塩野義製薬株式会社の基本情報

会社名塩野義製薬株式会社
業種医薬品
従業員数連4959名 単2117名
従業員平均年齢40.9歳
従業員平均勤続年数15.1年
平均年収9644010円
1株当たりの純資産2248.69円
1株当たりの純利益392.8円
決算時期3月
配当金160円
配当性向18.5%
株価収益率(PER)13.5倍
自己資本利益率(ROE)18%
営業活動によるCF1291億円
投資活動によるCF▲294億円
財務活動によるCF▲850億円
研究開発費※11026.4億円
設備投資額※1148.87億円
販売費および一般管理費※11463.79億円
株主資本比率※288.9%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結子会社、以下「SHIONOGI」という)が判断したものであります。 (1) 経営方針・経営戦略等 ■経営の基本方針SHIONOGIは、「常に人々の健康を守るために必要な最もよい薬(ヘルスケアソリューション)を提供する」ことを基本方針(SHIONOGI Group Heritage)としております。そのためには、益々よい薬を創り、かつ製造するとともに、益々多くの人々に知らせ使っていただかなければなりません。このことを成し遂げるために、SHIONOGIのあらゆる人々が日々技術を向上させることが、すべてのステークホルダー(顧客、株主・投資家、社会、従業員など)の利益の拡大につながるものと考えております。 ■2030年に成し遂げたいビジョンSHIONOGIは、「新たなプラットフォームでヘルスケアの未来を創り出す」ことをSHIONOGI Group Visionとして掲げ、事業の変革を進めております。社会保障費の増加に対する懸念の高まりや医療ニーズの高度化、多様化が進む中で懸命にこれに対処し、人々の健康と持続可能な社会の実現に貢献し続けることがSHIONOGIの社会的使命であると認識しております。一方で医療用医薬品ビジネスには、主力製品の特許切れという事業のサステイナビリティに関わる課題が常に存在します。SHIONOGIは従来の医療用医薬品を中心に提供する「創薬型製薬企業」から、ヘルスケアサービスを提供する「HaaS(Healthcare as a Service)企業」へと自らを変革し、社会に対して新たな価値を提供し続けていくことで、患者さまや社会の抱える困り事をより包括的に解決したいと考えております。そのためには、創造力と専門性をベースとした創薬型製薬企業としての強みをさらに進化させ、ヘルスケア領域の新たなプラットフォーム構築に向けて、異なる強みを持つ他社・他産業から選ばれる「協創の核」とならねばなりません。SHIONOGIは、変化を恐れず、多様性を受容し、既成概念を超えて自らを「Transform」することで、SHIONOGI Group Visionの実現に取り組んでまいります。 ■経営環境及び経営戦略グローバルにおけるビジネス環境は複雑さを増し、将来の予測が困難な状態にあります。世界人口の増加と高中所得国における少子高齢化の進行、地球規模で起こる気候変動等の環境変化とそれらに伴う疾病構造やヘルスケアに求められるニーズの変化、人工知能の飛躍的な進化、人々の価値観の多様化、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)のパンデミックを契機とした創薬の研究開発の進め方やグローバル展開の考え方の変革等、ヘルスケア産業を取り巻く外部環境は急速に変化しております。また、医療保険財政のひっ迫に伴い、先進諸国で薬剤費抑制の圧力が強まる中、我が国においては医療用医薬品について2021年度より毎年薬価改定が実施されるなど、経営を取り巻く環境は厳しさを増しております。さらには、大国同士による技術・経済・安全保障などの分野における主導権争いや、ロシアによるウクライナへの侵略長期化・中東対立の拡大など、諸外国におけるビジネス展開や医薬品の原材料の調達・供給が停滞するリスクなども日々顕在化してきております。このような中でSHIONOGIは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)治療薬の開発に取り組み、これまでにないスピードで創薬から臨床研究、承認申請へと進み、緊急承認を取得するなど、一定の成果を示すことができました。さらにHIVフランチャイズについては、長時間作用型のカボテグラビルを軸とした製品群へとシフトさせていくViiV Healthcare Ltd.(以下「ヴィーブ社」)の取り組みが順調に推移していることで、抗HIV薬ドルテグラビルの特許切れによるパテントクリフは、当初想定より大きく縮小し、速やかな再成長が期待できるまでにいたりました。当社グループは、2030年Visionを実現するために、2020年に中期経営計画「Shionogi Transformation Strategy 2030(STS2030)を発表し、取り組みを進めてまいりましたが、前述した外部環境の変化や、STS2030を策定してから2023年までの3年間の取り組みによる成果や学びから、STS2030達成に向けた道筋をより明確にするため2023年6月にSTS2030をアップデートし、STS2030 Revisionとして再策定しました。 ■STS2030 Revisionの概要 STS2030 Revisionでは、2023年度から2025年度の3カ年を新たにSTS Phase2と位置付け、変革による成長を加速することとしました。また、2026年度から2030年度までをSTS Phase3として新たな計画を策定、実行していく予定です。 STS Phase1では、自社創製品の拡大と医療用医薬品以外の製品・サービスの進展、さらにガバナンスの強化を通じて主要KPIを概ね達成することができました。STS Phase2では「感染症領域を中心としたグローバルでのトップラインの成長」と「積極投資による成長ドライバーの育成を実現すること」を基本方針とし、3つの柱である「HIVビジネスの更なる成長」、「COVID-19治療薬の成長」、「新製品・新規事業拡大」を通じて、成長を加速させてまいります。 2030年Vision実現に向けた成長 ① HIVビジネスの更なる伸長 HIVビジネスは、ヴィーブ社による経口2剤合剤や長時間作用型製剤の販売が好調なことにより、売上及び市場シェアが順調に伸長しております。今後は長時間作用型の治療薬「Cabenuva」及び予防薬「Apretude」の市場浸透を推進するとともに、4ヵ月に1回の投与で治療または予防が完結する超長時間作用型製剤などの開発により、HIVビジネスの継続的な成長を実現してまいります。 ② COVID-19治療薬の成長 COVID-19は、今なお世界中の多くの人々の健康や生活に影響を与え続けております。今後も新型コロナウイルスは変異を繰り返しながら免疫を回避し、流行が継続することが予想されることから、治療薬へのニーズは引き続き存在すると考えられます。SHIONOGIは感染症のリーディングカンパニーとして、「エンシトレルビル」の新たなエビデンスを集積しグローバルでの提供を目指すとともに、より多くの方にご使用いただけるよう、さらに優れた新規治療薬の創出にも注力することでCOVID-19に対する取り組みを継続し、持続的な成長を実現してまいります。 ③ 新製品・新規事業の拡大新製品については、現在の開発パイプラインの中から2030年度までに10製品以上の上市を目指しており、既存アセットの成長や積極投資による製品導入などを合わせて、グローバルでの成長を実現します。ワクチン事業については、着実に実績を積み上げ、競争力を獲得しながら2030年には売上収益1,000億円への成長を目指してまいります。 ■SHIONOGIの重要課題(マテリアリティ)とSTS2030 Revisionとの関係 SHIONOGIは事業活動を通じて社会課題や医療ニーズに応え、社会に必要とされる企業として成長し、その成果をステークホルダーと共有することを目指しております。その実現のため、SHIONOGIを取り巻く環境を捉え、環境変化に対する機会と脅威の評価及びSHIONOGIの現状や課題などの分析を通じて重要課題(マテリアリティ)を特定しております。これらマテリアリティのうち、2030年までのSHIONOGIの成長や社会からの要請を考慮し、特に欠かせない要素をSTS2030 Revisionの戦略に組み入れております。 ■マテリアリティ特定のプロセス STEP1:機会と脅威の評価・ 社内外の環境変化に対する認識をもとに機会と脅威を整理・ 整理した機会と脅威を社会、事業、社内の3つの観点から評価 STEP2:抽出された事項の優先順位づけ・ 機会と脅威の意味合いから、新たな価値の創出、持続可能な社会への貢献、経営基盤の3要素に分類・ 経営企画部、サステイナビリティ推進部が中心となり3つの要素ごとに影響度と発生・実現可能性の2軸で評価 STEP3:ステークホルダーへのヒアリング・ 作成したマテリアリティマップについて、投資家や有識者などの社外ステークホルダーおよび社内関連部署にヒアリングを行い、妥当性を確認 STEP4:マテリアリティの特定とモニタリング・ 経営会議、取締役会においてマテリアリティの妥当性を検討の上、マテリアリティの特定ならびにマテリアリティに基づき実施するサステイナビリティ活動の年度計画は経営会議での審議を経て承認・ 環境変化及び社内での進捗状況に基づき、定期的に経営会議にてマテリアリティ見直し要否を検討、見直しが必要な場合は取締役会に上程 ・ 取締役会は定期的に活動の報告を受け、活動の推進に向けた助言及び提案に基づく審議を実施 (2) STS2030 Revision で優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題マテリアリティの中で特に重視している課題は「感染症の脅威からの解放」であり、その実現こそが感染症のリーディングカンパニーとしてのSHIONOGIの使命であると考え、STS2030 Revisionでは感染症領域における種々のヘルスケア課題の解決と持続可能なビジネスモデル構築を目指しております。また、「健やかで豊かな人生への貢献」についても特に重視するマテリアリティの1つに据え、従来注力領域に掲げていた「精神・神経疾患」と「疼痛」にこだわらず「認知症」や「肥満症」といったアンメットニーズの高い領域にニーズ/疾患単位でフォーカスし、誰もが自分らしく生き生きとした生活を送ることができる社会の実現に貢献いたします。 ■社会課題の解決を通じた価値創造①感染症の脅威からの解放SHIONOGIは、60年以上にわたって感染症の研究・開発を続けており、これまで多くの感染症治療薬を社会に提供してまいりました。長い活動で培われた感染症領域への深い理解、化合物や病原体のライブラリなどの強みをベースに、今後もアンメットニーズの充足に貢献するソリューションを提供することが出来ると考えております。世界を新型コロナウイルス感染症パンデミックから一日でも早く解放することを最優先に、COVID-19治療薬の開発に加え、今後出現する可能性のある変異株、さらにはコロナウイルスによる次のパンデミックに対しても有効なユニバーサルワクチンの創製にも取り組んでおります。さらに、島津製作所との合弁会社である株式会社AdvanSentinelによる下水疫学調査サービスの提供、診療体制支援を目的とした株式会社アルムとの業務提携、COVID-19診断薬の開発や供給など、感染症のトータルケア(治療のみではなく未病、予防、診断、予後なども含めた疾患全体のケア)の実現に向けた製品・サービスの整備を行いました。引き続き、エンシトレルビルのエビデンス構築、小児や予防などの適応拡大により、満たされていないニーズの充足に貢献するとともに、感染症のトータルケアをグローバルに展開することで、トップラインの成長、持続可能なビジネスモデルの構築の実現を目指してまいります。また、世界三大感染症についても、HIVのみならず、結核やマラリアなどの治療に長期間を要する感染症にコミットすることで、感染症のリーディングカンパニーとしての使命を果たしてまいります。さらに、SHIONOGI単独では対応が難しい感染症の課題に対しても、社会とともに解決するための仕組みの構築に取り組んでまいります。薬剤耐性(AMR)はサイレント・パンデミックと称され、喫緊かつグローバルな脅威として徐々に認知が高まっておりますが、将来的な脅威の拡大が危惧されているにもかかわらず、創薬の難易度や投資が回収できないといったビジネスリスクの為に世界的に新規治療薬の開発が停滞している現状があります。SHIONOGIは、AMRに対する有望な治療選択肢として、世界で初めてのシデロフォアセファロスポリン抗菌薬であるセフィデロコルを創出するとともに、Qpex Biopharma, Inc.(以下「Qpex社」)を完全子会社化することで広域阻害スペクトラムを有するβ-ラクタマーゼ阻害剤を獲得し、抗菌薬研究開発のケイパビリティと米国でのネットワーク強化に取り組んでおります。加えて、低中所得国を含めた世界中の国々の感染症治療薬へのアクセスの改善を目的に、SHIONOGIはMPP(Medicines Patent Pool)とパートナーシップを形成し、GARDP(Global Antibiotic Research and Development Partnership)、CHAI(Clinton Health Access Initiative)との間でも提携契約を締結しております。 ②健やかで豊かな人生への貢献SHIONOGIは、誰もが自分らしく生き生きとした生活を送ることができる社会の実現を目指し、STS2030 Revisionでは注力する領域として社会的影響度の高いQOL疾患を掲げ、すでに研究開発を進めていた精神・神経疾患、疼痛だけでなく、肥満症や睡眠障害などの特にアンメットニーズの高い領域のパイプラインの開発を進めております。 また、HaaS企業としての更なる成長を実現するため、医療用医薬品を軸としたSolutionプラットフォームを提供し、より多くの患者さまのより多くのニーズに深く応えるための取り組みを進めております。これまでに、サスメドの不眠障害用アプリやAkiliのADHD治療用デジタルアプリSDT-001(米国では承認済み)の開発などにも取り組み、患者さまのニーズに寄り添うHaaS構想の具現化を進めております。また、一人ひとりの児童生徒に合致した適切な教育プランを教員に提案する教育支援サービスを提供するYui Connection株式会社の設立、ピクシーダストテクノロジーズとの連携による音刺激を活用した認知症機能改善に向けた取り組みの推進など、HaaS実現に向けた環境整備を進展することができました。今後も、治療薬の提供にとどまらず、革新的な治療選択肢やサービスの開発・提供を通じて患者さまとそのご家族、さらには周囲で支援する皆さまの困りごとを解決し、QOLや社会の生産性の向上に貢献してまいります。 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等STS2030 Revisionでは、達成すべき財務経営指標として3つの成長性指標と3つの株主還元指標を設定しております。成長性指標については、トップラインの成長を優先して進めていくことから売上収益、またその成長をグローバルに成し遂げていくことから海外売上高 CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)、そして成長に向けた積極的な投資を行っていくことと稼ぐ力を測るためにEBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization:利払い・税引き・償却前利益、コア営業利益に減価償却費を加えた利益)の3つを設定しております。また、株主還元指標として、事業成長と財務施策の観点からEPS、DOE、ROEの3つを継続して設定しております。エンシトレルビルなどの感染症薬を中心にグローバルでのトップラインの成長を実現することで、各年度の売上収益及び海外売上高 CAGR目標を達成するとともに、さらなる収益ドライバーを確立するためのM&Aや導入、アライアンスなどの事業開発機会の探索を継続し、価値に見合った投資を強固な財務基盤を活かして積極的に実行していくことで、経営指標の達成を目指してまいります。 業績評価指標(KPI)2025年度 目標2030年度目標成長性売上収益5,500億円8,000億円海外売上高 CAGR(ロイヤリティー収入を除く)50%(2022年度を起点とする)15%(2025年度を起点とする)EBITDA2,000億円―株主還元EPS600円以上―DOE4%―ROE14%以上―
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】経営者の視点による当社グループ(当社及び連結子会社)の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。また、当社グループの事業は、医療用医薬品の研究開発、仕入、製造、販売並びにこれらの付随業務を事業内容とする単一セグメントであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容① 経営成績等a.財政状態当連結会計年度末の資産合計は1兆4,169億18百万円で、前連結会計年度末に比べて1,051億17百万円増加しました。非流動資産は、6,327億12百万円で、為替の影響によるその他の金融資産の増加、仕掛研究開発資産等の無形資産の増加やその他の非流動資産の増加等により前連結会計年度末に比べて1,051億4百万円増加となりました。流動資産は7,842億5百万円で、現金及び現金同等物や営業債権の増加の一方で、3ヶ月超の定期預金および債券(流動資産のその他の金融資産に含みます)の増減、その他の流動資産の減少等の結果、前連結会計年度末に比べて13百万円増加にとどまりました。資本については1兆2,525億62百万円となりました。自己株式の取得や配当金の支払があった一方で、当期利益の計上と在外営業活動体の外貨換算差額(その他の資本の構成要素に含みます)の増加により、前連結会計年度末に比べて1,306億84百万円増加しました。負債については1,643億55百万円で、前連結会計年度末に比べて255億66百万円減少しました。非流動負債は304億48百万円で、前連結会計年度末に比べて9億21百万円減少しました。流動負債は1,339億7百万円で、未払法人所得税の減少等により、前連結会計年度末に比べて246億45百万円減少しました。 b.経営成績当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)の経営成績は、以下のとおりであります。(単位:百万円) 当連結会計年度前連結会計年度増減増減率(%)売上収益410,073426,684△16,611△3.9売上収益(ライセンス移管に伴う利益含む)435,081426,6848,3962.0営業利益153,310149,0034,3072.9コア営業利益※1170,421158,48311,9387.5税引前利益198,283220,332△22,048△10.0親会社の所有者に帰属する当期利益162,030184,965△22,935△12.4EBITDA※2188,745175,64913,0967.5 ※1 コア営業利益:営業利益から非経常的な項目(減損損失、有形固定資産売却益など)を調整した利益※2 Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization:コア営業利益に減価償却費を加えた利益 売上収益につきましては、4,351億円(ADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金を含む、前期比2.0%増)となりました。前連結会計年度はCOVID-19治療薬ゾコーバの日本政府による購入で1,000億円が計上されていましたが、国内外での感染症薬の売上拡大、ロイヤリティー収入の増加など、各事業が順調に伸長した結果、当連結会計年度の売上収益は前連結会計年度を上回り、2年連続で過去最高の売上収益を更新しました。利益面につきまして、営業利益は、COVID-19関連プロジェクトや注力プロジェクトへの積極投資、特別早期退職プログラムの実施、zatolmilastのアルツハイマー型認知症での開発計画の見直しに伴う減損損失の計上等で費用が大きく増加しましたが、各事業の順調な伸展により、1,533億円(前期比2.9%増)となりました。また、税引前利益につきましては1,983億円(前期比10.0%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益につきましては1,620億円(前期比12.4%減)となりました。2022年度において、2021年度に受領予定であったヴィーブ社からの配当金を受領したことおよびヴィーブ社がギリアド社との訴訟の和解に伴う一時金を受領したことにより、当連結会計年度は配当金が大きく減少したため減益となりましたが、特別早期退職プログラムや減損損失の費用計上を含む一過的な要因を除けば、税引前利益、親会社の所有者に帰属する当期利益もそれぞれ対前年比で増益となりました。 当連結会計年度は、グローバル展開や中長期の成長に向けた新規事業・成長ドライバーの確立に向けて積極投資を行いつつ、売上収益と営業利益について2年連続で過去最高業績を更新する結果となりました。 ・国内医療用医薬品国内医療用医薬品の売上収益は、1,511億円(ADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金を含む、前期比15.9%減)となりました。前連結会計年度に日本政府のCOVID-19治療薬ゾコーバ購入による1,000億円が計上されておりましたため減収となりましたが、上記要因と当連結会計年度に発生したインチュニブおよびビバンセの共同開発・商業化に関する武田薬品工業株式会社とのライセンス契約終了に伴う製品移管による一時金の受領という一過的な要因を除くと、国内医療用医薬品の売上は前年同期比で58.1%の増収となりました。この主な要因はゾコーバとインフルエンザ治療薬ゾフルーザの売上拡大によるものです。各製品の売上につきまして、COVID-19関連製品とインフルエンザ関連製品の売上収益の合計は734億円となりました。さらに、当連結会計年度には多剤耐性グラム陰性菌に効果を示すセフィデロコル(日本の製品名:フェトロージャ)の販売を開始し、日本のPull型インセンティブ制度である抗菌薬確保支援事業※にも初めて採用されました。 ※ 上市後の当該抗微生物薬による収入額が一定額に満たない場合、その差額を国が支援する日本のPull型インセンティブ制度 ・海外子会社および輸出海外事業における売上収益は499億円(前期比17.4%増)となりました。欧米ではセフィデロコル(米国の製品名:Fetroja、欧州の製品名:Fetcroja)の販売が好調に推移し、米国における売上収益は179億円(前期比15.9%増)、欧州における売上収益は136億円(前期比49.9%増)となりました。引き続き、セフィデロコルの販売国の拡大や既上市国でのさらなる処方浸透、サブスクリプション型償還モデル※の採用国の拡大を通じ、欧米事業の成長を促進してまいります。中国における売上収益は、中国政府による医療費抑制政策の影響を受け、106億円(前期比11.3%減)となりました。 ※ 抗菌薬の処方量と切り離し、国が開発企業に対して固定報酬を支払う代わりに、必要なときに抗菌薬を受け取ることができるモデル ・ロイヤリティー収入およびヴィーブ社からの配当金収入ヴィーブ社からのロイヤリティー収入は、HIVフランチャイズの売上が経口2剤合剤や長時間作用型製剤(Long Acting製剤:LA製剤)の急成長により伸長したことで、1,958億円(前期比16.2%増)となりました。また、ヴィーブ社からの配当金は、339億円(前期比44.5%減)となりました。ヴィーブ社のビジネスが順調に進捗したことで、当初予想を上回る配当金を受領しましたが、2022年度において、2021年度に受領予定であったヴィーブ社からの配当金を受領したことおよびヴィーブ社がギリアド社との訴訟の和解に伴う一時金を受領したことにより大きく減少しました。一方で、配当金自体は順調に推移しており、今後もロイヤリティー収入とともに継続的な成長が見込まれます。スイス ロシュ社からのロイヤリティー収入は、導出したゾフルーザの売上が伸長したことで、当連結会計年度は12億円となりました。英国アストラゼネカ社からのロイヤリティー収入は、クレストールの売上によるロイヤリティー収入を受領したことで14億円となりました。以上の結果から、当連結会計年度のロイヤリティー及びヴィーブ社からの配当金収入の合計は、2,343億円(前期比0.7%減)となりました。 ・経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しましたとおり、当社グループは、2023年6月にSTS2030を改定し、STS2030 Revisionとして再策定しました。STS2030 Revisionでは、達成すべき財務経営指標として3つの成長性指標と3つの株主還元指標を設定しました。成長性指標については、トップラインの成長を優先して進めていくことから売上収益、またその成長をグローバルに成し遂げていくことから海外売上高 CAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)、そして成長に向けた積極的な投資を行っていくことと稼ぐ力を測るためにEBITDA(Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation, and Amortization:利払い・税引き・償却前利益、コア営業利益に減価償却費を加えた利益)の3つを設定しております。また、株主還元指標として、事業成長と財務施策の観点からEPS、DOE、ROEの3つを継続して設定しております。エンシトレルビルなどの感染症薬を中心にグローバルでのトップラインの成長を実現することで、各年度の売上収益および海外売上高 CAGR目標を達成するとともに、さらなる収益ドライバーを確立するためのM&Aや導入、アライアンスなどの事業開発機会の探索を継続し、価値に見合った投資を強固な財務基盤を活かして積極的に実行していくことで、経営指標の達成を目指してまいります。 業績評価指標(KPI)2023年度実績※2025年度目標2030年度目標成長性売上収益4,351億円5,500億円8,000億円海外売上高 CAGR(ロイヤリティー収入を除く)17.4%50%(2022年度を起点とする)15%(2025年度を起点とする)EBITDA1,887億円2,000億円―株主還元EPS558.51円600円以上―DOE4.0%4%―ROE13.9%14%以上― ※ 売上収益には、ADHD治療薬のライセンス移管に伴う一時金が含まれております。 c.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益の減少、営業債権の増加、法人所得税の支払額の増加により、前連結会計年度に比べて235億83百万円少ない1,542億84百万円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、新規の子会社や持分法適用会社株式等の取得があった一方で、無形資産の取得による支出の減少や、定期預金の増減により、59億22百万円の収入(前連結会計年度は482億92百万円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得や配当金の支払いの増加により、前連結会計年度に比べて427億29百万円多い1,268億53百万円の支出となりました。これらを合わせた当連結会計年度の現金及び現金同等物の増減額は488億66百万円の増加となり、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は、3,580億90百万円となりました。 〔キャッシュ・フロー指標のトレンド〕 2022年3月期2023年3月期2024年3月期親会社所有者帰属持分比率84.8%83.9%87.2%時価ベースの親会社所有者帰属持分比率197.3%134.1%155.1%キャッシュ・フロー対有利子負債比率0.1 0.1 0.1 インタレスト・カバレッジ・レシオ1,161.1 1,885.3 937.5 (注) 親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分/資産合計時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/資産合計キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フローインタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い1.指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。2.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。3.キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。4.有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を払っている全ての負債を対象としております。 ② 生産、受注及び販売の実績a.生産実績当連結会計年度における生産実績は次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)医薬品事業172,688△20.7 (注) 金額は、正味販売見込価格により算出したものであります。 b.商品仕入実績当連結会計年度における商品仕入実績は次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)医薬品事業13,298△1.0 (注) 金額は、実際仕入額によっております。 c.受注状況当社グループは、主として販売計画に基づいて生産計画をたてて生産しております。当社及び一部の連結子会社で受注生産を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はありません。 d.販売実績当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)医薬品事業410,073△3.9 (注) 1.販売金額は、外部顧客に対する売上収益を表示しております。2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。相手先前連結会計年度当連結会計年度金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)ViiV Healthcare Ltd.168,45439.5195,78247.7株式会社スズケン※1--50,44412.3厚生労働省※2100,00023.4-- ※1 前連結会計年度の株式会社スズケンに対する販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満であるため、記載を省略しております。※2 当連結会計年度の厚生労働省に対する販売実績は、総販売実績に対する割合が10%未満であるため、記載を省略しております。 (2) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しております。重要性がある会計方針及び見積りの詳細等につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の判断、見積り及び仮定」をご参照ください。

※本記事は「塩野義製薬株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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