会社名 | 株式会社IHI |
業種 | 機械 |
従業員数 | 連29149名 単7911名 |
従業員平均年齢 | 41.1歳 |
従業員平均勤続年数 | 15.8年 |
平均年収 | 8134777円 |
1株当たりの純資産 | 2417.16円 |
1株当たりの純利益(連結) | 744.84円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 120円 |
配当性向 | 20.17% |
株価収益率(PER) | 114.13倍 |
自己資本利益率(ROE)(連結) | 0.85% |
営業活動によるCF | 228億円 |
投資活動によるCF | ▲371億円 |
財務活動によるCF | ▲137億円 |
研究開発費※1 | 101億円 |
設備投資額※1 | 386億円 |
販売費および一般管理費※1 | 611.1億円 |
株主資本比率※2 | 21.8% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針当社グループは、社会とともに発展するよき企業市民であることを第一義とし「技術をもって社会の発展に貢献する」、「人材こそが最大かつ唯一の財産である」との経営理念のもと、「自然と技術が調和する社会を創る」ことを将来のありたい姿とするESG経営を推進しています。人権を尊重し、多様な人財が活躍する企業風土を原動力として、事業活動を通じて気候変動問題を解決することで、サステナブルな社会の実現を目指していきます。 (2)会社の経営戦略及び経営指標当社グループは、2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づき、不確実性が高い経営環境が継続する中でも持続的な高成長を実現可能な企業体質への変革を進めています。 「グループ経営方針2023」の取り組み、経営目標 ① 持続的な高成長を実現する事業の変革事業を通じて社会課題を解決し、社会と当社グループの持続的な高成長を両立するためには、お客さま事業のライフサイクルを通じた価値の提供と、バリューチェーン全体を構築することによる価値の向上が重要となります。「グループ経営方針2023」では、事業を次の3つに区分し、いずれについてもライフサイクルとバリューチェーンを強く意識しながら取り組んでいきます。 a. 成長事業:航空エンジン・ロケット分野航空エンジン・ロケット分野は、当社グループの成長を牽引する事業と位置付けました。航空旅客需要増加に伴う民間向け航空エンジン事業の拡大を基盤としつつ、防衛力の抜本的強化の政府方針を受けて防衛事業を拡大させると共に、長期的な成長ドライバーとして宇宙事業を推進することで、持続的な成長を目指します。カーボンニュートラルに向けた電動化・水素推進の技術開発や、民間・防衛における技術・経験のシナジーによる新たな事業創出にも取り組んでいきます。b. 育成事業:クリーンエネルギー分野クリーンエネルギー分野は、航空エンジン・ロケット分野と双璧をなし、当社グループの成長を牽引する事業に育成すべく取り組んでいきます。当社グループはアンモニアの燃焼技術において世界をリードする位置にありますが、今後は、貯蔵や輸送も含めたアンモニアバリューチェーン全体を構築し価値向上を図ることで、社会やお客さまに貢献できるように努めます。また、燃料製造プロジェクトへの投資など、新たなビジネスモデルの構築にも取り組んでいきます。c. 中核事業資源・エネルギー・環境、社会基盤、産業システム・汎用機械分野は、引き続き当社グループの中核を担う事業と位置付けました。中核事業のうち、市場成長が見込め、当社の強みが活かせる事業については安定的なキャッシュ創出に向け必要なリソースを投入するとともに、収益性・効率性の低い事業に関しては引き続き事業構造改革を推進していきます。 ② 環境変化への対応、変革を実現しうる企業体質への変革当社グループは、ESGを軸とする経営を徹底するとともに、事業変革のために不可欠な情報デジタル基盤の高度化、そして企業体質の変革を成し遂げる上で最も重要である変革人財の育成・獲得を積極的に進めていきます。 ③ 資源配分と経営目標成長・育成事業へ経営資源を大胆にシフトし、投資を実行していきます。一方で、財務基盤の強化に向けた取り組みに必要な資金を確保しつつ、安定的な配当を実施することを基本方針としています。 財務目標2025年度ROIC(税引後)8%以上営業利益率7.5%CCC100日(参考) 売上収益17,000億円(注)各指標の算出方法は次のとおりです。 ・ROIC :(1-法定実効税率)×(営業利益+受取利息+受取配当金) ÷(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債の金額) ・CCC :運転資本÷売上収益×365日 ・運転資本:営業債権+契約資産+棚卸資産+前払金-契約負債-営業債務-返金負債 (3)会社の対処すべき課題<短期的な課題>・事業ポートフォリオ改革当社グループのさらなる成長に向け、中核事業では、低収益かつ資本効率の低い事業については、各事業領域において事業構造改革を実行し、収益性・効率性の徹底的な向上を図っていきます。一方、市場成長が見込める資本効率の高い事業については、安定的なキャッシュ・フロー拡大に向けリソースを投入していきます。 ・財務基盤の強化財務健全性は改善傾向にありますが、成長・育成事業への投資原資を確保するために営業キャッシュ・フローの強化に取り組むと同時に、事業ポートフォリオ改革や資産売却等を通じて自己資本の増加を図り、財務基盤を強化していきます。 ・コンプライアンス意識の再徹底原動機事業のエンジン試運転記録に係る不適切行為については、不適切行為に関する事実関係の確認が終了し、NOx放出量確認結果への対応方針を策定したことから、2024年8月21日に国土交通省へ調査報告書を提出し、同10月30日に当社及び株式会社IHI原動機としての再発防止策を策定・公表しました。交通システム事業の除雪装置における不適切行為についても、事実関係及び原因究明の調査結果を踏まえ、対象機種の除雪性能試験を網羅的に実施し、お客さまへの対応並びに再発防止策の策定を行ないました。また、機械式駐車装置事業の件については、2025年3月24日に独占禁止法に反する行為があったと認定された旨を公表し、再発防止の徹底に取り組んでいます。当社グループは、関係するすべてのステークホルダーの皆さまからの信頼を早期に回復するべく、コンプライアンス意識の再徹底及び組織風土の改善並びに同様の事案を二度と起こさない仕組みづくりに、グループ一丸となって取り組んでまいります。 <長期的な課題> ESG経営 当社グループは、自然と技術が調和する社会を創るために、取り組むべき社会課題を「脱CO?の実現」、「防災・減災の実現」、「暮らしの豊かさの実現」としています。地球規模で問題となっている気候変動への対策として、温室効果ガスの排出量を減らす「緩和」と、その影響に備えて被害を軽減する「適応」に取り組み、暮らしの豊かさを実現していきます。 ・社会課題の解決当社グループは、2050年までに、バリューチェーン全体で、カーボンニュートラルを実現することを宣言しました。自社の事業活動によって直接・間接に排出される温室効果ガス(Scope1・2)だけでなく、私たちの上流及び下流のプロセスで排出される温室効果ガス(Scope3)の削減に取り組み、カーボンニュートラルを目指します。具体的には、既存技術を活用した「トランジション」と、新しい技術による「トランスフォーメーション」の2段階で取り組んでいきます。また、自然災害に強く経済的なインフラ整備と、センシング・モニタリング技術を活用したインフラ管理システムの構築を進め、安心・安全で暮らしやすいコミュニティの実現を目指します。 ・人権の尊重当社グループは、「IHIグループ基本行動指針」において、地球的課題を意識し、あらゆるステークホルダーの期待に応えるために私たちがなすべきことを定めています。この指針に基づき、2020年12月に「IHIグループ人権方針」を定めました。国際規範に基づく人権啓発活動を通じて、人権を尊重する企業文化の醸成と事業活動全般にわたる人権尊重の取組みを推進することで、あらゆる人びとに対する人権尊重の責任を積極的に果たしていきます。また、サプライチェーンにおいても、取引先と協働して社会的責任を果たしていくCSR調達に取り組むことを、「IHIグループ調達基本方針」に定めました。バリューチェーンを通じて、事業活動によるステークホルダー・ライツホルダーに対する負の影響を予防・低減し、すべての人の豊かな生活を実現するために取り組みます。 ・多様な人財の活躍持続可能な社会を実現するには、多様性を受け入れ、環境の変化を的確に把握し対応することが必要です。社会の発展に貢献するという経営理念や、自然と調和した社会を創るという目指す姿を、社員一人ひとりが理解し、企業としての使命を自覚することが必要です。会社と社員が、お互いの成長に貢献し合う関係性を保ちながら、個人と組織のベクトルを合わせていくことが重要であると考えています。また、当社グループは、人財の多様性を尊重し受け入れる「ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン」を重要な価値観とし、多様なバックグラウンド・多様な経験・異なる視点を持った多様な人財が活躍できる環境を整備していきます。また、社員一人ひとりがより幅広い視野・経験を身に着けるための制度の拡充や、さまざまな機会提供を行なっていきます。 ・ステークホルダーからの信頼の獲得事業を通じて社会課題を解決し、企業価値を高めるためには、グループが本来有する力を最大限に発揮できるよう基盤を築くこと、また、あらゆるステークホルダーとの積極的な対話を行なうことが重要であると考えています。 |
経営者による財政状態の説明
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要①財政状態及び経営成績の状況a.経営成績の状況当連結会計年度の世界経済は、欧州経済はエネルギーなどのコスト高や中国の内需減速を受けて低迷、中国経済は不動産市場の停滞に伴い低調な動きが継続する一方で、米国経済が牽引する形で全体としては緩やかに回復しました。わが国経済についても、物価上昇の影響を受けながらも、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかに回復しています。 当社グループの主力事業である航空・宇宙・防衛事業において、民間向け航空エンジンでは、旅客需要の堅調な推移に伴ってスペアパーツ販売が一段と拡大しています。防衛事業では、防衛力の抜本的強化の政府方針のもと、防衛予算が大きく増加しており、当社グループにおいても継続して大型案件への受注対応を進めています。今後見込まれる民間向け航空エンジンや防衛事業、宇宙事業の需要拡大に応えていくため、リソース確保を含む生産能力の増強とともに、世界トップレベルの生産効率実現に向けた取り組みを進めていきます。出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムについては、引き続きプログラムパートナーとともに整備能力増強を図り、地上駐機数の低減に向けた対応を進めています。お客さまであるエアラインへの負担軽減及び信頼回復に取り組んでまいります。中核事業におけるライフサイクルビジネスは、当期においては案件の端境期にあり一時的に減少していますが、中長期的に見れば安定的に成長が見込めるため、当社グループの収益への貢献や投資原資の創出を図るべく、引き続き拡大に向けて取り組みます。車両過給機事業においては、近年のEV化の動きによってドイツ欧州拠点での受注量減少が見込まれることから、当該欧州拠点の機能をイタリア所在の子会社に集約しました。他地域グループ会社への生産移管等によって、欧州域内の自動車メーカー向けの供給責任を果たしていきます。また、事業ポートフォリオ改革の取り組みとして、中核事業の一部である運搬機械事業、芝草・芝生管理機器事業及び連結子会社である株式会社IHI汎用ボイラ、株式会社IHI建材工業について、事業の譲渡を決定しました。ボラティリティを抑えながら安定的・持続的に成長できるポートフォリオを構築するため、引き続きスピード感を持って改革を継続していきます。 原動機事業のエンジン試運転記録に係る不適切行為については、不適切行為に関する事実関係の確認が終了し、NOx放出量確認結果への対応方針を策定したことから、2024年8月21日に国土交通省へ調査報告書を提出し、同10月30日に当社及び株式会社IHI原動機としての再発防止策を策定・公表しました。本年2月7日からは対象のお客さまへ燃費補償実施のご案内をしています。交通システム事業の除雪装置における不適切行為については、事実関係及び原因究明の調査結果を踏まえ、対象機種の除雪性能試験を網羅的に実施し、お客さまへの対応並びに再発防止策の策定を行ないました。2023年9月に公正取引委員会の立ち入り検査を受けた機械式駐車装置事業の件については、本年3月24日に、独占禁止法に違反する行為があったと認定されました。IHI運搬機械株式会社は、公正取引委員会に対し、課徴金減免制度の適用申請を通じて自主的に違反行為を申告しました。その後一貫して公正取引委員会の調査に協力してきたため、課徴金の免除が認められ、また、排除措置命令も受けていません。不適切行為に対して当社グループは、社長をはじめとする経営幹部からのメッセージ発信、社内規程の見直し、コンプライアンス教育の強化、人事ローテーションの推進、職場対話活動の実施等、再発防止の徹底に取り組み、不適切行為を起こさせない仕組み作りや組織風土の見直しなどの取り組みを進めてきました。コンプライアンスが真の企業文化として定着するよう真摯に努め、ステークホルダーの皆さまからの信頼回復に一丸となって取り組んでまいります。 経営成績につきましては、前連結会計年度において、出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意により多額の損失を計上したことで、前期の受注高と売上収益が一時的に大きく減少しました。当連結会計年度の受注高は、前期の一時的な減少の反動もあり、前期比27.2%増の1兆7,511億円となりました。売上収益については、前期での一時的な減少の反動に加えて、民間向け航空エンジンでのスペアパーツ販売の増加や東南アジアにおける大型発電所プロジェクトの進捗のほか、為替円安の影響などにより、23.0%増の1兆6,268億円となりました。損益面では、営業利益は事業構造改革費用や不適切行為に関連した費用の計上等の影響はあったものの、民間向け航空エンジンの大幅な増収により、2,136億円増益の1,435億円となりました。税引前利益は1,384億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,127億円です。当連結会計年度の報告セグメント別の業績は以下のとおりとなりました。 (単位:億円)報告セグメント受注高前連結会計年度当連結会計年度前年度比前連結会計年度当連結会計年度前年度比増減率(%)(2023.4~2024.3)(2024.4~2025.3)増減率(%)売上収益営業損益売上収益営業損益売上収益営業損益資源・エネルギー・環境3,1013,70319.44,0491774,1141611.6△8.9社会基盤1,5931,6674.61,7091501,62394△5.0△37.3産業システム・汎用機械4,7484,8442.04,6611274,8481084.0△15.4航空・宇宙・防衛(※)4,2377,19969.92,704△1,0285,5571,227105.5-報告セグメント 計13,68117,41427.313,125△57316,1431,59123.0-その他5845921.356044608318.6△29.6調整額△496△495-△460△172△484△187--合計13,76817,51127.213,225△70116,2681,43523.0-(注)金額は単位未満を切捨て表示し、比率は四捨五入表示しています。(※)当連結会計年度での売上収益及び営業損益には、出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログ ラムの為替変動による影響+9億円を含んでいます。 なお、参考情報として、前述の前連結会計年度において計上した出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の影響を除いた場合の報告セグメント別の業績は以下のとおりとなります。(単位:億円)報告セグメント受注高前連結会計年度当連結会計年度前年度比前連結会計年度当連結会計年度前年度比増減率(%)(2023.4~2024.3)(2024.4~2025.3)増減率(%)売上収益営業損益売上収益営業損益売上収益営業損益資源・エネルギー・環境3,2483,70314.04,1963244,114161△1.9△50.2社会基盤1,5931,6674.61,7091501,62394△5.0△37.3産業システム・汎用機械4,7484,8442.04,6611274,8481084.0△15.4航空・宇宙・防衛5,7977,19924.24,2635685,5571,22730.3116.1報告セグメント 計15,38717,41413.214,8311,17016,1431,5918.836.0その他5845921.356044608318.6△29.6調整額△496△495-△460△172△484△187--合計15,47517,51113.214,9321,04216,2681,4358.937.7(注)金額は単位未満を切捨て表示し、比率は四捨五入表示しています。 エネルギー供給上の地政学的リスクや各種コスト上昇、米国の政権交代に伴う政策変更など不確実性が高まる中で、エネルギーの安定供給を確保するためのエネルギー安全保障の重要性が高まっています。一方、中長期的な対応としての脱炭素化に向けた大きな潮流は変わっていません。今後、経済成長だけでなくDXやGXの進展によるエネルギー需要は一層の拡大傾向にあり、安定供給と脱炭素を両立させるエネルギー源、特に原子力等への注目が高まっています。このような事業環境のもと、受注高は、前期の海外連結子会社における訴訟の和解合意の影響の反動に加え、カーボンソリューションを中心に増加しました。売上収益は、カーボンソリューションのライフサイクルビジネス(LCB)が端境期となり減収となったものの、原動機やアジア拠点EPCでの増収に加え、前期の海外連結子会社における訴訟の和解合意による減収の反動影響もあり、全体として増収となりました。営業利益は、前期の海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の反動の影響はありましたが、LCB関連の案件が端境期にあることによる減収影響やカーボンソリューション海外子会社の収益悪化、品質事案対応などにより減益となりました。 国内におけるインフラの老朽化や気候変動による自然災害の激甚化への対策として国土強靭化計画が引き続き推進されています。道路ネットワーク機能強化、老朽化橋梁の維持・修繕や流域治水の推進に加え、予防保全型インフラメンテナンスへの転換がさらに進展しています。一方、建設分野における人手不足は依然として深刻であり、2024年4月から適用された建設業の時間外労働の上限規制の影響も継続しています。このため、省人化・自動化技術の導入やDXの推進を通した生産性向上への取り組みがますます重要となっています。このような事業環境のもと、受注高は、橋梁・水門等で増加しました。売上収益は、橋梁・水門や交通システムで減収となりました。営業利益は、コンクリート建材事業の譲渡に関連する構造改革費用計上や交通システムの採算性悪化により減益となりました。 産業界全体における資材価格と人件費の高騰は常態化しており、中国や欧州の景気減速、また米国の政権交代に伴う政策変更などによる国際サプライチェーンの変化など、市況は不透明な状況です。その一方で、産業界におけるカーボンニュートラルへのニーズの高まり、先進国における労働生産人口減少による人手不足などが、産業分野の中長期トレンドとして捉えられています。このような事業環境のもと、受注高は、運搬機械や産業システム等で増加しました。売上収益は、前期に比べて期中の為替が円安で推移した影響などにより、熱・表面処理や運搬機械等で増収となりました。営業利益は、パーキングにおける収益改善はありましたが、車両過給機事業の販売価格転嫁交渉の遅れや、芝草・芝生管理機器事業に関する事業構造改革費用の計上により減益となりました。 民間向け航空エンジン事業では世界の旅客需要が堅調に伸びる中、アフターマーケットでの収益が拡大を継続しています。また、防衛予算の増額、宇宙産業の市場拡大の流れを受け、防衛・宇宙事業においても、新たな価値創造を図り、競争力向上を目指していきます。一方で、サプライチェーンの混乱や物価高騰、米国の政権交代に伴う政策変更など地政学的な環境の変化は継続しており、将来の事業環境は依然として不透明なところもあります。環境の変化に打ち勝つ事業体質構築に向け、デジタル基盤の活用等による生産効率改革、業務構造改革をさらに推進し、成長を加速していきます。このような事業環境のもと、受注高及び売上収益は、前期の出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響の反動に加え、民間向け航空エンジンのスペアパーツの販売増や防衛事業の拡大により大幅な増加・増収となりました。営業利益は、民間向け航空エンジンでの貸倒引当金計上等による販管費増加はありましたが、前期の出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響の反動に加え、スペアパーツの販売増や整備費用の発生遅れの影響のほか、防衛事業の採算改善等により大幅な増益となりました。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。 b.資産及び負債、資本の状況当連結会計年度末における総資産は2兆2,403億円となり、前連結会計年度末と比較して1,425億円増加しました。主な増加項目は、営業債権及びその他の債権で540億円、主な減少項目は、契約資産で167億円です。負債は1兆7,317億円となり、前連結会計年度末と比較して361億円増加しました。主な増加項目は、契約負債で488億円、主な減少項目は、返金負債で396億円です。有利子負債残高はリース負債を含めて5,147億円となり、前連結会計年度末と比較して596億円減少しました。当年度内において社債発行を行なっており、資金流動性について十分な水準を確保しています。資本は5,086億円となり、前連結会計年度末と比較して1,063億円増加しました。これには、親会社の所有者に帰属する当期利益1,127億円が含まれています。以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末の17.9%から21.5%となりました。 ②キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)の残高は、前連結会計年度末と比較して19億円減少し、1,368億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりです。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは1,776億円の収入超過(前連結会計年度は621億円の収入超過)となりました。これは、営業債権が増加したものの、利益の獲得により資金が増加したためです。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは588億円の支出超過(前連結会計年度は516億円の支出超過)となりました。これは、固定資産の譲渡による収入があった一方で、設備投資を進めたことにより支出が増加したためです。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは1,162億円の支出超過(前連結会計年度は25億円の支出超過)となりました。これは、主に借入金の返済による支出があったためです。 (注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示し、比率は四捨五入表示しています。 ③生産、受注及び販売の状況a.生産実績 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年度比(%)資源・エネルギー・環境410,062△4.7社会基盤165,791△4.5産業システム・汎用機械481,4074.2航空・宇宙・防衛555,27416.1報告セグメント 計1,612,5354.4その他34,871177.1合計1,647,4065.8(注)1. 金額は販売価格によっており、セグメント間の取引を相殺消去しています。2. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。 b.受注状況当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称受注高(百万円)前年度比(%)期末受注残高(百万円)前年度末比(%)資源・エネルギー・環境370,30819.4437,619△9.5社会基盤166,7604.6217,0543.2産業システム・汎用機械484,4022.0206,1390.3航空・宇宙・防衛719,99169.9605,93034.4報告セグメント 計1,741,46127.31,466,7428.6その他59,2401.320,610△7.7調整額△49,565---合計1,751,13627.21,487,3528.4(注)1. 各セグメントの受注高は、セグメント間の取引を含んでおり、調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。2. 各セグメントの受注残高は、セグメント間の取引を相殺消去しています。3. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。4. 航空・宇宙・防衛事業では、出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査プログラムの影響により前年度の受注高が大きく減少したため、当連結会計年度では前年度に比べ受注高が増加しています。 c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年度比(%)資源・エネルギー・環境411,4631.6社会基盤162,341△5.0産業システム・汎用機械484,8524.0航空・宇宙・防衛555,704105.5報告セグメント 計1,614,36023.0その他60,8938.6調整額△48,422-合計1,626,83123.0(注)1. 販売実績は売上収益をもって示します。2. 金額はセグメント間の取引を含んでおり、調整額でセグメント間取引の合計額を消去しています。3. 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりです。相手先前連結会計年度当連結会計年度金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)一般財団法人日本航空機エンジン協会34,3312.6268,80616.54. 金額及び比率は単位未満を四捨五入表示しています。 (2)経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析①重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、IFRS会計基準に準拠して作成されています。連結財務諸表の作成に当たり、見積りが必要となる事項については、合理的な基準に基づき、会計上の見積りを行なっています。詳細については、第5「経理の状況」1連結財務諸表等(1)連結財務諸表注記「3.重要性のある会計方針」、及び注記「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。 ②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当社グループ及びセグメントごとの経営成績の状況は(1)経営成績等の状況の概要の①財政状態及び経営成績の状況に記載のとおりです。 当社グループは、2023年度を初年度とする3か年の中期経営計画「グループ経営方針2023」に基づく取り組みを進めています。不確実性が高い経営環境が継続する中でも持続的な高成長を実現する事業へ変革するため、3か年の中期経営計画の最終年度となる2025年度では、成長をけん引する航空エンジン・ロケット分野の成長事業と、将来の事業の柱として期待されるクリーンエネルギー分野の育成事業、市場成長が見込めてかつ資本効率の高い事業への戦略的な経営資源のシフトを実行していきます。成長事業である航空エンジン・ロケット分野では、確実に世界の航空機需要の伸びが予想される中で、民間向け航空エンジンにおける小型~大型・超大型クラスのベストセラーエンジンの開発・量産事業に参画しています。今後の需要増加が期待されるアフターマーケットでの事業拡大を目指しており、整備事業については、自動化やDX高度化等により生産性向上を図り、高品質なサービスを迅速に提供する取組みを進めています。民間航空機用エンジン整備拠点の一つである鶴ヶ島工場においては2026年度に新修理棟の稼働の開始を予定しており、付加価値の高い部品修理需要の取り込みを加速していきます。また、成長が見込まれる防衛関連事業や宇宙関連事業の拡大を目指し、生産能力の強化や必要な技術開発を進めていきます。育成事業であるクリーンエネルギー分野については、当社グループの技術力を活かしながら、燃料アンモニアに関する製造から貯蔵・輸送及び利活用に至るまでのバリューチェーンの構築を進め、カーボンフリーな世界の実現に貢献していきます。中核事業である資源・エネルギー・環境、社会基盤、産業システム・汎用機械の各分野では、市場成長が見込め、当社の強みが活かせる事業については安定的なキャッシュ創出に向け必要なリソースを投入するとともに、収益性・効率性の低い事業に関しては引き続き事業構造改革を推進し、事業ポートフォリオの変革を通して継続的な成長を実現します。 2023年度(2024年3月期)実績2024年度(2025年3月期)実績2025年度(2026年3月期)見通しグループ経営方針20232025年度経営目標ROIC △4.9% 10.5% 9.9% 8%以上営業利益率 △5.3% (7.0%) 8.8% 9.1% 7.5%CCC 107日 (132日) 94日 (115日) (123日) 100日(注)各指標の算出方法は次のとおりです。 ・ROIC :(1-法定実効税率)×(営業利益+受取利息+受取配当金) ÷(親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債の金額) ・CCC :運転資本÷売上収益×365日 ・運転資本:営業債権+契約資産+棚卸資産+前払金-契約負債-営業債務-返金負債 ・2023年度~2025年度の括弧内の数字は、出荷済みのPW1100G-JMエンジンに関する追加検査 プログラム及び海外連結子会社における訴訟の和解合意による損失の影響を除いたものです。 ③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報a.財務戦略の基本的な考え方当社グループは、事業基盤の強化やキャッシュ創出力向上の取組みを通じて得られた自己資金を原資として、財務基盤の拡充と株主還元のバランスを取りながら、事業変革のための投資を進めていくことを財務戦略の基本方針としています。2024年度のキャッシュ・フローは、営業活動によるキャッシュ・フローが1,776億円の収入となり、投資活動によるキャッシュ・フローは588億円の支出となりました。合計したフリー・キャッシュ・フローは1,188億円となり、前連結会計年度に対して1,083億円増加しました。この改善は、EBITDAの増加に加え、運転資本の改善や税金還付等の一時的要因が寄与したものです。引き続き当社グループは、「グループ経営方針2023」で掲げる収益性・キャッシュ創出力を重視した経営施策を着実に実行し、成長・育成事業への最適な資金配分により、持続的な高成長を実現する企業体質への変革を実現し、企業価値向上へつなげていきます。 b.資金調達の方針当社グループの運転資金、投資向け資金等の必要資金の財源については、主として営業活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金を財源とすることを原則としています。必要に応じて、短期的な資金については金利の上昇に留意しつつ銀行借入やコマーシャル・ペーパーなど、設備資金・投融資資金等の長期的な資金については、日銀の政策変更による本邦金利上昇を見据えながら既存借入金及び既発行債の償還時期等を総合的に勘案し、長期借入金や社債等によって調達しています。外部からの資本・資金調達については、関連するリスクを適切にコントロールした上で、資本コストを最小化する調達を実現することを資金調達の基本方針としています。また、当社グループ内部では、グループガバナンスの向上、資金効率の向上及び資本コストの低減を図り、企業価値向上に寄与するため、グループ一体となった資金調達・資金収支管理を実施しており、当社と国内子会社間、また海外の一部地域の関係会社間ではキャッシュ・マネジメント・システムによる資金融通を行ない、グループ内の流動性確保、資金効率向上に努めています。 c.資金需要、資金調達及び流動性の分析当社グループの主な資金需要は、事業活動に必要な運転資金、成長事業創出のための研究開発費及び設備投資等です。当連結会計年度末の有利子負債残高はリース負債を含めて5,147億円となり、前連結会計年度末に対して596億円減少しました。これは主として、事業活動によるキャッシュ・フローの改善の結果、外部借入を返済したことによるものです。当連結会計年度末の現金及び現金同等物は1,368億円であり、前連結会計年度末と比較して19億円減少しています。手元資金の流動性については現金及び現金同等物に加え、主要銀行とのコミットメントライン契約や当座貸越枠、コマーシャル・ペーパーなど多様な調達手段を保有し、上記現金及び現金同等物と合わせて引き続き十分な流動性を確保しています。また、資金調達の多様性では、サステナブル・ファイナンスによる資金調達を促進しています。ESG経営を進める中で、ファイナンスを事業活動と一体ととらえ、自然と技術が調和する持続可能な社会の実現のために適切な資金調達と事業展開を行なっていきます。 (注)この項に記載の金額は単位未満を切捨て表示しています。 |
※本記事は「株式会社IHI」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
連結財務指標と単体財務指標の違いについて
連結財務指標とは
連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。
単体財務指標とは
単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。
本記事での扱い
本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
コメント