会社名 | 中外製薬株式会社 |
業種 | 医薬品 |
従業員数 | 連7604名 単4903名 |
従業員平均年齢 | 42歳 |
従業員平均勤続年数 | 15年 |
平均年収 | 11980884円 |
1株当たりの純資産 | 898.45円 |
1株当たりの純利益 | 197.36円 |
決算時期 | 12月 |
配当金 | 80円 |
配当性向 | 40.5% |
株価収益率(PER) | 27.07倍 |
自己資本利益率(ROE) | 23.5% |
営業活動によるCF | 4099億円 |
投資活動によるCF | ▲372億円 |
財務活動によるCF | ▲1393億円 |
研究開発費※1 | 1628億円 |
設備投資額※1 | 683億円 |
販売費および一般管理費※1 | 2781.07億円 |
株主資本比率※2 | 85.1% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1)経営の基本方針当社グループは、世界有数の製薬企業であるロシュとの戦略的アライアンスのもと、「革新的な医薬品とサービスの提供を通じて新しい価値を創造し、世界の医療と人々の健康に貢献する」ことをMission(存在意義)とし、「患者中心の高度で持続可能な医療を実現する、ヘルスケア産業のトップイノベーター」となることをEnvisioned Future(目指す姿)に掲げています。社会との共有価値を創造し、社会とともに発展することを経営の基本方針として、患者中心の高度で持続可能な医療の実現に向けた価値創造の枠組みを価値創造モデルとして整理しています。当社グループの経営の基本方針のもと、共有価値創造の源泉となる要素を整理した上で、重点的に取り組むべき事項を重要課題(マテリアリティ)として策定しています。ロシュとの戦略的アライアンスに加え、独自のサイエンス・技術力に基づき、革新的な創薬を柱とするイノベーションに集中することで、Envisioned Future(目指す姿)でも掲げる「持続可能な医療」を始め、ESGやSDGsに代表される社会課題解決をリードする、世界のロールモデルになることを目指しています。その実践にあたっては、当社グループのCore Values(価値観)である、「患者中心」、「フロンティア精神」、「誠実」に沿った事業活動を行っています。こうした活動は、社会全体の持続性向上に寄与するとともに、当社グループの長期的な発展を支える基盤になると確信しています。 (2)目標とする経営指標当社グループはイノベーションの創出による企業価値の向上を重視し、革新的な新薬の創出に優先的に経営資源の配分を行っています。長期にわたる投資効率の指標としてCore ROICを重点的に管理するとともに、短中期的にも安定的な利益成長を達成できるよう、機動的で柔軟な事業運営に努めています。そして、個別の開発テーマ等の投資判断におきましては、資本コストを踏まえた投資価値評価を行い、収益性と効率性を重視した意思決定を行っています。当社は、2030年に向けた成長戦略「TOP I 2030」(後述)を策定し、「R&Dアウトプット倍増」「自社グローバル品毎年上市」という目標を目指して取り組んでいます。「TOP I 2030」の推進にあたり、中期(3年)経営計画を廃止し、長期目標からバックキャストして現状とのギャップを埋めるための中間(3~5年後)目標を中期マイルストンとして設定・管理しています。これにより、計画の進捗や環境変化に応じてアジャイルかつ柔軟に軌道修正を図りながら、長期的な目標達成を目指しています。中期マイルストンの進捗や研究開発パイプラインの見通しの説明を通じて中長期的な事業活動の進捗の状況を開示し、その達成に向けた道筋を示すとともに、引き続き、単年度業績予想の公表や各説明会等の場で経営状況を説明し、当社の掲げる経営戦略の進捗を適時報告してまいります。 (3)環境認識と対処すべき課題世界には、未だ治療法のない疾患が数多くあります。加えて、世界人口の増加と各国における高齢化進展に伴い、医薬品への期待・ニーズは一層高まっています。また、ライフサイエンスや生成AI等のデジタル技術の飛躍的な進歩によって、異業種も含めた医療課題解決に向けたイノベーション創出機会が拡大しています。一方、各国において医療費等の社会保障費増加により財政が逼迫し、薬剤費を含む医療費の抑制政策はますます厳しくなり、持続可能な医療の実現が世界共通の課題となっています。限られた資源のもとで高度かつ持続可能な医療を実現するため、「真に価値あるソリューションだけが選ばれる」VBHC(Value Based Healthcare)の流れは着実に加速しています。また、デジタルをはじめとする多様なプレーヤーがヘルスケア領域に参入することで、既存業界の枠を超えた競争もこれまで以上に熾烈化してきています。加えて、地政学リスクやエネルギー価格、インフレ等による事業運営の不確実性の高まりとともに、地球環境保全や情報セキュリティ対策等、事業運営にあたり取り組むべき課題自体も広範になっております。 そのような中、革新的な医薬品の提供を使命とする私たちの最重要課題は、「イノベーションの追求」であると考えています。患者さん一人ひとりにとって最適な医療の実現に向けて、新たな治療ターゲットの探索や創薬技術のさらなる革新により、アンメットメディカルニーズに応える新薬の創出が求められます。さらに、ビッグデータやAIなどのデジタル技術の進化を柔軟に取り入れ、従来の創薬力にとどまらない能力を獲得・強化することが競争優位性を確保する鍵となります。また、グローバル規模での財政圧力の増加によって製薬企業の経営環境が厳しさを増す中、限られた資源をイノベーションに集中投資できる体制への変革が一層求められています。当社グループは、独自のサイエンス力・技術力とロシュとの戦略的アライアンスを基盤として、国内トップクラスの成長を実現してまいりました。ロシュの充実したパイプラインにより日本市場における安定した収益基盤を確保しながら、自社創製品の後期開発や販売ではロシュのグローバル・プラットフォームを活用する、高い生産性を実現するビジネスモデルにより、自社創薬に資源を集中し、革新的な研究開発プロジェクトを連続的に創出しています。その結果、これまで6つの当社創製医薬品(アクテムラ、アレセンサ、ヘムライブラ、エンスプリング、ネモリズマブなど)が米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)から「画期的治療薬(Breakthrough Therapy)*」に指定されるなど、当社グループの創薬力は世界的に高い評価を受けています。今後も、革新的新薬をいち早く創出・患者さんにお届けすることで、当社の企業価値向上と社会課題解決を目指してまいります。 * 画期的治療薬(Breakthrough Therapy):重篤または致命的な疾患や症状に対し、既存治療を上回る改善が期待される治療薬候補 (4)2030年に向けた成長戦略「TOP I 2030」当社グループは、ミッションステートメントに掲げたEnvisioned Future(目指す姿)の実現を目指し、2030年に到達すべきトップイノベーター像を具現化するとともに、その実現に向けた成長戦略「TOP I 2030」を策定し、2021年から展開しています。 2030年トップイノベーター像 1)「世界の患者さんが期待する」世界最高水準の創薬力を有し、世界中の患者さんが「中外なら必ず新たな治療法を生み出してくれる」と期待する会社2)「世界の人財とプレーヤーを惹きつける」世界中の情熱ある人財を惹きつけ、ヘルスケアにかかわる世界中のプレーヤーが「中外と組めば新しい何かを生み出せる」と想起する会社3)「世界のロールモデル」事業活動を通じたESGの取組みが評価され、社会課題解決をリードする企業として世界のロールモデルである会社 「TOP I 2030」の二つの柱は、「世界最高水準の創薬の実現」と「先進的事業モデルの構築」です。独自のサイエンスと技術を駆使して数々の革新的新薬を生み出してきた当社は、今後10年間でさらに創薬力を大きく向上させ、世界のアンメットメディカルニーズに応えるソリューションを継続的に世に送り出せる体制構築・強化を目指します。具体的には、現在のR&Dアウトプットを10年間で2倍に拡大し、革新的な自社開発グローバル品を毎年上市できる会社を目指します。そして、環境変化や技術進化を踏まえた先進的事業モデルの構築にも取り組んでまいります。特にデジタルを活用したプロセスや価値創出モデルの抜本的な再構築によって、バリューチェーン全体にわたる生産性の飛躍的向上と、一人ひとりの患者さんにとっての価値・製品価値の拡大を目指してまいります。 具体的な取組みとして、バリューチェーンに沿った「5つの改革」、すなわち「創薬改革」「開発改革」「製薬改革」「Value Delivery改革」及び「成長基盤改革」を掲げています。 ①創薬改革 「TOP I 2030」では、たんぱく質エンジニアリング技術をはじめ、これまで積み上げてきた自社創薬の強みをベースにしながら、独創的な創薬アイデアを具現化する創薬技術基盤の一層の強化を目指します。そして、最大の価値創出源である創薬及び早期開発に全社資源を集中し、十分な投資によって成果を創出してまいります。特に、当社グループの今後の中長期的な成長の牽引を期待する中分子医薬では、早期の実用化に向けた技術開発・臨床プロジェクトに資源を優先的に投入します。また、AIを含むデジタル技術の効果的な活用と積極的な外部連携を通じて、創薬技術の多様化、スピードの加速を図ります。 ②開発改革 画期的なプロジェクトをより速く、より多くの患者さんに届けるため、数理モデルやデジタル技術を最大限活用した業界トップクラスの臨床開発モデルを構築します。生体反応を精緻に理解し、自社に蓄積されたあらゆる疾患・治療データやリアルワールドデータ(RWD)を徹底活用することで、用法用量・有効性・安全性の予測性を高めるとともに、デジタル・バイオマーカーやデジタル・デバイスで、患者さんのQOLを早期に実証していきます。また、後期臨床開発の業務効率化とRWD等を活用した試験規模の縮小や期間短縮など、オペレーション・モデルの抜本的な改革にも取り組みます。 ③製薬改革 R&Dアウトプットの大幅な拡充を目指す上で、革新的創薬を確実に製品化する世界水準の製薬技術の追求も重要な課題となります。創薬・早期開発~製薬の機能間の連携を一層強化し、最先端技術を駆使して中分子などの高難度の薬物に対応した製薬技術開発を進めてまいります。引き続きコア技術として進化が期待される抗体医薬についても、さらなる技術開発の推進と開発スピードの向上に努めます。一方で、デジタル・ロボティクスの活用により生産性を飛躍的に向上させる次世代工場の構築や、内製・外製の最適化などによって、世界水準でのコスト競争力と原価の低減を追求します。 ④Value Delivery改革 デジタルツールの発達や、新型コロナウイルス感染拡大の影響を背景に、製薬企業の顧客タッチポイントのあり方も大きく変容しました。そのような変化も踏まえながら、医療従事者や患者さんが求める情報を、高い専門性を担保しながら的確かつ迅速に届けるため、革新的な顧客エンゲージメントモデルの構築を目指します。具体的には、リアル(対面)・リモート・デジタルの最適活用と、営業・安全性・メディカルの各専門機能の適切な連携によって、顧客に対して価値ある情報を、迅速かつ最適な形で提供できる体制を強化します。製品ポートフォリオの変化に伴い、成長領域や新規領域へ集中したリソース投入を行うなど、資源シフトも進めてまいります。また、創薬や開発を通じて蓄積された各種データベースや、リアルワールドデータを統合的に解析・活用することで、個別化医療を促進するエビデンス創出を高度化し、患者さんごとに有効性・安全性を的確に予測するバイオマーカーの開発も加速します。 ⑤成長基盤改革 各バリューチェーンにおける改革と並行して、イノベーションの創出と成長戦略の実現を支える全社基盤の強化として、特に下記5つのテーマを重点分野として掲げて取り組んでまいります。 「人・組織」:2020年より開始した人事制度の運用を通じて、ポジションマネジメントとタレントマネジメントの高度化による適所適財の推進、果敢なチャレンジや対話を推奨する組織風土の強化、データサイエンティストをはじめとするデジタル人財やサイエンス人財など戦略遂行上の要となる高度専門人財の獲得・育成・充足に注力するとともに、D&I(ダイバーシティ&インクルージョン)の推進によりイノベーション創出文化の醸成を図ります。 「デジタル」:「CHUGAI DIGITAL VISION 2030」のもと、デジタル技術を活用した革新的な新薬創出に注力するとともに、すべてのバリューチェーンにおけるDXを推進し、効率化を図ります。その実現に向けてソフト・ハード両面のデジタル基盤の構築とロシュ・グループとの連携を通じた社内の各種データの統合や解析基盤構築によるグローバル水準のIT基盤の確立を行います。 「環境」:マテリアリティとして特定した気候変動対策、循環型資源利用、生物多様性保全の3つの課題について、「中期環境目標2030」を設定し、その達成に向けた先進的な取り組みを通して、持続可能な地球環境を実現します。特に気候変動対策については、2050年にCO2排出量ゼロを目指し、長期的に取り組んでまいります。 「クオリティ」:これまで取り組んできた製品品質の確保に加えて、薬事対応やビジネスプロセス全体にわたるクオリティ・マネジメントの高度化に努めています。さらに、多様な技術進化や新モダリティへの挑戦に伴う規制への対応、デジタル・コンプライアンスの強化、外部との協業拡大を見据えた品質保証体制の整備など、変化するビジネスプロセスに適した質と効率を両立するクオリティ・マネジメント手法の整備・運用を強化します。 「インサイトビジネス」:ロシュ・グループ各社とも協働しながら、創薬、開発、製薬、Value Deliveryの各段階で得られるデータやリアルワールドデータを含む外部データを集積し、高度な解析を加えることにより、自社の創薬・開発や医薬品の価値最大化に資するさまざまなインサイトを抽出し活用する取り組みを推進します。 前述のとおり、世の中には、未だ治療法が存在しない、或いは治療満足度が低いアンメットメディカルニーズが数多く存在し、世界中の患者さんが有効な治療の登場を待ち望んでいます。また、地球環境や人権をはじめとする社会からの期待、ガバナンスやコンプライアンス等の社会からの要請など、企業に期待される役割も変化・拡大しています。患者中心の高度で持続可能な医療の実現を通じて、社会との共有価値創造に積極的に取り組んでまいります。 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要① 経営成績の状況(単位:億円) 2023年12月期実績2022年12月期実績前年同期比連結損益(Core実績)売上収益11,11411,678△4.8%製商品売上高9,74510,392△6.2%その他の売上収益1,3691,286+6.5%売上原価△4,120△4,750△13.3%売上総利益6,9946,928+1.0%研究開発費△1,628△1,437+13.3%販売費及び一般管理費△1,020△988+3.2%その他の営業収益(費用)1611412倍営業利益4,5074,517△0.2%当期利益3,3363,177+5.0% 連結損益(IFRS実績)売上収益11,11412,597△11.8%営業利益4,3925,333△17.6%当期利益3,2553,744△13.1% Core EPS(円)202.71193.11+5.0%Core 配当性向(%)39.540.4 - <連結損益の概要(IFRSベース)>当連結会計年度の売上収益は11,114億円(前年同期比11.8%減)、営業利益は4,392億円(同17.6%減)、当期利益は3,255億円(同13.1%減)となりました。これらには当社が管理する経常的業績(Coreベース)では除外している無形資産の償却費16億円、無形資産の減損損失51億円及び事業所閉鎖に伴う固定資産売却益を含む事業所再編費用等55億円(収益)、早期退職優遇措置に関わる費用103億円が含まれています。なお、前年第1四半期に当社とアレクシオン ファーマスーティカルズ インコーポレーテッドとの間において締結した和解契約による一時金収入等907億円を計上したことによる単発的な影響により売上収益、営業利益、当期利益は前年同期比で減少しています。上記以外の前年同期との比較については<連結損益の概要(Coreベース)>をご覧ください。 <連結損益の概要(Coreベース)>当連結会計年度の売上収益は、その他の売上収益が伸長したものの、製商品売上高が減少し、11,114億円(前年同期比4.8%減)となりました。 売上収益のうち、製商品売上高は9,745億円(同6.2%減)となりました。国内製商品売上高は、新製品のポライビー、バビースモ等の順調な伸長に加え、主力品のエンスプリング、ヘムライブラ、テセントリク等が好調に推移したものの、ロナプリーブの政府納入による売上の大幅な減少や、薬価改定、後発品浸透の影響を受けたことにより前年比で減少しました。海外製商品売上高は、ロシュ向けのヘムライブラ輸出及びアレセンサ輸出が大幅に増加したため、前年を上回りました。その他の売上収益は、ヘムライブラに関する収入の増加に加え、一時金収入の増加等により1,369億円(同6.5%増)となりました。製商品原価率は、為替影響の一方で製品別売上構成比の変化等により42.3%と前年同期比で3.4%ポイント改善しました。結果、売上総利益は6,994億円(同1.0%増)となりました。研究開発費は中外ライフサイエンスパーク横浜の全面稼働を含む創薬・早期開発への投資や、開発プロジェクトの進展に伴う費用の増加等により1,628億円(同13.3%増)、販売費及び一般管理費は諸経費等の増加により1,020億円(同3.2%増)となりました。その他の営業収益(費用)は製品譲渡に係る収益や有形固定資産の売却益が発生し、161億円の収益(前年同期は14億円の収益)となりました。以上から、Core営業利益は前年同期並みの4,507億円(同0.2%減)、Core当期利益は法人所得税の減少及び金融収支等の改善で7期連続の増益を達成し、3,336億円(同5.0%増)となりました。 ※Core実績について当社はIFRS移行を機に2013年よりCore実績を開示しております。Core実績とは、IFRS実績に当社が非経常事項と捉える事項の調整を行ったものであります。なお、当社が非経常事項と捉える事項は、事業規模や範囲などの違いによりロシュと判断が異なる場合があります。当社ではCore実績を、社内の業績管理、社内外への経常的な収益性の推移の説明、並びに株主還元をはじめとする成果配分を行う際の指標として使用しております。株主還元を行う際の指標には、Core EPS及びCore配当性向を指標として使用しております。Core EPSは、Core実績をもとに算出された、当社株主に帰属する希薄化後1株当たり当期利益であり、Core配当性向は、Core EPS対比の配当性向です。 ※連結経営成績に関する表示方法の変更について当連結会計年度より、連結経営成績に関する表示方法の変更を行っております。当連結会計年度においては、比較情報である前連結会計年度についても当該変更を適用した金額を表示しております。なお、本変更による営業利益から当期利益までの項目、1株当たり当期利益及びCoreベースの概念への影響はありません。 <製商品売上高の内訳>(単位:億円) 2023年12月期実績2022年12月期実績前年同期比製商品売上高9,74510,392△6.2%国内製商品売上高5,5806,547△14.8%オンコロジー領域2,6022,560+1.6%スペシャリティ領域2,9783,986△25.3%海外製商品売上高4,1653,846+8.3% [国内製商品売上高]国内製商品売上高は、新製品及び主力品が好調に市場浸透したものの、ロナプリーブの政府納入の大幅な売上減少や薬価改定、後発品浸透の影響により、5,580億円(前年同期比14.8%減)となりました。 オンコロジー領域の売上は、2,602億円(同1.6%増)となりました。後発品浸透及び薬価改定の影響、並びに競合状況の変化により、抗悪性腫瘍剤/抗VEGFヒト化モノクローナル抗体「アバスチン」、抗悪性腫瘍剤/抗HER2ヒト化モノクローナル抗体「ハーセプチン」、抗悪性腫瘍剤/抗HER2抗体チューブリン重合阻害剤複合体「カドサイラ」などの売上が減少したものの、新製品の抗悪性腫瘍剤/微小管阻害薬結合抗CD79bモノクローナル抗体「ポライビー」の売上が大幅に増加し、主力品の抗悪性腫瘍剤/抗PD-L1ヒト化モノクローナル抗体「テセントリク」も堅調に推移しました。スペシャリティ領域の売上は、2,978億円(同25.3%減)となりました。新製品の眼科用VEGF/Ang-2阻害剤抗VEGF/抗Ang-2ヒト化二重特異性モノクローナル抗体「バビースモ」や脊髄性筋萎縮症治療剤「エブリスディ」が順調に伸長したことに加え、主力品のpH依存的結合性ヒト化抗IL-6レセプターモノクローナル抗体「エンスプリング」や血液凝固第Ⅷ因子機能代替製剤抗血液凝固第Ⅸa/Ⅹ因子ヒト化二重特異性モノクローナル抗体「ヘムライブラ」が引き続き好調に推移しました。また抗インフルエンザウイルス剤「タミフル」の売上がインフルエンザの流行により大幅に増加しました。一方、抗SARS-CoV-2モノクローナル抗体「ロナプリーブ」の政府納入は売上が大幅に減少し、薬価改定及び後発品浸透の影響により、骨粗鬆症治療剤「エディロール」や持続型赤血球造血刺激因子製剤「ミルセラ」などの売上が減少しました。 [海外製商品売上高]海外製商品売上高は4,165億円(前年同期比8.3%増)となりました。ロシュ向け輸出については、「ヘムライブラ」や抗悪性腫瘍剤/ALK阻害剤「アレセンサ」が前年比で大幅に増加しました。 ② 財政状態の状況(単位:億円) 2023年期末実績2022年期末実績前期末比純営業資産(NOA)及び純資産純運転資本4,2265,516△1,290長期純営業資産4,7834,478305純営業資産(NOA)9,0099,993△984ネット現金7,3905,0312,359その他の営業外純資産△143△781638純資産合計16,25614,2442,012 連結財政状態計算書(IFRS実績)資産合計19,32518,698627負債合計△3,070△4,4541,384純資産合計16,25614,2442,012 当連結会計年度末における純営業資産(NOA)は前連結会計年度末に比べ984億円減少し、9,009億円となりました。うち、純運転資本は、ロナプリーブ等の営業債権の減少などにより前連結会計年度末に比べ1,290億円減少し4,226億円となりました。また、長期純営業資産は主に藤枝工場における合成原薬製造棟(FJ3)等への投資により前連結会計年度末から305億円増加し、4,783億円となりました。次項「③ キャッシュ・フローの状況」で示すとおり、有価証券や有利子負債を含むネット現金は前連結会計年度末に比べ2,359億円増加し、7,390億円となりました。その他の営業外純資産は、主に未払法人所得税の減少により前連結会計年度末から638億円増加し、△143億円となりました。これらの結果、純資産合計は前連結会計年度末に比べ2,012億円増加し、16,256億円となりました。 ※純営業資産(NOA)及び純資産について連結財政状態計算書は国際会計基準第1号「財務諸表の表示」に基づいて作成しております。一方で、純営業資産(NOA)及び純資産は、連結財政状態計算書を内部管理の指標として再構成したものであり、ロシュも同様の指標を開示しております。なお、純営業資産(NOA)及び純資産にはCore実績のような除外事項はありません。 ※純営業資産(NOA)について純営業資産(NOA:Net Operating Assets)は金融取引や税務上の取引とは独立に当社グループの業績を評価することを可能としております。純営業資産は純運転資本及び有形固定資産、使用権資産、無形資産等を含む長期純営業資産から引当金を控除することで計算しております。 ③ キャッシュ・フローの状況(単位:億円) 2023年12月期実績2022年12月期実績前年同期比フリー・キャッシュ・フロー営業利益4,3925,333△17.6%調整後営業利益4,9155,706△13.9%営業フリー・キャッシュ・フロー5,4013,084+75.1%フリー・キャッシュ・フロー3,6381,664+118.6%ネット現金の純増減2,359311+658.5% 連結キャッシュ・フロー計算書(IFRS実績)営業活動によるキャッシュ・フロー4,0992,436+68.3%投資活動によるキャッシュ・フロー△373△1,455△74.4%財務活動によるキャッシュ・フロー△1,393△1,456△4.3%現金及び現金同等物の増減額2,365△456-%現金及び現金同等物の期末残高4,5872,222+106.4% 営業利益から、営業利益に含まれる減価償却費などのすべての非現金損益項目及び純営業資産に係るすべての非損益現金流出入を調整した調整後営業利益は、4,915億円(前年同期比13.9%減)となりました。有形固定資産の取得による支出719億円等があった一方で、純運転資本等の減少1,306億円等により、営業フリー・キャッシュ・フローは5,401億円(同75.1%増)の収入となりました。純運転資本等の減少要因は前項「② 財政状態の状況」に記載したとおりです。営業フリー・キャッシュ・フローから法人所得税1,761億円を支払ったこと等により、フリー・キャッシュ・フローは3,638億円(同118.6%増)の収入となりました。フリー・キャッシュ・フローから配当金の支払1,316億円等を調整したネット現金の純増減は2,359億円の増加となりました。また、有価証券及び有利子負債の増減を除いた現金及び現金同等物は2,365億円増加し、当期末残高は4,587億円となりました。 ※フリー・キャッシュ・フロー(FCF)について連結キャッシュ・フロー計算書は国際会計基準第7号「キャッシュ・フロー計算書」に基づいて作成しております。一方で、FCFは、連結キャッシュ・フロー計算書を内部管理の指標として再構成したものであり、ロシュも同様の指標を開示しております。なお、FCFにはCore実績のような除外事項はありません。 ※連結キャッシュ・フロー計算書に関する表示方法の変更について当連結会計年度より、連結キャッシュ・フローに関する表示方法の変更を行っております。当連結会計年度においては、比較情報である前連結会計年度についても当該変更を適用した金額を表示しております。 ④ 生産、受注及び販売の実績a. 生産の状況当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)医薬品事業1,128,2720.8合計1,128,2720.8 (注)IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は売価換算(仕切単価ベース)であり、百万円未満を四捨五入して記載しております。 b. 商品仕入実績当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の商品仕入実績は次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)医薬品事業3,55718.2合計3,55718.2 (注)IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は実際仕入高であり、百万円未満を四捨五入して記載しております。 c. 受注の状況当社グループは見込み生産を行っているため、該当事項はありません。 d. 販売の状況当社グループは医薬品事業のみの単一セグメントであり、当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)医薬品事業1,111,367△11.8合計1,111,367△11.8 (注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。相手先当連結会計年度前連結会計年度販売高(百万円)割合(%)販売高(百万円)割合(%)エフ・ホフマン・ラ・ロシュ・リミテッド511,88146.1482,73741.3アルフレッサ株式会社85,5427.791,6557.8厚生労働省81,1557.3203,65517.4 2.IFRSに基づく金額を記載しております。また、金額は百万円未満を四捨五入して記載しております。3.販売高は売上収益(製商品売上高とその他の売上収益)であります。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況 及び ② 財政状態の状況」に記載しております。 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報a. キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4. 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております。 b. 資本の財源及び資金の流動性に係る情報当社グループは、これまで、運転資金並びに設備投資及び研究開発活動を自己資金で充当しております。2021年度に始動しましたTOP I 2030 は「R&Dアウトプットの持続的な創出」に代表されるイノベーションへの継続的な経営資源の配分を掲げています。引き続き資金流動性の確保と事業活動から創出されるキャッシュ・インフローの最大化に努めるとともに、継続的なイノベーション投資に必要な財務健全性を維持していく方針です。また、計画外の急な資金需要が生じた場合の財源につきましては、金融機関からの借入や短期社債等を利用するなどの体制を整えており、既存の手許資金も含めて十分な流動性を確保しております。今後についても資本財源は事業活動を通じて獲得した資金を基盤とする方針であり、継続的なイノベーションへの投資を通じ、持続的な企業価値の向上を目指す方針です。なお、資本配分としての配当につきましては、継続的で安定的な配当の実施を目標としており、Core EPS 対比45%(5年平均)を目安としております。 ③ 経営方針・経営戦略・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当連結会計年度においては、Core売上収益は、ロシュ向け輸出や国内における新製品・主力品の市場浸透が好調だったことから、11,114億円(公表予想比3.9%増)となり、2年連続で1兆円を超えました。製商品原価率は、製品別売上構成比の変化等により42.3%(同1.7%pts減)、研究開発費・販売費及び一般管理費・その他の営業収益(費用)の合計は2,487億円(同0.5%減)となりました。この結果、Core営業利益は4,507億円(同8.6%増)となりました。また、長期にわたる投資効率の指標として重点的に管理することとしているCore ROICの実績は、前年と概ね同水準の34.6%となりました。 2021年に開始した成長戦略「TOP I 2030」の3年目となる2023年は、創薬、開発、製薬、Value Delivery、成長基盤という5つの改革分野において、概ね順調な進展が見られました。創薬においては、現在のところ、R&Dアウトプット倍増という非常にチャレンジングな目標に対して、種々の取り組みが進捗しておりますが、目標達成のためには更なる強化の余地があると考えています。現在、抗体、低分子に続く第3のモダリティとして中分子医薬品開発に取り組んでおり、初の中分子プロジェクトであるLUNA18の臨床試験において、経口投与での吸収(血中移行)を確認しました。最大耐用量の取得に時間を要しているため、ePoC取得は期初に目指していた2024年より遅延する見込みです。なお、研究段階含む中分子プロジェクト数が増加するなど、中分子ポートフォリオの拡充は、順調に進展しております。また、自社の強みとする抗体医薬品においても、次世代抗体技術の開発とプロジェクトの創出が進んでおります。このような自社での創薬研究を加速すべく、2023年4月に全面稼働した「中外ライフサイエンスパーク横浜」では、クライオ電子顕微鏡をはじめ、ロボティクスやAI等のデジタル基盤を活用した、創薬力を最大限に発揮する体制を整備しました。加えて、オープンイノベーションを加速すべく、創薬スタートアップ企業等への投資を目的にした、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)である「Chugai Venture Fund, LLC」を設立いたしました。このように種々の取り組みは進捗しておりますが、先に述べたチャレンジングな目標達成に対して、これらの取り組みを元に、さらに外部連携やデジタル活用を推進してまいります。 開発については、2023年は合計4プロジェクトが承認・発売され、新薬・適応拡大を含め8プロジェクトが承認申請に移行しました。また、ロシュ品・自社品含めて計5プロジェクトの第Ⅲ相国際共同治験、7プロジェクトの第Ⅰ相臨床試験を開始しました。また、複数のプロジェクトで承認取得前からの複数疾患同時開発を準備・実施しており、製品価値最大化に取り組んでおります。製薬では、R&Dアウトプット倍増及び効率的な生産体制の実現を目指して、宇都宮・浮間両工場において複数の設備投資の意思決定を行いました。宇都宮工場においては、臨床開発から初期商用までのバイオ原薬生産を行う「UT3」で、従来のバッチ生産方式に加え、灌流培養の導入などによる連続生産機能を実装し、次世代バイオ医薬品工場の実現に向けた基盤強化を推進いたします。また初期商用向けの新規注射剤棟である「UTA」では、スマートファクトリーの実現を目指し、生産オペレーションを支えるデジタル基盤(SPIRITS)を展開するほか、ロボティクスの活用により生産性向上を目指しています。浮間工場においては、臨床開発から初期商用までのバイオ原薬製造棟である「UK3」の生産能力を3倍に増強することで、バイオ原薬の供給スピード・フレキシビリティ向上を目指しています。なお、両工場とも、当社が掲げる中期環境目標2030の達成に寄与する製造設備といたします。Value Deliveryにおいては、多様化する顧客ニーズに対応すべく、医療関係者や患者さんが求める情報を的確かつ迅速に提供する体制の強化が進んでおり、顧客満足度調査において高く評価をいただいております。また、個別化医療に資する独自エビデンスの創出を目指し、社内外データの統合的な活用にも継続して取り組んでいます。成長基盤は、「人・組織」について、経営課題の推進とセカンドキャリアを考える従業員への支援の両面を目的として、早期退職優遇措置を実施し、374名が応募しました。新薬創出力の高度化や全てのバリューチェーン効率化の柱である「デジタル」については、「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)」に4年連続で選定されるとともに、「DXプラチナ企業2023-2025」にも選定されました。世界水準でのサステナブル基盤としての「環境」については、2030年の環境目標を設定し、種々の取り組みを行っており、概ね順調に進捗しておりますが、廃棄物の削減については達成に向けた課題があり、検討を継続しております。なお、サステナビリティにおいて重要な指標である「Dow Jones Sustainability Index World」に4年連続で選定されました。その他、質と効率を両立する次世代クオリティマネジメントを目指す「クオリティ」も着実に対応するとともに、「インサイトビジネス」では、子宮内膜症における痛みのデータを活用したバーチャルケアに向け、Biofourmis社と新たなパートナーシップを締結しました。これらの活動を通して、イノベーション創出に必要な成長基盤の強化を図っています。 ※ROICについて投下資本利益率(ROIC:Return On Invested Capital)は事業活動のために投じた資金(投下資本)を使って、企業がどれだけ効率的に利益に結びつけているかを知ることができます。 ④ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループはIFRSに準拠して連結財務諸表を作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 連結財務諸表注記 1.重要な会計方針等 (2)重要な会計上の判断、見積り及び前提」に記載のとおりです。 |
※本記事は「中外製薬株式会社」の令和5年12期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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