オリンパス株式会社の基本情報

会社名オリンパス株式会社
業種精密機器
従業員数連29297名 単2494名
従業員平均年齢43.31歳
従業員平均勤続年数13.53年
平均年収10459502円
1株当たりの純資産405.22円
1株当たりの純利益(連結)102.99円
決算時期3月
配当金20円
配当性向37.1%
株価収益率(PER)36.1倍
自己資本利益率(ROE)(連結)11.1%
営業活動によるCF1904億円
投資活動によるCF▲654億円
財務活動によるCF▲2115億円
研究開発費※141億円
設備投資額※1216億円
販売費および一般管理費※1611.1億円
株主資本比率※250.2%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1) 会社の経営の基本方針 当社グループは、事業活動を通じて、健康・安心・心の豊かさといった世界の人々、社会の根源的な要請に応え、広く社会に貢献するという考え方を経営理念の「私たちの存在意義」として「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」と示し、すべての活動の基本思想としています。 当社グループはこれからも、経営理念実現のために、革新的な製品やサービスを社会に提供し、事業の持続的成長と企業価値向上に努めていきます。  また、2023年4月以降、「患者さんの安全と持続可能性」、「成長のためのイノベーション」、「生産性の向上」の3つを基本的な指針として掲げています。誠実で透明性のある企業であり続けるために、規制当局やステークホルダーと協力して、強固で持続的な組織の構築に努め、ヘルスケア業界ならびにESGを主導する企業となるべく、あらゆる取り組みにおいて顧客体験価値を中心に据えていきます。また、患者さんの安全を第一に掲げ、QA/RA(品質保証および法規制対応)に注力し、「グローバル全地域での品質システムと業務プロセスの統一を目指した改革の実施」「グローバルな品質・コンプライアンス機能の強化による、一貫した施策の展開」「コンプライアンス上の問題を解決したうえで、是正活動の完遂」等の取り組みを推進します。そして、長期的な戦略に沿った高品質な製品・サービスをさまざまな分野で提供し、事業の持続的成長と企業価値向上に努めていきます。 (2) 経営戦略 当社は、2023年に公表した経営戦略に則って事業運営を行っています。 (長期的かつ持続的な成長のための戦略的な価値の源泉) 「Shift to Grow」という新たなステージにおいて、成長と収益性の両面に注力することを念頭に、主要セグメントにおける当社の市場ポジションの拡大や、最終的に患者さんの体験価値と治療成果の改善を目指しています。これに資する長期的かつ持続可能な成長を支える価値の源泉として、「ⅰ)事業拡大とグローバル展開」「ⅱ)戦略的M&A」「ⅲ)ケア・パスウェイの強化」「ⅳ)インテリジェント内視鏡医療エコシステム」の4つを掲げています。ⅰ)事業拡大とグローバル展開 世界的な人口動態の変化と疾病発生の増加を受けて、当社の製品・サービスが対象とする疾患に対するソリューションへのニーズが高まる中、引き続き当社がリーディングポジションを持つ消化器科・泌尿器科・呼吸器科の3つの領域に注力し、「先進イメージング」「精緻な治療」「高付加価値ソリューション」を通じて、患者様のケア・パスウェイに最適なソリューションを提供します。・主力の消化器内視鏡システム「EVIS X1(イーヴィス・エックスワン)」:2021年3月期に欧州、アジア、日本で、2024年3月期には米国、中国でも発売しました。スコープのラインアップ拡充も含め、今後さらなる拡販を目指します。・シングルユース内視鏡:2022年3月期に気管支鏡を、2024年3月期に咽喉鏡を発売しました。2026年3月期には尿管鏡を発売予定であり、今後は十二指腸鏡、胆道鏡の領域においてもシングルユース内視鏡の発売を目指しています。(一部地域では未承認、未発売の技術を含みます)・中国市場:当社にとって戦略的に重要な市場の一つであり、「臨床医の教育プログラムやトレーニングへの投資」「中国の医療従事者のアンメットニーズの探索」を継続します。また、中国国内に現地生産拠点を設立し、中国市場向けに中国国産製品を提供するための施策を加速しています。 ⅱ)戦略的M&A 消化器科、泌尿器科、呼吸器科における既存の疾患領域や高い成長が期待できる関連分野において、タックイン M&A*の機会を通じて製品ポートフォリオを継続的に強化し、「臨床・治療ワークフローの変革」「ケアの向上」「事業の地理的拡大」を図ります。包括的なソリューションの提供によって患者さんの治療成果の向上に貢献していきます。*当社のポートフォリオに合致し、既存のビジネスを補完・増強するためのM&A ⅲ)ケア・パスウェイの強化 当社は、医療水準の向上によって患者さんのアウトカムを改善することを目指しています。消化器科・泌尿器科・呼吸器科の3つの領域を中心に、早期発見や診断、ステージ分類、治療、予後のケアに至るまでのケア・パスウェイの中で、当社のソリューションを通して患者さんと医療従事者のエクスペリエンスを向上させ、より多くの患者さんに医療アクセスを提供し、診療の質と成果を改善します。 ⅳ)インテリジェント内視鏡医療エコシステム 慢性疾患の増加と高齢化を受けて、より良い治療成果をより多くの人に届け、医療提供者と患者さんのエクスペリエンスを向上させながら、医療コストを抑えることの必要性が一層高まっています。当社はこのような課題に対して、コネクティビティ、AI、データインサイトを活用したインテリジェント内視鏡医療によるソリューションの提供を検討しており、「ワークフロー管理」「CAD*1およびリアルタイムな手技の支援」「AIによる臨床・業務インサイト」等を通じて、ユーザーエクスペリエンスを標準化していきます。AIを活用したインテリジェント内視鏡医療エコシステムは、新たなソフトウェアプラットフォームによって、お客様、当社、そして、パートナー企業との間で価値の共創を可能にし、プラットフォームのソフトウェアやアプリケーションのアップグレードによって、常にイノベーションを提供し続けるビジネスモデルに移行することを目指し、より精度の高い早期発見、診断、治療を実現していきます。 2026年3月期には、クラウド型の統合された内視鏡アプリケーションおよびソリューションを提供する新しいサブブランドである「OLYSENSE*2」を立ち上げ、欧州および米国で上部および下部消化管の病変の検出、鑑別、分析を支援するCAD/AI製品である「CADIIE」を展開する予定です*3。(一部地域では未承認、未発売の技術を含みます)*1Computer Aided Detection/Diagnosis:AIによる検出/診断支援*2OLYSENSEはオリンパス株式会社および/またはそのグループ会社の商標です。すべての商標、ロゴ、ブランド名は、それぞれの所有者に帰属します*3米国では、CADDIEは大腸ポリープが疑われる病変の検出を支援する目的でのみ認可されています。CADDIEには、CADDIEのポリープ検出機能がオンであり、使用中であることをユーザーが確認するための便利な機能として、「盲腸到達通知」AI機能が搭載されています。欧州では、CADDIEは「盲腸到達通知」AI機能および「粘膜洗浄度」AI機能を含む、大腸ポリープが疑われる病変の検出および診断を支援する機能が承認されています (投資とイノベーションを可能にする取り組み) 当社は、投資やイノベーションといった価値創造の取り組みを実現する基盤の強化のため、特に以下の4点に注力して取り組んでいます。・QA/RA:一貫性のある強固な品質システム導入や体制強化によるQA/RAの改革および是正活動の完遂・R&D:イノベーションの加速に向けたR&D投資のスピードアップと投資額の増加。より強固なイノベーション・パイプラインの構築、より積極的な戦略パートナーシップ推進、市場投入までの期間の短縮・製造、サプライチェーンマネジメント:売上原価の改善、組織規模と拠点構造の最適化、プロセスの合理化とデジタル化、更なる効率化の追求・GTOM(Global Target Operating Model):グローバルのガバナンスとオペレーションの継続的な改善。意思決定プロセスの明確化、イノベーション推進に向けたより効率的なリソース配分を可能にするハイパフォーマンスな組織の実現 (3) 品質保証・法規制対応の変革プロジェクト「Elevate」 「Elevate」は、前期に開始した、複数年にわたる品質保証・法規制対応の変革プロジェクトです。規制当局に対するコミットメントを果たし、未来に向けて品質文化の基盤を強化するため、「設計および開発」「製造およびサプライヤーマネジメント」「サプライチェーン、市場導入・市販後の取り組み」「End-to-End(E2E)品質プロセス」の軸で、20の主要施策から構成されています。グローバルかつ機能横断型の強力なチームによって推進しており、全社的な変革の取り組みとして、4つの目標を掲げています。 Elevateの実行により、製品のライフサイクルマネジメントの改善や、業務プロセスのデジタル化によるコスト削減と効率性の向上、製品の開発、認可取得、発売までのリードタイムの短縮といった効果も期待でき、この取り組みを当社グループの将来的なイノベーションや成長、収益性向上を実現するための重要な施策の一つとして位置付けています。 当期も全社を挙げてElevateの取り組みを推進しており、引き続き順調に進捗しています。2026年3月期末までに規制当局に対する全てのコミットメントを果たすことを目指しています。 (4) 組織再編 2025年4月に、事業部門である内視鏡事業と治療機器事業を消化器内視鏡ソリューション事業(GIS)とサージカルインターベンション事業(SIS)に再編成しました。この改編を通じて、より迅速な事業運営や地域間における一貫性の確保、縦割り組織の解消に加え、患者さんとお客様を中心とした事業成長の実現を目指します。 (5) 米国関税政策対応 米国関税政策の影響は不確実性が高い状況ではありますが、医療現場に対する当社製品やサービスの提供継続を最優先とした上で、影響の低減に向けた対応を進めてまいります。
経営者による財政状態の説明
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)業績等の概要① 業績 当連結会計年度において、当社は、PTCJ-6Oホールディングス株式会社及びPTCJ-6Fホールディングス株式会社(ポラリス・キャピタル・グループ株式会社が設立した特別目的会社。以下「ポラリス・キャピタル・グループ」と総称します)に対して、オリンパステルモバイオマテリアル株式会社およびFH Ortho SAS社から構成される整形外科事業を譲渡することについて、ポラリス・キャピタル・グループとの間でプット・オプション契約を締結し、当該契約に基づき、2024年7月12日に譲渡を完了しました。これに伴い、整形外科事業に関わる損益を非継続事業に分類しており、前連結会計年度についても同様の形で表示しています。なお、売上高、営業利益、調整後営業利益、税引前利益、継続事業からの当期利益については、非継続事業を除いた継続事業の金額を、当期利益及び親会社の所有者に帰属する当期利益については、継続事業及び非継続事業を合算した数値を表示しています。 また、当社グループは、従来「内視鏡事業」「治療機器事業」及び「その他事業」の3区分を報告セグメントとしていましたが、整形外科事業が非継続事業に分類されたことにより、継続事業に含まれる、整形外科事業以外の「その他事業」について当期見込まれる財務情報の金額的な重要性が低下するため、「報告セグメント」より除外しています。そのため、中間連結会計期間より報告セグメントを「内視鏡事業」及び「治療機器事業」の2区分に変更しており、前連結会計年度についても同様の形で表示しています。 なお、当社は、2025年4月1日付で、より効率的で、患者さんとお客様中心の展開とするため、事業部門の再編成を含む組織改編を実施いたしました。当社グループは、従来「内視鏡事業」「治療機器事業」の2区分を報告セグメントとしていましたが、2026年3月期より「消化器内視鏡ソリューション事業」「サージカルインターベンション事業」の2区分を報告セグメントとすることに変更いたします。 業績全般に関する動向 当連結会計年度における世界経済は、持ち直しの動きが継続しましたが、アメリカの通商政策による下振れリスクに加え、金融資本市場の変動の高まりの影響にも注視する必要があります。わが国経済においても、景気は緩やかに持ち直している一方で、世界経済の先行きを注視する必要があります。 こうした環境下にあるものの、当社グループは、2023年5月に公表した経営戦略に沿って、「患者さんの安全と持続可能性」「成長のためのイノベーション」「生産性の向上」という3つの優先事項のもと、グローバル・メドテックカンパニーへの変革に向けて引き続き取り組んでいます。 業績の状況 以下(1)から(10)は継続事業の業績を、(11)は継続事業と非継続事業の合計の業績をそれぞれ示しています。(単位:百万円) 2024年3月期2025年3月期増減額増減率(%)(1)売上高925,752997,33271,5807.7%(2)売上原価307,320313,6356,3152.1%(3)販売費及び一般管理費466,758495,65428,8966.2%(4)持分法による投資損益/その他の収益/その他の費用△100,287△25,58174,706-(5)営業利益51,387162,462111,075216.2%(6)調整後営業利益151,316188,50937,19324.6%(7)金融損益△7,776△3,3924,384-(8)税引前利益43,611159,070115,459264.7%(9)法人所得税費用8,54641,27032,724382.9%(10)継続事業からの当期利益35,065117,80082,735235.9%(11)親会社の所有者に帰属する当期利益242,566117,855△124,711△51.4%為替レート(円/米ドル)144.62152.587.96-為替レート(円/ユーロ)156.80163.756.95-為替レート(円/人民元)20.1421.100.96- (1)売上高 内視鏡事業、治療機器事業ともに増収となり、前期比715億80百万円増収の9,973億32百万円となりました。詳細は以下のセグメント別の動向に関する分析に記載しています。(2)売上原価 前期比63億15百万円増加の3,136億35百万円となりました。売上原価率は、前期に内視鏡事業で引当計上していた高速気腹装置の市場是正処置に係る費用約52億円や、小腸内視鏡システムなどの自主回収に伴う費用約50億円がなくなったことにより、31.4%と前期比1.7ポイント良化しました。(3)販売費及び一般管理費 前期比288億96百万円増加の4,956億54百万円となりました。販売費及び一般管理費の対売上高比率は、研究開発費が増加したものの、増収により、49.7%と前期比0.7ポイント良化しました。(4)持分法による投資損益/その他の収益/その他の費用 持分法による投資損益、その他の収益およびその他の費用の合算で255億81百万円の費用となり、前期比で損益は、747億6百万円改善しました。その他の収益に関して、当期は当社の連結子会社であるOlympus (Shenzhen) Industrial Ltd.が中国・深?市に保有する土地使用権及び建物を深?市政府へ返還したことに伴う補償金約12億円や、Olympus (Shenzhen) Industrial Ltd.と深?市安平泰投??展有限公司との間で和解が成立したことに伴い、訴訟等に係る損失に備えるため過去に見積もり計上した引当金の戻入額約9億円を計上しており、前期比で18億14百万円増加しました。その他の費用に関しては、前期に計上していたVeran Medical Technologies, Inc.の電磁ナビゲーションシステム等の製造・販売終了に関する損失約519億円や、Taewoong Medical Co., Ltd.の株式取得契約の締結及び解除に関連する費用約20億円がなくなったことに加え、内視鏡事業および治療機器事業における開発資産の減損損失がそれぞれ約39億円、約19億円、内視鏡事業における仕掛中の研究開発の減損損失約45億円、品質保証・法規制対応の変革プロジェクトElevateに係る一時的な費用が約37億円、社外転進支援制度の実施に伴う特別支援金等の費用が約30億円減少したことにより、前期比で720億68百万円減少しました。(5)営業利益 上記の要因により、前期比1,110億75百万円増益の1,624億62百万円となりました。(6)調整後営業利益 営業利益からその他の収益およびその他の費用を除外した調整後営業利益は、上記の要因により、前期比371億93百万円増益の1,885億9百万円となりました。(7)金融損益 金融収益と金融費用を合わせた金融損益は33億92百万円の損失となり、前期比で損益は43億84百万円改善しました。損益の改善は、主として為替差損が減少したことによるものです。(8)税引前利益 上記の要因により、前期比で1,154億59百万円増加となる1,590億70百万円となりました。(9)法人所得税費用 税引前利益が増加したことにより、前期比で327億24百万円増加し、412億70百万円となりました。(10)継続事業からの当期利益 上記の要因により、前期比で827億35百万円増加となる1,178億円となりました。(11)親会社の所有者に帰属する当期利益(継続事業及び非継続事業の合算) 前連結会計年度に非継続事業において科学事業の譲渡益約3,490億円を計上したことにより、前期比で1,247億11百万円減益となる1,178億55百万円となりました。 (研究開発支出および設備投資) 当期においては、非継続事業を除いた継続事業で1,038億90百万円の研究開発費を投じるとともに、849億59百万円の設備投資を実施しました。 (為替影響) 為替相場は前期に対して、対米ドル、ユーロ及び人民元は円安で推移しました。期中の平均為替レートは、1米ドル=152.58円(前期は144.62円)、1ユーロ=163.75円(前期は156.80円)、1人民元=21.10円(前期は20.14円)となり、売上高では前期比で399億7百万円の増収要因、営業利益では前期比で207億75百万円の増益要因、調整後営業利益では前期比で213億90百万円の増益要因となりました。なお、為替の影響を除くと、連結売上高は前期比3.4%の増収、連結営業利益は前期比175.7%の減益となります。 セグメント別の動向に関する分析 売上高営業利益又は営業損失(△)前連結会計年度(百万円)当連結会計年度(百万円)増減率(%)前連結会計年度(百万円)当連結会計年度(百万円)増減率(%)内視鏡586,617636,1448.4104,684141,39835.1治療機器337,331360,6586.9△8,46661,453-小計923,948996,8027.996,218202,851110.8その他1,804530△70.6△287△473-消去又は全社---△44,544△39,916-連結計925,752997,3327.751,387162,462216.2(注) 製品系列を基礎として設定された事業に、販売市場の類似性を加味してセグメント区分を行っています。 [内視鏡事業] 内視鏡事業の連結売上高は、6,361億44百万円(前期比8.4%増)、営業利益は1,413億98百万円(前期比35.1%増)となりました。 消化器内視鏡分野では、国産優遇策などの影響もあり競争環境が激化する中国で売上が減少した一方、消化器内視鏡システム「EVIS X1」の販売が好調な北米で売上が増加し、前期比プラス成長となりました。 外科内視鏡分野では、中国で減収となった一方、北米やアジア・オセアニアで増収となりました。主に北米で、手術システムインテグレーションに係る新製品が好調に推移した結果、前期比プラス成長となりました。 医療サービス分野では、保守サービスを含む既存のサービス契約の安定的な売上に加えて、新規契約の増加もあり、欧州や北米を中心に、全ての地域で前期比プラス成長となりました。 内視鏡事業の営業損益は、次世代内視鏡システムなどに関わる研究開発費が増加したものの、増収による売上利益の増加に加え、前期に引当計上していた高速気腹装置の市場是正処置に係る費用約52億円や、小腸内視鏡システムなどの自主回収に伴う費用約50億円がなくなったことや、その他の費用として計上している、開発資産及び仕掛中の研究開発の減損損失がそれぞれ約39億円と約45億円、品質保証・法規制対応の変革プロジェクトElevateに係る一時的な費用が約23億円減少したことにより、増益となりました。 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比4.1%の増収、営業利益は前期比19.8%の増益となっています。 [治療機器事業] 治療機器事業の連結売上高は、3,606億58百万円(前期比6.9%増)、営業利益は614億53百万円(前期は84億66百 万円の営業損失)となりました。 治療機器事業では、注力三領域である、消化器科(処置具)分野、泌尿器科分野、呼吸器科分野のすべての分野で、北米や欧州を中心にプラス成長となりました。 消化器科処置具分野では、膵管や胆管などの内視鏡診断・治療に使用するERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影術)用の製品群などで売上が増加しました。 泌尿器科分野では、BPH(前立腺肥大症)用の切除用電極や、尿路結石用破砕装置「SOLTIVE SuperPulsed Laser System」の売上が増加しました。 呼吸器科分野では、EBUS-TBNA(超音波気管支鏡ガイド下針生検)で主に使われる処置具や超音波気管支鏡が好調に推移しました。 その他の治療領域では、主に他社製品の取り扱い終了の影響を受けた日本で、減収となりました。 治療機器事業の営業損益は、研究開発費が増加したものの、増収による売上利益の増加に加え、その他の費用として、前期に計上していたVeran Medical Technologies, Inc.の電磁ナビゲーションシステム等の製造・販売終了に関する損失約519億円、Taewoong Medical Co., Ltd.の株式取得契約の締結及び解除に関連する費用約20億円がなくなったことや、開発資産の減損損失が約19億円、品質保証・法規制対応の変革プロジェクトElevateに係る一時的な費用が約13億円減少したことにより、増益となりました。 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比2.6%の増収、営業損益は前期比644億34百万円の増益となっています。 ② 財政状態の状況 前連結会計年度末(百万円)当連結会計年度末(百万円)増 減(百万円)増減率(%)資産合計1,534,2161,432,826△101,390△6.6資本合計757,186751,733△5,453△0.7親会社所有者帰属持分比率49.4%52.5%3.1% [資産] 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末から1,013億90百万円減少し、1兆4,328億26百万円となりました。自己株式の取得により1,000億2百万円を支出したことを主因に現金及び現金同等物が884億1百万円減少し、さらに、法人所得税の還付を主因に未収法人所得税が323億4百万円減少しました。[負債] 負債合計は、前連結会計年度末から959億37百万円減少し、6,810億93百万円となりました。社債の償還および借入金の返済により社債および借入金が705億14百万円減少し、また、製品保証引当金や十二指腸内視鏡の市場対応に係る引当金の減少により、引当金が155億84百万円減少となりました。さらに、未払費用の減少等により、その他流動負債が135億23百万円減少しました。 [資本] 資本合計は、前連結会計年度末から54億53百万円減少し、7,517億33百万円となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益1,178億55百万円を計上した一方で、自己株式の取得1,000億2百万円、剰余金の配当209億81百万円を行ったことが主な要因です。 また、当社は2023年11月9日開催の取締役会決議に基づき、2024年4月30日に自己株式771億61百万円の消却を行っています。さらに、2024年5月10日開催の取締役会決議に基づき、自己株式の取得1,000億2百万円と2025年1月31日に自己株式の消却953億38百万円を行いました。結果として自己株式は740億94百万円減少(資本におけるマイナス表示額の縮小)しています。 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は前期末の49.4%から52.5%となりました。 ③ キャッシュ・フローの状況 前連結会計年度(百万円)当連結会計年度(百万円)増減(百万円)営業活動によるキャッシュ・フロー42,365190,463148,098投資活動によるキャッシュ・フロー359,992△65,469△425,461財務活動によるキャッシュ・フロー△276,010△211,54264,468現金及び現金同等物期末残高340,933252,532△88,401 [営業活動によるキャッシュ・フロー] 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、1,904億63百万円の増加(前連結会計年度は423億65百万円の増加)となりました。税引前当期利益1,590億70百万円や減価償却費及び償却費の調整664億56百万円により増加した一方、営業債権及びその他の債権の増加により277億25百万円減少しました。[投資活動によるキャッシュ・フロー] 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、654億69百万円の減少(前連結会計年度は3,599億92百万円の増加)となりました。有形固定資産の取得による支出460億1百万円、無形資産の取得による支出192億8百万円が主な要因です。 [財務活動によるキャッシュ・フロー] 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、2,115億42百万円の減少(前連結会計年度は2,760億10百万円の減少)となりました。自己株式の取得による支出1,000億2百万円、社債の償還及び長期借入金の返済による支出700億35百万円、配当金の支払209億81百万円、リース負債の返済による支出193億2百万円が主な要因です。 以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比較して884億1百万円減少し、2,525億32百万円となりました。(2)生産、受注及び販売の実績① 生産実績セグメントの名称生産高(百万円)前期比(%)内視鏡423,731△0.7治療機器251,285△1.1その他789△41.7計675,805△0.9(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。 ② 受注実績 当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しています。③ 販売実績セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)内視鏡636,1448.4治療機器360,6586.9その他530△70.6計997,3327.7(注) セグメント間の取引については相殺消去しています。 (3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において判断したものです。 ① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析 2025年3月期は、能登半島地震に端を発したサプライチェーンの混乱や、中国における厳しい事業環境など相次ぐ、さまざまな課題に直面した1年でした。このような状況にありながらも、年間を通じて消化器内視鏡システム「EVIS X1」の販売が好調な北米が牽引し、実績は堅調に推移しました。売上高は、為替の影響を除くと、前期比3.4%の増収となりました。調整後営業利益率は、増収による売上利益の増加に加え、前期に売上原価で引当計上していた費用がなくなったことなどにより、18.9%となりました。今後も、持続的な売上成長を図るとともに、収益性のさらなる改善に取り組みます。 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る状況(i) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容 「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)業績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、当社グループは、当連結会計年度において、営業活動によるキャッシュ・インフローが堅調であった一方で、自己株式の取得による支出、社債の償還および長期借入金の返済による支出により、当連結会計年度末時点で保有する手元資金は2,525億32百万円(前連結会計年度末より884億1百万円減少)となりました。この手元資金規模は、安定した事業運営および財務基盤の確保に十分な水準であると認識しています。 (ⅱ) 財務政策 当社グループは、適切な財務レバレッジのコントロールによる、財務健全性の維持と資本効率性の向上の両立を、財務政策の基本方針としています。この基本方針のもと、有利子負債/EBITDA倍率や自己資本比率等の指標を意識し、財務健全性を維持する財務政策を行っています。加えて、国内および海外の資本市場での公募社債の発行等、資金調達手法の多様化により資金調達基盤を強化し、資金調達コストの低減にも努めています。 当社は、格付投資情報センター、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン、およびムーディーズ・ジャパンより信用格付けを取得しており、2025年3月31日現在における状況は、次のとおりです。 格付投資情報センター:A+(長期、見通し安定的)、a-1(短期)S&Pグローバル・レーティング・ジャパン:BBB+(長期、見通し安定的)ムーディーズ・ジャパン:Baa1(長期、見通し安定的) (ⅲ) 資金需要 当社グループの運転資金需要は主に、当社グループの製品を製造するための材料および部品の購入費、製造費のほか、人件費や広告・販売促進費等の営業費用です。また、当社グループの投資資金需要は主に、研究開発支出や設備投資です。将来の成長に向けた戦略的な投資への資金需要に対しても、財務健全性の維持と資本効率性の向上を両立させながら、積極的に対応していきます。 (ⅳ) 資金調達 当社グループの運転資金および投資資金は、手元資金を充当していますが、必要に応じて金融機関からの借入や社債の発行による資金調達を実施しています。これらの借入金および社債については、営業活動によるキャッシュ・フローで十分に完済できると考えています。また、主要な取引先金融機関と良好な取引関係を維持していることに加えて、(ⅱ) 財務政策に記載の通り、格付投資情報センターの信用格付けはA+、S&Pグローバル・レーティング・ジャパンはBBB+およびムーディーズ・ジャパンはBaa1となっていることから、安定的かつ低コストで適時滞りなく資金調達が可能と考えています。さらに、主要通貨(円・米ドル・ユーロ・ポンド)によるグローバルコミットメントラインを設定しており、機動的かつ円滑な資金調達が可能な体制を構築しています。財務健全性の維持と資本効率性の向上を両立させながら、今後も資金需要に応じて適切な資金調達を実施していきます。 (ⅴ) 資金配分 当社グループの持続的な成長を実現させるため、資金は、成長ドライバーへの投資に優先的に配分していく方針であり、収益性の高い既存事業への投資や成長機会への戦略的な投資を実施していきます。また、事業成長等への投資を優先しつつ、株主価値を考慮した積極的な株主還元も実施していきます。配当については、安定的かつ段階的に増配し、自己株式の取得については、投資機会と資金状況に応じて機動的に実施する方針です。安定した事業運営に十分な手元資金を確保しながら、成長投資や株主還元にも適切に資金配分をしていきます。 ③ 重要性がある会計方針および見積り 当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りにつきましては、合理的な基準に基づいて実施しています。重要性がある会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

※本記事は「オリンパス株式会社」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

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連結財務指標と単体財務指標の違いについて

連結財務指標とは

連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。

単体財務指標とは

単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。

本記事での扱い

本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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