| 会社名 | アンリツ株式会社 |
| 業種 | 電気機器 |
| 従業員数 | 連3966名 単1713名 |
| 従業員平均年齢 | 45.8歳 |
| 従業員平均勤続年数 | 21年 |
| 平均年収 | 7304000円 |
| 1株当たりの純資産 | 816.69円 |
| 1株当たりの純利益(連結) | 70.42円 |
| 決算時期 | 3月 |
| 配当金 | 40円 |
| 配当性向 | 68.4% |
| 株価収益率(PER) | 22.97倍 |
| 自己資本利益率(ROE)(連結) | 18.1% |
| 営業活動によるCF | 210億円 |
| 投資活動によるCF | ▲39億円 |
| 財務活動によるCF | ▲122億円 |
| 研究開発費※1 | 98.79億円 |
| 設備投資額※1 | 3.44億円 |
| 販売費および一般管理費※1 | 377.57億円 |
| 株主資本比率※2 | 75.2% |
| 有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
| 1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。(1) 会社の経営の基本方針当社は、様々なステークホルダーに対する責任と対話を重視し、以下のとおり経営理念・経営ビジョン・経営方針を策定しています。これらには、グループ従業員等の一人ひとりが自ら挑戦し、新しい価値を社会に提供し続け、未来に向けて成長していく、という思いを込めています。経営理念「誠と和と意欲」をもって、“オリジナル&ハイレベル”な商品とサービスを提供し、安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献する経営ビジョン「はかる」を超える。限界を超える。共に持続可能な未来へ。経営方針1. 克己心を持ち、「誠実」な取り組みにより人も組織も“日々是進化”を遂げる2. 内外に敵を作らず協力関係を育み、「和」の精神で難題を解決する3. 進取の気性に富み、ブレークスルーを生み出す「意欲」を持つ4. ステークホルダーと共に人と地球にやさしい未来をつくり続ける「志」を持つ(2) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社は、キャッシュ・フロー(CF)を常に意識した経営を展開しており、「ROE (Return On Equity)」と「自己資本比率」をKPIと捉え、自己資本の効率性向上による中長期的な企業価値最大化と財務の安定性維持に取り組みます。なお、取締役(社外取締役及び監査等委員であるものを除く。)、執行役員及び理事を対象とした現行の業績連動型株式報酬制度においては、その評価指標として、本制度の対象期間における各事業年度の期初に定める営業利益目標及び中期経営計画に掲げる営業利益を採用しています。また、金銭の業績連動型報酬(年次役員賞与)においては、当該連結会計年度における連結ROEに加え、売上高、営業利益及びESG/SDGs目標の達成度等の指標を用いています。(3) 中長期的な経営戦略、経営環境及び対処すべき課題等今後の見通しにつきましては、当社グループの主力である通信計測事業においては、生成AIの普及拡大によるデータセンター等でのネットワーク高速化に向けた測定需要が今後も拡大していくことが期待できます。また、モバイル市場においては、世界的なスマートフォンの出荷台数が回復してきており、AIを搭載した高機能スマートフォンの普及加速などによる測定需要の獲得を目指していきます。PQA事業においては、新製品の投入を進めることで、食品市場の品質保証プロセスの自動化、省人化を目的とした設備投資需要を確実に捉え、売上拡大を目指していきます。また、医薬品市場に向けた新製品開発と、販売力の強化を推進していきます。環境計測事業においては、堅調な推移が見込まれる国内のEV/電池向け試験需要を確実に捉えるとともに、海外市場への進出に取り組みます。当社グループは、関係するあらゆるステークホルダーとともに持続可能で魅力的な未来を次世代に繋いでいくという思いを込め、経営理念・経営ビジョン・経営方針のもと、2030年度には安定した収益を上げる企業としての売上高2,000億円企業を目指してまいります。① 中長期的な経営戦略及び中期経営計画当社グループは、主力の通信計測事業を軸に、情報通信サービスに関わるビジネスを展開しております。現在の5Gシステムに代表される通信インフラの様々なイノベーションは、社会を劇的に変革するとともに、人類に「つながる」ことの豊かさを提供し、グローバル社会の進歩を生み出してきました。「誠と和と意欲」、“オリジナル&ハイレベル”を経営理念とするアンリツは、コアコンピタンスである「はかる」技術をベースに、情報通信分野と食品・医薬品分野を中心に支えてまいりました。当社のコンピテンシーである「はかる」を極めていくとともに、内外の異なる発想や技術を更に掛け合わせ、従来の「はかる」を超えた価値や新領域を開拓していくことで次の事業の柱を成長させ、攻めの姿勢で今までのアンリツの限界を超えてまいります。当社グループは、中長期経営戦略のもと、2024年4月に、新たな3ヶ年の中期経営計画GLP2026をスタートいたしました。GLP2026では、前中期経営計画GLP2023で育てた新しい芽を事業の柱へと成長させ、計画最終年度(2027年3月期)で、連結売上高1,400億円、営業利益200億円、営業利益率14%を目指します。GLP2026の3年間は、5Gから6Gへの移行期であり、2030年度に売上高2,000億円企業となるための重要なマイルストーンと位置付けております。GLP2026では6Gと3つの新領域ビジネスを重点的に拡大します。3つの新領域ビジネスは“産業計測”と“EV/電池”そして“医薬品/医療”です。M&Aとオーガニックで、新領域ビジネスの成長を加速し、更には来るべき6Gビジネスの需要を確実に獲得するための準備をいたします。中期経営計画(GLP2026)基本方針1. 成長投資に400億円以上(M&A+設備投資)2. ROE≧10%を安定的に達成する事業ポートフォリオの構築3. 2026年度(2027年3月期)の営業利益の25%を通信計測事業以外で創出4. 新領域ビジネスの人材強化、全社で人材育成体制を構築5. 事業活動における資源循環(サーキュラーエコノミー)の実現6. 株主還元では配当性向50%以上を目指す 当連結会計年度の実績及びGLP2026に掲げる主な経営数値目標等は下表のとおりです。当社グループは、引き続き、中長期的な経営戦略及び中期経営計画の実現を図り、資本コストを意識した成長投資(含むM&A)と資本効率の改善で、企業価値KPI(ROE)の向上を目指します。 2024年3月期(実績)2025年3月期(実績)2026年3月期(業績見通し)2027年3月期(GLP2026目標)売上収益(億円)1,0991,1291,2301,400営業利益(億円)89121150200当期利益(億円)7692110150通信計測事業売上収益(億円)710701770900営業利益(億円)7583120150PQA事業売上収益(億円)253282300300営業利益(億円)12283036環境計測事業売上収益(億円)7485100130営業利益(億円)59914ROE(%)6.37.4912※ 億円未満を切り捨てて表示しています。なお、2026年3月期の業績見通しは、2025年4月25日に公表した「2025年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」に基づいています。また、GLP2026では、当社グループのサステナビリティ目標を掲げ、その達成に向けた活動を推進しています。サステナビリティ推進活動、ダイバーシティ推進等の当社グループのサステナビリティに関する事項は、後記2「サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。当社グループは、ブランド・ステートメントに「Advancing beyond」を掲げ、皆様とともに進歩と進化へ向けて歩み続けていきたいという強い思いを込めて発信しています。さらなる高みを目指すとともに、お客様のビジョン実現を通じ社会のサステナビリティに貢献したいという姿勢を示しています。今後とも経営資源を最大限に活かして安全・安心で豊かなグローバル社会の発展に貢献し、企業価値の向上に努めてまいります。② コーポレート・ガバナンスの充実当社は、経営環境の変化に柔軟かつスピーディに対応し、グローバル企業としての競争力を高め、継続的に企業価値を向上させていくことを経営の最重要課題としております。その目標を実現するために、コーポレート・ガバナンスが有効に機能する仕組みを構築することに努めております。執行役員制度導入による意思決定と業務執行の分離の促進、「監査等委員会設置会社」への移行、独立社外取締役が委員長を務める指名委員会・報酬委員会・独立委員会の設置、取締役会の実効性評価の実施などの従前からの取組に加え、社外取締役比率50%以上を確保することにより、取締役会の監視・監督機能を強化し、コーポレート・ガバナンス体制を一層充実させることで、グローバルな視点でより透明性の高い経営の実現を目指してまいります。当社グループのコーポレート・ガバナンスに関する事項は、後記第4「提出会社の状況」の4「コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。 |
経営者による財政状態の説明
| 4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。 1) 財政状態及び経営成績の状況通信計測事業の主要市場である情報通信分野においては、世界的なスマートフォンの出荷台数が回復してきており、AIを搭載した高機能スマートフォンなど、新たな機能の搭載による市場の活性化が期待されます。5G利活用の領域では、Automotive分野での5G活用に向けた研究開発が進展しており、ローカル5Gのようなプライベート領域での5Gネットワーク構築に向けた調査や実証実験が継続されています。IoT(Internet of Things)分野では、米国のラストワンマイルで利用されるCPE(Customer Premises Equipment、顧客構内設備)の需要や、5G無線モジュールの開発に加えてWi-Fi 7(*1)の開発需要が増加してきています。非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)としては、衛星を用いた通信サービスが相次いで始まっており、4GシステムのNB-IoT(Narrowband IoT)を用いる端末もリリースされています。2024年6月に標準化が完了した「Release 18」(*2)では、IoT向けのeRedCap(enhanced Reduced Capability)や5G NR(New Radio)を用いるNTNなどで機能の向上が図られ、チップセットや端末への対応が進められています。また、3GPPにおいて次世代の通信規格である6Gの仕様についての議論も始まり、研究開発も行われています。5Gのネットワークでは、無線アクセスネットワークのオープン化に取り組むO-RANアライアンスが仕様を策定しており、これまでメーカー独自のインターフェースで構成されていた基地局装置に対してO-RANの標準仕様を適用することで、マルチベンダーでの無線アクセスネットワークの構築が容易になりました。また、生成AIの普及拡大によるデータ・トラフィックの急増に対応するために、データセンターの新設及び大容量化が加速しています。生成AI向けのデータセンターにおいては800GEネットワークへの更新が本格化してきており、光デバイスメーカーでの800GE向け光デバイスの生産増強が進展しています。ネットワーク機器メーカーにおいてはPCIe(Gen5/6)(*3)などのハイスピードバスの開発が進展しており、1.6TE向けの光デバイスの開発が始まっています。さらに、データセンターのグローバル接続として、新たな経路での光海底ケーブル敷設が、ハイパースケーラーによって進められています。加えて、オール光化を目指すIOWN(*4)の活動も活発化してきています。PQA事業の分野においては、人手不足の影響から食品生産ラインの自動化投資が進んでおり、X線を用いた異物混入検査や包装品質検査など品質保証プロセスの自動化、省人化に係る需要が米国を中心に好調に推移しています。このような環境のなか、当社グループの経営成績は次のとおりとなりました。当期は、受注高は112,585百万円(前年同期比4.9%増)、売上収益は112,979百万円(同2.8%増)、営業利益は12,124百万円(同35.0%増)、税引前利益は12,737百万円(同28.0%増)、当期利益は9,259百万円(同20.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は9,257百万円(同20.6%増)となりました。当連結会計年度末の資産合計は、159,826百万円となり、前期末に比べ1,258百万円減少しました。当連結会計年度末の負債合計は、35,558百万円となり、前期末に比べ1百万円減少しました。当連結会計年度末の資本合計は、124,268百万円となり、前期末に比べ1,257百万円減少しました。なお、当社グループの当連結会計年度の財政状態の状況は、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 2) 財政状態」に記載しています。 (*1)第7世代のWi-Fi規格、第6世代(Wi-Fi 6)の使用帯域幅160MHzを320MHzまで拡張し、高速化を実現(*2)3GPPで標準化される規格番号(*3)第5/第6世代のPCI Express規格(シリアル転送方式の拡張スロット用インターフェース規格)(*4)Innovative Optical and Wireless Networkの略で、IOWN Global Forumが検討を進めている、オール光ネットワークなど革新的技術を用いた新しい通信基盤 セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。各セグメント別の売上収益は外部顧客に対する売上収益を記載しています。① 通信計測事業当事業は、サービス・プロバイダ、ネットワーク機器メーカー、保守工事業者などへ納入する、多機種にわたる通信用及び汎用計測器、測定システム、サービス・アシュアランスの開発、製造、販売を行っています。当期は、生成AIの普及拡大によるデータセンター等でのネットワーク高速化に向けた測定需要が好調に推移しましたが、通信事業者の基地局建設・保守用計測器への投資が低調であり、前年同期比で減収となりました。一方、プロダクト・ミックスの変化により収益性が改善しました。この結果、売上収益は70,109百万円(前年同期比1.3%減)、営業利益は8,375百万円(同11.0%増)の減収増益となりました。② PQA事業当事業は、高精度かつ高速の各種自動重量選別機、自動電子計量機、異物検出機などの食品・医薬品・化粧品産業向けの生産管理・品質保証システム等の開発、製造、販売を行っています。当期は、食品市場の品質保証プロセスの自動化、省人化を目的とした設備投資需要が好調に推移しました。米国において大手顧客のX線検査機需要を獲得したこと等により、前年同期比で増収増益となりました。この結果、売上収益は28,241百万円(前年同期比11.3%増)、営業利益は2,836百万円(同119.0%増)となりました。③ 環境計測事業当事業は、EV/電池向け試験装置、ローカル5G向け支援サービス、道路やダム・河川等の映像監視用モニタリングソリューションの開発、製造、販売を行っています。当期は、国内においてEV/電池向け試験需要が好調に推移し、前年同期比で増収増益となりました。この結果、売上収益は8,545百万円(前年同期比14.9%増)、営業利益は900百万円(同67.6%増)となりました。④ その他の事業当事業は、センシング&デバイス事業、物流、厚生サービス、不動産賃貸等からなっております。当期は、売上収益は6,081百万円(前年同期比0.9%減)、営業利益は1,456百万円(同79.7%増)となりました。 2) キャッシュ・フローの状況当期における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の期末残高は、50,094百万円となり、前期末に比べ4,437百万円増加しました。なお、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、17,154百万円のプラス(前期は12,929百万円のプラス)となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。① 営業活動によるキャッシュ・フロー営業活動の結果獲得した資金は、純額で21,071百万円(前年同期は16,573百万円の獲得)となりました。これは、税引前利益の計上及び棚卸資産の減少により資金が増加したことが主な要因です。なお、減価償却費及び償却費は5,707百万円(前年同期比181百万円減)となりました。② 投資活動によるキャッシュ・フロー投資活動の結果使用した資金は、純額で3,916百万円(前年同期は3,643百万円の使用)となりました。これは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出が主な要因です。③ 財務活動によるキャッシュ・フロー財務活動の結果使用した資金は、純額で12,257百万円(前年同期は6,578百万円の使用)となりました。これは、配当金の支払額5,270百万円(前年同期の配当金支払額は5,266百万円)及び自己株式の取得による支出が主な要因です。 3) 生産、受注及び販売の実績① 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)前年同期比(%)通信計測(百万円)68,496100.9PQA (百万円)28,676113.3環境計測 (百万円)8,694115.3報告セグメント計(百万円)105,867105.1その他(百万円)5,93496.4合計(百万円)111,801104.6(注)金額は販売価格によっております。 ② 受注実績当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)通信計測66,91997.119,68385.7PQA29,121116.17,440113.0環境計測10,033138.35,187138.3報告セグメント計106,074104.832,31197.0その他6,510107.91,380100.6合計112,585104.933,69197.2 ③ 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)前年同期比(%)通信計測(百万円)70,10998.7PQA (百万円)28,241111.3環境計測 (百万円)8,545114.9報告セグメント計(百万円)106,897103.0その他(百万円)6,08199.1合計(百万円)112,979102.8(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、実際の結果は、将来に関する事項の記述とは異なる可能性があります。その主な要因については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しておりますが、それらに限定されるものではありません。 1) 経営成績当社グループは、通信計測事業、PQA事業および環境計測事業の3つを報告セグメントとしています。① 通信計測事業当社グループの売上収益の62%を占める通信計測事業は、「モバイル市場」「ネットワークインフラ市場」「エレクトロニクス市場」向けの3つのサブセグメントに区分しております。a. モバイル市場モバイル市場には、携帯電話サービスを行うサービス・プロバイダの端末受入検査用途向け計測器や、スマートフォン等の携帯電話端末、ICチップセット、その他関連電子部品メーカーの設計、生産、機能・性能検証、保守用途向け計測器等を含めております。当市場の需要は、携帯電話サービスの技術革新や普及率、加入者数の推移のほか、端末/チップセットメーカーの新規参入又は撤退、端末やチップセットのモデルチェンジや出荷数等に影響される傾向があります。通信計測事業の主要市場である情報通信分野においては、世界的にスマートフォンの出荷台数が回復してきており、AIを搭載した高機能スマートフォンなど、今後の市場の活性化が期待されます。5G利活用の領域においては、Automotive分野における研究開発が進展しており、ローカル5Gのようなプライベート領域での5Gネットワーク構築に向けた調査や実証実験が継続されています。IoT(Internet of Things)分野では、米国等ではラストワンマイルで利用されるCPE (Customer Premises Equipment, 顧客構内設備)の需要や、5G無線モジュールの開発に加えてWi-Fi 7(*1)の開発需要が増加しています。加えて、衛星を用いた通信サービスの非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network)としては4GシステムのNB-IoT(Narrowband IoT)を用いる端末もリリースされ、関連した開発の需要が見込まれます。また、2024年6月に標準化が完了した「Release 18」(*2)では、IoT向けのeRedCap(enhanced Reduced Capability)や5G NR(New Radio)を用いるNTNなどで機能の向上が図られ、チップセットや端末への対応が進められています。また、3GPPにおいて次世代の通信規格である6Gの仕様についての議論も始まり、研究開発も行われています。当社は、引き続き競争力のある最先端計測ソリューションを提供するとともに、開発ポートフォリオ・マネジメントを的確に遂行することで、収益基盤の強化に努めてまいります。 (*1)第7世代のWi-Fi規格、第6世代(Wi-Fi 6)の使用帯域幅160MHzを320MHzまで拡張し、高速化を実現(*2)3GPPで標準化される規格番号 b. ネットワークインフラ市場ネットワークインフラ市場には、有線・無線通信事業者のネットワーク建設、保守、監視及びサービス品質保証用途向けのソリューションや、ネットワーク機器メーカーの設計、生産、試験及び調整用途向けソリューション等を含めております。当市場においては、クラウドサービスの高度化や生成AIの普及拡大によるデータ・トラフィックの急増に対応するために、データセンターの新設及び大容量化が加速しています。データセンターにおいては800GEネットワークへの更新が本格化してきており、光デバイスメーカーでの800GE向け光デバイスの生産増強が進展しています。また、ネットワーク機器メーカーでは、PCIe(Gen5/6)などのハイスピードバスの開発が進展しており、1.6TE向けの光デバイスの開発が始まっています。さらに、ハイパースケーラーによる新たな光海底ケーブル敷設が進められているほか、ネットワークのオール光化を目指すIOWNの活動も活発化してきています。これに伴い、関連する計測ソリューションの需要も堅調に推移しています。当社は、通信機器の研究開発向けソリューションに加え、通信インフラの構築・監視からサービス品質保証までの総合ソリューションを提供することで、事業の拡大に取り組んでまいります。 c. エレクトロニクス市場エレクトロニクス市場には、通信ネットワークに関連する通信機器やその他の電子機器に使用される電子デバイスの設計、生産、評価をはじめ、エレクトロニクス分野で幅広く利用されている計測器等を含めております。当市場の需要は、通信機器や情報家電、自動車等に使用される電子部品及び電子機器の生産規模に影響を受ける傾向があります。IoTサービスの拡大により、多岐にわたる用途の無線モジュールの開発・製造用計測ソリューション需要が増加しております。また、6Gに向けた研究開発の始まりに伴い関連する計測器の需要が顕在化しています。当社は、エレクトロニクス市場に対するソリューションを拡充し、更なる事業の拡大に努めてまいります。 ② PQA事業PQA事業は、当社グループの売上収益の25%を占めています。当事業は、食品産業向けの売上収益が8割以上を占めているため、食の安全安心に関する意識の高まりや食品メーカーの業績に影響を及ぼす消費支出水準の変化に大きな影響を受けます。主力製品には、食品製造ラインにおいて高速搬送しながら高精度に計量する重量選別機や食品中に混入する金属や石等の異物を高感度に検出し製造ラインから排除する異物検査機器(X線検査機等)等があります。日本市場においては、原料高の影響等から期初には受注の遅れがあったものの、その後のインバウンド需要や自動化需要の獲得により、底堅く推移しました。また、海外市場では、米国における大手顧客のX線検査機需要の獲得をはじめ、欧米・アジアの各地域で自動化・省人化を目的とした設備投資需要が好調に推移しました。なお、当事業の海外売上比率は約6割となっています。食品メーカーの品質検査への関心は高く、この需要に応えるために、新製品及び品質保証ソリューションの開発に努めるとともに、海外現地生産を含むサプライチェーンの最適化とグローバルオペレーションの効率化を推進し、事業拡大と収益性の向上に取り組んでまいります。 ③ 環境計測事業環境計測事業は、パワーエレクトロニクスとネットワークの2つの領域で社会課題の解決に貢献する事業を展開しており、当社グループの売上収益の8%を占めています。当事業は、EV/電池向け試験装置、ローカル5G向け支援サービス、道路やダム・河川等の遠隔監視用装置の開発、製造、販売を行っています。EV/電池向け試験装置の売上収益が大きな比重を占めており、当市場の需要は各国のEVシフトに向けた政策や税制優遇による顧客投資の環境変化に大きな影響を受けます。パワーエレクトロニクスの分野においては、世界的な脱炭素化の流れにより、自動車メーカーの電動化シフトが進展しており、バッテリ、インバータ、モータ等の開発投資が拡大しています。子会社である㈱高砂製作所は、高度なエネルギー制御技術を活かした電源システムに強みを持ち、自動車メーカーや自動車部品メーカー、バッテリメーカー等に、EVの駆動系やバッテリの試験装置を提供しており、国内においてEV/電池向け試験需要が好調に推移しました。当社はこの分野に向けて積極的な開発投資を進め、新製品およびソリューションを拡充し、事業のグローバル展開に向けた取り組みを加速させていきます。ネットワークの分野においては、道路やダム・河川等の遠隔監視用装置の需要は底堅く推移しました。 2) 財政状態① 資産資産合計は、159,826百万円となり、前期末に比べ1,258百万円減少しました。主な減少要因は、棚卸資産の減少5,434百万円です。一方で、現金及び現金同等物が4,437百万円増加しました。② 負債負債合計は、35,558百万円となり、前期末に比べ1百万円減少しました。主な減少要因はその他の流動負債の減少697百万円、その他の金融負債の減少612百万円、社債及び借入金の減少526百万円です。一方で、未払法人所得税が1,951百万円増加しました。③ 資本資本合計は、124,268百万円となり、前期末に比べ1,257百万円減少しました。これは、主に自己株式の取得による資本の減少3,819百万円です。一方で、利益剰余金が3,210百万円増加しました。 この結果、親会社所有者帰属持分比率は77.8%(前期末は77.9%)となりました。有利子負債残高は6,072百万円(前期末は7,193百万円)、デット・エクイティ・レシオは0.05(前期末は0.06)となりました。(注)デット・エクイティ・レシオ:有利子負債/親会社の所有者に帰属する持分 3) キャッシュ・フロー当社グループは、当連結会計年度末において50,094百万円の資金を保有していることから、将来の予測可能な資金需要に対して不足が生じる事態に直面する懸念は少ないと認識しています。当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「(1) 経営成績等の状況の概要 2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。当連結会計年度の設備投資額は、3,371百万円(前年同期比19.1%減)となりました。主に主力の通信計測事業を中心に技術革新と販売競争に対処するための新製品開発と原価低減に向けた投資を継続しました。研究開発投資については、9,879百万円(前年同期比0.6%減)となりました。主に新製品開発とソリューションの競争力強化に向けた投資を実施しました。これらの設備投資額及び研究開発投資は、主に自己資金によって賄われました。翌連結会計年度においては、約5,500百万円の設備投資と約11,000百万円の研究開発投資を予定しています。設備投資額は、開発環境基盤強化を目的とした投資等を見込んでおります。研究開発投資については、更なる事業拡大にむけて、主力の通信計測事業においては、競争力の強化、PQA事業については、グローバルビジネス展開を目的とした投資を行っていく他、環境計測事業においては、製品競争力の強化に向けた投資を行います。これらの設備投資額及び研究開発費投資を、主に自己資金によって賄う予定です。 4) 資本の財源及び資金の流動性当社グループの資金需要は、製品の製造販売に関わる部材購入費や営業費用などの運転資金、設備投資資金及び研究開発費が主なものであり、主に営業活動によって獲得した内部資金のほか、直接調達・間接調達により十分な資金枠を確保しています。また、2023年3月に設定した借入枠75億円のコミットメントライン(2026年3月まで有効)により財務の安定性を確保しています。今後とも、大きく変動する市場環境のなかで、国内外の不測の金融情勢に備えるとともに、運転資金、長期借入債務の償還資金及び事業成長のための資金需要に迅速、柔軟に対応してまいります。当期末の有利子負債残高は、6,072百万円(前期末の有利子負債残高は7,193百万円)となりました。また、デット・エクイティ・レシオは0.05(前期末は0.06)となりました。今後ともROEの向上、CCC(注)向上によるキャッシュ・フロー創出及びグループ内キャッシュ・マネジメント・システム等による資金効率化に取り組み、強固な財務体質の維持に努めてまいります。当社の格付(R&I:㈱格付投資情報センター)は、発行体格付が「A」、短期格付が「a-1」となっています。当社は、更なる格付向上に向けて、新たな経営ビジョンのもと、安定した収益を上げる企業としての売上高2,000億円企業を目指してまいります。株主還元については、連結当期利益の上昇に応じて、親会社所有者帰属持分配当率(DOE:Dividend On Equity)を上げることを基本に、連結配当性向50%以上の配当を行うとともに、総還元性向も勘案した株主還元施策も機動的に行っていくことを基本方針としています。また、剰余金については、5G市場における競争力強化、IoTを活用した産業分野への事業拡大、クラウドサービス市場等への事業展開、新成長分野の開拓及び6Gをはじめとした次世代技術の獲得等に向けた戦略的投資(含むM&A)のための資金需要等に備える計画です。このような新規事業への投資も含めて、企業価値の向上に取り組みます。(注)CCC:キャッシュ・コンバージョン・サイクル 5) 経営戦略と今後の方針について経営戦略と今後の方針は、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。 6) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準(IFRS)に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、予想される将来のキャッシュ・フローや、経営者の定めた会計方針に従って財務諸表に報告される数値に影響を与える項目について、経営者が見積りを行うことが要求されます。これらの見積りは過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、結果として、これらの見積りと実際の結果が異なる場合があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4. 重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。 |
※本記事は「アンリツ株式会社」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
連結財務指標と単体財務指標の違いについて
連結財務指標とは
連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。
単体財務指標とは
単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。
本記事での扱い
本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)


コメント