キヤノン株式会社の基本情報

会社名キヤノン株式会社
業種電気機器
従業員数連170340名 単23457名
従業員平均年齢44.2歳
従業員平均勤続年数19年
平均年収8657347円
1株当たりの純資産1816.9円
1株当たりの純利益(単体)485.14円
決算時期12月
配当金155円
配当性向31.5%
株価収益率(PER)10.6倍
自己資本利益率(ROE)(単体)28.4%
営業活動によるCF6068億円
投資活動によるCF▲2973億円
財務活動によるCF▲2259億円
研究開発費※1305.59億円
設備投資額※1955.17億円
販売費および一般管理費※11276.13億円
株主資本比率※256.6%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1)経営理念当社グループは、企業理念として、世界中のステークホルダーの皆さまとともに歩む「共生」を掲げています。「共生」とは、文化、習慣、言語、民族などの違いを問わず、すべての人類が末永く共に生き、共に働き、幸せに暮らしていける社会をめざすものです。この「共生」の理念のもと、当社グループは、世界の繁栄と人類の幸福のため、企業の成長と発展を目指し企業活動を進めています。 (2)中長期経営計画:グローバル優良企業グループ構想フェーズⅥ 当社は、「共生」の理念のもと、永遠に技術で貢献し続け、世界各地で親しまれ、尊敬される企業を目指し、1996年に5か年計画『グローバル優良企業グループ構想』をスタートしました。 2021年を初年度とする新5か年計画「グローバル優良企業グループ構想 フェーズⅥ」(以下、フェーズⅥ)では、「生産性向上と新事業創出によるポートフォリオの転換を促進する」を基本方針に、テクノロジーとイノベーションによって、社会の「安心」「安全」「快適」「豊かさ」の向上につながる新たな価値を創造していきます。 ①産業別グループの事業競争力の徹底強化 当社が保有する多岐にわたる技術や資産を最大限活用することを目的として、2021年に技術的に親和性のある複数の事業本部をプリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの4つのグループに再編成しました。産業別グループ内では各事業・グループ会社がもつ技術や人材の連携を深めて、将来技術の開発や生産技術の強化など新たなイノベーションを創出し、事業の進化・拡大に取り組んでいます。2023年10月に開催したキヤノンの総合技術展である「Canon EXPO」では、事業ポートフォリオの転換を支える産業別グループの技術と当社が目指す技術の方向性を紹介しました。今後は当社がこれまで培ってきた独自技術に加えてM&Aなども活用することにより、時代のニーズに応える新たな価値を創出し、複雑化、多様化する社会課題の解決に貢献することを目指します。 2024年には、さらなる競争力の強化を図るべく、販売および生産の構造改革とメディカル事業の構造改革に着手しました。販売構造の見直しについては、DX推進、販売チャネルの見直し、組織再編を進めることで、要員適正化と資産効率の向上を目指します。生産構造の見直しについては、地政学的リスクや生産性の観点から生産拠点の集約を進めることで、稼働率の向上や資産効率の向上を図ります。メディカル事業の構造改革については、「メディカル事業革新委員会」を立ち上げ、あらゆるオペレーションを徹底的に精査しています。当社は、これらの構造改革を通じて収益性向上を図り、より一層の競争力強化を目指します。 各グループにおける、フェーズⅥの主な戦略・施策の進捗状況は以下の通りです。 プリンティンググループアナログからデジタルへのシフトにより今後も大きな成長が見込まれるカタログ印刷等の商業印刷分野と、ラベル印刷やパッケージ印刷等の産業印刷分野では、プリンティンググループの総力を挙げて商品ラインアップの強化とワークフロー・ソフトの拡充に取り組んでいます。2024年は、前年に引き続き、商業印刷向けの「imagePRESS Vシリーズ」が米国を中心に好評を博しました。また、8年ぶりに開催された世界最大の国際印刷機器展示会である「drupa 2024」ではプリンティンググループの将来技術と新製品を幅広く展示し、多くの受注獲得につながりました。さらに、オフセット印刷の分野で長年の歴史と幅広い顧客基盤を持つドイツのHeidelberger Druckmaschinen AG(ハイデルベルグ社)とキヤノンプロダクションプリンティング(CPP)は、CPPが製造する枚葉インクジェット印刷機をハイデルベルグブランドで販売する業務提携に合意しました。ハイデルベルグ社の高速・大量印刷を実現するオフセット印刷機のワークフローと、当社の多品種・小ロット印刷を提供するデジタル印刷機のワークフローをシームレスに統合したソリューションを提供することで、顧客の収益性や生産性の向上に貢献します。プリンティンググループでは、紙のプリントを通じて人間がものを考える、共同作業をする、生活を楽しむといった活動を支えることで、人類の新たな価値創造や価値の保管・伝達に貢献してきました。近年の社会情勢の変化により、ペーパーレス化は今後も進行すると考えられる一方で、紙での情報処理が迅速性や利便性の点でデジタルデータやディスプレイの機能を上回る場面もあることから、人間の活動においてプリンティングは今後も重要な役割を果たしていくと考えております。また、働く環境をめぐっては、コロナ禍を通じてリモートワークが普及し、サテライトオフィスや自宅など働く場所の分散や働き方の多様化が進みました。このような中、オフィス、ホームの分野では働く場所で制約を受けない安全・安心・簡単・快適なプリンティング環境・サービスへのニーズが高まっています。プリンティンググループでは、多様なシーンに合わせてどのような環境においても高い生産性、利便性、セキュリティ環境を提供すべく、当社製の複合機、レーザープリンター、インクジェットプリンターとクラウドを連携したオンデマンドプリンティング環境を提供しています。2024年におけるオフィス複合機の需要は、オフィスにおける中核のプリンティング機器として底堅く推移しました。当社においては、豊かな表現力と高い生産性を提供する新ブランド「imageFORCEシリーズ」を立ち上げ、新製品「imageFORCE C7165F」を発売しました。本製品は、豊かな表現力をもたらす高解像度を実現する新露光技術や複数のセンサーを使った紙の位置ずれを防止する機能を搭載し、通常のオフィス文書の印刷だけでなく、高い印刷品位が求められるチラシやポスター、名刺などの企業内印刷を可能にします。レーザープリンターとインクジェットプリンターでは、ユーザーのプリントスタイルが変化する中、ビジネスから在宅までの幅広いニーズに対応するためラインアップを拡充しました。プリンティンググループでは、今後も顧客のニーズに合わせた商品・サービスを拡充し、オフィス、ホームの分野において世界No.1を目指します。 メディカルグループ近年、世界の医療を取り巻く環境は技術面でめざましい発展を遂げる一方、医師不足、高齢化社会、医療費の高騰、医療の地域格差をはじめ、医療従事者の働き方改革、医療DXの推進など、さまざまな課題に直面しています。メディカルグループでは「画像診断事業」、「ヘルスケアIT事業」、「体外診断事業」の分野に特に注力し、社会の変化に対応し、医療の現場に寄り添いながら、よりよいソリューションを提供することで医療課題の解決や価値提供に貢献することを目指しています。画像診断事業では、ディープラーニング技術を用いて設計した画像再構成技術や、複雑化する医療従事者の診断ワークフローを支援する自動化技術を搭載した製品を開発するなど、医療従事者と患者の負担の軽減と高品質の画像の提供を目指して製品・サービスを提供してきました。2024年には、主要コンポーネントを一新し、さまざまなAIソリューションを搭載した3テスラMRI装置「Vantage Galan 3T / Supreme Edition」の販売を開始しました。AIを活用した自動化技術や直感的な操作性を実現するGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)を採用することで、快適な画像解析ワークフローを実現します。超音波診断装置においては、オリンパス株式会社と協業することを合意し、当社の超音波診断装置とオリンパスの超音波内視鏡を組み合わせて高画質診断を可能とする製品「Aplio i800 EUS」の販売を開始しました。ヘルスケアIT事業においては、医療従事者の業務効率や迅速な診断をサポートする医用画像解析ワークステーション用プログラム「Abierto Vision」を販売開始しました。体外診断事業の領域では、2023年に当社グループの一員に加わったミナリスメディカル株式会社は、2024年3月に大腸がん検診に用いられる便潜血検査を行うことが可能な「自動分析装置 HM― CODIAM」を発売し、2025年2月にキヤノンメディカルダイアグノスティックス株式会社へ社名変更しました。引き続き、キヤノングループの持つ技術シナジーを活かして「予防、診断、治療」を支援する技術・製品・サービスを創出し、臨床検査により高い付加価値を創出すると同時に、今までにない診断薬トータルサービス・ソリューションを提供していきます。メディカルグループは次世代技術の研究開発にも積極的に取り組んでいます。2024年9月には、京都大学iPS細胞研究所(CiRA)を中心とする研究開発プロジェクト「高品質人工血小板の連続製造システムの研究開発とその実用化」への参画を発表しました。再生医療を含むバイオメディカル領域の事業成長を目指す一環として、細胞を大量に培養することができる細胞製造装置の技術開発を推進しています。また、次世代のX線CTとして期待されるフォトンカウンティングCT(PCCT)の早期実用化を目指し、これまで推進している日欧3か所の医療機関との共同研究に加え、2024年11月には、新たに米国ペンシルベニア大学系列の医療グループ「Penn Medicine」と共同研究を開始しました。特に胸部や心臓、筋骨格系などにおける画像診断の専門分野を中心テーマとしてPCCTの可能性を開拓します。このように幅広い領域でグローバルな共同研究活動にも積極的に参画しながら、医療に新たな価値を提供できる技術の開発に注力します。当社はメディカル関連市場について、長期的には安定した成長が期待できる市場と考えておりますが、地政学的リスクの高まりによって一部のビジネスが制限を受け、中国の景気低迷は長期化し、日本国内においても医療機関の経営状況が悪化しています。このような事業環境の変化を考慮し、2016年に旧東芝メディカルシステムズ株式会社(現キヤノンメディカルシステムズ株式会社)買収時に認識したのれんについて、2024年に1,651億円の減損損失を計上しました。現在メディカルグループでは、2024年2月に全社組織として立ち上がった「メディカル事業革新委員会」を中心として構造改革を進めています。その中で、当社が持つ人材、技術、ノウハウなどのリソースを全面的に投入して、開発、生産、管理、販売などあらゆるオペレーションを抜本的に見直しています。この構造改革によって利益創出力を高め、安定した成長が見込まれるメディカル関連市場での事業拡大を目指します。 イメージンググループデジタルカメラ全体の市場は、スマートフォンの普及によりピーク時と比較すると大きく縮小したものの、この数年は、動画撮影ニーズや若年層の需要の高まりにより、底堅さを示しています。そうした中、当社は2024年に「EOS Rシリーズ」で初となるフラッグシップモデル「EOS R1」やプロ・ハイアマチュア向け主力モデル「EOS R5 Mark II」を発売しました。新開発のエンジンシステムやディープラーニング技術の活用により、静止画・動画機能を進化させ、プロ・ハイアマチュア顧客の高い要望に応えるラインアップを構築し、ミラーレスカメラ市場でのプレゼンスを更に高めてきました。世界屈指の光学技術を有する当社は、今後も市場のニーズに応えるカメラ・交換レンズを順次市場に投入し、ミラーレスカメラでも圧倒的な世界シェアNo.1の実現を目指します。また、コンパクトデジタルカメラにおいても、手軽に本格的な動画撮影を楽しめる「PowerShot Vシリーズ」を展開しており、2023年にはシリーズ第一弾としてVlog(ビデオブログ)撮影に特化した「PowerShot V10」を発売しました。さらに2025年4月にはPowerShot Vシリーズのフラッグシップ機「PowerShot V1」を発売予定です。このように、新しいコンセプトの製品をラインアップに加えることで、今後も幅広いユーザーの期待に応えます。映像制作の分野では、IPストリーミングの需要が増大を続けていることから、高画質リモートカメラシステムのラインアップ強化に取り組んでいます。撮影コンテンツが増加している中で求められる映像制作現場の効率化のニーズに応えると同時に、従来難しかったアングルからの撮影などの新しい映像表現を可能にするソリューションとして、AI技術を用いながら複数のリモートカメラをメインカメラの動きに連動させる次世代映像制作システム「マルチカメラオーケストレーション」の開発を進めています。ネットワークカメラ事業では、世界有数のメーカーであるアクシス社や映像管理ソフトおよび映像解析ソフト・ベンダーのマイルストーンシステムズ社といった優れた技術を持つグループ会社を擁しております。今後もグループの総力を挙げて多様化するニーズを捉えながらセキュリティ分野におけるプレゼンスを強化します。また同時に、製造や流通における検査や社会インフラ点検など、従来のセキュリティ目的を超えて、各種業務に対する映像を活用したDXを提供する製品・サービスの展開を図ります。近年、様々な分野で仮想現実映像、立体映像、360度映像などの利活用が進み、新たな映像体験市場の拡大が期待されています。当社では、高画質な3D VR(Virtual Reality:仮想現実)映像を手軽に撮影できる「EOS VRシステム」、現実世界とCG映像をリアルタイムに違和感なく融合するMR(Mixed Reality:複合現実)製品の「MREAL」などの3Dイメージング技術を用いた製品・サービスを拡充していくことで、新たな映像体験市場の活性化と事業領域の拡大を図ります。 インダストリアルグループ半導体は、デジタル化やスマート化が進む現代社会において無くてはならないデバイスであり、AIを始めとして自動運転、5G通信、IoTなど様々な用途で需要が拡大することが見込まれます。インドが新たな一大生産拠点となることが現実味を帯び始め、また、地政学上のリスクを背景とした半導体自国生産の流れがあることから、製造装置市場は浮き沈みを繰り返しつつも成長が確実視されております。インダストリアルグループは、半導体の性能向上および半導体メーカーの生産性向上ニーズに応える製造装置を提供し、引き続き半導体製造技術の進化に貢献します。2024年9月には、ナノインプリント半導体製造装置(NIL)「FPA-1200NZ2C」を、米国テキサス州にある半導体コンソーシアムのTexas Institute for Electronics(TIE)へ向けて出荷しました。TIEでは、最先端半導体の研究開発や試作品の製造等に活用されます。今後も半導体デバイスの量産適用に向けた活動を加速するとともに、国内外の研究機関や半導体メーカーと協力し、NILの長所を活かせるアプリケーションの拡大を図ります。また、製品ラインアップの拡充を目指してArFドライ半導体露光装置の開発を開始しました。顧客企業の生産性向上に貢献する半導体露光装置ソリューションプラットフォーム「Lithography Plus」は、多数の半導体製造拠点に導入されており、今後も歩留まり改善や稼働率向上を支援します。現在、半導体露光装置の旺盛な需要に応えるため、宇都宮事業所隣地に新工場を建設中であり、目標としている2025年内の稼働開始に向けて各種工事が順調に進行しています。新工場完成後は、生産能力の大幅な向上により、従来にも増して迅速かつ安定的な供給が可能となります。緩やかな回復を見せ始めたディスプレイ製造装置市場においては、生産性向上を図った装置を積極的に投入し、また、高機能化と高品位化の顧客ニーズをとらえた開発を加速します。半導体およびディスプレイ製造装置以外の領域にも注力しており、新たにリサイクル機器分野に参入しました。独自開発のトラッキング型ラマン分光技術を活用したプラスチック選別装置の受注を開始し、マテリアルリサイクルの最大化を通じてサーキュラーエコノミーの構築に寄与します。グループ会社では、キヤノンアネルバが半導体・電子部品製造装置の新シリーズ「Adastra(アダストラ)」を開発しました。プロセスモジュールを自由に選択できる構成により多様なニーズに柔軟に対応するとともに、フットプリントや消費エネルギーを大幅に改善し、高い生産性を提供します。キヤノンマシナリーは、生産性、精度、ユーザービリティ、省エネルギーのすべてを向上させたダイボンダー「BESTM-D610」を発表しました。キヤノントッキは、需要が高まっているITパネル製造に最適な有機EL蒸着装置の開発・製造に取り組み、顧客企業の生産性向上に貢献します。インダストリアルグループは、超精密位置合わせ、真空システム、超高精度加工、高速マテリアルハンドリングといった各社のコア技術を融合して新たな装置を開発し、事業領域拡大を目指します。 ②本社機能の徹底強化によるグループ生産性の向上当社では事業の競争力の強化と拡大を図るため、人事制度を改定し、より一層の競争原理を働かせることで管理部門の生産性を向上するとともに、事業貢献を意識した本社R&D体制の整備など、本社機能の強化に取り組んでいます。2023年からは、優秀な技術者を「トップサイエンティスト」および「トップエンジニア」として任用する「高度技術者認定」制度を設け、イノベーションを牽引する人材の確保・育成を推進しています。また当社では、これまで培ってきたあらゆる技術を活用して材料やコンポーネントなどの領域で事業化を進めるなど、全社横断的な視点での新規事業創出にも取り組み、収益拡大への貢献を目指しています。さらに今後は、自社技術の開発に加えて外部の最先端技術を積極的に取り入れるべくM&Aなども活用し、一層の業容拡大を図ります。 (3)中期経営計画連結業績目標 当社は、フェーズⅥ期間最終年度である2025年度の連結業績目標として、売上高では当社史上最高を記録した2007年を上回る売上高4兆5,000億円以上、利益では営業利益率12%以上、当期純利益率8%以上の達成を目指してきました。このうち、売上高については2024年に4兆5,098億円となり、目標を1年前倒しで達成しました。2025年には二期連続での史上最高売上高の記録更新を目指します。一方、2024年にメディカル事業で足元の市況悪化を背景に将来計画の見直しを行ったことや、現在進めている構造改革に伴うコストの発生など、短期的に見込まれる減益要素を勘案し、2025年の業績見通しについて、売上高では4兆7,360億円、利益では営業利益率11.0%、当期純利益率7.7%を見込んでおります。 また、事業ポートフォリオの転換を評価する指標として、当社では連結売上高に対する新規事業※1売上高の比率を設定しています。今5カ年計画の4年目となる2024年は、地政学的リスクが不透明感を増す一方、世界各地でインフレの状況に落ち着きが見られるようになり、金融引き締めが緩和される中、世界経済は総じて緩やかな回復が続きました。当社においては、ネットワークカメラなどの新規事業だけでなく、半導体露光装置やミラーレスカメラ、レーザービームプリンターなどの現行事業においても販売が堅調に推移しました。これに加えて円安が追い風となり、売上高は4期連続となる増収を達成し、同時に2007年以来の過去最高記録を更新しました。新規事業の売上高は成長を続けており、2017年と比較すると連結売上高に占める構成比が22%から28%に上昇しています。今後も新規事業の成長をさらに加速させ、事業ポートフォリオの転換を着実に進めます。 当社では、企業価値向上をより一層加速させるため株主資本利益率(ROE)を重視しております。コロナ禍の2020年に3.2%まで落ち込んだROEはその後の業績回復により改善を続けています。2024年は前年比3.4ポイントの悪化となる4.8%となりましたが、メディカルビジネスユニットでののれんの減損損失の影響を除くと、前年比1.2ポイントの改善となる9.4%となりました。引き続き、着実なコストダウン活動による収益性の向上、棚卸資産の削減や生産拠点の集約等を通じた資産の圧縮、負債・資本の最適バランスの追求といった取り組みを進めることで、2025年にはROEを10%以上に向上させることを目指します。 ※1新規事業には、キヤノンプロダクションプリンティング、キヤノントッキ、アクシス、キヤノンメディカルシステムズなど、フェーズⅠ以降に取得した主要な事業会社の事業と、フェーズⅥ期間中の事業化を目指す新規事業を含めています。 2022年実績2023年実績2024年実績2024年実績(調整後※2)2025年業績見通し 2025年フェーズⅥ目標売上高4兆314億円4兆1,810億円4兆5,098億円4兆5,098億円4兆7,360億円 4兆5,000億円以上営業利益率8.8%9.0%6.2%9.9%11.0% 12.0%以上当期純利益率6.1%6.3%3.5%7.2%7.7%8.0%以上 ROE8.1%8.2%4.8%9.4%10.6% 10.0%以上 ※2恒常的な業績の比較のため、営業利益率、当期純利益率およびROEについて、メディカルビジネスユニットで計上したのれんの減損損失1,651億円を除いて計算しております。
経営者による財政状態の説明
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の状況の概要 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。 ①財政状態及び経営成績の状況 (経営を取り巻く経済環境)当連結会計年度の世界経済は、各地でインフレの状況に落ち着きが見られるようになり、金融引き締めが緩和される中、総じて緩やかな回復が続きました。地域別に見ますと、米国では良好な所得環境を背景に、個人消費が堅調に推移しました。欧州では地域別に濃淡はあるものの、年末にかけてインフレ圧力が低下し、個人消費が下支えしました。中国では輸出が堅調に推移したものの、不動産市場の低迷は続いており、内需も回復が鈍化するなど停滞が継続しました。その他の新興国については、物価上昇圧力の緩和により消費が堅調に推移しました。わが国でも、年初は停滞感を強めたものの、個人消費とインバウンド需要が持ち直し、緩やかに景気は回復しました。このような状況の中、当社関連市場においても一部の地域では景気低迷の影響を受けましたが、総じて需要は堅調に推移しました。製品別に見ますと、オフィス向け複合機や商業印刷は、欧州や中国での市況低迷が継続しましたが、全体としては底堅く推移しました。インクジェットプリンターの需要は減少しましたが、大容量インクモデルは堅調に推移しました。レーザープリンターは、中国を中心に縮小しましたが、当社はOEM先での在庫調整が一巡したこともあり、販売は底堅く推移しました。医療機器は、米国は堅調だったものの、中国市場は停滞、欧州やわが国でも病院経営の環境に厳しさが見られ、市場は弱含みました。カメラ市場は、ミラーレスカメラを中心に堅調に推移しました。半導体製造装置市場は、引き続き生成AI向けの投資が旺盛で、需要は過去最高水準で推移しました。FPD製造装置市場は、パネルメーカーの投資が改善しました。平均為替レートにつきましては、米ドルが前年比で約11円円安の151.63円、ユーロは前年比で約12円円安の163.99円となりました。 (当連結会計年度の経営成績) 経営指標 (億円) 第123期第124期増減率(%)売上高41,81045,0987.9%売上総利益19,68921,4318.8%営業費用15,93518,63316.9%営業利益3,7542,798△25.5%営業外収益及び費用15421439.0%税引前当期純利益3,9083,012△22.9%当社株主に帰属する当期純利益2,6451,600△39.5% 1株当たり当社株主に帰属する当期純利益 基本的264.20165.53△37.3%希薄化後264.08165.44△37.4% 当連結会計年度は、売上高は2007年に記録した過去最高を更新する4兆5,098億円となり、税引前当期純利益に関しても、メディカルビジネスユニットで計上したのれんの減損損失を除く調整後税引前当期純利益では前期比19.3%増の4,663億円となりました。売上総利益率は、物流費の改善を含むコストダウン効果に、円安による増益効果も加わり、前期を0.4ポイント上回る47.5%となり、売上総利益は前期比8.8%増の2兆1,431億円となりました。営業費用は主にメディカルビジネスユニットにおけるのれんの減損損失や、海外での外貨建て営業費用が円安により増加したことにより、前期比16.9%増の1兆8,633億円となり、営業利益は前期比25.5%減の2,798億円となりました。営業外収益及び費用は、外貨建て債権から生じた為替差損益の好転などにより、前期比で60億円好転し、214億円の収益となりました。これらの結果、税引前当期純利益は前期比22.9%減の3,012億円、当社株主に帰属する当期純利益は前期比39.5%減の1,600億円となりました。基本的1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ98円67銭減の165円53銭となりました。 (セグメント別の経営成績)以下の情報はセグメント情報に基づきます。セグメント情報に関する詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注23 セグメント情報」を参照ください。 プリンティングビジネスユニット経営指標 (億円) 第123期第124期増減率(%) プロダクション4,0124,4079.8% オフィス9,83510,5257.0% プロシューマー9,55010,2237.0%外部顧客向け売上高合計23,39725,1557.5%セグメント間取引647213.0%売上高合計23,46125,2277.5%売上原価及び営業費用21,17822,3285.4%営業利益2,2832,89927.0%税引前当期純利益2,3513,04129.4% プリンティングビジネスユニットでは、プロダクション市場向け機器は、imagePRESS Vシリーズなどが米国を中心に好調に推移し、また、世界最大規模の印刷機材展示会であるdrupaでの受注を売上に繋げるなど、販売は前期を上回りました。オフィス向け複合機は、中国や欧州の市況の低迷影響はありましたが、低中速カラー複合機のimageRUNNER ADVANCE DX C3900シリーズを中心に販売は前期を上回りました。インクジェットプリンターは、中国市況の低迷や低価格機を中心に価格競争が激化するなどの影響を受ける中、需要の堅調な大容量インクモデルの拡販を進めました。レーザープリンターは、OEM先での在庫調整が一巡した後は販売を伸ばし、前年を大きく上回りました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比7.5%増の2兆5,227億円、税引前当期純利益は、前期比29.4%増の3,041億円となりました。 メディカルビジネスユニット経営指標 (億円) 第123期第124期増減率(%)外部顧客向け売上高合計5,5235,6832.9%セグメント間取引155△63.1%売上高合計5,5385,6882.7%売上原価及び営業費用5,2227,09235.8%営業利益316△1,404-税引前当期純利益321△1,395- メディカルビジネスユニットでは、米国ではCT装置やMRI装置を中心に販売が拡大しましたが、中国では市況悪化の影響を受け、日本や欧州においても病院の経営状況に厳しさが見られました。これらの結果、当ユニットの売上高については、前期比2.7%増の5,688億円となりました。当期は次世代装置の開発や事業構造改革など先行投資費用の影響もあり、調整後税引前当期純利益は前期比20.4%減の256億円となりました。これに加え、のれんの減損損失を計上したことにより、税引前当期純利益は1,395億円の損失となりました。 イメージングビジネスユニット経営指標 (億円) 第123期第124期増減率(%) カメラ5,4445,7966.5% ネットワークカメラ他3,1713,57412.7%外部顧客向け売上高合計8,6159,3708.8%セグメント間取引14114.8%売上高合計8,6169,3748.8%売上原価及び営業費用7,1607,8619.8%営業利益1,4561,5133.9%税引前当期純利益1,4641,5435.4% イメージングビジネスユニットでは、レンズ交換式デジタルカメラは、年初には市中在庫の調整局面がありましたが、下期に投入した新製品「EOS R1」や「EOS R5 Mark II」が好評を博し、エントリーモデルの「EOS R50」や「EOS R100」なども堅調に推移しました。ネットワークカメラも、市中在庫の調整が進んだ第2四半期以降は販売が回復し、年間では増収となりました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比8.8%増の9,374億円、税引前当期純利益は、前期比5.4%増の1,543億円となりました。 インダストリアルビジネスユニット経営指標 (億円) 第123期第124期増減率(%) 光学機器2,1252,53219.2% 産業機器9139271.5%外部顧客向け売上高合計3,0383,45913.8%セグメント間取引109106△2.9%売上高合計3,1473,56513.3%売上原価及び営業費用2,5612,87612.3%営業利益58668917.6%税引前当期純利益59270419.0% インダストリアルビジネスユニットでは、半導体露光装置は生成AI向けの需要が旺盛であり、先端パッケージングで業界標準となっている当社の後工程向け露光装置が高い需要を捉え、当期の販売台数は前年を大きく上回りました。FPD露光装置は市況が回復基調にある中で販売台数は前期を上回りました。これらの結果、当ユニットの売上高は、前期比13.3%増の3,565億円、税引前当期純利益は、前期比19.0%増の704億円となりました。 (当連結会計年度の財政状態) (億円) 第123期(2023年12月31日)第124期(2024年12月31日)増減資産合計54,16657,6623,497 負債合計18,10921,2123,103 株主資本合計33,53033,803273 非支配持分2,5272,648121 純資産合計36,05736,451393負債及び純資産合計54,16657,6623,497株主資本比率(%)61.9%58.6%△3.3%  当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末から3,497億円増加して5兆7,662億円となりました。円安に伴って外貨建の資産が増加した他、売上増加に伴って売掛債権が増加しました。 負債は前連結会計年度末から3,103億円増加して2兆1,212億円となりました。長期債務の借入を実行した他、未払費用が増加しました。 純資産は、前連結会計年度末から393億円増加して3兆6,451億円となりました。当社株主への配当や自己株式の取得を2度実施したことなどによる減少の一方で、当社株主に帰属する当期純利益の積み増しにより利益剰余金は増加し、また円安によりその他の包括利益累計額は増加しました。 これらの結果、当連結会計年度末の株主資本比率は前連結会計年度末より3.3ポイント減少して58.6%となりました。 ②キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響分を合わせて、前連結会計年度末から1,002億円増加し、5,016億円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー) のれんの減損損失を除けば収益性は向上していることに加え、買掛債務の増加に伴う運転資本の改善などもあり、前連結会計年度と比較して1,556億円増加し、6,068億円の収入となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー) BPOサービスに強みを持つプリマジェスト社の買収や生産設備への投資を継続したため、前連結会計年度と比較して220億円増加し、大型買収を実施した前期並みの2,973億円の支出となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー) 前連結会計年度の期末配当と当連結会計年度の中間配当を増配したことで、配当金の支払いが前連結会計年度と比較して107億円増加しました。さらに2度の自己株式の取得による支出が1,000億円増加したことにより、前連結会計年度と比較して693億円増加し、2,260億円の支出となりました。  また、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した、いわゆるフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度と比較して1,337億円増加し、3,095億円の収入となりました。 詳細については、「(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ⑤流動性と資金源泉 b.現金及び現金同等物」に記載のとおりであります。 ③生産、受注及び販売の実績a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度比(%)プリンティング2,143,813119.3メディカル597,257106.7イメージング875,96998.8インダストリアル368,230111.1その他及び全社63,830108.0消去△109,311-合計3,939,788111.0 (注)1. 金額は、販売価格によって算定しております。 2. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。 b. 受注実績当社グループの生産は、当社と販売各社との間で行う需要予測を考慮した見込み生産を主体としておりますので、販売高のうち受注生産高が占める割合は僅少であります。従って受注実績の記載は行っておりません。 c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度比(%)プリンティング2,522,725107.5メディカル568,808102.7イメージング937,391108.8インダストリアル356,462113.3その他及び全社233,746111.9消去△109,311-合計4,509,821107.9 (注)1. 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。2. 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとお りであります。 相手先第123期(2023年1月1日から2023年12月31日まで)第124期(2024年1月1日から2024年12月31日まで)販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)HP Inc.420,24610.1471,60410.5 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月28日)現在において判断しております。 はじめに 当社は、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアル、その他の製品を世界的に事業展開する企業グループであります。また、企業の成長と発展を果たすことにより、世界の繁栄と人類の幸福に貢献することを、経営理念としております。①主要業績評価指標 当社の事業経営に用いられる主要業績評価指標(以下「KPI(Key Performance Indicatorsの略)」という。)は以下のとおりであります。(収益及び利益率) 当社は、真のグローバル・エクセレント・カンパニーを目指し邁進しておりますが、経営において重点を置いている指標の1つに収益が挙げられます。以下は経営者が重要だと捉えている収益に関連したKPIであります。 売上高はKPIの1つと考えております。当社は主に製品、またそれに関連したサービスから売上を計上しています。売上高は、当社製品への需要、会計期間内における取引の数量や規模、新製品の評判、また販売価格の変動といった要因によって変化し、その他にも市場でのシェア、市場環境等も売上高を変化させる要因です。さらに製品別の売上高は売上の中でも重要な指標の1つであり、市場のトレンドに当社の経営が対応しているかというような内容を測定するための目安となります。 売上総利益率は収益性を測るもう1つのKPIと考えております。当社はフェーズⅥの基本方針のもと、事業競争力を徹底的に強化し、価格競争力を持つ収益性の高い商品の提供を図っています。さらに、内製化や、設計・生産技術・製造現場が三位一体となった組み立ての自動化等のグループ一丸となった原価低減活動を推進しています。当社では、売上総利益率の向上に向けて、引き続きこれらの施策を推進してまいります。 営業利益率、税引前当期純利益率及び売上高研究開発費比率も当社のKPIとして考えており、これらについて当社は2つの面からの方策をとっております。1つは、販売費及び一般管理費そのものを統制し低減に努めていること、もう1つは将来の利益を生み出す技術に対する研究開発費を一定の水準に維持していくことです。現在の市場における優位性を保持しつつ、他市場における可能性も開拓していくために必要なことであり、そうした投資が将来の事業の成功の基盤となります。(キャッシュ・フロー経営) 当社はキャッシュ・フロー経営にも重点を置いております。以下の指標は、経営者が重要だと捉えているキャッシュ・フロー経営に関連したKPIです。 在庫回転日数はKPIの1つであり、サプライチェーン・マネジメントの成果を測る目安となります。棚卸資産は陳腐化及び劣化する等のリスクを内在しており、その資産価値が著しく下がることで、当社の業績に悪影響を及ぼすこともありえます。こうしたリスクを軽減するためには、サプライチェーン・マネジメントの強化により、棚卸資産の圧縮及び製品コスト等の回収を早期化させるために生産リードタイムを短縮させ、一方で販売の機会損失を防ぐため適正水準の製品在庫を保持していく活動の継続が重要であると考えられます。 また有利子負債依存度も当社のKPIの1つであります。当社のような製造業では、開発、生産、販売等のプロセスを経て、事業が実を結ぶまでには、一般に長い期間を要するため、堅固な財務体質を構築することは重要なことであると考えます。今後も当社は主に通常の営業活動からのキャッシュ・フローで、流動性の維持や設備投資に対応してまいりますが、大きな成長投資を決断した際には借入金を活用することも想定しております。 総資産に占める株主資本の割合を示す株主資本比率も、当社におけるKPIの1つとしております。株主資本を潤沢に持つことは、長期的な視点に立って高水準の投資を継続することにつながり、短期的な業績悪化にも揺るがない事業運営を可能にします。特に、研究開発に重点を置く当社にとっては、財務の安全性を確保することは、非常に重要なことであると考えられます。一方で、成長投資のため負債を有効活用するなど、資本構成の最適化にも留意してまいります。(株主資本収益性) 株主資本に対する当期純利益の割合を示す株主資本利益率も、当社におけるKPIの1つとしております。事業構造の見直しや経費の効率化により、収益性の向上を図り、在庫水準の適正化や生産拠点の集約化により、資産効率の向上を図ってまいります。また、財務の健全性を維持しながらも成長のための投資を実現するため、負債の有効活用を行うなど、適正な資本構成を構築し、株主資本の収益性を向上させてまいります。②重要な会計方針及び見積り 当社の連結財務諸表は、米国会計基準に基づいて作成されております。また当社は、連結財務諸表を作成するために、種々の見積りと仮定を行っております。これらの見積り及び仮定は将来の市場状況、売上増加率、利益率、割引率等の見積り及び仮定を含んでおります。当社は、これらの見積り及び仮定は合理的であると考えておりますが、実際の業績は異なる可能性があります。また、パンデミックや地政学的リスク、さらにはインフレに伴う景気減速のリスク等により、当社の業績が経営者の仮定及び見積りとは異なる可能性があります。当社は、現在当社の財政状態及び経営成績に影響を与えている会計方針を適用するにあたり、以下の事項がより重要な判断事項であると考えています。a.長期性資産の減損 基準書360「有形固定資産」に準拠し、有形固定資産や償却対象の無形固定資産などの長期性資産は、帳簿価額が回収できないという事象や状況の変化が生じた場合に、減損に関する検討を実施しております。帳簿価額が割引前将来見積キャッシュ・フローの総額を上回っていた場合には、帳簿価額が公正価値を超過する金額について減損を認識しております。公正価値の決定は、見積り及び仮定に基づいて行っております。b.有形固定資産 有形固定資産は取得原価により計上しております。減価償却方法は、定額法で償却している一部の資産を除き、定率法を適用しております。c.棚卸資産 棚卸資産は、低価法により評価しております。原価は、国内では平均法、海外では主として先入先出法により算出しております。d.リース 当社は、貸手のリースでは主にオフィス製品の販売においてリース取引を提供しております。販売型リースでの機器の販売による収益は、リース開始時に認識しております。販売型リース及び直接金融リースによる利息収益は、それぞれのリース期間にわたり利息法で認識しております。これら以外のリース取引はオペレーティングリースとして会計処理し、収益はリース期間にわたり均等に認識しております。機器のリースとメンテナンス契約が一体となっている場合は、リース要素と非リース要素の独立販売価格の比率に基づいて収益を按分しております。通常、リース要素は、機器及びファイナンス費用を含んでおり、非リース要素はメンテナンス契約及び消耗品を含んでおります。一部の契約ではリースの延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約の大部分は、顧客の割安購入選択権を含んでおりません。 借手のリースでは建物、倉庫、従業員社宅、及び車輛等に係るオペレーティングリース及びファイナンスリースを有しております。当社は、契約開始時に契約にリースが含まれるか決定しております。一部のリース契約では、リース期間の延長又は解約オプションが含まれております。当社は、これらのオプション行使が合理的に確実である場合、オプションの対象期間を考慮し、リース期間を決定しております。当社のリース契約には、重要な残価保証または重要な財務制限条項はありません。当社のリースの大部分はリースの計算利子率が明示されておらず、当社はリース料総額の現在価値を算定する際、リース開始時に入手可能な情報を基にした追加借入利子率を使用しております。当社のリース契約の一部には、リース要素及び非リース要素を含むものがあり、それぞれを区分して会計処理しております。当社はリース要素と非リース要素の見積独立価格の比率に基づいて、契約の対価を按分しております。オペレーティングリースに係る費用は、そのリース期間にわたり定額法で計上されております。 e.企業結合 企業買収は取得法で処理しております。取得法では、取得した契約資産及び契約負債を除く、全ての有形及び無形資産並びに引き継いだ全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率、資本収益率、及びその他の利用可能な市場データに基づく見積りなどの、重要な判断や見積りを伴います。また、将来キャッシュ・フローの予測は、被買収会社の実績や、過去及び将来に想定される趨勢、市場や経済状況などの多くの要素に基づいております。取得した契約資産及び契約負債は、基準書606「顧客との契約からの収益」に準拠し認識及び測定しております。f.のれん及びその他の無形固定資産 のれん及び耐用年数が確定できないその他の無形固定資産は償却を行わず、代わりに毎年第4四半期に、または潜在的な減損の兆候があればより頻繁に減損テストを行っております。全てののれんは、企業結合のシナジー効果から便益を享受する報告単位に配分されます。報告単位の公正価値が、当該報告単位に割り当てられた帳簿価額を下回る場合には、当該差額をその報告単位に配分されたのれんの帳簿価額を限度とし、のれんの減損損失として認識しております。報告単位の公正価値は、主として割引キャッシュ・フロー分析に基づいて決定されており、将来キャッシュ・フロー及び割引率等の見積りを伴います。将来キャッシュ・フローの見積りは、主として将来の成長率に関する当社の予測に基づいております。割引率の見積りは、主として関連する市場及び産業データ並びに特定のリスク要因を考慮した、加重平均資本コストに基づいて決定しております。当社は、2024年第4四半期に行った減損テストの結果、メディカルビジネスユニットの公正価値が帳簿価額を下回っていたことから、当該差額をのれんの減損損失として認識しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 注8 のれん及びその他の無形固定資産」及び「注22 公正価値の開示」に記載のとおりであります。なお、上記メディカルビジネスユニット以外の報告単位については、個々の報告単位の公正価値が帳簿価額を超過しており、減損のリスクが見込まれる報告単位はないと判断しております。重要なのれんが配分されている報告単位は、メディカル報告単位であり、403,131百万円が配分されております。当該報告単位の将来キャッシュ・フローの見積りは、今後の医療機器市場の成長や事業活動地域の経済成長を考慮した上で立案された中期経営計画に基づいております。 耐用年数の見積りが可能な無形固定資産は、主としてソフトウェア、商標、特許権及び技術資産、ライセンス料、顧客関係であります。なお、ソフトウェアは主として3年から9年で、商標は15年で、特許権及び技術資産は5年から21年で、ライセンス料は7年で、顧客関係は11年から19年で定額償却しております。 g.法人税等の不確実性 当社は、法人税等の不確実性の評価及び見積りにおいて多くの要素を考慮しており、それらの要素には、税務当局との解決の金額及び可能性、並びに税法上の技術的な解釈を含んでおります。不確実性に関する実際の解決が見積りと異なるのは不可避的であり、そのような差異が連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。h.繰延税金資産の評価 当社は、繰延税金資産に対して定期的に実現可能性の評価を行っております。繰延税金資産の実現は、主に将来の課税所得の予測によるところが大きく、課税所得の予測は将来の市場動向や当社の事業活動が順調に継続すること、その他の要因により変化します。課税所得の予測に影響を与える要因が変化した場合には評価性引当金の設定が必要な場合があり、当社では繰延税金資産の実現可能性がないと判断した際には、繰延税金資産を修正し、損益計算書上の法人税等に繰り入れ、当期純利益が減少いたします。i.未払退職及び年金費用 未払退職及び年金費用は数理計算によって認識しており、その計算には前提条件として基礎率を用いています。割引率、期待運用収益率といった基礎率については、市場金利などの実際の経済状況を踏まえて設定しております。その他の基礎率としては、昇給率、死亡率などがあります。これらの基礎率の変更により、将来の退職及び年金費用が影響を受ける可能性があります。 基礎率と実際の結果が異なる場合は、その差異が累積され将来期間にわたって償却されます。これにより実際の結果は、通常、将来の年金費用に影響を与えます。当社はこれらの基礎率が適切であると考えておりますが、実際の結果との差異は将来の年金費用に影響を及ぼす可能性があります。 当連結会計年度の連結財務諸表の作成においては、給付債務の計算に使用する割引率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で1.9%、3.9%を、長期期待収益率には国内制度、海外制度ではそれぞれ加重平均後で3.1%、6.0%を使用しております。割引率を設定するにあたっては、現在利用可能で、かつ、年金受給が満期となる間に利用可能と予想される高格付けで確定利付の公社債の収益率に関し利用可能な情報を参考に決定しております。また長期期待収益率の設定にあたっては、年金資産が構成される資産カテゴリー別の過去の実績及び将来の期待に基づいて収益率を決定しております。 割引率の低下(上昇)は、勤務費用及び数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるとともに、利息費用を減少(増加)させます。割引率が0.5%低下した場合、予測給付債務は約708億円増加します。割引率の低下(上昇)による影響は、数理計算上の他の前提条件の変更による影響と同様に、翌期以降に繰り延べられます。 長期期待収益率の低下(上昇)は、期待運用収益を減少(増加)させ、かつ数理計算上の差異の償却額を増加(減少)させるため、期間純年金費用を増加(減少)させます。長期期待収益率が0.5%低下した場合、期間純年金費用は約59億円増加します。 これにより年金制度の積立状況(すなわち、年金資産の公正価値と退職給付債務の差額)を連結貸借対照表で認識しており、対応する調整を税効果調整後で、その他の包括利益(損失)累計額に計上しております。j.収益認識 当社は、主にプリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの各ビジネスユニットの製品、消耗品並びに関連サービス等の売上を収益源としており、それらを顧客との個別契約に基づき提供しております。当社は、約束した財またはサービスの支配が顧客に移転した時点、もしくは移転するにつれて、移転により獲得が見込まれる対価を反映した金額により、収益を認識しております。 プリンティングビジネスユニットの製品(オフィス向け複合機、レーザープリンター、インクジェットプリンター等)及びイメージングビジネスユニットの製品(デジタルカメラ等)の販売による収益は、製品の支配を顧客がいつ獲得するかにより、主に出荷または引渡時点で認識しております。 また、メディカルビジネスユニットの製品(CT装置やMRI装置等)及びインダストリアルビジネスユニットの製品(半導体露光装置やFPD露光装置等)の販売にあたり、機器の性能に関して顧客検収を要する場合は、機器が顧客の場所に据え付けられ、合意された仕様が客観的な基準により達成されたことを確認した時点で、収益を認識しております。 当社のサービス売上の大部分は、プリンティングの製品及びメディカルの製品のメンテナンスサービスに関連するものであり、一定期間にわたり認識しております。プリンティングの製品のサービス契約は、通常、顧客は、機器の使用量に応じた従量料金、固定料金、または、基本料金に加えて使用量に応じた従量料金を支払う契約であり、修理作業及び消耗品の提供を含んでおります。プリンティングの製品のサービス契約による収益の大部分は、顧客への請求金額が、履行義務の充足に伴い顧客に移転した価値と直接対応していることから、顧客への請求金額により収益を計上しております。メディカルの製品のサービス契約は、通常、顧客は、当社が提供する待機サービスの対価として、固定料金を支払っており、当社は契約期間にわたり均等に収益を認識しております。 プリンティングの製品に関するサービス契約の多くは、関連する製品販売契約と一体で実行されます。製品及びサービスの取引価格は、独立販売価格の比率に基づいて各履行義務に配分される必要があり、その配分には判断が伴います。独立販売価格は、市場の状況及びその他観察可能なインプットを含む合理的に入手可能な全ての情報に基づき、配分の目的に合致するように設定された価格のレンジを用いて見積もられています。製品またはメンテナンスサービスの取引価格が設定されたレンジを外れる場合は、見積独立販売価格に基づき取引価格は配分されることになります。契約獲得の追加コストは、関連するプリンティングの製品が販売された時に、費用として認識しております。 転用可能性がなく、かつ完了した成果に対して顧客から支払いを受ける強制力のある権利を有している一部のインダストリアルの製品の販売契約(以下「長期契約」)に関する収益は一定期間にわたり認識しており、コストを基礎とする進捗度に基づき、完成時の見積り利益の当期進捗分を含む収益が当期に認識されます。未完成の長期契約に関する損失は、損失が発生することが明らかになった期に認識されます。長期契約に関する作業実績や作業状況、想定される収益性の変化や最終的な契約条項がコストや収益の見積りに与える影響は、それらが識別され合理的に見積り可能になった期に認識されます。将来コストや完成時の利益に影響を与える要素は生産効率、労働力や資材の利用可能性とコストを含み、これらの要素は見積りの正確性に影響し、将来の収益と売上原価に重要な影響を与えることがあります。 財またはサービスの移転と交換に当社が受け取る取引価格は、値引き、顧客特典、売上に応じた割戻し等の変動対価を含んでおります。変動対価は、主として、販売代理店や小売店が主要顧客であるイメージングの製品の販売に関連しております。当社は、変動対価に関する不確実性が解消された時点で収益認識累計額の重要な戻し入れが生じない可能性が高い範囲で、変動対価を取引価格に含めております。変動対価は、過去の傾向や売上時点におけるその他の既知の要素に基づいて見積もっており、直近の情報に基づき定期的に見直しております。また、当社は、販売後の短期間、顧客に製品の返品権を付与することがあり、当該返品権により予想される返品を考慮し決定された取引価格に基づき収益認識をしております。 当社は、連結損益計算書の収益について、顧客から徴収し政府機関へ納付される税金を除いて表示しております。 k.信用損失引当金 信用損失引当金は、過去の信用損失の経験と合理的かつ裏付け可能な予測を踏まえつつ、基準書326(「金融商品-信用損失」)に基づいて、全ての債権計上先を対象として計上しております。また当社は、破産申請など顧客の債務返済能力がなくなったと認識した時点において、顧客ごとに信用損失引当金を積み増しております。債権計上先をとりまく状況に変化が生じた場合は、債権の回収可能性に関する評価はさらに調整されます。法的な償還請求を含め、全ての債権回収のための権利を行使してもなお回収不能な場合に、債権の全部または一部を回収不能とみなし、信用損失引当金に対する償却を実施しております。 l.環境負債 環境浄化及びその他の環境関連費用に係る負債は、環境アセスメントあるいは浄化努力が要求される可能性が高く、その費用を合理的に見積ることができる場合に認識しており、連結貸借対照表のその他の固定負債に含めております。環境負債は、事態の詳細が明らかになる過程で、あるいは状況の変化の結果によりその計上額を調整しております。その将来義務に係る費用は現在価値に割引いておりません。 m.新会計基準 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注1 (24)新会計基準」に記載のとおりであります。③当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容a.売上高 当連結会計年度は、各地でインフレの状況に落ち着きが見られるようになり、金融引き締めが緩和される中、総じて緩やかな回復が続きました。こうした中、半導体露光装置やデジタル商業印刷機、ネットワークカメラなどの成長事業を中心に売上を伸ばし、売上高は前連結会計年度比7.9%増の4兆5,098億円となり、2007年に記録した過去最高を更新しました。製品売上高及びサービス売上高は前連結会計年度比でそれぞれ、8.4%増の3兆5,936億円、5.8%増の9,162億円となりました。 当連結会計年度の海外での売上高は、連結売上高の78.8%を占めます。海外での売上高の計算は、円と外貨の為替レートの変動に影響されます。製品の現地生産及び海外からの部品や材料調達等によりその影響を抑えておりますが、為替レートの変動は当社の経営成績に大きな影響を与える可能性があります。 当連結会計年度の米ドル及びユーロの平均為替レートはそれぞれ151.63円及び163.99円と、前連結会計年度に比べて米ドルは約11円円安、ユーロは約12円円安で推移しました。米ドルとの為替レートの変動により約1,120億円の売上高増加、ユーロとの変動で約708億円の売上高増加、その他の通貨との変動で約189億円の売上高増加影響がありました。その結果、当連結会計年度の為替による売上高の増加影響は約2,017億円となりました。 b.売上原価 売上原価は、主として原材料費、購入部品費、工場の人件費から構成されます。原材料費のうち海外調達される原材料については、海外の市場価格や為替レートの変動による影響を受け、当社の売上原価に影響を与えます。売上原価にはこれらの他に有形固定資産の減価償却費、修繕費、光熱費、賃借料などが含まれております。当連結会計年度は物流費を中心としたコストの改善が進みましたが、円安により売上原価は増加しました。一方、販売による為替影響も加味すると、売上高に対する売上原価の比率は、当連結会計年度は52.5%となり、前連結会計年度52.9%より0.4ポイント低減しました。 c.売上総利益 当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度と比べ8.8%増加の2兆1,431億円となりました。また売上総利益率は、前連結会計年度より0.4ポイント好転し47.5%となりました。売上総利益の増加は、物流費を中心としたコストダウンが進んだことと円安影響によるものです。 d.営業費用 営業費用は、主に人件費、研究開発費、広告宣伝費であります。営業費用は、メディカルビジネスユニットにおいてのれんの減損損失を1,651億円計上したことに加えて、円安による外貨建て営業費用の増加や海外販売会社における構造改革費用などがあり、前期比16.9%増の1兆8,633億円となり、当連結会計年度売上高に対する経費率は前連結会計年度より3.2ポイント悪化し、41.3%となりました。 e.営業利益 当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度比25.5%減少の2,798億円でありました。営業利益率は2.8ポイント悪化して6.2%となりました。 f.営業外収益及び費用 当連結会計年度の営業外収益及び費用は、外貨建て債権から生じた為替差損益の好転があり、前連結会計年度から60億円好転し、214億円の収益となりました。 g.税引前当期純利益 当連結会計年度の税引前当期純利益は3,012億円で、前連結会計年度比22.9%の減益となりました。また、売上高に対する比率は6.7%でした。 h.法人税等 当連結会計年度の法人税等は119億円増加し、実効税率は39.3%でした。実効税率が日本の法定実効税率を上回っているのは、主にのれんの減損損失が税務上損金算入されない費用であるためです。 i.当社株主に帰属する当期純利益 当連結会計年度の当社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比39.5%の減益である1,600億円となりました。また、売上高当期純利益率は3.5%となりました。 ④海外事業と外国通貨による取引 当社の販売活動は様々な地域で現地通貨により行っている一方、売上原価は円の占める割合が比較的高くなっております。当社の現在の事業構造を鑑みると、円高影響は売上高や売上総利益率に対してマイナス要因となります。こうした為替相場の変動による財務リスクを軽減することを目的に、当社は為替先物契約を主とした金融派生商品を利用した取引を実施しております。 海外における売上高利益率は、主に販売活動を中心としているため、国内の売上高利益率と比較すると低くなっております。一般的に販売活動は、当社が行っている生産活動ほど収益性は高くありません。地域別セグメント情報に関する詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 注23 セグメント情報」を参照ください。 ⑤流動性と資金源泉a.キャッシュ・フロー経営の基本原則 当社は財務戦略の基本方針に「キャッシュ・フロー経営の徹底による健全な財務体質の維持」を掲げ、以下の2点をキャッシュ・フロー経営の基本原則としております。 1.現行事業の収益性をさらに改善し新規事業の成長スピードを高めることにより、高収益体質の向上に努めます。2.事業の中期的な拡大・成長に必要な設備投資は原則として減価償却費の範囲内に収め、財務健全性の維持に努めます。ただし、成長戦略の為の設備投資やM&A等の状況により、必要に応じて外部からの資金調達も実施します。 資金の調達(Cash-In)事業活動からの利益をベースとする営業活動によるキャッシュ・フローを原資とします。資金調達を行う際は、金融市場の状況を鑑みて、期間・通貨・手法を検討し、多様な選択肢から最適な手段を選定します。 資金の使途(Cash-Out)資金の主な使途は以下の優先順位に則り決定しております。 1.成長投資:設備投資・研究開発やM&AなどM&Aは新規事業の成長を補完する選択肢として重視しております。投資対象先の選定にあたり、市場の成長性・規模、当社の事業領域・技術との親和性の高い市場であることを基準としております。2.株主還元中長期的な業績の見通しに加え、将来の投資計画やキャッシュ・フローなどを総合的に勘案しております。配当は配当性向50%を目途に実施し、自己株式の取得も検討しつつ、安定的かつ積極的な利益還元を実現します。3.借入金返済健全な財務体質維持のため借入金返済を着実に進め、事業の拡大・成長に必要な投資に備えて、十分な資金調達余力を確保してまいります。 b.現金及び現金同等物キャッシュ・フローの推移  当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度から1,002億円増加して、5,016億円となりました。当社の現金及び現金同等物は主に円と米ドルを中心としておりますが、その他の外貨でも保有しております。 営業活動によるキャッシュ・フロー 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、キャッシュを伴わないのれん減損損失を考慮すると増加しており、また買掛債務の増加に伴う運転資本の改善もあり、前連結会計年度末から1,556億円増加し、6,068億円の収入となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、主に顧客からの現金受取によるキャッシュ・イン・フローと、部品や材料、販売費及び一般管理費、研究開発費、法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローとなっております。当連結会計年度におけるキャッシュ・イン・フローの増加は、主に売上高の増加に伴い、顧客からの現金回収が増加したことによります。当社の回収率に重要な変化はありません。キャッシュ・アウト・フローの増加は、売上増に伴う部品や材料の支払いの増加や、販売活動が正常化したことによる販売関連費用の増加などによるものです。法人税の支払いによるキャッシュ・アウト・フローの増加は、課税所得の増加によるものです。 投資活動によるキャッシュ・フロー 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、生産能力、効率性の向上を目的とした設備投資を継続したことにより、固定資産購入額は前連結会計年度より67億円増加して、当連結会計年度は2,370億円となりました。さらに、当期はBPOサービスに強みを持つプリマジェスト社の買収や生産設備への投資を継続したため、大型買収を実施した前期並みの2,973億円の支出となりました。 フリーキャッシュ・フロー 当社は、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを控除した純額をフリーキャッシュ・フローと定義しており、当連結会計年度のフリーキャッシュ・フローは、前連結会計年度の1,758億円から、1,337億円増加し、3,095億円の収入となりました。 当社は、キャッシュ・フロー経営に重点を置き、フリーキャッシュ・フローを常時モニタリングしております。フリーキャッシュ・フローは当社の現在の流動性や財務活動の使途を理解する上で重要であり、また投資家にも有用であると考えております。当社は資金の調達源泉を明らかにするために、米国会計基準による連結キャッシュ・フロー計算書や連結貸借対照表と併せて、米国会計基準以外の財務指標(Non-GAAP財務指標)である、フリーキャッシュ・フローを分析しております。なお、最も直接的に比較可能な米国会計基準に基づき作成された指標とフリーキャッシュ・フローの照合調整表は以下のとおりです。 (億円) 第123期第124期増減営業活動によるキャッシュ・フロー4,5126,068+1,556投資活動によるキャッシュ・フロー△2,754△2,973△219フリーキャッシュ・フロー1,7583,095+1,337財務活動によるキャッシュ・フロー△1,567△2,260△693為替変動の現金及び現金同等物への影響額201167△34現金及び現金同等物の増減3921,002+610現金及び現金同等物の期首残高3,6214,013+392現金及び現金同等物の期末残高4,0135,016+1,002 財務活動によるキャッシュ・フロー 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、前期に続いて増配したことや、2度の自己株式の取得など積極的な株主還元を実施したことにより、前期比で693億円増加し、2,260億円の支出となりました。なお、当連結会計年度の配当金の支払額は、1株当たり145.00円を実施しました。  当社は、流動性や必要資本を満たすため、増資、社債発行、借入といった外部からの様々な資金調達方法をとることが可能です。当社は、これまでどおりの資金調達や資本市場からの資金調達が可能であり、また将来においても可能であり続けると認識しておりますが、経済情勢の急激な悪化やその他状況によっては、当社の流動性や将来における長期の資金調達に影響を与える可能性があります。 当社の長期債務は、主に銀行借入とリース債務によって構成されています。 格付け 当社は、グローバルな資本市場から資金調達をするために、格付機関であるS&Pグローバル・レーティングから信用格付を得ております。それに加えて、当社は日本の資本市場からも資金調達するために、日本の格付会社である格付投資情報センターからも信用格付を得ております。2025年2月28日現在、当社の負債格付は、S&Pグローバル・レーティング:A(長期)/A-1(短期)、格付投資情報センター:AA(長期)であります。当社では、現時点で負債の返済を早めるような格付低下の要因は発生しておりません。当社の信用格付が下がる場合は、借入コストの増加につながります。 c.在庫の適正化 当社の最新の在庫水準の最適化の方針は、運転資金を最小化し、在庫の陳腐化のリスクを避け、一方で予期せぬ天災発生時でも販売活動を継続できるようにするため、適切なバランスを維持していくことであります。当社の在庫回転日数は、当連結会計年度、前連結会計年度末時点でそれぞれ、65日、66日となりました。スエズ運河運航回避に伴い積送品が主に増えたことにより在庫金額は増加したものの、売上高も前年比で増収となったことで在庫回転日数は減少しています。 d.設備投資 当社は積極的な業績拡大に資する投資を行う一方、総額は減価償却費の範囲内に収めることでフリーキャッシュ・フローを安定的に創出するなど、財務基盤を強固にするキャッシュ・フロー経営を徹底しています。当連結会計年度における設備投資は、前連結会計年度の2,011億円から181億円増加し、2,192億円になりました。翌連結会計年度につきましては、引き続き成長のための設備投資を行うことにより、当社の設備投資は2,100億円の見込みであります。 e.退職給付債務への事業主拠出 当社の確定給付型年金への拠出額は、当連結会計年度289億円、前連結会計年度516億円であり、確定拠出型年金への拠出額は、当連結会計年度293億円、前連結会計年度277億円であります。また、一部の子会社が加入している複数事業主制度への拠出額は、当連結会計年度64億円、前連結会計年度54億円であります。 f.運転資本 当連結会計年度における運転資本(流動資産から流動負債を控除した額)は、前連結会計年度の7,849億円から1,189億円増加し、9,038億円になりました。増加の主な要因は、流動負債である短期借入金(1年以内に返済する長期債務を含む)の減少によるものです。当社の運転資本は、予測できる将来需要に対して十分であると認識しております。当社の必要資本は、設備投資に関わる支出の水準及び時期といった全社的な事業計画に基づいております。流動比率(流動負債に対する流動資産の割合)は、当連結会計年度は1.58、前連結会計年度は1.55であります。 g.総資本当社株主に帰属する当期純利益率 総資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の総資産平均で除した割合)は、当連結会計年度では2.9%、前連結会計年度は5.0%であります。 h.株主資本当社株主に帰属する当期純利益率 株主資本利益率(当社株主に帰属する当期純利益を前年度末及び当年度末の株主資本平均で除した割合)は、当連結会計年度では4.8%、前連結会計年度8.2%であります。 i.有利子負債依存度 当社はフェーズⅥにてキャッシュ・フロー経営の徹底を重点項目の一つとしており、財務基盤の再強化を進めています。当連結会計年度では、運転資金の増加に伴い長期借入金が増加しました。その結果、当連結会計年度における短期借入金、短期オペレーティングリース負債、長期借入金、及び長期オペレーティングリース負債は、前連結会計年度末の5,173億円から1,462億円増加し6,635億円となり、有利子負債依存度(総資産に対する有利子負債の割合)は11.5%と前連結会計年度の9.6%から1.9%増加しました。 j.株主資本比率 株主資本比率(株主資本を総資産で除した割合)は、当連結会計年度は58.6%と前連結会計年度の61.9%から3.3%減少いたしました。増配を実施したこと、1,000億円の自己株式取得を2度実施したことにより株主資本は減少したものの、円安により為替換算調整額が増加したこともあり、株主資本比率としては、引き続き高い水準を維持し、財務の健全性は保たれています。 ⑥知的財産戦略<ガバナンス>当社では知的財産部門がCEO直轄の組織であることに加え、知的財産法務本部長が専任役員を務めているため、知的財産法務本部長から、中期計画等の知的財産に関する戦略や考えを直接CEOに報告したり、役員間の日々の会議で他の役員へ知的財産に関する重要情報を伝達し、共有したりすることが可能です。このような体制により、知的財産に関する経営上の意思決定が迅速に行われています。さらに、会社の役員でもある知的財産法務本部および事業部門、研究開発部門のトップをはじめとする幹部が集まる本部間トップミーティングを定期的に設け、知的財産戦略を議論するとともに、事業および研究開発部門における実際の知的財産活動を決定することで、事業および研究開発部門と一体化したタイムリーな知的財産活動を実現しています。このようにして技術中計、事業中計にリンクした知的財産戦略を策定し、知的財産部門の考えや知的財産への投資を技術および事業中計に組み込むというサイクルが機能しています。 また、当社では、当社の知的財産法務本部と各グループ会社の知的財産部門との間で、知的財産の取り扱いに関する役割と責任、活動方針の策定プロセスなどを取り決めたグローバルマネジメントルールを策定しています。これにより、グループ全体の知的財産活動を統制し、知的財産ポートフォリオの最適化を図りつつ、必要に応じて知的財産法務本部と各グループ会社が協働で訴訟やライセンス活動を行い、利益の最大化を図っています。 <戦略>1.基本方針当社は、独自技術で差別化した魅力的で質の高い製品とサービスにより、新市場や新規顧客を開拓する研究開発型企業として発展してきました。知的財産部門は、事業発展の支援を最も重視しており、これに資することをミッションとして、これからの時代を先読みし、知的財産戦略を策定、実行しています。当社の知的財産戦略の基本戦略は下記4つとしております。 (1)コアコンピタンス技術に関わる特許は、競争領域において事業を守る特許としてライセンスせず、競争優位性の確保に活用する。(2)通信、AI、IoTなどの共通技術(標準技術を含む)に関わる協調領域の特許をクロスライセンスなどに利用することで、研究開発や事業の自由度を確保する。(3)他社の知的財産権を尊重する。一方でキヤノンの知的財産権の侵害に対しては毅然と対応する。(4)他社が容易に到達できない検証困難な発明は、ノウハウとして秘匿し守ることで、他社の追従を許さず、競争優位性を確保する。 2.知的財産ポートフォリオの基本的な考え方当社は、さまざまな環境変化から次の時代の社会や経済の流れを読み取り、知的財産戦略を策定、実行しています。知的財産ポートフォリオは、変化する経営と事業を支援し企業価値を向上させるために最大限活用するものと位置付けており、その構成は、さまざまな環境変化(サプライチェーン、経済安全保障、環境配慮要請、AI/IoTによる技術革新、デジタルサービスの拡大等)から次の時代を見据え、経営戦略、事業戦略と連動させながら、常に変化させています。近年では、これからの成長が見込まれる新規事業を支援する技術や、各事業分野に共通して活用が見込まれ、他社とのライセンス交渉においても重要な役割を担う共通技術に関する出願を特に増やし、将来のビジネスを支える特許ポートフォリオの強化を進めています。事業のコアコンピタンスに関わる知的財産権の取得はもちろん、時代を先取りした知的財産権(例えば、AI/IoT技術や共通技術、環境関連技術に関わる知的財産権、パートナー創りのための知的財産権)の取得にも大きなリソースを投入し、新たな事業の創出のために様々な業界の企業との交渉にも備えています。このようにして構築した知的財産ポートフォリオを活用することにより、競争優位性の確保と将来事業の自由度の確保を両立させています。当社は、全世界で約8万2千件にも及ぶ特許と実用新案を保有しています(2024年12月現在)。日本国内はもとより、海外での特許取得も重視しており、地域ごとの事業戦略や技術動向、製品動向を踏まえた上で特許の権利化を推進しています。特に米国は、世界最先端の技術をもつ企業が多く市場規模も大きいことから、特許出願については、事業拡大、技術提携の双方の視点から注力しており、米国の特許登録件数ランキングは41年連続で10位以内を維持しています。また、知的財産ポートフォリオは、活用することでその価値が顕在化するものであり、保有する知的財産ポートフォリオの積極的な活用により事業の発展を最大限支援するとともに、企業価値の向上に貢献するものです。活用の具体例としては他社とのクロスライセンスがあります。これにより他社の保有する知的財産へのアクセスを可能としています。当社は、全世界で約100万件もの他社特許が利用可能であり、研究開発や事業における高い自由度を確保しています。また、他社にも有用な協調領域の特許を数多く保有していることで、コアコンピタンス特許の利用を許諾しない有利なクロスライセンスが可能となり、ビジネスの競争優位性を保っています。さらに、徹底した特許クリアランスと積極的なポートフォリオ活用を行うことで、ライセンス料の支払いを抑制しています。 3.事業の発展を支える知的財産ポートフォリオ当社は、グローバル優良企業グループ構想フェーズVIにおいて、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの各グループの事業競争力の強化を掲げ、商業印刷、産業印刷、次世代ヘルスケア、高度監視、次世代半導体製造、デジタルソリューションサービスといった将来のビジネス創出にも力を入れています。知的財産部門は、これらの事業が発展し、成長するために、光学技術、映像処理、解析技術などのコアコンピタンス技術、AI/IoTを組み入れたサイバー&フィジカルシステムの技術、標準技術、環境配慮技術などに関する知的財産の創出・権利化に力を入れています。 Ⅰ.プリンティンググループ商業印刷、産業印刷分野のほか、オフィス向け機器を始めとする様々な機器と連携するサイバー&フィジカルシステムを支える知的財産を創出しています。様々な機種のプリンターに共通して搭載されるコントローラ/エンジンの基盤技術やプリンターに付加価値を提供するクラウドの基盤技術に加え、プリンターの環境配慮技術や、AIを利活用した新たなプリンティングソリューションなどこれからの時代に対応する技術に関する特許ポートフォリオを構築しています。 Ⅱ.メディカルグループプレシジョン・メディシン(個別化医療)の実現をサポートするAIソリューション、診断精度の向上及び従来装置よりも被ばく線量低減が期待されるフォトンカウンティングCTなど、医療現場に次々と提供される新たな価値を創造する技術を保護する知的財産ポートフォリオを構築しています。加えて、グループ会社間連携を通じて、光学技術や画像処理技術などこれまでに培ってきた技術に、メディカル領域特有の画像診断技術、ソリューションを融合し、画像診断を核としてヘルスケアITやバイオサイエンスなどの新たな領域への事業拡大を支える知的財産ポートフォリオを強化しています。 Ⅲ.イメージンググループミラーレスカメラに加え、映像制作用カメラや監視用カメラなどの領域では、高度な光学技術だけでなく、ネットワーク技術を組み合わせた知的財産を創出しています。さらにボリュメトリックビデオやXRなどの3Dイメージング技術や、暗闇でも数km先の被写体を鮮明に捉えられるSPADセンサー等、今後の事業成長を支える新技術の領域でも特許ポートフォリオを強化しています。 Ⅳ.インダストリアルグループ露光装置、ダイボンダー、有機ELディスプレイ製造装置、スパッタリング装置などの製造装置に加え、Lithography Plusなどの製造ソリューションサービスに関する知的財産の創出にも注力しています。さらに、黒色プラスチックのリサイクルを可能にするトラッキング型ラマン分光技術、低消費電力を実現するナノインプリントリソグラフィ技術の特許ポートフォリオを強化し、新規事業の拡大を支援しています。 Ⅴ. 未来を切り拓く技術本社研究開発部門等で研究が進む、3Dプリンター用セラミックス、鉛フリー圧電体、全固体電池用材料などのサステナビリティ実現のための新素材、デバイス技術、超大型望遠鏡用のイマージョン回折素子、人工衛星などの宇宙科学技術の分野で、世界初/最先端のコア技術の特許ポートフォリオ形成に注力しています。 Ⅵ. 標準化への取組み海外研究所の標準化エキスパートと協働し、標準化団体への積極的な参画を通して世界の技術発展に貢献。移動体通信(5Gなど)、無線LAN(Wi-Fiなど)、動画圧縮(HEVC,VCCなど)、無線電力伝送(Qiなど)、ファイルフォーマット(HEIF,OMAFなど)など次世代の技術標準を構成する特許ポートフォリオを拡大し、キヤノンの知財競争力を強化しています。 4. オピニオンリーダーとしての活動当社は、日本の産業の振興、ひいては世界の産業の振興への貢献をめざし、知的財産の業界をリードする活動を積極的に行っています。2014年には、LOT(License on Transfer)ネットワークを他社とともに設立し、自らは事業を行わず特許訴訟を脅しに利益を得るPAE(Patent Assertion Entity)による不当な特許訴訟から会員企業を守る仕組みを構築しました。2025年3月時点で4,800社以上が会員企業になっています。また、2019年より、世界知的所有権機関(WIPO)が運営する、環境技術の活用を促進するためのプラットフォームであるWIPO GREENにパートナーとして参加し、WIPOと協力して環境技術の普及を行っています。当社は、パートナーづくりにも注力しており、2023年には国立研究開発法人 産業技術総合研究所(AIST)が民間企業と共同で実施するAIST Innovation Ecosystem Programに設立メンバーとして参画しました。新たな技術の社会実装化を支援するとともに、プログラムから生まれた技術へのアクセスを得て更なるイノベーションの推進につなげています。このような活動により、他社特許侵害のリスク低減、保有特許の活用機会創出、アクセス可能な技術及び特許の拡大を実現し、知財面からの事業支援を行うとともに、世界の知財エコシステムの構築に貢献しています。 <リスク管理>知的財産に関するリスクとその対応については、3 事業等のリスク をご参照ください。 <目標>当社では、事業に稼がせる知財を標榜し、事業発展に貢献することを目的として知財活動を行っております。活用を考慮に入れた知的財産ポートフォリオの構築を進め、構築されたポートフォリオを活用することで、事業の収益性を向上させています。保有する8万件超のポートフォリオは時代に合わせて新陳代謝を図っており、新規事業を支える技術分野の出願比率を戦略的に増やし、新規事業のビジネス拡大・収益向上に貢献することを目指します。また、世界最先端の技術をもつ企業が多く市場規模も大きい米国においては、事業拡大や他社とのライセンス交渉などの観点から、米国特許取得件数ランキングでトップ10以内の継続を目指します。 当社の知的財産活動に関するその他の情報は、当社ウェブサイト(https://global.canon/ja/intellectual-property/)に掲載しております。 ⑦トレンド情報 当社は、プリンティング、メディカル、イメージング、インダストリアルの分野において、開発、生産から販売、サービスにわたる事業活動を営んでおります。 Ⅰ.プリンティングビジネスユニット 当社は、家庭向け、オフィス向け、プロダクションプリント向けのインクジェットプリンター、レーザープリンター、複合機の開発・製造・販売及びメンテナンス、アフターサービスを行うとともに、ソフトウェア及びサービス、ソリューションビジネスを通して顧客に付加価値を提供しています。 市場ニーズの多様化などを背景とした印刷物の少量多品種化や短納期化、オンデマンド印刷やバリアブル印刷への需要が高まるプロダクションプリントについては、主力機種である「imagePRESS Vシリーズ」等により、カット紙印刷市場でWW.シェアNo.1※1を維持しています。高い生産性と堅牢性により大量出力物の短納期化を実現するフラッグシップモデル「V1350」、多種多様な用紙の高速出力により少量多品種印刷ビジネスを支援する「V1000」、オペレーターの作業負荷を軽減するコンパクトな本体サイズの「V900」の3機種が、様々な商業印刷のニーズに対応しています。加えて、リモート印刷管理アプリケーション「PRISMAremote Manager」との組み合わせにより印刷状況を可視化することで、ダウンタイムの削減にも貢献しています。 大判インクジェットプリンターについては、「imagePROGRAF」のブランドの下で、幅広い分野の様々な大判プリントニーズに応えるラインアップを展開しており、今期もさらなる強化を図りました。写真やアートなどを制作するグラフィックアート市場向けには、「PROシリーズ」を刷新しました。芸術写真などに用いられるファインアート紙への印刷画質を向上させ、耐光性も強化しています。これにより、大判プリンターimagePROGRAFシリーズ最高の写真画質とプリントの長期保存を実現しています。広告などのグラフィックポスターの出力を担う出力センターや社内印刷部門向けには、「GPシリーズ」を刷新しました。人目を引く鮮やかなポスターを高速出力するとともに、擦れによる印刷面のキズを抑制し、カット作業などの印刷後の加工や掲示を容易にしています。また、設計事務所などでの図面大量出力から、企業・店舗でのCAD・ポスターなどの大判サイズ出力ニーズに向けて、「TZ/TXシリーズ」を強化しました。生産性をさらに高めるとともにポスター画質の向上を図り、多様な印刷物を効率的に出力できるようにしました。これにより、出力サービスを提供する事業者のビジネス領域拡大や企業の掲示物内製を支援しています。当社は、多様化する顧客のニーズにお応えして顧客獲得に努めています。 ハイエンドのプロダクションインクジェット市場に向けて、当社は業界をリードする連帳プリンターを提供しており、効率的かつ高品質のフルカラー印刷の実現に貢献しています。「ColorStreamシリーズ」は、磁気インクやインビジブルインクなどのセキュリティインクを含む、カラーおよびモノクロのトランザクション、トランスプロモ、ダイレクトメール、書籍、およびマニュアルなどの印刷物に対応し、生産性と柔軟性に優れた、モジュール式でカスタマイズ可能な製品です。「ProStreamシリーズ」は、オフセット印刷に劣らぬ色再現性と生産性を実現しつつ、デジタル印刷の可変データの多用途性を兼ね備えた、高速で生産性の高い連帳プリンターです。当社が提供する高速カットシート方式のインクジェットプリンター「varioPRINT iX シリーズ」は、これまでの商業印刷のビジネスを大きく変えました。優れた画質と幅広いメディア対応力に、インクジェットの高い生産性と魅力的なコスト効率を兼ね備えています。「varioPRINT iXシリーズ」は、その高い信頼性、生産性、アップタイムによって、より多くの成果物を短時間で生産することができます。最小限の調整とセットアップで、計画的な高速印刷が可能なため、印刷業者は、顧客と合意された納期と価格に基づき、あらゆる成果物に対応し、より多くの利益を上げることができます。 大判グラフィック市場では、「Colorado」と「Arizona」のブランドの下で独自のUV LEDソリューションを提供しており、クラス最高の生産性と最小のコストを目指しております。このソリューションにより、プロの印刷業者は豊富なグラフィックスと産業用アプリケーションを顧客に提供することが可能となります。「Colorado」はモジュール設計で、追加オプションにより現場でのアップグレードが可能です。また、UVgel 460インクのより柔軟で伸縮性のある配合とFLXfinish+技術の2つの追加技術により、印象的なアプリケーション範囲を提供します。UVgel460インクは、折りたたんだり、曲げたり、包んだりしても画像安定性を発揮します。また、FLXfinish+テクノロジーは、光沢仕上げと豪華なマット仕上げを1つのプリントで組み合わせて印刷することを可能にし、表現の自由度を拡大させることが出来ます。 働き方の多様化に伴い、場所を問わずいつでも安心で快適な印刷・スキャンができる環境が求められる中、オフィス向け複合機では、2020年から販売している「imageRUNNER ADVANCE DXシリーズ」において、低温定着トナーや段ボール梱包材の採用による環境負荷の低減や、サイバー攻撃に備えるため専門知識を有するIT担当者がいない企業でも複合機のセキュリティ強化を達成できる「おすすめセキュリティ設定」など、ユーザーのニーズに応える機能を強化しながらラインアップを拡充し、WW.シェアNo.1※2を維持しています。加えて、2024年には複合機の新ブランド「imageFORCE」を立ち上げ、高解像度を実現する新技術を搭載したカラー複合機「imageFORCE C7165F」を発売し、ラインアップを更に強化しました。製品の高い信頼性は市場でも認められ、独立評価機関として権威あるKeypoint Intelligence社 BLI(Buyers Laboratory)事業部から、最も信頼性の高いA3オフィス複合機ブランドとして選出されました。また当社は、クラウドにつながることで複合機の機能を拡張するサービスとして、「uniFLOW Online」を提供しています。クラウドサービス連携とセキュリティの強化に加え、コロナ禍以降定着しつつあるオフィスと自宅のハイブリッドワーク環境に向けて、オフィス複合機と家庭用インクジェットプリンターを「uniFLOW Online」を介して組み合わせた「Hybrid Work Print Standard」により、在宅勤務時でもオフィス同様のセキュリティとプリント管理機能を提供しています。さらに、複合機とクラウドストレージの連携を容易にする新サービス「Cloud Connector」の提供を開始しました。今後もますます高度化する顧客のニーズに応えるべく、製品群の更なる充実とソリューション対応力の強化を図り、更なる競争力の維持、向上に努めていきます。インクジェットプリンターについては、低ランニングコストを実現する特大容量インクを搭載したインクジェットプリンター「GXシリーズ」を強化し、流通・小売りなどの大量出力業務や、保険・金融の窓口業務、小規模オフィスや在宅勤務など、働く現場を支援しています。家庭印刷用では、ユーザーのユースシーンに合わせて選択できるUI(ユーザーインターフェース)を採用し、ライフスタイルや働き方の多様化が進む中、家庭における日常生活や趣味の写真印刷、仕事・学習における文書印刷など、それぞれの活動に応じた印刷ニーズに応える使い勝手を向上させました。 レーザープリンターについては、景気の先行きに対する懸念や金利上昇により、ディーラーやユーザーでは在庫を絞る動きが継続しています。また、長期的なトレンドとしてもスマートフォン、クラウド環境の普及等でユーザーのプリントスタイルが変化する中、プリント需要の減少による市場全体の成長鈍化が懸念されています。そのような環境下において、より付加価値の高い製品、特にカラー複合機の拡販に注力しています。更に、当社は各種の技術的イノベーションにより、顧客との一定期間にわたる契約型ビジネスを推進するなどの競争力強化と顧客価値向上をはかり、数量・シェア拡大を図っていきます。生産面では、サプライチェーンの多元化などを推進することにより引き続き製品の安定供給に努めていきます。 ※12025年2月現在。(当社調べ)※22025年2月現在。(当社調べ) Ⅱ.メディカルビジネスユニット メディカルグループはCT、MRI、超音波、X線システムなどの「画像診断システム事業」、「ヘルスケアIT事業」、「体外診断事業」の3つの事業を展開し、世界190以上の国や地域でユーザーをサポートしており、患者さんに優しく確信度の高い医療の提供に貢献するとともに、医療の効率化、コスト削減を実現する医療システム・サービスを提供しています。 コア事業である画像診断システム事業は、検出器や磁石、臨床アプリや当社のAI技術などの次世代の技術開発で商品競争力の強化を推進しています。長きにわたり日本でトップシェアを堅持しているCTでは、ディープラーニングを用いた「Advanced intelligent Clear-IQ Engine(AiCE)」を更に進化させた超解像画像再構成技術「Precise IQ Engine(PIQE)」と先進自動化技術により操作性を追求した「INSTINX」を搭載したフラッグシップCT「Aquilion ONE / INSIGHT Edition」の販売をグローバルに展開しています。これにより医療現場の人手不足の解消につながる医療ワークフローの効率化や迅速かつ簡便なプロセスを提供し、評価をいただいています。また、次世代フォトンカウンティングCT(PCCT)の早期実用化に向けた共同臨床研究機関を新たに加え、臨床評価を加速しています。このような取り組みによりCTグローバルNO.1の達成と、メディカル事業領域におけるキヤノンブランドの

※本記事は「キヤノン株式会社」の令和6年12期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

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連結財務指標と単体財務指標の違いについて

連結財務指標とは

連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。

単体財務指標とは

単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。

本記事での扱い

本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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