会社名 | 東急株式会社 |
業種 | 陸運業 |
従業員数 | 連24054名 単1537名 |
従業員平均年齢 | 43歳 |
従業員平均勤続年数 | 13年 |
平均年収 | 8831436円 |
1株当たりの純資産 | 1441円 |
1株当たりの純利益(連結) | 134.81円 |
決算時期 | 年3 |
配当金 | 24円 |
配当性向 | 35.5% |
株価収益率(PER) | 12.5倍 |
自己資本利益率(ROE)(連結) | 9.8% |
営業活動によるCF | 1551億円 |
投資活動によるCF | ▲1140億円 |
財務活動によるCF | ▲252億円 |
研究開発費※1 | 29000000円 |
設備投資額※1 | 74.16億円 |
販売費および一般管理費※1 | 4276.14億円 |
株主資本比率※2 | 24.7% |
有利子負債残高(連結)※3 | 12117.23億円 |
経営方針
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。(1)グループ理念当社グループは、「美しい時代へ―東急グループ」をグループスローガンとして掲げるとともに、「グループを共につくり支える志を持ち、共有する理念」として、以下のとおり「グループ理念」を定めております。(グループ理念)「存在理念」:美しい生活環境を創造し、調和ある社会と、一人ひとりの幸せを追求する。「経営理念」:自立と共創により、総合力を高め、信頼され愛されるブランドを確立する。〇市場の期待に応え、新たな期待を創造する。〇自然環境との融和をめざした経営を行う。〇世界を視野に入れ、経営を革新する。〇個性を尊重し、人を活かす。もって、企業の社会的責任を全うする。「行動理念」:自己の責任を果たし、互いに高めあい、グローバルな意識で自らを革新する。 (2)サステナブル経営の方針当社は、「安全・安心」、「まちづくり」、「生活環境品質」、「ひとづくり」、「脱炭素・循環型社会」、「企業統治・コンプライアンス」をサステナブル重要テーマ(マテリアリティ)として設定しており、これらに向き合い、「未来に向けた美しい生活環境の創造」および「事業を通じた継続的な社会課題解決」に取り組んでいくという“サステナブル経営”を経営の基本姿勢としています。 (3)中期3か年経営計画2024年度を始期とする中期3か年経営計画を策定し推進しております。本計画では、今後起こりうる経営環境変化に能動的に対応すべく、安定的で成長力ある事業ポートフォリオを構築しながら資本効率向上と財務健全性維持の両立を図るとともに、株主資本コストを意識した経営を推進し、持続的な企業価値の向上と事業間連携の深化によるコングロマリットプレミアムの創出を図ります。また本計画の策定にあわせて、『Creative Act.創造力でしなやかに“世界が憧れるまち”を』を、ビジョンワードとして設定しました。従業員ひとりひとりが輝ける会社となり、お客さまへの優れたサービスの提供と明るい未来の創造を目指していきます。本計画の概要は以下の通りです。 (目指すビジネスモデル)交通/不動産を軸とした事業間シナジーと再投資により持続的成長を実現する長期循環型事業 (基本方針)外部環境の変化が継続する中、本計画の3か年を再起動の期間と位置づけ、事業戦略・コーポレート戦略の推進により経営基盤を強化するとともに資本効率等を重視する経営への転換を図り、持続的な企業価値の向上につなげる。 (重点施策)1)既存事業の収益力向上による内部成長の実現(各事業の利益創出力・競争力の強化)・「移動」を通じた社会価値提供と収益性の両立・バリューアップ投資と事業間連携による利益創出力の強化2)持続的成長のための「成長投資継続」(事業領域の拡大)・不動産開発事業を通じたエリア価値の継続的な向上・不動産販売事業拡大とバリューチェーン強化、資産ポートフォリオ戦略・海外事業の継続推進、GX投資3)連結経営/事業推進基盤の強化・人材戦略、デジタル戦略の推進、事業ポートフォリオ管理と経営資源配分の最適化 (経営指標)具体的な数値目標については以下のとおりです。なお、2025年度、2026年度数値については2025年5月公表業績予想を記載しております。 定量指標2024年度実績2025年度予想2026年度計画EPS134.81円139.23円141.00円ROE9.8%9.3%8.7%ROA(総資産事業利益率)3.8%3.7%3.8%東急EBITDA2,141億円2,110億円2,200億円営業利益1,034億円1,000億円1,050億円親会社株主に帰属する当期純利益796億円800億円810億円有利子負債/東急EBITDA倍率6.0倍6.1倍5.9倍 従来は、規模の指標として、「営業利益」、「東急EBITDA」、健全性指標として「有利子負債(※)/東急EBITDA倍率を重視して参りましたが、本計画では資本効率を重視する経営へ深化させ、最も重視する経営指標を、「EPS」、「ROE」、「ROA(総資産事業利益率)」の3つと定めております。また、「EPS」、「ROE」の分子となる「親会社株主に帰属する当期純利益」も、重視する指標に加えております。当社の株主資本コストは、2024年3月時点推計値として、CAPM(資本資産価格モデル)および株式益利回りより算出し、5.1%~6.5%と認識しており、規模拡大のみならず効率性や財務健全性を重視し、株主資本コストを意識した経営を推進してまいります。 〇経営指標(当社独自の指標等)採用に関する補足「ROA(総資産事業利益率)」の分子とする事業利益は、営業利益に、収支が会計ルール上、営業外収益で計上されてしまう海外事業や空港運営事業等の利益も加算した利益を指しております。なお、事業利益の算出方法は、以下のとおりです。事業利益=営業利益+上場会社を除く持分法投資損益+不動産事業等に係る受取配当東急EBITDAは、大規模工事の竣工等による営業利益の変動を補正したうえで、事業スキームの多様化を反映し、当社の稼ぐ力をより正確に表す指標として採用しております。なお、東急EBITDAの算出方法は、以下のとおりです。東急EBITDA=営業利益+減価償却費+固定資産除却費+のれん償却費+受取利息配当+持分法投資損益※ 有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計 (投資計画・株主還元の考え方)投資計画については、鉄道事業投資に1,600億円、バリューアップ投資を含めた既存事業投資として1,300億円、不動産開発投資を始めとした成長投資として2,300億円を見込んでおり、3か年合計で約5,200億円を計画しております。株主還元の考え方については、安定配当の継続と、利益成長に応じた配当金の持続的な増加を目指すことを配当方針としており、本計画期間中の1株あたり年間配当の下限を21円と設定するとともに、中長期では業績や資金状況もふまえつつ、配当性向30%を意識してまいります。また、資本政策に関しても、本計画3か年通算での総還元性向も勘案しつつ、自己株式取得等を機動的かつ積極的に実施する方針としております。 |
経営者による財政状態の説明
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(業績等の概要)(1)業績当期における我が国経済は、原材料価格や工事費の高騰、金利上昇リスクなどの影響により、経済の先行きは不透明な状況で推移したものの、インバウンド需要の盛り上がりもあり、社会経済活動には緩やかな持ち直しの動きがみられました。 当社グループにおいては、『Creative Act.』をビジョンワードとする中期3か年経営計画に基づき、今後起こりうる経営環境変化に能動的に対応すべく、安定的で成長力ある事業ポートフォリオの構築に取り組んでまいりました。当連結会計年度の営業収益は、不動産事業で前年度における大型マンション物件販売の反動減があったものの、ホテル・リゾート事業、生活サービス事業、交通事業において、事業環境の改善による収益増等があったことにより、1兆549億8千1百万円(前年同期比1.7%増)、営業利益は1,034億8千5百万円(同9.0%増)、経常利益は1,077億2千4百万円(同8.5%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、796億7千7百万円(同24.6%増)となりました。セグメントの業績は以下のとおりであり、各セグメントの営業収益は、セグメント間の内部営業収益又は振替高を含んで記載しております。なお、各セグメントの営業利益をセグメント利益としております。なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しています。以下は前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較しています。 (交通事業)東急電鉄㈱では、鉄道事業の最重要事項である安全・安心な鉄道の追求のため、老朽化した設備の適切な維持更新や自然災害対策などに努めております。地域とつながる駅空間と「サステナブルな地下駅」の実現を目指す田園都市線地下区間の駅リニューアル工事において、第1弾の駒沢大学駅が2025年4月に竣工したほか、田奈駅の改修や高架橋のさらなる耐震補強、五反田駅へのホームドアの設置など、計529億円の設備投資を実施いたしました。また、さらなる鉄道ネットワークの改良として、蒲田駅と京急蒲田駅間の0.8kmをつなぐ新空港線の営業構想について、2025年4月に国土交通省より認定を受けました。本路線は、東急線沿線や東京都北西部・埼玉県南西部と羽田空港とのアクセス向上に寄与するとともに、蒲田・京急蒲田地区をはじめとした地域のさらなる発展が期待されます。 観光列車「THE ROYAL EXPRESS(ザ・ロイヤルエクスプレス)」は、2024年11月に初めて富士山を望む静岡エリアを運行いたしました。また、2024年度は北海道、四国・瀬戸内エリアの運行も行い、各地域の観光振興と地域活性化に取り組みました。 このほか、鉄道の環境優位性を活用した環境・社会課題の解決に取り組んでおります。大規模災害時の非常用電源や鉄道電力の効率的な活用を目的として、市が尾変電所への大規模蓄電池の設置工事の推進や、電車がブレーキをかけた際に発生する余剰電力を活用し駅の照明などに再利用する駅舎補助電源装置を南町田グランベリーパーク駅に設置いたしました。今後も省エネによる脱炭素・循環型社会の実現に向けた責務を果たしてまいります。東急電鉄㈱の輸送人員は、定期・定期外ともに前年を上回り、定期で2.9%増加、定期外で3.1%増加し、全体では3.0%の増加となりました。また、運賃収入は輸送人員の増加に伴い、定期で4.4%増収、定期外で3.1%増収し、全体では3.6%の増収となりました。 連結子会社の輸送人員は、伊豆急行㈱で5.7%増加いたしました。 バス業では、東急バス㈱の輸送人員が2.3%増加いたしました。この結果、交通事業全体の営業収益は2,206億1千9百万円(同3.3%増)、営業利益は289億9千3百万円(同9.6%減)となりました。 (東急電鉄㈱の鉄軌道業の営業成績)種別単位第155期第156期2023.4.1~2024.3.312024.4.1~2025.3.31営業日数日366365営業キロ程キロ110.7110.7客車走行キロ千キロ156,173156,282輸送人員定期外千人474,541489,438定期千人577,602594,441計千人1,052,1431,083,879旅客運輸収入定期外百万円89,54892,280定期百万円55,43857,893計百万円144,986150,173運輸雑収百万円14,76713,390収入合計百万円159,753163,563一日平均収入百万円436448乗車効率%42.844.0 (注) 乗車効率の算出方法乗車効率=輸送人員×平均乗車キロ× 100客車走行キロ平均定員 (不動産事業)不動産事業では、前年における大型マンション販売の反動や販売時期の変更により一部影響を受け、営業収益は2,537億6千2百万円(同5.5%減)となったものの、渋谷アクシュの開業やホテル、商業施設の売り上げが好調に推移し、賃料収入が増加したことなどから、営業利益は483億9千8百万円(同2.4%増)となりました。2024年7月、渋谷駅東口エリアに「渋谷アクシュ(SHIBUYA AXSH)」が、オフィス部分が満室にて開業いたしました。本施設は商業施設、オフィスで構成され、1階~4階には新業態や初出店の店舗を含む飲食店のほか、様々な利用シーンを彩るテナントが入居しております。渋谷サクラステージ/渋谷アクシュをはじめとした渋谷再開発として、日経優秀製品・サービス賞2024のトレンド部門で受賞いたしました。 また、当社、L Catterton Real Estate(エル キャタルトン リアル エステート)、㈱東急百貨店の3社が東急百貨店本店跡地で推進する「Shibuya Upper West Project」において、「Bunkamuraザ・ミュージアム」を新施設7階へ拡大移転することを決定いたしました。本プロジェクトは、2029年度に竣工を予定しております。洗練されたリテール、日本初進出のホテルブランド「The House Collective」、都市型賃貸レジデンスを有し、Bunkamuraとの融合を推進し、新たな大型文化複合拠点として誕生いたします。 さらに、2024年6月、当社は、㈱相鉄アーバンクリエイツとともに「THE YOKOHAMA FRONT」の最上階(地上42階)に複合施設「Vlag yokohama(フラグ ヨコハマ)」を開業いたしました。会員制ワーキングラウンジやイベントスペース、カフェバー、プライベートオフィスを備えており、横浜エリアで事業共創を促進し、社会課題解決を目指す拠点として新たなビジネスとクリエイションの場を創出してまいります。 海外では、ベトナム・ビンズン新都市において、NTT都市開発㈱と共同で手掛ける分譲マンション「MIDORI PARK The GLORY」(地上24階・総戸数992戸)が2024年10月に竣工し入居を開始いたしました。使いやすい間取りの住居に加えてベトナムで人気な共用施設を豊富に設け、また商業エリアや緑道を備えるなど、物件内外で快適な居住環境の提供を実現しております。 (生活サービス事業)当社は、生活サービス事業を街の生活基盤として沿線価値の向上に寄与するものと位置づけるとともに、収益力の向上に取り組んでまいりました。同事業は、魅力ある施設づくりに加えて、お客さまの期待を上回る商品やサービスの提供に努めるとともに、交通事業、不動産事業をはじめとする各事業との相乗効果を発揮するため、グループ間連携をさらに促進しております。 リテール事業においては、マーケットの変化に対応するため構造改革を推進しており、2025年4月、当社および連結子会社の商業施設の一体的な運営・企画開発に向けて、東急リテールマネジメント㈱を設立いたしました。各商業施設運営事業子会社が持つ運営ノウハウを集結し、地域の皆さまやお取引先さまと新たな顧客価値創造を目指してまいります。 2024年7月、㈱東急ストアは、JR渋谷駅新南口改札直結の商業施設「渋谷サクラステージ」2階に「東急ストア 渋谷サクラステージ店」を開業いたしました。エリアの特性に合わせた商品を取り揃え、利便性と楽しさを兼ね備えたお買い物体験を提供いたします。ICT・メディア事業においては、当社は、アニメ「ハイキュー?」とのコラボレーション企画として、グループ各社が連携し、ラッピングバスの運行や商業施設・ホテルとの各種施策を実施いたしました。今後も大型コンテンツとの連携により、東急線沿線の魅力向上とにぎわいの創出を図ってまいります。生活サービス事業では、㈱東急百貨店さっぽろ店のリニューアル効果や㈱東急パワーサプライの電力調達原価の低下などにより、営業収益は5,273億7千9百万円(同1.7%増)、営業利益は193億4千4百万円(同47.5%増)となりました。 (ホテル・リゾート事業)ホテル・リゾート事業では、インバウンドや国内旅行需要の高まりに対応した施設・サービスの提供などにより、稼働率は79.8%(同+4.1ポイント)となりました。この結果、営業収益は1,268億8千2百万円(同20.5%増)、営業利益は66億5千万円(同200.5%増)となりました。THE HOTEL HIGASHIYAMA by Kyoto Tokyu Hotel は、2024年7月にグローバルホテルチェーンであるパン パシフィック ホテルズ グループと契約を締結し、2025年1月より「THE HOTEL HIGASHIYAMA KYOTO TOKYU, A Pan Pacific Hotel」としてダブルブランドでの運営を開始いたしました。パン パシフィック ホテルズ グループの会員組織と繋がることで、事業の発展と地域の魅力創出を進めてまいります。また、東急歌舞伎町タワー内にあるBELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel は、世界中のトップレベルのホテルを対象に業界関係者や旅行者の評価により選出される「World Luxury Awards2024」において、ホテル部門で2つ、スパ部門で3つの計5つの賞を受賞いたしました。今後も皆さまに選ばれるホテルブランドを目指してまいります。ゴルフ事業では、会員制ゴルフクラブであるファイブハンドレッドクラブで、耐震・リニューアル工事を実施いたしました。安全性の向上はもちろん、レストランのテラス席の拡充や浴室の改装など、クラブの価値と会員様の満足度向上に努めました。 (2)キャッシュ・フロー当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は583億1千8百万円となり、前連結会計年度に比べて167億6千1百万円増加いたしました。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,073億3千8百万円に減価償却費865億3千3百万円、法人税等の支払額359億7千8百万円などを調整し、1,551億4百万円の収入となりました。前連結会計年度に比べ、税金等調整前当期純利益の増益等により、97億7千万円の収入増となりました。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出1,267億4千7百万円等があり、1,140億1千2百万円の支出となりました。前連結会計年度に比べ、固定資産の取得による支出が増加したこと等により、130億1千2百万円の支出増となりました。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金の純増減等により、252億4千8百万円の支出となりました。 (3)財政状態当連結会計年度末の総資産は、分譲土地建物の増加等により、2兆6,989億8千1百万円(前期末比469億7百万円増)となりました。負債は、有利子負債(※)が、1兆2,917億2千3百万円(同361億9千6百万円増)となり、1兆8,266億8千5百万円(同54億3千7百万円増)となりました。純資産は、自己株式の取得があったものの、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等により、8,722億9千5百万円(同414億7千万円増)となりました。 ※ 有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計 (生産、受注及び販売の状況)当社グループの各事業は、受注生産形態をとらない事業が多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため生産、受注及び販売の状況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (業績等の概要) (1)業績」における各セグメント業績に関連付けて示しております。(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)文中における将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。(1)経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容2024年度は、安定的で成長力ある事業ポートフォリオの構築を掲げた、中期3か年経営計画の初年度でありました。不動産事業におけるマンション販売の減少等があった一方で、ホテル・リゾート事業、生活サービス事業を中心に好調に推移し、構造改革や、内部成長施策、付加価値創造の効果もあり、営業収益は、連結全体では期首に掲げた目標(以下、期首に掲げた目標値との比較とする)並みの1兆549億円、営業利益は154億円増益の1,034億円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、196億円増益の796億円となりました。営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益は、過去最高益水準となりました。その結果、一株あたり当期純利益、ROE、ROA(総資産事業利益率)の指標も中期経営計画に掲げた目標を達成することができました。加えて、有利子負債/東急EBITDA倍率は6倍となり、財務健全性と資本効率の両立を図りました。施策面では、今後起こりうる経営環境変化に能動的に対応すべく、安定的で成長力ある事業ポートフォリオを意識しながら、株主資本を意識した経営を推進し、持続的な企業価値向上と事業間連携の深化によるコングロマリットプレミアムの創出を図っております。交通事業では、事業の継続性や将来にわたる競争力確保を目的に、設備投資や、採用活動、従業員待遇の強化等を先行して実施したことにより費用増となりました。なお、2025年度もインフレ率を上回る2.4%の輸送人員増加を見込んでいるほか、2025年4月に国土交通省より認定を受けました新空港線の営業構想によって、広域的な鉄道ネットワークを構築し、沿線エリアの更なる価値向上に取り込んでおります。今後の利益水準については、事業効率化の取組等の効果も合わせて、現状の250億円程度を維持しながら、競争力を強化しさらなる需要の取り込みを行いたいと考えております。不動産事業では、オフィス賃料はコロナ前と比較して約13%の増となっており、都心5区平均を大きく上回る伸びとなっているほか、商業及びホテルの賃料についても、歩合賃料の増加が寄与し、賃料全体が増加しております。これは単に需要の逼迫によるものだけでなく、街の魅力を引き上げ、人々を誘致する各種施設の建設、機能誘致、ソフト施策の実行に、当社が積極的に取り組んでいる成果であると考えております。特に渋谷エリアでは、Shibuya Upper West Projectや、宮益坂地区第一種市街地再開発、渋谷スクランブルスクエア第Ⅱ期等の大型プロジェクトに取り組んでおります。他社が手がけている都内の大型再開発案件では、大幅な遅延や再開発を見送るケースも出てきているが、この渋谷の3プロジェクトについては、公表スケジュールに向け着実に推進して参ります。他社の開発案件が遅れる分マーケットの需給は逼迫することが想定されるため、新規開業物件については優位性を発揮できると考えております。生活サービス事業においては、2025年4月に東急リテールマネジメント㈱を設立し、各商業施設運営事業子会社が持つ運営ノウハウを集結し、自社売場、販売委託、賃貸、フランチャイズを組み合わせたクワッド運営に取り組み、当社独自の競争力のある売り場づくりを目指し、地域の皆さまやお取引先さまと新たな顧客価値創造を目指します。ホテル・リゾート事業においては、㈱東急ホテルズの構造改革をはじめ、重点施策を確実に進捗させていることに加え、セルリアンタワー東急ホテルの改装に取り組むなど、高品質なサービス提供とインバウンド需要の取り込みにより、ホテルの売上から経費等を差し引いた収益であるGOPが過去最高水準となりました。2025年度の連結業績予想につきましては、交通事業やホテル・リゾート事業を中心に移動需要の増加やインバウンド需要の継続等、引き続き良好な環境が継続することを見込んでおります。不動産販売業におけるマンション引き渡し個数の減少や、従業員の待遇改善、ベースアップ等による賃上げに伴う人件費の増加に加えて、経営努力による利益創出も織り込み、営業収益は前年度から170億円増収の1兆720億円、営業利益は前年度から34億円減益の1,000億円を見込んでおります。なお、不動産販売業を除く営業利益は、896億円と32億円増益となり、内部成長を目指します。また、経常利益は前年度から16億円減益の1,061億円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年度から3億円増益の800億円となる見通しであります。2026年度の計画値について昨年11月に公表した数値からアップデートを行ったほか、新たに2027年度の目標を公表しました。2026年度は2024年11月に公表した数値より、営業収益は80億円減収の1兆1,050億円、営業利益は50億円増益の1,050億円、親会社株主に帰属する当期純利益は150億円増益の810億円とし、2027年度の業績目標は、営業収益1兆1,450億円、営業利益1,100億円、親会社株主に帰属する当期純利益は820億円といたしました。今後も着実に利益を伸ばし、一株あたり純利益の成長を実現させていく考えです。 (2)資本の財源及び資金の流動性2024年度を始期とする中期3か年経営計画では、今後起こりうる経営環境変化に能動的に対応すべく、安定的で成長力ある事業ポートフォリオを構築しながら資本効率向上と財務健全性維持の両立を図ってまいります。 経営指標については、規模拡大のみならず、効率性や財務健全性を重視し、株主資本コストを強く意識した経営を推進いたします。 2026年度にはROE8.7%、中長期ではROA(総資産事業利益率)3.8%を目標として掲げております。 本中期経営計画における3か年合計のキャッシュ・フロー計画は、営業キャッシュ・フロー5,000億円、入替等の資産売却等700億円等、合計6,400億円のキャッシュイン、投資キャッシュ・フロー5,200億円、株主還元は600億円増加の1,000億円等、合計6,400億円のキャッシュアウトを計画しております。投資キャッシュ・フローの内訳は、鉄道事業投資に1,600億円、バリューアップ投資を含めた既存事業投資として1,300億円、不動産開発投資を始めとした成長投資として2,300億円を見込んでおります。当社における資金調達については、国内外における金利上昇など、今後の金融市場の動向に留意が必要な局面の中で、中長期的な安定調達手段の確保とともに、固定比率上昇と調達年限長期化の推進による調達金利の上昇抑制、市場性調達の活用による調達コストの極小化に引き続き努めてまいります。2023年6月には、戦略的な資金調達の手段として、ゼロクーポンで調達コストを抑えることができるユーロ円建取得条項付転換社債型新株予約権付社債を総額600億円発行するとともに、約300億円、16,524,300千株の自己株式取得を実施しております。これにより、資本効率の改善と、市場環境の変化に耐えうる堅固な財務基盤の維持・向上の両立を図っております。また、当社の“サステナブル経営”を推進する資金調達手段として、「サステナブルファイナンス・フレームワーク」を策定しており、2023年度も本枠組みを活用したサステナビリティ・リンク・ローンによる資金調達を実施いたしました。2022年3月公表の「環境ビジョン2030」で掲げた、2050年CO2排出量実質ゼロに向けたCO2排出量削減目標をKPI(キー・パフォーマンス・インディケーター)及びSPT(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)として設定しており、「次の100年」に向け、社会とともに持続的に成長することを目指しております。運転資金の調達については、短期社債(コマーシャル・ペーパー)及びキャッシュマネジメントシステムでの調達枠を設定しており、積極的に活用することで調達コストの削減を図るとともに、危機対応型のコミットメントラインを設定し、不測の事態へも対応可能な状況にあります。株主還元については、高水準の投資を行い、着実に利益を積み増し、それを原資に配当水準を上げてまいりたいと考えており、2024年度は年間24円の配当といたします。2025年度につきましては4円増配の年間28円の配当に加えて100億円、650万株を上限とする自己株式取得についても決議しております。また、中長期的には、業績や資金状況もふまえつつ、配当性向30%を意識してまいります。 ※1 有利子負債:借入金、社債、コマーシャル・ペーパーの合計※2 設備投資・投融資の金額については、投資計画の進捗説明を主眼とし一部組替を行っており、「キャッシュ・フロー計算書」とは数値が異なります (3)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、決算日における資産・負債及び報告期間における収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを行わなければなりません。これらの見積りについては、過去の実績、現在の状況に応じ合理的に判断を行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社は、創業以来、事業を通じて社会課題の解決に取り組み、時代の変化に適合しながら、国や都市・地域の発展とともに着実に成長してまいりました。今後も、社会環境の変化に対応しながらサステナブル経営を行うべく、2024年度を始期とする中期3か年経営計画を推進しております。当社および連結子会社では、交通、不動産、生活サービス、ホテル・リゾートの各セグメントにおいて多様な事業展開を行っており、多額の固定資産を保有するとともに、設備投資・投融資等、継続的な投資を実施しております。したがって、当社および連結子会社においては、固定資産を中心とした資産ポートフォリオの管理、とりわけ減損損失の判定が、重要な会計上の見積りに該当いたします。減損損失の判定にあたっては、事業や物件ごとに資産のグルーピングを行い、収益性や市場性、用途変更や除売却等の意思決定の有無等により兆候判定を行っております。また減損損失の認識・測定においては、将来キャッシュ・フローを直近の実績や事業計画等の意思決定に基づいて合理的に見積りを行うほか、不動産等の時価のある資産については必要に応じ鑑定等の外部評価に基づく適正な価額を用い、投資額や帳簿価額の回収可否について判定を行っております。なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。 |
※本記事は「東急株式会社」の令和7年年3期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
連結財務指標と単体財務指標の違いについて
連結財務指標とは
連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。
単体財務指標とは
単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。
本記事での扱い
本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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