当期純利益率は6.3%となりました。 ④海外事業と外国通貨による取引 当社の販売活動は様々な地域で現地通貨により行っている一方、売上原価は円の占める割合が比較的高くなっております。当社の現在の事業構造を鑑みると、円高影響は売上高や売上総利益率に対してマイナス要因となります。こうした為替相場の変動による財務リスクを軽減することを目的に、当社は為替先物契約を主とした金融派生商品を利用した取引を実施しております。 海外における売上高利益率は、主に販売活動を中心としているため、国内の売上高利益率と比較すると低くなっております。一般的に販売活動は、当社が行っている生産活動ほど収益性は高くありません。地域別セグメント情報に関する詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注23 セグメント情報」を参照ください。 ⑤流動性と資金源泉a.キャッシュ・フロー経営の基本原則 当社は財務戦略の基本方針に「キャッシュ・フロー経営の徹底による健全な財務体質の維持」を掲げ、以下の2点をキャッシュ・フロー経営の基本原則としております。 1.現行事業の収益性をさらに改善し新規事業の成長スピードを高めることにより、高収益体質の向上に努めます。2.事業の中期的な拡大・成長に必要な設備投資は原則として減価償却費の範囲内に収め、財務健全性の維持に努めます。ただし、成長戦略の為の設備投資やM&A等の状況により、必要に応じて外部からの資金調達も実施します。 資金の調達(Cash-In)事業活動からの利益をベースとする営業活動によるキャッシュ・フローを原資とします。資金調達を行う際は、金融市場の状況を鑑みて、期間・通貨・手法を検討し、多様な選択肢から最適な手段を選定します。 資金の使途(Cash-Out)資金の主な使途は以下の優先順位に則り決定しております。 1.成長投資:設備投資・研究開発やM&AなどM&Aは新規事業の成長を補完する選択肢として重視しております。投資対象先の選定にあたり、市場の成長性・規模、当社の事業領域・技術との親和性の高い市場であることを基準としております。2.株主還元中長期的な業績の見通しに加え、将来の投資計画やキャッシュ・フローなどを総合的に勘案しております。配当は配当性向50%を目途に実施し、自己株式の取得も検討しつつ、安定的かつ積極的な利益還元を実現します。3.借入金返済健全な財務体質維持のため借入金返済を着実に進め、事業の拡大・成長に必要な投資に備えて、十分な資金調達余力を確保してまいります。 b.現金及び現金同等物キャッシュ・フローの推移 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度から392億円増加して、4,013億円となりました。当社の現金及び現金同等物は主に円と米ドルを中心としておりますが、その他の外貨でも保有しております。 営業活動によるキャッシュ・フロー 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、増益になったことや棚卸資産を削減したことで運転資本が改善したため、前期比1,886億円増加し、4,512億円の収入となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に顧客からの現金受取によるキャッシュ・イン・フローと、部品や材料、販売費及び一般管理費、研究開発費、法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローとなっております。当連結会計年度におけるキャッシュ・イン・フローの増加は、主に売上高の増加に伴い、顧客からの現金回収が増加したことによります。当社の回収率に重要な変化はありません。キャッシュ・アウト・フローの増加は、売上増に伴う部品や材料の支払いの増加や、販売活動が正常化したことによる販売関連費用の増加などによるものです。法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローの増加は、課税所得の増加によるものです。 投資活動によるキャッシュ・フロー 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、生産能力、効率性の向上を目的とした設備投資を継続したことにより、固定資産購入額は前連結会計年度より418億円増加して、当連結会計年度は2,303億円となりました。また、当期は体外診断用医薬品や自動分析装置に関する事業を展開するミナリスメディカル社の買収等、事業取得額が増加したことなどにより、前連結会計年度より946億円増加し2,754億円の支出となりました。 フリーキャッシュ・フロー 当社は、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した純額をフリーキャッシュ・フローと定義しており、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度の818億円から、940億円増加し、1,758億円の収入となりました。 当社は、キャッシュ・フロー経営に重点を置き、フリーキャッシュ・フローを常時モニタリングしております。フリーキャッシュ・フローは当社の現在の流動性や財務活動の使途を理解する上で重要であり、また投資家にも有用であると考えております。当社は資金の調達源泉を明らかにするために、米国会計基準による連結キャッシュ・フロー計算書や連結貸借対照表と併せて、米国会計基準以外の財務指標(Non-GAAP財務指標)である、フリーキャッシュ・フローを分析しております。なお、最も直接的に比較可能な米国会計基準に基づき作成された指標とフリーキャッシュ・フローの照合調整表は以下のとおりです。 (億円) 第122期第123期増減営業活動によるキャッシュ・フロー2,6264,512+1,886投資活動によるキャッシュ・フロー△1,808△2,754△946フリーキャッシュ・フロー8181,758+940財務活動によるキャッシュ・フロー△1,468△1,567△99為替変動の現金及び現金同等物への影響額258201△57現金及び現金同等物の増減△393392+785現金及び現金同等物の期首残高4,0143,621△393現金及び現金同等物の期末残高3,6214,013+392 財務活動によるキャッシュ・フロー 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、東芝メディカルシステムズ(株)(現キヤノンメディカルシステムズ(株))を買収した際の買収資金について540億円の返済を行い、長期債務は全額返済となりました。さらには1,000億円の自己株式取得を実施し、また、増配したことで配当金の支払いが前期から115億円増加しました。一方で、運転資金の増加に伴う短期借入金の増加などがあり、1,567億円の支出となりました。なお、当連結会計年度の配当金の支払額は、1株当たり130.00円を実施しました。東芝メディカルシステムズ(株)(現キヤノンメディカルシステムズ(株))を買収した際の借入金の残高推移は以下のとおりであります。 当社は、流動性や必要資本を満たすため、増資、社債発行、借入といった外部からの様々な資金調達方法をとることが可能です。当社は、これまでどおりの資金調達や資本市場からの資金調達が可能であり、また将来においても可能であり続けると認識しておりますが、経済情勢の急激な悪化やその他状況によっては、当社の流動性や将来における長期の資金調達に影響を与える可能性があります。 当社の長期債務は、主に銀行借入とリース債務によって構成されています。 格付け 当社は、グローバルな資本市場から資金調達をするために、格付機関であるS&Pグローバル・レーティングから信用格付を得ております。それに加えて、当社は日本の資本市場からも資金調達するために、日本の格付会社である格付投資情報センターからも信用格付を得ております。2024年2月29日現在、当社の負債格付は、S&Pグローバル・レーティング:A(長期)/A-1(短期)、格付投資情報センター:AA(長期)であります。当社では、現時点で負債の返済を早めるような格付低下の要因は発生しておりません。当社の信用格付が下がる場合は、借入コストの増加につながります。 c.在庫の適正化 当社の最新の在庫水準の最適化の方針は、運転資金を最小化し、在庫の陳腐化のリスクを避け、一方で予期せぬ天災発生時でも販売活動を継続できるようにするため、適切なバランスを維持していくことであります。当社の在庫回転日数は、当連結会計年度、前連結会計年度末時点でそれぞれ、66日、69日となりました。在庫回転日数減少の主な要因は、前連結会計年度末に保持していた世界的な半導体不足や国際物流逼迫対応のための電子部品や原材料・重要部品などの安全在庫等を徹底的に見直し、主に販売会社の製品在庫を削減したことなどによるものであります。 d.設備投資 当社は積極的な業績拡大に資する投資を行う一方、総額は減価償却費の範囲内に収めることでフリーキャッシュ・フローを安定的に創出するなど、財務基盤を強固にするキャッシュ・フロー経営を徹底しています。当連結会計年度における設備投資は、前連結会計年度の1,566億円から445億円増加し、2,011億円になりました。翌連結会計年度につきましては、引き続き成長のための設備投資を行うことにより、当社の設備投資は2,100億円の見込みであります。 e.退職給付債務への事業主拠出 当社の確定給付型年金への拠出額は、当連結会計年度516億円、前連結会計年度317億円であり、確定拠出型年金への拠出額は、当連結会計年度277億円、前連結会計年度243億円であります。また、一部の子会社が加入している複数事業主制度への拠出額は、当連結会計年度54億円、前連結会計年度47億円であります。 f.運転資本 当連結会計年度における運転資本(流動資産から流動負債を控除した額)は、前連結会計年度の7,906億円から57億円減少し、7,849億円になりました。減少の主な要因は、流動負債である短期借入金(1年以内に返済する長期債務を含む)の増加によるものです。当社の運転資本は、予測できる将来需要に対して十分であると認識しております。当社の必要資本は、設備投資に関わる支出の水準及び時期といった全社的な事業計画に基づいております。流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は、当連結会計年度は1.55、前連結会計年度は1.58であります。 g.総資本当社株主に帰属する当期純利益率 総資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の総資産平均で除した割合)は、当連結会計年度では5.0%、前連結会計年度も5.0%であります。 h.株主資本当社株主に帰属する当期純利益率 株主資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の株主資本平均で除した割合)は、当連結会計年度では8.2%です。増益による利益剰余金の増加や円安による為替換算調整額の増加に伴い株主資本は増加しましたが、当期純利益も増加し、前連結会計年度の8.1%から改善しました。 i.有利子負債依存度 当社はフェーズⅥにてキャッシュ・フロー経営の徹底を重点項目の一つとしており、財務基盤の再強化を進めています。当連結会計年度では東芝メディカルシステムズ(株)(現キヤノンメディカルシステムズ(株))を買収した際の買収資金について、当期に540億円の残額すべての返済を行い完済しました。一方で、運転資金の増加に伴い短期借入金が増加しました。その結果、当連結会計年度における短期借入金、短期オペレーティングリース負債、長期借入金、及び長期オペレーティングリース負債は、前連結会計年度末の4,174億円から999億円増加し5,173億円となり、有利子負債依存度(総資産に対する有利子負債の割合)は9.6%と前連結会計年度の8.2%から1.4%増加しました。 j.株主資本比率 株主資本比率(株主資本を総資産で除した割合)は、増益による利益剰余金の増加や、円安によるその他の包括利益累計額の増加等のため純資産が増加したことなどにより、当連結会計年度は61.9%と前連結会計年度の61.1%から0.8%増加いたしました。 ⑥知的財産戦略1.基本方針当社は、独自技術で差別化した魅力的な質の高い製品・サービスにより、新市場や新規顧客を開拓する研究開発型企業として発展してきました。知的財産部門は、事業の発展を支援することを重視し、これからの時代を先読みし、10年後、20年後の姿を描き、知的財産戦略を策定・実行しています。当社の知的財産戦略の基本戦略は下記4つとしております。 (1)コアコンピタンス技術に関わる特許は、競争領域において事業を守る特許としてライセンスせず、 競争優位性の確保に活用する。(2)通信、GUIなどの汎用技術に関わる協調領域の特許をクロスライセンスなどに利用することで、 研究開発や事業の自由度を確保する。(3)他社の知的財産権を尊重する。一方でキヤノンの知的財産権の侵害に対しては毅然と対応する。(4)他社が容易に到達できない検証困難な発明は、ノウハウとして秘匿し守ることで、他社の追従を 許さず、競争優位性を確保する。 2.知的財産ポートフォリオの基本的な考え方当社は、さまざまな環境変化から次の時代の社会や経済の流れを読み取り、知的財産戦略を策定・実行しています。知的財産ポートフォリオは、変化する経営・事業を支援し企業価値を向上させるために最大限活用するものと位置付けており、その構成は、さまざまな環境変化(サプライチェーン、経済安全保障、環境配慮要請、AI/IoTによる技術革新、デジタルサービスの拡大等)から次の時代を見据え、経営戦略・事業戦略と連動させながら、常に変化させています。事業のコアコンピタンスに関わる知的財産権の取得はもちろん、時代を先取りした知的財産権(例えば、AI/IoT技術や標準技術、環境関連技術に関わる知的財産権、パートナー創りのための知的財産権)の取得にも大きなリソースを投入し、新たな事業の創出のために様々な業界の企業との交渉にも備えています。このようにして構築した知的財産ポートフォリオを保有することにより、競争優位性の確保と将来事業の自由度の確保を両立させています。当社は、全世界で特許・実用新案を約8万3千件保有しています(2023年12月現在)。日本国内はもとより海外での特許取得も重視しており、地域ごとの事業戦略や技術・製品動向を踏まえた上で特許の権利化を推進しています。特に米国は、世界最先端の技術をもつ企業が多く市場規模も大きいことから、米国での特許出願については、事業拡大、技術提携の双方の視点から注力しており、米国の特許登録件数ランキングは38年連続で5位以内を維持しています。 3.事業の発展を支える知的財産ポートフォリオ当社は、グローバル優良企業グループ構想フェーズVIにおいて、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの各グループの事業競争力の強化を掲げ、次世代商業印刷、次世代ヘルスケア、ボリュメトリックビデオやXRなどの3Dイメージング、次世代半導体製造、デジタルソリューションサービスといった将来のビジネス創出にも力を入れています。知的財産部門は、これら事業が発展・成長するために、光学技術、映像処理・解析技術などのコアコンピタンス技術、AI・IoTを組み入れたサイバー&フィジカルシステムに欠かせない技術、標準技術、環境配慮技術などに関する知的財産の創出・権利化に力を入れています。 Ⅰ.プリンティンググループオフィス向け機器を始めとする様々な機器とシステムとを連携するサイバーフィジカルシステムを支える知的財産を創出しています。様々な機種のプリンターに共通して搭載されるコントローラ/エンジンの基盤技術やプリンターに付加価値を提供するクラウドの基盤技術に加え、プリンターの環境対応技術や、AIを利活用した新たな印刷ソリューションなどこれからの時代に対応する技術に関する特許ポートフォリオを構築しています。 Ⅱ.メディカルグループプレシジョン・メディシン(個別化医療)の提供へと進化するAIソリューション、フォトンカウンティングCTなど、医療現場に次々と提供される新たな価値を創造する技術を保護する知的財産ポートフォリオを構築するとともに、知的財産活動を通じてグループ内の技術シナジーの実現およびグローバルに加速される臨床研究を推進し、画像診断領域の競争力のさらなる強化とヘルスケアITや体外診断などへの事業領域の拡大に貢献しています。 Ⅲ.イメージンググループミラーレスカメラに加え、映像制作用カメラや監視用カメラなどの領域では高度な光学技術だけでなく、ネットワーク技術を組み合わせた知的財産を創出。さらにボリュメトリックビデオやXRなどの3Dイメージング技術や、暗闇でも数km先の被写体を鮮明に捉えられるSPADセンサー等、次世代のエンターテインメントや社会の安全・安心を支える領域でも特許ポートフォリオを強化しています。 Ⅳ.インダストリアルグループ露光装置、ダイボンダー、有機ELディスプレイ製造装置、スパッタリング装置などの製造装置に加え、Lithography Plusなどの製造ソリューションサービスに関する知財創出にも注力しています。昨年製品がリリースされたナノインプリントリソグラフィでは産学官連携やグループ会社連携を利用し、光学や材料分野の要素技術、装置技術から半導体製造プロセスまで強靭な特許網を構築しています。 Ⅴ. 未来を切り拓く技術本社研究開発部門等で研究が進む、3Dプリンター用セラミックス、鉛フリー圧電体、全固体電池用材料などのサステナビリティ実現のための新素材・デバイス技術、3Dイメージングに必要なデジタル要素技術、超大型望遠鏡赤外イマージョン回折素子、人工衛星などの宇宙科学技術の分野で、世界初・最先端のコア技術の特許ポートフォリオ形成に注力しています。 Ⅵ. 標準化への取組み海外研究所の標準化エキスパートと協働し、標準化団体への積極的な参画を通して世界の技術発展に貢献。移動体通信(5G,6Gなど)、無線LAN(Wi-Fiなど)、動画圧縮(HEVC,VCCなど)、無線電力伝送(Qiなど)、ファイルフォーマット(HEIF,OMAFなど)など次世代の技術標準を構成する特許ポートフォリオを拡大し、キヤノンの知財競争力を強化しています。 4.組織体制当社では、当社の知的財産法務本部と各グループ会社の知的財産部門との間で、知的財産の取り扱いに関する役割と責任、活動方針の策定プロセスなどを取り決めたグローバルマネジメントルールを策定しています。これにより、当社全体の知的財産活動を統制し、知的財産ポートフォリオの最適化を図りつつ、必要に応じて知的財産法務本部と各グループ会社が協働で訴訟やライセンス活動を行い、利益の最大化を図っています。 5.知財教育・知財人財の育成当社では、OJTを重視しつつ、目的に応じた知財教育を計画的に実施し、知財活動を全社へ浸透させています。全従業員に対する階層別研修、事業・開発部門に対する発明創出やクリアランス調査の研修を実施し、また、全社横断の発明啓発イベントも行っています。知財部門では、権利形成や調査分析に留まらず、権利活用や戦略立案などの専門性を高め、視座の高い人財の育成を行っています。これにより、世界トップクラスの知財人財を創り出し、企業価値向上に資する知財活動を展開しています。 6. オピニオンリーダーとしての活動当社は、日本の産業の振興、ひいては世界の産業の振興への貢献をめざし、知的財産の業界をリードする活動を積極的に行っています。2014年には、LOT(License on Transfer)ネットワークを他社とともに設立し、自らは事業を行わず特許訴訟を脅しに利益を得るPAE(Patent Assertion Entity)による不当な特許訴訟から会員企業を守る仕組みを構築しました。2024年1月時点で3,500社以上が会員企業になっています。また、2019年より、世界知的所有権機関(WIPO)が運営する、環境技術の活用を促進するためのプラットフォームであるWIPO GREENにパートナーとして参加し、WIPOと協力して環境技術の普及を行っています。さらに、各国特許庁の長官と意見交換を行い、よりよい知的財産システム(環境/制度/施策)の確立に貢献しています。 当社の知的財産活動に関するその他の情報は、当社ウェブサイト(https://global.canon/ja/intellectual-property/)に掲載しております。 ⑦トレンド情報 当社は、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの分野において、開発、生産から販売、サービスにわたる事業活動を営んでおります。 Ⅰ.プリンティングビジネスユニット 当社は、家庭向け、オフィス向け、プロダクションプリント向けのインクジェットプリンター、レーザープリンター、複合機の開発・製造・販売及びメンテナンス、アフターサービスを行うとともに、ソフトウェア及びサービス、ソリューションビジネスを通して顧客に付加価値を提供しています。 プロダクションプリントについては、新たに「imagePRESS Vシリーズ」として、高い生産性と堅牢性により大量出力物の短納期化を実現するフラッグシップモデル「imagePRESS V1350」、多種多様な用紙の高速出力により少量多品種印刷ビジネスを支援する「imagePRESS V1000」、オペレーターの作業負荷を軽減するコンパクトな本体サイズの「imagePRESS V900」の3機種を発売しラインアップを一新、様々な商業印刷のニーズに対応しました。加えて、リモート印刷管理アプリケーション「PRISMAremote Manager」との組み合わせにより印刷状況を可視化することで、ダウンタイムの削減にも貢献しています。 大判インクジェットプリンターについては、アート系プロフェッショナルの高い画質要求に応えるべく、新開発した12色の「LUCIA PROインク」により色の再現性や暗部領域での表現力を大幅に向上させた「imagePROGRAF PROシリーズ」を提供しています。また、設計事務所などでの図面大量出力から、企業・店舗でのCAD・ポスターなどの大判サイズ出力ニーズに向けて、多様な印刷用途や用紙の適性に応じた高画質プリントを可能にする全5色顔料インク「LUCIA TD」を搭載した「imagePROGRAF TZ/TX/TM/TAシリーズ」を提供しています。さらに業界初となる蛍光インクを搭載し、より明るくやわらかな色再現が可能な「imagePROGRAF GPシリーズ」の提供も2021年より始めています。ユーザーの更なる操作性向上にも取り組んでおり、「imagePROGRAF TMシリーズ」ではフラットトップデザインを採用し、ロール紙交換作業を容易にしています。また、スリムな筐体を実現した「imagePROGRAF TCシリーズ」は限られたスペースにも設置可能なため、在宅勤務での図面出力を可能にし、大判出力用途のニーズの広がりに対応しています。 ハイエンドのプロダクションインクジェット市場に向けて、当社は業界をリードする連帳プリンターを提供しており、効率的かつ高品質のフルカラー印刷の実現に貢献しています。「ColorStreamシリーズ」は、磁気インクやインビジブルインクなどのセキュリティインクを含む、カラーおよびモノクロのトランザクション、トランスプロモ、ダイレクトメール、書籍、およびマニュアルなどの印刷物に対応し、生産性と柔軟性に優れた、モジュール式でカスタマイズ可能な製品です。「ProStreamシリーズ」は、オフセット印刷に劣らぬ色再現性と生産性を実現しつつ、デジタル印刷の可変データの多用途性を兼ね備えた、高速で生産性の高い連帳プリンターです。当社が提供する高速カットシート方式のインクジェットプリンター「varioPRINT iX シリーズ」は、これまでの商業印刷のビジネスを大きく変えました。優れた画質と幅広いメディア対応力に、インクジェットの高い生産性と魅力的なコスト効率を兼ね備えています。「varioPRINT iXシリーズ」は、その高い信頼性、生産性、アップタイムによって、より多くの成果物を短時間で生産することができます。最小限の調整とセットアップで、計画的な高速印刷が可能なため、印刷業者は、顧客と合意された納期と価格に基づき、あらゆる成果物に対応し、より多くの利益を上げることができます。 大判グラフィック市場では、「Colorado」と「Arizona」のブランドの下で独自のUV LEDソリューションを提供しており、クラス最高の生産性と最小のコストを目指しております。このソリューションにより、プロの印刷業者は豊富なグラフィックスと産業用アプリケーションを顧客に提供することが可能となります。「Colorado」における、UVgelテクノロジーが、従来の印刷技術の持つ長所を損ねず、あらゆる妥協を排除した独自のプロセスにより、比類のない生産性を提供しています。UVgel460インクのより柔軟で伸縮性のある配合と、独創的なFLXfinish+テクノロジーという2つの追加テクノロジーのおかげで、幅広いアプリケーションへの印刷を可能にしています。UVgel460インクは、折りたたんだり、曲げたり、包んだりしても画像安定性を発揮します。また、FLXfinish+テクノロジーは、煌びやかなグロス調と高級感漂うマット調の印刷を使い分けることを可能にし、表現の自由度を拡大させることが出来ます。 オフィス向け複合機については、2020年から「imageRUNNER ADVANCE DXシリーズ」を発売し、2022年には4モデルをリリースしました。続いて、2023年にも4モデルの新製品を発売し、低温定着トナーや段ボール梱包材の採用により環境負荷を低減し、サイバー攻撃に備えるため専門知識を有するIT担当者がいない企業でも複合機のセキュリティ強化を達成できる「おすすめセキュリティー設定」機能を新搭載し、「imageRUNNER ADVANCE DXシリーズ」のラインアップを拡充しました。また、製品の高い信頼性が認められ、独立評価機関として権威あるKeypoint Intelligence社 BLI(Buyers Laboratory)事業部から、最も信頼性の高いA3オフィス複合機ブランドとして選出されました。 当社は、クラウドにつながることで複合機の機能を拡張するサービスとして、「uniFLOW Online」を提供しています。クラウドサービス連携とセキュリティの強化に加え、コロナ禍以降定着しつつあるオフィスと自宅を組み合わせたハイブリッドワーク環境に向けて、オフィス複合機と家庭用インクジェットプリンターを「uniFLOW Online」を介して組み合わせた「Hybrid Work Print Standard」により、在宅勤務時でもオフィス同様のセキュリティとプリント管理機能を提供しています。更なる競争力の維持及び向上に向けて、今後も市場動向に沿って、製品群の更なる充実とソリューション対応力の強化を図るとともに、ますます高度化する顧客の需要に応えるべく、販売力の強化に努めていきます。 家庭用インクジェットプリンターについては、在宅勤務、オンライン学習、家庭での趣味など自宅での様々な用途に応えられる幅広いラインアップを揃え、より簡単に効率よく、低ランニングコストでプリント・スキャン・コピーを行える商品を提供しています。 写真や文書印刷に適した「XK120/TS8700シリーズ」は、ユーザーのユースシーンに合わせて選択できるUI(ユーザーインターフェース)を採用し、少ない操作でプリントやスキャンなどを行えます。文書を印刷するユーザーに最適な「TS6700シリーズ/TS6600シリーズ」は、コンパクト設計ながら文書印刷で高い生産性を実現しました。 また、ビジネス向けインクジェットプリンターについては、在宅勤務に特化したフルフロントオペレーション対応の「GX2000シリーズ/GX1000シリーズ」、物流・薬局・小売りで使用される用紙の種類・サイズに幅広く対応した特大容量タンク搭載の「GX5500シリーズ」、さらには、受付業務や窓口業務に特化したフロント操作の自動原稿送り装置(ADF)による対面業務の効率化を実現した「GX6500シリーズ」を発売し、さまざまな角度からビジネスを支援していきます。 レーザープリンターについては、景気の先行きに対する懸念や金利上昇により、ディーラーやユーザーでは在庫を絞る動きが継続しています。また、長期的なトレンドとしてもスマートフォン、クラウド環境の普及等でユーザーのプリントスタイルが変化する中、プリント需要の減少による市場全体の成長鈍化が懸念されています。そのような環境下において、より付加価値の高い製品、特にカラー複合機の拡販に注力しています。更に、当社は各種の技術的イノベーションにより、顧客との一定期間にわたる契約型ビジネスを推進するなどの競争力強化と顧客価値向上をはかり、数量・シェア拡大を図っていきます。生産面では、サプライチェーンの多元化などを推進することにより引き続き製品の安定供給に努めていきます。 Ⅱ.メディカルビジネスユニット メディカルグループはCT、MRI、超音波、X線システムなどの「画像診断システム事業」、「ヘルスケアIT事業」、「体外診断事業」の3つの事業を展開し、世界190以上の国や地域でユーザーをサポートしており、患者さんに優しく確信度の高い医療の提供に貢献するとともに、医療の効率化、コスト削減を実現する医療システム・サービスを提供しています。 コア事業である画像診断システム事業は、検出器や磁石、臨床アプリや当社のAI技術などの次世代の技術開発で商品競争力の強化を推進しています。長きにわたり日本でトップシェアを堅持しているCTでは、ディープラーニングを用いた「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」を更に進化させた超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」と先進自動化技術により操作性を追求した「INSTINX」を搭載した新たなフラッグシップCT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」の販売を開始しました。これにより世界に広がる医療現場の人手不足の解消につながる医療ワークフローの効率化や迅速かつ簡便なプロセスの提供の実現を目指します。同時に、AiCEを標準搭載した16列マルチスライスCTの販売も開始し、16列から320列までの全セグメントで、より多くの施設で高画質かつ低被ばくな検査の提供を可能にします。また、次世代フォトンカウンティングCT(PCCT)の早期実用化に向けて国内外の医療機関と共同臨床研究に関する基本合意書を締結し臨床評価を加速しています。このような取り組みによりCTグローバルNO.1の達成と、メディカル事業領域におけるキヤノンブランドの確固たる地位を築き上げることを目標に掲げています。X線システムでは透視画像におけるリアルタイム新画像処理やX線制御技術を搭載可能なX線アンギオグラフィシステムの最新シリーズ「Alphenix / Evolve Edition」、超音波システムでは高画質・高機能とコンパクトを両立するモバイルでハイエンドな超音波診断装置「Aplio me」を市場に投入しました。 ヘルスケアIT事業では、強化された画像診断システムから得られる画像データを始めとする様々な医療情報を収集・統合・解析し、適切な形に加工して提供することで医療従事者の負担軽減と、よりスピーディーな診療方針決定をサポートします。これにより当社は将来的なプレシジョンメディシンの実現に向けて、AI技術も活用し、医療への貢献を目指しています。 体外診断事業においては体外診断用医薬品・自動分析装置のリーディングカンパニーであるミナリスメディカル社の全株式を取得しました。ミナリスメディカル社が保有する体外診断事業の多様なソリューションと当社が保有する自動分析装置領域における技術のシナジーにより、より高いニーズに応える付加価値の提供を目指します。 Ⅲ.イメージングビジネスユニット 当社は、デジタルカメラと同様に、レンズや様々な関連アクセサリーを製造、販売しております。 レンズ交換式デジタルカメラでは、「EOS Rシステム」のさらなるラインアップ拡充として小型・軽量のフルサイズミラーレスカメラ「EOS R8」やAPS-Cサイズのエントリーモデル「EOS R50」、「EOS R100」を発売しました。一眼レフカメラからの買い替えを促進するとともに、初めてフルサイズカメラやレンズ交換式カメラを使用するユーザーでも本格的な撮影を気軽に楽しめるモデルを投入することで多様化する顧客のニーズにお応えし、新規顧客獲得に努めています。レンズ交換式デジタルカメラ市場は、部品不足などによる供給問題解消に伴う販売促進活動の活発化や各社のミラーレスカメラと交換用レンズの新製品投 |
※本記事は「キヤノン株式会社」の令和5年12期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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