第一三共株式会社の基本情報

会社名第一三共株式会社
業種医薬品
従業員数連18726名 単5817名
従業員平均年齢45.5歳
従業員平均勤続年数20.3年
平均年収11134849円
1株当たりの純資産575.73円
1株当たりの純利益96.03円
決算時期3月
配当金50円
配当性向52.1%
株価収益率(PER)49.7倍
自己資本利益率(ROE)17.7%
営業活動によるCF5992億円
投資活動によるCF▲2826億円
財務活動によるCF▲1235億円
研究開発費※13652億円
設備投資額※1893.86億円
販売費および一般管理費※1542.49億円
株主資本比率※242.5%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループにおける経営方針、経営環境及び優先的に対処すべき課題等は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結会社)が判断したものであります。 (1) 第一三共の価値創造プロセスとESG経営 当社グループでは、ESG経営を「ESGの要素を経営戦略に反映させることで、財務的価値と非財務的価値の双方を高める、長期目線に立った経営」と定義し、実践しております。 社会からの多様な要請に応えるため、社内外の様々な経営資源を価値創造プロセスに投入し、サイエンス&テクノロジーを競争優位の最大の源泉として、各ステークホルダーや社会への価値を提供しております。この価値創造プロセスを循環させることで、企業と社会の持続的成長を両立させることができると考えております。 中長期的な企業価値へ影響を及ぼす重要度と、様々なステークホルダーを含む社会からの期待の両面から、8つの重要課題をマテリアリティとして特定し、事業に関わるマテリアリティと事業基盤に関わるマテリアリティに整理しております。 (2) 2030年ビジョン ESG経営のもと、新たに「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」となることを2030年ビジョンとして掲げました。 パーパス(存在意義)である「世界中の人々の健康で豊かな生活に貢献する」の実現に向けて、当社グループに期待される社会課題の解決(革新的医薬品の創出、SDGsへの取り組み等)を目指し、われわれの強みであるサイエンス&テクノロジーに基づき、イノベーティブなソリューション提供に挑戦し続けます。 (3) 第5期中期経営計画(2021年度-2025年度) ESG経営を実践しつつ、2025年度目標「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を達成し、2030年ビジョン実現に向けた成長ステージに移行することを目指した計画として、第5期中期経営計画を策定し、4つの戦略の柱を設定いたしました。 ① 4つの戦略の柱(ⅰ) 3ADC最大化の実現 第5期中期経営計画においては、エンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdの3ADC(注1)の最大化の実現が最重要課題となります。 エンハーツについては、アストラゼネカとの戦略的提携を通じた市場浸透と新適応の取得を加速して参ります。また、HER2を標的とする競合品に対する優位性を確立するとともに、乳がん治療におけるHER2低発現コンセプトの定着を目指しております。 Dato-DXdについては、アストラゼネカとの戦略的提携を通じて、より早いタイミングでの承認取得とその後の適応追加を目指しております。また、効果的な上市計画を策定・実行するとともに、TROP2を標的とする競合品に対する優位性を確立して参ります。 HER3-DXdについては、自社開発による最速での上市を目指しております。また、効果的な上市計画を策定・実行した上で、がん治療ターゲットとしてのHER3を確立して参ります。 以上の取り組みに加え、注意すべき副作用の一つである間質性肺疾患(ILD)のモニタリングとリスク分析を通じた適正使用を促進するとともに、製品ポテンシャルに合わせて効率的かつ段階的に要員と供給キャパシティを拡大して参ります。 <2021年度-2023年度の主な進捗> エンハーツについては、着実な市場浸透、上市国・地域の拡大とHER2陽性乳がんの2次治療、化学療法既治療のHER2低発現乳がん等の新適応の取得により、当初計画を上回る ペースで売上収益が拡大いたしました。加えて、乳がんの早期治療をはじめとする更なる新適応の取得や適応がん種の拡大に向けた臨床試験も進捗いたしました。Dato-DXdについては、非扁平上皮非小細胞肺がん及びホルモン受容体陽性かつHER2低発現又は陰性乳がんの2次治療以降の承認申請が受理される等、承認取得とその後の適応追加に向けた開発が進展いたしました。HER3-DXdについては、I-DXd(抗B7-H3 ADC)及びDS-6000(抗CDH6 ADC)とともに、良好な臨床試験データが蓄積し、製品価値極大化を計画するステージに移行いたしました。加えて、ADCの開発競争が一層激化していることを受け、DXd ADCフランチャイズ極大化のためのキャパシティ、リソース、ケイパビリティ増強の必要性が高まってきたことから、より早く、より多くの患者さんにお届けするために、当該3製品について米国メルクとの戦略的提携契約を締結し、同社と共同開発・販促することを決定、開始いたしました。また、HER3-DXdについてはEGFR変異を有する非小細胞肺がんの3次治療の承認申請が受理される等、承認取得とその後の適応追加に向けた開発が進展いたしました。今後も、効果的な開発投資により、第5期中期経営計画後半における飛躍的成長に繋げるよう、製品価値最大化の実現に向けた取組みを着実に進めて参ります。 (注)1.ADC:Antibody Drug Conjugateの略、抗体薬物複合体。抗体医薬と薬物(低分子医薬)を適切なリンカーを介して結合させた医薬品で、がん細胞に発現している標的因子に結合する抗体医薬を介して薬物をがん細胞へ直接届けることで、薬物の全身曝露を抑えつつ、がん細胞への攻撃力を高めた薬剤。 (ⅱ) 既存事業・製品の利益成長 持続的な成長に向けた投資を継続していくために、がん事業のみならず、既存事業・製品における利益成長も重要な課題であります。 リクシアナについては、収益性の高い、安定した利益を生み出す製品であることから、当該製品より得た収益を、3ADC及び3ADCに次ぐ成長ドライバーへの投資の源泉とすべく、売上収益の更なる拡大に取り組んで参ります。 タリージェ、Nilemdo等の新製品については、適応追加等を通じた、早期拡大を目指しております。リクシアナに加え、これら新製品の早期拡大により、がん以外の新薬事業においても持続的な成長を目指しております。 各国・各地域においては、新薬を軸とした収益構造へのトランスフォーメーションを強化することで、持続的な利益成長を支える事業構造へと転換を図って参ります。 アメリカン・リージェントについては、インジェクタファー、ジェネリック注射剤を中心とした利益成長を目指しております。第一三共ヘルスケア株式会社については、店舗販売や通販事業を中心とした利益成長を目指しております。 <2021年度-2023年度の主な進捗> リクシアナは、用法及び用量の追加により製品価値が向上し、順調に売上収益が拡大いたしました。更に、各国・各地域においてタリージェ、ヴェノファー、Nilemdo/Nustendi等も着実に成長を遂げました。加えて、エムガルティをはじめとする新製品の上市や、各国・各地域における独占販売期間満了後の製品譲渡及び日本のジェネリック医薬品事業を取り扱う第一三共エスファ株式会社の株式譲渡等が進展し、新薬を軸とした事業構造へのトランスフォーメーションが進みました。今後も、収益性の高い製品の売上を拡大することで、持続的な利益成長を支える事業構造へと転換を図って参ります。 (ⅲ) 更なる成長の柱の見極めと構築 持続的成長を図るため、3ADCに次ぐ成長ドライバーを見極めるとともに、マルチモダリティ研究戦略によりポストDXd-ADCモダリティを選定することも重要な課題であります。 3ADCに次ぐ成長ドライバーについて、DXd-ADCファミリー、第二世代・新コンセプトADC、改変型抗体等の領域から見極めて参ります。 様々なモダリティ技術の中から、持続的成長のためのポストDXd-ADCモダリティを選定して参ります。LNP-mRNAについては、新型コロナウイルス感染症以外でのワクチンにも活用して、ワクチン事業の成長につなげて参ります。 <2021年度-2023年度の主な進捗> I-DXd、DS-6000については、良好な臨床試験データが蓄積し、製品ポテンシャルが一層高まったことから、3ADCに次ぐ成長ドライバーと位置づけ、将来の更なる成長に向けて、エンハーツ、Dato-DXd、HER3-DXdとともに、両製品の開発を加速しております。加えて、第二世代ADC DS-9606(ターゲット非開示ADC)の臨床試験を開始するとともに、COVID-19に対するmRNAワクチンの承認を取得し、供給する等、ポストDXd ADCモダリティ選定も進展いたしました。今後も、当社独自のADC技術等を用いた更なる成長の柱の見極めと構築を進めて参ります。 (ⅳ) ステークホルダーとの価値共創 長期視点でESG経営を進めていく上で、患者さん、株主、社会・環境、従業員といったステークホルダーとの価値共創も重要な課題であります。 3ADCによる様々ながん種への展開や、希少疾患の比重が高まる中、医薬品開発のみならずバリューチェーン全体で、患者さんを中心としたマインド(Patient Centric Mindset)による取り組みを強化し、患者さんへの貢献を果たして参ります。 持続的な企業価値の向上を図るため、バランスのとれた成長投資と株主還元を実現して参ります。 脱炭素社会、サーキュラーエコノミー、自然共生社会といった、社会・環境課題に対し、研究開発から営業に至るバリューチェーン全体で、環境負荷の低減に向けた様々な取り組みにチャレンジし、社会・環境へ貢献して参ります。 平時における自社生産拠点からの季節性インフルエンザワクチン等の安定供給に加え、COVID-19及び将来の新興・再興感染症ワクチンにも応用可能な技術の確立、将来のパンデミック時のワクチン供給体制の整備を通じて、社会へ貢献して参ります。 グループ共通の核となる行動様式(Core Behavior)を定め、グループ全体で実践していくことで、独自の企業文化「One DS Culture」の醸成を図り、グローバル組織と人材における強みを更に強化して参ります。 <2021年度-2023年度の主な進捗> COVID-19に対するmRNAワクチンであるダイチロナ筋注(1価:オミクロン株 XBB.1.5)の日本における供給等、パンデミックリスクへの対応が進捗いたしました。また、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーにすることを目指す国際的イニシアチブである「RE100(注2)」に加盟するとともに、日本の自社拠点における使用電力を再生可能エネルギー化する等、環境課題に対する取組みが進展いたしました。引き続き、ステークホルダーとの価値創造プロセスの強化に向けた諸施策を実践して参ります。(注)2.RE100:国際環境NGOであるThe Climate Groupと企業に気候変動対策に関して情報開示を促しているCDPによって運営される、企業の再生可能エネルギー100%を推進する国際的イニシアチブ ② 戦略の実行を支える基盤 4つの戦略の柱の実行を支える基盤を強化するため、DX推進によるデータ駆動型経営を実現するとともに、先進デジタル技術による変革を進めて参ります。加えて、新たなグローバルマネジメント体制により迅速な意思決定を実現して参ります。 <2021年度-2023年度の主な進捗> 社内外のエンハーツの統合データ分析が可能な分析基盤をグローバルで運用開始いたしました。また、オンコロジービジネスユニットを新設し、がん領域における治療体系や市場環境の急速な変化に対し、ビジネスとサイエンスの両面から迅速に対応いたしました。今後も、業容の変化と拡大にあわせてデータ駆動型経営を加速するとともに、グローバル体制を強化して参ります。 ③ 株主還元方針 普通配当1株当たり27円の維持に加え、利益成長に応じた増配や機動的な自己株式取得を実施することで、株主還元のさらなる充実を図って参ります。 KPIとして、株主資本を基準とする株主資本配当率(DOE)を採用し、安定的な株主還元を行う方針とし、2025年度のDOEは株主資本コストを上回る8%以上を目標に掲げ、株主価値の最大化を目指しております。 <2021年度-2023年度の主な進捗> 前連結会計年度においては、エンハーツの想定以上の売上拡大を受け、当初計画で想定していた増配時期を前倒しし、2022年度の1株当たり年間配当を2021年度実績の27円から30円に増配いたしました。 当連結会計年度においては、エンハーツの更なる売上収益拡大等により、引き続き業績が好調に推移していることに加え、米国メルクとの戦略的提携契約締結に伴う契約時一時金を受領したこと等を受け、2023年度の1株当たり年間配当予想を2022年度実績に比べ20円増配の50円とすることを決定いたしました。 引き続き、利益成長に応じた増配や機動的な自己株式取得により、株主還元の更なる充実を図って参ります。 ④ 計数目標 第5期中期経営計画における2025年度の計数目標として、売上収益1兆6,000億円(うち、がん領域において6,000億円以上)、研究開発費控除前コア営業利益率40%以上、ROE16%以上、DOE8%以上を目指しております。なお、2025年度の為替レートの前提は1USD=105円、1EUR=120円であります。
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月17日)現在において当社グループが判断したものであります。 当社グループは、積極的なグローバル事業の展開による企業価値の向上に資するために、基準とすべき会計及び財務報告のあり方を検討した結果、資本市場における財務情報の国際的な比較、グループ内での会計処理の統一、グローバル市場における資金調達手段の多様化等を目的として、2014年3月期よりIFRSを適用しております。当社グループの連結財務諸表の作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としており、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要性がある会計方針」に記載しております。 (1) 業績等の概要当社グループの当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)の連結業績は、次のとおりであります。 <連結業績(コアベース)> (単位:億円) 前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減売上収益12,78516,0173,23225.3%売上原価(注)3,4914,14865718.8%販売費及び一般管理費(注)4,7016,2731,57233.4%研究開発費(注)3,3673,6432768.2%コア営業利益(注)1,2261,95372759.3%一過性の収益(注)2192735424.5%一過性の費用(注)239109△130△54.3%営業利益1,2062,11691075.5%税引前利益1,2692,3721,10487%親会社の所有者に帰属する当期利益1,0922,00791583.8%当期包括利益合計額1,4903,0841,594107%(注)当社グループは、経常的な収益性を示す指標として、営業利益から一過性の収益・費用を除外したコア営業利益を開示しております。一過性の収益・費用には、固定資産売却損益、事業再編に伴う損益(開発品や上市製品の売却損益を除く)、有形固定資産及び無形資産並びにのれんに係る減損損失、損害賠償や和解等に伴う損益の他、非経常的かつ多額の損益が含まれます。本表では、売上原価、販売費及び一般管理費、研究開発費について、一過性の収益・費用を除く実績を示しております。<主要通貨の日本円への換算レート(期中平均レート)> 前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)米ドル/円135.48144.62ユーロ/円140.97156.79 売上収益売上収益は、前連結会計年度比3,232億円(25.3%)増収の1兆6,017億円となりました。グローバル主力品エンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン:T-DXd/DS-8201)、リクシアナ(一般名:エドキサバン)等の伸長及び円安の進行による為替の増収影響等により、増収となりました。売上収益に係る為替の増収影響は668億円でありました。 コア営業利益コア営業利益は、前連結会計年度比727億円(59.3%)増益の1,953億円となりました。売上原価は、売上収益の増加に伴い、657億円(18.8%)増加の4,148億円となりました。販売費及び一般管理費は、エンハーツに係るアストラゼネカとのプロフィット・シェアの増加による費用増等により、1,572億円(33.4%)増加の6,273億円となりました。研究開発費は、5DXd ADCs(トラスツズマブ デルクステカン、ダトポタマブ デルクステカン:Dato-DXd/DS-1062、パトリツマブ デルクステカン:HER3-DXd/U3-1402、イフィナタマブ デルクステカン:I-DXd/DS-7300、DS-6000)への投資の増加等により、前連結会計年度比276億円(8.2%)増加の3,643億円となりました。コア営業利益に係る為替の増益影響は106億円でありました。 営業利益営業利益は、前連結会計年度比910億円(75.5%)増益の2,116億円となりました。ノバルティス社からの当社米国子会社 プレキシコンInc.に対する米国特許侵害訴訟の和解金の受領等により、一過性の収益が増加したため、コア営業利益に比べて増益額が拡大しました。 税引前利益税引前利益は、前連結会計年度比1,104億円(87.0%)増益の2,372億円となりました。受取利息の増加等により、金融収支が192億円改善したため、増益となりました。 親会社の所有者に帰属する当期利益親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度比915億円(83.8%)増益の2,007億円となりました。 当期包括利益合計額当期包括利益合計額は、前連結会計年度比1,594億円(107.0%)増益の3,084億円となりました。 <連結業績(IFRSベース)> (単位:億円) 前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減売上収益12,78516,0173,23225.3%売上原価3,6354,15351814.2%販売費及び一般管理費4,7126,3701,65835.2%研究開発費3,4163,6522366.9%その他の収益1912758443.9%その他の費用71△6△87.0%営業利益1,2062,11691075.5%税引前利益1,2692,3721,10487%親会社の所有者に帰属する当期利益1,0922,00791583.8%当期包括利益合計額1,4903,0841,594107% <グローバル主力品売上収益>(単位:億円)一般名(主な製品名)前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減トラスツズマブ デルクステカン(エンハーツ)抗悪性腫瘍剤(抗 HER2 抗体薬物複合体)2,5844,4921,90873.9%エドキサバン(リクシアナ)抗凝固剤2,4402,87743817.9% エンハーツは、既上市国での市場浸透及び上市国の拡大により、前連結会計年度比1,908億円(73.9%)増収の4,492億円となりました。エドキサバンは、日本、欧州等で売上が伸長し、前連結会計年度比438億円(17.9%)増収の2,877億円となりました。当社は、第5期中期経営計画でエンハーツを始めとした「3ADC最大化の実現」及び「既存事業・製品の利益成長」を戦略目標として定めております。第5期中期経営計画の内容につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。 当社グループのユニット別売上収益状況は次のとおりであります。 ① ジャパンビジネスユニット(JBU)ジャパンビジネスユニットの売上収益には、イノベーティブ医薬品事業、ワクチン事業及び第一三共エスファ株式会社が取り扱うジェネリック事業の製品売上収益が含まれております。当ユニットの売上収益は、イナビル、エンハーツ、リクシアナ、タリージェ等の伸長により、前連結会計年度比610億円(13.3%)増収の5,189億円となりました。 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2023年5月、抗悪性腫瘍剤ヴァンフリタの急性骨髄性白血病(AML)1次治療を対象とした承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。・2023年5月、疼痛治療剤タリージェOD錠を新発売いたしました。・2023年8月、エンハーツのHER2遺伝子変異を有する非小細胞肺がん2次治療を対象とした承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。・2023年11月、COVID-19 mRNAワクチン ダイチロナ筋注(1価:オミクロン株XBB.1.5)の日本における承認を取得し、同年12月、本製品を供給いたしました。 <ジャパンビジネスユニット主力品売上収益>(単位:億円)製品名前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減リクシアナ抗凝固剤1,0511,1561049.9%タリージェ疼痛治療剤3854577218.6%プラリア骨粗鬆症治療剤・関節リウマチに伴う骨びらんの進行抑制剤402428266.5%エフィエント抗血小板剤2092564722.6%テネリア2型糖尿病治療剤219205△15△6.8%ビムパット抗てんかん剤2192573817.3%ランマークがん骨転移による骨病変治療剤204204△0△0.0%カナリア2型糖尿病治療剤163159△4△2.4%ロキソニン消炎鎮痛剤185155△30△16.4%エンハーツ抗悪性腫瘍剤(抗 HER2 抗体薬物複合体)117239122104.1%エムガルティ片頭痛発作の発症抑制薬63761321.2% ② 第一三共ヘルスケアユニット(DSHCU)第一三共ヘルスケアユニットの売上収益は、ロキソニン、ミノン等の伸長により、前連結会計年度比56億円(8.0%)増収の760億円となりました。 ③ オンコロジービジネスユニット(OBU)オンコロジービジネスユニットの売上収益には、第一三共Inc.(米国)の製品売上収益及び第一三共ヨーロッパGmbHのがん製品売上収益が含まれております。当ユニットの売上収益は、欧米におけるエンハーツの伸長により、前連結会計年度比1,492億円(80.5%)増収の3,346億円、現地通貨ベースでは、945百万米ドル(69.1%)増収の2,314百万米ドルとなりました。 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2023年8月、米国においてヴァンフリタを新発売いたしました。(適応:AML1次治療)・2023年10月、エンハーツのHER2遺伝子変異を有する非小細胞肺がん2次治療を対象とした欧州における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。・2024年2月、欧州においてヴァンフリタを新発売いたしました。(適応:AML1次治療) <オンコロジービジネスユニット主力品売上収益>(単位:億円)製品名前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減エンハーツ抗悪性腫瘍剤(抗 HER2 抗体薬物複合体)1,8163,2741,45880.3% エンハーツ(米)1,4462,25581056.0%エンハーツ(欧)3711,019648174.9%TURALIO抗腫瘍剤38531539.9% ④ アメリカンリージェントユニット(ARU)アメリカンリージェントユニットの売上収益は、インジェクタファーの減収影響があったものの、ヴェノファー等の増収により、前連結会計年度比161億円(8.6%)増収の2,034億円、現地通貨ベースでは、24百万米ドル(1.7%)増収の1,407百万米ドルとなりました。 <アメリカンリージェントユニット主力品売上収益>(単位:億円)製品名前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減インジェクタファー鉄欠乏性貧血治療剤540501△39△7.2%ヴェノファー鉄欠乏性貧血治療剤5136099618.7% ⑤ EUスペシャルティビジネスユニット(EUSBU)EUスペシャルティビジネスユニットの売上収益には、がん製品を除く第一三共ヨーロッパGmbHの製品売上収益が含まれております。当ユニットの売上収益は、リクシアナ、Nilemdo/Nustendiの伸長により、前連結会計年度比388億円(25.8%)増収の1,892億円、現地通貨ベースでは140百万ユーロ(13.1%)増収の1,207百万ユーロとなりました。 <EUスペシャルティビジネスユニット主力品売上収益>(単位:億円)製品名前連結会計年度(自 2022年4月1日至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)増減リクシアナ抗凝固剤1,1711,46229124.8%Nilemdo / Nustendi高コレステロール血症治療剤71184114160.8%オルメサルタン高血圧症治療剤200196△4△2.1% ⑥ ASCAビジネスユニット(ASCABU)ASCA(注)ビジネスユニットの売上収益には、海外ライセンシーへの売上収益等が含まれております。当ユニットの売上収益は、ブラジルにおけるエンハーツの伸長等により、前連結会計年度比413億円(28.9%)増収の1,841億円となりました。(注)Asia, South & Central Americaの略。 当連結会計年度における主な進捗は次のとおりであります。・2023年6月、中国においてエンハーツを新発売いたしました。(適応:HER2陽性乳がんの2次治療)・2023年7月、エンハーツのHER2低発現乳がん(化学療法既治療)の中国における承認を取得し、プロモーションを開始いたしました。 ユニット別売上収益構成比は次のとおりであります。 (2) 生産、受注及び販売の実績① 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)医薬事業836,652122.6合計836,652122.6(注)金額は正味販売価格によっております。 ② 受注実績当社グループは、主に販売計画に基づいて生産計画を策定し、これにより生産を行っております。受注生産は一部の連結子会社で行っておりますが、受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。③ 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)医薬事業1,601,688125.3合計1,601,688125.3 (注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は次のとおりであります。相手先前連結会計年度当連結会計年度金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)アルフレッサ ホールディングス株式会社及びそのグループ会社180,52314.1199,73212.5マッケソン社117,5139.2173,34810.8センコラ社121,6469.5162,71310.2 (3) 資本の財源及び資金の流動性についての分析① 財務戦略の基本的な考え方当社グループは、ESG経営のもと、新たに「サステナブルな社会の発展に貢献する先進的グローバルヘルスケアカンパニー」となることを2030年ビジョンとして掲げております。2025年ビジョンである「がんに強みを持つ先進的グローバル創薬企業」を実現し、2030年ビジョン達成に向けた持続的な成長ステージへの移行を可能とするべく、2021年に第5期中期経営計画(2021~2025年度)を策定いたしました。その後3年間の計画進捗により、2025年度経営目標を達成すると見込んでおります。具体的には、売上収益2兆1,000億円(第5期中計策定時プラス5,000億円)、がん領域売上収入1兆円以上(同プラス4,000億円)、研究開発費控除前コア営業利益(注)率40%(同変更なし)、ROE16%以上(同変更なし)、株主資本配当率(DOE)8.5%以上(同プラス0.5ポイント)を見込んでおります。また、期間中のキャッシュ・アロケーションについても、成長投資と株主還元の双方をバランス良く実施するという基本方針は変更しておりません。成長投資については、DXd-ADC開発を優先する形で第5期中期経営計画である5年間で総額1兆9,500億円規模の研究開発投資(同プラス4,500億円)、また、ADCの供給体制強化を中心とした同じく8,000億円規模の設備投資(同プラス3,000億円)を見込んでおります。株主還元については、2023年度はエンハーツの成長による利益成長、米国メルク社との戦略的提携の契約時一時金の受領等を受け、年間配当を1株当たり20円増配の50円とし、2024年度については、2025年度主要計数目標の達成確度がより高まっていることから、1株当たり年間配当を10円増配の60円とする計画としております。また、2024年度において取得総額2,000億円または取得株数5,500万株を上限とする自己株式取得ならびに取得自己株式の全株式消却を実施する予定です。今後も利益成長に応じた増配、あるいは機動的な自己株式取得を実施することで、株主還元のさらなる充実を図っていきます。株主還元に関するKPIとして採用している、株主資本を基準とする株主資本配当率(DOE)についても2025年度に8%以上(株主資本コストを上回る水準)という目標を変更することなく、引き続き株主価値の最大化を目指します。(注)固定資産売却、事業再編、減損、訴訟等に関連する特殊要因を除く ② 資金調達の方法及び状況当社グループは、円滑な事業活動に必要なレベルの流動性の確保と財務の健全性・安定性維持を資金調達の基本的な考えとしており、手元資金及び外部資金を有効に活用しております。当社グループは、戦略的投資もしくは資金調達にあたって外部借入への依存度合いを測る目的から、手元流動性残高(現預金及び短期投資債券等)から有利子負債を控除した、ネット・キャッシュを重視しております。手元資金としては、事業展開に伴う資金需要に対する機動的な対応のため、十分な現金及び現金同等物を保有しております。適正な現金及び現金同等物の保有額は、月商の3ヶ月程度を考えており、これを超える部分については企業価値向上に資する事業戦略投資の資金として確保しております。これらは金融情勢などを勘案しつつ、安全性並びに流動性の極めて高い短期金融商品で運用しております。外部からの資金調達については、直接金融又は間接金融の多様な手段の中から、その時々の市場環境を考慮した上で当社にとって有利なものを機動的に選択しております。直接金融としては、国内社債発行登録枠として3,000億円及びコマーシャル・ペーパー発行枠として1,500億円を有しております。2016年には超低金利の環境を活かし、国内ヘルスケアセクターでは初となる償還年限が20年、30年の超長期無担保社債を発行し、1,000億円の長期低コスト資金を確保いたしました。間接金融としては、当期に返済期限が到来したことに伴い全ての金融機関借入を完済した一方で、取引先金融機関とは引き続き良好な取引関係を維持しております。また、複数の銀行との間で当座貸越契約及びコミットメントラインを設定し、緊急時の流動性担保の手段も確保しております。なお、円滑な外部資金調達を行うため、当社は株式会社格付投資情報センター(R&I)と、ムーディーズ・ジャパン株式会社(Moody’s)の2社から格付を取得しております。当連結会計年度末時点での当社の長期及び短期の信用格付けは次のとおりであります。 長期短期格付投資情報センター(R&I)AA/安定的a-1+ムーディーズ・ジャパン(Moody’s)A2/安定的- なお、連結子会社は、原則として銀行などの外部からの資金調達を行わず、親会社もしくは現地法人などの資金調達拠点を通じたキャッシュ・マネジメント・サービスやグループ・ファイナンスの活用により、資金調達の集約と資金効率化、流動性の確保を図っております。 ③ 財政状態及びキャッシュ・フローの状況の分析(ⅰ)財政状態当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末から9,522億円増加し、3兆4,611億円となりました。現金及び現金同等物が2,053億円、並びにその他の金融資産(流動)が1,938億円それぞれ増加いたしました。当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末から7,095億円増加し、1兆7,725億円となりました。社債及び借入金(流動負債及び非流動負債)が414億円減少した一方で、HER3-DXd、I-DXd、DS-6000の戦略的提携の契約一時金の入金等により契約負債(流動負債及び非流動負債)が4,165億円、並びに営業債務及びその他の債務が1,620億円増加いたしました。当連結会計年度末における資本合計は、前連結会計年度末から2,427億円増加し、1兆6,886億円となりました。配当金の支払による減少があった一方で、当期利益の計上及びその他の資本の構成要素の増加等により増加いたしました。以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は48.8%となり、前連結会計年度末より8.9%減少いたしました。  第5期中計期間中は、バランスのとれた成長投資と株主還元へのキャッシュ・アロケーションを行う方針であります。具体的には、キャッシュ・アロケーションの原資の一定額を成長投資(研究開発費、設備投資)と株主還元にアロケーションした上で、残余キャッシュについて、パイプラインの進捗を踏まえ、さらなる成長の柱の構築に向けた投資と株主還元にバランスを考慮しながら機動的に配分いたします。 (ⅱ)キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、2,053億円増加の6,472億円となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、5,993億円の収入(前連結会計年度は1,145億円の収入)となりました。税引前利益2,372億円、減価償却費及び償却費596億円等の非資金項目の他、HER3-DXd、I-DXd、DS-6000の戦略的提携の契約一時金の収入等がありました。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、2,826億円の支出(前連結会計年度は2,578億円の支出)となりました。定期預金の預入による支出及び設備投資や無形資産の取得による支出等がありました。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払、並びに借入金の返済や社債の償還等により、1,236億円の支出(前連結会計年度は896億円の支出)となりました。 (4) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、2025年度における計数目標として、売上収益1兆6,000億円(うち、がん領域において6,000億円以上)、研究開発費控除前コア営業利益率40%以上、ROE16%以上、株主資本配当率(DOE)8%以上を目指しております。当連結会計年度においては、売上収益16,017億円、研究開発費控除前コア営業利益率34.9%、ROE12.8%、DOE6.1%となりました。また、エンハーツの当初計画を上回る売上拡大等により、2024年4月時点において、以下の通りの達成を見込んでおります。 なお、目標達成に向けた主な取り組み課題と実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。 (5) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成しております。連結財務諸表の作成にあたり行った重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」に記載しております。

※本記事は「第一三共株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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