会社名 | 株式会社 神戸製鋼所 |
業種 | 鉄鋼 |
従業員数 | 連38050名 単11534名 |
従業員平均年齢 | 39.7歳 |
従業員平均勤続年数 | 15.4年 |
平均年収 | 7264000円 |
1株当たりの純資産 | 2675.13円 |
1株当たりの純利益 | 277.38円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 90円 |
配当性向 | 54.3% |
株価収益率(PER) | 7.41倍 |
自己資本利益率(ROE) | 11.12% |
営業活動によるCF | 2052億円 |
投資活動によるCF | ▲537億円 |
財務活動によるCF | ▲812億円 |
研究開発費※1 | 34億円 |
設備投資額※1 | 34.04億円 |
販売費および一般管理費※1 | 2493.64億円 |
株主資本比率※2 | 36.6% |
有利子負債残高(連結)※3 | 8634.74億円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、既知及び未知のリスクや不確実性及びその他の要素を内包するものです。「3 事業等のリスク」などに記載された事項及びその他の要素によって、当社の実際の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況が、こうした将来に関する記述とは大きく異なる可能性があります。 <企業理念>KOBELCOグループの現在のグループ企業理念は、2020年に制定したものです。2017年に公表した品質事案を契機に、閉鎖的だった企業風土を変えるべく、「我々は何者なのか」「何を目指していくのか」をあらためて見つめ直し、企業理念を明文化するプロジェクトを実施しました。その際重視したのは、ボトムアップでつくり上げるという制定プロセスです。経営層や特定のメンバーだけでなく、各職場において実施している「語り合う場」等での議論を通じ、グループ社員一人ひとりが考える機会を設けるとともに、そこからグループ社員の思いを抽出したうえで約1年をかけて制定しました。グループ企業理念は、いわゆるビジョンやミッションにあたる「KOBELCOが実現したい未来」「KOBELCOの使命・存在意義」に、共有すべき価値観や行動規範である「KOBELCOの3つの約束」「KOBELCOの6つの誓い」を加えた4つの要素で構成されています。「KOBELCOが実現したい未来」には、「末永く安全・安心に使える技術・製品・サービスを提供していくことに加え、社会に新しい価値を提供し、今を、そして、未来をより良いものにしよう」という、創業当時から脈々と受け継がれる精神が込められています。また、「KOBELCOの使命・存在意義」は、社会のニーズに向き合う中で培ってきた多様な人材・事業・技術の掛け算により、KOBELCOならではの社会課題の解決に挑みつづけるという「あるべき姿」そのものです。当社グループは、グループ社員が一丸となって制定したグループ企業理念を胸に「安全・安心で豊かな暮らしの中で、今と未来の人々が夢や希望を叶えられる世界。」の実現を目指していきます。 <KOBELCOグループのマテリアリティ(中長期的な重要課題)>2021年にグループ企業理念を起点とし、中長期的な時間軸の中で社会課題の解決や価値創造を通じて、当社グループが持続的に成長し、社会にとってかけがえのない存在となるために取り組むべき5つのマテリアリティ(重要課題)を特定しました。これらの重要課題を明確にしたことで、当社グループが実現したい未来や使命・存在意義を再確認することができました。マテリアリティの特定においては、CSR委員会(現サステナビティ推進委員会)委員長が中心となり、マテリアリティの評価プロセス及び分析結果の妥当性を検証し、優先的に取り組むべきマテリアリティを検討しました。具体的には以下の通りです。 また、マテリアリティの項目については、マテリアリティをより具体的に実現するため、指標・目標を設定し、サステナビリティ推進委員会にてその進捗を管理しております。指標・目標については、事業活動を取り巻く環境の変化等を踏まえ、定期的に見直すこととしており、「KOBELCOグループ中期経営計画(2024~2026年度)」の検討と併せて指標・目標の見直しを行いました。事業活動を取り巻く環境は引き続き大きく変化しています。この1年でも、気候変動対応に対するより一層の取組み強化の動きや、生物多様性に関する取組み、サプライチェーンやダイバーシティ&インクルージョンに対する取組み等といった様々な観点での対応が求められています。当社グループは、5つのマテリアリティに取り組むことでこれらの課題解決を推進し、持続的な成長を達成していきます。当社グループの事業活動は多岐にわたっており、世界各国に拠点を有しているため、そこで働く社員も多様性に富んでいます。我々はダイバーシティ&インクルージョンに取り組み、一人ひとりの人格・個性・多様性を互いに尊重し、それぞれが最大限に能力を発揮して生き生きと働ける職場環境を実現し、社会課題の解決や新たな価値創造に取り組んでいきます。 *S+3E:Safety + Energy Security, Economic Efficiency, Environment <企業構造と事業領域> 当社グループは、1905年(明治38年)に鋳鍛鋼メーカーとしてスタートし、機械事業、鉄鋼の圧延、銅、エンジニアリング、建設機械、アルミ、溶接とその事業を徐々に広げてまいりました。110年を超える歴史の中で、社会のニーズに応え、選択と拡大を進めてきた結果、現在、鉄鋼やアルミなどの素材、鋳鍛鋼やアルミ鋳鍛などの素形材、溶接材料などからなる「素材系事業」、機械、エンジニアリング、建設機械からなる「機械系事業」、そして「電力事業」の3つの事業領域で事業を展開しています。これらの幅広い事業分野で培った知見や技術力をもとに、お客様や社会が抱える課題の解決に貢献できる新たな価値を創り出せることこそが当社の強みであると考えています。 当社グループが提供する製品・サービスは、輸送機、電機、建設・土木、産業機械、社会インフラなどあらゆる産業の基礎資材となっています。当社グループは、独自の技術をもとにした代替困難な素材や部材、省エネルギーや環境に配慮した様々な機械製品やエンジニアリング技術等、当社グループ独自の多彩な製品群を幅広いお客様に供給することで、競争優位性を生みだしています。また、電力事業では、極めて重要な社会的インフラである電力の供給という公共性の高いサービスを提供しており、当社グループは社会的にも大きな責任を担っているものと考えています。 素材系事業、機械系事業のいずれにおいても、競合メーカーが国内外に多数存在します。 素材系事業においては、国内外の高炉メーカー、電炉メーカー、アルミメーカーなどが競合先として存在しますが、当社グループは、鉄鋼、アルミといった様々な素材と、その圧延・鋳造・鍛造技術を活用した鋳鍛鋼、アルミ鋳鍛といった多様な素形材、加えて溶接材料・溶接技術を有する当社グループの特長を活かしたソリューション提案をお客様に行うことにより、輸送機関連の分野などで競争優位性の維持・強化を目指しています。 また、機械系事業においても、機械、エンジニアリング、建設機械のそれぞれの製品・サービス毎に国内外に競合先が存在しますが、機械においては、例えば、当社は、スクリュ・ターボ・レシプロの全ての圧縮機タイプを持つ数少ないメーカーの一つであり、お客様の用途に合わせて最適な圧縮機を提供することで競争力の維持・強化に繋げています。エンジニアリングにおいては、例えば、当社グループの持つ天然ガスを還元剤とした直接還元製鉄法(MIDREXRプロセス)が直接還元鉄の生産において世界シェア60%以上を占めています。またMIDREXRプロセスと鉄鋼の高炉操業技術を融合し、高炉工程でのCO?排出量を大幅に削減できる技術の実証に成功するなど、継続的な技術改良への取組みを進め、加えて、天然ガスの代わりに水素を還元剤とした低炭素製鉄の実証を進め、世界初の100%水素直接還元鉄プラント商業機を受注するなど、技術革新にも挑戦する中で、競争優位性の維持を図っています。建設機械においては、油圧ショベルとクレーン事業に特化する中で、静音性・省エネ技術で高い評価をいただいており、これらの技術をさらに発展させるとともにDXの活用などで競争力強化に取り組んでいます。 電力事業においては、神戸市に石炭火力発電所を、栃木県真岡市にはガス火力発電所を有しており、いずれも現在、実用化されている発電技術の中で最高効率の発電設備を導入し、省エネルギー法で定められた発電効率基準を満たすことにより、国内の火力発電所の高効率化・環境負荷低減に寄与します。 <KOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)の総括> 当社グループは、「KOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)」で、「安定収益基盤の確立」と「カーボンニュートラルへの挑戦」の2つを最重要課題とし、素材系を中心とする収益力強化などの取組みを深化させて、新規電力プロジェクトの立上げが完遂し、収益貢献がフルに寄与する2023年度にROIC(投下資本収益率)5%以上の収益レベルを達成することを目指してまいりました。 「安定収益基盤の確立」については、「鋼材事業の収益基盤強化」、「新規電力プロジェクトの円滑な立上げと安定稼働」、「素材系事業の戦略投資の収益貢献」、「不採算事業の再構築」、「機械系事業の収益安定化と成長市場への対応」の5つの重点施策のうち、素材系事業の戦略投資案件は、アルミ系事業を中心に、需要拡大時期の後ろ倒し等により収益力が大きく低下しており、今後に課題を残しましたが、その他の施策を着実に進めるとともに、原料・資材、エネルギー価格や人件費などのコストアップ分の販売価格への転嫁にも注力した結果、2023年度の経常損益は1,609億円、ROICは6.7%と目標としていた5%以上を達成し、「安定収益基盤の確立」は計画通り推進することができました。 また、「カーボンニュートラルへの挑戦」については、多様な技術と人材を競争力の源泉として、幅広い事業を営む当社グループの強みを活かし、社会に貢献できる新たなビジネスチャンスと捉え、グループ一丸となって取り組んでおります。具体的には、国内初の低CO?高炉鋼材“KobenableR Steel”の販売など、生産プロセスにおけるCO?削減に加えて、当社グループの保有するMIDREXR技術をはじめ、自動車軽量化・電動化に寄与する素材・部品供給等、多様な技術を通じたCO?排出削減貢献の取組みについても、着実に推進しております。 <当社グループを取り巻く事業環境> 当社グループを取り巻く事業環境は、カーボンニュートラルの実現など持続可能な社会に向けた要請の高まりや、地政学リスク等を背景とした原材料調達コスト高騰や地産地消へ向かうサプライチェーンの再構築、国内人口減少に伴う国内需要逓減や働き手不足の顕在化、生成AIに代表されるデジタル技術の急激な進歩などのリスクが想定される一方で、カーボンニュートラルの実現に向けた社会変革への貢献や、様々な変化に対応した新技術の開発・実装といった、新たな成長機会の創出も期待されます。 したがって、将来の社会課題へのソリューションとなり得る技術・製品・サービスをお客様へ提供できる事業構造への「変革」や、外部環境変化に柔軟に対応できるような人材・組織・制度等の「変革」に積極的に取り組んでいく必要があります。 <KOBELCOグループ中期経営計画(2024~2026年度)> 2024年5月公表の中期経営計画では、当社グループの重要な課題、当社グループを取り巻く事業環境を踏まえ、「“稼ぐ力の強化”と“成長追求”」、「カーボンニュートラルへの挑戦」の2つを最重要課題といたしました。 まず、「KOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)」の期間では、「安定収益基盤の確立」による事業の土台づくりに取り組み、一定の成果がありました。新たな「KOBELCOグループ中期経営計画(2024~2026年度)」の期間では、「稼ぐ力の強化」によりその土台を更に強固なものとするとともに、土台から得られる様々な経営資源を「成長追求」や「カーボンニュートラルへの挑戦」に重点的に投入し、将来の成長機会も捕捉することで、新中期経営計画期間を通じて安定的にROIC(投下資本収益率)6%以上の収益レベルを確保し、好環境下においては、ROIC8%の到達も目指してまいります。さらに、将来の姿として、ROIC8%以上を安定的に確保し、持続的に成長する企業グループを目指します。 「カーボンニュートラルへの挑戦」については、エネルギー転換等を新たなビジネスチャンスと捉え、当社グループの保有する多様な技術によるCO?排出削減貢献や既存事業の拡大に加えて、技術のかけ合わせなどによる新たな事業機会の創出や新規事業化も積極的に推進してまいります。また、当社グループの生産プロセスについても、引き続き当社独自技術の開発推進、外部の革新技術の活用等により、製鉄プロセス及び電力事業のロードマップに沿った取組みの具体化を進め、2030年で2013年度比30~40%のCO?を削減し、2050年でのカーボンニュートラル実現に挑戦し、達成を目指してまいります。 加えて、これらを実現・加速させる手段・ドライバーとして、事業構造や人材・組織・制度等の変革(X)や、人材・技術・事業のかけ算(X)など、「KOBELCOらしさ」による様々な「X=変革・かけ算」の取組みについて、AX~GXの7つの「X」を設定し、それらを「KOBELCO-X(コベルコ エックス)」と総称して、当社グループ全体でサステナビリティ経営の強化に取り組み、企業価値を向上させて魅力ある企業へ変革を果たし、「未来に挑戦できる事業体」の確立を目指してまいります。 <4つの重点施策> 最重要課題である「“稼ぐ力の強化”と“成長追求”」、「カーボンニュートラルへの挑戦」を実現するために、4つの重点施策、具体的には、「将来の外部環境を見据えた“事業基盤の再整備”」、「既存事業における“新たな需要の捕捉”、“事業の幅の拡大”による成長」、「生産プロセスのCO?削減」、「変革を通じたサステナビリティ経営の強化」を着実に実行してまいります。 「将来の外部環境を見据えた“事業基盤の再整備”」については、需要拡大時期の後ろ倒しやものづくり力の課題等により、過去に実施したアルミ板並びにアルミ素形材分野における戦略投資案件の収益化に時間を要しておりますが、早期収益化に向けて数量増や価格改善、コストダウンなどのベース収益改善の取組みに注力するとともに、アルミ板分野の自動車パネル事業における他社との協業も含め、事業構造改革についても取り組んでまいります。加えて、鉄鋼や溶接などその他の素材系事業についても、人口減少に伴う国内需要の縮小や、新興国での需要の増加、カーボンニュートラル対応に伴う原材料管理の厳格化等による地産地消ニーズの拡大などに対応した、グローバルでの競争力維持への取組みを検討してまいります。 「既存事業における“新たな需要の捕捉”、“事業の幅の拡大”による成長」については、エネルギー転換等に関連した事業拡大や新規需要を絶好の機会と捉え、機械やエンジニアリング事業を中心に、既存製品の拡販強化に加えて、新規事業化も積極的に推進してまいります。また、建設機械事業を中心に、従来のものビジネスを中心とした事業活動で培った情報や技術・ノウハウと、DX関連技術のかけ算により、コト売りやソリューションビジネス等の新たな事業領域の拡大にも取り組んでまいります。 「生産プロセスのCO?削減」については、鋼材と電力の事業継続に向けて、鋼材事業では高炉へのHBI多配合等に取り組むとともに、HBI多配合のための低炭素鉄源確保については、エンジニアリング事業と協力して事業化を推進してまいります。また、電力事業についても、石炭火力発電所におけるアンモニア混焼等に取り組み、生産プロセスにおけるCO?削減目標の達成への道筋具体化を進めてまいります。 「変革を通じたサステナビリティ経営の強化」については、2024年4月より取締役会のモニタリング機能の更なる強化と、執行側の推進体制の強化を目的とした組織改正を実施しており、今後はこの体制のもと、KOBELCOらしい変革である「KOBELCO-X」に取り組んでまいります。具体的には、「既存事業の深化」×「新たな事業機会の探索」という「両利きの経営」を意味するAXにより「稼ぐ力の強化」×「成長の追求」を推進するとともに、「当社グループのカーボンニュートラルの実現」×「グリーン社会への貢献」を目指すGXにより「カーボンニュートラルへの挑戦」に取り組んでまいります。加えて、AXとGXは事業戦略の両輪と位置付けており、BX、CX2、DX、EX、FXの5つの「X」が推進力となって事業戦略の実現を図るとともに、企業活動の前提となる経営基盤の強化にも継続的に取り組み、サステナビリティ経営の強化を目指してまいります。 <事業管理指標> 当社グループは、7つの事業管理指標を設定し、2019年4月より運用を開始しておりましたが、本年4月より、グループ企業理念の実現に向けた中長期的な重要課題であるマテリアリティに関する指標・目標を再設定するとともに、その中で重点管理する指標を事業管理指標とする運用に変更しております。引き続き非財務指標も含めてグループ全体で企業価値向上に向けた取組みを推進・強化してまいります。 なお、マテリアリティに関する指標・目標については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載しております。 <財務戦略> 財務戦略の基本方針は、未来に挑戦できる事業体の確立に向けて「稼ぐ力の強化」や「成長の追求」を行いつつ、外部環境の変化による業績変動リスクや将来の大型投資に耐え得る財務基盤の更なる強化に取り組み、事業成長を支える財務体質への変革を図ってまいります。新中期経営計画期間においては、2026年度末の純資産比率40%台前半、グロスD/Eレシオ※0.7倍台半ばを財務目標数値として定めております。 ※プロジェクトファイナンスを含む有利子負債÷自己資本 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1)経営成績の状況当連結会計年度の我が国経済は、物価上昇や世界的な需要低迷を背景に一部で足踏みが見られるものの、個人消費や企業の生産活動を中心に持ち直しの傾向が継続しました。海外経済は、米国では堅調な雇用情勢及び個人消費を背景に景気は底堅く推移している一方、欧州では金利上昇に伴う景気の下押し圧力により足踏み状態が続きました。また、中国では金融緩和等により景気の押上げが図られているものの、不動産市場の低迷などにより国内需要は伸び悩んでおり、景気回復ペースは不透明な状況が続きました。このような中、当社はKOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)に掲げる「安定収益基盤の確立」に向けた重点施策を着実に実行するとともに、引き続きものづくり力の強化や販売価格の改善に努めてまいりました。この結果、当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度比706億円増収の2兆5,431億円となり、営業利益は、鉄鋼アルミでの販売数量の減少や在庫評価影響の悪化などがあったものの、原料炭価格の下落と販売価格改善の進展に伴う鉄鋼メタルスプレッドの改善、機械・エンジニアリングでの売上高の増加、電力での神戸発電所4号機の稼働や燃料費調整の時期ずれ影響の改善、売電価格に関する一過性の増益影響(売電価格の指標となる石炭の輸入貿易統計価格と当社購入価格の差異)などにより、前連結会計年度比1,002億円増益の1,866億円となりました。経常利益は、建設機械における北米でのエンジン認証に関する補償金収入の剥落や、自動車向けアルミパネル事業の再構築に伴う持分法による投資損失の計上などの減益要因があったものの、営業利益の増益により、前連結会計年度比540億円増益の1,609億円となりました。特別損益として、素形材などで固定資産の減損損失や、自動車向けアルミパネル事業の再構築に伴う合弁契約関連費用引当金の計上があったものの、子会社において固定資産の譲渡益を計上したことから、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比369億円増益の1,095億円となりました。 当連結会計年度のセグメント毎の状況は、次のとおりであります。なお、従来、「その他」の区分に含めていたコベルコ科研は、所管の変更に伴い、当連結会計年度より「機械」セグメントに含めております。以下の前連結会計年度比較については、前連結会計年度の数値を所管変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しております。 <素材系事業>[鉄鋼アルミ](鉄鋼)鋼材の販売数量は、自動車向けの需要が増加した一方、厚板工場・仕上圧延機の更新影響などにより減少したことから、前連結会計年度を下回りました。販売価格は価格改善の進展などにより、前連結会計年度を上回りました。この結果、売上高は、前連結会計年度比2.0%減の8,916億円となりました。経常利益は、原料炭価格の下落と販売価格改善の進展に伴うメタルスプレッドの改善があったものの、販売数量の減少や在庫評価影響の悪化などにより、前連結会計年度比97億円減益の392億円となりました。(アルミ板)アルミ板の販売数量は、自動車向けは前連結会計年度並であった一方、需要の調整局面にあるIT・半導体向けの大幅な減少により、前連結会計年度を下回りました。販売価格は、価格改善の進展などにより、前連結会計年度を上回りました。この結果、売上高は、前連結会計年度比2.2%減の1,911億円となりました。経常損益は、販売数量の減少や在庫評価益の縮小に加えて、自動車向けアルミパネル事業の再構築に伴う持分法による投資損失の計上により、前連結会計年度比160億円悪化の231億円の損失となりました。 鉄鋼アルミ全体では、売上高は、前連結会計年度比2.0%減の1兆827億円となり、経常利益は、前連結会計年度比258億円減益の161億円となりました。 [素形材]素形材の販売数量は、造船向け需要を取り込んだ鋳鍛鋼、自動車向け需要が回復したアルミ押出、サスペンションで前連結会計年度を上回りました。一方、IT・半導体向け需要の減少により、銅板、アルミ鋳鍛で前連結会計年度を下回りました。この結果、売上高は、前連結会計年度比7.3%増の2,981億円となり、経常利益は、固定費を中心としたコストの増加などがあったものの、販売数量の増加や販売価格改善の進展などにより、前連結会計年度比22億円増益の32億円となりました。 [溶接]溶接材料の販売数量は、国内は前連結会計年度並の一方、中国、東南アジアでの需要回復が遅れ、中国での日系自動車・建設機械向け需要減等により、前連結会計年度を下回りました。販売価格は価格改善の進展などにより、前連結会計年度を上回りました。この結果、売上高は、前連結会計年度比5.8%増の935億円となり、経常利益は、販売数量は減少したものの、販売価格改善の進展などにより、前連結会計年度比20億円増益の49億円となりました。 <機械系事業>[機械]受注高は、石油化学やエネルギー分野を中心に好調に推移したこと等により、前連結会計年度比2.9%増の2,737億円となり、受注残高は2,518億円となりました。売上高は、既受注案件の進捗やサービス案件の増加により、前連結会計年度比15.3%増の2,345億円となり、経常利益は、好調な受注を受けた受注採算の改善もあり、前連結会計年度比138億円増益の296億円となりました。 [エンジニアリング]受注高は、還元鉄関連事業で海外大型案件を受注したことや廃棄物処理関連事業での堅調な受注などにより、前連結会計年度比36.0%増の2,143億円となり、受注残高は4,336億円となりました。売上高は、前連結会計年度比17.5%増の1,706億円となり、経常利益は、前連結会計年度比82億円増益の124億円となりました。 [建設機械]油圧ショベルの販売台数は、北米等で増加したものの、需要が低迷した中国やエンジン認証問題により欧州で減少したことから、前連結会計年度を下回りました。クローラクレーンの販売台数は、欧州でのエンジン認証問題や生産・出荷のずれにより減少したものの、エンジン認証問題対応の進展等で北米を中心に増加したことにより、前連結会計年度を上回りました。この結果、売上高は、販売台数の減少があるものの、販売価格改善の進展等により、前連結会計年度比5.8%増の4,040億円となり、経常利益は、販売価格改善の進展や円安による輸出採算の改善の一方、エンジン認証問題に関する補償金収入の剥落などにより、前連結会計年度比32億円減益の91億円となりました。 <電力事業>[電力]販売電力量は、神戸発電所4号機の稼働により、前連結会計年度を上回りました。販売電力単価は発電用石炭価格の変動に伴い前連結会計年度比で下落しました。この結果、売上高は、前連結会計年度比2.6%減の3,159億円となり、経常利益は、神戸発電所4号機の稼働や、神戸発電所3・4号機における燃料費調整の時期ずれ影響の改善、神戸発電所1~4号機における売電価格に関する一過性の増益影響などにより、前連結会計年度比612億円増益の857億円となりました。 <その他>売上高は、前連結会計年度並の108億円となり、経常利益は、前連結会計年度並の48億円となりました。 (2)財政状態の状況当連結会計年度末の総資産は、将来の資金需要に備え現金及び預金が増加したことに加え、時価の上昇により投資有価証券が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ450億円増加し2兆9,197億円となりました。負債については、原料価格の下落等により支払手形及び買掛金が減少したことなどから、前連結会計年度末に比べ1,046億円減少し1兆7,924億円となりました。純資産については、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことや、その他有価証券評価差額金が増加したことなどから、前連結会計年度末に比べ1,496億円増加し1兆1,273億円となりました。 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標目標指標推移目標指標目標(2023年度)2020年度(実績)2021年度(実績)2022年度(実績)2023年度(実績)ROIC(税引後事業利益/投下資本)5%以上1.1%4.7%4.9%6.7%D/Eレシオ(注1)(有利子負債/自己資本)0.7倍以下1.11倍(注2)0.80倍(注3)0.65倍 0.55倍 グロスD/Eレシオ(ご参考)(プロジェクトファイナンスを含む有利子負債/自己資本)-1.49倍1.19倍1.00倍0.83倍純資産比率(ご参考)(純資産/総資産)-29.8%32.0%34.0%38.6%(注)1.プロジェクトファイナンスを含まない2.2021年度分借入金の前倒し調達(1,862億円)含む 前倒し調達除く2020年度D/Eレシオ:0.84倍3.2022年度分借入金の前倒し調達(1,011億円)含む 前倒し調達除く2021年度D/Eレシオ:0.68倍 「KOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)の総括」については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。 (4)生産、受注及び販売の実績a.生産実績 当連結会計年度における下記セグメントの生産実績は、次のとおりであります。セグメントの名称区分生産数量(千トン)前連結会計年度(2022年4月~ 2023年3月)当連結会計年度(2023年4月~ 2024年3月)差異前期比 (%)鉄鋼アルミ粗鋼6,2486,020△228△3.6アルミ板349319△30△8.5素形材アルミ押出404225.0銅板5553△1△2.7(注)粗鋼には、高砂製作所の電炉の生産数量を含めております。 b.受注実績 当連結会計年度における下記セグメントの受注実績は、次のとおりであります。セグメントの名称区分受注高(百万円)前連結会計年度(2022年4月~2023年3月)当連結会計年度(2023年4月~2024年3月)差異前期比(%)機械国内99,34096,090△3,249△3.3海外166,646177,70511,0586.6合計265,987273,7957,8082.9エンジニアリング国内120,869141,90521,03517.4海外36,67772,39435,71797.4合計157,546214,30056,75336.0 セグメントの名称区分受注残高(百万円)前連結会計年度末(2023年3月)当連結会計年度末(2024年3月)差異前期比(%)機械国内48,96669,79120,82542.5海外165,762182,07316,3109.8合計214,729251,86437,13517.3エンジニアリング国内283,065312,95029,88410.6海外88,061120,70232,64137.1合計371,127433,65362,52516.8(注)従来、「その他」の区分に含めていたコベルコ科研(特殊合金他新材料(ターゲット材等)、各種材料の分析・解析等)は、所管の変更に伴い、当連結会計年度より「機械」セグメントに含めて開示しております。なお、前連結会計年度の受注実績は、所管変更後の報告セグメントの区分に基づき作成したものを開示しております。 c.販売実績 当連結会計年度におけるセグメント毎の販売実績は、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度(2022年4月~ 2023年3月)当連結会計年度(2023年4月~ 2024年3月)差異前期比 (%) 鉄鋼909,704891,621△18,082△2.0 アルミ板195,462191,101△4,361△2.2鉄鋼アルミ1,105,1661,082,722△22,443△2.0素形材277,765298,10520,3397.3溶接88,42993,5295,0995.8機械203,463234,51531,05215.3エンジニアリング145,224170,64425,41917.5建設機械381,781404,05622,2755.8電力324,369315,950△8,418△2.6その他10,96510,804△160△1.5調整額△64,657△67,186△2,528-合計2,472,5082,543,14270,6332.9(注)1.従来、「その他」の区分に含めていたコベルコ科研(特殊合金他新材料(ターゲット材等)、各種材料の分析・解析等)は、所管の変更に伴い、当連結会計年度より「機械」セグメントに含めて開示しております。なお、前連結会計年度の販売実績は、所管変更後の報告セグメントの区分に基づき作成したものを開示しております。2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。 相手先前連結会計年度(2022年4月~2023年3月)当連結会計年度(2023年4月~2024年3月)金額 (百万円)割合 (%)金額 (百万円)割合 (%)神鋼商事(株)292,64811.8280,07111.0 (5)資本の財源及び資金の流動性に関する情報①資本の財源及び資金の流動性a.財務戦略「KOBELCOグループ中期経営計画(2021~2023年度)」における財務戦略の基本方針は、新規の設備投資・投融資を厳選したうえで、投資キャッシュ・フローを営業キャッシュ・フローの範囲内とし、2023年度末のD/Eレシオの目標を0.7倍以下とすることとしておりました。また、運転資金改善等の活動を継続して進めるとともに、営業キャッシュ・フローの下振れリスクに備えて、モニタリング強化による投資案件の精査・厳選、事業用資産の売却・流動化、政策保有株式売却等のバックアップ策の検討・準備を進めてまいりました。本方針のもと、設備投資・投融資委員会を通じた新規設備投資・投融資の厳選、事業ポートフォリオ管理委員会によるキャッシュ・フローのモニタリングを継続するとともに、ROIC管理を通じた投下資本の管理強化に取り組みました。その結果、当連結会計年度末のD/Eレシオ(プロジェクトファイナンスを除く)は前連結会計年度末の0.65倍から改善し0.55倍となり、目標である0.7倍以下を引き続き堅持し、本中期経営計画期間で財務基盤は大幅に改善しました。「KOBELCOグループ中期経営計画(2024~2026年度)」における財務戦略については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。 b.資金需要の主な内容当社グループの資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(材料・外注費及び人件費等)、受注獲得のための販売費、製品競争力強化・ものづくり力強化に資するための研究開発費が主な内容です。投資活動については、設備老朽化に伴う更新投資や事業伸張・生産性向上を目的とした設備投資及び事業遂行に関連した投融資が主な内容です。今後、将来見込まれる成長分野での資金需要や、最新の市場環境及び受注動向も勘案し、資産の圧縮及び投資案件の選別を行う一方、必要な設備投資や研究開発投資等を継続してまいります。 ②当連結会計年度の実績a.プロジェクトファイナンスを除くキャッシュ・フローの状況の分析当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローに係る収入が1,285億円、投資活動によるキャッシュ・フローに係る支出が△373億円、財務活動によるキャッシュ・フローに係る支出が△528億円となりました。以上の結果、フリーキャッシュ・フローは911億円の収入となり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ432億円増加の1,887億円となりました。 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)前連結会計年度に比べて、鉄鋼における販売価格改善の進展や電力における一過性の増益影響などにより、税金等調整前当期純利益が増益となったことから、当連結会計年度の運転資金は改善いたしました。この結果、当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて586億円収入が増加し、1,285億円となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)固定資産売却による収入が増加したことなどから、当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて326億円支出が減少し、△373億円となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)社債の発行などにより収入が増加したことから、当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べて507億円支出が減少し、△528億円となりました。 (単位:億円) 2022年度2023年度差異営業キャッシュ・フロー6981,285586投資キャッシュ・フロー△700△373326フリーキャッシュ・フロー△2911913財務キャッシュ・フロー△1,035△528507(うち、株主還元)(△177)(△276)(△99)株主還元後のフリーキャッシュ・フロー△179634813現金及び現金同等物の期末残高1,4541,887432 (ご参考)プロジェクトファイナンスを含むキャッシュ・フロー (単位:億円) 2022年度2023年度差異営業キャッシュ・フロー1,1962,052855投資キャッシュ・フロー△972△537435フリーキャッシュ・フロー2241,5151,291財務キャッシュ・フロー△855△81243(うち、株主還元)(△177)(△276)(△99)株主還元後のフリーキャッシュ・フロー461,2381,191現金及び現金同等物の期末残高2,0332,787753 b.プロジェクトファイナンスを除く有利子負債の状況有利子負債は、借入金の返済等により前連結会計年度から100億円減少の5,805億円となり、株主資本は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により、761億円増加の9,143億円となりました。当社グループは比較的工期の長い工事案件が多く、生産設備も大型機械設備を多く所有していることなどから、一定水準の安定的な運転資金及び設備資金を確保しておく必要があり、当連結会計年度末の有利子負債の構成は、返済期限が1年以内のものが1,371億円、返済期限が1年を超えるものが4,433億円となっております。 (単位:億円) 2022年度2023年度有利子負債(注1)5,9055,805有利子負債(注2)(プロジェクトファイナンスを含む)8,6188,234株主資本8,3829,143D/Eレシオ(プロジェクトファイナンスを除く)0.65倍0.55倍 (注1)当連結会計年度末現在の有利子負債の内訳(単位:億円) 合計1年内1年超短期借入金426426-長期借入金4,2289443,283社債1,150-1,150合計5,8051,3714,433 (注2)当連結会計年度末現在の有利子負債の内訳(プロジェクトファイナンスを含む)(単位:億円) 合計1年内1年超短期借入金426426-長期借入金6,6571,2325,424社債1,150-1,150合計8,2341,6596,574 (6)重要な会計方針及び見積り 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、不正又は誤謬による重要な虚偽表示のない連結財務諸表を作成し適正に表示するために経営者が必要と判断した内部統制を整備及び運用しております。 連結財務諸表の作成にあたり、経営者は、連結貸借対照表上の資産及び負債の計上額、並びに、連結損益計算書上の収益及び費用の計上額に影響を与えるような会計上の見積りを行う必要があります。会計上の見積りは、過去の経験やその時点の状況として妥当と考えられる様々な要素に基づき行っておりますが、前提条件や事業環境等に変化が生じた場合には、見積りと将来の実績が異なることがあります。 会計上の見積りが必要となる項目のうち、経営者が当社グループの財政状態又は経営成績に対して重要な影響を与える可能性があると認識している主な項目は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。 |
※本記事は「株式会社 神戸製鋼所」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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