会社名 | デンカ株式会社 |
業種 | 化学 |
従業員数 | 連6514名 単4330名 |
従業員平均年齢 | 40.7歳 |
従業員平均勤続年数 | 16.1年 |
平均年収 | 7671029円 |
1株当たりの純資産 | 3568.69円 |
1株当たりの純利益 | 138.61円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 100円 |
配当性向 | 116.9% |
株価収益率(PER) | 16.9倍 |
自己資本利益率(ROE) | 4% |
営業活動によるCF | 362億円 |
投資活動によるCF | ▲225億円 |
財務活動によるCF | 7億円 |
研究開発費※1 | 22.23億円 |
設備投資額※1 | 46.73億円 |
販売費および一般管理費※1 | 691.24億円 |
株主資本比率※2 | 42.3% |
有利子負債残高(連結)※3 | 1623.68億円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】(経営方針、経営環境及び対処すべき課題)当社グループは、2023年度からスタートいたしました経営計画「Mission 2030」を推進してまいりました。この経営計画は、当社が大切にするコアバリュー、羅針盤であるパーパス、そして2030年に成し遂げたい務めとしてのミッションから構成される「ビジョン」のもと、「事業価値創造」、「人財価値創造」、「経営価値創造」の3つを成長戦略として、財務・非財務の双方に重点を置いた取り組みを実行し、企業価値の向上につなげていくものです。経営計画の中核をなす成長戦略「事業価値創造」について、初年度である2023年度の具体的な取り組みの一例をご紹介いたします。注力分野である「ICT & Energy」では、xEVのリチウムイオンバッテリーや洋上風力発電の高圧送電線ケーブル用途で使用されるアセチレンブラックについて、SCG Chemicals Public CompanyLimited(本社:タイ・バンコク)との共同出資により合弁会社を設立いたしました。併せて、タイへのアセチレンブラック生産プラントの建設も決定しており、今後の需要の伸長を見据え、生産・販売体制の強化と供給体制の安定化に取り組んでまいります。そして、「Healthcare」分野では、当社は、VLP Therapeutics Japan株式会社、一般財団法人阪大微生物病研究会と次世代 mRNA技術を用いたインフルエンザワクチン開発に関する共同研究契約を締結しました。次世代 mRNA技術は、改変が容易で迅速に製造ができる従来のmRNA技術の利点を有するとともに、安全で、より少ない接種量で十分な効果を示し、免疫が長く持続するワクチンの創出に資することが期待されています。当社は、インフルエンザの流行に備え、既にインフルエンザワクチンの生産能力を増強し多くの方にワクチンをお届けできる体制を構築しておりますが、人々のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)向上に貢献し続けるため、次世代のワクチン技術の開発にも着手しております。さらに、「Sustainable Living」分野では、当社と持分法適用会社である東洋スチレンは、使用済みポリスチレンの国内最大のケミカルリサイクルプラントを千葉工場に竣工させました。当社グループのケミカルリサイクルは、ポリスチレンを化学的に分解し、化学原料に戻してリサイクルするもので、新品同等の品質と物性で用途制限なく使用可能なリサイクル手法であるとともに、サーマルリサイクルに比べてCO2排出量が少なく、脱炭素・循環型社会の構築に資するものです。「事業価値創造」では、スペシャリティやメガトレンドに加え、サステナビリティも追求してまいります。 経営計画「Mission 2030」の初年度は、半導体需要低迷の長期化、中国経済の減速や世界的なインフレ等の経済環境の変化に加え、クロロプレンゴムの需要減等の理由により、前経営計画「Denka Value-Up」で計画された先行投資等のコストの増加に見合った販売数量の増加を十分に受けることができず、政策保有株式の売却による特別利益はあったものの、能登半島地震の影響やノロウイルスワクチン開発中止に伴う減損損失も重なり厳しい業績を余儀なくされました。今後、先行投資した設備が続々と稼働する予定であり、その需要を確実に取り込みながら、経営計画「Mission 2030」における3つの成長戦略を推し進める長期的な戦略に変更はありません。しかしながら、経営計画の前提条件が変動したことへの対応が喫緊の課題であり、財務面のコントロールも行いながら、業績を成長軌道に回帰させてまいります。具体的な対応策として、まずは、売却・撤退も含めたポートフォリオ変革を加速いたします。クロロプレンゴム事業の収支改善を最優先事項として位置付け、需要動向と最適生産能力等の精査を行い、抜本的な対策を決定いたします。また、スペシャリティ、メガトレンド、サステナビリティの3要素を備えることが困難な事業については、最終施策の見極め期限を設けるなど、ポートフォリオ変革を加速させ経営資源を成長分野に集中することで、業績面や財務面の改善を図ります。次に、投資計画の見直しを行います。投資案件の優先順位を明確にし、より厳選することに加えて、環境の変化に伴う不急な案件は先送りするなど、厳選化と実施時期等を見直します。さらには、経営トップの全面的なコミットメントのもと、全社をあげたコストダウンプロジェクトを強力に推進いたします。今回のコストダウンプロジェクトは単にコスト削減のみを目的とするのではなく、今まで当社が行っていなかったベストプラクティスを導入することによって、コストダウンや業務効率化のほか従業員の成長にもつなげ、「事業価値創造」のみならず、「人財価値創造」と「経営価値創造」に貢献するよう、全社一丸体制で取り組み、利益水準を再び成長軌道に戻してまいります。 2023年度は、製造会社として存続の基盤ともいえる「製造現場での安全確保」と「製品の品質保証」を脅かす重大な事象が発生いたしました。2023年6月14日に青海工場(新潟県糸魚川市)内にて製造設備のメンテナンス工事作業中に配管が破裂する事故が発生しました。本事故により、工事に携わっていた協力会社の1名の方が亡くなられ、2名の方が負傷されました。当社は事故発生以降、関係当局による事故原因の調査に全面的に協力するとともに、当社においても専門的な調査により徹底した事故原因の究明および再発防止策の策定を行うため、2023年7月11日に社外の有識者および専門家を中心に構成される事故調査委員会を設置しました。そして、2024年1月11日に、同委員会から最終報告書※1を受領しました。同委員会からの提言を重く受け止め、再発防止対策の確実な実行と安全文化の醸成に、鋭意取り組んでおります。また、当社は、当社および持分法適用関連会社である東洋スチレン株式会社が製造・販売する樹脂製品の一部において、米国の第三者安全科学機関であるUnderwriters Laboratories Limited Liability Company等の認証に関する不適切な行為が判明し、2023年5月29日に公表するとともに、当社グループと利害関係を有しない社外有識者による外部調査委員会を設置し、本件不適切行為に関する徹底的な調査と原因究明、再発防止策の提言を委嘱いたしました。そして、2023年12月11日に同委員会から、調査報告書※2を受領しました。調査報告書では、不適切事案の申告に対する心理的安全性確保のための体制不足など、少なくない組織課題をご指摘いただきました。調査報告書の指摘を真摯に受け止め、コンプライアンス最優先の経営姿勢を当社グループ全体に浸透させるべく、抜本的な対応策を全力で進めております。両事案に起因する業績影響は特段ありませんでしたが、「製造現場での安全確保」と「製品の品質保証」は製造会社としての必須条件であり、当社は、この2つの事案を非常に重く受け止め、関係役員の報酬の一部を返上いたしました。再発防止策として、ガバナンス、マネジメント、プロセス、人財育成まで幅広く対応することで、再びこのような事態を引き起こすことがないよう、確実に対処していく所存です。 2024年4月9日(現地時間)、米国環境保護庁(以下「EPA」という)は、当社米国子会社のデンカパフォーマンスエラストマーLLC(以下「DPE」という)を含むクロロプレンゴム製造施設に適用される新たな化学物質の大気排出規制を発表しました。新たに発表された化学物質の大気排出規制(以下「新規制」という)の内容は、米国におけるクロロプレンゴム製造施設に対して、各種の排出対策を取ることにより、クロロプレンモノマー※3排出量の大幅な削減を求めるものとなっております。新規制は、EPAが行ったRTR(Riskand Technology Review)の結果を受けたものであり、そのベースはEPAが2010年に統合リスク情報システム(IRIS / Integrated RiskInformation System)で行ったクロロプレンモノマーの発がん性評価が用いられています。これに対し、DPEは、IRISにおいてクロロプレンモノマーの発がん性が過剰に評価されているとして、かねてからEPAに対して最新の科学に基づき発がん性評価を正当に見直しするよう求めておりました。なお、DPEは、2015年11月に同事業を取得以降、一貫してルイジアナ州の排出基準を遵守して操業しており、また、自発的な環境投資を行い、2019年時点で2014年比85%のクロロプレンモノマーの排出量削減を達成しております。今回の新規制等においては、最新の科学に基づいた正当な発がん性評価の見直しが行われたとは考えられず、また、DPEの操業継続に重大な影響を与える可能性のある内容となっていることから、DPEでは、排出量削減対策の実施に関する猶予期間の定めの停止や、新規制の内容自体の見直しを求め、米国連邦控訴裁判所への提訴を行いました。DPEでは、新規制等の見直しに向け、引き続きあらゆる措置を講じていくこととしております。 当社グループ全体を挙げて、今一度、当社が大切にする「挑戦」「誠実」「共感」というコアバリューを見つめ、「化学の力で世界をよりよくするスペシャリストになる。」というパーパスの実現を目指して、「スペシャリティ」「メガトレンド」「サステナビリティ」を備えた3つ星事業へ集中するべく、新規事業の開発、既存事業の改革を行う「事業価値創造」、そして「人財価値創造」と「経営価値創造」にグループ一丸となって邁進してまいります。 ※1 「青海工場クロロプレンモノマー製造設備事故調査最終報告書」https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1193/20240111_denka_omi_finalreport.pdf※2 「当社および持分法適用関連会社の樹脂製品における第三者認証等の不適切行為に関する外部調査委員会による調査報告書ならびに当社グループの対応策の公表について」https://www.denka.co.jp/storage/news/pdf/1185/20231211_denka_report_measures.pdf※3 クロロプレンモノマー:クロロプレンゴムの原料となる化学物質 ◇新たなビジョンと新経営計画「Mission 2030」 ~OUR “NEW” VISION & Mission 2030~ 2023年4月、デンカグループは新たな挑戦をはじめました。これまで指針としてきた「The Denka Value」(企業理念)、Denkaの使命、Denkaの行動指針は、従業員の声をふまえ、より未来のデンカを見据えた新たな「ビジョン」へと進化。同時に、2023~2030年度の8ヵ年を対象とする新経営計画「Mission 2030」が始動しました。 デンカの新たなビジョン新たなビジョンは、デンカのDNAであるコアバリューを土台とし、デンカを導く北極星となるパーパス、2030年に成し遂げたい務めとしてのミッションを重ねた構成とすることで、文字の域を超え、全従業員が自分ごと化できる新しいデンカの未来像を表しました。 コアバリュー「コアバリュー」とは、デンカのDNA。さまざまな判断をする上での拠り所にもなります。「挑戦」「誠実」「共感」は、デンカが脈々と受け継いできた姿勢を改めて言語化したものです。これからも一層大切にしていくべき信条です。 パーパス「パーパス」とは、デンカを導く北極星。デンカが存在する根本的理由です。デンカは世界でどのような存在でありたいのか、デンカだからこそできることは何かを突き詰めて考え、「化学の力」「世界をよりよくする」「スペシャリスト」といった言葉一つひとつを選び出しました。 ミッション「ミッション」は、デンカの務め。大胆で説得力のある野心的目標です。「コアバリュー」や「パーパス」が普遍性を持つものであるのに対して「ミッション」は明確なゴールと期限があり、例えるならば“登るべき山”です。2030年に、その頂上にたどり着くことを目指し、具体的な戦略を経営計画「Mission 2030」に落とし込んでいます。 コーポレートメッセージこのデンカのビジョンを社内外に分かりやすく伝達する言葉としてコーポレートメッセージ「世界に誇れる、化学を。」を創りました。世界に誇れる唯一無二の存在(=スペシャリスト)として、化学の力で世界をよりよくすることを目指すという想いを込めました。 (ご参考)経営計画「Mission 2030」新たなビジョンの実現に向けて、2030年をゴールに取り組む経営計画が「Mission 2030」です。事業価値創造、人財価値創造、経営価値創造の3つを成長戦略として、企業価値向上に取り組みます。事業価値創造では、デンカの全ての事業を、スペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素をそなえた「3つ星事業」とすることを目指します。 2030年の主なKPI目標事業価値創造 人財価値創造 経営価値創造売上高6,000億円以上 平均研修金額(21年度比)2倍 プロセス革新投資23-30年度 500億円3つ星事業100% 営業利益1,000億円以上 人権リスク特定と対応プロセス確立 営業利益率15%以上 ROE15%以上 女性/外国籍/経験者採用者の管理職比率50% 労働災害度数率(21年度 1.1)0.2以下ROIC10%以上 投資決裁額23-30年度 5,400億円 高リスクサプライヤー数0件総還元性向50%水準 CO2排出量 (13年度比)60%削減 従業員エンゲージメント可視化と継続的な改善 重大品質事故発生件数0件再生可能エネルギー 発電最大出力 (21年度 133MW)150MW 重大コンプライアンス違反件数0件 3つの成長戦略 <事業価値創造>事業価値創造では、想定される未来世界とメガトレンドから導き出された「3つの注力分野」である、ICT & Energy(アイシーティー・アンド・エナジー)、Healthcare(ヘルスケア)、Sustainable Living(サステナブル・リビング)に重点を置きます。そして、2030年までにスペシャリティ・メガトレンド・サステナビリティの3要素をそなえた「3つ星事業」を100%にしていきます。また、「3つ星事業」への転換が困難な事業については、売却・撤退を含め、ポートフォリオ変革を進めていきます。そのために、8年間合計で戦略投資3,600億円、研究開発費1,800億円をかけて、2030年に営業利益1,000億円以上を目指します。並行して、地球への貢献と、企業のさらなる社会的価値向上を目指し、8年間合計で850億円の環境投資を行い、サステナビリティを追求します。 3つの注力分野ICT & Energy 2030年営業利益目標 450億円 メガトレンド再生可能エネルギーモビリティー大変革半導体やデバイス需要拡大製品次世代高速通信xEV・再生可能エネルギー 球状シリカ、球状アルミナ、キャリアテープ用シート・トップカバーテープ、放熱材料、エミッター、低誘電有機絶縁材料アセチレンブラック、窒化ケイ素、セラミックス基板、球状シリカ、球状アルミナ 方針最先端素材を供給し、よりよい社会を実現 Healthcare 2030年営業利益目標 400億円 メガトレンド医療ニーズ高度化革新的な医療技術製品予防診断治療 インフルエンザワクチン自動分析装置用試薬抗原検査キットがん治療用ウイルスG47Δ製剤 方針予防・診断・治療の領域で世界の人々のクオリティ・オブ・ライフ向上 Sustainable Living 2030年営業利益目標 150億円 メガトレンド食料・水資源枯渇インフラ需要増大製品食糧インフラ生活用品 バイオスティミュラント特殊混和材LEAF 高機能スチレン系樹脂サステナブルプラスチック「PLATIECOR」 方針安全・安心・快適な日々の暮らしの実現 サステナビリティの追求方針カーボンニュートラルの実現施策・低炭素アセチレンチェーンの確立を含むポートフォリオ変革実施・CO2分離・回収・利用技術の開発と実装化・水力発電増強、太陽光発電所新設によるグリーンエネルギー拡大サステナブルな都市と暮らしの充実・スチレン系包装材料のサーキュラーエコノミー推進・CO2コンクリート固定化技術の確立環境の保全・環境負荷の最小化・廃棄物ゼロエミッション継続・自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に基づく生物多様性・水資源保全等の自然関連リスクへの対応 <人財価値創造>社員一人ひとりが自己実現と成長を実感できる企業を目指し、人財投資と制度改革を実現します。方針戦略人財育成体制の強化将来の経営層育成と、全社一貫の教育体系の構築および自ら学ぶ文化の醸成ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンの推進多様な考え方を持った人間が活躍できる職場環境・制度・文化の醸成健康経営と働き方改革「明日も来たくなる職場」のための制度改革の推進 <経営価値創造>ESG経営の観点から、企業存続の前提となる経営基盤の強化に取り組みます。方針戦略プロセス革新ビジネスモデル・組織の変革と生産性向上、社内デジタル人財の育成人権の尊重国連ビジネスと人権に関する指導原則および国連グローバルコンパクトに基づく、人権方針制定と人権尊重の徹底安全最優先グループ全体で本質安全化、ルールの整備と安全な職場環境づくりの推進サプライチェーン・ マネジメントサプライチェーン一体となった持続的な付加価値向上製品安全信頼される製品とサービスを提供し、社会と環境の持続的成長に貢献コーポレートガバナンス高度化 高い倫理観に基づく透明性・公平性を確保した、より高度で実効性のあるコーポレートガバナンス体制の構築 財務戦略 ROEとROICの改善下記施策を通じて、ROE(株主資本利益率)とROIC(投下資本利益率)を改善させ、企業価値向上を図ります。 18-22年度平均30年度目標施策ROE8.4%15%以上・3つの価値創造による収益性と効率性向上・ROIC評価による事業の選択と集中・最適資本構成の追求(財務レバレッジ活用)ROIC7.0%10%以上 キャッシュアロケーション~総還元性向50%水準を維持~営業キャッシュフローと負債を有効に活用して、8年間合計で7,400億円のキャッシュを生み出し、それを投資に5,700億円(注)、株主還元に1,700億円(総還元性向50%水準)配分します。 (億円) (億円)キャッシュイン累計(年平均) キャッシュアウト累計(年平均) Denka Value-Up5ヵ年 Mission 20308ヵ年 Denka Value-Up5ヵ年Mission 20308ヵ年営業CF1,717(343)6,500(813) 投資CF戦略 700 (140)3,600 (450)資産売却121100 一般1,093 (219)2,100 (263)借入554800 小計1,793 (359)5,700 (713)合計2,392(478)7,400 (925) 株主還元 (総還元性向50%水準)599 (120)1,700 (213) 合計2,392 (478)7,400 (925) (注)2024年5月10日に公表した「2024年3月期 決算説明会資料」に記載のとおり、投資案件の優先順位明確化や、投資計画の更なる厳選、不急案件のスケジュール見直しなどにより、1,000億円削減し、4,700億円とすることを目指します。 ※文中の将来に関する事項は、計画発表時において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。 ① 財政状態及び経営成績の状況当期のわが国経済は、物価上昇の影響を受け個人消費が伸び悩んだほか、設備投資も力強さを欠くなど、景気は緩やかな回復にとどまりました。世界経済は、中国で景気の減速感が強まったほか、欧米でも物価高や金融引き締めが進み、これらを背景に先行きに対する不透明感が高まりました。このような状況下、当社グループは、本年度より新経営計画「Mission 2030」をスタートいたしました。新たに制定したビジョンを拠り所に「事業価値創造」、「人財価値創造」、「経営価値創造」の3つを成長戦略として、2030年度をゴールに財務・非財務の双方に重点をおいた取り組みを実行して企業価値向上につなげていくものです。成長戦略の中核をなす「事業価値創造」では、当社の持つ卓越した技術に裏付けられた「スペシャリティ」に、社会の要請である「メガトレンド」、そして事業運営の必須要件である「サステナビリティ」を加えた3要素を併せ持つ事業を「3つ星事業」と定義し、当社グループのポートフォリオを集中いたします。また、社員一人ひとりが共感力を発揮し、自己実現と成長を実感できる企業を目指すとともに、ESG経営の観点からコーポレートガバナンスの高度化などを通じた経営基盤の更なる強化に取り組むことで、人財価値と経営価値を高めてまいります。当期の業績は、売上高は、前年度に実施した価格改定の効果や円安による手取り増がありましたが、電子・先端製品やクロロプレンゴムなど主力製品の販売数量が減少し、3,892億63百万円と前年同期に比べ182億95百万円(4.5%)の減収となりました。収益面では、営業利益は、主力製品の販売数量減少やスペシャリティ化進展のためのコストの増加があり、133億76百万円(前年同期比189億47百万円減、58.6%減益)となり、経常利益は54億74百万円(前年同期比225億50百万円減、80.5%減益)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、事業整理損を特別損失として計上する一方、政策保有株式の縮減を進め投資有価証券売却益を特別利益に計上し、119億47百万円(前年同期比8億21百万円減、6.4%減益)となりました。 <電子・先端プロダクツ部門>高純度導電性カーボンブラックは、xEV向けは当期の前半は好調に推移しましたが、後半に入り需要鈍化の影響を受け、高圧ケーブル向けは欧州での敷設工事遅延による一時的な減少があり減収となりました。球状アルミナは、xEV向けは需要が回復傾向にあるものの、民生向けは需要低調が続き減収となりました。このほか、電子部品・半導体関連分野向け高機能フィルムや球状溶融シリカフィラーはパソコン、スマートフォンなど民生向けの需要減により減収となり、自動車産業用向けの金属アルミ基板“ヒットプレート”の販売も前年を下回りました。この結果、当部門の売上高は878億39百万円(前年同期比57億1百万円(6.1%)減収)となり、営業利益は90億22百万円と前年同期に比べ89億53百万円(49.8%)の減益となりました。 <ライフイノベーション部門>POCT検査試薬は、新型コロナウイルス抗原迅速診断キットは前年を下回りましたが、インフルエンザの流行により新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時診断キットが増加し、増収となりました。このほか、その他の検査試薬の販売は前年並みとなり、インフルエンザワクチンの出荷は前年並みにとどまりました。この結果、当部門の売上高は470億78百万円(前年同期比4億47百万円(0.9%)減収)となり、営業利益は117億33百万円と前年同期に比べ26億45百万円(18.4%)の減益となりました。 <エラストマー・インフラソリューション部門>クロロプレンゴムは、価格面では昨年度に実施した段階的な価格改定の寄与や円安による手取り増がありましたが、販売数量は、全般的な需要減や能登半島地震による一時的な操業停止の影響を受けて減少し、減収となりました。このほか、特殊混和材などの販売は概ね前年並みとなりましたが、肥料の販売は前年を下回りました。この結果、当部門の売上高は1,113億54百万円(前年同期比124億72百万円(10.1%)減収)となり、92億95百万円の営業損失(前年同期は営業損失11億円)となりました。 <ポリマーソリューション部門>デンカシンガポール社のMS樹脂は、販売数量が前年を上回り増収となりました。一方、スチレンモノマーは原材料価格の下落に応じた販売価格の見直しを行ったことから減収となり、透明樹脂は中国経済減速の影響を受け販売数量が減少しました。このほか、食品包材用シートおよびその加工品や、合繊かつら用原糸“トヨカロン”の販売も低調に推移しました。この結果、当部門の売上高は1,242億40百万円(前年同期比33億29百万円(2.6%)減収)となり、1億2百万円の営業損失(前年同期は営業損失12億28百万円)となりました。 <その他部門>YKアクロス株式会社等の商社は、取扱高が概ね前年並みとなりました。この結果、当部門の売上高は187億50百万円(前年同期比36億56百万円(24.2%)増収)となり、営業利益は18億96百万円と前年同期に比べ6億15百万円(24.5%)の減益となりました。 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ240億85百万円増加の6,162億44百万円となりました。 流動資産は、現金及び預金の増加などにより前連結会計年度末に比べ136億54百万円増加の2,654億47百万円となりました。固定資産は有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ104億30百万円増加の3,507億96百万円となりました。 負債は、仕入債務の増加などにより、前連結会計年度末に比べ75億22百万円増加の2,993億29百万円となりました。 非支配株主持分を含めた純資産は前連結会計年度末に比べ165億63百万円増加の3,169億15百万円となりました。 以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の50.1%から49.9%となり、1株当たり純資産は3,438円28銭から3,568円69銭となりました。 ② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、353億86百万円となり、前連結会計年度末と比べ151億86百万円の増加となりました。なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は以下のとおりです。営業活動によるキャッシュ・フローは、運転資金の減少などにより、362億60百万円の収入となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資の支払いなどが増加した一方で、政策保有株式の売却を進めたことにより、225億72百万円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、連結子会社設立に伴う非支配株主からの払込みによる収入などにより、7億12百万円の収入となりました。 なお、キャッシュ・フロー指標のトレンドは以下のとおりです。 2020年3月期2021年3月期2022年3月期2023年3月期2024年3月期自己資本比率(%)50.050.851.750.149.9時価ベースの自己資本比率(%)39.272.552.639.832.8債務償還年数(年)3.23.43.219.04.8インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)49.349.845.48.121.7 自己資本比率………………………………自己資本/総資産時価ベースの自己資本比率………………株式時価総額/総資産債務償還年数………………………………有利子負債/営業キャッシュ・フローインタレスト・カバレッジ・レシオ……営業キャッシュ・フロー/利息支払額(注) 1.いずれの指標も連結ベースの財務数値により算出しております。2.株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。3.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。 ③ 生産、受注及び販売の実績当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品がほとんどであるため、セグメントごとに生産規模および受注規模を金額あるいは数量で示すことは行っておりません。このため「生産、受注及び販売の実績」については、「①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントの経営成績に関連付けて記載しております。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当期のわが国経済は、物価上昇の影響を受け個人消費が伸び悩んだほか、設備投資も力強さを欠くなど、景気は緩やかな回復にとどまりました。世界経済は、中国で景気の減速感が強まったほか、欧米でも物価高や金融引き締めが進み、これらを背景に先行きに対する不透明感が高まりました。このような状況下、当社グループは、本年度より新経営計画「Mission 2030」をスタートいたしました。新たに制定したビジョンを拠り所に「事業価値創造」、「人財価値創造」、「経営価値創造」の3つを成長戦略として、2030年度をゴールに財務・非財務の双方に重点をおいた取り組みを実行して企業価値向上につなげていくものです。成長戦略の中核をなす「事業価値創造」では、当社の持つ卓越した技術に裏付けられた「スペシャリティ」に、社会の要請である「メガトレンド」、そして事業運営の必須要件である「サステナビリティ」を加えた3要素を併せ持つ事業を「3つ星事業」と定義し、当社グループのポートフォリオを集中いたします。また、社員一人ひとりが共感力を発揮し、自己実現と成長を実感できる企業を目指すとともに、ESG経営の観点からコーポレートガバナンスの高度化などを通じた経営基盤の更なる強化に取り組むことで、人財価値と経営価値を高めてまいります。この結果、当期の業績は、売上高は、前年度に実施した価格改定の効果や円安による手取り増がありましたが、電子・先端製品やクロロプレンゴムなど主力製品の販売数量が減少し、売上高は減収となりました。収益面では、主力製品の販売数量減少やスペシャリティ化進展のためのコストの増加などにより、営業利益および経常利益は、それぞれ大きく減益となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、事業整理損を特別損失として計上する一方、政策保有株式の縮減を進め投資有価証券売却益を特別利益に計上したため、前年度から若干の減益となりました。 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識および分析・検討内容は、以下のとおりであります。電子・先端プロダクツ部門は、高純度導電性カーボンブラックでは高圧ケーブル向けが欧州での敷設工事遅延による一時的な減少があり、球状アルミナや電子部品・半導体関連分野向け高機能フィルム、球状溶融シリカフィラーは民生向けの需要が減少しました。コスト面では増産体制構築や販売体制強化による費用が増加したことなどから、前年から大きく減益となりました。ライフイノベーション部門は、POCT検査試薬は、新型コロナウイルス抗原迅速診断キットは前年を下回りましたが、インフルエンザの流行により新型コロナウイルスとインフルエンザウイルスの同時診断キットが増加しました。また、インフルエンザワクチンの出荷は前年並みにとどまりました。コスト面ではインフルエンザワクチンの原料価格高騰や研究費の増加等により、前年から減益となりました。エラストマー・インフラソリューション部門は、クロロプレンゴムは、全般的な需要減や能登半島地震による一時的な操業停止の影響を受けて減少し、減収となりました。加えて米国子会社における修繕費や労務費等の増加などにより、前年から営業損失が拡大しました。ポリマーソリューション部門は、デンカシンガポール社のMS樹脂は、販売数量が前年を上回ったものの、透明樹脂は中国経済減速の影響を受け販売数量が減少しました。一方、スチレンモノマーが非定修年であったことによりコストが減少し、前年から営業損失が縮小しました。 ② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報当社グループの当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、経営計画「Mission2030」にもとづき設備投資の支払いが増加した一方で、営業活動によるキャッシュ・フローが362億60百万円の収入となり、また政策保有株式の売却を進めた結果、当連結会計年度末のネット有利子負債残高は前連結会計年度末比で105億48百万円減少し、1,389億82百万円となりました。なお、自己資本比率は49.9%、ネットD/Eレシオは0.45倍となり、引き続き良好な財政状態を維持しているものと判断しております。資本の財源及び資金の流動性については、当社グループでは将来の安定的な成長を持続するため、良好な財務バランスを維持することが重要と考えており、資金需要に見合った資金調達を行うことを基本的な方針としております。当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金、設備投資資金等であり、必要資金の調達については、自己資金を主とし、運転資金の一部を短期借入金やコマーシャル・ペーパーによって、設備資金等の長期資金の一部を長期借入金や社債によって外部調達しております。資金の流動性については、適正な水準の現預金を保持した上で、不測の事態に対応するため、取引金融機関と貸出コミットメント契約を締結することで流動性を確保しております。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して作成されております。連結財務諸表の作成にあたっては、重要な会計方針と合理的と考えられる見積りに基づき、収益、費用、資産、負債の計上について判断しております。当社グループの連結財務諸表の作成においては、例えば一般債権に対する貸倒引当金の引当については主として過去の貸倒実績率を、繰延税金資産の計上については将来の税務計画を、退職給付債務については、昇給率、割引率などを使用して見積っておりますが、見積りにつきましては不確実性があるため、実際の結果と異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、主なものは以下のとおりであります。 (a) 固定資産(のれんを含む)当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産または資産グループについて、当該資産または資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローを見積り、その総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失として計上しております。また、年次の減損テストが必要な場合、のれんを含む資産グループの公正価値を算定し、その帳簿価額が公正価値を超過する場合には、公正価値まで減額を行います。将来キャッシュ・フローの見積りにあたっては、事業計画をもとに最新の事業環境に関する情報等を反映しているほか、必要に応じて外部専門家による評価を活用しております。減損損失の認識及び測定に当たっては、慎重に検討をおこなっておりますが、将来の予測不能な事業環境の著しい悪化等により見直しが必要となった場合、減損損失が発生する可能性があります。 (b) 繰延税金資産の回収可能性繰延税金資産の回収可能性は、収益力もしくはタックス・プランニングに基づく将来の課税所得の十分性により判断しており、課税所得の算定にあたっては、各納税主体の事業計画をもとに最新の事業環境に関する情報等を反映し見積っております。当該見積り及び当該仮定について、将来の予測不能な経営環境の著しい悪化等により見直しが必要となった場合、評価性引当額が変動し損益に影響を及ぼす可能性があります。 (c) 退職給付債務の算定当社グループでは、簡便法を採用している連結子会社を除き、確定給付制度の退職給付債務および関連する勤務費用について、数理計算上の仮定を用いて算定しております。数理計算上の仮定には、割引率、昇給率、期待運用収益率等の計算基礎があり、これらの計算基礎については、例えば期待運用収益率であれば前提となる企業年金の運用方針などを、定期的かつ合理的な見直しをおこなっております。当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合、退職給付債務および関連する勤務費用が変動する可能性があります。 |
※本記事は「デンカ株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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