株式会社IHIの基本情報

会社名株式会社IHI
業種機械
従業員数連29149名 単7840名
従業員平均年齢41.8歳
従業員平均勤続年数16.6年
平均年収8364344円
1株当たりの純資産2417.16円
1株当たりの純利益19.67円
決算時期3月
配当金100円
配当性向0%
株価収益率(PER)114.13倍
自己資本利益率(ROE)0.85%
営業活動によるCF228億円
投資活動によるCF▲371億円
財務活動によるCF▲137億円
研究開発費※187億円
設備投資額※1257億円
販売費および一般管理費※11463.6億円
株主資本比率※218%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針,経営環境及び対処すべき課題等】当社グループの経営方針,経営環境及び対処すべき課題等は,以下のとおりです。なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針当社グループは,社会とともに発展するよき企業市民であることを第一義とし「技術をもって社会の発展に貢献する」,「人材こそが最大かつ唯一の財産である」との経営理念のもと,「自然と技術が調和する社会を創る」ことを将来のありたい姿とするESG経営を推進しています。人権を尊重し,多様な人財が活躍する企業風土を原動力として,事業活動を通じて気候変動問題を解決することで,サステナブルな社会の実現を目指していきます。 (2)会社の経営戦略及び経営指標当社グループは,2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づき,持続的な高成長を実現する事業変革をより具体的かつ本格的に進めると同時に,劇的な環境変化へ対応可能な企業体質への変革を加速していきます。 「グループ経営方針2023」の取り組み,経営目標  ① 持続的な高成長を実現する事業の変革事業を通じて社会課題を解決し,社会と当社グループの持続的な高成長を両立するためには,お客さま事業のライフサイクルを通じた価値の提供と,バリューチェーン全体を構築することによる価値の向上が重要となります。「グループ経営方針2023」では,事業を次の3つに区分し,いずれについてもライフサイクルとバリューチェーンを強く意識しながら取り組んでいきます。 a. 成長事業:航空エンジン・ロケット分野航空エンジン・ロケット分野は,当社グループの成長を牽引する事業と位置付けました。航空旅客需要増加に伴う民間向け航空エンジン事業の拡大を基盤としつつ,防衛力の抜本的強化の政府方針を受けて防衛事業を拡大させると共に,長期的な成長ドライバーとして宇宙事業を推進することで,持続的な成長を目指します。カーボンニュートラルに向けた電動化・水素推進の技術開発や,民間・防衛における技術・経験のシナジーによる新たな事業創出にも取り組んでいきます。b. 育成事業:クリーンエネルギー分野クリーンエネルギー分野は,航空エンジン・ロケット分野と双璧をなし,当社グループの成長を牽引する事業に育成すべく取り組んでいきます。当社グループはアンモニアの燃焼技術において世界をリードする位置にありますが,今後は,貯蔵や輸送も含めたアンモニアバリューチェーン全体を構築し価値向上を図ることで,社会やお客さまに貢献できるように努めます。また,燃料製造プロジェクトへの投資など,新たなビジネスモデルの構築にも取り組んでいきます。c. 中核事業資源・エネルギー・環境,社会基盤,産業システム・汎用機械分野は,引き続き当社グループの中核を担う事業と位置付けました。これらの事業は,これまでのビジネスの延長ではなく,お客さまのライフサイクルにより深く入り込み,そこから得られた知見をフィードバックすることで,さらに進化した製品・サービスをお客さまに提供していきます。また,成長事業及び育成事業に対して投下するキャッシュや人財などの経営資源を捻出するために,業務プロセスの改革やデジタル基盤の活用による業務効率化とともに,事業の見直しも進めていきます。  ② 環境変化への対応,変革を実現しうる企業体質への変革当社グループは,ESGを軸とする経営を徹底するとともに,事業変革のために不可欠な情報デジタル基盤の高度化,そして企業体質の変革を成し遂げる上で最も重要である変革人財の育成・獲得を積極的に進めていきます。  ③ 資源配分と経営目標成長・育成事業へ経営資源を大胆にシフトし,投資を実行していきます。また,安定配当を基本方針として連結配当性向30%を目指します。 財務目標2025年度ROIC(税引後)8%以上営業利益率7.5%CCC100日(参考) 売上収益17,000億円(注)各指標の算出方法は次のとおりです。 ・ROIC  :(1-法定実効税率)×(営業利益+受取利息+受取配当金)   ÷(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債の金額) ・CCC   :運転資本÷売上収益×365日 ・運転資本:営業債権+契約資産+棚卸資産+前払金-契約負債-営業債務-返金負債 (3)会社の対処すべき課題<短期的な課題>2024年4月24日に公表のとおり,当社の子会社である株式会社IHI原動機において,同社が製造する船舶用エンジン及び陸上用エンジンの試運転記録に不適切な修正が行なわれていたことが判明しました。本件について,当社は弁護士をはじめとした外部有識者で構成される特別調査委員会を設置して,原因究明及び再発防止策の策定に取り組むとともに,当社グループにおける類似の事象の有無についてあらためて点検を行なっています。当社は,2019年に当社瑞穂工場にて発生した民間航空機エンジン整備事業における不適切な検査事案を受けて,グループをあげて再発防止に取り組んできましたが,再びこのような事態を招いたことから,これまでの取組みが不十分であったと言わざるを得ないものと考えています。当社グループは,関係するすべてのステークホルダーの皆さまからの信頼を早期に回復するべく,コンプライアンス意識の再徹底及び組織風土の改善並びに同様の事案を二度と起こさない仕組みづくりに,グループ一丸となって取り組んでいく所存です。 また,当社グループは,当連結会計年度において出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響による損失の計上がありましたが,成長・育成事業に重点的に投資配分していく方針に変更はなく,費用の削減や投資の優先順位の見直しなどを進めると同時に,投資原資を確保するために営業キャッシュ・フローの強化に取り組みます。同時に,事業ポートフォリオ改革や資産売却等を通じて自己資本の増加を図り,財務体質を強化していきます。 <長期的な課題> ESG経営 当社グループは,自然と技術が調和する社会を創るために,取り組むべき社会課題を「脱CO?の実現」,「防災・減災の実現」,「暮らしの豊かさの実現」としています。地球規模で問題となっている気候変動への対策として,温室効果ガスの排出量を減らす「緩和」と,その影響に備えて被害を軽減する「適応」に取り組み,暮らしの豊かさを実現していきます。 ・社会課題の解決当社グループは,2050年までに,バリューチェーン全体で,カーボンニュートラルを実現することを宣言しました。自社の事業活動によって直接・間接に排出される温室効果ガス(Scope1・2)だけでなく,私たちの上流及び下流のプロセスで排出される温室効果ガス(Scope3)の削減に取り組み,カーボンニュートラルを目指します。具体的には,既存技術を活用した「トランジション」と,新しい技術による「トランスフォーメーション」の2段階で取り組んでいきます。また,自然災害に強く経済的なインフラ整備と,センシング・モニタリング技術を活用したインフラ管理システムの構築を進め,安心・安全で暮らしやすいコミュニティの実現を目指します。 ・人権の尊重当社グループは,「IHIグループ基本行動指針」において,地球的課題を意識し,あらゆるステークホルダーの期待に応えるために私たちがなすべきことを定めています。この指針に基づき,2020年12月に「IHIグループ人権方針」を定めました。国際規範に基づく人権啓発活動を通じて,人権を尊重する企業文化の醸成と事業活動全般にわたる人権尊重の取組みを推進することで,あらゆる人びとに対する人権尊重の責任を積極的に果たしていきます。また,サプライチェーンにおいても,取引先と協働して社会的責任を果たしていくCSR調達に取り組むことを,「IHIグループ調達基本方針」に定めました。バリューチェーンを通じて,事業活動によるステークホルダー・ライツホルダーに対する負の影響を予防・低減し,すべての人の豊かな生活を実現するために取り組みます。 ・多様な人財の活躍持続可能な社会を実現するには,多様性を受け入れ,環境の変化を的確に把握し対応することが必要です。社会の発展に貢献するという経営理念や,自然と調和した社会を創るという目指す姿を,社員一人ひとりが理解し,企業としての使命を自覚することが必要です。会社と社員が,お互いの成長に貢献し合う関係性を保ちながら,個人と組織のベクトルを合わせていくことが重要であると考えています。また,当社グループは,人財の多様性を尊重し受け入れる「ダイバーシティ,エクイティ&インクルージョン」を重要な価値観とし,多様なバックグラウンド・多様な経験・異なる視点を持った多様な人財が活躍できる環境を整備していきます。また,社員一人ひとりがより幅広い視野・経験を身に着けるための制度の拡充や,さまざまな機会提供を行なっていきます。 ・ステークホルダーからの信頼の獲得事業を通じて社会課題を解決し,企業価値を高めるためには,グループが本来有する力を最大限に発揮できるよう基盤を築くこと,また,あらゆるステークホルダーとの積極的な対話を行なうことが重要であると考えています。
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況a.経営成績の状況当連結会計年度の世界経済は,欧州経済は金融引き締めやエネルギー情勢の影響等を受けて低迷,中国経済は不動産市場の停滞に伴い減速した一方で,米国経済は金融引き締めが維持された環境の中でも底堅い雇用・所得環境に支えられ堅調に推移しました。わが国経済については,雇用・所得環境が改善する中で,世界的なインフレの影響は受けつつも,景気は緩やかに回復しています。 当社グループは,第2四半期連結会計期間において,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意により多額の損失を計上しました。出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムについては,地上駐機(※)に対する補償費用や追加整備費用等の発生が見込まれますが,当第4四半期連結会計期間においてその前提条件に変更はありません。現在,プログラムパートナーとともに整備能力増強を図り,地上駐機数の低減に向けた対応を進めています。お客さまであるエアラインへの負担軽減及び信頼回復に取り組んでまいります。(※)地上駐機:エンジン追加検査のための計画外エンジン取り下ろしに起因して機体が運航不能となること。 また,原動機事業で発生したエンジンの試運転記録に係る不適切行為については,対象となる製品を納入したお客さまに真摯に対応するとともに,原因究明や再発防止策の策定などを進めてまいります。 当社グループの主力事業である民間向け航空エンジンは,旅客需要の回復に伴って,エンジン本体及びスペアパーツ販売が堅調に推移しています。また,防衛装備品については,防衛力の抜本的強化の政府方針のもと,防衛予算が大きく増加しており,受注が拡大しています。今後見込まれる民間向け航空エンジンや防衛装備品の需要拡大に応えていくため,増産に向けた能力増強を進めるとともに,世界トップレベルの生産効率実現への取組みを推進しています。車両過給機においては,自動車市場全体の傾向として,半導体部品等の供給制約改善や中国の販売促進策の影響もあり生産台数は年初予想を大きく上回る結果となりました。電気自動車の普及は進みつつあるものの,そのスピードは未だ流動的です。市場の変化に対応しながらも,当社グループは確実に需要に応えるため,事業構造改革を含め供給体制の維持・整備を進めています。また,カーボンソリューション事業では,省エネ法改正による脱炭素電源導入の促進や,海外での再エネ技術の需要が増加の傾向にあります。燃料転換をはじめとしたお客さまプラントの価値向上への貢献とともに,ライフサイクルビジネスの拡大を図っています。 このような事業環境下において,当社グループの当連結会計年度は,受注高については前年度比0.8%増の1兆3,768億円となったものの,売上収益については前述の出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響などにより,2.2%減の1兆3,225億円となりました。損益面では,営業損益は,為替円安の影響のほか,民間向け航空エンジンのスペアパーツ販売の増加,ライフサイクルビジネス等の拡大の効果はありましたが,前述の減収の影響に加えて,車両過給機の事業構造改革費用などもあり,1,521億円減益の701億円の損失となりました。親会社の所有者に帰属する当期損益は,682億円の損失です。 当連結会計年度の報告セグメント別の業績は以下のとおりとなりました。 (単位:億円)報告セグメント受注高前連結会計年度当連結会計年度前年度比前連結会計年度当連結会計年度前年度比増減率(%)(2022.4~2023.3)(2023.4~2024.3)増減率(%)売上収益営業損益売上収益営業損益売上収益営業損益資源・エネルギー・環境3,9343,101△21.23,7132624,0491779.0△32.6社会基盤1,3401,59318.91,7101701,709150△0.0△11.8産業システム・汎用機械4,5594,7484.14,3651804,6611276.8△29.2航空・宇宙・防衛3,7274,23713.73,6413612,704△1,028△25.7-報告セグメント 計13,56213,6810.913,43197513,125△573△2.3-その他5395848.454213560443.3235.0調整額△440△496-△444△168△460△172--合計13,66113,7680.813,52981913,225△701△2.2-(注)金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。 なお,参考情報として,前述の,第2四半期連結会計期間において計上した出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の影響を除いた場合の報告セグメント別の業績は以下のとおりとなります。 (単位:億円)報告セグメント受注高前連結会計年度当連結会計年度前年度比前連結会計年度当連結会計年度前年度比増減率(%)(2022.4~2023.3)(2023.4~2024.3)増減率(%)売上収益営業損益売上収益営業損益売上収益営業損益資源・エネルギー・環境3,9343,248△17.43,7132624,19632413.023.4社会基盤1,3401,59318.91,7101701,709150△0.0△11.8産業システム・汎用機械4,5594,7484.14,3651804,6611276.8△29.2航空・宇宙・防衛3,7275,79755.53,6413614,26356817.157.1報告セグメント 計13,56215,38713.513,43197514,8311,17010.420.0その他5395848.454213560443.3235.0調整額△440△496-△444△168△460△172--合計13,66115,47513.313,52981914,9321,04210.427.2(注)金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。 世界各国でカーボンニュートラルに向けた動きが加速しており,エネルギー分野における化石資源からの脱却だけでなく,鉄鋼や化学をはじめとした産業分野でも素材の脱化石資源化に向けた動きも広がっています。また,COP28ではこれまでの動きに加えて原子力利用の拡大が宣言されました。このような事業環境のもと,受注高は,海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の影響のほか,前期の大型案件受注の反動により減少しました。売上収益は,前述の海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失や原子力での工事量減少の影響はありましたが,カーボンソリューションが堅調に拡大したことに加え,東南アジアの大型発電プロジェクトが順調に進捗したことにより増収となりました。営業利益は,カーボンソリューションでのライフサイクルビジネスや東南アジアの大型発電プロジェクトの増収影響はありましたが,海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失により減益となりました。 国内においては,インフラ老朽化や気候変動による自然災害の激甚化の対策として国土強靭化計画の施策が実施されており,流域治水や道路ネットワーク機能強化,老朽化橋梁の維持,修繕の推進,さらに予防保全型インフラメンテナンスへの転換に向けた取り組みが進められています。一方,建設分野における人手不足が常態化する中,2024年4月から建設業においても時間外労働の上限規制が適用されたため,これまで以上に省人化・自動化及びDXを推進し,生産性を向上させていく必要があります。このような事業環境のもと,受注高は,橋梁・水門等で増加しました。売上収益は,概ね横ばいとなりました。営業利益は,橋梁・水門での原価先行算入により減益となりました。 産業界全体における資材価格と人件費の高騰は常態化しつつあり,半導体市場や中国の景気減速は2024年度後半に回復を見込んでいるとはいえ,市況は依然として不透明な状況です。その一方で,産業界におけるカーボンニュートラルへのニーズの高まり,先進国における労働生産人口減少による人手不足,さらには経済安全保障を念頭に置いた国際サプライチェーンの変化などが,産業分野の中長期トレンドとして捉えられています。このような事業環境のもと,受注高は,車両過給機等で増加しました。売上収益は,為替が円安で推移した影響もあり,車両過給機や回転機械などで増収となりました。営業利益は,販管費の増加等に加えて,車両過給機において事業構造改革費用を計上したなどにより減益となりました。 民間向け航空エンジン事業では世界の旅客需要は回復から成長軌道に入りつつあり,アフターマーケットでの収益も拡大を継続しています。また,防衛予算の増額,宇宙産業の市場拡大の流れを受け,防衛・宇宙事業においても,新たな価値創造を図り,競争力向上を目指していきます。一方で,サプライチェーンの混乱や物価高騰は継続しており,将来の事業環境は依然として不透明なところもあるため,変化に打ち勝つ事業体質構築に向け,デジタル基盤の活用等による生産効率改革,業務構造改革をさらに推進し,成長を加速していきます。このような事業環境のもと,受注高は,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響はあったものの,防衛事業の需要拡大もあり増加しました。売上収益は,民間向け航空エンジンでのエンジン本体・スペアパーツの販売増加や,防衛事業の需要拡大がありましたが,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響で減収となりました。営業利益は,防衛事業で受注拡大に伴う増益したものの,民間向け航空エンジンでの出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響で減益となりました。 なお,文中の将来に関する事項は,当連結会計年度末現在において判断したものです。 b.資産及び負債,資本の状況当連結会計年度末における総資産は2兆978億円となり,前連結会計年度末と比較して1,558億円増加しました。主な増加項目は,営業債権及びその他の債権で742億円,棚卸資産で477億円です。負債は1兆6,955億円となり,前連結会計年度末と比較して2,098億円増加しました。主な増加項目は,返金負債で1,540億円であり,主に出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによる影響で増加したものです。有利子負債残高はリース負債を含めて5,743億円となり,前連結会計年度末と比較して548億円増加しました。継続して資金流動性の確保の取り組みを進めています。資本は4,022億円となり,前連結会計年度末と比較して539億円減少しました。これには,親会社の所有者に帰属する当期損失682億円が含まれています。以上の結果,親会社所有者帰属持分比率は,前連結会計年度末の22.2%から17.9%となりました。 ②キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下,「資金」という)の残高は,前連結会計年度末と比較して140億円増加し,1,388億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは621億円の収入超過(前連結会計年度は541億円の収入超過)となりました。これは,成長事業である民間向け航空エンジン事業において,サプライチェーンの不安定な状態が続く中,増産に向けて運転資本が増加した一方で,PW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによるキャッシュへの影響が翌連結会計年度以降となったことや,収益の拡大も進んだことから,資金が増加したためです。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは516億円の支出超過(前連結会計年度は523億円の支出超過)となりました。これは,固定資産の譲渡による収入があった一方で,設備投資を進めたことにより支出が増加したためです。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは25億円の支出超過(前連結会計年度は240億円の支出超過)となりました。これは,借入による収入増があったものの,配当金の支払や金融負債の返済による支出があったためです。 (注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示し,比率は四捨五入表示しています。 ③生産,受注及び販売の状況a.生産実績 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年度比(%)資源・エネルギー・環境430,21512.0社会基盤173,6422.0産業システム・汎用機械462,0446.5航空・宇宙・防衛478,29429.6報告セグメント 計1,544,19513.8その他12,583△62.8合計1,556,77811.9(注)1. 金額は販売価格によっており,セグメント間の取引を相殺消去しています。2. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。 b.受注状況当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと,次のとおりです。セグメントの名称受注高(百万円)前年度比(%)期末受注残高(百万円)前年度末比(%)資源・エネルギー・環境310,182△21.2483,425△14.5社会基盤159,39618.9210,234△3.7産業システム・汎用機械474,8054.1205,4322.2航空・宇宙・防衛423,72913.7450,97453.7報告セグメント 計1,368,1120.91,350,0655.6その他58,4538.422,3206.9調整額△49,695---合計1,376,8700.81,372,3855.6(注)1. 各セグメントの受注高は,セグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。2. 各セグメントの受注残高は,セグメント間の取引を相殺消去しています。3. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。4. 航空・宇宙・防衛事業では,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響による  受注高の減少を含んでいます。 c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと,次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年度比(%)資源・エネルギー・環境404,9559.0社会基盤170,9710.0産業システム・汎用機械466,1966.8航空・宇宙・防衛270,402△25.7報告セグメント 計1,312,524△2.3その他56,0843.3調整額△46,017-合計1,322,591△2.2(注)1. 販売実績は売上収益をもって示します。2. 金額はセグメント間の取引を含んでおり,調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。3. 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。相手先前連結会計年度当連結会計年度金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)一般財団法人日本航空機エンジン協会157,34411.634,3312.64. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。 (2)経営者による財政状態,経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析①重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は,IFRSに準拠して作成されています。連結財務諸表の作成に当たり,見積りが必要となる事項については,合理的な基準に基づき,会計上の見積りを行なっています。詳細については,第5「経理の状況」1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記「3.重要性のある会計方針」,及び注記「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。 ②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当社グループ及びセグメントごとの経営成績の状況は(1)経営成績等の状況の概要の①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりです。 当社グループは,2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づく取り組みを進めています。劇的な環境変化へ対応し,持続的な高成長を実現する事業へ変革するため,成長をけん引する航空エンジン・ロケット分野の成長事業と,将来の事業の柱として期待されるクリーンエネルギー分野の育成事業へ,経営資源を大胆にシフトし,重点的に投資を実行していきます。成長事業である航空エンジン・ロケット分野では,今後確実に世界の航空機需要の伸びが予想される中で,民間向け航空エンジンにおける小型~大型・超大型クラスのベストセラーエンジンの開発・量産事業に参画しており,新製エンジンやアフターマーケットの需要拡大に応えていきます。また,成長が見込まれる防衛関連事業や宇宙関連事業の拡大を目指し,生産能力の強化や必要な技術開発を進めていきます。当連結会計年度においては,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムによる損失を計上しましたが,民間向け航空エンジン事業は成長局面へ移行し,かつ防衛・宇宙/民間MRO(Maintenance Repair and Overhaul)も堅調に拡大しました。育成事業であるクリーンエネルギー分野については,当社グループの技術力を活かしながら,燃料アンモニアに関する製造から貯蔵・輸送及び利活用に至るまでのバリューチェーンの構築を進め,カーボンフリーな世界の実現に貢献していきます。当連結会計年度においては,JERA碧南火力発電所にて世界初の燃料アンモニア20%転換の実証試験を開始するなど,燃料アンモニアバリューチェーン事業の開発が順調に進捗しました。中核事業である資源・エネルギー・環境,社会基盤,産業システム・汎用機械の各分野では,引き続きライフサイクルビジネスの拡大に注力するとともに,事業ポートフォリオの変革を通して継続的な成長シナリオを描き,投資に必要なキャッシュを創出していきます。当連結会計年度においては,ライフサイクルビジネスの売上・受注が順調に拡大しました。 2023年度は,PW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響等の特別要因もあり,多額の損失計上があったものの,一過性の特別要因による損失を除くベースでは営業利益率は7%となり,「グループ経営方針2023」初年度として順調に利益の積み上げが進みました。2025年度の経営目標達成につながる収益性を確保していく一方で,特別要因により毀損した財務基盤の改善が必要な状況となっています。利益を稼ぐ力に対し,資本効率性に課題があることから,CCC改善に向けた運転資本の削減や,ROICのハードルレートとなる資本コストが適正な水準となるよう意識しつつ負債・資本のバランスをコントロールすることなどを通じて,バランスシートの管理強化を推進しています。これらの取組みにおいて,資本コストの的確な把握,及びその内容や市場の評価を踏まえた分析・評価をさらに踏み込んで行なうことで,より一層,資本収益性・効率性向上につながる経営を進めていきます。 2023年度(2024年3月期)実績2024年度(2025年3月期)見通しグループ経営方針20232025年度経営目標ROIC    △4.9%      8.3%8%以上営業利益率    △5.3%(7.0%)      6.9%7.5%CCC     107日(132日)      110日     (129日)100日(注)各指標の算出方法は次のとおりです。 ・ROIC  :(1-法定実効税率)×(営業利益+受取利息+受取配当金)   ÷(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債の金額) ・CCC   :運転資本÷売上収益×365日 ・運転資本:営業債権+契約資産+棚卸資産+前払金-契約負債-営業債務-返金負債 ・2023年度及び2024年度の括弧内の数字は,出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査  プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の影響を除いたものです。③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報a.財務戦略の基本的な考え方当社グループは,事業基盤の強化やキャッシュ創出力向上の取組みを通じて得られた自己資金を原資として,財務基盤の拡充と株主還元のバランスを取りながら,事業変革のための投資を進めていくことを財務戦略の基本方針としています。2023年度のキャッシュ・フローは,営業活動によるキャッシュ・フローが621億円の収入となり,投資活動によるキャッシュ・フローは516億円の支出となりました。合計したフリー・キャッシュ・フローは104億円となり,前連結会計年度に対して86億円増加しました。引き続き当社グループは,「グループ経営方針2023」で掲げる収益性・キャッシュ創出力を重視した経営施策を着実に実行し,成長・育成事業への最適な資金配分により,持続的な高成長を実現する企業体質への変革を実現し,企業価値向上へつなげていきます。出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムに係る支出が来期以降に発生することや,稼ぐ力がキャッシュ・フローに結び付いていないことから,営業キャッシュ・フローの強化は喫緊の課題です。運転資本の圧縮を進め,キャッシュ・フロー改善につなげていきます。 b.資金調達の方針当社グループの運転資金,投資向け資金等の必要資金の財源については,主として営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金を財源とすることを原則としています。必要に応じて,短期的な資金については金利の上昇に留意しつつ銀行借入やコマーシャル・ペーパーなど,設備資金・投融資資金等の長期的な資金については,日銀の政策変更による本邦金利上昇を見据えながら既存借入金及び既発行債の償還時期等を総合的に勘案し,長期借入金や社債等によって調達しています。外部からの資本・資金調達については,関連するリスクを適切にコントロールした上で,資本コストを最小化する調達を実現することを資金調達の基本方針としています。また,当社グループ内部では,グループガバナンスの向上,資金効率の向上及び資本コストの低減を図り,企業価値向上に寄与するため,グループ一体となった資金調達・資金収支管理を実施しており,当社と国内子会社間,また海外の一部地域の関係会社間ではキャッシュ・マネジメント・システムによる資金融通を行ない,グループ内の流動性確保,資金効率向上に努めています。 c.資金需要,資金調達及び流動性の分析当社グループの主な資金需要は,事業活動に必要な運転資金,成長事業創出のための研究開発費及び設備投資等です。当連結会計年度末の有利子負債残高はリース負債を含めて5,743億円となり,前連結会計年度末に対して548億円増加しました。これは主として,事業活動による運転資金や投資活動のための資金の増加を外部借入で調達したことによるものです。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,388億円であり,前連結会計年度末と比較して140億円増加しています。手元資金の流動性については現金及び現金同等物に加え,主要銀行とのコミットメントライン契約や当座貸越枠,コマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段を保有しています。また,機動的な資金調達手段を確保することを目的として,2023年11月に1,500億円のコミットメントライン契約を締結しています。上記現金及び現金同等物と合わせて引き続き十分な流動性を確保しています。また,資金調達の多様性では,2023年9月に策定したサステナブル・ファイナンス・フレームワークを用いて,グリーン/トランジション・ファイナンスによる資金調達を促進しています。ESG経営を進める中で,ファイナンスを事業活動と一体ととらえ,自然と技術が調和する持続可能な社会の実現のために適切な資金調達と事業展開を行なっていきます。 (注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示しています。

※本記事は「株式会社IHI」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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