ヤマハ株式会社の基本情報

会社名ヤマハ株式会社
業種その他製品
従業員数連18949名 単3423名
従業員平均年齢43歳
従業員平均勤続年数18年
平均年収7837409円
1株当たりの純資産600.23円
1株当たりの純利益(連結)27.58円
決算時期3月
配当金50円
配当性向28.8%
株価収益率(PER)13.1倍
自己資本利益率(ROE)(連結)9.8%
営業活動によるCF552億円
投資活動によるCF81億円
財務活動によるCF▲631億円
研究開発費※1269.77億円
設備投資額※116.85億円
販売費および一般管理費※1611.1億円
株主資本比率※273%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 <ヤマハの理念・ビジョン> 当社グループは事業活動を通じて、「世界中の人々のこころ豊かなくらし」を実現することを目指しています。そのために、「感動を・ともに・創る:私たちは、音・音楽を原点に培った技術と感性で、新たな感動と豊かな文化を世界の人々とともに創りつづけます」を企業理念に掲げ、我々の行動の原点としています。 (1)ヤマハフィロソフィーヤマハフィロソフィーとは、ヤマハグループの企業経営の「軸」となる考え方を体系化し表したものです。ヤマハフィロソフィーは、「企業理念」、「顧客体験」、「ヤマハクオリティー(品質指針)」、「ヤマハウェイ (行動指針)」の4つにより構成されます。「企業理念」と「顧客体験」は、グループの存在意義を表す普遍的な内容であり、ヤマハフィロソフィーの『基軸』です。 「ヤマハクオリティー」と「ヤマハウェイ」は、企業理念を具現化するために、グループで働く全ての従業員が、日々の業務の中で拠り所とすべきものであり、ヤマハフィロソフィーの『両輪』を示します。 私たちは、常にこのヤマハフィロソフィーを心のよりどころにしながら、お客様の視点に立ち、期待を超える製品とサービスを生み出すことで、未来に向かって新たな感動と豊かな文化を創りつづけます。(2)ブランドプロミス“Make Waves”ブランドプロミスとは、ヤマハが人々の人生にもたらす価値を語ったものです。 ヤマハは、「個性、感性、創造性を発揮し、自ら一歩踏み出そうとする人々の勇気や情熱を後押しする存在でありたい」との思いを込め、人々が心震わす瞬間を“Make Waves”という言葉で表現しました。心震える瞬間を創りだすために、ヤマハは人々の感性を刺激し表現を支える製品やサービスを提供し、なくてはならないパートナーであり続けます。 (3)経営ビジョン 今後も変化する経営環境を見据え、当社グループが実現したい提供価値を改めて示した上で、中長期的に当社が目指す姿を新たな経営ビジョンとして打ち出します。 新たな経営ビジョンに込めた3つの意図は以下のとおりです。  一つ、ヤマハの強み、ヤマハらしさが十分に活きる「音・音楽」領域において、新たな価値創造の可能性を追求していくこと。  二つ、そのために、世界中の人々の自己表現、多様な個性の発揮を後押しする製品やサービスをたゆまず提供していくこと。  三つ、多様なステークホルダーと積極的に連携・協業し、社会課題の解決に資する新たな価値を、共に創り上げること。  当社はこれまで同様、音・音楽を原点に培った技術と感性で製品の本質的価値を磨き続けるとともに、そこに、より楽しい、よりクリエイティブな、あるいはより便利な体験価値を加えるための取組みを強化し、隣接事業領域として拡大していきます。さらには、既存商品、既存事業の枠にとらわれない、社会課題解決につながる音・音楽の新たな可能性を追求し、事業ドメインを拡大していきます。 <中期経営計画「Rebuild & Evolve」の概要> 当社グループは、2025年3月末で終了した「Make Waves 2.0」に続き、2025年4月からの3年間を対象とした新たな中期経営計画「Rebuild & Evolve」を策定しました。 (1) 経営環境認識 前中期経営計画期間を通じて当社を取り巻く経営環境は、かつてないスピードで変化しております。経済変動、物価高騰、為替リスク、地政学リスクといったマクロ環境の変化に加え、顧客の価値観やライフスタイルの多様化、購買行動のオンラインシフトが急速に進んでいます。また、技術革新、とりわけ生成AIの進化は、ビジネスのあり方を根本から変えつつあるといっても過言ではありません。このような環境下において企業に求められるのは、現状維持ではありません。ダイナミックな変化を恐れず、迅速かつ柔軟に対応し、むしろ成長機会として積極的に活かしていく姿勢が必要です。音・音楽を軸にした当社ならではの新たな価値創造に挑戦するとともに、多様なライフスタイルや価値観に寄り添う体験価値を提供することで、事業機会拡大のチャンスになると認識しています。 (2) 重点課題と戦略骨子 経営ビジョン、マテリアリティ、および前中期経営計画のレビューからいくつかの課題が明確となりました。一つは、最優先課題となりますが、低下した既存事業の収益力をコロナ前水準までに回復し、再び成長軌道に乗せることです。次に、中長期的な成長に向け、隣接・新規領域への戦略的投資による育成・事業化を行っていくことです。そして最後に、持続的な成長を支える安定した経営基盤を作るため、資本・資産効率、人的資本、ガバナンスを強化していくことです。当社は中期経営計画の3年間、明確となった課題へ全力で取り組みます。 新中期経営計画のタイトルは『Rebuild & Evolve』とし、“Rebuild”は再構築、“Evolve”は進化を意味し、特に「未来を創る挑戦」の“Evolve”は単なるドメインの拡大ではなく、ヤマハのビジネス全体に質的な変化をもたらすものにしていきたいという意図を込めました。 (3) 新中期経営計画「Rebuild & Evolve」 新中期経営計画では、3つの戦略方針を掲げ、事業軸、市場軸、そして全社それぞれの視点で取組みを進めていきます。 ① 戦略方針1:強固な事業基盤の再構築(Rebuild) 既存事業の在り方について抜本的な見直しを行い、事業環境に適応したあるべき姿に早期に作り替えていくことを目指します。過去数年、私たちは市場環境の急速な変化に対して十分な対応ができず、一部事業で収益性が低下しました。この反省を踏まえ、まず課題事業の収益構造を徹底的に見直します。楽器事業ではピアノ・ギター事業の構造改革と高付加価値製品の比重を高め収益性を改善するとともに、デジタルピアノ等のさらなる競争力強化で再び成長軌道に回帰することに取り組みます。音響事業では、顧客要求へのタイムリーな対応など、B2Bに必要な視点がこれまで十分に反映できていなかった反省をもとに、事業環境の変化に即応できる組織体制を整備し、収益性と販売力を強化します。 ② 戦略方針2:未来を創る挑戦(Evolve) 新たなドメインへ事業を拡大することを目指します。楽器事業では、製品そのものの価値提供にとどまらず、カスタマーサクセスを起点とした価値提供へのシフトに取り組みます。演奏体験の支援、そしてオンラインとオフラインを融合した新しい顧客体験の創出に取り組みます。  音響事業では、業界トップレベルの信号処理と音場調整の技術等、当社ならではの強みを活かしながら隣接領域へドメイン拡大を図ります。前中期経営計画期間から事業成長を進めてきた車載オーディオ領域に加え、エンタテインメント領域、商業施設・公共施設向けの新ソリューション提供など、市場・顧客の様々な要求に応える最適な音環境を提供し、多角的な成長機会を狙います。  また、インド・フィリピン等の成長市場や新たな成長事業への積極的な投資、および持続的な事業成長に向けた新規事業創出のメカニズム構築など中長期視点での未来を創る挑戦こそが、ヤマハの次なる飛躍を支えるエンジンになると信じています。  当社はサステナビリティを価値の源泉ととらえており、音・音楽の力、そして事業を通じて培ってきた技術と感性で社会課題の解決に貢献したいと考えています。重視したい視点は「人・社会・地球」の三つ。音楽で人のつながりを作ること、音による安心と安全を提供すること、そして音楽文化が持続可能であるように地球規模での資源循環を実現すること。このような取り組みを通じて音・音楽の新たな可能性を追求し、事業ドメインを拡大していきます。 ③ 戦略方針3:経営基盤の強化 持続的成長を実現するために経営基盤を強化します。資本・資産効率向上に向けて、投資とリターンのバランスを重視し、企業価値の最大化を図ります。次に、人的資本の強化については、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンの推進、グローバル人材育成、社員エンゲージメント向上に向けた施策を積極的に展開します。さらに、コーポレートガバナンスの強化を図り、より透明性・公正性の高い経営体制を確立します。 価値の源泉であるサステナビリティを常に意識しながら、これらの三つの戦略方針に沿った取り組みを進めていく、それが新中期経営計画における当社が目指す成長戦略です。 (4) 経営目標 中期経営計画の経営目標は記載の通りです。特にこれまで以上に財務目標の達成に執着し取り組みを推進してまいります。年平均の売上成長5%、最終年度のROE10%が中期経営計画3年間で目指す、最も優先すべき経営目標です。加えて、各重点戦略の達成度合いをモニターしていくための多面的なKPI指標を設定しました。「強固な事業基盤の再構築」のKPIとしてはセグメント別の売上成長率と事業利益率を、「未来を創る挑戦」のKPIとしては戦略投資額などのドメイン拡大指標と新価値創造指標を、「経営基盤の強化」のKPIとしては資本・資産効率指標と人的資本強化指標を、さらにサステナビリティ関連では環境・社会・文化それぞれの取り組みで目標とする指標を設定しました。短期的な収益改善と中長期的な成長基盤づくりにバランスよく取り組むことで、企業価値の持続的な向上を実現してまいります。 (5) 事業ポートフォリオ  中長期的に企業価値を向上していくため、下図の3つの領域に各事業を位置づけ、経営資源を適切に配分するポートフォリオマネジメントを進めます。 ここでは収益率と成長率を基準に当社の主要な事業をマッピングしていますが、既存の事業領域については、成長加速に向けた取り組みを強化する事業と、収益性改善に注力する事業とを明確に分け、戦略を組み立てます。具体的には、エンタテインメントPAや電子楽器、B&Oといったカテゴリにおいてはさらなる競争力強化による成長を最優先課題とし、一方、環境変化により収益性が低下しているピアノ、ギター、ホームオーディオ事業については、構造改革を急ぎ、収益性改善に努めます。あわせて、新たな成長の種を作る取り組みを強化していきます。音楽系サービス、モビリティソリューション、ビジネスソリューション等に積極的な投資を行い、また、新規事業、社会課題解決型ビジネスについても、実証を重ねながら将来の柱とするべく育成を図ります。  加えて、ポートフォリオマネジメントの仕組みも整備していきます。経営ビジョン等の目指す姿との整合性、事業将来性と収益性、そしてベストオーナー視点での当社の保有意義のそれぞれを評価し、定期的な事業構成の見直しのマネジメントプロセスを導入してまいります。特に収益性については、事業ごとの資本収益性を可視化し、高収益・高成長が期待できる領域には積極的に投資を行い、競争力が低下した領域については(縮小・撤退を含めた)戦略的な見直しを進めます。 これらの取り組みを通じて、「収益力向上」と「資本・資産効率改善」の両立を図り、変化の激しい環境下でも持続的な成長と高い収益性を実現できる事業構成を確立してまいります。
経営者による財政状態の説明
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 (1) 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針選択の判断と適用を前提とし、決算においては資産・負債の残高、報告期間における収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りについて、経営者は、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、その性質上、実際の結果と異なる可能性があります。重要な会計方針及び見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針、4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。 (2) 経営成績等の状況の概要並びに経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容① 経営成績当連結会計年度における経営環境を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症の収束後の巣ごもり需要の反動による需要減、長引く中国経済の停滞、エネルギー・原材料価格をはじめとする世界的な物価上昇、加えて為替変動や地政学リスクの高まり等、当社グループを取り巻く事業環境は、依然として先行きが不透明な状況が続いております。このような環境の中で当社グループは、中期経営計画「Make Waves 2.0」を「世界中の人々のこころ豊かなくらし」の実現に向け、ポストコロナの新たな社会で持続的な成長力を高める3年間と位置づけ、3つの方針「事業基盤をより強くする」、「サステナビリティを価値の源泉に」、「ともに働く仲間の活力最大化」を掲げて各施策を進めてきました。財務目標については、市場・環境の急速な変化に対して十分に追従できず構造改革を進めるも未達となりました。「環境変化への迅速な対応力と成長への投資」が課題として明確になりました。また、中期経営計画で掲げた非財務目標については、ピアノを主とした生産構造改革によりインフラ設備投資は未達となりましたが、他の目標については概ね達成することができました。3つの方針に沿って、具体的な進捗を説明いたします。《事業基盤をより強くする》“顧客ともっと?がる”では、ロンドン、横浜、渋谷でお客様の体験価値を高める新しいブランド発信拠点をオープンしました。また、デジタルミキサーを中心に業務用音響機器の販売拡大や車載オーディオシステムの日系自動車メーカーへの採用拡大など、事業ドメイン拡大が着実に進みました。“新たな価値を創出する”では、2024年4月にヤマハミュージックコネクトのポータルサイトを公開後、ヤマハが提供する音楽体験「成長する」「表現する」「つながる」の3つの事業領域についてのサービス開発に注力し、世界中のより多くのお客様に優れた顧客体験の提供を開始しています。米国シリコンバレーに事業開発拠点ヤマハミュージックイノベーションズを法人化し、コーポレートベンチャーキャピタルを設立。他社との技術提携や協業、新たなビジネスの探索に向けた仕組みづくりが進みました。また、フィンガードラムパッドやSEQTRAKなど音・音楽の愉しさを広げる個性豊かな新商品も数多く生み出し、高い評価を得ました。“柔軟さと強靭さを備え持つ”では、顕在化した市場環境の変化に迅速に対応し、将来の変動にも耐えうるモノづくりを実現するため、アコースティック楽器を中心とした製造拠点・インフラの最適化を進めました。中期経営計画「Make Waves 2.0」における2025年3月期の経営目標とその進捗は以下の通りです。○:目標達成 △:施策は進むも目標未達 ×:施策に遅れ 《サステナビリティを価値の源泉に》“地球と社会の未来を支えるバリューチェーンを築く”では、生産拠点の電力監視システム導入による電力の見える化や太陽光発電の増設など、省エネ活動を促進しました。また、気候変動の情報開示評価において、前年に続き最高評価のCDP Aスコアを取得しました。2050年カーボンニュートラルを目指して一歩ずつ取り組みが進んでいます。“快適なくらしへの貢献でブランド・競争力を向上する”では、当社が開発するSoundUDを活用した多言語アナウンスシステムの「おもてなしガイドfor Biz」のサービスが「2025年大阪・関西万博」へ導入されました。会場内でのアナウンスにおいて「言葉の壁」のない未来のコミュニケーション環境を提供します。“音楽文化の普及・発展により市場を拡大する”では、「スクールプロジェクト」をコロンビア、フィリピン、メキシコにも展開し、新興国の音楽教育普及累計230万人の目標に対し3年目で425万人を達成し、計画を大幅に上回ることができました。国内では、学校や地元楽器店と協力しながら高校軽音楽部の活動を支援し、若年層の更なる音楽文化の活性化に努めています。中期経営計画「Make Waves 2.0」における2025年3月期の経営目標とその進捗は以下の通りです。○:目標達成 △:施策は進むも目標未達 ×:施策に遅れ 《ともに働く仲間の活力最大化》“働きがいを高める”では、タレントマネジメントシステムを導入し、社員が自律的にキャリアを描くための仕組みを充実させました。今後も必要なスキル習得に向けた人材育成支援をさらに強化し、働きがいを高めていきます。“人権尊重とDE&Iを推進する”では、女性リーダー育成に向けた支援の充実、クロスボーダー配置の推進など、多様な人材が活躍できる環境整備が進みました。そのほか、性的マイノリティに関する取り組み評価指標である「PRIDE指標2024」において「ゴールド」を6年連続で受賞しました。今後も多様な人材一人ひとりの個性を生かす風土づくりに努めていきます。“風通しがよく、皆が挑戦する組織風土を醸成する”では、組織間でのコミュニケーションの活性化や様々な対話の機会を積極的につくり、互いをリスペクトし心理的安全性の高い組織風土を醸成しています。中期経営計画「Make Waves 2.0」における2025年3月期の経営目標とその進捗は以下の通りです。○:目標達成 △:施策は進むも目標未達 ×:施策に遅れ 中期経営計画「Make Waves 2.0」における2025年3月期の経営目標「売上成長率 20%」「事業利益率 14%」「ROE 10%以上」「ROIC 10%以上」は、当連結会計年度においてそれぞれ13.2%、7.9%、2.8%、4.4%となりました。 (イ)セグメントごとの売上収益の状況当連結会計年度の売上収益は、中国の市況低迷による楽器販売の不振が続いたものの、法人向け音響機器の需要増やデジタルピアノの販売回復に加え、為替の円安による影響もあり、ほぼ前期並みの水準を維持し、前期に対し7億86百万円(0.2%)減少の4,620億80百万円となりました。 楽器事業は、中国市場の市況低迷が継続したことにより楽器の販売が伸び悩み、前期に対し90億94百万円(3.0%)減少の2,961億円となりました。商品別では、ピアノは、主力の中国市場で需要が大幅に減少し、中国以外の市場においてもインフレによる消費者心理の悪化を受けて需要が落ち込み、減収となりました。電子楽器は、エントリークラスのデジタルピアノを中心に市場シェアを回復して前年並みとなりました。管弦打楽器は、新型コロナウイルス感染症の影響が解消され、吹奏楽活動再開が各地で続いたものの、米国政府による小中学校向け財政支援が終了し、減収となりました。ギターは、アコースティックギター、エレキギターとも各地で売り上げを伸ばしたものの、ギターアンプやエフェクター等周辺機器の販売が振るわず、全体では前年並みとなりました。 地域別では、日本は、管弦打楽器において一般趣味層の需要が堅調で大幅な増収となったものの、インフレにより家計の負担が増す中で、子ども向けの教育需要が振るわず、全体では前年並みとなりました。北米は、デジタルピアノの販売が回復したものの、管弦打楽器において米国政府による小中学校向け財政支援の終了により減収となったことに加え、ギター周辺機器の苦戦により、全体では減収となりました。欧州は、市場在庫が高く、ディーラーは仕入に慎重な姿勢が継続している中、新商品の投入に加え、販売促進施策が奏功したものの、ECを中心に価格競争が激しく、普及価格帯のギターや、アンプ、エフェクター等の周辺機器が苦戦し、全体では前年並みとなりました。中国は、不動産市場の悪化等、マクロ経済の低迷長期化に加え、教育施策(双減政策)の影響により、アコースティックピアノの教育需要が急激に縮退したことにより、大幅な減収となりました。その他の地域では、経済成長著しいインドを筆頭に、中南米・アセアン・中近東等、新興国での販売が伸長し、地域全体として増収となりました。  音響機器事業は、エンターテインメント市場の回復によって法人向け需要が旺盛となり、前期に対し72億73百万円(6.0%)増加の1,283億82百万円となりました。 商品別では、個人向けは、ホームオーディオの展開モデル・地域の絞り込みを進めたことにより減収となりました。法人向けは、ライブ・コンサートやオリンピック等、イベント需要が旺盛でデジタルミキサーを中心にイベント用機材の販売が好調に推移し大幅増収となりました。 その他の事業の売上収益は前期に対し10億34百万円(2.8%)増加の375億96百万円となりました。電子デバイスは、車載オーディオの採用が順調に広がり大幅に伸長しました。一方で自動車用内装部品、FA機器は、顧客企業の減産、設備投資の縮小・延期により減収となりました。 (ロ)売上原価と販売費及び一般管理費売上原価は前期に対し58億45百万円(2.0%)減少の2,859億39百万円となりました。売上原価率は、前期から1.2ポイント下落し61.9%となりました。売上総利益は前期に対し、50億59百万円(3.0%)増加の1,761億40百万円となりました。売上総利益率は、前期から1.2ポイント上昇し38.1%となりました。また、販売費及び一般管理費は、前期に比べ19億91百万円(1.4%)増加し、1,394億19百万円となりました。売上収益販売管理費比率は、前期から0.5ポイント上昇し30.2%となりました。 (ハ)事業利益事業利益は、前期に対し30億68百万円(9.1%)増加の367億21百万円となりました。 報告セグメントごとの事業利益では、楽器事業は、為替のプラス影響55億円があったものの、前期に対し32億48百万円(12.8%)減少の220億68百万円となりました。音響機器事業は、為替のプラス影響17億円を含め、前期に対し54億10百万円(84.4%)増加の118億20百万円となりました。その他の事業は、為替のプラス影響8億円を含め、前期に対し9億6百万円(47.1%)増加の28億32百万円となりました。 要因別には、為替影響(80億円)や前期構造改革効果(20億円)等の増益要因に対し、減収・減産モデルミックス他(70億円)等の減益要因により、前期に比べ増益となりました。(注)事業利益とは、売上総利益から販売費及び一般管理費を控除して算出した日本基準の営業利益に相当するものです。 (ニ)その他の収益及びその他の費用その他の収益は、前期に対し7億98百万円(54.3%)増加の22億69百万円となりました。その他の費用は、主としてピアノ製造設備の減損等の構造改革費用を計上したことにより、前期に対し121億70百万円(198.7%)増加の182億95百万円となりました。 (ホ)金融収益及び金融費用金融収益は、前期に対し45億60百万円(49.6%)減少の46億31百万円となりました。金融費用は、主として為替差損の計上により前期に対し23億2百万円(409.8%)増加の28億64百万円となりました。 (ヘ)税引前当期利益税引前当期利益は、前期に対し151億67百万円(40.3%)減少し224億62百万円となりました。売上収益税引前当期利益率は、前期から3.3ポイント下落し4.9%となりました。 (ト)法人所得税費用法人所得税費用は、主として繰延税金費用の増加により、前期に対し11億41百万円(14.5%)増加の89億94百万円となりました。 (チ)親会社の所有者に帰属する当期利益 親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期に対し162億90百万円(55.0%)減少の133億51百万円となりました。基本的1株当たり当期利益は、前期の58円56銭から27円58銭となりました。(注)当社は、2024年10月1日を効力発生日として、普通株式1株につき3株の割合で株式分割を行っております。前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して、基本的1株当たり当期利益を算出しております。 (リ)為替変動とリスクヘッジ海外子会社の売上収益は、期中平均レートで換算しております。当連結会計年度の米ドルの期中平均レートは前期に対し約8円円安の153円となり、前期に対し約77億円の増収影響となりました。また、ユーロの期中平均レートは前期に対し約7円円安の164円となり、前期に対し約44億円の増収影響となりました。また、人民元など、米ドル、ユーロ以外の通貨は、前年同期に対し約28億円の増収影響となり、売上収益全体では、前期に対し約148億円の増収影響となりました。また、事業利益につきましては、米ドルは充当(マリー)効果により、決済レートの変動による為替影響は概ねヘッジできているものの、海外子会社の事業利益の換算等により、約10億円の増益影響となりました。ユーロの決済レートは、前期に対し約18円円安の164円となり、約72億円の増益影響となりました。また、他の通貨を含めた全体では前期に対し約80億円の増益影響となりました。  (ヌ)生産、受注及び販売の状況(a) 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)金額(百万円)前年同期比(%)楽器239,64094.0音響機器113,71299.9その他33,67897.5合計387,03296.0 (注) 金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。 (b) 受注実績当社グループは、製品の性質上、原則として見込生産を行っております。 (c) 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)金額(百万円)前年同期比(%)楽器296,10097.0音響機器128,382106.0その他37,596102.8合計462,08099.8 (注) 金額は外部顧客に対する売上収益であります。 ② 財政状態 当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の6,668億37百万円から755億59百万円(11.3%)減少し、5,912億78百万円となりました。流動資産は、前連結会計年度末から174億12百万円(4.7%)減少し、3,519億33百万円となり、非流動資産は、581億46百万円(19.5%)減少し、2,393億44百万円となりました。流動資産では、自己株式の取得により現金及び現金同等物が減少し、在庫の適正化により棚卸資産が減少しました。非流動資産では保有有価証券の時価下落により金融資産が減少し、減損処理により有形固定資産が減少しました。  当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末の1,550億27百万円から138億61百万円(8.9%)減少し、1,411億65百万円となりました。流動負債は、前連結会計年度末から9億69百万円(0.9%)増加し、1,066億58百万円となり、非流動負債は、前連結会計年度末から148億31百万円(30.1%)減少し、345億6百万円となりました。非流動負債では、保有有価証券の時価変動に対して認識する繰延税金負債が減少しました。  当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末の5,118億10百万円から616億97百万円(12.1%)減少し、4,501億13百万円となりました。自己株式の取得及び配当金の支払いによる株主還元が当期利益による利益剰余金の増加を上回ったことにより、全体では減少となりました。 ③ キャッシュ・フロー当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ17億68百万円減少(前年同期は22億99百万円減少)し、期末残高は998億19百万円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、主として税引前当期利益により552億81百万円の収入(前年同期は主として税引前当期利益により438億36百万円の収入)となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、主として投資有価証券の売却による収入と、有形固定資産の取得による支出により、81億6百万円の収入(前年同期は主として有形固定資産の取得による支出及び投資有価証券の売却による収入により、159億3百万円の支出)となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、主として自己株式の取得、配当金の支払い等により、631億40百万円の支出(前年同期は主として自己株式の取得及び配当金の支払い等により、372億63百万円の支出)となりました。 (イ)資金需要当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料、部品等の購入、労務費など製造費用と、商品の仕入、販売費及び一般管理費等、営業費用の運転資金及び設備投資資金、並びにM&Aや資本提携を目的とした投資資金であります。当連結会計年度の設備投資額は、前期の271億18百万円から71億59百万円(26.4%)減少し、199億59百万円となりました。新オフィスの建設、設備の更新改修を中心として減価償却費(143億10百万円)を超える設備投資を行いました。研究開発費は、前期の269億3百万円から74百万円(0.3%)増加し、269億77百万円となりました。売上収益研究開発費比率は前期から変わらず、5.8%となりました。 (ロ)資金調達運転資金及び設備投資資金について、当社及び国内子会社、一部の海外子会社においてグループ内資金を有効活用するためグループファイナンスを運用しています。また、当社及び一部の子会社においては、借入金額・期間・金利等の条件を総合的に勘案し、金融機関から借入を行っております。

※本記事は「ヤマハ株式会社」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

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連結財務指標と単体財務指標の違いについて

連結財務指標とは

連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。

単体財務指標とは

単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。

本記事での扱い

本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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