オリンパス株式会社の基本情報

会社名オリンパス株式会社
業種精密機器
従業員数連28838名 単2834名
従業員平均年齢43.18歳
従業員平均勤続年数13.63年
平均年収10410683円
1株当たりの純資産439.81円
1株当たりの純利益241.97円
決算時期3月
配当金18円
配当性向7.4%
株価収益率(PER)9.1倍
自己資本利益率(ROE)63.1%
営業活動によるCF423億円
投資活動によるCF3599億円
財務活動によるCF▲2760億円
研究開発費※185億円
設備投資額※114億円
販売費および一般管理費※1691.24億円
株主資本比率※253.9%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1) 会社の経営の基本方針 当社グループは、事業活動を通じて、健康・安心・心の豊かさといった世界の人々、社会の根源的な要請に応え、広く社会に貢献するという考え方を経営理念の「私たちの存在意義」として「世界の人々の健康と安心、心の豊かさの実現」と示し、すべての活動の基本思想としています。また、2024年1月には、グローバル・メドテックカンパニーとして変革するため、従業員の行動規範である「Our Core Values」を改定しました。 当社グループはこれからも、経営理念実現のために、革新的な製品やサービスを社会に提供し、事業の持続的成長と企業価値向上に努めていきます。  また2023年4月以降、「患者様の安全と持続可能性」、「成長のためのイノベーション」、「生産性の向上」の3つを基本的な指針として掲げています。誠実で透明性のある企業であり続けるために、規制当局やステークホルダーと協力して、強固で持続的な組織の構築に努め、ヘルスケア業界ならびにESGを主導する企業となるべく、あらゆる取り組みにおいて顧客体験価値を中心に据えていきます。また、患者様の安全を第一に掲げ、QA/RA(品質保証および法規制対応)に注力し、「グローバル全地域での品質システムと業務プロセスの統一を目指した改革の実施」「グローバルな品質・コンプライアンス機能の強化による、一貫した施策の展開」「コンプライアンス上の問題を解決したうえで、是正活動の完遂」等の取り組みを推進します。そして、長期的な戦略に沿った高品質な製品・サービスをさまざまな分野で提供し、事業の持続的成長と企業価値向上に努めていきます。 (2) 経営戦略 経営理念の実現のために当社は2023年に新たな経営戦略を発表しました。 (長期的かつ持続的な成長のための戦略的な価値の源泉) 今後は、「Shift to Grow」という新たなステージにおいて、成長と収益性の両面に注力することを念頭に、主要セグメントにおける当社の市場ポジションの拡大や、最終的に患者様の体験価値と治療成果の改善を目指しています。これに資する長期的かつ持続可能な成長を支える価値の源泉として、4つのキードライバーとして、「ⅰ)事業拡大とグローバル展開」「ⅱ)戦略的M&A」「ⅲ)ケア・パスウェイの強化」「ⅳ)インテリジェント内視鏡医療エコシステム」です。ⅰ)事業拡大とグローバル展開 世界的な人口動態の変化と疾病発生の増加を受けて、当社の製品・サービスが対象とする疾患に対するソリューションへのニーズが高まる中、引き続き当社がリーディングポジションを持つ消化器科・泌尿器科・呼吸器科の3つの領域に注力し、「先進イメージング」「精緻な治療」「高付加価値ソリューション」を通じて、患者様のケア・パスウェイに最適なソリューションを提供します。・主力の消化器内視鏡システム「EVIS X1(イーヴィス・エックスワン)」:2021年3月期に欧州、アジア、日本で、2024年3月期には米国、中国でも発売しました。今後さらなる拡販を目指します。・シングルユース内視鏡:2022年3月期に気管支鏡を、2024年3月期に咽喉鏡を発売しました。2025年3月期には尿管鏡を発売予定であり、今後は十二指腸鏡、胆道鏡の領域においてもシングルユース内視鏡の発売を目指しています。(一部地域では未承認、未発売の技術を含みます)・中国市場:当社にとって戦略的に重要な市場の一つであり、「臨床医の教育プログラムやトレーニングへの投資」「中国の医療従事者のアンメットニーズの探索」を継続します。また、中国国内に現地生産拠点を準備中で、中国市場向けに中国国産製品を提供することを検討しています。 ⅱ)戦略的M&A 消化器科、泌尿器科、呼吸器科における既存の疾患領域や高い成長が期待できる関連分野において、タックイン M&Aの機会を通じて製品ポートフォリオを継続的に強化し、「臨床・治療ワークフローの変革」「ケアの向上」「事業の地理的拡大」を図ります。包括的なソリューションの提供によって患者様の治療成果の向上に貢献していきます。 ⅲ)ケア・パスウェイの強化 当社は、医療水準の向上によって患者様のアウトカムを改善することを目指しています。消化器科・泌尿器科・呼吸器科の3つの領域を中心に、早期発見や診断、ステージ分類、治療、予後のケアに至るまでのケア・パスウェイの中で、当社のソリューションを通して患者様と医療従事者のエクスペリエンスを向上させ、より多くの患者様に医療アクセスを提供し、診療の質と成果を改善します。 ⅳ)インテリジェント内視鏡医療エコシステム 慢性疾患の増加と高齢化を受けて、より良い治療成果をより多くの人に届け、医療提供者と患者様のエクスペリエンスを向上させながら、医療コストを抑えることの必要性が一層高まっています。当社はこのような課題に対して、コネクティビティ、AI、データインサイトを活用したインテリジェント内視鏡医療によるソリューションの提供を検討しており、「ワークフロー管理」「CAD*およびリアルタイムな手技の支援」「AIによる臨床・業務インサイト」等を通じて、ユーザーエクスペリエンスを標準化していきます。AIを活用したインテリジェント内視鏡医療エコシステムは、新たなソフトウェアプラットフォームによって、お客様、当社、そして、パートナー企業との間で価値の共創を可能にし、プラットフォームのソフトウェアやアプリケーションのアップグレードによって、常にイノベーションを提供し続けるビジネスモデルに移行することを目指し、より精度の高い早期発見、診断、治療を実現していきます。*Computer Aided Detection/Diagnosis:AIによる検出/診断支援 (投資とイノベーションを可能にする取り組み) 当社は、投資やイノベーションといった価値創造の取り組みを実現する基盤の強化のため、特に以下の4点に注力して取り組んでいます。・QA/RA:一貫性のある強固な品質システム導入や体制強化によるQA/RAの改革および是正活動の完遂・R&D:イノベーションの加速に向けたR&D投資のスピードアップと投資額の増加。より強固なイノベーション・パイプラインの構築、より積極的な戦略パートナーシップ推進、市場投入までの期間の短縮・製造、サプライチェーンマネジメント:売上原価の改善、組織規模と拠点構造の最適化、プロセスの合理化とデジタル化、更なる効率化の追求・GTOM(Global Target Operating Model):グローバルのガバナンスとオペレーションの継続的な改善。意思決定プロセスの明確化、イノベーション推進に向けたより効率的なリソース配分を可能にするハイパフォーマンスな組織の実現 (財務ガイダンス) 2024年3月期から2026年3月期の3年間の財務ガイダンスは以下の通りです。「Shift to Grow」という新たなステージにおいて、成長と収益性の両面に注力することを念頭に、約5%の売上高CAGRと、20%前後の調整後営業利益率を維持しつつ、EPSは売上成長を上回る約8%のCAGRを目指し、安定的な価値創造と競争力のある成長を実現していきます。* 為替前提を固定** 特殊要因調整後:その他の収益および費用等を除く。為替レート変動による影響は調整せず。実際の為替レートを使用 (3) 総合的な品質変革プログラム「Elevate」 基本的な指針における「患者様の安全と持続可能性」に関連して、当社は2024年3月期から2026年3月期までの3年間、QA/RAシステムやプロセス、ケイパビリティを強化するための取り組みを実施しています。このプログラムを通じて、当社の潜在能力を最大限に引き出すとともに、将来のイノベーションに向けた強固な基盤を構築し、持続的な成長の実現に繋げていきます。
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)業績等の概要① 業績 前第2四半期連結会計期間において、当社は、Bain Capital Private Equity, LP(そのグループを含み、以下「ベインキャピタル」)が投資助言を行う投資ファンドが間接的に株式を保有する特別目的会社である株式会社BCJ-66との間で科学事業の譲渡に関する株式譲渡契約を締結しました。これに伴い、前第2四半期連結会計期間より、科学事業に関わる損益を非継続事業に分類しています。なお、売上高、営業利益、調整後営業利益、税引前利益、継続事業からの当期利益については、非継続事業を除いた継続事業の金額を、親会社の所有者に帰属する当期利益については、継続事業及び非継続事業を合算した数値を表示しています。 また、当社グループは、従来「内視鏡事業」「治療機器事業」「科学事業」及び「その他事業」の4区分を報告セグメントとしておりましたが、前第2四半期連結会計期間より「内視鏡事業」「治療機器事業」及び「その他事業」の3区分に変更しています。 なお、上記の株式譲渡契約に基づき、当社から吸収分割により当社の科学事業を承継した当社の連結子会社である株式会社エビデント(以下、エビデント)の全株式については、2023年4月3日に譲渡を完了しました。 業績全般に関する動向 当連結会計年度における世界経済は、持ち直しの動きが継続しましたが、世界的な金融引き締めや中国経済の先行き懸念は、景気下振れのリスクとなっており、中東地域をめぐる情勢による影響も注視する必要があります。また、ウクライナにおける戦争や世界的なインフレもあり、原材料価格の上昇や、サプライチェーンの制約による影響が発生しました。わが国経済においても、景気は緩やかに持ち直している一方で、為替の変動や世界経済と同様に原材料価格の上昇、サプライチェーンの制約による影響、令和6年能登半島地震による影響が発生しました。 こうした環境下にあるものの、当社グループは、2023年5月に公表した経営戦略に沿って、「患者さんの安全と持続可能性」「成長のためのイノベーション」「生産性の向上」という3つの優先事項のもと、グローバル・メドテックカンパニーへの変革に向けて引き続き取り組んでいます。 業績の状況 以下(1)から(10)は継続事業の業績を、(11)は継続事業と非継続事業の合計の業績をそれぞれ示しています。(単位:百万円) 2023年3月期2024年3月期増減額増減率(%)(1)売上高881,923936,21054,2876.2%(2)売上原価285,074311,08726,0139.1%(3)販売費及び一般管理費420,547473,23152,68412.5%(4)持分法による投資損益/その他の収益/その他の費用10,307△108,294△118,601-(5)営業利益186,60943,598△143,011△76.6%(6)調整後営業利益176,793151,534△25,259△14.3%(7)金融損益△4,315△7,744△3,429-(8)税引前利益182,29435,854△146,440△80.3%(9)法人所得税費用44,3048,881△35,423△80.0%(10)継続事業からの当期利益137,99026,973△111,017△80.5%(11)親会社の所有者に帰属する当期利益143,432242,56699,13469.1%為替レート(円/米ドル)135.47144.629.15-為替レート(円/ユーロ)140.97156.8015.83-為替レート(円/人民元)19.7520.140.39- (1)売上高 前期比542億87百万円増収の9,362億10百万円となりました。内視鏡事業、治療機器事業、その他事業の全ての事業で増収となりました。詳細は次ページのセグメント別の動向に関する分析に記載しています。(2)売上原価 前期比260億13百万円増加の3,110億87百万円となりました。売上原価率は、内視鏡事業で高速気腹装置の市場是正処置に係る費用約52億円や、小腸内視鏡システムの自主回収に伴う費用約42億円を引当計上したことにより、33.2%と前期比0.9ポイント悪化しました。(3)販売費及び一般管理費 前期比526億84百万円増加の4,732億31百万円となりました。主な要因は、総合的な品質変革プログラム Elevateや、生産性向上などを目的とした事業運営基盤の整備・強化などの持続的成長に向けた費用です。(4)持分法による投資損益/その他の収益/その他の費用 持分法による投資損益、その他の収益およびその他の費用の合算で1,082億94百万円の費用となり、前期比で損益は、1,186億1百万円悪化しました。その他の収益に関して、前期は固定資産売却益として約164億円、Medi-Tate Ltd.の買収対価の一部である条件付対価の公正価値が変動したことによる買収対価の修正により約14億円を計上した一方で、当期は「その他事業」に含まれていたコラーゲン事業等の譲渡益約11億円を計上した結果、前期比で190億40百万円減少しました。その他の費用に関しては、前期に「Transform Olympus」を推進するための関連費用約24億円を計上した一方で当期においては、Veran Medical Technologies, Inc.の電磁ナビゲーションシステム等の製造・販売終了に関する損失約519億円、総合的な品質変革プログラム Elevateに係る一時的な費用約230億円、「その他事業」に含まれている整形外科事業に関する損失約86億円、内視鏡事業における開発資産及び仕掛中の研究開発の減損損失それぞれ約60億円と約46億円、治療機器事業における開発資産の減損損失約23億円、Taewoong Medical Co., Ltd.の株式取得契約の締結及び解除に関連する費用約20億円、社外転進支援制度の実施に伴う特別支援金等の費用約59億円を計上しており、前期比で987億12百万円増加しました。(5)営業利益 上記の要因により、前期比1,430億11百万円減益の435億98百万円となりました。(6)調整後営業利益 営業利益からその他の収益およびその他の費用を除外した調整後営業利益は、上記の要因により、前期比252億59百万円減益の1,515億34百万円となりました。(7)金融損益 金融収益と金融費用を合わせた金融損益は77億44百万円の損失となり、前期比で損益は34億29百万円悪化しました。損益の悪化は、主として各通貨に対して円安が進行したことにより為替差損が拡大したことによるものです。(8)税引前利益 上記の要因により、前期比で1,464億40百万円減少となる358億54百万円となりました。(9)法人所得税費用 税引前利益が減少したことにより、前期比で354億23百万円減少し、88億81百万円となりました。(10)継続事業からの当期利益 上記の要因により、前期比で1,110億17百万円減少となる269億73百万円となりました。(11)親会社の所有者に帰属する当期利益(継続事業及び非継続事業の合算) 当連結会計年度に非継続事業において科学事業の譲渡益約3,490億円を計上したことにより、前期比で991億34百万円増益となる2,425億66百万円となりました。 (研究開発支出および設備投資) 当期においては、非継続事業を除いた継続事業で863億68百万円の研究開発費を投じるとともに、807億27百万円の設備投資を実施しました。 (為替影響) 為替相場は前期に対して、対米ドル、ユーロ及び人民元は円安で推移しました。期中の平均為替レートは、1米ドル=144.62円(前期は135.47円)、1ユーロ=156.80円(前期は140.97円)、1人民元=20.14円(前期は19.75円)となり、売上高では前期比で514億4百万円の増収要因、営業利益では前期比で122億79百万円の増益要因、調整後営業利益では前期比で171億2百万円の増益要因となりました。なお、為替の影響を除くと、連結売上高は前期比0.3%の増収、連結営業利益は前期比83.2%の減益となります。 セグメント別の動向に関する分析 売上高営業利益又は営業損失(△)前連結会計年度(百万円)当連結会計年度(百万円)増減率(%)前連結会計年度(百万円)当連結会計年度(百万円)増減率(%)内視鏡551,823586,6176.3152,769104,684△31.5治療機器318,207337,3316.063,692△8,466-その他11,89312,2623.1△914△7,809-小計881,923936,2106.2215,54788,409△59.0消去又は全社---△28,938△44,811-連結計881,923936,2106.2186,60943,598△76.6(注) 製品系列を基礎として設定された事業に、販売市場の類似性を加味してセグメント区分を行っています。 [内視鏡事業] 内視鏡事業の連結売上高は、5,866億17百万円(前期比6.3%増)、営業利益は1,046億84百万円(前期比31.5%減)となりました。 消化器内視鏡領域では、反腐敗運動による入札活動の遅れなどの影響を受けた中国で売上が減少した一方、消化器内視鏡システム「EVIS X1」を発売した北米が好調に推移し、為替の円安効果もあって前期比プラス成長となりました。 外科内視鏡領域では、事業環境が厳しい中、一部製品の出荷停止による影響を受けた北米と中国で減収となった一方、外科内視鏡システム「VISERA ELITEⅢ」を発売した欧州やアジア・オセアニアの売上が増加し、為替の円安効果もあって前期比プラス成長となりました。 医療サービス領域では、保守サービスを含む既存のサービス契約の安定的な売上に加えて、新規契約の増加もあり、全ての地域で前期比プラス成長となりました。 内視鏡事業の営業損益は、増収による売上利益の増加があったものの、高速気腹装置の市場是正処置に係る費用約52億円や、小腸内視鏡システムの自主回収に伴う費用約42億円を引当計上、要員の増加およびインフレに伴う報酬の増加等の販売部門における費用の増加や、総合的な品質変革プログラム Elevateに関する費用の発生に加え、総合的な品質変革プログラムElevateに係る一時的な費用約147億円や、開発資産及び仕掛中の研究開発の減損損失それぞれ約60億円と約46億円をその他の費用として計上したこともあり、減益となりました。 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期比0.5%の増収、営業利益は前期比40.5%の減益となっています。 [治療機器事業] 治療機器事業の連結売上高は、3,373億31百万円(前期比6.0%増)、営業損失は84億66百万円(前期は636億92百 万円の営業利益)となりました。 消化器科処置具領域では、北米や欧州を中心にプラス成長となり、前期比増収となりました。また、膵管や胆管などの内視鏡診断・治療に使用するERCP(内視鏡的逆行性胆道膵管造影術)用の製品群、病変の切除に使用されるESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)、EMR(内視鏡的粘膜切除術)用の製品群の売上が増加しました。 泌尿器科領域では、欧州やアジア・オセアニアを中心にプラス成長となり、為替の円安効果もあって前期比増収となりました。また、BPH(前立腺肥大症)用の切除用電極等も売上の増加に貢献しました。 呼吸器科領域では、一部製品の供給不足や反腐敗運動による入札活動の遅れなどの影響があった中国で減収となった一方、北米や欧州を中心にプラス成長となり、為替の円安効果もあって前期比増収となりました。EBUS-TBNA(超音波気管支鏡ガイド下針生検)で主に使われる処置具の売上が増加しました。 その他の治療領域では、Gyrus Medical社の売却に伴い売上が減少したもの、為替の円安効果もあり前期比増収となりました。 治療機器事業の営業損益は、増収による売上利益の増加があったものの、総合的な品質変革プログラム Elevateに関する費用の発生や、サプライチェーンマネジメントの強化に係る費用の増加に加え、Veran Medical Technologies, Inc.の電磁ナビゲーションシステム等の製造・販売終了に関する損失約519億円や、総合的な品質変革プログラムElevateに係る一時的な費用約84億円、Taewoong Medical Co., Ltd.の株式取得契約の締結及び解除に関連する費用約20億円、開発資産の減損損失約23億円をその他の費用として計上したこともあり、減益となりました。 なお、為替の影響を除くと、売上高は前期並み、営業損益は前期比718億89百万円の減益となっています。 [その他事業] その他事業では、人工骨補填材等の生体材料、整形外科用器具などの開発・製造・販売等を行っているほか、新規事業に関する研究開発や探索活動に取り組んでいます。 その他事業の連結売上高は、122億62百万円(前期比3.1%増)、営業損失は78億9百万円(前期は9億14百万円の営業損失)となりました。 売上高は、中国などでプラス成長となり、増収となりました。その他事業の営業損益は、整形外科事業に関する損失約86億円をその他の費用として計上したこともあり、悪化しました。 ② 財政状態の状況 前連結会計年度末(百万円)当連結会計年度末(百万円)増 減(百万円)増減率(%)資産合計1,508,7011,534,21625,5151.7資本合計641,234757,186115,95218.1親会社所有者帰属持分比率42.4%49.4%7.0% [資産] 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末から255億15百万円増加し、1兆5,342億16百万円となりました。流動資産では、自己株式の取得により1,800億2百万円を支出したものの科学事業の譲渡対価3,790億91百万円の受領を主因に現金及び現金同等物が1,716億4百万円増加、棚卸資産が270億36百万円増加、営業債権及びその他の債権が229億27百万円増加、さらに、科学事業の譲渡益等に対する未収法人所得税が207億26百万円増加した一方で、科学事業の譲渡完了に伴い売却目的で保有する資産が1,695億66百万円減少しています。非流動資産では、有形固定資産が212億37百万円増加、営業債権及びその他の債権が187億84百万円増加、デリバティブ資産を中心としたその他の金融資産が126億70百万円増加した一方で、科学事業の譲渡益等に対する繰延税金資産が842億19百万円減少し、また、Veran Medical Technologies, Inc.の減損を主因に無形資産が247億96百万円減少しています。[負債] 負債合計は、前連結会計年度末から904億37百万円減少し、7,770億30百万円となりました。科学事業の譲渡益等 に対する未払法人所得税が609億9百万円減少、科学事業の譲渡完了に伴い売却目的で保有する資産に直接関連する負債が432億53百万円減少、また、社債及び借入金が404億41百万円減少しています。 [資本] 資本合計は、前連結会計年度末から1,159億52百万円増加し、7,571億86百万円となりました。自己株式の取得1,800億2百万円、剰余金の配当202億40百万円を行った一方で、科学事業の譲渡益等、親会社の所有者に帰属する当期利益を2,425億66百万円計上したこと、また在外営業活動体の換算差額を中心にその他の資本の構成要素が718億47百万円増加したことが主な要因です。 また、当社は2023年5月12日開催の取締役会決議に基づき、1,000億円の自己株式の取得及び2024年2月29日付での自己株式1,048億円の消却を行っています。そして、2023年11月9日開催の取締役会決議に基づく自己株式800億円の取得を行ったこと等により、自己株式739億31百万円増加(資本におけるマイナス表示額の拡大)しています。 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は前期末の42.4%から49.4%となりました。 ③ キャッシュ・フローの状況 前連結会計年度(百万円)当連結会計年度(百万円)増減(百万円)営業活動によるキャッシュ・フロー98,49042,365△56,125投資活動によるキャッシュ・フロー△58,414359,992418,406財務活動によるキャッシュ・フロー△143,178△276,010△132,832現金及び現金同等物期末残高205,512340,933135,421 [営業活動によるキャッシュ・フロー] 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、423億65百万円の増加(前連結会計年度は984億90百万円の増加)となりました。法人所得税の支払1,373億90百万円があったものの、減価償却費及び償却費の調整659億40百万円、減損損失の調整645億68百万円、税引前利益358億54百万円等により増加しています。[投資活動によるキャッシュ・フロー] 当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、3,599億92百万円の増加(前連結会計年度は584億14百万円の減少)となりました。有形固定資産の取得による支出464億25百万円、無形資産の取得による支出181億99百万円があったものの、科学事業の譲渡対価として3,790億91百万円を受領したこと、またエビデント等に対する貸付金533億73百万円を回収したことが主な要因です。 また、Taewoong Medical Co., Ltd.の株式取得契約に基づく支出436億47百万円に対して、2024年3月7日付の株 式取得契約の解除に伴い当連結会計年度では311億10百万円を回収しています。 [財務活動によるキャッシュ・フロー] 当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、2,760億10百万円の減少(前連結会計年度は1,431億78百万円の減少)となりました。自己株式の取得による支出1,800億2百万円、社債の償還及び長期借入金の返済による支出500億円、配当金の支払202億40百万円、リース負債の返済による支出195億18百万円が主な要因です。 以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比較して1,354億21百万円増加し、3,409億33百万円となりました。なお、関連指標については、社債及び借入金が前期末から404億41百万円減少したものの、営業活動によるキャッシュ・フローが423億65百万円と前連結会計年度と比較して561億25百万円減少したことにより、キャッシュ・フロー対有利子負債比率が前期末の3.5年から7.1年となりました。また、インタ レスト・カバレッジ・レシオは前期末の18.3倍から8.8倍になりました。(2)生産、受注及び販売の実績① 生産実績セグメントの名称生産高(百万円)前期比(%)内視鏡426,7871.4治療機器253,96910.1その他8,470-3.2計689,2264.4(注) 金額は販売価格によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっています。 ② 受注実績 当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しています。③ 販売実績セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)内視鏡586,6176.3治療機器337,3316.0その他12,2623.1計936,2106.2(注) セグメント間の取引については相殺消去しています。 (3)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末時点において判断したものです。 ① 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析 当社グループは、2023年5月に発表した経営戦略において、2024年3月期から2026年3月期までの3年間の財務ガイダンスを、売上高成長率、EPS成長率、特殊要因を調整した調整後営業利益率で定めています。 売上高の年平均成長率(CAGR)は、5%程度を目指しています。内視鏡事業においては、主に消化器内視鏡システム「EVIS X1」の拡販によって、5%のCAGRを、治療機器事業についても、消化器科処置具、泌尿器科、呼吸器科の3領域を中心に製品ポートフォリオの拡大とM&Aを通して5%超のCAGRを、それぞれ目指しています。 また、EPSについては、持続的な売上成長をベースとして、資本効率の改善によって、売上高の成長率を上回る約8%のCAGRを、調整後営業利益率については、20%前後で維持することを、それぞれ目指します。 2024年3月期においては、中国における反腐敗運動による入札遅れや、サプライチェーン課題の長期化、インフレ、令和6年能登半島地震など、当初想定していなかった影響があり、売上高は、為替の影響を除くと、前期比0.3%の増収となりました。調整後営業利益率は、増収による売上利益の増加があったものの、持続的成長に向けた、総合的な品質変革プログラム「Elevate」や、生産性向上を目的とした事業運営基盤の整備・強化などの費用により、16.2%となりました。今後も財務ガイダンスの達成に向けて、売上成長を図るとともに、収益性のさらなる改善に取り組みます。 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る状況(i) キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容 「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(1)業績等の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり、当社グループは、当連結会計年度において、投資活動によるキャッシュ・フローにより資金が増加した一方で、自己株式の取得による支出、法人所得税の支払等があったことで、当連結会計年度末時点で保有する手元資金は3,409億33百万円(前連結会計年度末より1,354億21百万円増加)となりました。この手元資金規模は、安定した事業運営および財務基盤の確保に十分な水準であると認識しています。(ⅱ) 財務政策 当社グループは、適切な財務レバレッジのコントロールによる、財務健全性の維持と資本効率性の向上の両立を、財務政策の基本方針としています。この基本方針のもと、有利子負債/EBITDA倍率や自己資本比率等の指標を意識し、財務健全性を維持する財務政策を行っています。加えて、国内および海外の資本市場での公募社債の発行等、資金調達手法の多様化により資金調達基盤を強化し、資金調達コストの低減にも努めています。 当社は、格付投資情報センター、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン、およびムーディーズ・ジャパンより信用格付けを取得しており、2024年3月31日現在における状況は、次のとおりです。 格付投資情報センター:A+(長期、見通し安定的)、a-1(短期)S&Pグローバル・レーティング・ジャパン:BBB+(長期、見通し安定的)ムーディーズ・ジャパン:Baa1(長期、見通し安定的) (ⅲ) 資金需要 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの製品を製造するための材料および部品の購入費のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるもので、主な営業費用は、人件費および広告・販売促進費等のマーケティング費用です。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、主力の製造拠点である国内工場および欧米を中心とした製造、修理拠点の拡充など、生産効率向上のための設備投資です。将来の成長に向けた戦略的な投資への資金需要に対しても、財務健全性の維持と資本効率性の向上を両立させながら、引き続き積極的に対応していきます。 (ⅳ) 資金調達 当社グループの運転資金および設備投資資金は、内部資金により充当していますが、必要に応じて金融機関からの借入や社債の発行により資金を調達しています。これらの借入金および社債については、営業活動から得られるキャッシュ・フローによって十分に完済できると考えています。また、主要な取引先金融機関とは良好な取引関係を維持していることに加えて、(ⅱ) 財務政策に記載の通り、格付投資情報センターの信用格付けはA+、S&Pグローバル・レーティング・ジャパンはBBB+およびムーディーズ・ジャパンはBaa1となっていることから、安定的かつ低コストで適時滞りなく資金調達が可能と考えています。さらに、主要通貨(米ドル・ユーロ・円)によるグローバルコミットメントラインを設定しており、機動的かつ円滑な資金調達が可能な体制を構築しています。財務健全性の維持と資本効率性の向上を両立させながら、今後も資金需要に応じて適切な資金調達を検討していきます。 (ⅴ) 資金配分 当社グループの持続的な成長を実現させるため、資金は、成長ドライバーへの投資に優先的に配分していく方針であり、収益性の高い既存事業への投資や成長機会への戦略的な投資を実施していきます。また、事業成長等への投資を優先しつつ、株主価値を考慮した積極的な株主還元も実施していきます。配当については、安定的かつ段階的に増配し、自己株式の取得については、投資機会と資金状況に応じて機動的に実施する方針です。安定した事業運営に十分な手元資金を確保しながら、成長投資や株主還元にも適切に資金配分をしていきます。 ③ 重要性がある会計方針および見積り 当社グループは、IFRSに準拠して連結財務諸表を作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りにつきましては、合理的な基準に基づいて実施しています。重要性がある会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

※本記事は「オリンパス株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

コメント