SBIホールディングス株式会社の基本情報

会社名SBIホールディングス株式会社
業種証券、商品先物取引業
従業員数連19156名 単351名
従業員平均年齢40.4歳
従業員平均勤続年数5.7年
平均年収9769403円
1株当たりの純資産1881.81円
1株当たりの純利益(連結)536.09円
決算時期月3
配当金170円
配当性向86.1%
株価収益率(PER)20.18倍
自己資本利益率(ROE)(連結)-2.3%
営業活動によるCF15087億円
投資活動によるCF▲10604億円
財務活動によるCF4458億円
研究開発費※118.51億円
設備投資額※1725.14億円
販売費および一般管理費※1808.11億円
株主資本比率※225.7%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当期末現在において当企業グループが判断したものであります。 (1)経営方針当企業グループは、Strategic Business Innovator(戦略的事業の革新者)として、創業時から常に時流を捉え、革新的な事業を創造することを目指しています。同時に、企業は社会に帰属しているからこそ存続できるという考えのもと、事業を通じて、社会の維持・発展に貢献することを志しています。また、当企業グループには、持続的に成長する企業グループであり続けるため、今後も継承すべきと考える企業文化のDNAが4つあります。それは、常にチャレンジし続けるために「起業家精神を持ち続けること」、「スピード重視」の意思決定と行動、過去の成功体験に捉われず「イノベーションを促進すること」、環境の変化を敏感に察知して「自己進化し続けること」です。そして、全ての役職員が共有する規範として、当企業グループでは5つの経営理念を掲げています。 当企業グループの5つの経営理念正しい倫理的価値観を持つ「法律に触れないか」、「儲かるか」ではなく、「それをすることが社会正義に照らして正しいかどうか」を判断基準として事業を行う。金融イノベーターたれ革新的技術を導入し、より顧客便益性を高める金融商品やサービスを提供することで、従来の金融のあり方に変革を与える。新産業クリエーターを目指す21世紀の中核的産業の創造および育成を担うリーディング・カンパニーとなる。セルフエボリューションの継続「創意工夫」と「自己変革」により経済環境の変化に柔軟に適応すべく、自己進化し続ける。社会的責任を全うする当企業グループ各社は、社会の一構成要素としての社会性を認識し、さまざまなステークホルダー(利害関係者)の要請に応えつつ、社会の維持・発展に貢献していく。 当企業グループでは、企業価値は顧客価値の創出を土台に、株主価値及び人材価値を加えた3つの価値が相互に連関する好循環を生むことによって増大していくと認識しています。創業以来、掲げてきた価値観である「顧客中心主義」を徹底的に実践することで、お客様のために、投資家のために、より革新的なサービス、ビジネスの創出に努め、顧客価値、株主価値、人材価値の総和たる企業価値の極大化を追求します。 (2)経営環境及び対処すべき課題等当企業グループの事業構築の基本観当企業グループの事業構築は6つの基本観、即ち(1)「顧客中心主義」の徹底、(2)「企業生態系」の形成とシナジーの徹底追求、(3)革新的技術に対する徹底的な信奉、(4)近未来を予見した戦略の策定と遂行、(5)公益は私益に繋がる、(6)金融を核に金融を超える、に基づき行われています。「顧客中心主義」の徹底とは、より安い手数料・より良い金利でのサービス、金融商品の一覧比較、魅力ある投資機会、安全性と信頼性の高いサービス、豊富かつ良質な金融コンテンツの提供といった、真に顧客の立場に立ったサービスを徹底的に追求するものです。「企業生態系」の形成とシナジーの徹底追求とは、「全体は部分の総和以上である」「全体には部分に見られない新しい性質がある」という「複雑系の科学」の二大命題をもとに、当企業グループを構成する企業間でシナジーを発揮することで、単一の企業では成し得ない相乗効果と相互進化による高い成長ポテンシャルを実現する「企業生態系」を構築し、当企業グループ全体で飛躍的な成長を実現させるものです。革新的技術に対する徹底的な信奉とは、テクノロジーこそが社会に新たな潮流を生み出すとの考えのもと、フィンテック領域やAI、ブロックチェーン、デジタルアセット、量子コンピュータ、核融合といった先端領域において、革新的技術を有する国内外の有望なベンチャー企業に「投資」し、投資先企業の技術等をグループ内の事業会社へ「導入」、そしてそれらの技術を業界横断的に「拡散」するという3つのプロセスを通じ、持続的な事業拡大を目指すものです。近未来を予見した戦略の策定と遂行とは、効率的なシナジーを生むとともに相互に一体感を高めるべく、社会問題や国家目標などに合致し、時代の変遷を踏まえて当企業グループを挙げて取り組む「全体戦略」を策定し、その全体戦略が効率的に各子会社に伝播され、各々に応じた具体的な「個別戦略」として遂行されることで、統一的な目標を達成する戦略です。公益は私益に繋がるとは、「社会なくして企業なく、企業なくして社会なし」という考えのもと、「世のため人のため」となる「公益」に資する企業活動を続けることは、自ずと当企業グループの利益にも繋がることを意味しています。また金融を核に金融を超えるとは、あらゆる財貨・サービスの動きと金融は表裏一体であるという認識のもと、当企業グループは金融のプロフェッショナルとしてこれからも金融事業を推進するとともに、金融事業と相乗的な効果を生み出す新たな事業領域へも進出し、国内外の様々な社会課題の解決に挑む事業体であり続けることを目指すものです。 これらの基本観の実践を通じ、当企業グループは時代の変化を逸早く察知し、その変化に対応する戦略を実行することで、事業領域や事業規模を加速度的に拡大してきました。例えば、証券・銀行・保険を中心とする金融サービス事業では、銀証連携を始めとしたシナジーの発揮を通じて、競合他社を大きく上回る口座数や預り資産などの顧客基盤を築き上げ、高いマーケットシェアを獲得し、外部の各種顧客満足度調査においても好評価をいただいています。日本の国家戦略でもある地方創生の領域においては、全国各地の地域金融機関との提携を拡大し、それによって、地域金融機関に質的転換を促すことで、地域金融機関の収益力強化とそれに伴う地域経済の活性化に貢献する取り組みを進めています。また金融業と大きなシナジーを発揮できる分野として、次世代の金融商品にもつながるデジタルアセットに関連する事業を展開しています。 目標とする経営指標当企業グループでは、資本効率を考慮しながら、「金融イノベーター」や「新産業クリエーター」として、事業の「選択と集中」で回収した資金を成長分野や革新的な事業展開を可能とする分野へ再投資することで、グループ全体としての持続的な成長を目指しています。このように、経営資源を国内外の注力分野に投下することで、更なる利益成長につなげていきます。また、当企業グループは、株主への利益還元を充実させることを、株主価値を高めることにつながる重要な経営施策の1つとして捉え株主還元を決定しています。当社の株主還元は、配当金総額に自己株式取得額を加えた総還元額を、当面の間は金融サービス事業において子会社等株式売却益などの特殊要因を除いた税引前利益の30%程度とすることとしています。このほか、当企業グループが創業以来掲げる「顧客中心主義」の考え方に基づき、常に顧客の目線に立った商品ラインナップ拡充や、便益性の高い多様なサービスの提供を図ることで、業界最高水準のサービス提供を目指しています。そのため、当企業グループの金融サービス事業各社では、第三者評価機関が実施する顧客満足度調査において、継続して高評価を得ることを志向しています。 中長期的な経営戦略当企業グループは、1999年の創業以来、日本国内においてインターネットをメインチャネルとし、証券・銀行・保険をコア事業とする金融サービス事業において企業生態系の構築を進め、現在世界的に見ても極めてユニークな総合金融グループとなっています。また、創業時から、国内外において次世代の成長産業への注力投資やアジア地域を中心とした成長著しい国々への投資を積極的に行い、国内外のベンチャー企業等の育成にも取り組んできました。近年、金融業界だけでなく様々な業界において、AIやブロックチェーン・分散型台帳技術(DLT)を中心にそれらと親和性の高いビッグデータ、IoT、ロボティクス等のデジタルテクノロジーの導入が急速に進んでいます。そうした中、今後も引き続きこれらの先進技術における有望な企業への投資や提携を積極的に進めると共に、当企業グループの各金融サービスでこれらの先進技術を活用した新サービスの開発や新たな金融ビジネスの創造に向けた取り組みを強化し、企業生態系の組織優位性を最大限に発揮する事業展開によって、飛躍的な成長を図ることが重要であると考えています。当企業グループは、こうした「顧客中心主義」の徹底と「企業生態系」という仕組みの優位性を活用することに加え、革新的技術への信奉のもとアナログからデジタルという時代の流れに乗じて、デジタルテクノロジーを導入した新たな戦略を駆使することで、創業20周年(2019年3月期)から25周年(2024年3月期)の5年間で、顧客基盤は約2倍となる5,000万件を突破し、税引前利益も約1.7倍となる1,400億円を達成するなど著しい飛躍を遂げました。この度、次のマイルストーンとなる創業30周年(2029年3月期)に目指す姿として、以下をKey Indicatorsとする新中期ビジョンを策定しました。その達成に向けて、当企業グループが今日までに築き上げてきた顧客基盤、事業資産、資金調達力等の一層の拡大と進化させた生態系を徹底的に活用し、更なる営業基盤の拡大を図ることで、飛躍的成長の実現を目指します。 創業30周年(2029年3月期)に目指す姿〈新中期ビジョンのKey Indicators〉・グループ顧客基盤  1億件・連結税引前利益 5,000億円・連結税引前利益に占める海外事業※の割合 30%・ROE 15%※金融サービス事業セグメント及び暗号資産事業セグメントにおける海外事業が対象 新中期ビジョンの達成に向けた諸施策1. グループ証券口座数3,000万を早期に達成株式会社SBI証券では顧客中心主義を体現する「ゼロ革命」(オンラインでの国内株式売買手数料等の無料化)を2023年9月30日注文受付分より開始し、証券口座数は短期間で著増しました。また、収益源の多様化・強靭化を図る取り組みは、ゼロ革命によって発生した逸失利益を相殺して余りあるものとなり、企業生態系の更なる拡大と収益基盤の強化に繋がりました。また、その効果は当企業グループの企業生態系という仕組みを通じて、他のグループ会社の顧客基盤拡大やサービスの認知拡大にも繋がり、グループ全体の成長を支える原動力となっています。新中期ビジョンの達成に向けては、このようにグループ全体に波及する証券顧客基盤の拡大が不可欠であることから、優良な顧客基盤を有する企業とのオープン・アライアンスの推進や、投資初心者や未経験者の多い若年層向けのアプローチを強化することで、新規顧客層の開拓に注力します。また伝統的金融とデジタル金融を融合した新たな金融商品やサービスを提供することで、可能な限り早期にグループ証券口座数3,000万の達成を目指します。 2. 公的資金返済に目途がついた株式会社SBI新生銀行を中核に「第4のメガバンク構想」を推進当企業グループの銀行事業の中核を担う株式会社SBI新生銀行は、2021年12月に当企業グループ入りした後、企業生態系という仕組みを駆使し、株式会社SBI証券をはじめとした当企業グループ各社とのシナジーを徹底追求することで飛躍的な成長を遂げてきました。同行が2022年に策定し、2025年3月期を最終年度とする前中期経営計画においては、財務目標をアウトパフォームする形で達成することができ、2025年5月には新たな中期経営計画を発表しました。こうした好調な業績を背景に、株式会社SBI新生銀行は合計約1,193億円の公的資金の返済を完了しています。また、2025年6月には、株式会社SBI新生銀行、預金保険機構、株式会社整理回収機構、当社の4社間で2025年3月7日に締結した「確定返済スキームに関する合意書」に基づき、公的資金の残額約2,300億円を、当社がその全額を負担する形で2025年7月31日に完済する方針を決定しました。公的資金の完済を機に、株式会社SBI新生銀行の更なる飛躍に向けて、同行を中核とする「第4のメガバンク構想」を強力に推進します。当企業グループは同行をコアとする広域地域プラットフォーマーとして、資本関係の有無に関わらず、地域金融機関と連携し、システムや業務プロセスの効率化を図るとともに、規模の経済性を追求することで、地域金融機関ひいては地域企業の活性化を支援します。 3. 海外事業の税引前利益をグループ全体の3割相当に当企業グループでは、東南アジアを中心に証券・銀行といった金融サービスを提供しており、高い経済成長にも支えられ、各社は既に収益貢献する段階に至っています。また中東・アフリカ・インドなどのグローバルサウス地域においても、有力パートナーと提携しながら積極的な投資活動などを行っております。今後は海外事業の更なる強化に向け、グループ横断的な組織として、海外事業統括本部を設立します。当企業グループが保有する人・資金・技術といった経営資源を最適配分できる体制の下で、海外で更なる競争優位性を発揮できる生態系を形成し、今後3~5年程度を目途に、連結税引前利益に占める海外事業の割合を、現在の2割程度から3割に相当する水準まで引き上げたいと考えております。また、米国トランプ政権が発表した相互関税政策の影響で、日系企業を中心に、地産地消に向けたグローバルな供給網の構築に向けて、生産拠点を消費国に移転する動きが増加することが見込まれます。当企業グループは既に銀行・証券事業を展開している東南アジア地域において、その地域の資金需要の増加を取り込むことで事業の成長を図ります。 4. 技術革新の波を捉えるべく、デジタルスペース生態系の構築を着実に推進当企業グループでは早期から暗号資産事業を成長領域として位置付けてきました。現在、暗号資産の市場規模は、創業20周年(2019年3月期末)からの6年間で20倍以上にまで拡大しています。また、国内においては税制を含む制度改正の動きが活発化していることから、投資環境の整備が進み、投資家層の裾野が拡大することが期待されます。当企業グループでは同領域において、暗号資産交換業者のSBI VCトレード株式会社や株式会社ビットポイントジャパン、暗号資産マーケットメーカーのB2C2 Limited、デジタルアセット流通市場を運営する大阪デジタルエクスチェンジ株式会社(ODX)といった各社が様々なサービスを提供し、デジタルスペース生態系を構築してきましたが、今後は生態系を更に拡大させつつ、当企業グループ各社との相乗効果を生み出せる取り組みを強化していきます。特に、法定通貨の値動きに連動した暗号資産の一種であるステーブルコインは有望な領域と捉えています。ステーブルコインは既存の決済・貿易金融の代替を果たすことが見込まれていますが、同領域においては米ドルが主流であることから、当企業グループでは米ドル建てステーブルコインUSD Coin(USDC)を発行する米Circle社と提携し、SBI VCトレード株式会社にて2025年3月26日より国内で初めてUSDCの取り扱いを開始しました。今後は、ドル建ての定期預金と比較して高い利回りが見込めるUSDCのレンディングサービスを提供するなど、更なるサービスの拡充を進めていきます。 当企業グループではこれらの取り組みを通じて、新中期ビジョンの達成を目指すとともに、新たにメディア領域へと進出し、メディア・IT・金融を融合したネオメディア生態系の構築を図ります。昨今、SNSといったインターネットメディアの台頭など、メディアの立ち位置が激変しつつあり、特に米国ではメディア・IT・金融の融合が急速に進んでいます。こうした世界的な潮流の中で、当企業グループは銀行・証券・保険・資産運用など広範にわたって、国内最高峰の質・量を誇る金融データを保有しており、デジタルスペース生態系を駆使することで従来のアナログチャネルだけではなくデジタルチャネルにおいても情報の拡散が可能であることから、メディア領域においても当企業グループの強みを発揮できると考え、メディア事業への参入を決定しました。ネオメディア事業を統括するSBIネオメディアホールディングス株式会社を設立し、M&Aの推進やコンテンツファンドを通じたIPへの投資などの施策を通じて、コンテンツと金融データを組み合わせた唯一無二の総合金融&メディアディストリビューターを目指し、ネオメディア生態系の構築を進めていきます。またメディア領域においては、地方紙・ローカル局と連携し地域の情報を全国に発信するなど、第4のメガバンク構想との融合も図りながら、地方創生にも貢献していきます。
経営者による財政状態の説明
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要当期における当企業グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。 ① 財政状態及び経営成績の状況当期における我が国経済は、企業業績の回復や賃上げ等の雇用環境の改善を背景に全体として緩やかな回復基調を維持しました。日銀は長期にわたる大規模な金融緩和策を見直し、段階的な金利の正常化に踏み切りましたが、米国のトランプ政権による通商政策の転換が懸念材料であり、特に日本の輸出総額約107兆円の内、6%超を占める自動車及び自動車部品に関する関税交渉の進展次第では、対米輸出の大幅減少による国内経済への悪影響が見込まれ、追加利上げの足かせにもなっています。なお日経平均株価は、2024年7月には米国の利下げ期待と国内企業の堅調な業績を背景に、史上最高値となる4万2,426円を記録しましたが、8月には米中摩擦の再燃や日銀の利上げ決定を受けて3万1,156円まで急落しました。10月以降、4万円台を回復する場面もありましたが、2025年2月にはトランプ政権の関税強化発表により再び下落するなど、ボラティリティの高い1年となりました。このような状況下で、当企業グループの当期における連結業績は、収益が前期比19.3%増の1兆4,437億円となり過去最高を更新しました。金融サービス事業の収益が前期比9.9%増の過去最高となる1兆2,022億円となったことや、投資事業の収益が前期比341.5%増の1,127億円となったことが大きく貢献しています。利益面については、金融サービス事業が堅調であったことに加え、未上場銘柄の評価額が向上したことで前期において税引前損失約177億円を計上していた投資事業が、税引前利益約672億円と大きく好転したことが寄与し、連結での税引前利益は前期比99.4%増の2,823億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同85.8%増の1,621億円となりました。当企業グループにおいて、収益および利益の両面で最大かつ安定的な貢献をしている金融サービス事業につきましては、金利上昇局面を追い風に連結業績に対する寄与度の点で銀行事業が証券事業を上回る規模となっています。銀行事業の中核となるSBI新生銀行は、銀証連携を中心とする当企業グループとの連携諸施策で既に一定の成果を挙げ、当連結会計年度の業績は、実質業務純益が前期比27%増となる1,302億円(小数点以下切り捨て)となるなど、前期比で大幅な増収増益を達成しています。また住信SBIネット銀行や韓国のSBI貯蓄銀行の業績も好調でした。SBI証券は、オンラインでの国内株式売買手数料を無料にするゼロ革命が通期で影響したにもかかわらず、収益源の多様化等の諸施策が奏功したことで、当期の業績は前期比で増収増益を達成しました。また、規制緩和により暗号資産業界の発展を支援するトランプ大統領の就任への期待から、暗号資産市場が活性化し、暗号資産マーケットメイカーの英国B2C2社や暗号資産交換業者の業績が好調でした。 当企業グループは、「金融サービス事業」や「資産運用事業」、「投資事業」に加え、今後も成長領域として期待される「暗号資産事業」、バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業のほかWeb3関連の先進的な分野に取り組む事業等が含まれる「次世代事業」の5つの事業セグメントを報告セグメントとしております。 報告セグメントごとの業績は次のとおりであります。 収益 税引前利益 前期 当期 前期 当期 百万円 百万円% 百万円 百万円%金融サービス事業1,094,098 1,202,2069.9 172,918 225,36930.3資産運用事業29,449 33,81114.8 4,843 5,44712.5投資事業25,528 112,708341.5 (17,729) 67,188-暗号資産事業57,142 80,79741.4 8,428 21,220151.8次世代事業26,637 30,66215.1 (4,952) (9,944)-計1,232,854 1,460,18418.4 163,508 309,28089.2消去又は全社(22,350) (16,451)- (21,939) (26,990)-連結1,210,504 1,443,73319.3 141,569 282,29099.4(%表示は対前期増減率) (金融サービス事業)国内外における証券関連事業、銀行事業、保険事業を中核とした多様な金融関連事業を行っております。当期における収益は1,202,206百万円(前期比9.9%増加)、税引前利益は225,369百万円(同30.3%増加)となりました。これは主に、銀行事業における「償却原価で測定される金融資産から生じる受取利息」の増加等の要因によるものであります。 (資産運用事業)投資信託の設定、募集、運用などの投資運用や投資助言、金融商品の情報提供等を行っております。当期における収益は33,811百万円(同14.8%増加)、税引前利益は5,447百万円(同12.5%増加)となりました。これは主に、新NISAの開始による各社の運用資産残高の増加等の要因によるものであります。 (投資事業)国内外のIT、フィンテック、ブロックチェーン、金融及びバイオ関連のベンチャー企業等への投資に関する事業等を行っております。当期における収益は112,708百万円(同341.5%増加)、税引前利益は67,188百万円の利益(前期は17,729百万円の損失)となりました。これは主に、企業への投資において認識される「FVTPLで測定する金融資産から生じる収益」の増加等の要因によるものであります。 (暗号資産事業)暗号資産の交換・取引サービスを提供する暗号資産交換業等を行っております。当期における収益は80,797百万円(同41.4%増加)、税引前利益は21,220百万円(同151.8%増加)となりました。これは主に、暗号資産価格の上昇等の要因によるものであります。 (次世代事業)生体内に存在するアミノ酸の一種である5-アミノレブリン酸(5-ALA)を活用した医薬品・健康食品・化粧品の開発・販売や、がん及び免疫分野等における抗体医薬・核酸医薬の研究開発に関する事業、医療・健康情報のデジタル化や医療ビッグデータの活用を推進するソリューション・サービスの提供及び医療金融に関する事業等を行うバイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業のほか、Web3関連の先進的な分野に取り組む事業や再生可能エネルギー事業、アフリカをはじめとした海外新市場で展開する事業等を行っております。当期における収益は30,662百万円(同15.1%増加)、税引前利益は9,944百万円の損失(前期は4,952百万円の損失)となりました。 なお、当期末の総資産は32,113,430百万円となり、前期末の27,139,391百万円から4,974,039百万円の増加となりました。また、資本は前期末に比べ143,553百万円減少し、1,763,793百万円となりました。 ② キャッシュ・フロー当期末の現金及び現金同等物残高は5,500,548百万円となり、前期末の4,580,335百万円から920,213百万円の増加となりました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、1,508,745百万円の収入(前期は1,345,740百万円の収入)となりました。これは主に、「営業債権及びその他の債権の増減」が2,119,633百万円の支出となった一方で、「顧客預金の増減」が2,928,372百万円の収入及び「社債及び借入金(銀行業)の増減」が556,359百万円の収入となったこと等の要因によるものであります。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、1,060,455百万円の支出(前期は65,116百万円の支出)となりました。これは主に、「投資有価証券の売却及び償還による収入」が1,413,476百万円となった一方で、「投資有価証券の取得による支出」が2,589,620百万円となったこと等の要因によるものであります。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、445,892百万円の収入(前期は29,172百万円の収入)となりました。これは主に、「社債の償還による支出」が3,311,115百万円及び「長期借入金の返済による支出」が176,157百万円となった一方で、「社債の発行による収入」が3,682,052百万円及び「短期借入金の純増減額」が310,178百万円の収入となったこと等の要因によるものであります。 ③ 生産、受注及び販売の実績生産及び受注の実績については、該当する情報がないため記載しておりません。また、販売の実績については、「① 財政状態及び経営成績の状況」に各セグメントの収益として記載しております。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当企業グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において判断したものであります。 ① 重要な会計方針及び見積もり当企業グループの連結財務諸表はIFRS会計基準に準拠して作成しております。IFRS会計基準に準拠した連結財務諸表の作成において、経営者は、他の情報源から直ちに明らかにならない資産及び負債の帳簿価額について、見積もり、判断及び仮定の設定を行う必要があります。見積もり及びそれに関する仮定は、関係が深いと思われる過去の経験及びその他の要素に基づいております。実績はこれらの見積もりと異なる場合があります。当企業グループの会計方針については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等」の「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3 重要性がある会計方針」に記載のとおりであります。また、当該会計方針のうち、将来に関する仮定及び報告期間末における見積もりの不確実性の要因となる事項で、特に重要性があるものについては、「(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 2 作成の基礎 (4) 見積もり及び判断の利用」に記載しております。これらは、当期及び来期以降に資産や負債の帳簿価額に対して重大な調整をもたらすリスクを含んでおります。 ② 当期の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容当期における当企業グループを取り巻く事業環境は、企業業績の回復や賃上げ等の雇用環境の改善を背景に全体として緩やかな回復基調を維持しました。日銀は長期にわたる大規模な金融緩和策を見直し、段階的な金利の正常化に踏み切りましたが、米国のトランプ政権による通商政策の転換が懸念材料であり、特に日本の輸出総額約107兆円の内、6%超を占める自動車及び自動車部品に関する関税交渉の進展次第では、対米輸出の大幅減少による国内経済への悪影響が見込まれ、追加利上げの足かせにもなっています。なお日経平均株価は、2024年7月には米国の利下げ期待と国内企業の堅調な業績を背景に、史上最高値となる4万2,426円を記録しましたが、8月には米中摩擦の再燃や日銀の利上げ決定を受けて3万1,156円まで急落しました。10月以降、4万円台を回復する場面もありましたが、2025年2月にはトランプ政権の関税強化発表により再び下落するなど、ボラティリティの高い1年となりました。 (金融サービス事業)SBI新生銀行(日本会計基準)は、法人業務における事業法人を中心とした貸出残高増加による金利収益や、海外事業での大口保証案件実行による手数料収益の計上等が寄与し、前期比で大幅な増収増益となりました。持分法適用関連会社の住信SBIネット銀行は、住宅ローン事業で貸出が順調に拡大したほか、運用利回り上昇によって資金運用収益が増加したこと等を背景に、当企業グループにおけるIFRS取り込みベースの持分法による投資利益は前期比44.3%増の6,436百万円となりました。韓国のSBI貯蓄銀行は、基礎的収支が堅調に推移し、融資債権劣化はほぼ収束するなど業績は改善傾向にあり、自己資本比率も17.81%(2025年3月末)と過去最高を記録しました。SBI証券(日本会計基準)は、「ゼロ革命」(国内株式のオンライン取引に係る手数料の無料化)により通期で約380億円の逸失収益を生じたものの、収益源の多様化が奏功し収益減少をオフセットしたことで、営業収益、営業利益、当期純利益等がいずれも過去最高となりました。SBIインシュアランスグループ(日本会計基準)は、保有契約件数の堅調な増加により増収増益となりました。上記の結果、金融サービス事業の収益は過去最高となる前期比9.9%増の1兆2,022億円、税引前利益は同30.3%増の2,254億円となりました。 (資産運用事業)新NISA開始により、資産運用事業に属する各社の運用資産残高が大幅に増加したこと等が寄与し、資産運用事業の収益は過去最高となる前期比14.8%増の338億円、税引前利益は同12.5%増の54億円となりました。 (投資事業)投資事業では、未上場銘柄の評価額が向上した結果、前期の税引前損失から672億円の黒字へと大きく改善しました。なお2025年4月より投資事業はPE投資事業に名称を変更しております。 (暗号資産事業)トランプ大統領の就任により暗号資産市場が活性化する中、暗号資産マーケットメイカーの英国B2C2社の収益や利益が大きく伸びたことに加え、暗号資産取引所でも顧客基盤の拡大や新施策が奏功したことで、暗号資産事業の収益は過去最高となる前期比41.4%増の808億円、税引前利益も過去最高となる同151.8%増の212億円となりました。 (次世代事業)バイオ・ヘルスケア&メディカルインフォマティクス事業では、前期に5-ALA関連事業において計上した健康食品事業用の原料在庫の評価替えに伴う特別損失が当期は発生しなかったこともあり、黒字を確保しました。Web3・デジタルアセット等の先端技術領域は、利益貢献し始めた事業も一部あるものの、全体としては未だ先行投資の段階です。 ③ 経営成績に重要な影響を与える要因について経営成績に重要な影響を与える要因は、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載しております。 ④ 戦略的事業展開について戦略的事業展開については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。 ⑤ 資本の財源及び資金の流動性についての分析(a) 資金需要及び資金の調達源当企業グループの事業活動における主な資金需要としては、証券関連事業における信用取引に係る顧客への貸付資金、銀行関連事業及び海外金融サービス事業における貸付資金、投資事業における投資資金等があります。これらの資金需要に対して、市場環境や長短のバランスを考慮し、銀行借入による間接金融、社債やエクイティファイナンス等の直接金融、証券会社や証券金融会社との取引、コールマネー、顧客預金の受入及び貸出金その他の資産の流動化等により資金を調達しております。 (b) キャッシュ・フローの状況の分析キャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フロー」に記載しております。

※本記事は「SBIホールディングス株式会社」の令和7年月3期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

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連結財務指標と単体財務指標の違いについて

連結財務指標とは

連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。

単体財務指標とは

単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。

本記事での扱い

本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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