| 会社名 | アズビル株式会社 |
| 業種 | 電気機器 |
| 従業員数 | 連8922名 単5052名 |
| 従業員平均年齢 | 45.7歳 |
| 従業員平均勤続年数 | 19.7年 |
| 平均年収 | 8337376円 |
| 1株当たりの純資産 | 459.01円 |
| 1株当たりの純利益(連結) | 77.96円 |
| 決算時期 | 3月 |
| 配当金 | 57円 |
| 配当性向 | 32.5% |
| 株価収益率(PER) | 14.77倍 |
| 自己資本利益率(ROE)(連結) | 17.9% |
| 営業活動によるCF | 439億円 |
| 投資活動によるCF | 20億円 |
| 財務活動によるCF | ▲297億円 |
| 研究開発費※1 | 127.26億円 |
| 設備投資額※1 | 98.39億円 |
| 販売費および一般管理費※1 | 256.5億円 |
| 株主資本比率※2 | 75.7% |
| 有利子負債残高(連結)※3 | 54.82億円 |
経営方針
| 1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、azbilグループが判断したものであります。(1)経営方針 azbilグループは、「人を中心としたオートメーション」のグループ理念のもと、事業拡大を通じて、持続可能な社会へ「直列」に繋がる貢献により、継続的な企業価値の向上を図り、社会と社員のWell-beingを実現し、あらゆるステークホルダーと信頼関係を構築してまいりたいと考えております。 (2)経営戦略等 当社は、人を中心に据え、人と技術が協創するオートメーション世界の実現に注力し、お客様の安全・安心や企業価値の向上、地球環境問題の改善等に貢献する世界トップクラスの企業集団になることを長期目標と設定、段階的に中期経営計画を立案し、この目標達成に向けた取組みを行っております。オートメーションに焦点をあてつつ単一市場への過度な集中を避け、3つの事業分野から成る複合的な事業ポートフォリオの構築を進め、顧客開拓やシナジー等による事業領域の拡大に取り組んでまいりました。 これらの事業領域には、既存の製品・サービスの提供では持続的な成長の実現が厳しくなってきている成熟領域もあれば、IoTやAIといった新たな技術革新に伴い、急激に変化している領域もあります。基盤を確たるものとし、企業としての存続を確かなものとする取組みを継続するとともに、更なる成長を実現するため、国内外の事業機会の変化を的確に捉え、事業創造の視点から「商品と顧客現場の連携」によるソリューション提案力の向上に取り組み、azbilグループならではの価値の提供を実現してまいります。 2021年度から2024年度までの前中期経営計画※1期間では、コロナ禍を契機に市場環境は大きく変化し続けました。最終年度の2024年度も、生成AIをはじめとする技術革新、インフレやグローバルサプライチェーンの課題、地政学的リスクの高まりや貿易摩擦等、多くの企業にとって変化の激しい年となりました。この不確実性が増す状況下において当社グループとしましては、市場ごとに事業環境は異なるもののお客様の生産性改善ニーズ等による受注を着実に捉え、調達・生産プロセスの改善により売上を拡大するとともに、インフレ等によるコスト上昇に対し、価格転嫁対応を含む収益力強化と業務効率化の展開により過去最高業績を更新しました。 2025年度から始まる新中期経営計画(2025~2027年度)※2は、2030年度の長期目標を見据えた第二期間であるとともに、2026年に迎える創業120周年を超えて、“持続可能な社会へ直列に繋がる貢献”に向けた進化、共創を実現する計画と位置付けております。我々はこれまで、未来を見通し、変化を捉え、「創業時からのDNA」を時代にあわせて活性化し、自らを進化させることで、お客様や現場の声に誠実に応え、前中期経営計画期間には3つの成長事業領域※3をはじめとする様々な領域で事業拡大を実現してまいりました。新中期経営計画においても、半導体等の技術革新及びカーボンニュートラルのような社会環境の変化に伴う新たな社会課題解決を更なる事業機会と捉え、人的資本強化、商品力強化、DX推進等の投資を着実に行ってまいります。グローバルでの地政学的リスク、米国相互関税政策に伴うインフレ等、事業環境変化は継続しておりますが、当社グループの特長である、製品をご利用いただいている工場、商業ビル、ライフラインといったお客様の現場における、ライフサイクルに応じた長期にわたる商品・サービスの提供を通じ、効率化や高品質化といった価値を提供し続けることで、持続的かつ安定的な成長を目指してまいります。※1 2021年5月14日、中期経営計画(2021~2024年度)を策定・公表いたしました。※2 2025年5月13日、新中期経営計画(2025~2027年度)を策定・公表いたしました。※3 3つの成長事業領域:「新オートメーション事業」、「環境・エネルギー事業」、「ライフサイクル型事業」 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、2021年5月14日に策定した2030年度をゴールとする長期目標を、2025年5月13日、売上高4,200億円、営業利益650億円、営業利益率15.5%、ROE15%を目標として上方修正いたしました。前中期経営計画期間での収益力強化の取組みの成果を活かし、長年にわたる顧客基盤との強い関係を基にした事業に加えて、成長領域の開拓で更なる成長を目指しております。 この長期目標達成に向け、前中期経営計画の最終年度となる2024年度では、事業収益力の強化を進め、売上高3,000億円、営業利益375億円、営業利益率12.5%、ROE12.2%を計画し、実績として、売上高3,003億円、営業利益414億円、営業利益率13.8%、ROE17.9%を達成しました。 これを踏まえ、2027年度を最終年度とする3ヵ年の新中期経営計画では、最終年度の売上高3,400億円、営業利益を510億円、営業利益率15.0%、ROE14%を達成することを目標としております。 (4)対処すべき課題① サステナビリティ経営 azbilグループでは、ダブルマテリアリティ(環境・社会が企業に与える財務的な影響と、企業活動が環境・社会に与える影響という2つの側面から重要性を評価する考え方)を取り入れ、長期にわたり取り組む重点課題として5分野10項目のマテリアリティを特定しています。これらのマテリアリティに基づき、事業や企業活動に関する7つの項目については、SDGs(Sustainable Development Goals-持続可能な開発目標)の領域において目標を「azbilグループSDGs目標」として具体的に定めるとともに、企業が社会に存立するうえで果たさなければならない基本的責務である3つの項目については、CSR活動において具体的な目標を定めております。このようなSDGs及びCSR活動における各目標の達成に向けて様々な取組みを行うことにより、当社グループの「サステナビリティ経営」の推進を通じ、持続的な成長を目指してまいります。 ② 国内事業 ビルディングオートメーション(BA)事業は、中期的には国内の大型建設需要は旺盛になっていますが、このような好調な環境下において、お客様に満足いただける一層高い品質の製品やフィールドサービスを提供し続けるとともに、カーボンニュートラルやウェルネスを中心とした新しいニーズに対しても当社グループならではの新規商品の提供や、事業開拓のための他社協業を推進しています。 カーボンニュートラルへの具体的な取組み事例として、株式会社読売新聞東京本社の本社ビルと東京北工場で実施するオフサイトフィジカルコーポレートPPA※4において、両物件が使用する電力を、再生可能エネルギー※5由来の電力に置き換える再エネ電力スキーム導入事業への参画が挙げられます。この事業の参画を通じ、蓄熱制御を始めとするビルディングオートメーション技術やデマンドレスポンス※6技術の更なるアップデートを図り、お客様のカーボンニュートラルへの取組みのサポートや脱炭素社会実現の貢献を目指しています。 ▲オフサイトフィジカルコーポレートPPAの仕組み アドバンスオートメーション(AA)事業では、景気の循環による変動影響はあるものの、脱炭素化、サーキュラーエコノミー、生産高度化、安全・安定操業、人手不足対応等の要望に対して、計測・制御分野を中心に貢献できる領域は大きく、更なる事業領域の拡大と事業成長が期待できると考えています。成長戦略として、社会の環境変化や技術の潮流変化に対応した「azbilグループならではの新しいオートメーション領域」を創出していくとともに、原価低減、販売価格適正化等の各種収益力強化施策をCP事業、IAP事業、SS事業の3つの事業単位でのオペレーションを通じて着実に実行してまいります。 新しいオートメーション領域の商品として、AIを活用した品質ナビゲーションシステム「Deep AnchorTM」の販売を開始しました。Deep Anchorは、自律型品質管理のコンセプトに基づいて開発された、AIを活用した品質管理業務のためのナビゲーションシステムで、製品の品質に影響を与える因子を自動で抽出し、生産中の品質変化をリアルタイムで監視するだけでなく、万一、品質検査で不合格が発生した際には、その原因を自動で調査し報告する革新的な機能も備えています。 Deep Anchorは、次の3つの機能を提供するAIによる品質ナビゲーションシステムです。機能1:製品品質に影響を与える因子を自動抽出機能2:生産中の品質影響因子の変化をオンラインモニタリング機能3:品質検査で不合格の場合、製造データ等からその原因を自動で調査報告▲AIを活用した品質ナビゲーションシステム「Deep Anchor」 ライフオートメーション(LA)事業では、ライフライン分野において、主体であるガス・水道メーターの交換に関する安定した需要に対し、価格転嫁等を通じて収益性の改善に努めています。さらに、計量法に基づく安定した更新需要をベースに、ガス・水道メーターのスマート化と、これに通信とクラウドシステムを融合したSmart Metering as a Service (SMaaS) 事業を推進してお客様や社会への新たな価値の提供を目指します。また、住宅用全館空調システム分野では、新設建物から既設建物や小規模建物まで、対象建物の拡大により収益性を向上し、長期的にはサービスエンジニアリング力にIoT技術をプラスして現場対応力を強化し、お客様の健康で快適な暮らしに省エネをプラスした全館空調分野での快適住空間プロバイダーへ事業の拡大を目指します。 ※4 コーポレート PPA(Power Purchase Agreement:電力購入契約):企業が再エネ電力を発電事業者から長期にわたって固定価格で購入する契約。オフサイト PPA とは、遠隔地の発電所から一般の送配電網を介して電力を調達する形態で、フィジカル PPA とは、発電事業者が小売電気事業者を通じて電力と環境価値をセットで需要家に供給する形態。※5 再生可能エネルギー:太陽光、風力、温度差等の自然エネルギーを利用して電力や熱を生成するエネルギー。※6 デマンドレスポンス:需要家側エネルギーリソースの保有者もしくは第三者が、そのエネルギーリソースを制御することで、電力需要パターンを変化させること。 ③ 海外事業 BA事業では、アジア地域の建物市場を中心に、都市化の進展が継続し、オフィスのグレードアップが進むことが見込まれています。そのため、国内事業モデルでの強みである省エネルギーのアプリケーション技術、エンジニアリング、サービス力を活用した製品・サービスの提供を推進していきます。また、成長が期待されるデータセンター市場においては、シンガポールで開催された「第10回Data Centre World Asia(DCWA)2024」に、シルバースポンサーとして出展し、お客様とのネットワーク拡大、更なるコラボレーションの模索、東南アジア地域全体での市場プレゼンスの向上を図りました。 ▲Data Centre World Asia 2024 シルバースポンサー AA事業では、中長期的な視点で循環的な景気変動はあるものの、グローバルでの経済成長の継続、更なる生産性改善の要求、設備老朽化への対応、環境規制の拡大、新技術の活用に対する期待等を背景とした生産設備の自動化投資は引き続き拡大が見込まれています。そのような状況下において、脱炭素社会へ向けた産業構造の転換を見据え、新市場向けの拡張製品開発や異常予兆検知・AI設備診断等、新しいオートメーション領域の開拓を進めていきます。加えて、戦略地域の営業体制強化や営業活動の質の改善を継続することで、顧客のカバレッジが拡大しており、事業基盤整備も着実に進捗しています。さらには、価格転嫁を含む収益力強化施策も継続し、高い利益率を引き続き確保してまいります。 LA事業では、ライフサイエンスエンジニアリング領域においてスペインのアズビルテルスターを中心として事業を展開していましたが、業界再編のなかで、資本効率向上に基づく事業ポートフォリオ再構築の観点から検討を重ね、成長分野への経営資源の効率的な投下のため、2024年10月にはアズビルテルスターの出資持分全てを欧州の有力パッケージソリューション企業であるSyntegon社の100%子会社に譲渡しました。 以上のような国内外の3つの事業軸への取組みに加えて、技術探索及び新技術の獲得、事業基盤の強化と事業領域の拡大を目指して新たに米国ベンチャーファンド2社との出資契約を締結いたしました。具体的には、気候変動やAIに関してDNX Ventures社と、BA事業領域においてMetaProp社と、それぞれ出資契約を結び、これらのファンドに出資する企業(Limited Partner)との連携や協業も視野に入れた取組みを加速していきます。 ④ 生産・開発 azbilグループの事業拡大に向けて、グローバル生産体制を構築し、商品力強化に向けた開発投資の強化を進めてまいりました。国内では生産機能の中核拠点である湘南工場と藤沢テクノセンターにおける技術開発機能の連携を強化し、グループ内のマザー工場としての機能整備を進めています。また、藤沢テクノセンターでは、新実験棟にてクラウドやAIを活用した先進的なシステム・ソリューションやMEMS※7技術による高機能・高性能デバイスの開発プロジェクトが進展しました。 海外では、グローバルな事業拡大に合わせた生産体制の整備を進めています。 タイの生産拠点では、新たに工業市場向けの電磁流量計といった高度な生産技術を要する製品を対象とした生産機種拡充のため、新工場棟を2024年4月に竣工しました。さらに、同年8月にはベトナムのフンイエン省に生産子会社のアズビルベトナムプロダクション有限会社の設立を決定し、2025年3月に登記が完了しました。生産能力の増強を図るだけでなく、競争力向上のためのコスト削減や持続的な製品供給を実現するための適切な生産体制の構築と、近年懸念される地政学的リスクに対応するための強化策としても位置付けております。 商品力強化の推進を担う開発系人材の確保にも継続して注力しており、グローバル開発体制における外部パートナーとの連携促進のために、適応力と受容力を備えた、多様な人材の獲得や育成を進めていきます。具体的にはこれまでにも卒業生の採用やインターンシップ生の受け入れ実績のあるマレーシア工科大学(UTM※8)とマレーシア日本国際工科院(MJIIT※8)と産学連携を含めた包括的な協働関係強化について覚書を締結し、脱炭素化技術を始め、計測・制御技術に基づく共同研究や開発等を進めてまいります。▲当社とUTMのMoU締結式 なお、地政学的リスクによるグローバルサプライチェーンの課題、エネルギーや部品価格の高騰、インフレ等は今後も一定の範囲で継続すると想定しております。そのため、生産オペレーションの改善を継続しつつ、緊急事態発生時においてもお客様への影響を最小限にするBCPの取組み範囲の拡大を進めており、その一環として、2025年4月に新たな物流の拠点となる「京都配送センター」を設立しました。※7 MEMS(Micro Electro Mechanical Systems):センサ、アクチュエータ、電子回路を一つの基板の上に微細加工技術によって集積した機器。※8 マレーシア工科大学(UTM)は、工学科学技術分野で革新と起業を推進する研究大学で、マレーシアの首都クアラルンプール及び経済活動が盛んな地域であるイスカンダル・マレーシアの南部都市ジョホールバルに所在する。マレーシア日本国際工科院(MJIIT)は、UTMの学部の1つで、東方政策の実施を機に、2010年に設立された。 ⑤ 経営管理と人的資本 経営管理面では、リスクマネジメントにおいて、今後起こりうるリスク事象の影響を最小化すべく、毎年、外部環境の変化を加味して、網羅的にリスクを抽出したうえで、リスク発生時の影響金額や発生頻度の定量的な評価基準に基づき重要リスクを選定するとともに、現場部門と経営層が一体となった取組みにより、不確実性への対策を強化しております。また、国際財務報告基準(IFRS)の任意適用に向けた準備と会計レベルの向上に加え、それに伴う内部統制の強化も進めています。 また、azbilグループでは人材を持続的成長のための「資本」として捉えており、「社員は重要な財産であり、新たな企業文化と企業価値の創造の源泉である」という普遍の考え方をベースに、持続可能な社会の実現に「直列」に貢献できるよう、人的資本を強化しております。今後の技術発展や社会情勢の新たな展開等に合わせた事業構造の変化に対応し、長期目標、中期経営計画の達成に向けて必要となるリソースとしての人材要件を整理した上で、リファラル採用やアルムナイ採用等の様々な手段を活用し、新卒採用・キャリア採用ともに入社時期を問わず、優秀な人材の確保を図っております。加えて、社員が長期にわたって活躍できるよう人事制度を整えるとともに、事業戦略に合わせて育成を行い、適材適所の配置を進めてまいります。 なお、azbilグループとして、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点からも積極的な活動・取組みを進めております。E(環境)では、「経団連生物多様性宣言・行動指針」への賛同を表明し、持続可能な社会の実現へ向け、気候変動対策、資源循環対策、生物多様性保全対策等、幅広い社会的な環境活動と、当社グループの事業活動の融合を進めております。気候変動対策では、国連グローバル・コンパクト(UNGC)主催の「Annual Local Network Forum 2024 Global Compact Network Japan High Level Meeting」及び「Private Sector Forum 2024」に参加し、気候変動対策の加速に向けた提言を実施するとともに、SDGs推進加速における各国企業による協業の重要性を発信しました。生物多様性保全対策では、ネイチャーポジティブ※9の視点から事業を通じて生物多様性に貢献し、サプライチェーンや国内外の関係組織と連携して自然保護の取組みを強化しています。さらに、2024年8月にはTNFD Adopter※10、11に登録し、その提言に沿った活動を推進しています。取締役 代表執行役社長 山本清博(写真左端)▲ UNGC主催のAnnual Local Network Forum 2024 Global Compact Network Japan High Level Meetingの様子 S(社会)では、2024年8月より、当社の事業がステークホルダーに与える人権に対する負の影響に関する人権デュー・ディリジェンスを開始し、2025年3月に「優先して対応すべき人権課題」とその対応の方向性を決定しました。企業活動のグローバル化・多様化により、拡大かつ複雑化している人権リスクに対して、その防止・低減を図ることで、企業の社会的責任を果たしてまいります。また、「azbilグループ健幸宣言※12」を制定し、総労働時間の削減やハラスメント防止といった職場環境改善等の「働き方改革」、一人ひとりの個性を尊重し、その特徴を活かすことができるよう「ダイバーシティ推進」に関わる各種施策を展開しています。 G(ガバナンス)では、監督機能と執行機能の明確な分離、さらに意思決定の迅速さと透明性を高める目的で「指名委員会等設置会社」へ移行して3年が経過し、役員報酬制度の一部改定等の強化に取り組みました。さらに2025年度から適用する役員報酬においては、業績連動比率の更なる拡充(賞与・株式報酬の構成割合の拡大)及びKPIの見直しに加え、重大な非違行為等が発生した場合に返還請求ができるよう、クローバックの対象範囲の拡大を決定しました。また、取締役会の実効性を高めるためにアズビル独自の「取締役執行役連絡会」を設置するなどの工夫により、経営戦略や事業ポートフォリオに関する議論、法定委員会活動等につき従来以上に活発な議論を行っています。 2025年度においても、持続可能な社会の実現に「直列」に繋がり、企業価値の向上を目指してESGにおける各課題を整理し、今後更なる改善への取組みを継続してまいります。 ※9 ネイチャーポジティブ:自然生態系の損失を食い止め、回復させていくことを意味する。※10 TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース):企業・組織が自身の事業活動による自然資本及び生物多様性への影響を評価し、情報開示する枠組みの構築を目指す国際イニシアチブ。※11 TNFD Adopter:2024年度(又はそれ以前)又は2025年度までに、TNFDの提言に沿った情報開示を行う意思を表明した企業・組織。※12 azbilグループ健幸宣言(健康で幸せを目指すため「康」の字を「幸」に替えています):健康で幸せ、活き活きとした「働きの場と人」を創る。azbilグループは、社員一人ひとりの健康が企業活動の重要な基盤であるととらえ 、会社で働くすべての人々が安心・安全で、快適に、活き活きと、自分らしく健やかに働き、それぞれが持つ多様な能力を発揮し、公私ともに充実した人生を送ることが、生産性や業績の向上、イノベーション、社会への貢献につながると考えています。健幸な「働きの場と人」を創るために、会社とそこで働く社員が協働し、快適で働きやすい職場環境づくり、心身の健康づくりに積極的に取り組むことを宣言します。 |
経営者による財政状態の説明
| 4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要 当連結会計年度におけるazbilグループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要は次のとおりであります。 ① 財政状態及び経営成績の状況 当連結会計年度における業績につきましては、受注高が3,047億2千3百万円(前連結会計年度は2,878億5千1百万円)と、前連結会計年度比5.9%の増加となりました。 売上高につきましては、3,003億7千8百万円(前連結会計年度は2,909億3千8百万円)と、前連結会計年度比3.2%の増加となりました。 損益面につきましては、営業利益は、前連結会計年度比12.6%増加の414億8千6百万円(前連結会計年度は368億4千1百万円)となりました。経常利益は、前連結会計年度比8.1%増加の421億7千万円(前連結会計年度は389億9千9百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益につきましては、前連結会計年度比35.6%増加の409億5千5百万円(前連結会計年度は302億7百万円)となりました。(単位:百万円) 2024年3月期前連結会計年度2025年3月期当連結会計年度増減増減率受注高287,851304,72316,8725.9%売上高290,938300,3789,4393.2%営業利益(利益率)36,841(12.7%)41,486(13.8%)4,644(1.1pp)12.6% 経常利益38,99942,1703,1718.1%親会社株主に帰属する当期純利益(利益率)30,207(10.4%)40,955(13.6%)10,747(3.3pp)35.6% 当連結会計年度末の財政状態につきましては、以下のとおりです。資産の状況 当連結会計年度末の資産の状況は、前連結会計年度末に比べて13億4千4百万円増加し、資産合計で3,150億7千2百万円となりました。アズビルテルスター有限会社(以下、「アズビルテルスター」といいます。)の出資持分譲渡による連結の範囲からの除外の影響を含め棚卸資産が61億5千3百万円、売上債権等が60億1千4百万円それぞれ減少し、また、投資有価証券が32億1千7百万円減少いたしました。一方、現金及び預金はアズビルテルスターの出資持分譲渡による収入等があり、174億1千5百万円増加いたしました。負債の状況 当連結会計年度末の負債の状況は、前連結会計年度末に比べて142億8千5百万円減少し、負債合計で745億5千5百万円となりました。これは主に、アズビルテルスターの出資持分譲渡による連結の範囲からの除外の影響を含め仕入債務が43億8千3百万円、借入金が39億7千1百万円それぞれ減少したことによるものであります。純資産の状況 当連結会計年度末の純資産の状況は、前連結会計年度末に比べて156億2千9百万円増加し、純資産合計で2,405億1千7百万円となりました。これは主に株主資本が、取締役会決議に基づく自己株式の取得により149億9千9百万円、配当金の支払いにより112億1千8百万円それぞれ減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により409億5千5百万円増加したことによるものであります。 以上の結果、自己資本比率は前連結会計年度末の70.6%から75.3%となりました。 ② キャッシュ・フローの状況営業活動によるキャッシュ・フロー 当連結会計年度における営業活動による現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の増加は439億5千3百万円となり、前連結会計年度に比べて164億1千3百万円の増加となりました。これは主に、前連結会計年度において部品確保・調達力強化の対応等により増加していた棚卸資産が当連結会計年度では減少したことに加え、税金等調整前当期純利益が増加したことによるものであります。投資活動によるキャッシュ・フロー 当連結会計年度における投資活動による資金の増加(収入と支出の純額)は、設備投資等の支出はあったものの、関係会社出資金の売却等の収入があり、20億3千2百万円となりました。前連結会計年度においては、投資有価証券の売却による収入があったものの、設備投資等の支出により、23億6千万円の支出の超過となりました。財務活動によるキャッシュ・フロー 当連結会計年度における財務活動に使用された資金(支出と収入の純額)は297億7千1百万円となり、前連結会計年度に比べて73億1千6百万円の支出の増加となりました。これは主に、取締役会決議に基づく自己株式の取得による支出が増加したことによるものであります。 以上の結果、資金の当連結会計年度末残高は、前連結会計年度末より170億4千1百万円増加し、926億3千7百万円となりました。 ③ 生産、受注及び販売の実績a.生産実績 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)ビルディングオートメーション事業45,723104.0アドバンスオートメーション事業33,21993.1ライフオートメーション事業31,91889.5報告セグメント計110,86196.1その他--合計110,86196.1 (注)上記金額は、azbilグループにおける製品の製造に係る費用及び工事の施工に係る原価を集計したものであり、商品の仕入及び役務収益に対応する費用は含まれておりません。 b.受注実績 当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)ビルディングオートメーション事業153,640112.390,350105.6アドバンスオートメーション事業105,986104.448,650100.1ライフオートメーション事業46,84590.64,57320.6報告セグメント計306,472105.7143,57591.8その他59102.7--消去(1,808)-(218)-連結304,723105.9143,35791.9 (注)当連結会計年度において、ライフオートメーション事業の受注残高が著しく減少しております。これは主に、連結子会社であったアズビルテルスター有限会社の出資持分全てを譲渡したことに伴い、同社及びその子会社を連結の範囲から除外したことによるものであります。 c.販売実績 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)ビルディングオートメーション事業148,770110.5アドバンスオートメーション事業106,83699.8ライフオートメーション事業46,63490.7報告セグメント計302,241103.1その他59102.6消去(1,922)-連結300,378103.2 (注)総販売実績に対する販売割合が10%以上の相手先はありません。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点によるazbilグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 azbilグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、見積りが必要となる事項においては合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は見積りによる不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。 当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりでありますが、特に次の項目が連結財務諸表作成における重要な会計上の見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。 (請負工事に関する収益認識) 請負工事契約については、履行義務の充足に係る工事の進捗度を合理的に見積もり、履行義務を充足する一定の期間にわたり収益を認識しております。工事の進捗度の見積りは主に、当連結会計年度末までに実施した工事に関して発生したコストが見積総原価に占める割合に基づく方法(インプット法)によっております。 なお、収益総額、見積総原価及び決算日における進捗度について、見積り時には予見不能な事象の発生やプロジェクト案件の進捗状況等によって当初の見積りが変更された場合、認識された損益に影響を及ぼす可能性があります。 (受注損失引当金) 受注契約に係る将来の損失に備えるため、当連結会計年度末における受注残案件のうち売上時に損失の発生が見込まれ、かつ、当該損失額を合理的に見積もることが可能な案件について、翌連結会計年度以降に発生が見込まれる損失額を受注損失引当金に計上しております。 なお、将来発生する可能性のある損失をカバーするだけの十分な引当金残高を有しているかどうかを判断するために、様々な仮定や要素を考慮しておりますが、新技術・新領域の案件等において、見積り時には予見不能な事象の発生やプロジェクト案件の進捗状況等によって損失額が大きく変動する可能性があります。 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 azbilグループを取り巻く事業環境認識は次のとおりです。 国内大型建物向け空調制御機器・システムにつきましては、都市再開発計画に基づく需要が高い水準で継続し、省エネ・CO2排出量削減対策を含めた改修案件の需要も堅調に推移しています。生産設備向けの各種機器・システムにつきましては、工場・プラントの脱炭素化やDX推進に向けた需要が継続し、また、ファクトリーオートメーション(FA)市場は前連結会計年度からの需要低迷から一部で回復の兆しが見られました。 この結果、当連結会計年度における業績につきましては次のとおりとなりました。 受注高は、アズビルテルスターの出資持分譲渡※1による影響からLA事業が減少しましたが、BA事業が堅調な市況に加えて、複数年の大型サービス契約の更改により増加したことを主因に、前連結会計年度比5.9%増加の3,047億2千3百万円(前連結会計年度は2,878億5千1百万円)となりました。売上高についても、LA事業が同様の理由で減少しましたが、BA事業が前連結会計年度における受注増加を背景に、平準化の取組みも着実に進展したことにより大きく増加したため、全体として前連結会計年度比3.2%増加の3,003億7千8百万円(前連結会計年度は2,909億3千8百万円)となりました。 損益面につきましては、営業利益は、中期経営計画に基づく研究開発費の増加に加え、DX関連費用、人件費やその他費用の増加がありましたが、増収及び価格転嫁も含めた収益力強化施策により大きく改善し、前連結会計年度比12.6%増加の414億8千6百万円(前連結会計年度は368億4千1百万円)となりました。経常利益は、為替差損の計上があるものの、営業利益の増加等により前連結会計年度比8.1%増加の421億7千万円(前連結会計年度は389億9千9百万円)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、アズビルテルスターの出資持分譲渡による売却益(約76億円)の計上を主因に、前連結会計年度比35.6%増加の409億5千5百万円(前連結会計年度は302億7百万円)となりました。 ※1 アズビルテルスターの出資持分の全てを、2024年10月31日(中央ヨーロッパ時間)付で譲渡しました。この譲渡に伴いアズビルテルスター及びその子会社を2025年3月期第3四半期末にて当社の連結の範囲から除外しております。 セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては次のとおりです。 ビルディングオートメーション(BA)事業 BA事業を取り巻く環境は、国内市場においては、都市再開発のオフィスビル向け需要が一旦踊り場を迎えていますが、高い水準を引き続き維持しています。省エネ・CO2排出量削減の需要に加えて、新型コロナウイルス感染拡大後の安全や新しい働き方に適応した新たなソリューション対応への関心も継続しています。海外市場でも新型コロナウイルス感染拡大前の水準を超えて、投資が拡大しています。 こうした事業環境のもと、着実に受注を獲得するとともに、働き方改革への対応も踏まえ、施工・サービスの現場を主体に業務の遂行能力の強化とDX推進による効率化を進めてまいりました。また、IoTやクラウド等の技術活用を志向する国内外のお客様のニーズに対応するための製品・サービスの拡大も進めてまいりました。 この結果、BA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。 受注高は、大型の複数年サービス契約の更改を主因に、人員等のリソースのシフト・体制強化を進めている既設建物向け分野も増加し、BA事業全体として大きく伸長し、前連結会計年度比12.3%増加の1,536億4千万円(前連結会計年度は1,367億8千2百万円)となりました。売上高は、国内事業における平準化の取組みが進展し、新設建物向けから既設建物向け・サービス分野が増加したことに加えて、海外事業の拡大により、前連結会計年度比10.5%増加と大きく伸長し1,487億7千万円(前連結会計年度は1,346億5千5百万円)となりました。セグメント利益は、外注費の高騰のほか、人件費、DX関連費用や研究開発投資等の費用の増加がありましたが、収益性の高い既設建物向け・サービス分野を中心とした増収及び価格転嫁を含む収益力強化の効果により大きく改善し、前連結会計年度比25.8%増加の243億6千3百万円(前連結会計年度は193億7千3百万円)となりました。 中長期的には、引き続き大型の再開発案件が計画され、建物の改修計画も多数見込まれています。採算性に配慮しつつ、これらの需要に確実にお応えしてまいります。さらに、事業提携も含めて、脱炭素化に向けた省エネ・再生可能エネルギー利活用ニーズに応えるESP(Energy Service Provider)モデルの展開、データセンター市場の更なる拡張を進めてまいります。また、新型コロナウイルス感染拡大後に顕在化した安全・安心ニーズに利便性・快適性を備え、新しい働き方にも適応したウェルネスオフィスの需要に対し、クラウドサービスや新空調システムといったソリューションを提供することで、持続的な成長を目指してまいります。収益力強化の観点からは、営業・エンジニアリング等のDXの推進や事業プロセス変革を含めた取組みを進め、更なる高収益体質を実現してまいります。(単位:百万円) 2024年3月期前連結会計年度2025年3月期当連結会計年度増減増減率受注高136,782153,64016,85812.3%売上高134,655148,77014,11510.5%セグメント利益(利益率)19,373(14.4%)24,363(16.4%)4,989(2.0pp)25.8% アドバンスオートメーション(AA)事業 AA事業を取り巻く国内外の市場の動向につきましては、プロセスオートメーション(PA)市場は、国内の保守・改造需要を中心に堅調に推移しています。一方、FA市場では、中国での市況回復の遅れがありましたが、一部で回復の兆しが見られています。 このような事業環境のもと、海外での事業成長、新しいオートメーションの創造という2つの成長施策を通じて事業拡大を図るとともに、部材調達難対応としての調達・生産プロセスの改善や収益力強化に継続して取り組みました。 この結果、AA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。 受注高は、前連結会計年度に大型案件が計上された影響がありましたが、PA市場の堅調さに加えてFA市場での需要に回復が見られたことなどから、前連結会計年度比4.4%増加の1,059億8千6百万円(前連結会計年度は1,014億8千1百万円)となりました。また、売上高は、FA市場の市況低迷の影響がありましたが、PA市場の堅調さにより、前連結会計年度と同水準となる1,068億3千6百万円(前連結会計年度は1,070億5千2百万円)となりました。セグメント利益につきましても、人件費をはじめとした各種経費の上昇や海外市場への投資、DX投資、研究開発投資の増加等はありましたが、価格転嫁を含む収益力強化施策の効果が引き続き認められたことにより、前連結会計年度と同水準となる159億9千7百万円(前連結会計年度は161億1千8百万円)となりました。 現在もFA市場は低い水準の市況動向が継続していますが、海外での事業成長、新しいオートメーションの創造の2つの成長施策が着実に進展しており、今後の市況回復期での成長に寄与することに加え、長期的には工場の脱炭素化、人手不足対応、設備老朽化対応、新しい生産方式の導入等、お客様のオートメーションへのニーズ対応として、工業系オートメーション市場はグローバルに拡大していくことが期待されています。引き続き3つの事業単位※2(CP事業、IAP事業、SS事業)を軸に、海外事業をはじめとした成長領域への展開を推し進め、AIやクラウド、微細加工等の先進的な技術を取り入れた製品・サービスの開発、市場投入を加速し、当社グループならではの新しいオートメーションを創造することで、高い競争力を持った事業成長を目指してまいります。 (単位:百万円) 2024年3月期前連結会計年度2025年3月期当連結会計年度増減増減率受注高101,481105,9864,5054.4%売上高107,052106,836△215△0.2%セグメント利益(利益率)16,118(15.1%)15,997(15.0%)△120(△0.1pp)△0.7% ※2 3つの事業単位(管理会計上のサブセグメント)CP事業 :コントロールプロダクト事業(コントローラやセンサ等のファクトリーオートメーション向けプロダクト事業)IAP事業:インダストリアルオートメーションプロダクト事業(差圧・圧力発信器やコントロールバルブ等のプロセスオートメーション向けプロダクト事業)SS事業 :ソリューション&サービス事業(制御システム、エンジニアリングサービス、メンテナンスサービス、省エネソリューションサービス等を提供する事業) ライフオートメーション(LA)事業 LA事業は、ガス・水道等のライフライン、製薬・研究所向けのライフサイエンスエンジニアリング、そして住宅用全館空調システムの生活関連の3つの分野で事業を展開しており、事業環境はそれぞれ異なります。 ライフライン分野は、法定によるメーターの交換需要を主体として一定の需要が継続的に見込まれますが、現在LPガスメーター市場が循環的な不需要期にあります。また、海外で事業展開してきたライフサイエンスエンジニアリング分野では、業界再編の進展、欧州地域の混迷による景況感の影響を受ける中で、事業ポートフォリオ再構築を進めるために同分野を担うアズビルテルスターの出資持分譲渡※3を実施しました。この譲渡による連結範囲からの除外が、LA事業の当連結会計年度の業績に影響いたしました。 ※3 資本効率の向上を図る事業ポートフォリオ再構築に取り組み、2024年10月31日(中央ヨーロッパ時間)、ライフサイエンスエンジニアリング分野を担うアズビルテルスターの出資持分全てをSyntegon Technology GmbHの100%子会社であるFalcon Acquisition, S.L.U.へ譲渡いたしました。なお、この出資持分譲渡に伴いアズビルテルスター及びその子会社は2025年3月期第3四半期末をもって当社の連結の範囲から除外しております。 上記の事業環境や事業ポートフォリオ再構築により、LA事業の当連結会計年度の業績は次のとおりとなりました。 受注高は、ライフサイエンスエンジニアリング分野が減少したことを主因に、全体として前連結会計年度比9.4%減少となる468億4千5百万円(前連結会計年度は516億8千9百万円)となりました。売上高につきましては、ライフライン分野、住宅用全館空調システム分野は前連結会計年度と同水準となりましたが、受注高と同様の理由によりライフサイエンスエンジニアリング分野が減少したことから、前連結会計年度比9.3%減少の466億3千4百万円(前連結会計年度は514億4百万円)となりました。セグメント利益についても、ライフサイエンスエンジニアリング分野の減少に加えて、人件費をはじめとした各種経費の上昇により前連結会計年度比14.9%減少の11億7千1百万円(前連結会計年度は13億7千5百万円)となりました。 ライフサイエンスエンジニアリング分野における事業譲渡後のLA事業では、引き続き価格転嫁の取組みを含めた収益力の改善、DXの推進による業務プロセスの見直しなどに取り組み、環境変化に応じた適切な変革を推進いたします。ライフライン分野では、エネルギー供給市場における事業環境の変化を捉え、スマートメーターを視野に入れた製品提供型の事業に加え、IoT等の技術を活用し、各種メーターからのデータを活用したサービスプロバイダーとしての新たな事業の創出に取り組んでまいります。住宅用全館空調システム分野では新設建物から既設建物まで、省エネや空気質も含めて、幅広く生活空間の快適性を提供する製品対応等により、事業を推進してまいります。(単位:百万円) 2024年3月期前連結会計年度2025年3月期当連結会計年度増減増減率受注高51,68946,845△4,843△9.4%売上高51,40446,634△4,770△9.3%セグメント利益(利益率)1,375(2.7%)1,171(2.5%)△204(△0.2pp)△14.9% 2025年度の見通し azbilグループは、2030年度をゴールとする長期目標を設定し、中期経営計画を段階的に策定して目標達成に向けた取組みを進めております。「持続可能な社会」の実現に向けて、現在、様々な社会課題やお客様の課題が生まれており、こうした課題への解決策を提供できるオートメーションの役割が拡大、需要が増加しております。長期目標達成に向けた第一期間である前中期経営計画(2021~2024年度)は、コロナ禍を経ての顧客ニーズ、ライフスタイルの変化、インフレやグローバルサプライチェーンの課題等、事業を取り巻く環境が大きく変化する中での取組みとなりましたが、こうした需要の拡大、事業機会の増加を的確に捉えることで、2021年5月の計画公表時の業績目標を上回る成果をあげることができました。当社グループでは、第二期間となる新中期経営計画(2025~2027年度)においても、引き続き、オートメーションに求められる役割の拡大を事業機会として、当社グループならではの技術・製品・サービスを活かし、お客様の施設・設備のライフサイクルにわたって価値を提供することで持続的な成長を目指してまいります。 新中期経営計画初年度である2025年度の当社グループを取り巻く事業環境は、グローバルでの地政学的リスク、米国相互関税による産業・経済への影響からインフレの継続、人件費等のコスト上昇等、不確実性が高まっておりますが、空調制御機器・システムに関する需要は引き続き堅調であり、工場・プラント等の生産設備に関する需要につきましても、PA市場での堅調さに加え、FA市場において緩やかな市況回復が見込まれます。 2026年3月期の連結業績予想につきましては、こうした事業環境の下、期首受注残の積み上がりを背景にBA、AA両事業において更なる成長を計画しますが、LA事業において、事業ポートフォリオ再構築の一環として2024年度においてアズビルテルスターの出資持分を他社に譲渡した影響から減収となり、グループ全体でも僅かながら減収となる見込みです。不確実性の高い米国関税政策の影響を当面織り込める範囲の前提においても、営業利益では引き続き増益を計画し、具体的には成長に向けた研究開発や設備、人的資本、DX推進等の投資に加えて、インフレによる影響を含め、人件費や各種コストの増加が見込まれますが、これまで進めてきた価格転嫁を含めた収益力強化施策の継続、DXによる業務効率化等により営業利益での増益を計画します。なお、経常利益につきましては、円高による影響等により前連結会計年度比同水準、親会社株主に帰属する当期純利益については、2024年度においてアズビルテルスターの出資持分譲渡による売却益の計上等があったことから減益を見込んでおります。 BA事業では、都市再開発計画や更新計画に基づく大型建物向けの空調制御機器・システムの販売からサービスまで、国内需要が引き続き堅調に推移しております。また、海外における需要も堅調です。こうした事業環境を背景に、着実に事業を進めることで、豊富な受注残を売上高へと転化し、前連結会計年度比増収を見込みます。セグメント利益につきましても、外注費の増加や成長のための人件費、DX関連費用等の増加がありますが、増収並びに受注時採算性の改善、適正な価格転嫁の取組みなどにより前連結会計年度比で増益を見込みます。 AA事業では、PA市場が引き続き堅調に推移することに加え、FA市場で在庫の調整も進みつつあり、期中での需要回復が見込まれます。このPA、FA両市場における需要の拡大を確実に捉えることで、増収を見込みます。セグメント利益についても、部材価格高騰によるコスト上昇や人件費の増加を見込みますが、増収及び価格転嫁を含めた収益力強化施策の効果により前連結会計年度比で増益を計画します。 LA事業では、ガス・水道メーター等のライフライン分野で、LPガスメーターの需要回復等、法定による交換需要を着実に取り込むとともに、SMaaS(Smart Metering as a Service)関連市場の開拓を進めることで増収を見込み、住宅用全館空調システム分野も伸長を見込んでおりますが、2024年度の売上高の約3分の1を占めていたアズビルテルスターの出資持分譲渡による影響から、LA事業全体としては減収を見込みます。セグメント利益につきましても価格転嫁を含めた収益力強化施策の効果等によりライフライン分野で利益の改善を見込みますが、アズビルテルスターの出資持分譲渡による影響から前連結会計年度比減益となる見込みです。 なお、業績予想等は、当社が現時点で入手可能な情報と合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績は様々な要因により異なる可能性があります。 (単位:億円) 2025年3月期実績2026年3月期見通し増減増減率ビルディングオートメーション事業売上高1,4871,530422.8%セグメント利益(利益率)243(16.4%)250(16.3%)6(△0.0pp)2.6% アドバンスオートメーション事業売上高1,0681,110413.9%セグメント利益(利益率)159(15.0%)170(15.3%)10(0.3pp)6.3% ライフオートメーション事業売上高466345△121△26.0%セグメント利益(利益率)11(2.5%)10(2.9%)△1(0.4pp)△14.6% その他売上高01068.1%セグメント利益(利益率)△0(△62.5%)0(0.0%)0(62.5pp)- 連結売上高3,0032,970△33△1.1%営業利益(利益率)414(13.8%)430(14.5%)15(0.7pp)3.6% 経常利益42142200.1%親会社株主に帰属する当期純利益(利益率)409(13.6%)310(10.4%)△99(△3.2pp)△24.3% ③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析 azbilグループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況、② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおり健全な財務基盤を維持し、必要な運転資金等への十分な流動性も確保しております。加えて、パンデミック、大規模な自然災害の発生等、不測の事態でも事業を継続し、供給責任を果たすことのできる強固な財務基盤を引き続き維持しております。また、安定的な外部資金調達能力の維持向上のため、当社グループは格付投資情報センターより発行体格付「シングルA+(安定的)」を取得して社債発行枠200億円を設定するとともに、コマーシャル・ペーパーについて格付「a-1」を取得して発行枠200億円を設定しております。さらには、複数の金融機関との間で合計100億円のコミットメントラインを設定し、緊急時の流動性を確保しております。あわせて、国内子会社については親会社を通じたキャッシュ・マネジメントにより、資金調達の一元化と資金効率化、流動性の確保を図るとともに、海外の一部地域においても域内でのグループファイナンスを実施しております。 当社グループの資金需要としましては、営業活動上の運転資金に加えて、設備投資及び研究開発のための資金や配当支払いなどを見込んでおり、主に営業活動によるキャッシュ・フローや内部資金のほか、一部借入による資金調達も行っております。借入による資金調達に関しましては、主に短期借入金で調達しておりますが、当連結会計年度末現在で短期借入金の残高は48億6千2百万円で、前連結会計年度末に比べて26億6百万円減少しております。 他方、営業活動によるキャッシュ・フローや内部留保を含めた資本を活用し、持続的な成長の実現や事業基盤の整備・強化に向けて、国内外生産拠点の再編・拡充をはじめとする設備投資や技術革新に対応した研究開発、サービスの高付加価値化や事業の効率化に必要なDX等への投資を実現しております。当連結会計年度の設備投資の総額は98億3千9百万円、研究開発費の総額は127億2千6百万円となりました。今後につきましても、成長に向けた商品・サービスの拡充、先進的なグローバル生産・開発の構造改革等、事業基盤の強化・拡充に注力するとともに、M&Aといった将来の成長投資を進めてまいります。 株主還元につきましては、経営の重要課題の一つと位置付けており、連結業績、純資産配当率(DOE)・自己資本当期純利益率(ROE)等の水準に加え、上記の成長投資及び健全な財務基盤の確保のための内部留保等を総合的に勘案し、配当水準の向上に努めつつ安定した配当を維持していきたいと考えております。詳細は「第4 提出会社の状況 3 配当政策」をご確認ください。 ④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等 当社グループでは、株主価値増大に向けて連結ROE(自己資本当期純利益率)の向上を基本的な目標としており、2021年5月14日に策定した2030年度をゴールとする長期目標を、売上高4,200億円、営業利益650億円、営業利益率15.5%、ROE15%を目標として2025年5月13日に上方修正いたしました。前中期経営計画期間での収益力強化の取組みの成果を活かし、長年にわたる顧客基盤との強い関係を基にした事業に加えて、成長領域の開拓で更なる成長を目指しております。 この長期目標達成に向け、前中期経営計画の最終年度となる2024年度では、事業収益力の強化を進め、売上高3,000億円、営業利益375億円、営業利益率12.5%、ROE12.2%を計画し、実績として、売上高3,003億円、営業利益414億円、営業利益率13.8%、ROE17.9%を達成しました。 これを踏まえ、2027年度を最終年度とする3ヵ年の新中期経営計画では、最終年度の売上高3,400億円、営業利益を510億円、営業利益率15.0%、ROE14%を達成することを目標としております。 |
※本記事は「アズビル株式会社」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
連結財務指標と単体財務指標の違いについて
連結財務指標とは
連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。
単体財務指標とは
単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。
本記事での扱い
本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)


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