会社名 | 双日株式会社 |
業種 | 卸売業 |
従業員数 | 連22819名 単2027名 |
従業員平均年齢 | 41.4歳 |
従業員平均勤続年数 | 15年 |
平均年収 | 12471658円 |
1株当たりの純資産 | 2264.8円 |
1株当たりの純利益 | 362.01円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 135円 |
配当性向 | 37.3% |
株価収益率(PER) | 11倍 |
自己資本利益率(ROE) | 16.6% |
営業活動によるCF | 1121億円 |
投資活動によるCF | 124億円 |
財務活動によるCF | ▲1865億円 |
研究開発費※1 | -円 |
設備投資額※1 | -円 |
販売費および一般管理費※1 | 692.83億円 |
株主資本比率※2 | 28.6% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】(1) 会社の経営の基本方針当社は、双日グループ企業理念、双日グループスローガンを掲げ、企業理念にある「豊かな未来」の創造に向け、当社グループの事業基盤拡充や持続的成長などの「双日が得る価値」と、国・地域経済の発展や人権・環境配慮などの「社会が得る価値」の2つの価値の実現と最大化に取り組んでいます。 (双日グループ企業理念) 双日グループは、誠実な心で世界を結び、新たな価値と豊かな未来を創造します。 (双日グループスローガン)New way, New value (双日の価値創造モデル) 「豊かな未来」の創造、「2つの価値」の実現に向けて、当社では人材を最も重要な経営資源と考え、「人財」と表記し、価値創造モデルの中心に据えています。世界中のニーズを把握し、価値を生み出す人財力を高めていくことが、双日の価値創造の源泉です。実効性の高い戦略と充実したコーポレート・ガバナンスのもと、常に新しい発想を持ち、トレーディング・権益投資・事業投資を通じた機能を発揮して、将来を見据え、外部環境の目まぐるしい変化やニーズの多様化に先駆けたスピード感あるビジネスを展開しています。また、世界各国に広がる事業拠点やパートナーシップ、それぞれの地域で長年にわたり育んできたお客様との信頼関係やブランド力など、築き上げてきた確固たる事業基盤が、当社の持続的な成長を支えています。当社が創造した価値は、「社会が得る価値」として還元され、ステークホルダーからの信頼獲得につながります。また、創造した価値は、「双日が得る価値」として、当社の人材基盤やビジネスノウハウといった各事業基盤を拡充するものとして還元され、当社の競争力強化や新たなビジネスチャンスの増加につながります。 また、このような企業理念のもと、2030年における「目指す姿」として「事業や人材を創造し続ける総合商社」を掲げており、総合商社としての使命である、必要なモノ・サービスを必要なところに届けつつ、マーケットニーズや社会課題に応える事業や人といった価値を創造し続けることにより、持続的な企業価値向上を実現しています。 (2) 「中期経営計画2023」の振り返り「中期経営計画2023」は、2030年の目指す姿「事業や人材を創造し続ける総合商社」に向けた第一歩と位置づけ、持続的な企業価値向上に取り組んできました。稼ぐ力の強化によりROEを向上させ、非財務面も含めた当社取り組みの透明性を高めることにより資本コストの低減に努めると共に、安定的・継続的な配当政策に加え、機動的な自社株買いを行いました。これら取り組みの結果として、定量計画については全ての項目を達成することができました。 <「中期経営計画2023」の定量計画と実績> 人材戦略については、人事施策の効果・浸透度を定量的に測定しながら人的資本経営を実行するため、2021年6月に以下の人材KPIを設定しました。外部環境や人事施策の浸透状況に応じて柔軟な見直しができるよう動的KPIとし、半期ごとに経営会議及び取締役会において進捗の確認、及び人事施策の検証を行っています。 人材KPI(項目)実績目標女性総合職 海外・国内出向経験割合48%50%(2023年度)デジタル基礎研修修了者総合職100%100%(2023年度)海外グループ会社CxO45%50%(2025年度)チャレンジ指数期末評価終了後に確定予定70%(2023年度)二次検診受診率77%70%(2023年度)育児休暇取得率( )は男性社員100%※(100%)100%(2023年度) ※当社実質ベース 2023年度に子が出生した社員の育児休暇取得率には、2024年度に取得を計画中の者(男性社員4名)を含む。 (3) 「中期経営計画2026」について① 「中期経営計画2026」の位置づけ “Set for Next Stage”「中期経営計画2023」の進捗・成果を踏まえ、「中期経営計画2026」のスタートに際し、新たにNext Stageとして現在の収益水準と企業価値を2倍に成長させるとの定量ターゲットを定めました。 「中期経営計画2026 – Set for Next Stage – 」は、このNext Stageを見据えて、成長基盤と人的資本の強化に取り組む中期経営計画と位置づけています。Next Stageに到達するためのキーメッセージとなる「双日らしい成長ストーリー」の実現に向け、成長基盤と人材への積極投資を行っていきます。 ② 定量目標「中期経営計画2026」における定量目標として以下を掲げています。将来の成長に向けて、財務規律を堅持した上で6,000億円の投資を実行します。ROEについては、当社が認識する株主資本コスト9~10%を超える12%超を確保し、企業価値と株主価値の向上を図ります。株主還元については、基礎的営業キャッシュフローの3割程度を充当するというキャッシュアロケーション方針に基づき行っていきます。※株主資本:その他の資本の構成要素(為替換算調整勘定、その他評価差額金、繰延ヘッジ損益等)を除外した前期末自己資本※株主資本DOE:支払配当÷株主資本 ③ Next Stageへの基本方針双日らしい成長ストーリーの実現に向け、成長基盤と人的資本を強化するために、以下の基本方針に沿って独自性・強みをさらに磨き上げることで、競争優位を確立します。 “競争優位・成長の追求 ? 双日らしさ”双日はこれまで100年以上にわたり、「先読み」「変革」「挑戦」を通じて、必要なモノ・サービスを必要なところに届けることを一貫して使命・ミッションとしてきました。「中期経営計画2026」においてはそれらを踏襲しつつ、「スピード」、「共創・共有」、「マーケットイン“Glocal”」、「パートナーシップ」、「ヒトの魅力(ちから)」を新たな要素として再定義しました。双日DNA から生まれる独自性・双日らしさを常に進化させ、当社競争力の源泉とし、持続的な成長を実現します。 ④ 成長基盤の強化1) 戦略的強化領域「中期経営計画2023」で定めた3つの注力領域における実績・進捗を踏まえ、以下を戦略的強化領域として再設定しました。加えて、全ての事業領域に必要不可欠な要素として「DX(デジタルトランスフォーメーション)」と「GX(グリーントランスフォーメーション)」領域を全社横断的に強化します。また、ベトナムで確立されつつあるような強みのある成長市場におけるビジネスの面展開を、さらに他地域においても推進していきます。 DX(デジタルトランスフォーメーション)については、「中期経営計画2023」でのDigital開拓期を経て、以下の3つの柱を通じ“Digital in All”による価値創造を図ります。 ・デジタルビジネスの収益化-さくらインターネットとの戦略的提携と協業による成長の取り込み-双日グループのデジタル事業会社である日商エレクトロニクスのさらなる機能強化・収益力の向上など によるデジタルビジネスの収益の塊化・既存ビジネスとデジタルの掛け合わせによる稼ぐ力、価値・競争力の向上・デジタル人材の拡充、データ・AI活用のためのデジタル基盤の整備・構築 GX(グリーントランスフォーメーション)に関しては、2050年に向けた長期ビジョン「サステナビリティ チャレンジ」での脱炭素目標に向けた取り組みを加速させます。(詳細は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ チャレンジ ① 脱炭素社会実現への挑戦(24~28ページ)」を参照)GX分野の技術革新や社会への普及速度を見極め、そのステージに合ったソリューションを自ら創造・提供することを目的とし、2024年1月に経営直轄の専門組織を設置しました。GXに資する事業に積極的に資源配分することで、カーボンニュートラル社会の実現と当社の企業価値拡大の両立を目指します。 2) 双日らしい成長ストーリー当社の示す双日らしい成長ストーリーの事例としては、以下が挙げられます。 “成長市場 面展開”当社に知見があり、成長が期待できる市場において、関連性のある事業・領域に集中的に投資を行うことで、点から線に、線から面に展開し、市場ニーズ・成長を取り込みます。そのような事業をベトナム以外においても早期に形成し、その国・地域と共に成長していくストーリーの実現を目指します。現場に密着した事業運営を行い、創意工夫をこらしてビジネスを作り続け、パートナーと共に成長していきます。 “ビジネスモデルの変革・深化”当社はマーケットインの徹底により、社会ニーズに合わせて、様々なビジネスを変革してきました。例えば、エネルギー事業においては石油ガスの輸入トレードから始まり、発電プラントの輸出、大型発電所の開発・運営、近年では再エネや省エネを掛け合わせたEnergy as a Serviceといった事業を開始するなど、時代と共に変革を遂げてきました。当社の事業創造DNAである「先読み力」、「変革」、「挑戦」に加え、双日らしさを構成するマーケットイン、パートナーシップといった強みを活かした成長ストーリーの事例であり、今後も各事業領域・市場において変革と成長を続けていきます。 “バリューチェーン上の事業領域の拡大”情報技術の進展やグローバル化により、様々なバリューチェーンにおいて中間業種の機能が低下し、付加価値の源泉が川上と川下に移行してきました。当社は従来より川中であるトレードビジネスを中心に営んできましたが、幅広い業界での知見・接点を活かし、付加価値の高い領域に積極展開することで、自らの事業ポートフォリオを変革し、事業価値の最大化を図っていきます。 3) 新規投資の方針新規投資に関しては、3ヶ年6,000億円の成長投資並びにヒトへの投資を計画しています。ポートフォリオを強化する成長投資においては競争優位性や独自性を追求し、既存領域を核とした事業の 「塊」を構築することに重点を置いた最適なリソース配分・成長戦略を実行していきます。また、ポートフォリオをトランスフォームする成長投資においては、十分な収益性を確保できる500億円超の規模感ある投資を実行します。 ⑤ 人的資本の強化1) 人材戦略の考え方「中期経営計画2026」では、2030年の目指す姿である「事業や人材を創造し続ける総合商社」に向け、「自らの意思で挑戦・成長し続ける多様な個」「多様な個の力を最大化するミドルマネジメントの強化」「環境変化を先読みした機動的な人材配置・抜擢」の3点の人材戦略基本方針を掲げ、双日らしい成長ストーリーの実現に向けた「事業創出力」と「事業経営力」の強化を目指します。人的資本の強化を支える土台として、「双日らしいカルチャーの醸成」、「Digital in All」、「データを活用した対話」により、挑戦や思考の柔軟さといった双日らしい独自の風土・文化を深化させ、事業創出力、事業経営力の最大化を図っていきます。2024年4月より、役割等級・評価・報酬などを見直した、新たな人事制度をスタートさせました。社員一人ひとりの成長、組織の成長・活性化、会社の成長・企業価値向上を実現させることで、当社らしい人的資本経営を加速させていきます。 2) 人材KPI(動的)2030年の目指す姿に向けて双日らしい成長ストーリーを実現するためには、事業創出力、事業経営力を備えると共に、Digital in Allを実践できるヒト(組織・人材)の育成・強化が必要となることから、次に掲げる人材KPIを設定し、各種施策の効果を測っていきます。 ⑥ キャッシュフロー・マネジメント基礎的営業キャッシュフローと資産入替を原資に、さらなる成長に向けた成長・ヒト投資と株主還元を実行します。基礎的営業キャッシュフローの7割程度を成長・ヒト投資に、3割程度を株主還元に充当します。 ⑦ 利益配分に関する基本方針「中期経営計画2026」期間累計の基礎的営業キャッシュフローの3割程度を株主還元する方針です。1) 配当・安定的かつ継続的な配当を行うため株主資本DOE4.5%を配当方針とし、業績変動や株価・為替による影響を最小限に抑える・当期純利益による株主資本の積み上げが、株主還元による株主資本の減少幅を上回る限りにおいて、累進的に増配となる配当方針 2) 自己株式取得・キャッシュフロー・マネジメント方針に基づき、「中期経営計画2026」期間を通じて機動的に自己株式取得を実施 これを踏まえ、2025年3月期の配当については、1株当たり年間150円(中間75円、期末75円)を予定しています。当該年度の当期純利益(当社株主帰属)に基づく連結配当性向(予想)は29.6%となります。 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 (財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定IFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を設定することが義務付けられております。実際の業績はこれらの見積りと異なる場合があります。見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直しております。会計上の見積りの見直しによる影響は、見積りを見直した会計期間及び将来の会計期間において認識しております。当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下のとおりであります。 ① 金融商品の公正価値当社グループは、資産又は負債の公正価値を測定する際に、入手可能な限り、市場の観察可能なデータを用いております。公正価値の具体的な算定方法は次のとおりであります。 (a) 資本性金融資産上場株式については、取引所の価格によっております。非上場株式については、割引将来キャッシュ・フローに基づく評価技法、類似会社の市場価格に基づく評価技法、純資産価値に基づく評価技法、その他の評価技法を用いて算定しております。非上場株式の公正価値測定に当たっては、割引率、評価倍率等の観察可能でないインプットを利用しており、必要に応じて一定の非流動性ディスカウント、非支配持分ディスカウントを加味しております。非上場株式の公正価値の評価方針及び手続の決定はコーポレートにおいて行っており、評価モデルを含む公正価値測定については、個々の株式の事業内容、事業計画の入手可否及び類似上場企業等を定期的に確認し、その妥当性を検証しております。 (b) デリバティブ金融資産及びデリバティブ金融負債通貨関連デリバティブ為替予約取引、直物為替先渡取引、通貨オプション取引及び通貨スワップ取引については、期末日の先物為替相場に基づき算出しております。金利関連デリバティブ金利スワップについては、将来キャッシュ・フローを満期日までの期間及び信用リスクを加味した利率で割り引いた現在価値により算定しております。商品関連デリバティブ商品先物取引については、期末日現在の取引所の最終価格により算定しております。商品先渡取引、商品オプション取引及び商品スワップ取引については、一般に公表されている期末指標価格に基づいて算定しております。 ② 非金融資産の減損当社グループは期末日において、資産が減損している可能性を示す兆候があるか否かを判定し、減損の兆候が存在する場合には当該資産の回収可能価額を見積っております。のれん及び耐用年数の確定できない無形資産については毎期、さらに減損の兆候がある場合には都度、減損テストを実施しております。個別資産又は資金生成単位の帳簿価額が回収可能価額を超過する場合には、当該資産を回収可能価額まで減額し、減損損失を認識しております。回収可能価額は、個別資産又は資金生成単位の処分コスト控除後の公正価値と使用価値のいずれか高い金額としております。公正価値は市場参加者間の秩序ある取引において成立し得る価格を合理的に見積もって算定しております。使用価値は、貨幣の時間価値及び個別資産又は資金生成単位に固有のリスクに関する現在の市場の評価を反映した税引前の割引率を用いて、見積将来キャッシュ・フローを割引いて算定しております。将来キャッシュ・フロー見積りにあたって利用する事業計画は原則として5年を限度としております。なお、当社グループは、使用価値及び公正価値の算定上の複雑さに応じて外部専門家を適宜利用しております。過年度にのれん以外の資産について認識した減損損失については、期末日において、認識した減損損失がもはや存在しない又は減少している可能性を示す兆候があるか否かを判定しております。このような兆候が存在する場合には、回収可能価額の見積りを行い、当該回収可能価額が資産の帳簿価額を上回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで増額し、減損損失の戻入れを認識しております。のれんについて認識した減損損失は、以後の期間において戻入れておりません。なお、持分法適用会社に対する投資の帳簿価額の一部を構成するのれんは区分して認識しないため、個別に減損テストを実施しておりません。持分法適用会社に対する投資が減損している可能性が示唆されている場合には、投資全体の帳簿価額について回収可能価額を帳簿価額と比較することにより単一の資産として減損テストを行っております。当社グループでは、固定資産の減損会計等の会計上の見積りについて、連結財務諸表作成時において入手可能な情報に基づき実施しております。 ③ 引当金引当金は、過去の事象の結果として現在の債務(法的債務又は推定的債務)を有しており、当該債務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が生じる可能性が高く、当該債務の金額について信頼性のある見積りが可能である場合に認識しております。貨幣の時間的価値の影響に重要性がある場合、当該負債に特有のリスクを反映させた現在の税引前の割引率を用いて割引いた金額で引当金を計上しております。 ④ 確定給付制度債務の測定確定給付制度は、確定拠出制度以外の退職給付制度であります。確定給付制度債務は、制度ごとに区別して、従業員が過年度及び当年度において提供したサービスの対価として獲得した将来給付額を見積り、当該金額を現在価値に割り引くことによって算定しております。制度資産の公正価値は当該算定結果から差し引いております。割引率は、当社グループの確定給付制度債務と概ね同じ満期日を有するもので、かつ支払見込給付と同じ通貨建ての、主として報告日における信用格付けAAの債券の利回りであります。過去勤務費用は、即時に純損益で認識しております。当社グループは、確定給付制度から生じるすべての確定給付負債(資産)の純額の再測定を即時にその他の包括利益で認識しており、直ちに利益剰余金に振り替えております。 ⑤ 繰延税金資産の回収可能性繰延税金資産及び繰延税金負債は、資産及び負債の帳簿価額と税務基準額との差額である一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除について認識しており、期末日における法定税率又は実質的法定税率、及び税法に基づいて、資産が実現する期又は負債が決済される期に適用されると予想される税率又は税法で算定しております。繰延税金資産は、将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しております。繰延税金資産の帳簿価額は期末日において再検討しており、繰延税金資産の便益を実現させるだけの十分な課税所得を稼得する可能性が高くなくなった範囲で繰延税金資産の帳簿価額を減額しております。 (2) 当連結会計年度の経営成績の分析当連結会計年度は、コロナショックからの経済活動の再開に伴うサービス消費の活発化及び堅調な雇用により、景気回復に底堅い動きがみられます。一方、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻の長期化、中東情勢の緊迫化など地政学リスクの高まり、中国の不動産市況悪化と需要低迷、根強いインフレと各国中銀の金融引き締め継続といった不確実性の影響を絶えず注視していく必要があります。米国では、インフレ抑制を目指し、FRBが2022年3月~2023年7月に11回に及ぶ利上げを実施しましたが、その後2023年9月~2024年3月は5会合連続で金利を据え置いており、政策金利は5.25~5.50%となっております。2024年の米国経済はインフレ鈍化と堅調な雇用や消費を受け、ソフトランディングがメインシナリオになりつつあります。EU経済圏では、ECBが2024年4月の理事会で5会合連続の政策金利据え置きを決定しました。3月の消費者物価上昇率は前年比2.4%に鈍化しています。EU経済圏の第4四半期GDPは、前年同期比+0.2%と停滞が続いています。中国では、2月の消費者物価指数(CPI)が前年同期比+0.7%と6ヶ月ぶりに上昇しましたが、今後のCPIには注意が必要です。2024年1~2月の主要経済指標には好転しているものがあるものの、1~2月の住宅販売面積は前年同期比-31.6%に低下しており、不動産市況は依然停滞傾向にあります。アジアでは、2023年の欧米を中心とした外需低迷から回復基調に転じ、財輸出が増加傾向にあります。アジア各国は為替への影響を考慮し、米国等の金融政策に追随するタイミングで、2024年後半以降の利下げを見込んでいます。日本では、2023年10~12月のGDP成長率は前期比+0.1%の鈍い伸びとなりました。日銀が2024年3月にマイナス金利などの大規模金融緩和政策を解除し、17年ぶりに利上げを決定しましたが、日米金利差が開いている状態が続き円安が継続しています。名目賃金を示す現金給与総額は上昇していますが、実質賃金の低下が長期化するなかで国内消費は足踏み状態が続いています。 当期の経営成績を分析しますと、次のとおりであります。 収益は、石炭の価格下落による金属・資源・リサイクルでの減収に加え、各種化学品の取扱数量減少による化学での減収などにより、2兆4,146億49百万円と前期比2.6%の減収となりました。売上総利益は、石炭の価格下落やコストの増加による金属・資源・リサイクルでの減益に加え、各種化学品の取扱数量減少や一過性の損失による化学での減益などにより、前期比116億12百万円減少の3,259億55百万円となりました。税引前利益は、売上総利益の減益に加え、連結子会社の新規取得などによる販売費及び一般管理費の増加により、前期比295億38百万円減少の1,254億98百万円となりました。当期純利益は、税引前利益1,254億98百万円から、法人所得税費用224億37百万円を控除した結果、当期純利益は前期比127億64百万円減少の1,030億60百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期純利益は前期比104億82百万円減少し、1,007億65百万円となりました。当期純利益にFVTOCIの金融資産や在外営業活動体の換算差額などを計上した結果、当期包括利益は前期比274億80百万円増加し、1,732億83百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期包括利益は前期比298億83百万円増加し、1,683億17百万円となりました。 親会社の所有者に帰属する当期純利益のセグメント別業績は次のとおりであります。 当社グループは、2023年4月1日付にて一部の報告セグメントの区分方法の変更を行っており、連結財務諸表の注記事項「5 セグメント情報」に記載しております。 (単位:百万円)セグメントの名称当期実績(A)(2024年3月期)前期実績(B)(2023年3月期)増減額(A)-(B)主な増減要因自動車2,2816,016△3,735フィリピンの自動車販売事業の低調及びタイのディストリビューター事業からの撤退等により減益航空産業・交通プロジェクト4,3166,960△2,644航空機関連取引の減少等により減益インフラ・ヘルスケア15,8517,6448,207前期における台湾洋上風力発電事業の資産評価見直しに伴う損失計上の反動等により増益金属・資源・リサイクル43,49262,704△19,212石炭事業の市況下落及びコストの増加等により減益化学14,77318,610△3,837合成樹脂含む化学品全般の需要低迷及び上期での一過性の損失等により減益生活産業・アグリビジネス7,4646,2941,170タイの肥料事業での利益率の良化や販売数量の増加等により増益リテール・コンシューマーサービス13,1086,8316,277国内リテール事業の回復及び商業施設の売却や新規投資に伴う負ののれん等による増益 なお、本部別の成長戦略は以下のとおりです。 <自動車>自動車販売を中核とした既存事業の強みを活かし、持続的な成長を目指す戦略を展開しています。既に知見や実績のある領域の拡大を基盤に、「機能」「特色」「変革」の3つを成長戦略のキーワードとして、販売力・金融・デジタルといった機能を強化することで、差別化し優位性のあるビジネスモデルを追求します。これにより持続的な成長を実現すると共に、社会課題やニーズに対してソリューションや価値を提供し、豊かなモビリティ社会の実現へ寄与していきます。 <航空産業・交通プロジェクト>航空・船舶・鉄道の3大輸送手段における長年の経験と豊富な知見をもとに、2024年4月1日付機構改革に伴い新たに加わった社会インフラ事業でのノウハウを掛け合わせ、各事業を面として紡ぎ、社内外との共創を通じて、社会的な共感力と訴求力が高い事業を創出していきます。当社機能の先鋭化・多角化を推し進め、事業価値向上を図り、変化する顧客やマーケットニーズを的確に捉えた横断的なソリューションを提供していきます。 <インフラ・ヘルスケア>エネルギー及びヘルスケア領域において、脱炭素、人口増加、高齢化などの社会課題解決に対応し、従来の「アセット型」インフラビジネスに加え、顧客へのサービス・ソリューション提供を行う「事業型ビジネス」を構築し、収益機会及び規模の拡大を目指します。また、投資先企業の顧客基盤・人脈やパートナー企業を通じたローカルネットワークを拡充し、当社の有形・無形の資産を活用することで双日ならではの競争優位を構築し、新たな価値を創造します。 <金属・資源・リサイクル>社会の持続可能性への貢献のために、循環型社会と脱炭素への適応を重視した事業ポートフォリオへの変革を推進します。資源リサイクル領域の事業基盤強化を徹底的に追求すると共に、デジタル化や脱炭素の推進により既存事業のビジネスモデルを変革することで、市況耐性を強化し、社会ニーズに応じた新たな価値を提供しながら、さらなる安定的な資源の供給体制を構築していきます。 <化学>現在化学業界では、大きな転換期を迎えており、デジタル化実装によるオペレーションの次世代化など、商流変化の機会を獲得するために実効性のある施策を講じると共に、各地域のサプライチェーンの変化を捉えるため、海外拠点における現地化を一層推進していきます。また、脱炭素の社会的要請が高まる中、その潮流に即した事業の創出にも注力し、規模感のある事業投資の実行を進め、収益の塊を獲得していきます。 <生活産業・アグリビジネス>経済成長の著しい新興国を中心に、肥料・アグリビジネス事業、食料・飼料畜産事業、林産・バイオマス事業などの既存事業をさらに強化していくと共に、中でも東南アジアでトップクラスの市場シェアを保有する肥料事業において、デジタルを組み合わせることで新たなビジネスを構築、収益の拡大を進めています。また、ベトナムで進める牛の肥育・加工・販売事業は、豚肉や鶏肉へと取り組みを拡大し、同国最大の総合食肉事業への展開を目指します。 <リテール・コンシューマーサービス>強みであるベトナム・リテール事業、水産事業、畜肉事業の成長に注力し、「売る力」×「運ぶ力」をさらに磨くことで収益の積上げを図ります。ベトナムにおいては、既存事業の強化に留まらず、個々の事業が相互に連動して取引先と共に成長して行く面展開を戦略として掲げ、新たに当社グループに加わったDaiTanViet(卸事業)とのシナジーでバリューアップを図ると共に、デジタルを活用しサプライチェーンの効率化を進めます。水産事業は既存事業を軸に収益を強化し、米国や中国・アジアの水産市場の成長を商機として海外販売の拡大に挑戦します。 (3) 資本の財源と資金の流動性及び調達状況について① 財政状態当期末の資産合計は、円安の影響に加え、連結子会社の新規取得などにより、前期末比2,260億30百万円増加の2兆8,868億73百万円となりました。負債合計は、円安の影響に加え、連結子会社の新規取得や営業債務及びその他の債務が当期末日の休日影響により増加したことなどにより、前期末比1,469億79百万円増加の1兆9,312億45百万円となりました。資本のうち親会社の所有者に帰属する持分合計は、自己株式の取得や、配当金の支払いがあったものの、当期純利益の積み上がりや、為替の変動によるその他の資本の構成要素の増加などにより、前期末比863億63百万円増加の9,240億76百万円となりました。この結果、当期末の自己資本比率は32.0%となりました。また、有利子負債総額から現金及び現金同等物、及び定期預金を差し引いたネット有利子負債は前期末比678億64百万円増加の6,972億90百万円となり、ネット有利子負債倍率は0.75倍となりました。 ※自己資本比率及びネット有利子負債倍率の算出には、親会社の所有者に帰属する持分を使用しております。また、有利子負債総額にはリース負債を含めておりません。 次に、資産をセグメント別に分析しますと、以下のとおりであります。 (単位:百万円)セグメントの名称当期実績(A)(2024年3月期)前期実績(B)(2023年3月期)増減額(A)-(B)主な増減要因自動車290,675182,691107,983パナマ自動車販売会社及び豪州中古車販売会社の新規取得等により増加航空産業・交通プロジェクト204,334201,3542,980航空機関連取引におけるその他の流動資産の増加等により増加インフラ・ヘルスケア547,634516,45431,179豪州省エネルギーサービス事業会社の新規取得等により増加金属・資源・リサイクル533,366531,8741,492石炭の価格下落及び取扱数量減少により営業債権及びその他の債権の減少があったものの、円安の影響等により増加化学324,872322,1892,682営業債権及びその他の債権の増加等により増加生活産業・アグリビジネス258,339238,90719,432タイの肥料事業での販売数量増加等により増加リテール・コンシューマーサービス533,567419,917113,650ベトナム業務用食品卸会社及びマグロ加工販売会社の新規取得等により増加 ② キャッシュ・フロー当期のキャッシュ・フローの状況は、営業活動によるキャッシュ・フローは1,121億87百万円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは124億29百万円の収入、財務活動によるキャッシュ・フローは1,865億23百万円の支出となりました。これに現金及び現金同等物に係る換算差額を調整した結果、当期末における現金及び現金同等物の残高は1,962億75百万円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)当期の営業活動による資金は、営業収入及び配当収入などにより1,121億87百万円の収入となりました。前期比では594億52百万円の収入減少となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)当期の投資活動による資金は、パナマ自動車販売事業会社、ベトナム業務用食品卸会社への出資があったものの、航空機関連取引や米国ガス火力発電事業の売却による回収などにより124億29百万円の収入となりました。前期比では167億28百万円の収入減少となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)当期の財務活動による資金は、借入金の返済や自己株式の取得及び配当金の支払いなどにより1,865億23百万円の支出となりました。前期比では438億44百万円の支出減少となりました。 「中期経営計画2023」におけるキャッシュ・フローマネジメントにつきましては、引き続き営業活動と資産入替により創出されたキャッシュの範囲内で成長投資と株主還元をマネージし、中でも、短期の運転資金増減の影響を受けない基礎的キャッシュ・フローを、「中期経営計画2020」から「中期経営計画2023」の6年間累計で黒字とする目標にしておりました。業績が堅調に推移したため、2023年度の基礎的営業キャッシュ・フローは1,092億円の黒字となりました。これに加えて、政策保有株式や入替による投資の売却、航空機関連取引での回収などもあった一方で、新規投資の実行や株主還元による支出などによって、基礎的キャッシュ・フローは628億円の赤字となりましたが、6ヶ年累計での基礎的キャッシュ・フローは1,397億円と大幅な黒字を達成いたしました。「中期経営計画2026」においても、引き続き営業活動と資産入替により創出されるキャッシュを原資に成長投資と株主還元を実施する方針であり、上記の6ヶ年累計における黒字と併せて基礎的キャッシュ・フローが黒字となる範囲でマネージする方針です。 *1 基礎的営業CF=会計上の営業CFから運転資金増減を控除したもの*2 自己株式取得を含む*3 基礎的CF=基礎的営業CF+調整後投資CF-支払配当金-自己株式取得 (調整後投資CF=会計上の投資CFに長期性の営業資産等の増減を調整したもの) ③ 資金の流動性と資金調達について当社グループは、「中期経営計画2023」におきまして、従来と同様に資金調達構造の安定性維持・向上を財務戦略の基本方針とし、一定水準の長期調達比率の維持や、経済・金融環境の変化に備えた十分な手元流動性の確保により、安定した財務基盤の維持に努め、当期末の流動比率は150.2%、長期調達比率は81.9%となりました。長期資金調達手段の1つである普通社債につきましては、当連結会計年度は発行しておりませんが、引き続き金利や市場動向を注視し、適切なタイミング、コストでの起債を検討してまいります。また、資金調達の機動性及び流動性確保の補完機能を高めるため、円貨1,000億円(未使用)及び25.75億米ドル(6億米ドル使用)の長期コミットメントライン契約を有しております。 (目標とする経営指標の達成状況等)「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 「中期経営計画2023」の振り返り(13~14ページ)」をご参照ください。 (販売、仕入及び成約の状況)① 販売の状況「(2) 当連結会計年度の経営成績の分析」及び「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 5 セグメント情報」をご参照下さい。 ② 仕入の状況仕入は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。 ③ 成約の状況成約は販売と概ね連動しているため、記載は省略しております。 ※将来情報に関するご注意本資料に掲載されている業績見通し等の将来に関する記述は、当社が現在入手している情報及び合理的であると判断する一定の前提に基づいており、業績を確約するものではありません。実際の業績等は、内外主要市場の経済状況や為替相場の変動など様々な要因により大きく異なる可能性があります。重要な変更事象等が発生した場合は、適時開示等にてお知らせします。 |
※本記事は「双日株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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