会社名 | 株式会社ブリヂストン |
業種 | ゴム製品 |
従業員数 | 連121464名 単14207名 |
従業員平均年齢 | 41.9歳 |
従業員平均勤続年数 | 15.5年 |
平均年収 | 7552000円 |
1株当たりの純資産 | 2942.56円 |
1株当たりの純利益(連結) | 416.19円 |
決算時期 | 12月 |
配当金 | 210円 |
配当性向 | 61.2% |
株価収益率(PER) | 10倍 |
自己資本利益率(ROE)(連結) | -0.1% |
営業活動によるCF | 4839億円 |
投資活動によるCF | ▲1577億円 |
財務活動によるCF | 610億円 |
研究開発費※1 | 1262億円 |
設備投資額※1 | 492億円 |
販売費および一般管理費※1 | 1276.13億円 |
株主資本比率※2 | 72.9% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループの事業環境は、地政学・経済・地球環境・サステナビリティ・デジタル化を含む技術革新などにおいて、様々な変化が複合的・加速度的に起こり続けています。特に、当社グループが経営の中核に据えるサステナビリティについては、気候変動対応に加えて、ネイチャーポジティブ(自然再興)への対応などより一層重要性が高まっております。また、モビリティ業界においては、EVの普及スピードは足元で一部停滞傾向にありますが、中長期的には変わらず、中国EVメーカーが攻勢を強めるなど自動車業界の構造変化が進んでおり、それに連動してタイヤ業界においても欧州・南米を中心に中国廉価輸入タイヤの増加などが「新たな脅威」となっております。このような環境下、当社グループは、ビジョンに「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」を掲げ、2022年8月に発表した「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」を当社創立100周年となる2031年へ向けた道筋として、常態化する変化に動じず、ゴムのように強靭でしなやかに、変化をチャンスに変えるということを意味するレジリアントな“エクセレント”ブリヂストンを目指しております。2024年3月に発表した中期事業計画(2024-2026)において、この実現したい姿に向けた活動を3カ年計画として具体化し、変革を加速しております。中期事業計画(2024-2026)においては、経営の3つの軸である「過去の課題に正面から向き合い、先送りしない」、「足元をしっかり、実行と結果に拘る」、「将来への布石を打つ」は変えず、4つのビジネス基本シナリオに沿って、「価値創造へ、よりフォーカス」しております。4つのビジネス基本シナリオは、「良いビジネス体質を創る」、「良いタイヤを創る」、「良いビジネスを創る」、そして「良い種まきをし、新たなビジネスを創る」です。特に、2025年においては、「良いビジネス体質を創る」に沿って、経営・業務品質の向上を最優先課題としております。2025年は、自動車業界・タイヤ業界の構造変化の加速も踏まえ、「緊急危機対策年」と位置付け、バリューチェーン全体で経営・業務品質の向上を徹底する「守り」と、2026年以降の成長を見据えた「断トツ商品」やソリューション事業の強化などを含めた「攻め」の活動の両輪で経営を推進してまいります(2025年通期連結業績予想 売上収益4兆3,300億円、調整後営業利益5,050億円、調整後営業利益率11.7%、ROIC9.2%、ROE7.2%)。まず、経営・業務品質の向上を追求するため、2025年1月1日付にて新たなグローバル経営執行体制を構築しました。Global CEOの下に、4名の副社長を配置し、Bridgestone West(ウェスト)、Bridgestone East(イースト)の事業責任(Profit(プロフィット) & Loss(ロス)(PL)責任)と、Global CTO(Chief(チーフ) Technology(テクノロジー) Officer(オフィサー))及び、Global CAO(Chief Administration(アドミニストレーション) Officer)・CSO(Chief Strategy(ストラテジー) Officer)によるグローバル最適を追求する横串・グローバル最適責任を明確にし、それぞれが対等の立場で各役割責任を果たすことで、管理・ガバナンスを強化、チェック&バランスを担保し、「実行と結果に拘る」経営を推進しております。「守り」の活動については、まず、北米・南米、欧州を中心にグローバルで事業再編・再構築(第2ステージ)を実施し、それと連動した固定費削減を断行してまいります。特に、業績・事業環境ともに厳しい状況にある欧州事業については、2024年末より着手している生産、販売・小売、本社機能などすべての領域における再編・再構築をもう一段強化し、組織体制を統合・シンプル化させ、その効果を取り込むことで、業績の改善を進めてまいります。北米事業においては、2025年1月に米国テネシー州のトラック・バス用タイヤ工場であるラバーン工場の閉鎖を発表し、同時に、アイオワ州デモインの農機用タイヤ工場における生産能力削減、本社機能、販売・オペレーション機能の人員削減など事業拠点とコストの最適化を進めております。南米事業においても、ブラジル・アルゼンチンにおいて、各生産拠点の生産能力及び人員削減に着手しております。また、日本タイヤ、化工品事業を含むBridgestone Eastにおいても、組織のシンプル化、機能集約などを実行してまいります。「攻め」の活動については、「断トツ商品」を中核に、タイヤを「創って売る」から「使う」段階で価値を増幅してまいります。そのために「断トツ商品」を継続的に強化してまいります。乗用車用タイヤにおいては、「EV時代の新たなプレミアム(乗用車系)」と位置付ける商品設計基盤技術「ENLITEN(エンライトン)」を搭載した新商品、鉱山車両用タイヤにおいては「Bridgestone MASTERCORE(マスターコア)」の展開を拡大するとともに、次世代の「断トツ商品」の開発・企画も進めてまいります。また、原材料の調達から、開発、生産、物流までモノづくりに関わる領域全体において、グローバルビジネスコストダウン活動を強化し、バリューチェーン全体におけるビジネスの質の向上を推進してまいります。この活動は、グローバル調達活動、SCM(サプライチェーンマネジメント)物流改革、BCMA(Bridgestone Commonality(コモナリティ) Modularity(モジュラリティ) Architecture(アーキテクチャ))、グリーン&スマート化、現物現場での地道な生産性向上で構成され、2024年の厳しい事業環境においても業績を下支えしました。2025年においても、これらを加速し、業績への貢献と価値創造を強化してまいります。成長事業であるソリューション事業においては、生産財系Bto(トゥ)Bソリューション(鉱山、航空、トラック・バス系ソリューション)を、戦略事業として強化してまいります。当社グループの強みである強いリアルとデジタルを融合させ、現物現場でお客様に寄り添い、困りごとを解決することで、「断トツ商品の価値の増幅」、「お客様との信頼の増幅」、「データの価値の増幅」を実現し、新たな社会価値・顧客価値を創造することで、業績への貢献を拡大してまいります。これらを踏まえ、当社グループでは、米国事業、インド事業、鉱山車両用及び航空機用タイヤ・ソリューション事業を成長市場として位置づけ、質の伴った成長を実現してまいります。米国においては、米国の社会・経済に貢献し、人とモノの移動を支え続けるという想いの下、乗用車用タイヤにおいて「断トツ商品」の強化を中核にチャネルについても拡充を図り、米国消費財ビジネス再構築に着手することで、成長に舵を切ってまいります。トラック・バス用タイヤにおいても、リアルとデジタルを融合させたトラック・バス系ソリューションを拡充し、カスタマー・サクセスを創出してまいります。インドにおいては、乗用車用タイヤにおいて生産増強投資や、インド市場向けの「断トツ商品」強化のためのサテライトテクノロジーセンターの設立など技術開発投資も実行し、インド市場における存在感を高め、マーケットリーダーポジションをより強固なものにしてまいります。鉱山車両用及び航空機用タイヤ・ソリューション事業については、プレミアムタイヤの販売拡大や、上述の生産財系BtoBソリューションの方向性に沿ってプレミアムタイヤとソリューションの連動を深めることで、価値創造を進めてまいります。加えて、新たなコーポレートブランディング活動にも着手し、「サステナブルなプレミアム」ブランドの構築を進めてまいります。サステナブルなグローバルモータースポーツ活動を軸に、「サステナブルなプレミアム」として、全ての一人ひとりにとっての「最高」を支え続け、モビリティの未来になくてはならない存在となることを目指してまいります。化工品・多角化事業においては、引き続き当社グループの強みが活きる領域にフォーカスしてまいります。将来に向けた「新たな種まき」と位置付ける探索事業においては、社会価値とサステナビリティを中核に推進しております。リサイクル、グアユール、ソフトロボティクス、パンクしない次世代タイヤ「AirFree(エアフリー)」において、社外パートナーとの共創を軸にビジネスモデルの探索を加速してまいります。これらの「守り」と「攻め」の活動を両輪で実行することで、変化に対応できる「強いブリヂストン」へ進化し、「稼ぐ力の強化」を実現し、2026年には「真の次のステージ」へ歩を進めてまいります。経営の中核であるサステナビリティについては、商品を「創って売る」「使う」、原材料に「戻す」という、バリューチェーン全体でカーボンニュートラル化(脱炭素化)、サーキュラーエコノミー(循環型経済)及びネイチャーポジティブ(自然再興)に貢献する取り組みとビジネスを連動する当社グループ独自のサステナビリティビジネスモデルを進化させてまいります。特に、環境面は、当社グループとしての目標として、2050年を見据えた環境長期目標を2012年に策定し、これを達成するために2030年を目標とした環境中期目標「マイルストン2030」を設定し、その実現に向けた取り組みを進めております。カーボンニュートラル化へ向けては、2030年にCO2の総量(Scope(スコープ)1、2)(注)を2011年対比50%削減、2050年にカーボンニュートラル化という明確なターゲットを掲げており、2024年は、目標を上回る約60%の削減を見込んでおります。この大幅な削減は、前期対比で生産量減の影響や生産性向上の効果などに加えて、CO2排出量削減に向けたグローバル各工場における再生可能エネルギー(電力)比率の向上が大きく寄与しており、グローバル各地域において、太陽光発電パネルの設置や外部から購入する電力の再生可能エネルギー由来の電力への切り替えを推進しております。2024年の再生可能エネルギー(電力)の比率は約70%を見込んでおり、2030年目標の100%への挑戦に向けて着実に進めてまいります。バリューチェーン全体のCO2排出量(Scope3)(注)については、2030年までに、商品・サービス・ソリューションのライフサイクルを通じて、Scope1、2における排出量の5倍以上のCO2削減に貢献(基準年:2020年)することを目標とし、活動を進めてまいります。2024年は約2.6倍と、着実な貢献拡大を見込んでおります。サーキュラーエコノミーの実現に向けては、2030年までに再生資源・再生可能資源比率を40%に向上、2050年までにサステナブルマテリアル化を目標としており、2024年は約39%を見込み、商品戦略との連動を基盤に継続的に強化してまいります。今後に向けては、モータースポーツ活動を「走る実験室」として、バリューチェーン全体でのカーボンニュートラル化、サーキュラーエコノミーの実現を加速してまいります。加えて、ネイチャーポジティブへの貢献において、当社グループの事業に直結している天然ゴムや水資源の持続可能な利用を推進する活動に注力してまいります。特に、小規模農家の生産性向上、森林破壊ゼロの実現に貢献するために、自社農園で培った技術や病害対策に有効なノウハウを活用し、2026年までに累計12,000軒を目標に、天然ゴム小規模農家の支援に取り組んでおります。現物現場で現地の農家に寄り添い、困りごとを解決する活動に注力し、地域社会へも貢献してまいります。また、事業環境が常に変化していく中、変化に動じないためにグローバル経営リスク管理を強化してまいります。当社グループにおいては、4つの重点管理アイテムを現在設定しております。1つ目は、6PPD(タイヤ業界で一般的に使用される老化防止剤)、TRWP(Tire(タイヤ) and(アンド) Road(ロード) Wear(ウェア) Particles(パーティクルズ))、についての対応であります。6PPDについては、業界全体として取り組むと共に、当社グループとしても、タイヤの安全性を担保できることを大前提として代替品の開発を進めております。TRWPは、タイヤが安心・安全な移動を支えるために必要な路面と摩擦することによって発生する粉じんで、タイヤの表面であるトレッドと道路舗装材の混合物です。当社グループは業界のリーダーとして、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)傘下のタイヤ産業プロジェクトを通じて、TRWPの特性とその影響の研究に取り組んでおります。また、各地域業界団体での取り組みに積極的に参加し、評価試験法の国際標準(ISO規格)策定を主導すると共に、当社グループ独自の取り組みとして、タイヤを「創って売る」「使う」バリューチェーン全体で、ロングライフ商品の拡大やソリューション事業との連携を含め、TRWPの削減に向けたアプローチを継続的に強化してまいります。2つ目は、EUDR(欧州森林破壊防止規則)への対応であります。サステナビリティを中核とした天然ゴムパートナーとの関係を強化してまいります。3つ目は、サイバー攻撃への対応であります。当社グループでは、グローバルでセキュリティー対応チームを立ち上げ、抜本的な対策を進めております。4つ目は、地政学リスクへの対応であります。特に、当社グループの重要市場である米国の政治動向を中心に注視しており、政策変更に伴うビジネスインパクトの洗い出しと対策を進めております。2025年1月の米国トランプ政権の発足後に発表されたメキシコ、カナダ、中国に対する追加関税につきましては、想定されるケースを検討し、複数のシナリオを構築することで、迅速に対応できる体制を整備し、状況を正しく見極め、適切なタイミングで構築したシナリオの中から実行計画を発動、迅速に実行する様、今後も状況を注視しながら対応を進めてまいります。これら全ての企業活動の基盤となる人財については、生産性・創造性の向上を基本として、「人財投資を強化し、付加価値をあげ、価値創造の好循環を生む」ことを目指しております。その取り組みを表す指標として「人的創造性」を、2024年からグローバル経営指標として正式に導入いたしました。グローバルの推移を把握しながら、地域別・国別の課題に取り組んでおります。特に日本においては、デジタル研修、現場での挑戦を後押しする現場100日チャレンジ、生産現場の環境改善を実行するなど、多様な人財が輝く場、働きやすい職場づくりを進めております。さらに、2020年に開始した次世代経営リーダー育成を目的としたプログラム「Bridgestone NEXT(ネクスト)100」では、グローバルで毎年約100人を選抜し、経営層との対話機会の強化、積極的なストレッチアサイメントなどを通じた重点育成を進めております。また、DE&Iの推進については、女性特有の健康課題をテクノロジーで解決するフェムテック・プログラムを導入するなど、一人ひとりが自分らしい毎日を歩める職場環境の整備を強化しています。厳しい事業環境下においても、多様な人財が輝けるよう、人的創造性・生産性の向上をベースに、金銭報酬のみならず報酬以外の施策を組み合わせた人財投資を強化しメリハリをつけた賃金の引き上げを含め、一人あたり人財投資額アップに取り組んでいきます。当社グループは、不変の使命である「最高の品質で社会に貢献」の下、株主・顧客・パートナー(サプライヤー)・従業員・社会といった全てのステークホルダーへの貢献を最大化することを目指してまいります。「Bridgestone E8 Commitment」を価値創造の軸として、持続的な価値創造基盤の構築に継続して取り組んでまいります。 (注) Scope1は企業が直接排出するCO2(自社工場のボイラーなどからの排出)、Scope2はエネルギー起源間接排出(電力など他社から供給され、自社で消費したエネルギーに伴うCO2排出)、Scope3はライフサイクルにおける原材料調達、流通、顧客の使用と廃棄・リサイクル段階のCO2排出量等を指します。 |
経営者による財政状態の説明
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 当連結会計年度より、当社グループではグローバル経営体制の更なる強化の一環として、インド事業のセグメント区分を変更しております。これにより、「中国・アジア・大洋州」セグメントを「アジア・大洋州・インド・中国」セグメントへ、「欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ」セグメントを「欧州・中近東・アフリカ」セグメントへ変更いたします。これにより、前連結会計年度の数値についても新たなセグメント区分に組み替えたうえで表示しております。なお、ロシア事業は2023年12月に譲渡が完了しております。 また、当社グループは防振ゴム事業、化成品ソリューション事業を非継続事業に分類しており、前連結会計年度及び当連結会計年度の金額から非継続事業を控除しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 6.事業セグメント」に記載のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において、判断したものであります。 (1) 経営成績等の状況の概要 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。 ① 財政状態及び経営成績の状況a.業績全般 当連結会計年度前連結会計年度増減金額比率 億円億円億円%売上収益44,30143,138+1,163+3調整後営業利益4,8334,806+27+1営業利益4,4334,818△385△8税引前当期利益4,2144,442△227△5親会社の所有者に帰属する当期利益2,8503,313△463△14 当社グループは、「最高の品質で社会に貢献」という使命の下、「2050年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョンを掲げております。また、従業員、社会、パートナー、お客様と共に持続的な社会を支えることにコミットする「Bridgestone E8 Commitment」を企業コミットメントとして制定し、価値創造の軸としております。ビジョンの実現に向けては、創立100周年である2031年を視野に「2030年 長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」を策定し、これを北極星として、具体的な計画である2024年3月に発表した「中期事業計画(2024-2026)」に沿って、着実に経営を推進しております。 当連結会計年度は、中国EV攻勢などによる自動車業界構造変化や、欧州・南米市場への廉価輸入タイヤの増加などのタイヤ業界構造変化の加速が「新たな脅威」となり、これらへの素早い対応が求められる厳しい事業環境において経営・業務品質の向上を最優先課題に掲げ、事業再編・再構築(第2ステージ)へ着手しながら、現物現場で「価値創造へ、よりフォーカス」することに注力いたしました。 コア事業であるプレミアムタイヤ事業においては、新車用の乗用車用及び小型トラック用タイヤの需要が、EVシフト減速等を背景にグローバルで減速しました。アジアは前連結会計年度を若干上回った一方で、特に、欧州・日本は前連結会計年度比大幅に需要が減少し、北米においても前連結会計年度比微減となりました。高インチタイヤ(18インチ以上)の需要は車両の大型化を反映し、北米・欧州では概ね前連結会計年度並みの需要で推移、日本では前連結会計年度を上回りました。新車用トラック・バス用タイヤの需要は、北米・欧州・アジアでは前連結会計年度比需要大幅減となりましたが、日本は前連結会計年度の部品供給不足の影響を受けた車両生産減の反動もあり、前連結会計年度並みの需要となりました。市販用乗用車用タイヤ及び小型トラック用タイヤの需要は、北米において2024年1月にタイ・韓国品の輸入関税引き下げがあり、廉価輸入品の流入の影響が大きく、米国・カナダのタイヤ製造者協会に参加する主要タイヤブランドの需要では前連結会計年度比減となりました。一方、日本・アジアでは需要は前連結会計年度並み、欧州では緩やかに市況は回復傾向にあり前連結会計年度を上回る需要となりました。また、市販用の高インチタイヤ(18インチ以上)は、北米・欧州を中心に需要伸張が継続しました。市販用トラック・バス用タイヤの需要は、北米では第1四半期に流通在庫が正常化し、第2四半期以降順調に需要が回復した結果、年間で前連結会計年度比需要増となりました。欧州・アジアにおける需要は前連結会計年度比回復し、日本では前連結会計年度並みに推移しました。 当社グループの売上収益については、上記需要環境の中、グローバルの新車用の乗用車用及び小型トラック用タイヤ、並びにトラック・バス用タイヤの販売本数減、加えてブラジル・アルゼンチンを主とした南米事業の悪化があるも、市販用において乗用車用プレミアムタイヤ(18インチ以上高インチタイヤ、各地域において高収益なプレミアムタイヤブランドなど)の販売拡大による販売MIX改善を進めると共に、超大型鉱山用タイヤについては前連結会計年度並みの販売を確保し、為替の追い風もあり前連結会計年度比増収となりました。 調整後営業利益については、再編・再構築(第2ステージ)の断行、売値、MIXスプレッドの改善に加え、為替円安による追い風の影響があり、南米事業の悪化や販売本数減少の影響を吸収し、前連結会計年度を若干上回る水準での着地となりました。当連結会計年度は、断トツ商品を軸にプレミアム領域へのフォーカスを一層強化し、赤字・不採算事業の削減・中止を加速させ、販売MIXの改善を継続しました。また、乗用車用及び小型トラック用、トラック・バス用タイヤにおいて販売本数減少の影響による固定費負担増、加工費悪化がある一方で、海上運賃単価の下落による影響に加え、中期事業計画(2024-2026)にて推進するグローバル調達、グローバルSCM(サプライチェーンマネジメント)物流改革、BCMA(Bridgestone Commonality Modularity Architecture) 、グリーン&スマート化、現物現場での地道な生産性改善などのビジネスコストダウンが業績に貢献しております。 また、営業利益については、第2四半期に六本木社宅売却益の計上があった一方、欧州事業用資産減損など再編・再構築関連費用を計上した結果、前連結会計年度比減益の着地となりました。 以上の結果、当社グループの当連結会計年度の売上収益は44,301億円(前連結会計年度比3%増)、調整後営業利益は4,833億円(前連結会計年度比1%増)、営業利益は4,433億円(前連結会計年度比8%減)、税引前当期利益は4,214億円(前連結会計年度比5%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は2,850億円(前連結会計年度比14%減)となりました。今後も、引き続き経営・業務品質の向上を最優先としながら、「価値創造へ、よりフォーカス」するとともに、「守り」と「攻め」の両輪で経営を推進してまいります。 b.セグメント別業績 当連結会計年度前連結会計年度増減金額比率 日本 億円億円億円%売上収益12,26112,424△164△1調整後営業利益1,8732,065△192△9アジア・大洋州・インド・中国売上収益5,2975,515△217△4調整後営業利益585552+33+6米州売上収益21,80020,800+999+5調整後営業利益1,8012,120△318△15欧州・中近東・アフリカ売上収益8,3568,192+164+2調整後営業利益298117+181+155その他売上収益840773+67+9調整後営業利益7555+21+38連結 合計売上収益44,30143,138+1,163+3調整後営業利益4,8334,806+27+1 [日本] 売上収益は12,261億円(前連結会計年度比1%減)、調整後営業利益は1,873億円(前連結会計年度比9%減)となりました。 市販用乗用車及び小型トラック用タイヤ、並びにトラック・バス用タイヤの販売本数は概ね前連結会計年度並みに推移した一方で、乗用車用及びトラック・バス用タイヤの海外向け輸出は前連結会計年度を大きく下回り推移しました。戦略的価格マネジメントに加え、低採算領域の削減によりプレミアム領域へのフォーカスを強化したものの、固定費負担増、原材料高騰・インフレ影響を売値・販売MIX改善及び為替円安の追い風でも吸収しきれず、前連結会計年度比減収減益となりました。[アジア・大洋州・インド・中国] 売上収益は5,297億円(前連結会計年度比4%減)、調整後営業利益は585億円(前連結会計年度比6%増)となりました。 販売本数では、新車用タイヤが大幅に前連結会計年度を下回る一方、市販用乗用車及び小型トラック用タイヤは前連結会計年度並み、市販用トラック・バス用タイヤは順調に推移しました。加えて、域内各国での売値改善、プレミアム領域へのフォーカス徹底による販売MIX改善で原材料高騰・インフレ影響を吸収し、事業再構築の効果もあり前連結会計年度比減収も増益となりました。[米州] 売上収益は21,800億円(前連結会計年度比5%増)、調整後営業利益は1,801億円(前連結会計年度比15%減)となりました。 北米タイヤ事業において、販売本数は、市販用トラック・バス用タイヤは前連結会計年度を上回る一方、新車用・市販用乗用車及び小型トラック用タイヤ、並びに新車用トラック・バス用タイヤは、前連結会計年度を下回りました。販売MIXは着実に改善したものの、コスト面においては、インフレ及び販売本数減により生産調整を行い、加工費が悪化したことに加え、南米事業に関連する減益が大きく影響し、為替円安の追い風でも吸収できず前連結会計年度比増収も大幅な減益となりました。 [欧州・中近東・アフリカ] 売上収益は8,356億円(前連結会計年度比2%増)、調整後営業利益は298億円(前連結会計年度比155%増)となりました。 欧州事業において、販売本数は乗用車及び小型トラック用、トラック・バス用タイヤ双方において、市販用では概ね前連結会計年度並みに推移する一方で、新車用は前連結会計年度を大幅に下回りました。販売本数減による悪化はあるも、原材料に対する売値とMIXのスプレッドは前連結会計年度比改善したことに加え、事業再編・再構築の効果も収益性改善に一部貢献を開始し、前連結会計年度比増収増益となりました。 (注1) セグメント別の金額はセグメント間の取引を含んでおり、連結合計の金額はそれらを消去した後の数値であります。(注2) 当連結会計年度より、以下のとおりセグメント区分を変更しております。なお、対応する前連結会計年度についても区分変更後の金額・数値としております。「中国・アジア・大洋州」 : 「アジア・大洋州・インド・中国」に変更「欧州・ロシア・中近東・インド・アフリカ」 : 「欧州・中近東・アフリカ」に変更 c.財政状態(流動資産) 流動資産は、現金及び現金同等物が179億円減少したものの、営業債権及びその他の債権が850億円、棚卸資産が767億円増加したことなどから、前連結会計年度末比1,662億円増加(同6%増)し、28,636億円となりました。(非流動資産) 非流動資産は、有形固定資産が1,018億円、使用権資産が94億円増加したことなどから、前連結会計年度末比1,295億円増加(同5%増)し、28,599億円となりました。(流動負債) 流動負債は、営業債務及びその他の債務が115億円、リース負債が52億円増加したものの、社債及び借入金が1,191億円減少したことなどから、前連結会計年度末比886億円減少(同7%減)し、11,762億円となりました。(非流動負債) 非流動負債は、退職給付に係る負債が71億円減少したものの、リース負債が118億円増加したことなどから、前連結会計年度末比32億円増加(同0.4%増)し、7,608億円となりました。 なお、流動負債及び非流動負債に計上された有利子負債(注)の合計は、前連結会計年度末比1,024億円減少(同12%減)し、7,277億円となりました。(注) 有利子負債には社債及び借入金、リース負債を含んでおります。(資本) 資本合計は、配当金(親会社の所有者)により1,404億円減少したものの、その他の資本の構成要素が2,192億円、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上により2,850億円増加したことなどから、前連結会計年度末比3,811億円増加(同11%増)し、37,865億円となりました。 これらの結果、当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べて2,957億円増加(同5%増)し、57,235億円となりました。また、当連結会計年度の親会社所有者帰属持分比率は65.2%となり、前連結会計年度末比3.4ポイントの上昇となりました。 ② キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度前連結会計年度増減金額 億円億円億円営業活動によるキャッシュ・フロー5,4886,614△1,126投資活動によるキャッシュ・フロー△2,551△2,977+427財務活動によるキャッシュ・フロー△3,433△1,837△1,596現金及び現金同等物に係る換算差額322255+67現金及び現金同等物の増減額△1732,055△2,228現金及び現金同等物の期首残高7,2465,189+2,057売却目的で保有する資産に含まれる現金及び現金同等物の増減額△62△8現金及び現金同等物の期末残高7,0677,246△179 当連結会計年度における当社グループの現金及び現金同等物(以下、「資金」)は、全体で179億円減少(前年同期は2,057億円の増加)し、当連結会計年度末には7,067億円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー) 営業活動による資金収支は、5,488億円の収入(前連結会計年度比1,126億円の収入減)となりました。これは、営業債権及びその他の債権の増加額295億円(前連結会計年度は営業債権及びその他の債権の減少額568億円)や、棚卸資産の増加額163億円(前連結会計年度は棚卸資産の減少額853億円)、利息の支払額240億円(前連結会計年度は178億円)、法人所得税の支払額1,173億円(前連結会計年度は580億円)などがあったものの、税引前当期利益4,214億円(前連結会計年度は4,442億円)や、減価償却費及び償却費3,481億円(前連結会計年度は3,058億円)、利息及び配当金の受取額207億円(前連結会計年度は345億円)などがあったことによるものであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動による資金収支は、2,551億円の支出(前連結会計年度比427億円の支出減)となりました。これは、有形固定資産の売却による収入806億円(前連結会計年度は296億円)や、貸付金の回収による収入110億円(前連結会計年度は149億円)などがあったものの、有形固定資産の取得による支出2,993億円(前連結会計年度は2,824億円)や、無形資産の取得による支出380億円(前連結会計年度は605億円)、長期貸付けによる支出138億円(前連結会計年度は211億円)などによるものであります。 (財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動による資金収支は、3,433億円の支出(前連結会計年度比1,596億円の支出増)となりました。これは、短期借入金の増加額141億円(前連結会計年度は209億円)などがあったものの、長期借入金の返済による支出357億円(前連結会計年度は207億円)や、社債の償還による支出1,000億円(前連結会計年度は支出なし)、リース負債の返済による支出716億円(前連結会計年度は684億円)、配当金の支払額(親会社の所有者)1,403億円(前連結会計年度は1,300億円)などがあったことによるものであります。 ③ 生産、受注及び販売の実績a.生産実績 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度比(%)日本805,888+0.9アジア・大洋州・インド・中国430,416△5.2米州1,639,633+1.7欧州・中近東・アフリカ662,860+1.7合計3,538,798+0.6 (注) 金額は、販売価格によっております。 b.受注実績 当社グループは、少数の特殊製品(特殊ホース等)について受注生産を行うほかは、すべて見込生産であります。 c.販売実績 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前連結会計年度比(%)日本961,777+1.6アジア・大洋州・インド・中国478,690△1.9米州2,157,097+4.6欧州・中近東・アフリカ813,048+1.7その他19,475+16.1全社又は消去10△57.6合計4,430,096+2.7 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年3月25日)現在において判断したものであります。 ① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下、「連結財務諸表規則」という。)第312条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。 なお、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因や当該事項への対応については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。 (売上収益、調整後営業利益及び営業利益) 売上収益、調整後営業利益及び営業利益並びにセグメント別の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。 この結果、調整後営業利益率は10.9%となり、前連結会計年度比0.2ポイントの低下となりました。 (親会社の所有者に帰属する当期利益) 親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比463億円減少(同14%減)し、2,850億円となりました。これは、営業利益が385億円減益、金融収益が81億円減少したことなどによるものです。 ③ 資本の財源及び資金の流動性 現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比179億円減少し、7,067億円となりました。なお、活動区分ごとのキャッシュ・フローについては、「(1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。 資金調達にあたっては、金融機関からの借入れに加え、引き続き、国内普通社債やコマーシャル・ペーパーなどの直接金融手段や、売上債権の証券化、リースの活用など、リスク分散や金利コストの抑制に向けその多様化を図ってまいります。 資金使途につきましては、主に稼ぐ力の強化、価値創造へのフォーカス、サステナブルなプレミアムブランド構築のための戦略的成長投資による持続的な成長と企業価値向上の実現を優先しつつ、適正な財務体質の維持と株主還元に活用してまいります。 ④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 当連結会計年度においては、売上収益4兆4,301億円(前連結会計年度比1,163億円増加)、調整後営業利益4,833億円(前連結会計年度比27億円増加)、調整後営業利益率10.9%(前連結会計年度比0.2ポイント低下)、ROIC8.2%(前連結会計年度比0.5ポイント低下)、ROE8.1%(前連結会計年度比2.3ポイント低下)となりました。 中期事業計画(2024-2026)においては、経営の3つの軸である「過去の課題に正面から向き合い、先送りしない」、「足元をしっかり、実行と結果に拘る」、「将来への布石を打つ」は変えず、4つのビジネス基本シナリオに沿って、「価値創造へ、よりフォーカス」しております。4つのビジネス基本シナリオは、「良いビジネス体質を創る」、「良いタイヤを創る」、「良いビジネスを創る」、そして「良い種まきをし、新たなビジネスを創る」です。特に、2025年においては、「良いビジネス体質を創る」に沿って、経営・業務品質の向上を最優先課題としております。 2025年は、自動車業界・タイヤ業界の構造変化の加速も踏まえ、「緊急危機対策年」と位置付け、バリューチェーン全体で経営・業務品質の向上を徹底する「守り」と、2026年以降の成長を見据えた「断トツ商品」やソリューション事業の強化などを含めた「攻め」の活動の両輪で経営を推進してまいります(2025年通期連結業績予想 売上収益4兆3,300億円、調整後営業利益5,050億円、調整後営業利益率11.7%、ROIC9.2%、ROE7.2%)。(注) ROEにつきましては、親会社の所有者に帰属する当期利益のうち継続事業に係る金額に基づいて算出しております。 |
※本記事は「株式会社ブリヂストン」の令和6年12期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
連結財務指標と単体財務指標の違いについて
連結財務指標とは
連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。
単体財務指標とは
単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。
本記事での扱い
本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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