会社名 | 西日本旅客鉄道株式会社 |
業種 | 陸運業 |
従業員数 | 連44366名 単21314名 |
従業員平均年齢 | 37.7歳 |
従業員平均勤続年数 | 14.3年 |
平均年収 | 6650824円 |
1株当たりの純資産 | 2268.88円 |
1株当たりの純利益 | 202.63円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 142円 |
配当性向 | 53% |
株価収益率(PER) | 15.5倍 |
自己資本利益率(ROE) | 9.2% |
営業活動によるCF | 3183億円 |
投資活動によるCF | ▲2436億円 |
財務活動によるCF | ▲1316億円 |
研究開発費※1 | 60億円 |
設備投資額※1 | 7億円 |
販売費および一般管理費※1 | 2156.98億円 |
株主資本比率※2 | 23.6% |
有利子負債残高(連結)※3 | 13391.47億円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】(1) 当社グループを取り巻く経営環境 当社グループを取り巻く経営環境は、新型コロナウイルスの影響縮小に伴う需要回復、観光・インバウンドの活況等により、足元の鉄道のご利用等は想定を上回るペースで回復しています。一方、自然災害の激甚化、コロナ禍を契機とした行動変容に加え、人口減少に伴う市場の縮小や人財獲得競争の激化、賃金・物価・金利の上昇、顧客ニーズの多様化、生成AI等の革新的技術の急速な進化等、これからの変化を想像することが難しい状況になってきています。 (2) 経営の基本方針 当社グループは、「福知山線列車事故のような事故を二度と発生させない」という確固たる決意のもと、被害に遭われた方々への真摯な対応、安全性向上に取り組んでいきます。 2023年4月には、未来社会におけるJR西日本グループの存在意義を見つめなおし、めざす姿として「私たちの志」を策定しました。この「私たちの志」をグループ全体の羅針盤として、グループ一丸となって取り組んでいます。 私たちの志人、まち、社会のつながりを進化させ、心を動かす。未来を動かす。私たちは、これからも安全、安心を追求し、高め続けます。人と人、人とまち、人と社会を、リアルとデジタルの場でつなぎ、西日本を起点に地域の課題を解決します。そして、持続可能で活力ある未来を創り、その先の一人ひとりが思い描く暮らしを様々なパートナーと共に実現していきます。 これまで、鉄道や駅を中心に人と人、人とまちをつなぎ、安全で豊かな社会づくりに貢献できるよう努力を積み重ねてきましたが、インフラを担う企業として、未来においても社会づくりに貢献する役割を果たし続けていくため、大きな転換期を迎えているこれからの社会の課題と向き合い、求められる価値を、事業活動を通じて提供していきます。 とりわけ、一人ひとりの暮らし、まち、社会全体が直面する課題に着目したとき、安全を基盤に広域で人と人、まち、社会をつなぐインフラサービスを提供し、またグループ全体で多くのお客様との接点、地域とのつながりを持つ当社グループは、これまで以上にお客様視点で「つながりを進化させる」ことで、大きな役割を果たしていくことができ、それこそが、未来の社会における私たちの存在意義と考えます。 引き続き、鉄道の安全性向上に向けた不断の取り組みを積み重ねていくことを基盤としつつ、様々なパートナーとの共創とイノベーションにより、「地域共生企業」として事業を通じて社会や地域の課題解決に貢献することで、社会的価値と経済的価値を合わせて創出し、よりよい未来を創り上げていきます。 (3) 中長期的経営戦略 当社グループは2023年4月に、「私たちの志」の実現に向け、10年後にありたい姿として「長期ビジョン2032」(以下、「長期ビジョン」)を策定しました。重点的に向き合う社会課題を、「安全、安心で、人と地球にやさしい交通」、「人々が行きかう、いきいきとしたまち」、「一人ひとりにやさしく便利で豊かなくらし」及び「持続可能な社会」の4つに設定しました。 <安全、安心で、人と地球にやさしい交通> 交通全体がシームレスなサービスとして認識され、定着している未来 <人々が行きかう、いきいきとしたまち> 地域の魅力が高まり、定住・交流・関係人口が増加していく未来 <一人ひとりにやさしく便利で豊かなくらし> リアルの良さとデジタルの組み合わせで、個客体験が大きく高まる未来 <持続可能な社会> 様々なパートナーとの連携を通じて、持続可能な社会システムが構築されている未来 この「長期ビジョン」の実現に向け、鉄道の安全性向上に向けた不断の努力に加え、鉄道を中心としたモビリティサービス分野の活性化、ライフデザイン分野の拡大に挑戦し、最適な事業ポートフォリオを構築することで、将来にわたって持続的に価値創造を実現する企業グループに成長していきます。具体的には、北陸新幹線の金沢・敦賀間の開業やなにわ筋線開業、大阪・広島・三ノ宮エリアでの駅ビル開発等のプロジェクトや、大阪・関西万博等の機会を活用し、関西都市圏ブランドの確立や西日本各エリアのさらなる活性化に貢献していきます。 「JR西日本グループ中期経営計画2025」(以下、「中期経営計画2025」)では、「長期ビジョン」実現に向けた第一ステップとの位置づけのもと、早期のコロナ前水準への回復に向けて、足元の機会を最大限活かした成長を加速するため、5つの重点戦略を掲げました。 ①鉄道の安全性向上②主要事業の活性化と構造改革(鉄道事業・グループ事業)③不動産・まちづくりのさらなる展開④デジタル戦略による多様なサービスの展開⑤新たな事業の創出 ①鉄道の安全性向上〇福知山線列車事故を原点とし、安全を追求し続け、弛まぬ努力を継続・被害に遭われた方々への真摯な対応・「JR西日本グループ鉄道安全考動計画2027」(以下、「安全考動計画2027」)の推進<ホーム安全>・ホーム柵やホーム安全スクリーンの整備を推進<踏切安全>・大型車が踏切に停滞していることを列車の運転士に音声で知らせる装置の整備を推進<地震対策>・地震発生時の安全性向上に向けて、耐震補強や逸脱防止対策を推進<安全最優先の風土の醸成>・「現場の判断を最優先するマネジメント」の確立・「お客様を想い、ご期待にお応えする」考動<組織全体で安全を確保する仕組みの充実>・リスクアセスメントの質の向上・「心理的に安全なチーム」づくり・現場起点の考動による課題解決への挑戦<一人ひとりの安全考動の実践>・「大切にしたい5つの価値観」の共有、主体的な実践<ハード・ソフトの機能向上>・ハード・ソフト両面の改良・改善による安全性向上・安全で安定的な輸送の提供(輸送の質の向上)<社会とつながり、社外から学ぶ>・関係機関との自然災害等の事象発生時の対応に関する対話・他鉄道事業者等から安全対策を学び、採り入れる取り組みの推進 ②主要事業の活性化と構造改革(鉄道事業・グループ事業)ア.鉄道事業〇「お客様を想い、ご期待にお応えする」ことを強く意識し、CSを戦略の根幹とした顧客起点の経営を実現〇新幹線を基軸とした鉄道ネットワークの充実と、交流人口・関係人口の創出に挑戦・山陽新幹線各エリア:利便性の向上によるご利用促進等・北陸エリア:北陸新幹線金沢・敦賀間開業、北陸デスティネーションキャンペーン(2024年秋)を契機とした、観光素材の磨き上げと周遊ルートの整備等・山陰エリア/南紀エリア:新型車両投入による旅の魅力向上等・デジタルの活用・多様化するニーズに対応した営業施策〇関西国際空港とのアクセス向上と、2025年の大阪・関西万博を契機とした取り組みを通じて、国内外の様々なお客様が行き交う魅力的な関西都市圏を実現・近畿エリア全体の魅力向上・関西国際空港とのアクセス整備・大阪・関西万博を契機とした取り組み(会場アクセス整備・駅改良の推進等)・インバウンド受け入れ体制整備 〇技術戦略に基づき日々の業務プロセスを変革し、鉄道事業の活性化を支える生産性向上と持続可能なシステム構築、価値創造を実現・お客様サービスの変革・運行オペレーションの変革・保守メンテナンス手法の変革イ.物販・飲食事業〇お客様のデイリーニーズへのきめ細やかな対応力を磨き上げて、一人ひとりにやさしく便利で豊かな暮らしを実現・外部提携による競争力向上・既存店舗の磨き上げ・ヴィアインのブランド再構築ウ.ホテル事業〇旅の魅力や人々のつながりを創り、最高の笑顔とチームワークでおもてなしを提供し、まちの価値向上に貢献・「大阪ステーションホテル、オートグラフ コレクション」の新規開業・既存ブランド価値の再構築・「ホテルグランヴィア広島サウスゲート」の新規開業エ.ショッピングセンター事業〇強みであるリアルを軸に、デジタルでもお客様とテナントをつなぎ、「地域一番のエリアプラットフォーマー」を実現・変化する消費に応えるリアルコンテンツの充実・リアル・デジタルによるお客様接点の拡大・強化・地域特性を捉えた館づくり ③不動産・まちづくりのさらなる展開〇地域の皆様と連携して安心して暮らし・過ごせるコミュニティを形成し、地域・社会の課題解決に貢献・駅からはじまるまちづくりの推進・展開領域のさらなる拡大・マネジメント分野の強化と資産効率向上〇拠点駅の大規模開発と周辺まちづくりの促進、エリアマネジメントの推進により、人々が訪れたくなる、いきいきとしたまちを創出・拠点駅開発(大阪、広島、三ノ宮)・まちなかの体験価値向上 ④デジタル戦略による多様なサービスの展開〇データやデジタル技術を駆使し、お客様一人ひとりとグループの多様なサービスをつなぐことで心を動かし、いつまでも住み続けたい・また来たいと感じる「WESTER体験」を提供・「WESTER体験」における3つの進化を推進(お客様とのつながりの進化、「たまりやすい、つかいたい」ポイントへの進化、グループマーケティング力の進化) ⑤新たな事業の創出〇西日本を舞台に「つながり」を生み出し、新決済とポイント、データが「つなぐ」未来型のまちづくりに挑戦・「WESTER体験」を支える新たな決済サービスの導入・「よこてん」(内部向けに開発したデータソリューションの他鉄道会社等への横展開)で広がるデータソリューション事業〇地域・社会とともに持続可能性を高める事業を進めることで、人、まち、社会の未来を動かす・持続可能な暮らしを実現する「総合インフラマネジメント事業」・地域課題ソリューションビジネスの推進・未来を動かすビジネスチャレンジ また、サステナビリティ経営の実現に向けて、地域共生、地球環境、人的資本経営、ガバナンス・リスクマネジメント・人権に重点的に取り組みます。 ①地域共生〇ウェルビーイングな暮らしの実現、地域の課題解決と持続可能で豊かな地域づくりに貢献・持続可能で豊かな地域づくりの推進・ご利用しやすい持続可能な交通体系を地域とともに推進 ②地球環境〇社会インフラを担う企業グループとして、地球環境保護の取り組みを通じて社会全体の持続可能性を向上・地球温暖化防止・気候変動対策・循環型社会構築への貢献・自然との共生 ③人的資本経営〇自ら変革し成長する人財こそが「長期ビジョン」実現の原動力と認識し、成長を支援し、多様性と働きがいを高め、変化対応・創出力のある人財を創出・人財育成・ダイバーシティ&インクルージョン・ワークエンゲージメント ④ガバナンス・リスクマネジメント・人権〇「長期ビジョン」実現に向けて、適切なリスクテイクによる企業価値向上を図るガバナンスを一層充実・コーポレート・ガバナンスのさらなる強化・リスクマネジメントの充実・企業倫理・人権尊重の取り組み (4) 対処すべき課題 「中期経営計画2025」の初年度である2023年度は、機会を捉えた需要獲得策や事業構造改革等が実を結び、計画を超える業績回復を実現できた一方、鉄道事業等の持続的運営を脅かす労働力不足の顕在化、ライフデザイン分野等の新たな価値創造を牽引する人財確保に向けた競争激化、インフレ社会の到来等、急速な経営環境の変化に直面しました。これらの変化は中長期的に経営へ影響を与え続ける構造的なものと認識しています。 以上の急速かつ構造的な経営環境変化に対して、「中期経営計画2025」に掲げた重点戦略に基づく施策の具体化に加え、将来に向けて持続的に価値を創出し続けるために、鉄道事業の安全性向上・持続的進化、グループ一体となった価値創造、及びそれらを実現するための原動力となる変化対応・創出力の向上等、先手を打った対応を図っていくことが重要な経営課題です。 これらの経営課題に対応するため、2024年4月に「中期経営計画2025」のアップデートを行いました。アップデートを行った「中期経営計画2025」を基に、鉄道事業の安全性向上を基盤としながら、様々なパートナーとの共創とイノベーションにより、鉄道事業を中心としたモビリティサービス分野の活性化と構造改革を図るとともに、ライフデザイン分野における新たな事業の創出等の事業活動を通じ、「私たちの志」、「長期ビジョン」の実現を加速し、社会的価値と経済的価値を創出していきます。 なお、文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日において当社グループが判断したものであります。 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の概要 当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響の縮小に伴い、お客様のご利用や個人消費が回復するとともに、インバウンド需要も好調に推移しました。 その結果、営業収益は前期比17.2%増の1兆6,350億円、営業利益は同114.1%増の1,797億円、経常利益は同127.4%増の1,673億円、法人税等を控除した親会社株主に帰属する当期純利益は、前年度の事業適応計画に基づく税制特例の反動があったものの同11.6%増の987億円となりました。 今後とも、「長期ビジョン」、「中期経営計画2025」に基づき、鉄道の安全性向上を最優先に、外部環境の変化を捉えた需要喚起策を講じるとともに、事業構造改革を着実に推進していきます。また、北陸新幹線金沢・敦賀間の開業効果を最大化するとともに、令和6年能登半島地震の被災地の復旧・復興が加速するよう、引き続き地域の皆様と連携して取り組んでいきます。 これをセグメント別に示すと次のとおりとなります。 なお、当連結会計年度より、セグメント区分及びその集計方法の一部を変更しており、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後のセグメント区分に基づき作成したものを記載しております。 ① モビリティ業 当社グループは、2005年4月25日に福知山線列車事故を発生させたことを踏まえ、引き続き、被害に遭われた方々へ真摯に対応してまいります。また、昨年4月にスタートした「安全考動計画2027」に基づき、「お客様を想い、ご期待にお応えする」ことを強く意識して安全性の向上に取り組むよう、安全に対する向きあい方を深め、組織風土として醸成すること等に取り組んでいます。 当連結会計年度においても、ホームの安全対策として、在来線のご利用の多い駅等におけるホーム柵の整備等を引き続き進め、三ノ宮駅、西明石駅の一部ホームでホーム柵の使用を開始しました。また、京橋駅の一部ホームでホームと車両の段差や隙間を縮小する整備を実施し、芦屋駅、新大阪駅等ではホーム安全スクリーンの使用を開始しました。加えて、さらなる安全性の維持、向上のため、車両側面カメラの映像から列車に接近するお客様を自動で検知し、運転士に通知するシステムの検証を開始しています。 激甚化する自然災害への対策としては、斜面防災対策や降雨時運転規制へのレーダー雨量活用をはじめとした豪雨対策を引き続き実施しました。山陽新幹線における地震対策については、耐震補強対策及び逸脱防止対策を全線に拡大すべく、主要な対策は2027年度末までの完了をめざし、着実に整備を進めました。在来線における建物・高架橋等の耐震補強等についても、計画に基づき着実に整備を進めました。 さらに、環境負荷軽減のため鉄道運行への再生可能エネルギー導入によるCO2排出量削減の取り組みを進めるとともに、水素利活用(駅等の鉄道アセットを活用した総合水素ステーションの設置、線路敷を活用したパイプラインによる水素輸送等)の検討を開始しました。 当連結会計年度における、需要創出及び新たな価値創造へ向けた主な具体的取り組みは以下のとおりです。 ・コワーキングスペース等の予約プラットフォーム「+PLACE」のサービス開始(4月)・「サイコロきっぷ」の発売(5月、8月及び12月)・「Apple PayのICOCA」のサービス開始(6月)・兵庫デスティネーションキャンペーンにおけるデジタルパスの発売(6月)・自動運転・隊列走行BRT開発プロジェクトの専用テストコースでの実証実験完了(7月)、公道実証実験の実施(11月~2月)・国内初の鉄道事業者連携による広域型MaaSアプリ「KANSAI MaaS」のリリース(9月)・新たなEXサービスの導入(「EX旅先予約」、「EX旅パック」、新幹線の1年前予約)(10月)・着座サービスの拡充(大和路線・おおさか東線における「快速 うれしート」の導入(10月)、通勤特急「らくラクやまと」の運行開始(3月))・年末年始期間の東海道・山陽新幹線「のぞみ」号全席指定席化(12月~1月)・令和6年能登半島地震を踏まえた北陸を応援する取り組み(「北陸おでかけtabiwaパス」の利用条件緩和・特別価格での発売(2月)、北陸駅ナカキャンペーンの実施(3月~))・定期券WEB申込サービス「マイ・テイキ」の開始(3月) 上記のほか、当社グループの技術、ノウハウをベースにしたビジネスの拡大にも取り組んできました。 モビリティ業セグメントでは、鉄道需要の回復によりご利用が増加したことに加え、インバウンド需要が好調に推移したこと等から、営業収益は前期比18.3%増の9,864億円、営業利益は同244.3%増の1,144億円となりました。 ② 流通業 流通業セグメントでは、スターバックス コーヒー ジャパン㈱とのライセンス契約1号店「スターバックス コーヒー JR京都駅 西口店」を10月にオープンしました。また、11月には大阪・関西万博オフィシャルストアを「エキマルシェ新大阪」内にオープンしました。3月には、北陸新幹線金沢・敦賀間開業に合わせ、新たに整備された小松駅から敦賀駅までの6駅において駅ナカ店舗を開業しました。 流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」については、9月に「ヴィアインプライム札幌大通<鈴蘭の湯>」を開業しました。 流通業セグメントでは、コンビニエンスストアや土産店、「ヴィアイン」のご利用が好調であったことや、構造改革の進捗等により、営業収益は前期比18.7%増の1,970億円、営業利益は同138.1%増の130億円となりました。 ③ 不動産業 不動産業セグメントのうちショッピングセンター運営業では、「ルクア大阪」や「京都ポルタ」、「天王寺ミオ」等の商業施設において、店揃えやコンテンツを強化するリニューアルを行いました。また、3月には、北陸新幹線金沢・敦賀間開業に合わせ福井駅に商業施設「くるふ福井駅」を開業したほか、大阪駅(うめきたエリア)地上部施設名称を「うめきたグリーンプレイス」に決定し、2025年春の開業に向け準備を進めています。 不動産販売・賃貸業では、不動産アセットマネジメント分野の強化のため、9月にJR西日本プライベートリート投資法人の運用を開始しました。また、10月には、不動産管理運営の強化のためJR西日本不動産マネジメント㈱を設立しました。さらに、収益用不動産の取得、販売や海外不動産事業の強化等にも努めました。 ホテル業では、「大阪ステーションホテル、オートグラフ コレクション」の開業準備を推進するとともに、新しい広島駅ビルに開業するホテルの名称を「ホテルグランヴィア広島サウスゲート」に決定しました。 不動産業セグメントでは、ショッピングセンター運営業、ホテル業においてご利用が堅調に推移したこと等により、営業収益は前期比6.2%増の2,177億円、営業利益は同17.5%増の406億円となりました。 ④ 旅行・地域ソリューション業 旅行・地域ソリューション業セグメントのうちツーリズム事業では、楽天グループ㈱が運営する「楽天トラベル」と提携し、1月に「JR楽パック赤い風船」の販売を開始しました。ソリューション事業では、地域の社会課題の解決への取り組みの一環として、㈱トータルブレインケアと生涯現役社会の実現に向けた資本業務提携契約を締結しました。 旅行・地域ソリューション業セグメントでは、旅行需要の回復、各地域の誘客事業等の受託等により、営業収益は前期比26.4%増の2,060億円、営業利益は同29.1%増の78億円となりました。 モビリティ業のうち、当社の鉄道事業の営業成績は以下のとおりであります。ア.輸送実績 区分単位当事業年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日) 前事業年度比営業日数日366-キロ程新幹線キロ937.7812.6 在来線キロ(28.0)3,959.8(28.0)4,090.5 計キロ(28.0)4,897.5(28.0)4,903.1 客車走行キロ新幹線千キロ553,348104.5%在来線千キロ763,251102.2 計千キロ1,316,599103.2 輸送人員定期千人1,063,247101.8 定期外千人668,488111.9 計千人1,731,736105.5 輸送人キロ新幹線定期千人キロ917,691105.6 定期外千人キロ19,175,193124.3 計千人キロ20,092,884123.3 在来線近畿圏定期千人キロ16,574,683101.9 定期外千人キロ10,066,940117.9 計千人キロ26,641,623107.4 その他定期千人キロ3,504,664100.0 定期外千人キロ3,796,928115.2 計千人キロ7,301,592107.4 計定期千人キロ20,079,347101.6 定期外千人キロ13,863,868117.1 計千人キロ33,943,216107.4 合計定期千人キロ20,997,039101.8 定期外千人キロ33,039,062121.2 計千人キロ54,036,101112.8 乗車効率新幹線%46.539.4 在来線%35.533.8 計%38.935.5 (注)1 キロ程欄の上段括弧書は、外数で第三種鉄道事業のキロ程であり、それ以外は第一種鉄道事業及び第二種鉄道事業のキロ程であります。また、前事業年度比は、前事業年度末の数値を記載しております。2 客車走行キロ数には、試運転、営業回送を含めておりません。3 輸送人キロ欄の近畿圏は、京都府(南部)、大阪府(一部を除く)、兵庫県(南部)、滋賀県、奈良県(一部を除く)及び三重県(一部)について記載しております。4 乗車効率欄の前事業年度比は、前事業年度の数値を記載しております。なお、乗車効率は次の方法により算出しております。乗車効率 =輸送人キロ客車走行キロ × 客車平均定員(標準定員) イ.収入実績 区分単位当事業年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日) 前事業年度比旅客運輸収入旅客収入新幹線定期百万円11,703104.6%定期外百万円436,039128.1 計百万円447,743127.3 在来線近畿圏定期百万円105,875104.3 定期外百万円188,393121.3 計百万円294,268114.6 その他定期百万円21,928101.2 定期外百万円76,654119.0 計百万円98,582114.5 計定期百万円127,803103.7 定期外百万円265,047120.7 計百万円392,851114.6 合計定期百万円139,507103.8 定期外百万円701,087125.2 計百万円840,595121.0 荷物収入百万円180.5 合計百万円840,596121.0 鉄道線路使用料収入百万円4,713102.9 運輸雑収百万円70,491108.3 収入合計百万円915,801119.8 (注) 旅客収入欄の近畿圏は、京都府(南部)、大阪府(一部を除く)、兵庫県(南部)、滋賀県、奈良県(一部を除く)及び三重県(一部)について記載しております。 (2) 資産、負債及び純資産の状況 当連結会計年度末の総資産額は、3兆7,779億円となり、前連結会計年度末と比較し424億円増加しました。これは主に、固定資産の増加によるものです。 負債総額は、2兆5,529億円となり、前連結会計年度末と比較し382億円減少しました。これは主に、社債の減少によるものです。 純資産総額は、1兆2,249億円となり、前連結会計年度末と比較し806億円増加しました。これは主に、利益剰余金の増加によるものです。 (3) キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ566億円減の2,332億円となりました。(営業活動によるキャッシュ・フロー) 税金等調整前当期純利益が増加したこと等から、営業活動において得た資金は3,183億円(前連結会計年度は2,739億円の収入)となりました。(投資活動によるキャッシュ・フロー) 固定資産の取得による支出が増加したこと等から、投資活動において支出した資金は2,436億円(前連結会計年度は2,149億円の支出)となりました。(財務活動によるキャッシュ・フロー) 社債の償還を行ったこと等から、財務活動において支出した資金は1,316億円(前連結会計年度は887億円の支出)となりました。 (4) 生産、受注及び販売の実績 当社及びその連結子会社(以下「当社グループ」という。)の大多数は、受注生産形態を取らない業態であります。このため、生産、受注及び販売の状況については、「4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析]」における各事業のセグメント別経営成績に関連付けて示しております。 (5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 当社グループは、基幹事業である鉄道事業において安全性の向上に全力で取り組むとともに、その他のグループ事業においては、各事業の特性を活かしたさまざまな施策の展開及び保有資産の有効活用等に努めてきました。 当連結会計年度においては、新型コロナウイルス感染症の影響の縮小に伴い、お客様のご利用や個人消費が回復するとともに、インバウンド需要も好調に推移したことにより営業収益、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益のいずれも増加しました。ア.営業収益 営業収益は、前連結会計年度に比べ17.2%、2,394億円増加の1兆6,350億円となりました。 モビリティ業セグメントについては、当社の運輸収入が、鉄道需要の回復に伴い増加したこと等により、営業収益は前連結会計年度に比べ18.3%、1,526億円増加の9,864億円となりました。 このうち、新幹線については、前連結会計年度に比べ27.3%、960億円増加の4,477億円となりました。 在来線については、前連結会計年度に比べ14.6%、499億円増加の3,928億円となりました。 流通業セグメントについては、コンビニエンスストアや土産店、流通業セグメントに区分される宿泊特化型ホテル「ヴィアイン」のご利用が好調であったことに加え、構造改革の進捗等により、前連結会計年度に比べ18.7%、310億円増加の1,970億円となりました。 不動産業セグメントについては、ショッピングセンター運営業、ホテル業においてご利用が堅調に推移したこと等により、前連結会計年度に比べ6.2%、128億円増加の2,177億円となりました。 旅行・地域ソリューション業セグメントについては、旅行需要の回復、各地域の誘客事業等の受託等により、前連結会計年度に比べ26.4%、430億円増加の2,060億円となりました。イ.営業費 WESTER関連経費や発売手数料等の業務費の増加等により、前連結会計年度に比べ11.0%、1,437億円増加の1兆4,552億円となりました。ウ.営業利益 営業利益は、前連結会計年度に比べ114.1%、957億円増加の1,797億円となりました。エ.営業外損益 営業外損益については、雇用調整助成金の受入の減少等により、前連結会計年度に比べ20億円減少し、123億円の損失となりました。 オ.経常利益 経常利益は、前連結会計年度に比べ127.4%、937億円増加の1,673億円となりました。カ.特別損益 特別損益については、線区整理損失引当金の繰入等により、前連結会計年度に比べ214億円減少し、222億円の損失となりました。キ.親会社株主に帰属する当期純利益 親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ11.6%、102億円増加の987億円となりました。 ② 経営成績に重要な影響を与える要因ア.収益に影響する要因[モビリティ業] モビリティ業セグメントは鉄道運輸収入が大宗を占めております。鉄道運輸収入は、主に鉄道利用者数により左右され、航空機を含めた他の輸送モード、同業他社との競争や、経済情勢、少子高齢化等、多くの要因により影響を受けます。また、鉄道利用者は、安全性、信頼性をベースに、所要時間・ネットワーク性・運賃・快適性を基準として選択を行うと考えております。 新幹線の収入は、主として、ビジネスや観光旅行客の数に左右され、経済環境や航空機との競争、訪日観光客の動向等に影響を受けます。 近畿圏の収入は通勤・通学客が多いことから、経済情勢の影響を受けにくいと考えておりますが、少子高齢化や都市化等の人口推移による影響を受けると考えております。 その他在来線のうち、都市間輸送の収入は経済情勢や高速バス、自家用車との競争による影響を受けます。また、ローカル線の収入は自家用車との競争や地域の経済情勢及び人口の推移による影響を受けます。[流通業] 流通業セグメントの収入は、主に百貨店業、物品販売業及び飲食業からの収入で構成されております。当セグメントの収入は、経済情勢及び他の百貨店、物販店舗、レストランとの競争に左右されます。当セグメントの事業の多くが駅やその周辺で行われているため、鉄道輸送量も影響を受ける要因です。しかし、駅は比較的安定したご利用があるため、当セグメントの収益は同業他社に比べ、これらの影響は少ないと考えております。また、新規店舗の開発や既存店舗の廃止によっても左右されます。[不動産業] 不動産業セグメントの収入は、主に駅やその周辺施設の賃貸収入、沿線におけるマンションの分譲販売、ホテル業により得られます。当セグメントは、経済情勢の影響を受けることや、マンション分譲事業の販売数の増減により業績が変動するほか、ホテル業の収益は、宿泊料金や他ホテルとの競争、訪日観光客の動向に影響されるものの、賃貸事業において、駅は比較的安定したご利用があり、テナントは立地の利便性から駅構内及びその周辺オフィスを好むことから、同業他社に比べ、経済情勢による影響は少ないと考えております。[旅行・地域ソリューション業] 旅行・地域ソリューション業セグメントの収入は、主に他旅行業者との競争、経済情勢やテロ等旅行を妨げる状況により影響を受けます。 イ.費用に影響する要因[人件費] 当社は、構造改革を推進しつつ、新規採用等により事業運営に必要な社員数を確保してきております。当事業年度の人件費は2,044億円となっております。 人財確保については、新卒採用だけでなく、近年の雇用の流動性の高まりが今後も継続することを念頭に、社会人採用の拡充やカムバック採用の導入等、幅広いチャネルを設定することで、さらに多様性のある人財ポートフォリオへの転換を図ります。当事業年度においては新卒採用及び社会人採用等合計約1,100名の採用を行いました。 また、年齢構成により退職者数が多い中で、一層円滑な技術継承を図ること等の観点から、従来の定年退職後の再雇用制度に加え、2023年度から新たに65歳以上の再雇用制度も実施しております。[物件費] 当社は、鉄道事業の特徴である、(ⅰ)多くの設備を有し、安全の確保のために必要なメンテナンスに係るコストの比重が大きい、(ⅱ)収益に連動しない「固定費用」の割合が高いなどの事情から、安全性の確保を大前提として、メンテナンスが容易な車両及び設備の導入、機械化、既存のインフラの改良等により、これらの経費を構造的に削減する取り組みを行っております。 しかしながら、福知山線列車事故の責任とその重大性を重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、当分の間、安全性の向上に必要となる費用の増加が想定されます。 また、対抗輸送機関との競争力向上のため、サービスレベルの向上、販売促進のためのIT化、効率化に寄与する外注化等による費用の増加も想定されます。 さらに、電気料金の値上げによる費用の増加が想定されます。[線路使用料等] 当社は、JR東西線を関西高速鉄道株式会社から借り受けており、2004年度以降の線路使用料の年額については、3年度毎に協議し、金利変動等を勘案して決定することとなっております。また、2021年度以降の線路使用料については減額を行い、当事業年度の費用は105億円となっております。[支払利息] 営業外費用のうち、重要なものとして支払利息があります。当社グループとしては、経営の安定性を保つために長期債務残高や支払利息の水準を注視しております。当連結会計年度の当社グループの支払利息については201億円となり、前連結会計年度に比べ7億円減少しております。 ③ 流動性と資本の源泉ア.キャッシュ・フロー当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析については、「第2[事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (3) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。 イ.資本需要と設備投資 当社グループは、当連結会計年度において総額2,611億円の設備投資を実施し、そのうちモビリティ業では1,699億円、流通業、不動産業、旅行・地域ソリューション業及びその他では、26億円、856億円、7億円及び21億円をそれぞれ実施しました。モビリティ業に関する設備投資においては、安全性の向上を中心とした鉄道インフラの整備や、老朽車両の更新等を目的とした新型車両の購入を行っております。流通業、不動産業、旅行・地域ソリューション業及びその他における当社グループの設備投資においては、新設備の建設や老朽設備の改築等を行っております。 さらに、福知山線列車事故の責任とその重大性を重く受け止め、安全で安心・信頼していただける鉄道を築き上げるために全力で取り組んでいるところであり、安全をより一層高めるために必要な運転保安設備の整備等ハード対策を盛り込むとともに、今後もさまざまな検討を行うこととしております。 ウ.資金調達 資金調達については、既存債務の返済資金や設備投資資金等のうち当社グループのフリー・キャッシュ・フローで賄いきれない分の調達を主としており、その調達手段は社債及び銀行等からの長期借入金等、市場動向や金利動向等を総合的に勘案しながら決定しております。 また、短期的に資金を必要とする場合には、主として短期社債やコミットメントライン等で賄うことを基本としております。 なお、コミットメントラインについては、地震が発生した場合でも、あらかじめ定めた条件によって資金調達が可能な契約内容となっております。 エ.流動性 新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえ、早め厚めの資金調達を行ってきたことに加え、当連結会計年度においては経営状況が改善したことにより日々の収入金も確保していることから、流動性資金は十分な水準を確保しているものと考えております。 一方で、資金効率向上は企業経営にとって極めて重要と認識しており、その一環として、2002年10月からキャッシュ・マネジメント・サービス(CMS)を導入し、グループ内資金の有効活用を図っております。 |
※本記事は「西日本旅客鉄道株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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