ヤマハ株式会社の基本情報

会社名ヤマハ株式会社
業種その他製品
従業員数連19644名 単2341名
従業員平均年齢44歳
従業員平均勤続年数19年
平均年収8932051円
1株当たりの純資産1955.85円
1株当たりの純利益201.52円
決算時期3月
配当金74円
配当性向36.7%
株価収益率(PER)16.2倍
自己資本利益率(ROE)10.8%
営業活動によるCF438億円
投資活動によるCF▲159億円
財務活動によるCF▲372億円
研究開発費※1269.03億円
設備投資額※116.66億円
販売費および一般管理費※1181.78億円
株主資本比率※271%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 <ヤマハの理念・ビジョン> 当社グループは事業活動を通じて、「世界中の人々のこころ豊かなくらし」を実現することを目指しています。そのために、「感動を・ともに・創る:私たちは、音・音楽を原点に培った技術と感性で、新たな感動と豊かな文化を世界の人々とともに創りつづけます」を企業理念に掲げ、我々の行動の原点としています。 (1)ヤマハフィロソフィーヤマハフィロソフィーとは、ヤマハグループの企業経営の「軸」となる考え方を体系化し表したものです。ヤマハフィロソフィーは、「企業理念」、「顧客体験」、「ヤマハクオリティー(品質指針)」、「ヤマハウェイ (行動指針)」の4つにより構成されます。「企業理念」と「顧客体験」は、グループの存在意義を表す普遍的な内容であり、ヤマハフィロソフィーの『基軸』です。 「ヤマハクオリティー」と「ヤマハウェイ」は、企業理念を具現化するために、グループで働く全ての従業員が、日々の業務の中で拠り所とすべきものであり、ヤマハフィロソフィーの『両輪』を示します。 私たちは、常にこのヤマハフィロソフィーを心のよりどころにしながら、お客様の視点に立ち、期待を超える製品とサービスを生み出すことで、未来に向かって新たな感動と豊かな文化を創りつづけます。(2)ブランドプロミス“Make Waves”ブランドプロミスとは、ヤマハが人々の人生にもたらす価値を語ったものです。 ヤマハは、「個性、感性、創造性を発揮し、自ら一歩踏み出そうとする人々の勇気や情熱を後押しする存在でありたい」との思いを込め、人々が心震わす瞬間を“Make Waves”という言葉で表現しました。心震える瞬間を創りだすために、ヤマハは人々の感性を刺激し表現を支える製品やサービスを提供し、なくてはならないパートナーであり続けます。 (3)価値創造ストーリー社会価値の創造を通じ、企業価値を高め、ミッションを実現します ヤマハグループは6つの資本を重視しています。ブランドを中心に、顧客、技術、人、財務があり、その周りにはヤマハの企業活動を支える環境・社会・文化があります。これらの資本を増強していくことがヤマハの企業価値向上につながると考えています。特定したマテリアリティに基づき、事業を通じた“ヤマハの価値創造”と“社会価値の創造”によって各資本の最大化を図り、ヤマハブランド・企業価値の向上のサイクルを繰り返して経営ビジョンの達成、ミッションの実現を目指します。 <中期経営計画「Make Waves 2.0」の概要> 当社グループは、2022年4月からの3年間を対象とした中期経営計画「Make Waves 2.0」を策定しました。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1) 経営環境認識 COVID-19により、デジタル化、多様化、サステナビリティへの意識の高まりなど、前中期経営計画で前提としていた環境変化が一気に加速しました。人の移動や対面の活動が制約される一方で、オンラインを介したモノや情報のやりとりが拡大し、新しい生活様式に対応する製品、サービスが生まれてきています。サステナビリティ意識の一層の高まりは、人々の関心が経済的?栄を超えた本質的な心の豊かさに向かっていることの証左であると考えられます。これらの環境変化によってもたらされる「新たな社会」は音・音楽を原点に“技術×感性”で新たな感動と豊かな文化を追求してきた当社グループにとって、さらなる大きな機会となると認識しています。(2) 経営ビジョンと中期経営計画の基本方針 [経営ビジョン(中長期的に目指す姿)] 「なくてはならない、個性輝く企業」になる~ ブランド力を一段高め、高収益な企業へ ~ [基本方針]新たな社会で持続的な成長力を高める 中長期的に目指す姿「なくてはならない、個性輝く企業になる」を経営ビジョンとして、中期経営計画の各ステージで企業価値を高めてきました。新たなステージである中期経営計画「Make Waves 2.0」では、ポストコロナで大きく様相が変化した新たな社会で持続的な成長力を高めることを基本方針とし、さらに企業価値を向上させていきます。 (3) マテリアリティ策定と3つの方針「事業基盤」、「環境・社会」、「人材」の3領域10項目をマテリアリティとして策定しました。中期経営計画ではこれらのマテリアリティに基づき3つの方針を設定しました。 (4) 3つの方針の詳細3つの方針の具体的な取り組みとして、各方針に3つの重点テーマを設定しました。これらの重点テーマに沿った施策を着実に遂行することで、当社は新たな社会で持続的な成長力を高めます。1.事業基盤をより強くするデジタルマーケティングとリアル拠点の活動を統合したブランド体験の提供に加え、メーカー直販の仕組みの拡大により、顧客との繋がりを強化し、一層のブランド価値向上を進めます。また、製品・サービスにおいてはヤマハの強みであるアコースティック技術とデジタル技術に加え、AIとネットワークをヤマハならではの感性により結びつけ、新たな体験を創造します。外的環境の変化に柔軟に対応できる事業組織としていくために調達・生産のレジリエンスを強化しつつ、DXにより新たな価値を創出します。 ① 顧客ともっと繋がる  :直接顧客と繋がる販売の進化、デジタル×リアルを統合した価値訴求、 顧客情報基盤を拡充② 新たな価値を創出する :アコースティック技術とデジタル技術の融合、サービス・情報提供基盤 の構築、新たな感動体験を創造③ 柔軟さと強靭さを備え持つ:レジリエンス強化、開発基盤の強化、DXによる新たな価値の創出 2.サステナビリティを価値の源泉に2050年カーボンニュートラルを目指した事業活動におけるCO2排出量削減や持続的な木材の利用を通じ、地球環境の保全に努めます。製品・サービスを通じて新たな社会の様々な課題を解決し、快適で安全な暮らしに貢献することで社会価値を創造します。また多種・多彩な楽器の供給を通じた世界の音楽シーンへの貢献、新興国における器楽教育普及など、音楽文化全体の普及・発展に力を尽くします。 ① 地球と社会の未来を支えるバリューチェーンを築く :カーボンニュートラル、持続可能な木材、  省資源・廃棄物削減 ② 快適なくらしへの貢献でブランド・競争力を向上する:遠隔・非接触サービス、耳の保護、 音楽によるQoL向上③ 音楽文化の普及・発展により市場を拡大する :新興国の器楽普及、ローカルコンテンツ、 技術者育成 3.ともに働く仲間の活力最大化ともに働く仲間の活力は、事業活動を行う上で最も重要な要素であり、社会価値、企業価値を創造するための原動力です。従業員一人ひとりが最高のパフォーマンスを発揮できるよう、一人ひとりの個性を活かす経営を行います。組織内、組織間の多面的な対話機会の創出により、心理的安全性が確保された働きやすい職場づくりを進め、多様な人材の知恵や発想から多くの挑戦や共創が生まれる組織風土を醸成します。 ① 働きがいを高める   :グローバルリーダーの育成、自律的なキャリア 開発支援、柔軟な働き方支援② 人権尊重とDE&Iを推進する          :人権デューディリジェンス、多様な人材構成、 女性活躍推進③ 風通しがよく、皆が挑戦する組織風土を醸成する:対話機会の創出、組織風土・文化のさらなる変革 (5) 経営目標 ① 非財務目標1.事業基盤をより強くする・Yamaha Music ID登録数: 500万ID・新コンセプト商品投入数: 20モデル・生産インフラへの投資金額: 350億円 2.サステナビリティを価値の源泉に・新興国の器楽教育普及: 230 万人(累計)・持続可能性に配慮した木材使用率: 75%・事業所での省エネによるCO2排出量削減: 5% 3.ともに働く仲間の活力最大化・従業員働きがい調査肯定的回答率: 継続的向上・管理職女性比率: 19%・従業員働きやすさ調査肯定的回答率: 継続的向上 ② 財務目標・売上成長: 20%・事業利益率: 14%・RОE: 10% 以上・RОIC: 10% 以上 (中期経営計画策定時の想定為替レート:USD 115円/ EUR 130円) ③ 投資と株主還元 創出したキャッシュを成長投資と株主還元にバランス良く配分します。 [投資]・通常投資 : 400億円・戦略投資 : 650億円(生産施設・設備、サステナビリティ、新規事業、M&A等) [株主還元] 継続的かつ安定的な配当を基本としますが、将来の成長投資のための適正な内部留保とのバランスを考慮しながら、資本効率の向上を目的とした機動的な株主還元も適宜、実施します。3年累計で総還元性向50%を目標とします。 (6) ガバナンス指名委員会等設置会社の特長を活かし、定期的な評価を行いながら、より実効性の高いコーポレートガバナンスを目指して継続的な向上を図ります。またグループガバナンスのしくみの整備を進め、リスク対応力の向上と健全で強固な経営基盤を実現します。 (7) 事業ポートフォリオと方向性中長期的に企業価値を向上させるため、成長・中核・育成・再構築の4象限に各事業を位置づけ、経営資源を適切に配分するポートフォリオマネジメントを進めます。① 楽器事業新たな社会に合致した販売とマーケティングの強化により、高付加価値商品の拡売を進めます。電子楽器は成長事業として、需要創造により市場成長を牽引し事業規模を拡大します。ギターは育成事業として、中高級価格帯を中心にブランド力向上へ向けた施策を展開し、収益性を向上させながら規模を拡大します。ピアノ・管弦打楽器は中核事業として、プレミアムブランドの地位を確立し、一層の収益強化を進めます。 ② 音響機器事業再構築事業として位置づけ、コロナ禍により大きく変化した音響機器の新たな市場へ事業ドメインを拡大します。法人向け市場では、企業・公共施設・学校などに、専門知識がなくても快適な音環境が得られる音響システムを提供します。個人向け市場では、オンラインゲームや制作・配信のシーンに、高品質な音を簡便な設定で実現できるソリューションを提供します。これらの需要に対応するため、保有する多彩な技術資産やリソースを柔軟に組み換え、各市場に最適な製品やソリューションを効率的に提供できる開発プラットフォーム・体制を整備します。 ③ その他の事業(部品・装置、その他)育成事業として位置づけ、前中期経営計画より取り組んできた電子デバイス事業の車載オーディオを核に、CASE時代に対応した車内音空間へのソリューション提供を新たな事業の柱として確立します。FA事業においては、超音波技術やセンシング技術による超音波検査機器やEV電池用リークテスターなどの検査機で、新たな市場の開拓を目指します。
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、当第2四半期連結会計期間において、企業結合に係る取得対価の配分が完了したため、前連結会計年度末の暫定的な会計処理の確定を行っており、これに伴う遡及修正の内容を反映させた数値で比較・分析を行っております。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 (1) 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針選択の判断と適用を前提とし、決算においては資産・負債の残高、報告期間における収益・費用の金額に影響を与える見積りを必要とします。これらの見積りについて、経営者は、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、その性質上、実際の結果と異なる可能性があります。重要な会計方針及び見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針、4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。 (2) 経営成績等の状況の概要並びに経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容① 経営成績当連結会計年度における経営環境を振り返りますと、新型コロナウイルス感染症は5類感染症に移行し、パンデミック前の日常が取り戻され、世界経済は徐々に持ち直してきてはいるものの、巣ごもり需要の反動による需要の落ち込み、中国経済の停滞、エネルギー・原材料価格をはじめとする世界的な物価上昇など、当社を取り巻く環境は、依然として先行きが不透明な状況が続いています。このような環境の中で当社グループは、中期経営計画「Make Waves 2.0」を「世界中の人々のこころ豊かなくらし」の実現に向け、ポストコロナの新たな社会で持続的な成長力を高める3年間と位置づけ、3つの方針「事業基盤をより強くする」、「サステナビリティを価値の源泉に」、「ともに働く仲間の活力最大化」を掲げて各施策を進めてきました。《事業基盤をより強くする》“顧客ともっと?がる”では、国内の卸販売子会社と小売販売孫会社を合併することを決定し、特約店・直営店・教室が一体となり需要創造とブランド価値訴求を進めていきます。海外では人口増加率が高く西洋音楽に親しむ国民性で成長が期待されるフィリピンにYamaha Music Philippines Inc.を設立しました。また、部品・装置事業では、車載オーディオシステムが、三菱自動車工業株式会社に続き、トヨタ自動車株式会社の最上級モデル「新型センチュリー」に採用が決定されるなど、新しいドメインにおいても顧客が広がってきています。“新たな価値を創出する”では、YAMAHA MUSIC CONNECTのサービス開始に向け、ヤマハが提供する音楽体験『ミュージックエデュテインメント(学び)、クリエイティブディスカバリー(創造)、ミュージックコネクション(出会い)』の3つ事業領域を定義し、音・音楽の新たな愉しみ方を提供していきます。“柔軟さと強靭さを備え持つ”では、国内製造子会社の吸収合併を決定し、本社の戦略機能と生産現場を一体化することで、日本のものづくり基盤再構築とグローバルでのものづくりを牽引するサステナブルな生産体制を目指します。また、半導体の安定調達を目的に、マレーシアに半導体調達会社を設立しました。多くの影響を受けたサプライチェーンの混乱からの学びを活かし、急激な環境変化にスピーディーに対応できる、ものづくりのレジリエンス力を強化しています。中期経営計画「Make Waves 2.0」における2025年3月期の経営目標とその進捗は以下の通りです。◎:計画を上回る 〇:ほぼ計画通り △:施策は進むも計画から遅れ 《サステナビリティを価値の源泉に》“地球と社会の未来を支えるバリューチェーンを築く”では、生産拠点の電力監視システム導入による電力の見える化や太陽光発電の増設など、省エネ活動を促進しました。また、気候変動の情報開示評価において、最高評価のCDP Aスコアを取得しました。2050年カーボンニュートラルを目指して一歩ずつ取り組みが進んでいます。“快適なくらしへの貢献でブランド・競争力を向上する”では、東海道新幹線の車内サービスにおいて、手軽に乗務員とのやり取りが可能な「おもてなしガイド」のインターホンサービスと、東京メトロの全駅構内の音声アナウンスに「おもてなしガイド for Biz」のサービスが導入されました。当社の音・音楽で培った技術により快適なくらしの実現に貢献できた事例となりました。“音楽文化の普及・発展により市場を拡大する”では、「スクールプロジェクト」において、新興国の器楽教育普及累計230万人の目標に対し2年目で既に300万人を達成し、計画を大幅に上回るペースで進捗しています。国内では全国楽器協会を通じて、学校や地元楽器店と協力しながら高校軽音楽部の活動を支援し、若年層の更なる音楽文化の活性化に努めています。中期経営計画「Make Waves 2.0」における2025年3月期の経営目標とその進捗は以下の通りです。◎:計画を上回る 〇:ほぼ計画通り △:施策は進むも計画から遅れ 《ともに働く仲間の活力最大化》“働きがいを高める”では、タレントマネジメントシステムを導入し、社員が自律的にキャリアを描くための仕組みを充実させました。今後も必要なスキル習得に向けた人材育成支援をさらに強化していきます。“人権尊重とDE&Iを推進する”では、女性リーダー育成に向けた支援の充実、クロスボーダー配置の推進など、多様な人材が活躍できる環境整備が進みました。そのほか、性的マイノリティに関する取り組み評価指標である「PRIDE指標2023」において「ゴールド」を5年連続で受賞しました。今後も多様な人材一人ひとりの個性を生かす風土づくりに努めていきます。“風通しがよく、皆が挑戦する組織風土を醸成する”では、組織間でのコミュニケーションの活性化や様々な対話の機会を積極的につくり、互いをリスペクトし心理的安全性の高い組織風土を醸成しています。中期経営計画「Make Waves 2.0」における2025年3月期の経営目標とその進捗は以下の通りです。◎:計画を上回る 〇:ほぼ計画通り △:施策は進むも計画から遅れ 中期経営計画「Make Waves 2.0」における2025年3月期の経営目標「売上成長率 20%」「事業利益率 14%」「ROE 10%以上」「ROIC 10%以上」は、当連結会計年度においてそれぞれ13.4%、7.3%、6.1%、5.5%となりました。 (イ)セグメントごとの売上収益の状況当連結会計年度の売上収益は、デジタルピアノの需要回復が遅れたことや、中国市場の市況低迷の長期化により楽器の販売が伸び悩んだものの、法人向け音響機器の販売好調に加え、為替の円安による影響もあり前年同期に対し114億55百万円(2.5%)増加の4,628億66百万円となりました。 楽器事業は、デジタルピアノの需要回復が遅れたことや、中国市場の市況低迷の長期化により楽器の販売が伸び悩んだものの、為替の影響により、前期に対し25億41百万円(0.8%)増加の3,051億95百万円となりました。商品別では、ピアノは、主力の中国市場で市況が大幅に悪化し減収となりました。電子楽器は、デジタルピアノが需要減および市場在庫が多く出荷が進まなかったことにより減収となりました。管弦打楽器は、新型コロナウイルス感染症の影響が解消され、各地域で需要堅調が続き、米国政府による小中学校向け財政支援も継続し増収となりました。ギターは、エレキギターの販売が好調に推移したことと買収したコルドバ社が加わったことにより大幅な増収となりました。 地域別では、日本は、デジタルピアノの需要減で電子楽器が減収となったものの、ピアノ、管楽器の需要が堅調で、アニメの効果が継続したギターにおいても増収となり、全体で増収となりました。北米は、ピアノ及び電子楽器において市場在庫の消化が進まず減収であったものの、管弦打楽器における販促活動、ギターにおけるコルドバ社の売上が加わったこと及び為替の影響で全体では増収となりました。欧州は、市場在庫の消化が進まず、価格競争激化で市場環境の厳しさが増す中、キャンペーンによる需要喚起や新商品の導入が奏功し、為替の影響もあり増収となりました。中国は、若者の失業や不動産市場の悪化等、経済成長が急速に鈍化し消費者の買い控えが顕著で、主力のアコースティックピアノを中心に販売が低迷し減収となりました。その他の地域では、経済成長著しいインドを筆頭に、中南米・アセアン・中近東等、新興国での販売が伸長し、地域全体として増収となりました。  音響機器事業は、ライブ・エンターテインメント市場の回復によって法人向け需要が旺盛となり、前期に対し134億67百万円(12.5%)増加の1,211億8百万円となりました。 商品別では、個人向けは、ホームオーディオや音楽制作機器の需要が低迷し減収となりました。法人向けは、ライブ・コンサート等、エンターテインメント市場が活況で、デジタルミキサーを中心にイベント用機材の販売が好調に推移し増収となりました。 その他の事業の売上収益は前期に対し45億53百万円(11.1%)減少の365億62百万円となりました。部品・装置事業では、電子デバイスは、車載オーディオの採用が日本の自動車メーカーにも広がり、増収となりました。自動車用内装部品、FA機器は、顧客企業の減産、設備投資の縮小・延期により減収となりました。ゴルフ事業は韓国向け特需が収束し、大幅な減収となりました。 (ロ)売上原価と販売費及び一般管理費売上原価は前期に対し115億14百万円(4.1%)増加の2,917億84百万円となりました。売上原価率は、前期から0.9ポイント上昇し63.0%となりました。売上総利益は前期に対し、58百万円(0.0%)減少の1,710億81百万円となりました。売上総利益率は、前期から0.9ポイント下落し37.0%となりました。また、販売費及び一般管理費は、前期に比べ121億55百万円(9.7%)増加し、1,374億28百万円となりました。売上収益販売管理費比率は、前期から1.9ポイント上昇し29.7%となりました。 (ハ)事業利益事業利益は、前期に対し122億13百万円(26.6%)減少の336億53百万円となりました。 報告セグメントごとの事業利益では、楽器事業は、為替のプラス影響45億円があったものの、前期に対し108億83百万円(30.1%)減少の253億17百万円となりました。音響機器事業は、為替のプラス影響12億円を含め、前期に対し29億43百万円(84.9%)増加の64億9百万円となりました。その他の事業は、為替のプラス影響8億円があったものの、前期に対し42億73百万円(68.9%)減少の19億26百万円となりました。 要因別には、海上運賃の正常化(70億円)や為替影響(65億円)の増益要因があったものの、エネルギー・調達コスト等の上昇(35億円)や、販売費及び一般管理費の増加(39億円)、一時処理費用の発生(44億円)、減収・減産、モデルミックス他(95億円)等の減益要因により、前期に比べ減益となりました。(注)事業利益とは、売上総利益から販売費及び一般管理費を控除して算出した日本基準の営業利益に相当するものです。 (ニ)その他の収益及びその他の費用その他の収益は、前期に対し5億35百万円(26.7%)減少の14億70百万円となりました。その他の費用は、主として構造改革費用の計上により、前期に対し47億35百万円(340.9%)増加の61億24百万円となりました。 (ホ)金融収益及び金融費用金融収益は、主として為替差益により、前期に対し46億82百万円(103.8%)増加の91億92百万円となりました。金融費用は、前期に対し1億20百万円(27.2%)増加の5億61百万円となりました。 (ヘ)税引前当期利益税引前当期利益は、前期に対し129億22百万円(25.6%)減少し376億29百万円となりました。売上収益税引前当期利益率は、前期から3.1ポイント下落し8.1%となりました。 (ト)法人所得税費用法人所得税費用は、主として繰延税金費用の減少により、前期に対し45億22百万円(36.5%)減少の78億52百万円となりました。 (チ)親会社の所有者に帰属する当期利益 親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期に対し85億41百万円(22.4%)減少の296億42百万円となりました。基本的1株当たり当期利益は、前期の222円64銭から175円68銭となりました。 (リ)為替変動とリスクヘッジ海外子会社の売上収益は、期中平均レートで換算しております。当連結会計年度の米ドルの期中平均レートは前期に対し約9円円安の145円となり、前期に対し約91億円の増収影響となりました。また、ユーロの期中平均レートは前期に対し約16円円安の157円となり、前期に対し約97億円の増収影響となりました。また、人民元など、米ドル、ユーロ以外の通貨は、前年同期に対し約48億円の増収影響となり、売上収益全体では、前期に対し約236億円の増収影響となりました。また、事業利益につきましては、米ドルは充当(マリー)効果により、決済レートの変動による為替影響は概ねヘッジできているものの、海外子会社の事業利益の換算等により、約9億円の増益影響となりました。ユーロの決済レートは、前期に対し約9円円安の146円となり、約38億円の増益影響となりました。また、他の通貨を含めた全体では前期に対し約65億円の増益影響となりました。  (ヌ)生産、受注及び販売の状況(a) 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)金額(百万円)前年同期比(%)楽器255,02499.7音響機器113,78195.6その他34,53183.4合計403,33796.9 (注) 金額は平均販売価格によっており、セグメント間の内部振替後の数値によっております。 (b) 受注実績当社グループは、製品の性質上、原則として見込生産を行っております。 (c) 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)金額(百万円)前年同期比(%)楽器305,195100.8音響機器121,108112.5その他36,56288.9合計462,866102.5 (注) 金額は外部顧客に対する売上収益であります。 ② 財政状態当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末の5,942億9百万円から726億28百万円(12.2%)増加し、6,668億37百万円となりました。流動資産は、前連結会計年度末から226億60百万円(6.5%)増加し、3,693億46百万円となり、非流動資産は、499億67百万円(20.2%)増加し、2,974億91百万円となりました。流動資産では、為替変動の影響等により営業債権及びその他の債権や棚卸資産が増加しました。非流動資産では保有有価証券の時価上昇により金融資産が増加し、設備投資により有形固定資産が増加しました。 当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末の1,362億65百万円から187億61百万円(13.8%)増加し、1,550億27百万円となりました。流動負債は、前連結会計年度末から105億85百万円(11.1%)増加し、1,056億88百万円となり、非流動負債は、前連結会計年度末から81億76百万円(19.9%)増加し、493億38百万円となりました。流動負債では、未払金の増加や為替変動の影響等により営業債務及びその他の債務が増加しました。また、非流動負債では、保有有価証券の時価変動に対して認識する繰延税金負債が増加しました。 当連結会計年度末の資本合計は、前連結会計年度末の4,579億44百万円から538億66百万円(11.8%)増加し、5,118億10百万円となりました。自己株式の取得及び配当金の支払いによる株主還元を行ったものの、当期利益により利益剰余金が増加したことに加え、為替変動の影響及び保有有価証券の時価上昇によりその他の資本の構成要素が増加したことで、全体では増加となりました。 ③ キャッシュ・フロー当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ22億99百万円減少(前期は686億8百万円減少)し、期末残高は1,015億87百万円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、主として税引前当期利益により438億36百万円の収入(前期は主として税引前当期利益に対し、棚卸資産が増加したことに加え、2022年3月期の投資有価証券の売却による法人所得税の支払いもあり、148億41百万円の支出)となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、主として横浜シンフォステージ建設(神奈川県横浜市)及び本社新オフィス棟建設(静岡県浜松市)の投資を含む有形固定資産の取得による支出と、投資有価証券の売却による収入により、159億3百万円の支出(前期は主として有形固定資産の取得により、215億63百万円の支出)となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、主として自己株式の取得、配当金の支払い等により、372億63百万円の支出(前期は主としてグループファイナンス拡大に伴う短期借入金の返済や配当金の支払い、自己株式の取得により、352億87百万円の支出)となりました。 (イ)資金需要当社グループにおける主な資金需要は、製品製造のための材料、部品等の購入、労務費など製造費用と、商品の仕入、販売費及び一般管理費等、営業費用の運転資金及び設備投資資金、並びにM&Aや資本提携を目的とした投資資金であります。当連結会計年度の設備投資額は、前期の205億41百万円から65億77百万円(32.0%)増加し、271億18百万円となりました。新オフィスの建設、設備の更新改修を中心として減価償却費(138億39百万円)を超える設備投資を行いました。研究開発費は、前期の250億57百万円から18億46百万円(7.4%)増加し、269億3百万円となりました。売上収益研究開発費比率は前期の5.6%から0.2ポイント増加し、5.8%となりました。 (ロ)資金調達運転資金及び設備投資資金について、当社及び国内子会社、一部の海外子会社においてグループ内資金を有効活用するためグループファイナンスを運用しています。また、一部の子会社においては、借入金額・期間・金利等の条件を総合的に勘案し、金融機関から借入を行っております。

※本記事は「ヤマハ株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

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