| 会社名 | カゴメ株式会社 |
| 業種 | 食料品 |
| 従業員数 | 連3184名 単1635名 |
| 従業員平均年齢 | 42.1歳 |
| 従業員平均勤続年数 | 17.7年 |
| 平均年収 | 8917248円 |
| 1株当たりの純資産 | 1481.19円 |
| 1株当たりの純利益(連結) | 278.52円 |
| 決算時期 | 年1 |
| 配当金 | 57円 |
| 配当性向 | 49.4% |
| 株価収益率(PER) | 25.8倍 |
| 自己資本利益率(ROE)(連結) | 9.4% |
| 営業活動によるCF | 316億円 |
| 投資活動によるCF | ▲463億円 |
| 財務活動によるCF | ▲5億円 |
| 研究開発費※1 | 50.94億円 |
| 設備投資額※1 | 10.91億円 |
| 販売費および一般管理費※1 | 927.46億円 |
| 株主資本比率※2 | 64.7% |
| 有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
| 1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。(1) トップメッセージ カゴメグループは、「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業になる」という2025年のありたい姿と「トマトの会社から、野菜の会社に」というビジョンを2016年に掲げ、第1次から第3次の3つの中期経営計画(中計)を進めてきました。2025年度は、これまでの10年の活動を締めくくる第3次中計の最終年度であるとともに、次の10年に向けた成長戦略を描く年でもあります。これまでの10年で、当社を取り巻く環境は劇的に変化しました。約4年間に及んだコロナ禍が生活者の価値観や消費行動を大きく変え、地政学的なリスクの高まりを起点とした未曾有のコスト上昇が世界的に広がり、日本経済は長いデフレからインフレに転換しました。さらに深刻化する気候変動の影響を受けて、当社の生命線である農産原材料の調達は、年々厳しさを増しています。そのような中で、持続的な成長を追求してきたこれまでの10年の成果と課題をしっかりと振り返り、当社の次の10年につなげていきたいと考えています。業績の低迷から脱却し、利益獲得力をつけた第1次~第2次中計――――――――第1次中計がスタートする前年度の2015年度、当社は2013年から続く原材料高などの影響により、営業利益率(日本基準)は3.4%にまで低下する大変厳しい経営状況に置かれていました。この危機的な状況から脱却するために、新たな経営改革の断行を宣言し、2016年度から「持続的に成長できる強い企業」を目指す10年間のチャレンジがスタートしました。この10年間の当初の青写真は、第1次中計期間(2016年~2018年)に、徹底した収益構造改革により利益率を回復し、第2次中計期間(2019年~2021年)に、成長の種を仕込みつつ売上収益・事業利益の両方を成長軌道に乗せる。そして、第3次中計期間(2022年~2025年)に持続的な成長を実現するというものでした。第1次中計期間には、全社を挙げた「ムリ・ムラ・ムダ」の撲滅に取り組み、2015年度に3.4%だった営業利益率(日本基準)を、2018年度には5.7%に回復することができました。第2次中計期間では、売上収益・事業利益の両方の成長を目指しましたが、その結果は明暗が分かれました。グラフ①は、第2次中計前年(2018年)の売上収益額・事業利益額(IFRS)を100とした時の、それぞれの年度における指数を表したものです。第2次中計期間においては、事業利益は着実に回復したものの、売上収益を成長軌道に乗せることはできませんでした。成長の種を仕込み新たな売上収益を獲得していく力が不足していることを痛感した期間でした。?グラフ①第2次中期経営計画期間の業績推移 (2018年を100とした場合) 成長に軸足を移した第3次中計――――――――売上収益の成長に課題を残した第2次中計の反省から、第3次中計では目指す成長の方向性をオーガニック成長(既存事業の成長)とインオーガニック成長(提携・M&Aによる成長)の2つに分け、それぞれの推進組織や戦略を明確化しました。国内加工食品事業のオーガニック成長については、全社を挙げた「野菜摂取量を増やす」取り組みと「ファンベースドマーケティング」によりお客様との関係強化を図るとともに、野菜飲料・トマト調味料の需要拡大に注力し安定成長を図ることを基本戦略としました。加えて、野菜スープ・プラントベースフード・DtoC(消費者直接取引)を事業拡張領域に設定し、新たな売上収益獲得に向けた活動を強化しました。国際事業については、海外グループ個社間の連携強化により既存グローバルフードサービス顧客内の供給シェアの拡大を取り組み課題としました。インオーガニック成長については、最重点課題として、人口が増加し続け、しっかりとした社会インフラが構築されている北米市場をターゲットとした事業探索を進めました。その推進組織として、米国成長戦略プロジェクト室や幅広い提携案件などを探索するために事業開発室を設置しました。第3次中計の進捗――――――――2022年から2024年の3年間、オーガニック成長の領域では、国内・国際事業とも、これまでに経験したことのない大幅なコスト上昇に直面することとなりました。特に、当社の主要原材料であるトマトペーストの国際的な市況は、コロナ禍からのリスタートに伴う外食需要の急増と気候変動の深刻化に伴うトマト原材料の作況不良が相まって、急騰しました。また、その他の原材料やエネルギー価格なども地政学的なリスクの高まりを起点として上昇が続きました。この大幅なコスト上昇への対応として、国内加工食品事業においては、2022年度から3年連続で主要商品の価格改定を実施しました。国際事業においても、主要な顧客企業に対して価格交渉をきめ細かく行い、原価上昇に相当する価格改定に注力しました。また、価格改定と両輪で、国内加工食品事業においては第3次中計の基本戦略とした野菜飲料・トマト調味料の需要喚起策を積極的に展開しました。野菜スープなどについても、粘り強く販売拡大に取り組みました。インオーガニック成長の領域では、新たに設置した推進組織により、様々な提携・M&A案件のリスト化を進めました。そのリストの中から、国際事業の成長加速と競争力あるトマト加工事業の構築を目的として、2024年1月に米国カリフォルニア州Ingomar Packing Company, LLC(Ingomar)の連結子会社化を行いました。これらの活動により、国内加工食品事業は価格改定に伴い減少した販売函数を想定より早いペースで回復することができ、減少が続いていた事業利益は2023年に増益に反転しました。国際事業は、トマトペースト市況高の追い風とIngomarの連結子会社化により売上収益・事業利益ともに大きく拡大しました。その結果、2024年の業績は第3次中計で目標としていた売上収益3,000億円・事業利益240億円を上回りました。また、カゴメグループの事業構造は、グラフ②に示したように国際事業の売上収益・事業利益の構成比が高まり、特に事業利益においては、国内・国際がほぼ半々となる大きな変化を遂げました。?グラフ②セグメント別構成比推移 2016年度からの3つの中計において、当社は「健康寿命の延伸」「農業振興・地方創生」「持続可能な地球環境」の3つの社会課題の解決に取り組み、それを持続的な成長につなげる活動を続けてきました。それぞれについて、ここで振り返り、成果と課題について整理したいと思います。健康寿命の延伸―――――――― 「健康な毎日を送るためには、野菜をたくさん摂る方が良い」ということは、世界中で行われた様々な研究により明らかにされています。それらを踏まえ、厚生労働省は1日350g以上の野菜摂取を推奨しています。しかしながら実際の摂取量は260~290g程度にとどまっている状況が長期にわたり続いています。 この課題の解決に向けて、当社は2020年から「野菜をとろうキャンペーン」をスタートしました。中心となる活動は、野菜の推定摂取量を「見える化」し、多くの生活者に野菜不足を自覚していただくために開発した機器「ベジチェックR」を普及させることです。これまでに、小売店頭への設置や健康経営を掲げる企業への案内などを続けてきたことで、2024年末の累計測定回数は1,300万回を超え「ベジチェックR」の認知は着実に広がりました。しかしながら、厚生労働省の調査では日本人の野菜摂取量は減少傾向が続いています。生活者の食生活に対する行動変容を促進し、実際に野菜摂取量を増加するといった社会的にインパクトのある成果を生み出すことを目指して、これからも取り組みを強化していきます。 農業振興・地方創生/持続可能な地球環境――――――――「農業振興・地方創生」に関しては、その地方の特徴的な果物を野菜生活ブランドに配合し全国に広める「地産全消」という考えに基づく「『野菜生活100』季節限定シリーズ」の展開を2010年から継続しています。また、国産ジュース用トマトの生産者の方々に対しては、高齢化・人手不足の対策として、収穫作業の機械化に取り組んでいます。当社が開発した収穫機の貸与や機械収穫に合わせた栽培方法の指導など、産地の維持・拡大のためにフィールドパーソンといわれるカゴメ社員が直接生産者のもとにお伺いして様々なご要望にお応えしています。「持続可能な地球環境」に関しては、2017年に制定した品質・環境方針に基づき、温室効果ガス排出量の削減に向けた太陽光発電の導入やバイオマスエネルギー利用の取り組みを、海外を含むカゴメグループの全体で進めています。また、2020年には「カゴメ プラスチック方針」を制定し、2030年までに飲料紙容器に添付されている石油由来素材のストローをゼロに、飲料PETボトル樹脂の50%以上をリサイクルまたは植物性素材に置き換える対応を行っています。以上のように3つの社会課題解決への取り組みを着実に進展させてきました。今後は、これらの取り組みをさらに強化し、当社の持続的な成長へと確実に結びつける力を一層高めていきます。 2025年度は、トマトペーストの国際的な市況が下降に転じるという事業環境の中でスタートしました。この変化は、2024年度の加工用原材料トマトの増産によりトマトペースト加工量が増加し、これまでの在庫不足が解消したことによるものです。このようなトマトペーストの市況変動は想定していたことですが、この影響を受ける2025年の経営環境は大変厳しいものになります。しかしながら、その環境下においても第3次中計の目標である売上収益3,000億円・事業利益240億円の2年連続での達成を目指し、次の10年に向けた収益基盤を確固たるものにしたいと考えています。2025年度に取り組む国内加工食品事業の重点課題は「利益の回復と挑戦の継続」です。トマトペーストを除く様々なコストの上昇は継続すると見込まれます。その中で、コストが上昇に転じる前の2021年度の事業利益の水準を超え、利益の回復を確かなものにすることを目標とします。そのために、2025年は主力商品の需要拡大に引き続き注力します。飲料カテゴリーは、トマトジュースの好調を維持する施策とともに、2025年に発売30周年を迎える「野菜生活100」のプロモーションを強化します。食品カテゴリーは、日本一のナポリタンを選ぶイベント「カゴメ ナポリタンスタジアム2025」を軸に、トマトケチャップ・トマト調味料などの情報発信強化に取り組みます。また、挑戦の継続については、これまでの活動に加えて、アーモンドミルクにフォーカスした事業領域の拡張を進めます。具体策として、2025年の春からアーモンドミルクブランド「アーモンド・ブリーズR」の本格的なマーケティング展開をスタートします。国際事業の重点課題は、「海外成長の加速」です。トマトペースト市況の影響を受けにくいトマト二次加工品の量的な拡大により、トマト一次加工品の収益減少をリカバリーしていきます。具体的には、グローバルフードサービスからローカルフードサービスへの顧客拡大やトマト以外のフレーバー商品の拡充に取り組みます。同時に、トマト一次加工品については、取引価格のモニタリング頻度を上げ、機動的な価格政策を打ち出すことで、収益ボラティリティの抑制を図ります。また、インオーガニック成長に関しては、当社のバリューチェーンの中長期的な強化に資する様々な可能性についての検討を継続します。 2035年ビジョンの策定――――――――現在、カゴメグループの次の10年の指針となる「2035年ビジョン」の策定を進めています。策定に先立ち、気候変動の深刻化やAIの急速な普及など、予測のつかない変化の激しい時代における長期ビジョンの必要性について社内で議論を重ねました。その結果、やはりカゴメグループには長期ビジョンが必要だという考えに至ったのは、当社が「農から価値を形成する」ことを起点として事業を展開しているからです。農業は1年を基本的なサイクルとしています。当社は創業から126年になりますが、その間にトマトを栽培した回数はわずか126回にしかなりません。1年で膨大な回数の生産が可能な工業製品とは異なり、農業においては、新しい品種や栽培技術を導入するだけでも、相応の時間がかかります。そのため、10年程度のスパンで進むべき方向を定め、そこに向けて一貫した方針のもと一歩一歩進んでいくために長期ビジョンが必要だと考えました。この考えに基づいて、2023年の11月から「2035年ビジョン」の策定に着手し、これまで約1年間、様々な議論を重ねる中で、当社が目指すべき2つの方向性が見えてきました。ひとつは、農と地球環境が抱える課題に対応するソリューション開発力をさらに高めていくことです。具体的には、気候変動の深刻化に対応する品種や栽培技術の開発などにより、低環境負荷とコスト競争力の両立に取り組み、持続可能な農業の実現に貢献したいと考えています。もう一つは、食と農を起点とした体と心の健康への貢献です。これまでの野菜を通じた身体的な健康増進への取り組みに加え、心の健康にまで活動の領域を広げ、一人ひとりの健康な毎日の実現に貢献したいと考えています。2024年10月にはこの2つの方向性を社内向けに提示し、現在、それぞれの詳細化を進めています。今後、さらに社内で議論を重ね、できる限り多くの社員の想いを盛り込んだビジョンにしていきたいと思っています。 次の10年においても変わらず継続すること―――――――― 「2035年ビジョン」の実現に向けては、新しい可能性に対して絶えずチャレンジすることが重要です。それと同時に、個々のチャレンジに一貫性を持たせる「軸となる考え」が必要になります。それは、これまでの10年の活動の中で培われた次の3つになると考えています。1つ目は「社会課題を解決することで社会に貢献し、それを通してカゴメも成長していく」という考え方です。これまで当社は3つの社会課題の解決に取り組んできました。しかしながら、「社会課題解決への取り組みを振り返る」で述べたように、様々な活動が進展しているものの、それらを当社の持続的な成長につなげる力はまだ十分ではありません。次の10年においては、この考え方を変えることなく、よりインパクトある成果の創出を目指していく必要があります。2つ目は、「農から価値を形成し、お客様に届けていく」という考え方です。これは創業者の蟹江一太郎が日本で初めて食用トマトの栽培にチャレンジした時から一貫して変わらない当社のDNAです。そして、世界的にもユニークな当社の「農を起点とするバリューチェーン」をさらに進化させ磨き続けることが、競争力の強化につながっていくと考えています。3つ目は、「日本を含めたグローバルな市場で成長を追求していく」という考え方です。前述したように、これまでの10年の活動によって、当社の原材料トマト加工量は世界第3位のポジションとなり、北米・ヨーロッパ・オーストラリア・日本に主要な事業拠点を有する体制が強化されました。このグローバルネットワークの連携をさらに密にし、シナジーを生み出していくことで成長を加速していくことができると考えています。 事業基盤の強化――――――――次の10年において、当社が持続的に成長していくためには、それを支える事業基盤の強化も必須です。特に重要となるのは、「農業研究・健康研究の強化」と「働きがいのある会社の実現」だと考えています。気候変動の深刻化により、これから農産原材料の安定調達はますます困難になります。自らの力でこの状況を変えていくためには、バリューチェーンの最も川上に位置する農業研究の強化が重要です。そこに向けて、2023年度から農業研究の体制整備を行ってきました。2023年10月には、国内外に分散していた農業研究拠点を一つに集約したグローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンターを設立、さらに2024年9月には、米国カリフォルニア州シリコンバレーに、運用総額50百万米ドル・運用期間10年のコーポレートベンチャーキャピタルを立ち上げました。今後、革新的な農業技術を有するスタートアップ企業とのオープンイノベーションを進めるとともに、それらの知見をカゴメグループ内に取り込み、気候変動に対応した品種開発や栽培技術開発を加速していきます。また、お客様の健康への貢献が、当社の提供する価値の中核であることは、これからも変わりません。その貢献のフィールドを体の健康から心の健康に広げていくことを「2035年ビジョン」策定のプロセスで議論しています。その方向性に合致した、心の健康への研究領域拡大にも取り組んでいきます。「働きがいのある会社の実現」については、第3次中計期間において、エンゲージメントサーベイの導入や心理的安全性という考え方の浸透に注力してきました。しかしながら、それらによって組織と個人の双方が高いモチベーションを持って成長し続ける企業風土に変われたかと問われれば、いまだ心もとない状況にあります。その原因の一つは、当社の現在の人事処遇制度にあると考えています。入社から長い時間をかけて習熟することを前提とした当社の人事処遇制度は、仕事のみならず自分の生き方を総合的にプランニングする「ワーク・ライフキャリア」という考え方が広がったり、一つの会社にとどまらずスキルを高めながらキャリア形成する人が増えたりしている就労観の大きな変化に対応できていません。この状況を変え、自らイノベーションを生み出し、成長し続けることができる「自律自走型」チームを生み出していくために、2024年度から人事処遇制度の抜本的な改革に着手しました。カゴメの成長の原動力はこれからも人であり、「人を大切にする」という基本的な考え方は堅持しつつ、多様な就労観に対応できるよう、働き方の選択肢を広げていきたいと考えています。これまでの10年の取り組みで、事業の構造、私たちの意識、そしてステークホルダーの皆様からの見られ方も含めて、カゴメは大きく変わりました。長年カゴメを支えてくださっているファン株主の皆様、そして国内外の投資家の皆様とのコミュニケーションを深め、新しい視点からのご意見をいただくことが、カゴメグループのさらなる成長につながっていくものと思っています。農から価値を形成することで社会課題を解決し、その結果カゴメグループも成長していくという考え方は今後も継続し、畑から食卓までをつなぐユニークなバリューチェーンを進化させていきます。それにより、2025年度の業績目標を達成するとともに、次の10年も企業価値向上に尽力してまいりますので、引き続きのご支援をお願いいたします。代表取締役社長 (2) 会社の経営の基本方針カゴメグループは、「感謝」「自然」「開かれた企業」を企業理念としております。これは、創業100周年にあたる1999年を機に、カゴメグループの更なる発展を目指して、創業者や歴代経営者の信条を受け継ぎ、カゴメの商品と提供価値の源泉、人や社会に対し公正でオープンな企業を目指す決意を込めて、2000年1月に制定したものです。また、カゴメグループは今後も「自然を、おいしく、楽しく。KAGOME」をお客様と約束するブランドステートメントとして商品をお届けしてまいります。 当社の企業理念、ブランドステートメントから長期ビジョンまでの関係は以下のとおりです。 (3) カゴメの価値創造プロセス当社は、「企業理念」をゆるぎないカゴメの価値観、「ブランドステートメント」を社会やお客様への約束として経営の根底に置くことで、組織が一貫した行動をとっています。環境変化を予測し、成長を支える経営資本を活用することで、農から価値を形成するバリューチェーンを、多様なパートナーと協業しながら進化させています。現在は、国内加工食品事業、国際事業、その他に含まれる国内農事業やGARBiCと、それを支える価値創造活動により、農と健康と暮らしをつなぐ商品とサービスを提供しています。事業を通じて「健康寿命の延伸」「農業振興・地方創生」「持続可能な地球環境」の3つの社会課題解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業となることで、社会価値と経済価値を創出します。 (4) 農から価値を形成するグローバルバリューチェーン 1 品種開発・栽培創業時から「畑は第一の工場」として、新品種や栽培技術開発など農業資源開発に携わってきました。近年、農業を取り巻く環境は、世界的に大きく変化しており、気候変動に伴う異常気象の発生や農家の高齢化に伴う栽培面積の縮小など、多くの課題を抱えています。カゴメは、環境変化に対応した品種や、環境負荷の低い栽培方法などを開発することで持続的な農業を実現します。 ① 品種開発、栽培技術開発の基盤強化持続可能な農業の実現に向けた開発能力を高めることを目的として、国内外に分散していた品種開発や栽培技術の開発部門を一つの組織に結集し、2023年10月にGARBiCを設立しました。この組織の傘下にはこれまで日本の研究所に設置していた農資源開発チームや、ポルトガルのアグリビジネス研究開発センター、種子の開発・生産・販売を行うUGなどを配置しています。2024年には、農業分野の新技術や新サービスが多様かつ迅速に展開されている米国カリフォルニア州に、米国拠点「GARBiC USA」、及びCVCを新たに設立しました。GARBiCとIngomar、契約農家が強固に連携し、加工用トマト生産者が抱える課題の抽出と、対応する品種や栽培技術の開発・実装・事業化までをグループの連携によって実現することで、農を起点とした一貫した価値形成を行っていきます。農業研究・開発基盤組織役割技術開発検証・実装事業品種開発栽培技術開発GARBiCGARBiC USA技術開発(品種、先端育種、栽培)農業技術を有するスタートアップへの出資・協業(CVC)※ 2025年1月出資実績:1件○○○ 農業資源技術開発部技術開発(品種、先端育種、栽培)○○○ UG品種開発、種苗販売○ ○○DXASAI営農サービス提供 ○○Ingomar、契約農家課題抽出、技術検証・実装 ○○ ② コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)の設立農業分野における中長期でのイノベーションの源泉になる技術探索及び事業開発を加速するため、米国カリフォルニア州シリコンバレーのLos Gatosを拠点とするベンチャーキャピタル、SVG Venturesと共同で、コーポレートベンチャーキャピタル(ファンド名:SVG Ventures Sunrise Agri Fund)を2024年9月20日に設立しました。運用総額は50百万米ドル、運用期間は10年間となります。2024年11月には米国カリフォルニア州で実施されたアグリテック、フードテック関連のスタートアップ、大企業、政府機関などを対象としたイベント「Global Impact Summit 2024」に参加、Global Impact Summit 2024 登壇の様子GARBiC責任者である執行役員の上田がスピーカーとしてCVC設立目的などの説明を行い、多数の反響がありました。このイベントは水資源、エネルギーなど様々な環境視点での情報共有、関係者の協創を目的としており、世界各国から400名以上が参加しました。 2 生産(一次加工・二次加工)畑で収穫した農作物を原材料として、製品を生産する工程には主に一次加工と二次加工があります。一次加工は、生の農作物を扱いやすい形に加工する工程であり、野菜のペーストやピューレーなどが主な製品です。二次加工は、一次加工した農作物に調味料や野菜などの他の素材を加えて加工する工程であり、トマトケチャップやピザソース、野菜飲料など様々な製品を製造しています。 ① Ingomar(一次加工)における2024年の活動(PMI)2024年1月にIngomarを連結子会社化し、統合のためのプロセスを計画に沿って進めてきました。主なPMI※の内容については、下表の通りです。2024年夏の加工用トマト製造からカゴメの品質管理を導入し、品質ロスを削減するなどの効果が得られました。農業研究においては、Ingomar原材料部門、契約農家技術者との協業により、カリフォルニア州におけるトマト栽培の技術的ニーズを把握しました。干ばつによる水価格の高騰や取水制限、土壌病害、耐乾燥・耐塩性品種、労働コスト、熱波影響、環境配慮など農家が抱える問題は多岐にわたります。重要性と実現可能性から優先度を設定し、課題解決への取り組みを開始しています。※ PMI:Post Merger Integration M&Aが成立した後、統合による効果最大化を目的として行われる一連のプロセス 主なPMIの内容農業研究 ? 重要性と実現可能性から課題優先度を設定① 水資源に対するソリューション開発② 土壌健全性に向けた調査研究 グループ間連携 ? CEOのカゴメ・フード・インターナショナルカンパニー経営会議への参加? グループ間での技術者交流 ——————————– ——————————–生産効率品質改善 ? 品質管理基準(KBMP)導入による 品質改善? カスタマーサービス品質の向上、体制整備? 加工用トマト栽培に関する ビッグデータ解析開始 経営基盤の向上 ? 決算期、会計制度、会計監査人統一? J-SOX対応? カゴメグループ与信力を活用した金利削減 MESSAGE世界のトマト市場で存在感を示す!Ingomarへの初めての出向者として北米に渡り、主に製造・品質におけるPMIに取り組んでいます。2024年トマトシーズンでは、海外グループ共通の品質管理基準(KBMP)の導入による品質改善を進めました。それにより製造期間中の品質事故をゼロにすることができ、品質ロスに伴うコストの抑制を実現しました。また、今後の中長期的なシナジー創出に向けて、原材料となるトマトの栽培状況や品質に関するデータのビジュアライズやビッグデータ解析にも取り組んでいます。私の専門である品質管理とデータ分析スキルを活かして、カゴメグループとIngomarの成長に貢献し、世界で存在感のあるトマトカンパニーとなれるように努めます。ProfileKFICグローバルトマト事業部橋本 和幸 ② 国際事業の構成の変化2024年1月にトマト一次加工品を製造・販売しているIngomarを連結子会社化しました。2024年度のIngomarの売上収益は577億円であり、国際事業に占めるトマト他一次加工の売上収益構成比は2023年度から29point上昇しました。トマト他一次加工は、トマトペースト市況の変動影響を受けやすいため、国際事業の業績のボラティリティがこれまでより大きい構造へと変化しました。この影響を最小限に抑制するため、一次加工品の生産効率・品質の向上、顧客関係性強化による競争力の向上や、二次加工品の売上拡大に引き続き取り組みます。国際事業セグメント別構成比 TOPICS トマトペースト市況トマトペースト市況トマトペーストの市況は、生産各国の加工用トマト生産量とトマトペーストの消費量のバランス(在庫量)によって変動します。加工用トマトの主な生産地は米国、中国、ヨーロッパなどです。2022年頃から気候変動の影響による干ばつや水不足が発生し加工用トマトが十分に確保できなかったことにより、トマトペーストの生産量は減少していました。一方コロナ禍によって停滞していた世界経済の再開により消費量が膨らみ、 世界的な在主要国別の加工用トマト生産量とトマトペースト消費量推移 庫量の減少により価格が上昇していました。2023年、2024年の加工用トマトの増産により、在庫不足は解消される見通しです。米国におけるトマトペーストの在庫状況加工用トマトの一大産地でありカゴメグループの主要な市場の一つである米国では、2023年、2024年の増産により、トマトペーストの在庫率が回復し、在庫不足は解消されています。 ③ 国内加工食品(二次加工)工場における原価低減の取り組み国内加工食品事業では、原材料価格高騰やエネルギー費の上昇に対し、生産効率の向上、コスト削減など原価低減活動に取り組んでいます。工場においては製造工程で発生するロス率について、2025年末までに2022年対比で半減することを目標に「ロス改革活動」を推進しています。ゼロベースで工程や方法の見直しを進め、2024年までにロス率を約4割削減しました。その取り組みの一例が、茨城工場へのエアピグ装置の導入です。これまで生産終了時に配管内に残った製品を回収できないことから廃棄せざるを得ませんでしたが、本装置の導入により圧縮空気で回収するこ茨城工場に設置したエアピグ装置 とが可能になりました。本件は、製造ラインの高効率化や環境に配慮した食品ロス抑制につながる取り組みとして、農林水産省より食品原材料調達安定化対策事業の補助金交付も受けています。ロスを削減することで、原材料やエネルギー使用量が減少し、GHG排出量も減少します。環境負荷低減のためにも、継続して取り組んでいきます。 3 商品開発・需要創造創業以来、野菜や果実が持つ本来の味や栄養素を大切にし、自然素材を活かした商品づくりをしてきました。これまでの商品開発で蓄積した加工技術、配合などの知見を磨いて新たな商品開発に活かしています。国際事業や日本国内のBtoBビジネスにおいては、顧客が抱える様々な悩みや要望に対して、商品やメニュー開発などのソリューションの提案に注力しています。BtoCビジネスでは、野菜の提供形態の多様化と、提供市場を多点化することにより、日本やアジアでの野菜の需要を喚起し、野菜不足を解消する商品やサービスを提供しています。 ① BtoBビジネスのソリューション力強化 カゴメグループの主な顧客の一つに、グローバルフードサービス企業があります。世界の各エリアに展開しており、今後はインドなどでも店舗数が増加する見込みです。当社はトマトソースやピザソースなどの二次加工品の生産拠点を米国、ポルトガル、オーストラリア、台湾、インドなどに保有していることから、グローバルで安定して高い品質の商品を供給できることが強みです。商品開発の知見やノウハウの共有など、グループ間の連携をさらに強化することで、グローバルフードサービス企業向けの売上収益の拡大を目指しています。 Kagome Inc.製造ライン ② 長期にわたり築いてきたブランド力日本国内においては、野菜飲料やトマトケチャップなど長期にわたり築いてきたブランド力によって、高いシェアを獲得しています。特にトマトジュースは発売から90年以上が経過しますが、2024年は過去最高の売上収益となりました。また野菜生活は2025年で発売から30年となります。お客様の健康習慣として長期にわたり愛用していただくために、これからも自然のおいしさにこだわった商品開発を進めていきます。野菜生活30周年ロゴ MESSAGEASEANのお客様にとって不可欠な存在を目指してグローバルコンシューマー部のミッションは、グローバルでのカゴメ「野菜生活100」ブランドの認知を広げ、生活者の健康増進に貢献することです。私はシンガポール・タイ・マレーシアの、3ヶ国でブランド認知拡大に向けて活動しています。ASEANは、野菜を摂りたいという意識やカゴメ野菜飲料の認知率がまだまだ低い市場です。そこで「ベジチェックR」を活用した野菜不足の可視化・野菜や野菜飲料の啓発と、試飲によるおいしさ体験の創出により、地道に丁寧にお客様へ価値を伝えています。将来カゴメの野菜飲料が、ASEANのお客様にとってもなくてはならない存在になることを目指して、事業拡大に励んでいきます。Profileマーケティング本部グローバルコンシューマー部盛本 理紗 (5)企業価値向上へ向けた取り組み 当社は、企業理念(「感謝」「自然」「開かれた企業」)のもと、事業を通じて社会価値と経済価値を創出することにより企業価値を最大化していきます。また、中長期において「ROEの向上」と「資本コストの低減」に重点的に取り組むことで、持続的な企業価値向上を目指していきます。 ROEの向上企業価値向上資本コストの低減■収益力の向上■財務健全性・資本効率性の両立■非財務(ガバナンス、リスクマネジメント、 環境、人権、人的資本など)の取り組み■情報開示の拡充、株主・投資家との対話など ● ROEの向上当社は、企業価値向上の最重点指標にROEを掲げています。収益力の向上、財務健全性と資本効率性の両立を柱として、第3次中期経営計画期間の最終年度である2025年度はROE9%以上の達成を目標としています。今後もROEを高め、安定的な株主還元を行うことで企業価値を向上していきます。 ● 効率的な成長投資の実行と株主還元設備や事業への投資においては、経営企画、法務、財務経理などの専門部署のメンバーから構成される投資委員会により、各部署から起案された投資について採算性やリスク評価を踏まえた審査を経た上で、経営会議及び取締役会で決定します。投資後も、同委員会が継続的にモニタリングを実施し、効果を確認します。第3次中期経営計画においては、オーガニック成長向けに約400億円の投資計画を予定しています。中長期の成長に向けて、Ingomar含め国際事業へ積極的に設備投資を行っていきます。また、M&Aを含めたインオーガニック成長のための事業投資300~500億円についても計画通り進捗しています。引き続き、オーガニック、インオーガニック両面で、成長に向けた投資を実行していきます。また、株主の皆様への利益還元を、経営上の最重要課題の一つと認識し、2022年から2025年の投資判断基準対象指標基本要求水準事業投資IRR(内部収益率)※110%+α※2設備投資PBP(回収期間)※34年 ※1 Internal Rate of Return:事業計画から得られるフリー・キャッシュ・フローの現在価値から初期投資額を差引いた金額がゼロとなる割引率※2 αは国や地域に応じたカントリーリスク※3 Payback Period:投資金額が回収されるのに要する期間 投資のモニタリング体制● 執行後5年間を対象● 年1回の取締役会・経営会議にて報告 4ヵ年で進めている中期経営計画期間中における株主還元方針として、総還元性向40%を掲げています。本方針に基づき、株主還元のさらなる充実と、資本効率の向上を目指し、配当と併せて自己株式の取得も行っています。今後も成長投資と株主還元を両立し、持続的成長を目指していきます。 第3次中期経営計画期間中の資金調達及び資金需要、キャッシュ・フロー 固定投資の推移 ● 売上総利益率の維持・向上の取り組み 当社は、持続的に収益力の向上を実現する上で、売上の拡大に加えて、売上総利益率の維持・向上に取り組んでいます。具体的には、各事業の特性に応じて、原材料費の削減や労働生産性の向上、製造ラインの自動化など、生産現場における恒常的な原価低減のほか、コスト上昇時の機動的な価格改定により売上総利益率を維持・向上しています。また、「畑は第一の工場」としてものづくりを営む当社グループにとって、中長期的にも安定し※ 企業結合会計適用によりIngomarの在庫の時価評価で原価が上昇することに伴い、一時的に低水準となるた売上総利益率を確保する事業構造に変革していくために、高品質の農産原材料の調達ネットワークの拡大や、水不足や気候変動に適応した品種開発、栽培技術の確立など、グローバルバリューチェーン全体のコスト構造を変革する取り組みを進めています。 ● 全社ROIC管理による資本効率の向上当社は、利益を獲得するだけではなく、投下した資本の適切性や効率性を測定するため、2021年度よりカゴメROIC※による管理を導入しています。カゴメROICは、獲得したEBITDAに対して投下した資本の効率性を測定し、貸借対照表項目を各要素に分解することで、改善すべき課題を明確にすることを目的としています。 ※ カゴメROIC :EBITDA(事業利益+減価償却費)÷投下資本 2024年度のカゴメROICは、EBITDAマージンは0.4point改善したものの、投下資本の増加により、前年度から0.8point悪化し、12.4%となりました。2025年度はEBITDAの減少により0.9point悪化し、11.5%を見込んでいます。各事業の状況は以下の通りです。・国内加工食品事業:原材料の価格高騰や物流費増加によるEBITDAの減少により1.8point悪化・国際事業:トマトペースト市況の下降影響による減収によるEBITDAの減少により1.7point悪化 (ROICツリー展開)当社においては、ROICツリーを資本効率向上のためのコントロールドライバーとして活用しています。ROICツリーの展開により、ROICからブレイクダウンしたBS指標を各部門のKPIに落とし込むことで、これに基づくアクションプランを各社・各部門にて設定し、自律的にPDCAを回すことで指標の改善を図っています。その上で、各社・各部門にて効率を意識した改善活動を行い、最適なサプライチェーン体制の構築をはじめとした取り組みを進めています。 国内加工食品事業2024年度:17.3%→2025年度:15.5% 国際事業2024年度:11.2%→2025年度:9.5% 主なKPIと担当部門 ● 売上債権回転日数(営業本部) ● 原材料在庫高(調達部) ● 社内加工材在庫高(生産部) ● 製品在庫日数(SCM本部) ● 海外子会社の各社別ROIC(カゴメ・フード・インターナショナル・カンパニー) ● 自己資本比率・信用格付の維持自己資本比率 当社は財務基盤の安定を前提に、ROEの向上を進めます。自己資本比率50%以上を維持するとともに信用格付においてシングルA以上を目指します。 2022年度2023年度2024年度2025年度連結52.8%49.8%51.3%50%以上格付AAA- (6) 第3次中期経営計画の進捗SPECIAL FEATURE カゴメの10年と現在地、次なる10年へ 2025年のありたい姿、ビジョンに向けて歩みを進めた10年。2016年に、2025年のありたい姿を「食を通じて社会課題の解決に取り組み、持続的に成長できる強い企業になる」、ビジョンを「トマトの会社から、野菜の会社に」と定め、10年間にわたり3期の中期経営計画を進めてきました。事業活動を通じて、日本や世界が抱える3つの社会課題「健康寿命の延伸」「農業振興・地方創生」「持続可能な地球環境」に取り組み、社会課題解決と持続的成長の実現を目指しています。第3次中期経営計画最終年度である2025年度の定量計画は、売上収益3,000億円、事業利益240億円、事業利益率8.0%です。トマトペースト市況の上昇影響を受けた2024年度の業績を下回るものの、第3次中期経営計画の目標値である売上収益3,000億円、事業利益240億円を2年連続で達成する計画です。特集においてはこの10年間で特に大きく変化した5つのポイントと強化された経営資本、今後の課題について説明します。 ●財務指標売上収益拡大と利益獲得力向上売上収益はオーガニックの成長に加え、2024年のIngomarの連結子会社化などにより、2025年度も第3次中期経営計画の目標である3,000億円を達成する計画です。利益については、2016年度の営業利益率(日本基準)5.4%から、2025年度の事業利益率8.0%(IFRS基準)まで改善する計画です。この期間においては、コロナ禍や原材料価格の高騰など利益に影響を及ぼす様々な出来事がありましたが、国内事業・国際事業ともに価格改定や収益構造改革の実行により、コストが上昇する局面においても利益を獲得する力をつけることができたと考えています。10年間の主な取り組み(売上収益拡大、利益獲得力向上施策)トップラインの拡大コスト低減基盤整備? 需要創造活動? 価格改定? 商品のバリューアップ(機能性表示など)? ファン化の促進? 原価低減活動? 工場における生産効率向上? 不採算商品の整理? 調達先の分散? 国際事業、農事業の収益構造改革? 間接業務の業務効率化(カゴメアクシス株式会社設立)※? 物流効率化(F-LINE株式会社など)? 農事業の会社分割(カゴメアグリフレッシュ株式会社設立)? IFRS導入による収益管理強化? ROIC管理による資本効率向上 ※ カゴメアクシス株式会社は、2025年1月にシェアードサービス機能をカゴメ株式会社に統合今後の課題●トマトペースト市況の変動影響を受けることを前提とした、安定的な利益成長●カゴメグループ全体での原材料調達最適化・生産性の向上●ポートフォリオ改革やROICマネジメントなどを通じた資本効率改善による、企業価値向上 ●海外での事業展開海外における事業拡大海外における事業は、農業生産、商品開発、加工、販売までを行う国際事業※、アジアにおいてコンシューマー向けに野菜飲料を販売しているグローバルコンシューマー事業、グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンター(GARBiC)に含まれる研究・開発、種苗販売、AI営農サービス販売などを各国で展開しています。そのうち、国際事業においては、2024年度売上収益が1,493億円、事業利益が139億円となり、国際事業がグループ全体に占める構成比は売上収益は48.7%、事業利益は51.4%に拡大しました。これは、グループ会社のグローバルフードサービス企業との取り組みの強化や、収益構造改革の成果に加え、2024年1月に連結子会社化したIngomarの増分が寄与しています。※ 国際事業(2024年時点)に含まれる子会社:KAGOME Inc.,Ingomar,HIT,Vegitalia,Kagome Australia,Taiwan Kagome,KF india(正式名称は、以下海外拠点地図内に記載)10年間の主な取り組み(海外における事業拡大施策)一次加工の安定供給二次加工の拡大BtoCへの挑戦基盤整備? Ingomar連結子会社化? HITの収益構造改革? KAUにんじん栽培 ? グローバルフードサービス企業との取り組み強化? 供給力向上のための設備投資? KAU新素材への挑戦(にんじんパウダー)? 新市場(インド)の開拓? アジア事業の整理? PBI買収・売却? アジアでの野菜飲料輸出販売への挑戦 ? 国際事業のカンパニー化 ? 海外グループ共通の品質基準Kagome Best Manufacturing Practice(KBMP)の展開? 投資委員会などによるリスクマネジメント体制基盤強化 海外の主な拠点(国際事業・グローバルコンシューマー事業・GARBiC)カゴメグループの海外拠点は、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジアなどグローバルに展開しています。これらの各拠点が連携し、事業の拡大を目指します。特に北米には加工用トマトにおける一連のバリューチェーンを保有しており、今後も注力するエリアです。 国際事業セグメントのグループ会社企業名一次加工二次加工2016年度売上※日本基準2024年度売上 ※IFRS基準① Ingomar〇 -577億円② Kagome Inc. 〇200億円506億円③ HIT〇〇84億円226億円④ KAU〇〇62億円130億円⑤Taiwan Kagome 〇23億円60億円 今後の課題●トマト加工におけるグローバルバリューチェーンの競争力の強化と、 シナジーの創出●二次加工品のフードサービス企業向けのソリューション提案力向上による、 安定的な利益創出●インドなど、新たな市場での競争力あるバリューチェーンの構築●為替や金利など金融リスクへの備え ●健康「健康寿命の延伸」への取り組みビジョンに「トマトの会社から、野菜の会社に」を掲げ、野菜の栄養を手軽に・おいしく摂取できる商品の開発や野菜の機能性研究、健康価値の情報提供などの取り組みを進めました。また、野菜に加え、植物性の食材からなるプラントベースフードにも領域を拡大してきました。① 野菜摂取を促進する主な取り組み2020年から「野菜をとろうキャンペーン」を開始しました。野菜摂取に対する行動変容の促進、ナトカリバランスの普及※などを通じて日本人の野菜不足解消への取り組みを進めてきました。手のひらで簡単に推定野菜摂取量を測定できる「ベジチェックR」を、自治体や企業のイベント、小売店の店頭などに設置し、累計測定回数は1,300万回を超えました。野菜摂取の行動変容の促進、野菜の栽培や収穫などの体験ができる機会の提供、多様な商品の発売、メニュー提案などを通じ、健康寿命の延伸への取り組みを進めました。※ ナトリウム(塩)とカリウム(野菜や果物など)の摂取バランスの良い食生活を送ることの普及 10年間の主な取り組み(野菜摂取促進施策)野菜摂取行動変容の促進ファンベースドマーケティング野菜摂取商品開発・販売基盤整備? 健康サービス事業の開始? 野菜摂取推進プロジェクト? 野菜をとろうアプリの提供? ベジチェックRレンタル開始? ファンコミュニティサイト「&KAGOME」の拡大? 野菜生活ファーム設立? 植育からはじまる食育活動の開始? 機能性表示によるバリューアップ? スムージー市場創出? 野菜スープの売上拡大 ? 食健康研究所の設置 ? ナトカリ普及協会設立? 産官学との連携? 管理栄養士ラボ設置 ② 植物性食品への挑戦2022年からの第3次中期経営計画の成長戦略の一つに、新領域である植物性領域への挑戦を掲げ、取り組みを進めてきました。「プラントベースフード」とは植物性の食材からなる食品全般のことを指し、健康的でサステナブルな食品として注目されています。2019年にはプラントベース食品の発売、2021年にはプラントベースフードブランドを展開するスタートアップ株式会社TWOとの業務提携契約の締結を行いプラントベースエッグやプラントベースチーズなどを共同開発し発売してきました。飲料では、2024年9月にBlue Diamond Growersとライセンス契約を締結し、アーモンドミルク市場に参入しました。カゴメの商品開発、マーケティング、営業などのリソースを活かし、日本のアーモンドミルク市場の新しい需要創造に向けて取り組みを進めていきます。10年間の主な取り組み(植物性食品の拡大施策)プラントベースフード(NB)プラントベースフード(協業)植物性ミルク? 野菜由来のうまみ成分を含んだ「野菜だし」の発売? 野菜と豆でできたレトルト食品シリーズの発売? 外食向けヴィーガン対応メニューの提案? プラントベースフードのスタートアップ株式会社TWOへの資本参加、及び共同開発商品の発売 ? 「畑うまれのやさしいミルク」の発売・終売? Blue Diamond Growersと製造・販売のライセンス契約締結 今後の課題●野菜摂取のさらなる行動変容促進や、多様な商品・サービス展開による、野菜不足の解消●スープや植物性食品など新領域への挑戦 ●環境「持続可能な地球環境」への取り組みカゴメグループは、自然の恵みを享受し、お客様に新しい食やサービスをお届けする企業の責任として、持続可能な地球環境への取り組みを進めてきました。気候変動はさらに深刻化し、農業を取り巻く環境はさらに厳しくなることが予想されます。そのような状況においても農業が続けられることを目指し、温室効果ガス排出量の削減はもちろんのこと、気候変動に対応した品種開発や、少ない水や肥料で農作物の収量を上げることができる栽培技術の開発に取り組んでいます。10年間の主な取り組み(環境対応施策)地球温暖化防止資源の有効活用水の保全持続可能な農業? カゴメグループ温室効果ガス中長期削減計画の遂行 ? TCFDへの取り組み? SBT(Science Based Targets)イニシアチブ※の認証取得? 食品ロスの削減? 「プラスチック方針」の実働? 廃棄物のリサイクルによる資源循環の推進? 水の浄化と循環利用の推進? 工場を対象とした水リスク評価の実施? 高リスク拠点への対応? 国内農業の機械収穫化推進? TNFDへの取り組み? 低環境負荷を目指した品種・栽培技術の開発基盤の構築 今後の課題●「品質・環境」システムに基づく、環境マネジメントシステムの適切な運用の継続●2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするための継続的な取り組み●持続可能な農業を目指した品種・栽培技術の開発と事業化●環境負荷の低い製品の開発・販売 ●従業員人的資本への取り組み持続的な成長の実現のために、多様な知と知の組み合わせによる新たな価値創造が不可欠です。そのため、働きがいを向上させる3つの施策と風土づくりに注力してきました。「働きがい」をモニタリングする指標として使用しているエンゲージメントサーベイスコアは、調査を開始した2021年が70だったのに対し、2024年では72まで向上しました。10年間の主な取り組み(人的資本の拡充施策)働きがいの向上人材開発多様な人材集団働き方の進化? エンゲージメントサーベイによるモニタリング? 心理的安全性の浸透施策? キャリア開発? 能力開発? 組織風土開発? 「2040年ごろまでに全ての役職で女性50%」のビジョンを設定? 中途採用率向上? 再雇用制度改定? ダイバーシティ委員会活動? 地域カード制度の導入? テレワーク制度の導入? フレックスタイム制度の導入? 副業制度の導入? 転居転勤支援の拡充 今後の課題●次期中期経営計画と連動した人材戦略の策定・浸透・発信●目指す姿実現に向けた人材の育成・採用と、活躍を促進する仕組みづくり●多様な従業員の活躍を支える風土や職場の実現 次の10年に向けて社会課題解決を競争力につなげ、持続的な成長を実現する カゴメは創業以来126年にわたり、農の価値を最大限に発揮し、安心・安全で高品質な商品を通じておいしさと楽しさをともにお届けすることで、お客様の健康に貢献してきました。これまでの企業活動で強化してきた経営資本を最大限に活かし、これからも社会課題への取り組みを競争力につなげ、企業価値向上を目指します。 1 軸となる考え方変化が激しい経営環境の中で、これからも持続的な成長を成し遂げるために、個々の変化対応に一貫性を持たせる、軸となる考え方が必要となります。それが、以下の3点です。① 社会課題の解決によって、持続的に成長すること② 農から価値を形成し、お客様に届けていくこと③ グローバル(日本を含む)市場で成長していくこと この3点を軸に、次の10年の成長戦略の検討を進めています。2 成長戦略 検討の方向性今後10年の環境変化を予測すると、地球環境の悪化、世界人口の増加に伴う食料不足、農業人口の減少、日本における少子高齢化などが加速し、社会問題はさらに深刻化すると考えられます。一方で、テクノロジーは進化し続けることが想定されます。これまで取り組んできた既存領域の成長に加え、食と農の領域において進化する技術を活用しながら社会課題を解決するソリューションを開発し、新たな価値創造へのチャレンジにより企業価値を向上していきます。 ① 農と地球環境が抱える課題に対応するソリューションの開発② 食と農を起点とした、体と心の健康への貢献当社が保有する農から価値を形成するグローバルバリューチェーンにおいて、川上への投資を強化します。それにより、バ野菜を通じた健康寿命の延伸への貢献を目指して事業活動を継続してきました。日本の野菜不足解消の目標達成にはまだ至リューチェーン全体および各パートの競争力をさらに高め、持続可能な農業を実現する品種や栽培技術の開発を目指します。低環境負荷とコスト競争力を両立させることで、産業の発展に貢献します。っていませんが、高齢化などにより「健康であること」の価値はより高まっていくことが予想されます。既存の領域に加え、体だけでなく、精神的・社会的な健康へと領域を拡大しながら、お客様の健康に貢献していきます。 TOPICS 2035年プロジェクト2035年のビジョンと、それを実現する2026年からの中期経営計画については、次世代の経営を担う執行役員を中心メンバーとして策定を進めており、10年後の環境予測からバックキャストによりカゴメが取り組む重要テーマを抽出し、熱い議論を交わしています。上記2テーマのほか、中長期の人材戦略、事業ポートフォリオなどが重要テーマとして挙げられています。2035年ビジョン、及び2026年からの中期経営計画は、取締役会での議論や、従業員との対話などを通じてブラッシュアップした上で、2026年2月に発表予定です。2035年プロジェクトメンバーと従業員の対話 SPECIAL MESSAGE FROM EXECTIVE OFFICERDO NOT WASTE A GOOD CRISIS 当社の研究部門は、不確実性が増す外部環境に適合すべく、自前主義にとらわれることなく、他社との連携・組み合わせにより新しい技術や価値を生み出すオープン化した研究開発を積極的に進めてきました。既存組織の枠を超えた連携や共創による課題推進は研究員の取り組み姿勢やマインド変化にも好影響を与えており、その成果の一例が、「ベジチェックR 」です。また、創業以来、品種開発や栽培技術の研究も継続してきました。昨今の気候変動による世界のトマト圃場への影響は想像以上に深刻です。畑からの価値創造は、他社には真似できない価値づくりプロセスであり、その重要性が増しています。この活動を加速させるため、2023年10月に農業研究を統括するGARBiCを設立、2024年9月には世界の農業技術を保有する新興企業などとの連携を加速するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)も設立しました。私自らもGARBiCの米国研究拠点に赴任し、気候変動を事業機会とすべく前線で活動しています。PROFILE執行役員グローバル・アグリ・リサーチ&ビジネスセンター所長上田 宏幸 野菜の可能性は無限に広がっていますPROFILE執行役員商品開発本部長生形 省次 商品開発部門の使命は、野菜が好きな方にもそうでない方にも、安心しておいしく食していただける商品を開発すること、またそれを食べ続けていただくことで、お客様の健康増進にも貢献できる商品や情報を開発していくことです。この10年、血圧を下げる、善玉コレステロールを増やすなどの機能性を表示したトマトジュースの開発や、野菜に代表される植物性素材だけで作ったプラントベース食品、植物性ミルクなど、今までになかった様々な商品を開発してきました。野菜は研究すればするほど奥が深く、加工食品では実現できていない、野菜が本来持つおいしさや栄養・機能的価値がまだまだあり、その可能性は無限に広がっています。これからも野菜のおいしさや価値をあらゆるシーンで感じていただく機会を提供することで、お客様と野菜の接点を増やすとともに、健康増進に貢献できる商品を開発し続けます。 インオーガニック成長の機会探索を積極的に進める 第3次中期経営計画では、既存事業のオーガニックな成長に加え、M&Aを含めたインオーガニック成長の機会探索を積極的に進めることを掲げました。そこで、新規事業の探索・開発・育成を一元的に担う「事業企画本部」を新設し、事業開発のノウハウ蓄積と人材育成を目指した活動を行っています。これまでに、プラントベースフードのスタートアップである株式会社TWOとの業務提携を主導し、Ingomarの連結子会社化やCVC設立の支援を行ってきました。また次の10年を見据え、バリューチェーンの強化ポイントの選定や新たな商品領域の探索、体だけでなく心の健康を目指した新しいサービスの実証検証など、幅広い活動を行っています。企業を取り巻く環境が加速度的に変化する中、自社だけで顧客の課題を解決することは困難です。社会課題の解決と持続的な成長の両立を目指すとともに、社内の挑戦する風土の醸成にも寄与していく考えです。PROFILE執行役員事業企画本部長藤関 明宏 SPECIAL MESSAGE FROM STAKEHOLDER今後10年に向けた、「カゴメグループへの期待」について、皆様からコメントをいただきました。PROFILE茨城県鉾田市まちづくり推進課課長補佐新堀 靖 様ゼロからイチを作り出す「カゴメならでは」の社会課題の解決に期待2020年に初めて鉾田市にお越しいただき協議をさせていただいて以降、鉾田市の分析に種々の知見を交えて示されるカゴメの皆様による様々な視点での仮説や提案には驚きの連続でした。これまでは鉾田市の人口減少対策として、外から人を呼び込むためにはどうしたら良いかを考えてきましたが、カゴメと連携を深めていく中で、共通のキーワードである「野菜」「健康」だけでなく、若者の「シビックプライドの醸成」という課題にたどり着き、市役所としても新たな変革を起こすことができました。皆様と関わりを深めていく中で、カゴメが品種開発から生産、加工、販売まで一貫したバリューチェーンを持つ世界的にも珍しい会社であることを知りました。この、取り組む幅の広さは私たち行政の仕事と似ているのではないかと考えています。私たち行政が考える地域課題は何が正解か分からないのが現状です。ゼロからイチを作り出す「カゴメならでは」が、今後の様々な社会課題の解決につながると期待しています。茨城県鉾田市との「野菜をきっかけにした健康なまちづくり」推進事業の詳細については、こちらをご覧くださいhttps://www.kagome.co.jp/library/company/news/2024/img/2024051301.pdf鉾田市・カゴメ包括的連携協定締結式鉾田市のイベントでのカゴメのブース出展 社会に必要なベースづくりという視点で、企業との合致点を増やしていきたいPROFILE認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長湯浅 誠 様 こども食堂は、「こども」と「食」という、多くの人の関心ごとゆえに、人を集める吸引力を持っています。食は地域のつながりをつくるという意味でも重要であり、「子どもが嫌いな野菜も、こども食堂では食べてくれる」といった話は、食育にもつながります。 こども食堂は「食」で社会課題の解決を目指しているという点において、カゴメとの共通項を持っています。支援企業には、短期的な成果を追い求めるのではなく、長期視点での支援をお願いしています。こども食堂の取り組みは、成果が見えづらいという側面もありますが、企業側は、利益にシビアな環境に置かれています。私たちは、成果としてのエビデンスを出し続ける努力も進めていき、社会に必要なベースづくりという視点で、企業との合致点を増やしていきたいと思います。昨今は、共助資本主義という考え方も広がってきています。カゴメには、マルチステークホルダー型の経営をさらに進めていただき、こども食堂への長期的なサポートを期待しています。 グローバルバリューチェーンを築き上げ、収益に結びつけられるかに関心 PROFILE三井住友DSアセットマネジメント株式会社 運用部リサーチアクティブグループ シニアファンドマネージャー古賀 直樹 様カゴメは、野菜・トマトを軸に農業や健康の領域まで事業を広げ、日本国内においては、高齢化をはじめとする様々な社会課題の解決に資する立場にある会社です。社会課題を解決しながら業績を伸ばすことができる高いポテンシャルを持っており、ファンベースドマーケティングやファン株主づくりといった点においても独自のポジションを確立しています。今後のカゴメの10年を見据えると、持続的に成長できる強い企業になるという目標をしっかりと掲げ、自らグローバルバリューチェーンを築き上げようとしていますので、それをどこまで完成させ、収益に結びつけられるのかという点に関心を持っています。投資家とのコミュニケーションという点においては、情報発信の内容含めてまだ不十分に感じるところもありますので、長期目線の投資家ともっと対話をすることで改善していく余地はあると思います。社会に不可欠な会社として、またグローバル企業としてのカゴメの成長を楽しみにしています。 PROFILE全国農業協同組合連合会 茨城県本部園芸部 次長須賀田 良彦 様日本の農業の持続性に貢献できる取り組みに期待カゴメは、加工用トマトの生産者にとっては、「顔が見える」メーカーです。日頃から、カゴメの担当者が産地を巡回していることで契約農家とは一体感があり、技術的にも一歩先を行っています。カゴメの歴代社長が、茨城県の加工用トマトの産地を訪問されていることは、他のメーカーにはないカゴメならではの活動であり、契約農家の生産意欲の向上にもつながっていると思います。今後、地球温暖化による気候変動や農業の担い手不足が予測され、農家にとって深刻な問題になってきます。異常な暑さで加工用トマトの収量が落ちるという現象も既に産地で起きています。カゴメには、夏の暑さに強いトマトの品種開発や栽培技術の開発などを期待するとともに、国産野菜を使った商品をもっと増やしていただき、トマトだけではなく、にんじんなど他の国産野菜も安定的に生産できる仕組みづくりを通じ、日本の農業の持続性に貢献する取り組みの拡充をお願いしたいです。 「なくてはならない会社」と思ってもらえる存在にPROFILEコーポレート企画本部システム戦略推進部事業DXグループ田丸 恵里菜 これまでの中長期のビジョンは、各部門の組織目標に落とし込まれる中で縦割り感が出てしまうため、全社の足並みを揃えるのが難しいのではないかと感じていました。中長期よりもさらに長い視点でのビジョンがあれば、“大きく変わる世の中で「私たちカゴメは」どう変わっていくのか”を、部門の壁を越え同じ視点で未来に向け連携しやすくなるのではと思い、プロジェクト2050に参加しました。プロジェクトでは、部門ごとに意識している提供価値や時間軸、ステークホルダーが想像以上に大きく異なることを実感しました。メンバー間で色々な言葉出しをしたり、図や絵に描き起こしたり、今のカゴメ・これからのカゴメのイメージを丁寧にすり合わせました。今後は、「農」や「自然の恵み」という“カゴメらしさ”の提供の仕方を広げるチャレンジを続け、従業員含めたくさんのステークホルダーから「なくてはならない会社」と思ってもらえる存在になりたいです。 |
経営者による財政状態の説明
| 4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 (重要な会計方針及び見積り)当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づいて作成されております。連結財務諸表の作成に際し、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるために実際の結果は異なる場合があります。採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況」における「3.重要性がある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しております。 (1) CFO/CROメッセージCFO/CROMESSAGE 財務基盤の安定を維持し、資本効率を重視した成長を支えていきます。 1. 2024年度の業績について2024年度の業績は、売上収益及び事業利益において過去最高を記録しました。また、国内加工食品事業と国際事業の売上収益、事業利益の比率が大きく変化し、将来の成長に向け転機の年となりました。売上収益は3,068億円(前年度比821億円の増収、36.5%増)となりました。国内加工食品事業は、1,557億円(前年度比135億円の増収、9.5%増)となりました。トマトペーストの原材料価格の高騰、円安による影響などを受けましたが、昨年に引き続き行った価格改定や需要喚起策が奏功しました。国際事業は、1,493億円(前年度比711億円の増収、91.0%増)です。新規連結子会社となったIngomarの増分が大きく寄与しています。また、トマト他一次加工事業においては、トマトペーストの販売価格が上昇したこと、トマト他二次加工事業においては、フードサービス企業向けの販売が好調に推移したことが増収の主要因です。事業利益は、270億円(前年度比76億円の増益、39.1%増)となりました。国内加工食品事業は、155億円(前年度比41億円の増益、35.7%増)です。主要原材料の大幅なコスト上昇に対して価格改定を行ったこと、また、価格改定後の販売数量を早期に回復できたこと、原価低減に積極的に取り組んだことが増益の主因です。国際事業は、139億円(前年度比30億円の増益、28.6%増)です。売上収益の拡大、原材料の価格転嫁が進んだことが増益の主因です。親会社の所有者に帰属する当期利益は、250億円(前年度比145億円の増益、139.8%増)となりました。事業利益からの増加要因は、Ingomar出資持分の段階取得に係る差益(93億円)を計上したことによります。この結果、2024年度は株主配当も当初の予想を上回る形で実施することができました。また、こうした業績を背景に、ROIC※は12.4%と0.8point減少しました。これは、Ingomarの連結子会社化などにより利益は増加したものの、投下資本も大幅に増加したことによるものですが、投下資本と利益のバランスは健全に保たれていると考えています。※ROIC:カゴメROICのこと。EBITDA÷投下資本で算出。 2. キャッシュ・フローと財務戦略の考え方について当社グループは、成長に向けた積極的な投資と充実した株主還元の両立を目指しています。併せて、持続的な成長を支え、大きな変化に対応するためには、強固な財務基盤を維持することが重要だと考えています。キャッシュ・フローの推移は下記の通りです。区分2022年度2023年度2024年度営業キャッシュ・フロー46億円46億円316億円投資キャッシュ・フロー△94億円△60億円△463億円財務キャッシュ・フロー△55億円156億円△5億円 ● 営業キャッシュ・フロー営業キャッシュ・フローは316億円の純収入(前年度は46億円の純収入)となりました。利益が順調に推移したことに加えて、棚卸資産が71億円減少したことなどにより増加しました。● 投資キャッシュ・フロー投資キャッシュ・フローは、463億円の純支出(前年度は60億円の純支出)となりました。Ingomarの持分追加取得に伴い360億円を支出したことが主な要因となります。● 財務キャッシュ・フロー財務キャッシュ・フローは、5億円の純支出(前年度は156億円の純収入)となりました。自己株式の処分等により231億円収入があったものの、短期借入の減少156億円と配当の支払いなどがあったことなどによります。2024年度の財務指標にて、自己資本比率※は51.3%、信用格付はシングルAとなっています。自己資本比率は、Ingomarの買収による借入により一時的に50%を下回りましたが、自己株式の売却による資金調達により50%に回復しました。これらにより引き続き財務基盤は安定していると考えています。資本効率はROEが15.7%となり、目標の9%の水準を達成しています。また株主還元は、記念配当の10円に加え普通配当6円の増配を行うことができました。第3次中期経営計画期間中の株主還元方針である「総還元性向40%」を確実に果たしていきます。※ 自己資本比率:親会社所有者帰属持分比率目的指標2023年度実績2024年度実績 第3次中期経営計画方針財務基盤の安定自己資本比率49.8%51.350%以上信用格付シングルAシングルAシングルA資本効率を重視した成長ROE8.3%15.7%9%以上安定的な利益還元総還元性向※-40%以上 ※ 1株当たり配当額実績:2023年度41円、2024年度57円 3. 自己株式の処分について当社は、2024年7月に自己株式を処分し232億円を調達しました。本調達資金はIngomarを連結子会社化した際に借り入れた短期借入金360億円の返済に充当しました。第3次中期経営計画においては、M&Aを含めたインオーガニック成長のための事業投資に300~500億円の投資を計画しました。これは、自己資本比率50%の維持を基本とし、営業キャッシュ・フローと財務キャッシュ・フローを鑑みて目論んだものです。2024年度に実施した自己株式の処分により、これらは概ね達成できていると判断しています。また、将来に向けたさらなる事業投資を可能にするためにも、財務基盤の安定を維持しつつ、資本効率を重視した成長を図ります。また、今回の自己株式の処分にあたっては、3割を機関投資家に配分し、そのうち8割は海外に配分しました。ロードショーにおいては、機関投資家の皆様からさまざまなご意見もいただきましたので、今後の経営に活かしていきます。 4. ROICについて当社は資本効率を高める取り組みとして、全社におけるROIC管理を行っており、ROEの向上を目指しています。社内管理においては、一般的なROICの計算方式は用いず、事業利益に減価償却費を加えたEBITDAをROIC計算の基礎としています。また、ROICツリーを作成し、各部門が自らのKPIを設定することによって、その貢献度を可視化しています。一方、マネジメントレベルにおいては、資源配分を最適化し、持続的な成長を実現する観点から、事業別のROICの分析、向上に努めています。今後もこれらの二つのアプローチにより、資本効率の向上、企業価値の最大化を図ってまいります。 5. リスクマネジメントの取り組みと課題当社は第3次中期経営計画期間における基本戦略の一つとして、「グループ経営基盤の強化と挑戦する風土の醸成」を掲げています。リスクマネジメントは、この経営基盤を支える柱になると考えています。直近では、国際事業比率が高まり、グローバルなリスクマネジメント体制の確立が重要になってきている中で、特に海外子会社に対するガバナンスの強化に取り組んでいます。当社は、会社の重点リスク課題から各組織のリスク課題までを、経営層から従業員一人ひとりに至るまで、それぞれが我がこととして取り組めるよう仕組み化し、経営基盤の強化を図っています。 (2) 経営成績の分析当社グループの当連結会計年度の経営成績等は、次の通りであります。① 売上収益売上収益は、3,068億69百万円となり、前連結会計年度の2,247億30百万円に比べ、821億38百万円の増加(36.5%増)となりました。国内加工食品事業は、主要原材料をはじめとする売上原価の大幅な上昇を受け、主要商品の価格改定を実施しました。また、価格改定後の需要喚起策が奏功し増収となりました。国際事業においても、Ingomarの連結子会社化に加え、トマト他一次加工において、トマトペースト市況が上昇したこと、トマト他二次加工において、フードサービス企業向けの販売が好調に推移したことなどにより増収となりました。 ② 事業利益事業利益は、270億94百万円となり、前連結会計年度の194億76百万円に比べ、76億18百万円の増加(39.1%増)となりました。国内加工食品事業は、価格改定や、その後の需要喚起策などにより増益となりました。国際事業においても、Ingomarの連結子会社化に加え、トマト他一次加工、トマト他二次加工が共に増収となったことにより、増益となりました。 ③ 営業利益営業利益は、362億21百万円となり、前連結会計年度の174億72百万円に比べ、187億49百万円の増加(107.3%増)となりました。事業利益の増益に加え、Ingomarの連結子会社化に伴い、従前から保有していた20%出資持分を50%の追加取得日における公正価値で再測定した結果、段階取得に係る差益93億23百万円をその他の収益として認識し、増益となりました。 ④ 親会社の所有者に帰属する当期利益親会社の所有者に帰属する当期利益は、250億15百万円となり、前連結会計年度の104億32百万円に比べ145億83百万円の増加(139.8%増)となりました。支払利息などの金融費用や法人所得税費用により、営業利益と比べて増益幅は縮小しました。 以上により、当連結会計年度の売上収益は、前期比36.5%増の3,068億69百万円、事業利益は前期比39.1%増の270億94百万円、営業利益は前期比107.3%増の362億21百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比139.8%増の250億15百万円となりました。 セグメント別の業績の概況は次の通りであります。当連結会計年度にIngomarを連結子会社化したことを契機に、セグメントの管理区分の見直しを行いました。この結果、国際事業の内訳として「トマト他一次加工」、「トマト他二次加工」を新たに開示しております。また、「国内農事業」及び、国際事業に含まれていた「種苗の生産・販売事業」を「その他」へ集約いたしました。なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分により作成したものを記載しております。 (単位:百万円)セグメントの名称売上収益事業利益(△は損失)前連結会計年度当連結会計年度増減前連結会計年度当連結会計年度増減 飲料75,44682,7217,2757,5089,1021,593通販13,13013,361230751239△511食品他53,59659,6286,0323,2156,2333,018国内加工食品事業 計142,173155,71113,53811,47515,5754,100 トマト他一次加工※120,46082,26761,8065,0078,3993,391トマト他二次加工※257,83370,54312,7106,5187,000482調整額△118△3,507△3,388△690△1,467△776国際事業 計78,175149,30371,12810,83513,9323,097その他19,56421,8612,296△133605739調整額△15,182△20,007△4,824△2,701△3,019△318合計224,730306,86982,13819,47627,0947,618 ※1トマト他一次加工:農作物を加工した、ペーストなどの製造・販売※2トマト他二次加工:主に、農作物の一次加工品に調味料などを加えて加工した、ピザソースなどの製造・販売 各セグメントの概要及び成果については以下の通りです。 <国内加工食品事業>国内加工食品事業では、飲料や調味料等の製造・販売を手掛けております。当事業における売上収益は、前期比9.5%増の1,557億11百万円、事業利益は、前期比35.7%増の155億75百万円となりました。 ① 概要トマト、にんじん、その他の多様な野菜を使用した野菜飲料や食品などの商品を展開しています。お子様からご高齢の方まで、幅広い世代の方々に、日常生活の様々な場面においてご利用いただくことで、野菜の摂取量を増やし、健康寿命の延伸に貢献します。 SWOT分析STRENGTH 強みWEAKNESS 弱み● 原材料調達における、海外ネットワーク力と品質保証力● 125年にわたる歴史で培われたブランド力● 素材の力を活かした機能性研究、商品開発力● 多様な販路と、顧客に応じた商品提案力● 環境変化へ対応できるバリューチェーンの柔軟性● 幅広いカテゴリー対応維持のための資源分散● コモディティ市場における価格競争力● 若年層への浸透OPPORTUNITY 機会THREAT 脅威● 生活者の健康、自然素材、環境意識のさらなる高まり● 生活者の購買行動・ブランド選択基準の多様化● 生活者との新たな情報、購買接点の拡大● 体験を含めた新たなサービス領域の顕在化● 継続的な原材料価格上昇● 健康関連商品・サービス多様化による既存領域の相対的地位低下● 各分野でのイノベーションによる異業種からの 競合参入● 日本国内における人口減少、高齢化による市場の縮小 ② 2024年度の概要(成果・課題)成果課題前年度に引き続き、原材料価格の上昇を背景に商品出荷価格の改定を実施、新価格が生活者に受容されるよう、野菜飲料、調味料ともに需要喚起策を展開しました。野菜飲料では、好調が続くトマトジュースの機能情報発信強化を、野菜生活ブランドでは、「朝を味方に」をテーマとしたキャンペーンを実施したことが奏功し、売上の拡大を図ることができました。 調味料では、特にトマトケチャップの食卓出現を拡大すべく「焼きケチャップ」「町中華オムライス」などのプロモーションを強化したことで、業務用と併せて大きく売上の拡大を図る事ができました。カテゴリーリーダーとしての重要な責務は、マーケット全体の活性化にあります。いかに価格を超えた価値をお客様に感じていただけるか、新しい需要を創造できるかについて、取り組みを強化していきます。特に、お客様が日頃抱えている、あるいはお客様が気付いていない潜在的なお困りごとを捉えていくことが組織の課題です。加えて、現在展開している領域の価値を磨くとともに、新規領域への探索を並行して進めていきます。 ③ 2025年度に向けた戦略国内加工食品事業が力強く成長できる基盤強化に取り組みます。野菜飲料においては、特に好調が続くトマトジュースの拡大に向け、情報戦略をさらに高度化していきます。一方、野菜生活ブランドは、2025年に発売30周年を迎えます。当時、商品をご利用いただいていた方々に対して、30年の年月を経て、“もう一度野菜生活を始めて”いただけるような施策を、ここまでブランドを育ててもらった感謝の気持ちとともに、展開していきます。さらに、植物性ミルクの定着に向けて本格的な取り組みを開始します。提携先であるBlue Diamond Growersは農家との栽培指導を含め、原材料調達から最終商品に至る過程全てに関与しており、当社とモノづくりに対する想いを同じくする会社です。生産者の想いに加え、米国の日常的な健康的食スタイルを日本のお客様に共感していただけるよう、様々な提案を多面的に仕掛けていきます。食品では、2025年に昭和100年を迎えるにあたり、「ナポリタンスタジアム」を通じて業務用と一体となりトマトケチャップの需要開拓に徹底的に取り組み、売上最大化を目指します。飲料、食品、業務用、それぞれが、カゴメブランドのもとで売上拡大、カテゴリー全体の活性化に寄与できるよう尽力します。 MESSAGE進化した「Farm to Life」への取り組み強化私は、お客様に価値をお届けする領域を、「Farm to Table」から「Farm to Life」へと広げていきたいと考えています。お客様の生涯の健康的な暮らしに、商品だけではないお役立ちのあり方を追求していきたいと思います。例えば、野菜の苗を多くの方にお配りする。その野菜の苗の生育過程や収穫、さらには調理などをお客様と一緒になって体験、共有する。また、お客様の集まる場所に出向いて、野菜の魅力をもっと知っていただく。これら一連の活動などを通して、カゴメをもっと知っていただき、もっと好きになっていただきたいと考えています。これらのファンベースドマーケティングの強化を、個々の商品の魅力を高めていく活動、さらには野菜の価値発信活動と併せて進めていきます。2025年度は、第3次中期経営計画の最終年度となります。「野菜生活ブランド30周年」「アーモンドミルクの市場定着に向けた取り組み」「ナポリタンスタジアム」など、様々な活動を中心に国内加工食品事業の成長を図っていきます。Profile執行役員マーケティング本部長稲垣 慶一 <国際事業>国際事業では、農業生産、商品開発、加工、販売を展開しております。当事業における売上収益は、前期比91.0%増の1,493億3百万円、事業利益は、前期比28.6%増の139億32百万円となりました。 ① 概要国際事業は、農業生産、加工、販売事業などを展開しています。加工はトマトペーストなどを製造する一次加工と、トマトペーストを原材料としてトマトソース、ピザソースなどを製造する二次加工に大別されます。国際事業の主な顧客は調味料メーカーや外食企業などで、米国、ヨーロッパ、オーストラリアなどでBtoBビジネスを展開しています。 SWOT分析STRENGTH 強みWEAKNESS 弱み● フードサービス企業に向けたソリューション提案力● グローバルに展開するグループ会社によるトマト原材料の安定した供給力● グループ会社共通の品質管理基準の展開による品質力とESG課題の推進● トマトペースト市況の変動に伴う収益ボラティリティ● 購入額の大きい特定顧客への依存度の高さ● BtoCにおけるブランド認知の不足OPPORTUNITY 機会THREAT 脅威● 米国やインドなどを中心とした、フードサービス市場の成長ポテンシャル● 原材料となる加工用トマトの生産性向上技術に対するニーズの高まり● 原価・運営コスト高騰に伴うフードサービス企業からのソリューションニーズの高まり● トマトペースト市況下落による収益の悪化● 異常気象などの天候リスクによる事業活動への影響● サプライチェーンの分断による原材料・製品供給不足 ● 各国拠点の従業員の確保難、労務費の高騰 ② 2024年度の概要(成果・課題)成果課題2024年1月に世界第4位のトマト一次加工会社であるIngomarの出資持分50%を追加取得し、連結子会社化しました。これによりカゴメグループ全体の生トマトの一次加工能力は従来の世界第14位から第3位へと大きく上昇しました。トマト他一次加工においては、Ingomar連結子会社化による影響のほか、世界のトマトペーストが需給逼迫を背景に市況が高騰していた影響もあり、増収増益でした。トマト他二次加工においても、各社で価格改定を実施したほか、米国を中心とした堅調な外食需要を背景に増収増益となりました。Ingomarを連結子会社化したことに伴い、トマト他一次加工の連結売上収益の構成比率は2023年度の9%から2024年度の27%と大きく上昇しました。トマトペーストの需給により、市況は大きく変動するため、業績ボラティリティが拡大したと言えますが、米国内のバリューチェーンが種子開発・販売から二次加工まで揃ったことを活かして、事業の安定性を高め、米国トマト加工事業のさらなる成長を図ります。 ③ 2025年度に向けた戦略世界的なインフレが続く中で、トマトペーストは2023年、2024年の世界的な増産により、市況は下降に転じました。そのため2025年度は、グループ間連携により市況影響の極小化と次の成長に向けて、持続的かつ安定的な利益獲得力の強化に取り組みます。一次加工においては 、品質改善や生産性の向上、原価低減、顧客との関係性強化により、競争力を高めていきます。また、二次加工においては、フードサービス企業向けへのソリューション提案力の強化を推進し、販売数量の拡大を図ります。グローバルにフードサービス事業を展開する既存顧客に対しては、フレーバーや容器バリエーションによる商品の拡充をし、また、各エリアで展開するローカルフードサービス企業の新規顧客の獲得も進めます。2024年度に契約農家の加工用トマト栽培や、一次加工の生産活動の情報を収集し、ビッグデータ解析を開始しました。これにより生産効率や良品率向上への活用を目指します。また、組織・人員体制を含め生産性を高めるサプライチェーンを構築していきます。さらに、Ingomarのトマト加工技術の形式知化を進め、HITやKAUの他のトマト一次加工拠点を含め、カゴメグループ全体のトマト加工技術の向上を図ります。Kagome Inc.におけるメニュー開発の様子 Ingomarの工場で収集したビッグデータを処理している様子 MESSAGE Profile常務執行役員カゴメ・フード・インターナショナルカンパニープレジデント兼 グローバルトマト事業部長江端 徳人グローバル最適視点で成長を加速2023年10月より、国際事業本部はカゴメ・フード・インターナショナルカンパニーとしてカンパニー化し、海外現地法人のCEOが毎月参加する「カンパニー経営会議」により、機動的な意思決定を迅速に行うとともに、連携強化・ガバナンスの向上・グローバルな組織・人材マネジメントに取り組んできました。成長ドライバーであるフードサービスの量的成長に向けたビジョンを共同で策定するとともに、ポータルサイトを活用した情報の見える化や、不正防止のためのリスク調査などを通じ、カゴメグループとしてのエンゲージメントが向上しました。また最重要課題の一つでもあった人材マネジメントについては、今まで行っていなかった海外現地法人間の人事交流を行いました。日本からの出向人事を含め、国際事業における持続的な成長戦略を確実に遂行できるように組織・人員体制の強化を引き続き目指します。また、温室効果ガスや二酸化炭素の削減などのサステナビリティ活動についても推進していきます。 なお、今後の見通しにつきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通りであります。また、当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りであります。 (3)財政状態の分析当連結会計年度末は、資産合計につきましては、前期末に比べ967億66百万円増加いたしました。流動資産につきましては、前期末に比べ445億6百万円増加いたしました。これは、主にIngomarの連結子会社化などにより「棚卸資産」が438億49百万円、「営業債権及びその他の債権」が110億6百万円、それぞれ増加したことなどによります。なお「現金及び現金同等物」はIngomarの持分の追加取得による支出などにより、147億36百万円減少いたしました。非流動資産につきましては、前期末に比べ522億59百万円増加いたしました。これは、主にIngomarの連結子会社化に伴い、「無形資産」が347億93百万円、「有形固定資産」が218億32百万円増加したことなどによります。なお、同社は子会社化に伴い持分法適用会社の対象外となったことから、「持分法で会計処理されている投資」が56億65百万円減少しております。負債につきましては、前期末に比べ215億61百万円増加いたしました。これは、主にIngomarの連結子会社化などにより「営業債務及びその他の債務」が76億61百万円、「長期借入金」が76億32百万円、「繰延税金負債」が49億82百万円、それぞれ増加したことなどによります。資本につきましては、前期末に比べ752億5百万円増加いたしました。これは、「親会社の所有者に帰属する当期利益」により250億15百万円、「自己株式」の処分等により217億45百万円、「非支配株主持分」が217億30百万円、それぞれ増加したことなどによります。一方で、剰余金の配当により35億36百万円減少しております。この結果、親会社所有者帰属持分比率は51.3%、1株当たり親会社所有者帰属持分は1,983円20銭となりました。 (4)連結キャッシュ・フローの状況の分析当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、212億73百万円となり、前期末に比べ147億36百万円減少いたしました。各キャッシュ・フローの状況は次の通りであります。営業活動によるキャッシュ・フローは、316億92百万円の純収入(前期は46億17百万円の純収入)となりました。この主要因は、税引前利益が336億65百万円となったこと、減価償却費及び償却費が120億円となったこと、棚卸資産が71億98百万円減少したこと(以上、キャッシュの純収入)、Ingomarの持分段階取得に係る既存出資持分の時価評価益が93億23百万円となったこと、法人所得税等の支払いにより86億86百万円支出したこと、利息の支払いにより30億80百万円支出したこと(以上、キャッシュの純支出)などによります。投資活動によるキャッシュ・フローは、463億25百万円の純支出(前期は60億56百万円の純支出)となりました。これは、主にIngomarの持分追加取得に伴い360億46百万円支出したこと、有形固定資産及び無形資産の取得により109億43百万円支出したことなどによります。財務活動によるキャッシュ・フローは、5億71百万円の純支出(前期は156億26百万円の純収入)となりました。これは、自己株式の処分等により231億29百万円収入があったものの、短期借入の減少により156億32百万円、長期借入金の返済により55億74百万円、配当金の支払いにより35億33百万円、非支配持分への配当金の支払いにより49億16百万円支出があったことなどによります。 (生産、受注及び販売の状況)a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメント毎に示すと、次の通りであります。セグメントの名称金額(百万円)前期比(%) 飲料41,5937.5 通販6920.2 食品他21,89712.6 国内加工食品事業 計64,1849.1 トマト他一次加工104,213490.5 トマト他二次加工57,49024.8 国際事業 計161,704153.8 その他4,91511.2 合計230,80381.8 (注) 1 金額は製造原価によっております。2 金額は消費税等を含めておりません。 b. 受注状況主要製品の受注生産は行っておりません。 c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメント毎に示すと、次の通りであります。セグメントの名称金額(百万円)構成比(%)前期比(%) 飲料外部顧客に対するもの82,721 9.6セグメント間取引- -計82,72127.09.6通販外部顧客に対するもの13,361 1.8セグメント間取引- -計13,3614.41.8食品他外部顧客に対するもの59,628 11.3セグメント間取引- -計59,62819.411.3国内加工食品事業 計外部顧客に対するもの155,711 9.5セグメント間取引- -計155,71150.79.5 トマト他一次加工外部顧客に対するもの71,555 559.0セグメント間取引10,712 11.5計82,26726.8302.1トマト他二次加工外部顧客に対するもの61,486 17.4セグメント間取引9,056 65.8計70,54323.022.0調整額外部顧客に対するもの△3,507 -セグメント間取引- -計△3,507△1.1-国際事業 計外部顧客に対するもの129,534 105.2セグメント間取引19,768 31.2計149,30348.791.0その他外部顧客に対するもの21,622 11.2セグメント間取引238 102.6計21,8617.111.7調整額△20,007△6.5△31.8連結売上収益306,869100.036.5 (注) 1 各セグメント間のセグメント売上収益を消去しております。 2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。相手先前連結会計年度当連結会計年度金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)株式会社日本アクセス32,02014.235,21611.5 |
※本記事は「カゴメ株式会社」の令和6年年1期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
連結財務指標と単体財務指標の違いについて
連結財務指標とは
連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。
単体財務指標とは
単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。
本記事での扱い
本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)


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