森永製菓株式会社の基本情報

会社名森永製菓株式会社
業種食料品
従業員数連3153名 単1538名
従業員平均年齢43.4歳
従業員平均勤続年数19.1年
平均年収8151296円
1株当たりの純資産1523.09円
1株当たりの純利益(連結)200.85円
決算時期3月
配当金60円
配当性向44.9%
株価収益率(PER)12.47倍
自己資本利益率(ROE)(連結)13.5%
営業活動によるCF107億円
投資活動によるCF▲98億円
財務活動によるCF▲180億円
研究開発費※11.35億円
設備投資額※1105.26億円
販売費および一般管理費※11313.69億円
株主資本比率※252.3%
有利子負債残高(連結)※3190億円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1) 会社の経営の基本方針当社グループは、取り巻く経営環境が大きく変化する中、持続的な成長を目指すべく、2021年に新たに企業理念を策定いたしました。企業理念は、わたしたちの使命(パーパス)、わたしたちが目指す未来(ビジョン)、わたしたちが大切にする想い(バリュー)と、これらを一言で表した『コーポレートメッセージ』(おいしく たのしく すこやかに)で構成しております。この企業理念を当社グループにおける全ての活動の拠り所として、ステークホルダーの皆様と社会の期待に応えることで持続可能な社会の実現に貢献し、長期的な企業価値向上を図ってまいります。 (2) 中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題 ① 経営環境日本国内の人口動態の変化、気候変動や資源不足、デジタル技術の発展、生活環境の変化など、今後予測される経営環境の変化は安定的な事業活動にとって脅威であるとともに、市場のニーズに迅速に対応していくことで大きな機会になり得ると捉えております。 ② 2030経営計画当社グループは、企業理念のもと、持続可能な社会の実現に貢献しつつ中長期的な成長を遂げ、企業価値を高めていくため、2030年に向けた長期経営計画「2030経営計画」を推進しております。  2030ビジョン当社グループは、2030年の目指す姿として2030ビジョン『森永製菓グループは、2030年にウェルネスカンパニーへ生まれ変わります。』を定めております。「ウェルネス」とは、「いきいきとした心・体・環境を基盤にして、豊かで輝く人生を追求・実現している状態」と定義し、顧客・従業員・社会に、心の健康、体の健康、環境の健康の3つの価値を提供し続ける企業になることを目指してまいります。120余年の歴史で培った信頼と技術を進化させ、あらゆる世代のウェルネスライフをサポートしてまいります。 基本方針 方針1)事業ポートフォリオの転換と構造改革による収益力の向上 <重点領域への経営資源集中> 高い収益性、成長性が見込める事業として、「inゼリー」など「in」ブランドを中心とするin事業、冷菓事業、通販事業、米国事業を選定し、これらを重点領域と定めました。重点領域への経営資源集中によって当社グループの成長を牽引してまいります。<基盤領域による安定的なキャッシュ創出> 菓子食品事業など着実な売上高拡大と収益力向上を目指す事業を基盤領域と定め、重点領域への投資原資の安定的な創出に取り組んでまいります。<探索・研究領域の取組み> ウェルネスを基軸とした国内外におけるビジネスモデルの創造や商品開発など、新たな取組みを総称して探索・研究領域と定め、次世代成長を担う新事業の育成を目指してまいります。<機能部門を中心とした構造改革による収益力の向上> 重点領域への投資原資を創出するとともに、様々な経営リスクに備えるべく、生産、物流、販売など機能部門を中心に、全社的に構造改革を実行していくことで、収益力のさらなる底上げに取り組んでまいります。 方針2)事業戦略と連動した経営基盤の構築 「2030経営計画」の達成に向けた事業戦略と連動し、「人」「技術」「キャッシュ」そして「デジタル」という経営に不可欠なリソースを最大限活かすことで経営基盤をより強固なものにしてまいります。併せてコーポレート・ガバナンスの改革を推し進め、経営の透明性向上を図ってまいります。 方針3)ダイバーシティ&インクルージョンの推進 「一人ひとりの個を活かす」という考えのもと、ダイバーシティ&インクルージョンを推進することで、多様な人材が活躍できる環境・風土をベースに社会課題の解決につながる新しい価値(イノベーション)を創出できる環境の整備を推し進めてまいります。 経営目標「2030経営計画」における経営目標・指標は以下のとおりであります。  2030年売上高3,000億円以上<重要経営指標>  売上高営業利益率12%以上  重点領域売上高比率60%以上  海外売上高比率25%以上  ROE15%以上  ROIC(注)12%以上  DOE4.5%以上 (注)貸方アプローチで算出 計算式:NOPAT÷投下資本(有利子負債+株主資本) 2030経営計画全体像 ③ サステナブル経営パーパスに基づくサステナブル経営を推進現在、グローバル社会では、気候変動問題をはじめとする社会課題の深刻化やデジタル化の急速な進展など、企業活動に大きな影響を及ぼす環境変化が今までにないスピードで起き、将来の見通しに関する不確実性も高まっております。そのような中、パーパス・2030ビジョンを実現するには、ありたい姿に向けた課題を明確化したうえで、長期視点を持ち、全社グループを挙げて取り組んでいくことが必要であります。当社グループは、創業時より社会への貢献を強く意識して事業を行ってまいりましたが、新たな企業理念の策定を機に、グローバル社会の一員としてSDGsの達成を含めた持続可能な社会の実現に向けた取組みを、これまで以上に積極的に進めていくことといたしました。このような取組みの積み重ねが、当社グループのビジネスをよりサステナブルなものとし、持続的成長と中長期的な企業価値の向上につながると考えております。 当社グループのマテリアリティを特定当社グループでは2024中期経営計画策定に当たり、経営を取り巻く外部環境変化を踏まえて、マテリアリティの見直しを行いました。マテリアリティへの対応を通じて、社会価値の創造とレジリエントな経営基盤づくりを着実に進め、持続的成長を実現してまいります。 <当社グループのマテリアリティ特定プロセス>外部環境変化を踏まえ、新たに抽出・整理した取り組むべき課題について、社外ステークホルダー16名(投資家3名、取引先5社、NGO1名、アドバイザリーボードメンバー3名、社外役員4名)と社内のキーメンバー11名で重要性評価を行いました。その結果を基に役員で議論を重ね、当社グループのマネジメントや業務とのつながりを総合的に考慮して統合し、社内決議及び取締役会報告を経て、5つのマテリアリティを特定いたしました。 ④ 2024中期経営計画(2024-2026)2025年3月期を初年度とする「2024中期経営計画」では、2030経営計画達成をより確実なものにするための2ndステージと位置づけ、キーメッセージを「飛躍に向けた成長軌道の確立」と定めスタートいたしました。成長し続ける永続企業を目指して、重点領域の成長、経営基盤の強化に向け積極的な投資を継続するとともに、基盤領域及び機能部門を中心とした構造改革を推し進めております。ROICマネジメントの実践を通して、これらの戦略をスピードをもって引き続き実行することにより、成長性と資本収益性の好循環を生み出し、2030年に向けた成長軌道を確かなものにしてまいります。 ⑤ 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題 重点領域による成長の牽引「inゼリー」を中心としたin事業や「チョコモナカジャンボ」をはじめとした冷菓事業、「おいしいコラーゲンドリンク」などの通販事業の拡大、米国事業では「HI-CHEW」を中心としたブランド育成と事業基盤の強化など重点領域に経営資源を集中してまいります。in事業においては、ゼリー飲料のトップランナーとして「inゼリー」のさらなるシーンとターゲットの拡大を進めるとともに次世代成長ドライバーを育成いたします。冷菓事業は独自価値を有する商品群の技術深耕により、強いものをより強くするとともに、価値提供領域を拡大していく「芽の創造」にも取り組むことで事業成長を実現してまいります。通販事業はこれまで蓄積してきた顧客データを活用し、1to1マーケティングの実践と顧客ニーズに応える商品・サービスの提供によって定期顧客の育成を図るとともに、DtoCの仕組みを構築し新たな事業領域への進出を目指します。米国事業においては、「HI-CHEW」のさらなる拡大と「Chargel」をはじめとした次世代成長ドライバーの育成を図るとともに、事業成長を支える基盤強化を着実に進めてまいります。  基盤領域の資本収益性向上菓子食品事業においては、「ハイチュウ」「森永ビスケット」など主力ブランドへの集中によるカテゴリーポートフォリオの転換、保有資産を活かした売上高の拡大、維持更新投資の選択と集中による段階的アセットライト、コスト低減や販売費効率化、機動的な価格改定など高収益基盤の構築に向けて様々な取組みを実施してまいります。  さらなる成長に向けた取組みウェルネスを基軸に、国内では独自技術を活用した口腔ケア領域への挑戦や当社独自の素材であるパセノール?ビジネスの育成、海外では、ゼリー飲料やコラーゲンドリンクにおける市場創造に取り組み、次世代の成長を担う芽の創造と育成に取り組みます。また「HI-CHEW」においても、将来の新市場開拓として欧州での取組みを加速させてまいります。  機能部門の構造改革製造部門のスマートファクトリー化のさらなる進化や市場変化を見据えた販売部門の組織最適化による生産性の向上、物流体制の変革により全社的な資本収益性の向上を図ってまいります。構造改革を支える人材育成の強化や職場環境のさらなる改善等、従業員のエンゲージメントを高める取組みを推進してまいります。  経営基盤の構築成長軌道の確立に向け事業戦略を横断的に支える経営基盤を構築してまいります。人事戦略では、「ダイバーシティ&インクルージョン」「人材育成・組織風土づくり」「健康経営の推進」の取組みを進め、人的資本経営を実践してまいります。また、R&D戦略ではグローバル視点の「既存技術深化」「新規技術探索」による価値の創出、DX戦略においてはデジタル経営基盤の拡張とAI技術等による業務高度化・効率化、経理財務戦略ではROICマネジメントの全社推進を行ってまいります。 ⑥ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等「2024中期経営計画」における最終年度2027年3月期の経営目標・指標は以下のとおりであります。なお、2026年3月期よりすべての連結子会社の決算日を3月31日に統一する予定であります。これによる業績に与える影響は軽微の見込みであります。  2027年3月期 売上高2,460億円    同    営業利益246億円<重要経営指標>  売上高営業利益率10.0%  重点領域売上高比率53%以上  海外売上高比率16%以上  ROE12%以上  ROIC(注)10%以上  DOE4.3%    (注)貸方アプローチで算出 計算式:NOPAT÷投下資本(有利子負債+株主資本)
経営者による財政状態の説明
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 」に記載のとおりであります。 (1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。① 経営成績の状況■2025年3月期実績(注)1 EBITDAは簡易版を使用→営業利益+減価償却費 2 2025年2月10日発表値 3 在外子会社換算レートは、1米ドル=151.58円 ■2025年3月期実績:セグメント情報(注)1 当社グループの経営管理の実態を明瞭に表示するため、2025年3月期より区分・集計方法を変     更。2024年3月期の数値は当該変更を遡及適用し、変更後の区分・集計方法により作成したもの     を記載。 2 inブランドを冠したキャンディ、チョコレート等の商品は菓子食品事業、アイスは冷菓事業に     含む。 3 中国・台湾の米国向け輸出に係る利益を含む。 4 現地通貨ベースの売上高前期比は101.3% ② 財政状態の状況 財政状態は次のとおりであります。(流動資産)当連結会計年度末における流動資産の残高は、1,046億6千7百万円となり、前連結会計年度末に比べ133億7千8百万円減少しております。これは主に、商品及び製品が44億5千2百万円、原材料及び貯蔵品が48億8千5百万円増加した一方で、未払法人税、配当等の支払や自己株式取得により現金及び預金が138億3千8百万円、受取手形及び売掛金が32億8千3百万円減少したこと等によるものであります。なお、短期運用しておりました合同運用指定金銭信託が償還されたことにより有価証券が減少しております。(固定資産)当連結会計年度末における固定資産の残高は、1,053億1千9百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億7千9百万円減少しております。これは主に、建設仮勘定が21億1千6百万円、DXプロジェクトの進捗によりソフトウエアが25億7千5百万円増加した一方で、建物及び構築物(純額)が14億6百万円、無形固定資産のその他に含まれているソフトウエア仮勘定が5億9百万円、投資有価証券が29億6千6百万円減少したこと等によるものであります。(流動負債)当連結会計年度末における流動負債の残高は、518億8千9百万円となり、前連結会計年度末に比べ125億4千7百万円減少しております。これは主に、支払手形及び買掛金が13億9千4百万円、未払金が18億4千3百万円、未払法人税等が42億1千8百万円、流動負債のその他に含まれる設備関係未払金が40億4千7百万円減少したこと等によるものであります。(固定負債)当連結会計年度末における固定負債の残高は、257億3百万円となり、前連結会計年度末に比べ8億5千1百万円減少しております。これは主に、環境対策引当金が1億4千6百万円、退職給付に係る負債が5億9千5百万円減少したこと等によるものであります。(純資産)当連結会計年度末における純資産の残高は、1,323億9千3百万円で、前連結会計年度末に比べ2億6千万円減少しております。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益177億1千万円の計上による増加や為替換算調整勘定が18億3千7百万円増加した一方で、株主還元の強化により、配当金の支払い49億8千7百万円や自己株式の取得124億6千万円により減少したほか、投資有価証券の売却等によりその他有価証券評価差額金が18億4千9百万円減少したこと等によるものであります。以上により自己資本比率は、62.3%となりました。 ③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ162億5千6百万円減少し、308億4千5百万円となりました。(営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における営業活動による資金の増加は107億6千3百万円となりました。主な内容は、棚卸資産の増加額85億3千4百万円、法人税等の支払額101億2千3百万円といった資金減少の一方、税金等調整前当期純利益242億8千4百万円、減価償却費99億1千8百万円によるものであります。(投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における投資活動による資金の減少は98億3千7百万円となりました。主な内容は、有形固定資産の取得による支出135億7千9百万円、投資有価証券の売却による収入42億9千8百万円によるものであります。(財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における財務活動による資金の減少は180億8百万円となりました。主な内容は、自己株式の取得による支出124億6千万円、配当金の支払額49億8千7百万円によるものであります。 ④ 生産、受注及び販売の実績a. 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)食料品製造菓子食品事業94,979+10.7 冷菓事業44,566+13.4 in事業13,202△2.5 通販事業-- 事業子会社等9,813+9.5 米国事業10,514+1.7 中国・台湾・輸出等8,990+25.2合計182,067+10.3 (注)1 金額は、販売価格(内部取引価格を含む)によっております。2 「食料卸売」、「不動産及びサービス」及び「その他」のセグメントについては、該当事項はありません。 b. 受注実績主要製品の受注生産は、行っておりません。 c. 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)食料品製造菓子食品事業84,436+6.6 冷菓事業49,360+8.7 in事業31,339△0.8 通販事業11,184+2.0 事業子会社等11,241+12.5 米国事業20,956+9.2 中国・台湾・輸出等9,060+20.9 小計217,578+6.8食料卸売8,690+25.8不動産及びサービス1,870△2.1その他817+10.8合計228,957+7.3 (注)1 セグメント間の取引については、相殺消去しております。2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、その割合が100分の10以上に該当する相手先がないため記載を省略しております。 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。また、従来、「通販事業」の海外向けの売上高を「中国・台湾・輸出等」の区分に含めておりましたが、当連結会計年度の期首より「通販事業」の区分に含める方法に変更したことに伴い、以下の比較分析において区分変更後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容① 経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容当連結会計年度の我が国経済は、雇用・所得環境の改善やインバウンド消費の増加により緩やかな回復基調で推移しました。一方で、原材料価格の高騰や為替影響による物価上昇が続く中、消費者の節約志向の高まりから、食料品などの非耐久財を中心に消費の減速が見られます。また、不安定な国際情勢や米国の関税政策による世界経済の後退懸念を含め、事業活動を取り巻く環境は依然として先行きの不透明な状況が続いております。このような中、当社グループは「2030経営計画」の達成に向けて、その道筋をつくる2ndステージとして「2024中期経営計画」を策定し、1期目として飛躍に向けた成長軌道の確立に向けて成長性と資本収益性の好循環を生み出すべく、各事業の強化を図ってまいりました。その結果、売上高は、主に菓子食品事業、冷菓事業の好調が牽引し、2,289億5千7百万円と前年同期実績に比べ155億8千9百万円(7.3%)の増収となりました。損益については、原材料価格等の高騰影響がありましたが、増収及び価格改定を中心とした打ち返しにより、営業利益は前年同期実績に比べ9億9千3百万円(4.9%)増益の212億6千6百万円、経常利益も前年同期実績に比べ12億6千5百万円(6.0%)増益の223億4百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は政策保有株式の売却に伴う特別利益計上などにより前年同期実績に比べ25億5千6百万円(16.9%)増益の177億1千万円となりました。 ■営業利益増減分析(注)1 当連結会計年度の実績調達レートは1米ドル150.55円、前連結会計年度は137.12円 2 売上原価計上分のみ セグメントの業績は、次のとおりであります。 <食料品製造> 菓子食品事業ビスケットカテゴリーでは、「森永ビスケット」は、9月に実施した価格改定以降一時的な店頭露出機会の減少もあり、店頭回転に鈍化が見られましたが、年度末にかけて概ね想定通りに回復しております。また、発売30周年を迎える「チョコチップクッキー」をフックとしたプロモーションや新商品の発売が寄与し、ブランド全体で前年同期実績を上回りました。キャンディカテゴリーでは、「ハイチュウ」は、発売50周年を切り口としたプロモーションや新商品の発売などの需要喚起策により国内需要の好調が継続したことに加え、インバウンド需要の獲得も寄与し、前年同期実績を大きく上回りました。「森永ラムネ」は、受験シーズンに向けたプロモーションと店頭露出の強化により、パウチ形態の「大粒ラムネ」、ボトル形態いずれも好調が継続し、前年同期実績を大きく上回りました。チョコレートカテゴリーでは、「カレ・ド・ショコラ」は、2月に実施した価格改定以降もハイカカオの需要拡大継続により「カカオ70」が好調に推移し、前年同期実績を上回りました。「ダース」は、2月に実施した価格改定以降も基幹品の「ダース<ミルク>」「白いダース」が堅調に推移し、前年同期実績を上回りました。「チョコボール」は、店頭露出の強化に取り組むとともにメディア露出による話題化も寄与し、3月に実施した価格改定以降も好調が継続し、前年同期実績を上回りました。食品カテゴリーでは、「森永ココア」は、引き続き健康ブランドとして需要喚起に取り組み、2月の価格改定以降も「純ココア」を中心に好調が継続し、前年同期実績を大きく上回りました。「森永甘酒」は、前年同期実績を下回りました。なお、原材料等のコストアップに対する収益改善策として、4月にキャンディ及びチョコレートカテゴリーの一部商品、9月にビスケット及びチョコレートカテゴリー、ココアや甘酒の一部商品、2・3月にチョコレートカテゴリー及びココアの一部商品において価格改定・内容量の減量を実施しております。これらの結果、菓子食品事業全体の売上高は844億3千6百万円と前年同期実績に比べ52億4千2百万円(6.6%)増となりました。損益については、増収及び価格改定効果がありましたが、カカオ原料の高騰の影響が大きく、営業利益は前年同期実績に比べ1億3千1百万円(3.3%)減益の39億1千7百万円となりました。 冷菓事業「ジャンボ」グループは、「チョコモナカジャンボ」は、ブランドの価値である“パリパリッ食感”をさらに強化すべく3月に品質リニューアルを実施しました。「チョコモナカジャンボ」の品質活性化と「バニラモナカジャンボ」のバニラアイスへのこだわりをパッケージデザインの変更並びにTVCMを通じて訴求し、購買喚起に取り組みました。その結果、グループ全体で前年同期実績を上回りました。「板チョコアイス」は、「白い板チョコアイス」の発売再開や断続的なプロモーションにより、購買層がさらに拡大し、前年同期実績を大きく上回りました。「ザ・クレープ」は、チャネル限定新商品の発売による話題化が基幹品の売上拡大にも寄与し、前年同期実績を大きく上回りました。「アイスボックス」は、お酒の割材としての活用を訴求するプロモーション展開を引き続き実施し、秋冬の需要喚起と店頭での取り扱い拡大につなげ、好調が継続しました。なお、原材料等のコストアップに対する収益改善策として、主力品について、9月に価格改定を実施しております。これらの結果、冷菓事業全体の売上高は493億6千万円と前年同期実績に比べ39億6千6百万円(8.7%)増となりました。損益については、増収及び価格改定効果がありましたが、カカオ原料の高騰の影響が大きく、営業利益は前年同期実績に比べ5億6千万円(11.6%)減益の42億5千8百万円となりました。 in事業「inゼリー」は、引き続き受験生をターゲットとしたプロモーション展開と期間限定品をきっかけとした店頭露出の強化により購買喚起に取り組みましたが、前年の受験シーズンに「エネルギーブドウ糖」の売上高を大きく伸ばした反動もあり、ブランド全体で前年同期実績並みとなりました。「inバー」は、プロテイン摂取手段の多様化による競争環境の激化に伴いプロテインバー市場が漸減する中、販売什器を活用した店頭展開強化や消費者キャンペーンにより購買喚起に取り組みましたが、前年同期実績を下回りました。なお、原材料等のコストアップに対する収益改善策として、原価低減の取組みや、一部商品において、12月に価格改定を実施しております。これらの結果、in事業全体の売上高は313億3千9百万円と前年同期実績に比べ2億4千万円(0.8%)減となりました。損益については、収益改善策の取組みにより、営業利益は前年同期実績に比べ6億6千6百万円(10.0%)増益の73億円となりました。 通販事業「おいしいコラーゲンドリンク」は、オンライン広告の強化により顧客基盤の拡大に取り組みましたが、節約志向の高まりなどから新規顧客獲得数は伸び悩み、前年同期実績を下回りました。通販事業の第2の柱候補の商品である「おいしい青汁」は、着実に売上高を拡大しております。これらの結果、通販事業全体の売上高は111億8千4百万円と前年同期実績に比べ2億1千5百万円(2.0%)増となりました。損益については、顧客獲得効率の状況に応じて広告投資をコントロールしたことにより、営業利益は前年同期実績に比べ2億7千2百万円(131.4%)増益の4億7千8百万円となりました。 事業子会社㈱アントステラは、原材料等のコストアップに対する収益改善策として価格改定を実施しましたが、全国の直営店において量り売りや詰め放題の販売が引き続き好調に推移したほか、大手量販店の銘店コーナーへの出店増加も寄与し、前年同期実績を上回りました。森永市場開発㈱は、円安を背景とした訪日外国人の増加により、テーマパークにおける販売が堅調に推移し、前年同期実績を上回りました。これらの結果、事業子会社全体の売上高は109億5千4百万円と前年同期実績に比べ11億7千7百万円(12.0%)増となりました。営業利益は前年同期実績に比べ2億3千9百万円(28.4%)増益の10億8千万円となりました。 [国内における主な商品の前年同期比 (単位:%)]菓子食品事業冷菓事業森永ビスケット102ジャンボグループ101ハイチュウ110板チョコアイス128森永ラムネ125ザ・クレープ126カレ・ド・ショコラ110アイスボックス111ダース112in事業チョコボール116inゼリー100森永甘酒92inバー96森永ココア133通販事業 おいしいコラーゲンドリンク97 ※表中の数値は国内販売実績にて算出 米国事業「HI-CHEW」は、インフレによる消費低迷により、引き続きコンビニチャネルでの販売に影響がありましたが、既存品の容量ラインアップの拡充や新商品の発売により、取り扱いSKU数の増加に取り組んだほか、新たな販売チャネルへの取組みを強化し、前年同期実績を上回りました。ゼリー飲料「Chargel」は、新たなタグライン「Thirst-Quenching Snack」(喉の渇きも癒せるスナック)の訴求による商品理解促進や日常的なスポーツシーンにおける需要獲得に取り組みました。リアルチャネルでは引き続き米系小売業への導入促進に取り組み、ECチャネルでは着実に販売を伸ばしております。これらの結果、米国事業全体の売上高は209億5千6百万円と前年同期実績に比べ17億6千9百万円(9.2%)増となりました。損益については、増収効果がありましたが、戦略的なマーケティング投資により、営業利益は前年同期実績に比べ1億7千6百万円(5.4%)減益の30億6千4百万円となりました。 中国・台湾・輸出等中国では、「HI-CHEW」の販売が引き続き好調に推移したほか、日本製品の輸入販売も堅調に推移しました。台湾では、「HI-CHEW」が5月に実施した価格改定以降、店頭回転が苦戦したものの、プロモーションや新商品の発売が寄与し、足元では復調しております。「キャラメル」は引き続き好調に推移しました。探索・研究領域である東アジア・東南アジア・オセアニア地区や欧州においても、「HI-CHEW」の売上高を着実に拡大しております。これらの結果、中国・台湾・輸出等全体の売上高は90億6千万円と前年同期実績に比べ15億6千8百万円(20.9%)増となりました。営業利益は前年同期実績に比べ3千万円(6.5%)増益の4億9千6百万円となりました。 以上の結果、<食料品製造>の売上高は2,175億7千8百万円と前年同期実績に比べ6.8%増となりました。セグメント利益は198億6千2百万円と前年同期実績に比べ4千7百万円の減益となりました。 <食料卸売>原材料等のコストアップに対する収益改善策として、当期に複数回の価格改定を実施しましたが、主力商品を中心に需要を拡大し、販売が好調に推移しました。 これらの結果、食料卸売セグメントの売上高は86億9千万円と前年同期実績に比べ17億8千1百万円(25.8%)増となりました。セグメント利益は前年同期実績に比べ10億6千4百万円(282.0%)増益の14億4千1百万円となりました。 <不動産及びサービス>売上高は、18億7千万円と前年同期実績に比べ4千1百万円(2.1%)減となりました。セグメント利益は8億1百万円と前年同期実績に比べ3千3百万円(3.9%)の減益となりました。 <その他> 売上高8億1千7百万円、セグメント利益1億6千5百万円であります。 ② 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容財政状態の詳細については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載のとおりであります。 ③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報(キャッシュ・フローの状況)キャッシュ・フローの詳細については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。(キャッシュ・フロー指標のトレンド) 第173期2021年3月期第174期2022年3月期第175期2023年3月期第176期2024年3月期第177期2025年3月期自己資本比率(%)60.560.760.758.762.3時価ベースの自己資本比率(%)98.088.886.2106.4102.5キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)0.80.4-0.61.8インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)383.3739.8-288.599.5  (注)自己資本比率:自己資本/総資産 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産 キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。※キャッシュ・フローは、連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、リース債務を除く利子を支払っている負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。※「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第174期の期首から適用したことに伴い、第173期に係るキャッシュ・フロー指標のトレンドについては、当該会計基準等を遡って適用した後の指標となっております。※第175期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは、営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。 (資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた取組み)<2024中期経営計画初年度(2024年度)の進捗>当社グループは「2030経営計画」の達成に向けて、その道筋をつくる2ndステージとして「2024中期経営計画」を策定し、飛躍に向けた成長軌道の確立に向けて成長性と資本収益性の好循環を生み出すべく、各事業の強化を図っております。その1期目にあたる2024年度の売上高は、前年同期実績に比べ7.3%の増収となり4期連続過去最高を達成いたしました。損益については、営業利益も過去最高を更新し、また親会社株主に帰属する当期純利益は政策保有株式の売却に伴う特別利益計上などもあり、大幅に伸長いたしました(前年同期比+16.9%)。期首計画を大幅に上回る原材料価格等の高騰の影響や中長期成長を見据えた無形投資を継続したことで営業利益率はやや低下したものの、増収及び価格改定といった打ち返し等により、売上成長と増益を継続できました。基盤領域の菓子食品事業、重点領域の中では冷菓事業が主に増収を牽引した一方、重点領域であるin事業、通販事業及び米国事業の成長(為替影響除く現地通貨ベース)はやや踊り場となりました。その結果、重点領域売上高比率は前期と比較してやや低下いたしましたが、海外売上高比率は事業成長に加え為替影響もあり、上昇傾向を継続いたしました。事業ポートフォリオ転換を見据える中で、重点領域売上高比率の低下は課題であり、収益性の高いin事業、グローバル戦略の要である米国事業を中心に、改めて成長軌道を確立していく必要があると認識しております。また、2024年度のROEは13.5%と2022年度を底にV字回復し、中期経営計画の目標値水準を上回っております。親会社株主に帰属する当期純利益の伸長に加え、株主還元の強化や政策保有株式などの非事業資産の売却等による資産圧縮策が寄与いたしました。前年度以降の株価水準の切りあがりと、10期連続の増配により株主総利回り(TSR)は前年に引き続き100%を超える水準(125%)となりました。 <森永製菓グループの財務課題>2023年3月に東京証券取引所より、プライム市場及びスタンダード市場の全上場会社を対象に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応」について要請がありました。 企業価値向上を資本市場の視点で評価する指標の一つである株価純資産倍率(PBR)の当社グループにおける中長期的推移をみると、2018年度より下降傾向が継続しておりましたが、2022年度を底に株価上昇と資本収益性の回復を受けて上昇基調に転じ、2024年度末においては約1.6倍となりました。今後も持続的な企業価値向上は当社グループにとって最も重要な財務課題と認識し取り組んでまいります。PBRはROEとPERで構成されますが、当社グループのROEについては、2010年代半ば以降、相対的に収益性の高い冷菓事業やin事業等の成長を促進し、事業ポートフォリオを変化させたことにより、概ね2桁水準を維持しております。直近の数年間の推移をみると、新型コロナウイルス感染症の拡大や原材料価格等の高騰といった急激な外部環境の変化もあり、2022年度には7.9%まで低下しましたが、増収及び価格改定効果等によって事業収益性の維持・改善を図るとともに、株主還元策の強化並びに政策保有株の縮減や保有不動産の売却などを通じて、手元流動性水準の調整や非事業資産の圧縮を進めたことによって総資産回転率が着実に上昇いたしました。その結果、2024年度のROEは13.5%となりV字回復いたしました。当社グループでは、CAPMによる理論値やPERの水準から株主資本コストを7~8%程度と推計しております。ROEの目標値を2024中期経営計画では、12%以上、2030経営計画では15%以上と定め、東証プライム市場の企業の中で、高ROEのグループに加わるとともに、中長期的に安定して株主資本コストの水準を上回ることを目指しております。事業収益性の強化によって売上高当期純利益率をさらに改善するとともに、中長期的な事業成長のための投資資金需要を考慮しつつ、財務レバレッジを中長期的に調整してまいります。一方のPBRの構成要素であるPERについては、直近数年間の推移をみると低下傾向であります。将来の事業成長に対する資本市場の期待をさらに高めること、環境変化に強い事業ポートフォリオの構築やサステナブル経営の徹底による長期事業リスクの低減を図ることが重要と認識しております。 <財務戦略骨子>当社グループは、積極的な成長投資と安定した財務基盤を維持することにより、持続的な企業価値向上と継続的かつ安定的な株主還元を実現していくことを基本方針としております。2030経営計画の達成に向けて、「資本コストや株価を意識した経営」を実践し、企業価値を最大化することですべてのステークホルダーに貢献することを目指してまいります。 当社グループでは、企業価値(株主価値)を示す代表指標の一つであるPBRに着目し、その構成要素であるROEの向上とPERの上昇を狙いとして、3つの主要財務戦略を実行いたします。戦略①は「ROICマネジメントの実践による成長力と資本収益性の向上」であります。ROIC水準の中長期的な向上を目指し、2024中期経営計画のテーマである「飛躍に向けた成長軌道の確立」を果たすべく、ROICマネジメントに基づき、「成長性」と「資本収益性」の好循環の実現に取り組んでまいります。戦略②は「財務安全性の確保と資本コストの低減」であります。当社グループは財務ガイダンスに基づき一定水準の財務安全性と投資余力を確保することを基本方針としております。これを前提に、最適な財務レバレッジ水準へのコントロールを行うとともに、環境変化に強い事業ポートフォリオの構築やサステナブル経営の徹底を通じて長期事業リスクの低減を図ることで資本コストの低減に努めてまいります。戦略③は「株主還元の強化」であります。経営基盤の盤石化のもとに、継続的かつ安定的な株主還元を実施し、ROEやPERの改善につなげてまいります。 <戦略① ROICマネジメントの実践による成長力と資本収益性の向上>当社グループは、中長期的な企業価値向上を図るために、ROICマネジメントを実践し、最適な事業ポートフォリオを形成することで「成長軌道の確立」に向けた成長性と資本収益性の好循環を生み出します。そのため「成長性」と「資本収益性」の2軸で事業を分析し、各事業の中長期的な戦略・施策を決定いたします。成長を加速する事業、資本収益性を改善する事業を見定め、投資先・投資規模を含めて、経営資源の最適な配分を行ってまいります。主に2030経営計画で定める重点領域に対して、事業提携やM&A等のインオーガニック成長や当社のマテリアリティ対応による新たな事業機会の創出を含めて、戦略的な成長投資を最優先に実施し、飛躍的な成長を促してまいります。一方、相対的にROIC水準が低い基盤領域等の事業においては、主に収益性や投下資本効率の改善を通じて「資本収益性」の改善に取り組みます。具体的には、保有資産を活かした売上高拡大を志向しつつ、維持更新投資の選択と集中により、段階的なアセットライトを推進してまいります。同時に、コスト低減、機動的な価格改定等の収益性改善施策を展開いたします。これらを通じて、2024中期経営計画における各事業のミッションや具体的な取組みの考え方を明確化するとともに、成長性と資本収益性の中期目標を事業毎に定めました。同中期経営計画期間においては、重点領域は成長軌道の確立に向けて、成長投資先行の取組みとなります。基盤領域である菓子食品事業については資本収益性の改善を重視し、現状6~7%程度と推定される全社WACC(加重平均資本コスト)を上回る8%以上を目指して取り組んでまいります。また、個別の投資の実行にあたっては、投資決定基準に基づき案件評価を厳格に行い、投資回収状況を継続的にフォローしながら、資本コストを意識した投資管理を行っております。 <戦略② 財務安全性の確保と資本コストの低減>当社グループは、外的経営環境の急変や戦略的大型投資案件(M&A等)の発現に備え、一定水準の財務安全性と投資余力を確保することを基本方針としております。財務安全性の基準としては、㈱日本格付研究所(JCR)における長期発行体格付「A」以上を維持することを原則としております。また、手元流動性、ネットD/Eレシオ、有利子負債/EBITDA倍率といった財務指標をモニタリングして財務安全性を確保してまいります。その上で、投資資金需要を満たすための資金調達にあたっては、適切な手元資金の水準、資金調達コストの水準などの調達条件、財務安全性指標やROE・ROICといった財務指標への影響などを総合的に勘案し決定いたします。なお、短期資金の需要変動及び資金不足リスクへの対応を強化するため、手元流動性水準を機動的に調整することができる「短期借入枠」を主要取引銀行にて設定しております。これにより、手元流動性水準のガイドラインを従前の「月商2カ月以上」から「月商1.5ヵ月以上」に変更し、更なる資産効率の改善を図ってまいります。当社グループは、企業価値の向上に向けて資本コストの低減に取り組んでまいります。現状のネットキャッシュの状況に対し、財務安全性や投資資金需要を見極めた上で、有利子負債の構成を高め、財務レバレッジを活用することで、現状6~7%程度と推計されるWACC(加重平均資本コスト)の低減を図ってまいります。株主資本コストは7~8%程度と推計されますが、その低減にあたっては、環境変化に強い事業ポートフォリオの構築やサステナブル経営の徹底による長期事業リスクの低減が重要と認識しております。そのため、当社のマテリアリティへの対応を進めるとともに、無形投資(広告・R&D・DX・人材など)を強化し、持続的な事業成長力を高めてまいります。また、政策保有株式の更なる縮減、非事業不動産等の売却・処分推進などのアセットライトによって、投下資本の圧縮と成長投資資金の確保を図るとともに、資産価値変動リスクを低減いたします。うち政策保有株式については、2024中期経営計画期間終了までに2024年度末より半減を目指してまいります。さらに、財務・非財務情報の開示や株主・投資家との対話を強化し、中長期的事業成長への取組み、事業リスク等への対応状況などをご理解いただき、適正な株価形成によって株価ボラティリティを抑制してまいります。 <戦略③ 株主還元の強化>当社グループは、戦略的かつ重要な事業投資を優先することを原則としつつ、株主の皆様への利益還元について、経営基盤の盤石化のもとに、継続的かつ安定的な株主還元の実施を基本方針としております。株主還元にあたっては、健全なバランスシートを維持することを前提に、配当性向の水準、フリーキャッシュ・フローを考慮しながら、資本政策の指標である純資産配当率(DOE)の水準を中長期的に引き上げていくことを目指してまいります。また、総還元性向を意識して、投資資金需要を考慮しつつ、必要に応じ自己株式の取得を機動的に実施することも検討してまいります。2024中期経営計画期間においては、3年間で360億円以上の株主還元の実現を目標として掲げております。初年度である2024年度においては、剰余金の配当51億円、自己株式取得124億円の計176億円(キャッシュアウトベースでは174億円)を実施いたしました。当期末の配当金につきましては、過去10年連続増配の1株当たり60円(5円増配)を予定しております(2025年6月27日開催予定の第177期定時株主総会に付議予定)。今後とも継続的かつ安定的な配当を目指してまいります。なお、当社グループはこれまで年1回の期末配当を実施しておりましたが、2026 年3月期より中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を実施する方針に変更し、2026 年3月期より中間配当を実施する予定で、株主の皆様への利益還元の機会を充実させてまいります。さらに、機動的な資本政策の遂行を図るため、今後も必要に応じ自己株式の取得を検討してまいります。 <キャッシュアロケーションの考え方>当社グループは、2030経営計画達成のための道筋をつくるため、2024中期経営計画では「飛躍に向けた成長軌道の確立」をテーマと定め、重点領域を中心とした事業成長投資、事業戦略と連動した経営基盤強化投資、無形資産投資を実行し、サステナビリティを強化してまいります。特に「HI-CHEW」のグローバルにおけるブランド成長に向けた生産体制構築のための戦略的投資、DX投資をはじめとした経営基盤強化のための戦略投資、重点領域への積極的なM&A探索を含め、2024中期経営計画期間の3カ年で総額約600億円の投資を計画しております。2024年度においては、米国での「HI-CHEW」の現地生産拡張のため、森永アメリカフーズ(株)第2工場の建設に着手いたしました。またDX投資についてはグローバルレベルでの業務・システムの標準化、業務の効率化・高度化の実現を目的とした基幹システムの刷新等に伴い、27億円の投資を実施いたしました。一方、株主還元については、事業からのキャッシュ創出力を引き続き強化し、2024中期経営計画期間で360億円以上の還元を目指す方針であります。 <株主・投資家の皆様との対話について>当社グループの長期経営計画である2030経営計画の達成に向けて、「資本コストや株価を意識した経営の実践」に注力するなか、積極的にIR活動を展開しております。四半期毎の決算説明会や個別IR面談での関心事項を踏まえたIR Day、スモールミーティングの開催、海外IRやカンファレンスを通じた接点の創出に取り組んできた結果、資本市場の皆様との面談回数は着実に増加しております。また、個人投資家向けの説明会も実施し、対話の裾野を広げております。開示情報の拡充にも努めており、当社ホームページのIRサイトは前年度に引き続き2024年度も外部機関から高い評価をいただいております。また、2024年6月に開示した有価証券報告書の「経営者における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の記載内容が金融庁公表の好事例として採り上げられました。対話の実施状況や内容については、四半期毎に開催されるIR委員会や取締役会に報告し、取組方針等を検討・議論するとともに、年間を通じて適宜関連部門にもフィードバックしております。 (注)個別IR 面談、IR Day、スモールミーティング、カンファレンス、海外IRにて投資家・アナリストとの接点を得た回数(カウントの単位は「社」、同一四半期において複数回の接点があった場合も「1」とカウントし、四半期毎の合算で集計) 資本市場の関心や期待を踏まえ、2024中期経営計画において主要事業別のROIC実績及び目標並びに資本コストの推計値を開示したうえで、これらの内容を基に対話やアンケートを通じて投資家・アナリストの皆様のご意見を伺っております。具体的な目線を共有することで対話の質が向上し、資本コストに対する多様な考え方を参考として社内議論の活性化にも繋がっております。経営全体として資本効率に対する意識をさらに高め、それらを具体化する形で手元流動性水準のアップデートや、政策保有株式の縮減目標を開示いたしました。引き続き、建設的な対話の促進に努め、対話を通じて得られた示唆を経営活動に活かすことで持続的な企業価値向上を目指してまいります。

※本記事は「森永製菓株式会社」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

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連結財務指標と単体財務指標の違いについて

連結財務指標とは

連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。

単体財務指標とは

単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。

本記事での扱い

本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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