UBE株式会社の基本情報

会社名UBE株式会社
業種化学
従業員数連7882名 単2243名
従業員平均年齢42.9歳
従業員平均勤続年数16年
平均年収7560114円
1株当たりの純資産4210.11円
1株当たりの純利益298.59円
決算時期3月
配当金105円
配当性向61.7%
株価収益率(PER)9.13倍
自己資本利益率(ROE)7.5%
営業活動によるCF529億円
投資活動によるCF▲333億円
財務活動によるCF▲157億円
研究開発費※149.93億円
設備投資額※148.06億円
販売費および一般管理費※1642.55億円
株主資本比率※243.3%
有利子負債残高(連結)※32064.32億円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。(1)経営方針120年を超える歴史を刻む当社グループは、地域社会との「共存同栄」と「有限の鉱業から無限の工業へ」という2つを創業の精神として受け継ぎ、時代と産業構造の変化に対応しながら、新たな技術への挑戦と自己変革を重ねて業容を拡大してきました。今後ますます多様化・複雑化するニーズに応え、以下の当社グループのパーパス(存在意義)を全うすべく経営理念と経営方針に基づき、未来につながる新たな価値を創出するための事業活動をグローバルに展開するとともに、ESG(環境・社会・コーポレートガバナンス)への取組みを一層充実し、持続的な成長と企業価値の向上を目指します。また、株主を始め顧客、取引先、従業員や地域社会等のあらゆるステークホルダー、更には地球環境との共生を実践し、これらに貢献する価値創出企業であり続けます。 パーパス(存在意義)  「創業以来の歴史の中で培ってきたモノづくりの技術をベースに、社会に必要とされている価値を、社会が求める安全で環境負荷の少ない方法で創り出し、人々に提供する。人類共通の課題となった地球環境問題の解決に向けて、また人々の生命・健康、そして未来へとつながる豊かな社会に貢献すべく、UBEグループの技術で価値を創出していく。」 経営理念  「技術の探求と革新の心で、未来につながる価値を創出し、社会の発展に貢献します」 経営方針「倫理」     高い倫理観を保ち、法令及び社会規範を遵守します「安全と安心」  地球環境保全に努め、安全・安心なものづくりを行います「品質」     お客様と社会の信頼に応える品質をお届けします「人」      個性と多様性を尊重し、健康で働きやすい職場をつくります当社は、2022年4月に「UBE株式会社」という新社名の下、化学事業持株会社へと経営構造を転換し新たなスタートを切りました。今後は、スペシャリティ化学の企業グループとしてグローバルに持続的成長を図るとともに持続可能な社会への貢献に取り組み、機械事業やセメント関連事業については、持株会社としての経営を推進し、UBEグループとしての企業価値の最大化を図ります。(2)経営戦略等当社グループは、長期ビジョン「UBE Vision 2030 Transformation」で描いた目指す姿の実現に向け、直近3カ年のアクションプランとして中期経営計画「UBE Vision 2030 Transformation~1st Stage~」(対象期間:2022年度~2024年度)を策定し、以下の基本方針及び数値目標を掲げています。◆長期ビジョン(2030年)の目指す姿「地球環境と人々の健康、そして豊かな未来社会に貢献するスペシャリティ化学を中核とする企業グループ」この目指す姿の実現に向け、「エネルギー負荷の低い」、「市況変動に左右されにくい」、「収益性の高い」スペシャリティ製品を主体とする事業構造への転換を進めます。また、このような事業構造改革と省エネ推進・プロセス改善等の施策により、温室効果ガス(GHG)排出量の削減目標の達成を目指すとともに、環境に貢献する製品や技術の開発と実用化を推進することで、持続可能な社会の実現に貢献します。◆中期経営計画の基本方針(ⅰ) スペシャリティ化学を中心としてグローバルな利益成長を追求(ⅱ) 地球環境問題に対応した事業構造改革(ⅲ) 持続的成長に向けた人的資本の充実(iv) DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進による企業価値の向上と顧客価値の創出(v) ガバナンスの更なる向上 (3)経営環境当連結会計年度においては、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化、米中対立等により世界経済は不安定さと不透明感を強めました。欧米での物価上昇が続く中、金融引き締めにもかかわらず米国景気が堅調に拡大したことで想定以上の円安が日本の物価をも押し上げました。当社事業においても、エネルギーコストや原材料価格の高騰等に伴う需要減退の影響を受けました。これら地政学的リスクの深刻化、エネルギーコストや原材料価格の高騰、物価上昇や金利上昇に伴う需要減退の懸念等から今後も先行きが見通しづらい状況が続くものと予測されます。こうした状況に加え、地球温暖化、自然災害の増加、インフラの老朽化等、持続可能な社会創出のための諸課題への対応が企業活動に求められており、更には、DXによる競争優位性の変化、健康や安全・安心についての意識の更なる高まり等、経営環境の変化のスピードも一段と速まっています。 (4)優先的に対処すべき課題等当連結会計年度は、ポリイミド、分離膜、セラミックス、高機能コーティング、医薬品等スペシャリティ事業の業績は堅調に推移しましたが、ベーシック事業のうちナイロンポリマー・カプロラクタムは厳しい業況が継続しました。次期の業績見通しにおいては、ベーシック事業を取り巻く環境が改善することを想定していますが、中期経営計画策定時に想定した事業環境に比べると、依然として大きく悪化した中で推移することが見込まれるため、中期経営計画の数値目標(「(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」を参照)の達成は困難な状況です。中期経営計画の基本方針に変更はありませんが、当該事業環境を踏まえ、当社グループの業績変動を小さくし安定した成長軌道に乗せるべく、スペシャリティ事業の拡大とベーシック事業の構造改革をより一層加速させます。すべてのステークホルダーに価値を創出し続けていくために、中期経営計画における5つの基本方針の着実な実行を重要な課題として認識しています。(ⅰ)スペシャリティ化学を中心にグローバルな利益成長を追求技術力やバリューチェーンにおける強みをベースに付加価値を創出することで高収益を実現できるスペシャリティ事業に経営資源を重点的に投入し、一層の成長・拡大を図ります。現在増産工事中のポリイミド原料モノマー(BPDA)、ポリイミドフィルム、分離膜、セラミックス等の製造設備を順次稼働させていくとともに、2024年2月に決定した米国におけるDMC・EMC製造設備の建設を着実に進め、グローバルでの事業拡大と利益成長を目指します。他方、ベーシック事業については更なるコスト競争力の強化とともに、損益変動の大きいナイロンポリマー・カプロラクタムは、2024年5月の国内カプロラクタム生産の縮小に続き、一層の構造改革を推進していきます。(ⅱ)地球環境問題に対応した事業構造改革石炭を主要なエネルギー源として事業展開してきた当社グループは、エネルギー多消費型の事業構造を変革することが大きな課題であると認識しています。2021年4月に「UBEグループ 2050年カーボンニュートラルへの挑戦」を宣言し、自らの事業活動から排出されるGHGの実質排出量ゼロに挑戦するとともに、環境に貢献する製品・技術に関わる研究開発の推進とイノベーションの実用化により、社会全体のカーボンニュートラルへの貢献を目指します。2030年度までの中期目標として、GHG排出削減率を50%(2013年度比)、環境貢献型製品・技術の連結売上高比率を60%以上にすることを目指しています。こうした目標の達成に向け、中期経営計画期間においては生産活動における徹底した省エネ推進・プロセス改善に継続的に取り組むとともに、再生可能エネルギーを最大限活用し、GHG排出量の削減に努めます。(ⅲ)持続的成長に向けた人的資本の充実ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンは人的資本充実策の最重要課題と位置づけ、スペシャリティ事業による成長を牽引する多様な人財の育成、従業員のワークエンゲージメントの向上とともに、前例踏襲に陥らず挑戦する社風・イノベーティブな風土の醸成に取り組みます。(ⅳ)DXの推進による企業価値の向上と顧客価値の創出新たに設置したDX推進室が主体となり、デジタル人財の育成を推進し、幅広い領域においてDXを推進することで、業務の効率化や新たな顧客価値の創出を加速していきます。(ⅴ)ガバナンスの更なる向上化学事業持株会社としての更なる成長を目指す当社は、スペシャリティ化学の企業グループとしてグローバルに持続的成長を図るとともに、機械事業やセメント関連事業については持株会社としての経営を推進し、グループ全体で企業価値の最大化を図っていきます。<事業ポートフォリオ>長期ビジョンの目指す姿とともに、今後の市場の成長期待、UBEグループの有する強み、収益性等を踏まえて、化学分野の主要事業・製品の位置づけを明確にするとともに、経営資源投入の判断にも活用します。 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等中期経営計画「UBE Vision 2030 Transformation~1st Stage~」においては、最終年度となる2024年度の数値目標を次のとおり設定していますが、事業環境の変化等もあり、主要項目及び経営指標については、最終年度の数値目標の達成は困難な見通しとなっています。<主要項目> 2024年度目標営業利益400億円(うちスペシャリティ事業 240億円)経常利益470億円 <経営指標> 2024年度目標売上高営業利益率(ROS)8%自己資本利益率(ROE)8% <非財務指標> 2024年度目標(国内連結)女性社員比率(注)18%女性管理職比率6%(注)これまで数値目標としていた15%を前倒しして達成したことにより、新たな数値目標を設定しています。
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。 ①経営成績の状況当社グループは、2022年度からスタートした3カ年の中期経営計画「UBE Vision 2030 Transformation~1st Stage~」において、「スペシャリティ化学を中心としてグローバルに利益成長を追求」「地球環境問題に対応した事業構造改革」「持続的成長に向けた人的資本の充実」「DXの推進による企業価値の向上と顧客価値の創出」「ガバナンスの更なる向上」を基本方針とし、事業構造改革と成長の実現に向けた取組みを推進してきました。当連結会計年度においては、売上高は、2022年12月に医薬品受託製造会社(㈱エーピーアイコーポレーション)を買収した効果があったものの、樹脂・化成品セグメントにおいて中国経済の停滞等の影響もありナイロンポリマー・カプロラクタム等の販売が低調に推移した影響が大きく、前連結会計年度を下回りました。営業利益は、樹脂・化成品セグメントにおいてファインケミカルや工業薬品等の販売が低調に推移したものの、機能品セグメントにおける分離膜の販売、機械セグメントにおけるアフターサービスが堅調に推移し、また医薬事業のロイヤリティ収入も増加したことなどから、前連結会計年度を上回りました。経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、営業利益の増加に加え、セメント関連事業(持分法適用関連会社であるUBE三菱セメント㈱)において石炭等エネルギー価格高騰を反映させた販売価格への是正等を進めたことにより持分法投資損益が改善し、前連結会計年度を大幅に上回りました。この結果、当社グループの売上高は前連結会計年度に比べ265億1百万円減の4,682億3千7百万円、営業利益は62億4千6百万円増の224億5千6百万円、経常利益は363億3千3百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は289億8千1百万円となりました。項 目売上高営業利益経常利益又は経常損失(△)親会社株主に帰属する当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)当連結会計年度468,237百万円22,456百万円36,333百万円28,981百万円前連結会計年度494,738百万円16,210百万円△8,745百万円△7,034百万円増   減△26,501百万円6,246百万円45,078百万円36,015百万円増 減 率△5.4%38.5%--  ②生産、受注及び販売の実績a.生産実績 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)機能品60,751△0.9樹脂・化成品262,601△9.2機械90,820△1.7その他34,07621.1合計448,248△4.8 (注)金額は平均販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去前の数値によっています。 b.受注実績 当連結会計年度における機械の受注実績を示すと、次のとおりです。 なお、機械を除くセグメントの製品については、受注生産は行っていません。セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)機械81,93110.257,2679.6c.販売実績 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)機能品63,7502.6樹脂・化成品257,175△12.3機械96,886△0.0その他80,49110.1消去△30,065-合計468,237△5.4 (注)セグメント間の取引については相殺消去前の数値によっています。  ③財政状態総資産当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ563億5千3百万円(7.7%)増加し、7,890億3千4百万円となりました。流動資産は、現金及び預金、仕掛品等の棚卸資産が増加したことなどにより125億6千2百万円(4.4%)増加し、2,956億7千8百万円となりました。固定資産は、有形固定資産や投資有価証券、退職給付に係る資産が増加したことなどにより437億8千5百万円(9.7%)増加し、4,932億1百万円となりました。繰延資産は、社債発行費が増加したことにより6百万円(4.0%)増加し、1億5千5百万円となりました。負債当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末に比べ86億2千9百万円(2.5%)増加し、3,596億7千9百万円となりました。有利子負債は47億1千1百万円(△2.2%)減少し、2,134億3千2百万円となりました。流動負債は、短期借入金や1年内償還予定の社債、契約負債が増加したことなどにより259億8千9百万円(15.1%)増加し、1,982億2千1百万円となりました。固定負債は、長期借入金が減少したことなどにより173億6千万円(△9.7%)減少し、1,614億5千8百万円となりました。純資産当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末に比べ477億2千4百万円(12.5%)増加し、4,293億5千5百万円となりました。株主資本は、利益剰余金が配当により92億2千万円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益により289億8千1百万円増加したことなどにより185億2千9百万円(5.5%)増加し、3,536億1千6百万円となりました。その他の包括利益累計額は、為替換算調整勘定が増加したことなどにより285億4千9百万円(107.6%)増加し、550億7千3百万円となりました。非支配株主持分は、6億5千5百万円(3.3%)増加し、206億4百万円となりました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ2.4ポイント増加し、51.8%となりました。 当連結会計年度前連結会計年度増  減総資産789,034百万円732,681百万円56,353百万円負債359,679百万円351,050百万円8,629百万円純資産429,355百万円381,631百万円47,724百万円④キャッシュ・フローの状況営業活動によるキャッシュ・フロー営業活動により得られた資金は529億6千万円(前連結会計年度に比べ348億3千3百万円の増加)となりました。これは税金等調整前当期純利益、減価償却費、運転資金の増減等から法人税等の支払額を控除した結果となります。投資活動によるキャッシュ・フロー投資活動の結果使用した資金は333億1千6百万円(前連結会計年度に比べ72億9千7百万円の増加)となりました。これは設備投資による支出等によるものです。財務活動によるキャッシュ・フロー財務活動の結果使用した資金は157億1千2百万円(前連結会計年度は24億4千3百万円の収入)となりました。これは配当金の支払い、有利子負債の返済等によるものです。この結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、現金及び現金同等物に係る換算差額を含め、前連結会計年度末に比べ51億5千6百万円(16.8%)増加し、358億5千9百万円となりました。 当連結会計年度前連結会計年度増  減営業活動によるキャッシュ・フロー52,960百万円18,127百万円34,833百万円投資活動によるキャッシュ・フロー△33,316百万円△26,019百万円△7,297百万円財務活動によるキャッシュ・フロー△15,712百万円2,443百万円△18,155百万円 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析、検討内容中期経営計画の2年目に当たる当連結会計年度の業績は、前連結会計年度に比べ、売上高は機能品セグメントとその他セグメントを除き減少しました。2022年12月に医薬品受託製造会社(㈱エーピーアイコーポレーション)を買収した効果があったものの、樹脂・化成品セグメントにおいて中国経済の停滞等の影響もありナイロンポリマー・カプロラクタム等の販売が低調に推移したことが大きく影響したためです。営業利益は樹脂・化成品セグメントにおいてファインケミカルや工業薬品等の販売が低調に推移したものの、機能品セグメントにおける分離膜の販売、機械セグメントにおけるアフターサービスが堅調に推移し、また医薬事業のロイヤリティ収入も増加したこと等により、樹脂・化成品セグメントを除き増加しました。<売上高> 当連結会計年度前連結会計年度増  減増減率機能品63,750百万円62,158百万円1,592百万円2.6%樹脂・化成品257,175百万円293,388百万円△36,213百万円△12.3%機械96,886百万円96,921百万円△35百万円△0.0%その他80,491百万円73,110百万円7,381百万円10.1%調整額△30,065百万円△30,839百万円774百万円-合計468,237百万円494,738百万円△26,501百万円△5.4% <営業利益> 当連結会計年度前連結会計年度増  減増減率機能品12,110百万円10,243百万円1,867百万円18.2%樹脂・化成品2,427百万円2,592百万円△165百万円△6.4%機械7,168百万円5,237百万円1,931百万円36.9%その他4,549百万円2,596百万円1,953百万円75.2%調整額△3,798百万円△4,458百万円660百万円-合計22,456百万円16,210百万円6,246百万円38.5% 各セグメントの主要製品の状況は次のとおりです。機能品セグメント主要な事業内容ポリイミド、分離膜、セラミックス、セパレータ等の製造・販売◆ポリイミドポリイミドについては、需要の回復の確実な取り込みと原料(BPDA)及びフィルムの新規製造設備立ち上げによる販売拡大を進めるとともに、革新的な新規ポリイミド製品で新たな需要を創出していきます。当連結会計年度においては、大型ディスプレイ向けCOFフィルムでは、高いシェアを維持するとともに、フレキシブルOLED基板向けワニスでは、ハイエンドスマートフォンでの標準材としての地位を維持することで、安定した収益の確保を図りました。足元の事業環境においては、大型ディスプレイ向けCOFフィルムは、中国パネルメーカーの稼働率も徐々に上がっており、在庫調整も一巡したことから回復傾向にあります。今後については、革新的なポリイミドワニスの開発や、ディスプレイに加えモビリティー・半導体用途での事業拡大を図っていきます。◆分離膜分離膜については、生産能力の増強を着実に進め、環境・エネルギー分野を基軸とした事業拡大と商品力強化に取り組んでいます。当連結会計年度においては、旺盛な需要に応えるべくボトルネック対策による生産能力の増強に努め、また、2025年度上期に稼働予定の分離膜用ポリイミド中空糸膜製造設備及び分離膜モジュール製造設備の建設を進めました。足元の事業環境では、中期計画を大きく上回って受注量が増加しており、特にバイオメタン製造向けCO2分離膜の旺盛な需要が継続しています。今後については、バイオメタン製造向けCO2分離膜の旺盛な需要は継続していくと見込んでおり、また、アルコール脱水膜やSAF(持続可能航空燃料)、化学品製造等で必要とされる水素を回収・有効利用するための水素分離膜についても需要の増加が予測されます。従って、更なる新規設備投資の検討や需要急増へ対応可能な柔軟な設備体制の構築や、環境エネルギー分野を中心としたアジア市場へのマーケティング強化を図っていきます。◆セラミックスセラミックス(窒化珪素)については、急拡大するxEV向けの需要に応えるために生産能力の増強を着実に進め、成長機会を掴みます。当連結会計年度においては窒化珪素製造設備の増設を決定しました。本設備の稼働開始は2025年度下期を予定しています。足元の事業環境は、xEV市場向けの軸受及び基板用の川下顧客の増産計画も進行する中、需要拡大が加速しており、需給バランスが非常にタイトになっています。拡大する需要に対応するために、2025年度下期を予定する新規製造設備の稼働開始を前に、既存設備の生産性向上も図っていきます。今後についてもxEV市場の成長に伴い旺盛な需要が見込まれる軸受や基板用途向けでの拡販、事業拡大に取り組んでいきます。◆セパレータセパレータについては、xEV向けでの競争力強化による販売拡大に加え、今後の成長が期待される電力貯蔵システム向けをはじめとする非車載用途での成長機会を掴みます。当連結会計年度においては、HEV向け既存顧客の確実な受注と新規案件獲得による販売拡大に努めるとともに、コスト競争力のある大型生産ラインへの集約と品質の向上を推進しました。足元の事業環境では、世界的な脱炭素化社会の流れで自動車の電動化及び再生可能エネルギー発電の普及による電力貯蔵システムの需要が拡大しています。また、半導体等の部材不足が解消され、xEV市場は順調に回復しています。今後については、新規製造設備稼働による生産量アップと更なるコストダウンによる販売拡大、加えて乾式膜の特性を活かした新規製品開発による次世代xEVや非車載市場での用途展開を加速させていきます。 樹脂・化成品セグメント主要な事業内容コンポジット、ナイロンポリマー、カプロラクタム(ナイロン原料)、硫安、工業薬品、C1ケミカル、高機能コーティング、エラストマー(合成ゴム)等の製造・販売◆コンポジットコンポジットについては、新規コンポジット分野開拓によるスペシャリティ強化及びグローバル展開を目指しています。当連結会計年度においては、タイでコンパウンド4号機の製造設備を導入しました。また、環境貢献型製品へのニーズ増加に対応すべく、リサイクルビジネスへの参入の足掛かりとして、廃漁網回収ベンチャー企業(amu㈱)へ出資しました。足元の事業環境においては、自動車用途の需要は2023年度上期を底に緩やかに回復しましたが、中国経済の停滞による影響で、プラスチックマグネットや建材用途等は需要の低迷が継続しています。今後については、グローバル拠点の更なる生産能力増強・開発機能強化によるマーケットインへの体制強化を目指し、タイでの4号機の垂直立ち上げ等による既存付加価値製品のグローバル展開、地産地消化の推進、並びにバイオマス由来ナイロンや廃漁網活用等の環境貢献型製品の開発等を行っていきます。◆ナイロンポリマーナイロンポリマーについては、環境貢献型製品の開発や市場投入、アジア生産体制の最適化を進めていきます。当連結会計年度においては、タイへの共重合グレード生産移管は計画どおり進捗しました。また、インド、中南米等の需要旺盛な新興国市場で販売拡大しました。足元の事業環境においては、主力の国内食品包装用フィルム用途の需要は停滞が続いています。グローバルベースで中国品との価格競争は継続しますが、南アジアをはじめとする旺盛な新興国需要が販売量を下支えしています。今後については、高付加価値グレード及び環境貢献型製品を主軸とする価格競争に晒されないスペシャリティ化の継続を図るべく、欧州市場におけるフィルム分野での端材回収PIR(Post Industrial Recycle)ビジネスの展開や環境貢献型製品(リサイクル・バイオマス原料等)の市場投入を行っていきます。◆カプロラクタム・硫安ナイロン原料のカプロラクタム及び硫安については、事業損益変動の最小化に向けた再編の検討及び実行を加速するとともに、大粒硫安等の高付加価値製品の事業拡大に取り組んでいます。当連結会計年度においては、2024年度の国内カプロラクタム生産量縮小に向けた顧客対応を進めました。また、スペインでの付加価値品硫安増産及び、N2О(亜酸化窒素)排出量低減に向けた検討を本格化しました。足元の事業環境においては、原料価格の変動や中国を中心とした供給過多、川下需要の低迷により厳しい状況となっています。今後については、大粒硫安増産による高付加価値製品の事業拡大を目指すとともに、日本・タイでのカプロラクタム生産体制の最適化を検討し、市況変動に対するエクスポージャー(感応度)を低減していきます。◆工業薬品工業薬品についても、事業損益変動の最小化に向けた再編の検討及び実行を加速するとともに、高純度硝酸、高純度安水の高付加価値製品の事業拡大に取り組んでいます。当連結会計年度においては、高純度硝酸工場の生産能力増強を実施した一方、関係事業の再編の一環として汎用製品の硝酸ソーダから事業撤退しました。足元の事業環境においては、アンモニアは国内顧客で川下製品の需要が低調に推移し、アジアの工業用需要も力強さに欠け、市場価格は軟調です。損益変動を最小化すべく、安定操業に注力し、可能な限り販売数を拡大しています。今後については、成長する国内半導体需要に対応するため、高純度硝酸・高純度安水を梃に高純度薬液事業を拡大し、スペシャリティ化を推進していきます。また、アンモニア製造設備の停止時期最適化の検討を進めていきます。◆C1ケミカルC1ケミカルについては、米国におけるDMC・EMCプラントの建設を決定しました。UBEグループのグローバルな成長を牽引する新拠点となることを目指します。当連結会計年度においては、米国ルイジアナ州に同国初となるDMC年産10万トン、及びDMCから誘導されるEMC年産4万トンのプラント建設を決定しました。本プラントの設備投資金額は合計約5億ドルであり、2026年7月完工、同年11月稼働を予定しています。今後については、米国唯一のDMC・EMCサプライヤーとしてのマーケットリーダーの地位を確保することを目指します。加えて、欧州でのDMC5万トン設備の建設を検討しています。顧客の現地生産のニーズに応え、アジア・北米・欧州3拠点での供給体制を確立していきます。◆高機能コーティング高機能コーティングについては、市場拡大に併せた生産能力増強や環境対応型製品開発によるマーケティングを推進していきます。当連結会計年度においては、PCDはタイでの生産能力増強工事を完了し、商業運転を開始しました。PUDでは中国の開発ラボ拠点を活用した捺染インク用途の製品開発や販売拡大をしました。足元の事業環境については、PCDは、成熟した日本や欧州市場では安定した出荷が継続し、アジア市場は成長が継続しています。また北中南米は今後の開拓市場と考えています。PUDは中国を中心にVOC(揮発性有機化合物)等法規制強化による水系・無溶媒系塗料の需要増等による環境対応シフトは継続し、PUD市場も拡大しています。今後については、PCDではアジア市場の成長に合わせたタイでの更なる生産能力増強と、北米C1ケミカル事業の拡大に合わせて北米での製造設備の新設も計画しています。PUDについては日本での増産に加え、タイでの製造設備新設も検討していきます。◆エラストマー(合成ゴム)エラストマーについては、製・販・技一体での意思決定や施策実行をスピードアップしていきます。当連結会計年度においては、工場間の連携による最適生産・最適販売を実施しました。足元の事業環境については、クラッカーの低稼働に伴い原料(ブタジエン)の需給がひっ迫しています。また、ポリブタジエンの主要用途であるタイヤや樹脂の需要は低調となっています。円安・物価高に伴い、各種コストは軒並み上昇しています。今後については、安全・安定生産を継続していきます。また、コストアップの抑制と採算の確保に努め、合わせてスペシャリティ化を推進していきます。機械セグメント主要な事業内容成形機(ダイカストマシン、押出プレス、射出成形機)、産業機械(窯業機、化学機器、粉砕機、運搬機、除塵機、破砕機)、橋梁・鉄構、製鋼品(ビレット、鋳造品)等の製造・販売◆成形機成形機については、従来の更新需要に加えてxEV化に対応していきます。当連結会計年度においては、xEV化に追随した生産体制の拡充に着手しました。また、ダイカスト・射出成形機・押出プレス一体のアフターサービス活動を開始しました。足元の事業環境では、自動車関連市場はxEV化の進展により、xEVに関連する設備投資が増加しています。今後については、ギガキャスト用超大型マシンの受注・生産能力増強に注力していきます。また、アフターサービスも拡充させていきます。◆産業機械産業機械については、環境やエネルギー関連の新市場に参入していきます。当連結会計年度においては、アンモニア・洋上風力等の環境関連の拡大市場への挑戦を進めるとともに、コストダウンによる利益の上積みをしました。足元の事業環境では、バイオマス燃料搬送設備の需要は一巡し、代わりにカーボンニュートラルに関する開発や設備投資に向けた検討が本格化しています。今後については、カーボンニュートラル関連の設備投資に関する需要を取り込んでいくとともに、成形機事業と同様にアフターサービスの更なる拡大を図っていきます。 その他セグメント主要な事業内容医薬品(原体・中間体)等の製造・販売、電力供給、不動産の売買・賃貸借及び管理等◆医薬医薬については、CDMO(医薬品受託製造)事業にてより高収益体制を目指し、近年新薬開発が進む核酸原薬の製造技術獲得や、より生産性の高いフロー合成技術の導入等を検討するとともに、創薬研究においても従来の低分子医薬品のみならず抗体薬物複合体(ADC:Antibody-Drug Conjugate)や標的タンパク質分解誘導薬(TPD:Target Protein Degrader)等のより高付加価値な創薬領域への事業拡大を図ります。当連結会計年度においては、㈱エーピーアイコーポレーションとの製・販・技各分野での協業を深化させました。足元の事業環境においては、低分子医薬品は緩やかに成長する一方、核酸医薬・遺伝子治療・細胞治療等の新規モダリティ(治療手段)が台頭しています。また、国際政情不安による原燃料価格の高止まりや円安に伴うコストアップも発生しています。今後については、CDMO事業では第五医薬品工場(少量・高薬理活性原薬製造設備)の収益最大化と、㈱エーピーアイコーポレーションの吸収合併による完全一体化及び事業運営効率化を図るとともに、創薬研究では早期ライセンスアウトモデルを継続し、マイルストンの着実な獲得を目指します。また、ポリイミド多孔質膜技術を基にライフサイエンス分野での新規事業領域への参入に挑戦していきます。 ②経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況2022年度を初年度とする中期経営計画において数値目標を以下のとおり掲げていますが、達成は困難な状況となっています。<主要項目・経営指標> 2022年度実績2022年度(原計画)2023年度実績2023年度(原計画)2024年度予想2024年度(原計画)売上高4,947億円5,100億円4,682億円5,200億円5,100億円5,200億円営業利益162億円345億円225億円410億円270億円400億円経常利益△87億円310億円363億円450億円370億円470億円親会社株主に帰属する当期純利益△70億円210億円290億円320億円295億円330億円売上高営業利益率(ROS)3.3%6.8%4.8%7.9%5.3%8%自己資本利益率(ROE)△1.9%5.6%7.5%8.2%7.1%8% ③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に関する情報(財務の基本方針)当社グループは、財務構造の健全性維持及び資金の効率的調達・運用を基本方針として財務活動を行っており、取締役会がその活動状況を監督しています。資金調達については、自己資金のほか、金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパー、社債の発行等により行っています。資金の流動性については、現金及び現金同等物に加え、緊急時の資金調達手段の確保等を目的として、一部の取引銀行とコミットメントライン契約を締結しています。 (キャッシュ・フロー及び流動性の状況)現中期経営計画では、スペシャリティ事業の成長に向けて重点的に資金を投下することとしており、必要に応じて投資の前倒しも行っています。高い競争優位性を持つスペシャリティ事業を成長させることにより、キャッシュ・フローの規模と安定性を高め、企業価値向上に繋げていきますが、その一方で、有利子負債はキャッシュ創出力・株主資本に見合う水準にコントロールします。投資の実行と回収等にタイムラグがあることから、一時的に財務的な負荷が高まる局面も想定されますが、中長期における財務指標の推移予測を行うことで、リスクの低減に努めています。当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの概況については、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ④キャッシュ・フローの状況」に記載しています。資金の使途については、当連結会計年度は設備投資に361億円、M&Aを含む投融資に37億円、研究開発費に103億円と、合計501億円を支出しています。このうち、スペシャリティ事業、ベーシック事業、及びその他への支出は、それぞれ51%、22%、27%となりました。設備投資の主要な案件は、ポリイミドフィルム工場やポリイミド原料モノマー(BPDA)工場、分離膜工場等の増設、米国DMC・EMC工場の建設です。財務体質を示す指標については、D/Eレシオは0.52倍、自己資本比率は51.8%となり、前連結会計年度と比較して若干改善しました。 (キャッシュ・アロケーション)現中期経営計画策定では3年間累計の営業キャッシュフロー(研究開発投資前)を1,820億円と想定していましたが、利益の未達によって380億円ほど減少し、現時点では1,440億円に留まる見込みです。他方で、分離膜、セラミックスにおける旺盛な需要に対応するべく前倒し投資を行っていることや、C1ケミカルの北米展開等の要因により、設備投資・投融資が中計原計画に対して300億円増加しています。この差額は、620億円の負債調達等により賄う予定です。また、研究開発投資や株主還元については中計原計画と概ね同額での実施を予定しています。この結果、有利子負債は中計原計画の想定から転じて増加することになりますが、2024年度末のD/Eレシオは0.63倍、自己資本比率は49.9%と予想しており、財務健全性は十分に維持できると見込んでいます。株主還元については、安定的な配当の継続を基本方針としており、連結総還元性向30%以上、株主資本配当率(DOE)2.5%以上としています。当連結会計年度は連結総還元性向、DOE、それぞれの目標を満たす1株当たり105円の配当となる見込みです。今後、現中期経営計画期間における積極的な成長投資の実施とその成果の刈り取りによって、更なる株主還元の充実を目指します。 (ポートフォリオ別 経営資源投入計画と進捗) (3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たり、決算日における資産・負債の報告数値及び偶発資産・負債の開示、並びに報告年度における収益・費用の数値に影響を与える将来に関する見積り及び仮定が必要であり、過去の実績やその他の様々な要因に基づき、見積り及び判断を行っています。実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りとは異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

※本記事は「UBE株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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