東宝株式会社の基本情報

会社名東宝株式会社
業種情報・通信業
従業員数連3873名 単447名
従業員平均年齢38.7歳
従業員平均勤続年数11年
平均年収10847191円
1株当たりの純資産2821.41円
1株当たりの純利益(連結)254.75円
決算時期2月
配当金85円
配当性向37.3%
株価収益率(PER)27.8倍
自己資本利益率(ROE)(連結)9.3%
営業活動によるCF516億円
投資活動によるCF▲184億円
財務活動によるCF▲392億円
研究開発費※1-円
設備投資額※145000000円
販売費および一般管理費※122033円
株主資本比率※264.5%
有利子負債残高(連結)※315.97億円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1)経営の基本方針当社グループは、小林一三により設立されて以来、映画・演劇を中心に、幅広い層のお客様に夢や感動、喜びをもたらす数多くのエンタテインメント作品をお届けしてまいりました。その経営理念は、「健全な娯楽を広く大衆に提供すること」を企業の存在意義(パーパス)とし、「吾々の享くる幸福はお客様の賜ものなり」を大切な価値観(バリュー)とし、「朗らかに、清く正しく美しく」を行動の理念(モットー)としております。これらの理念に基づき、公明正大な事業活動に取り組むとともに、常にお客様の目線に立ち、時代に即した新鮮な企画を提案し、世の中に最高のエンタテインメントを提供し続ける企業集団でありたいと考えております。 (2)「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」について当社グループは2022年4月に公表した創立100周年に向けた「長期ビジョン 2032」に基づき、2025年4月に「中期経営計画 2028」を新たに策定いたしました。本経営戦略に基づくさまざまな施策を展開して、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて取り組んでおります。その体系と骨子は、以下の通りです。 1.長期ビジョン 2032(1) コーポレート・スローガン (2) 3つの重要ポイント① 成長に向けた「投資」を促進  ②「人材」の確保・育成に注力  ③ アニメ事業を「第4の柱」に (3) 成長戦略の4つのキーワードと飛躍に向けた成長ストーリー① 企画&IP  ② アニメーション  ③ デジタル  ④ 海外 「企画&IP」をあらゆる価値の源泉として、その中でも「アニメーション」を成長ドライバーにし、「デジタル」の力で時間・空間・言語を超え、「海外」での飛躍的成長を実現すべく、果敢に挑戦していく。 (4) 目指す姿(2032年の財務イメージ)営業利益 750億円~1000億円ROE 恒常的に10%程度以上 (5) 事業ポートフォリオの方向性既存事業の3本柱である映画事業、演劇事業、不動産事業に加え、「アニメ事業」を第4の柱とする 2.「中期経営計画 2028」 (1)「中期経営計画 2028」の位置づけ  (2)指針“人”が、情熱を傾けて“企画”をし、エンタテインメントを創り、“世界”に届ける。これが、どんなに外部環境が変化したとしても、当社グループの変わることのないシンプルで本質的な価値創造ストーリーです。加えて、より持続的に成長していくためには、エンタテインメントを単に広く届けるだけではなく、世界中のお客様の好みやニーズを深く知り、お客様ともっと積極的に“つながる”ことでファンになっていただくことが大切になると考えています。 “人”、“企画”、“世界”、そして、お客様ともっと“つながる” これを「中期経営計画 2028」の指針として当社グループは世界中のファンから愛されるエンタテインメント企業を目指して邁進していきます。      (3)重点ポイントと数値目標「中期経営計画 2028」では、「人材」「コンテンツ・IP」「デジタル」「海外」を重点領域とし、以下の通り重点ポイントと数値目標を定めました。これらの目標に向かって、グループ一丸となって各事業戦略を積極的に推進してまいります。 (4)キャピタルアロケーション (5) 人材と組織/サステナビリティ① 人材と組織の戦略人材と組織のビジョン心が動き、心を動かす仕事を通じて、幸福を得られる会社へ 人材と組織のキーワード・“少数精鋭”から“精鋭多数へ”・成長・自律・安心 人材と組織の方針1.成長を推進し、変化に対応する多様な人材の獲得の強化2.企画力あふれる東宝らしい精鋭人材の育成の強化3.社員の強みを活かし、成長を支援する人事施策の推進4.自らを律し、裁量をもって、安心して活躍できる組織・環境の追求 ② サステナビリティ経営の推進東宝グループは次の3年間においても、サステナビリティの基本方針に則り、各事業戦略や人材と組織の戦略を通じて、4つの重要課題を軸として、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでいきます。 基本方針東宝グループは、エンタテインメントの提供を通じて誰もが幸福で心豊かになれる社会の実現に向けて“朗らかに、清く正しく美しく”貢献します 4つの重要課題朗らかに ① 誰もが健康でいきいきと活躍できる職場環境をつくります清く   ② 地球環境に優しいクリーンな事業活動を推進します正しく  ③ 人権を尊重し、健全で公正な企業文化を形成します美しく  ④ 豊かな映画・演劇文化を創造し、次世代への継承に努めます (3)経営環境についての認識当社グループを巡る経営環境は、雇用環境の改善や賃金の上昇など日本経済には回復の兆しが見られるものの、米国の貿易政策をはじめとして世界的な経済情勢は不透明さを増しており、国内においても慢性的な人手不足や物価上昇などによる消費マインドの下振れも懸念される状況にあります。当社グループの主要な事業が属する映画、演劇、ライブエンタテインメント業界は、新型コロナウイルス感染症の影響から社会活動が正常化して以降、本格的な市場回復に向かっている状況にあります。国内の映画市場においては、2024年の映画人口は1億4,444万人(前年比92.9%)、興行収入は2,069億円(前年比93.5%)と前年比で微減となりましたが、コロナ前の平均的な興行収入のおよそ9割程度まで市場は回復しております。また、演劇及びライブエンタテインメント市場はさらに力強い回復を見せ、2023年には既にコロナ禍前を上回る市場規模に達し、その後も着実に伸長していると見られます。また、コロナ禍を経てコンテンツのデジタル化が進み、動画配信が世界的に急速な普及を見せ、映像の視聴形態、コンテンツの楽しみ方が多様化するとともに、グローバル化が進んでおります。特に、当社グループが「第4の柱」の成長ドライバーと位置付けているアニメーションにおいては、動画配信を通じて日本アニメの人気が世界中へ広がっております。日本のアニメ関連市場は2023年に初めて3兆円を超え、過去10年で市場規模が倍増し、国内市場1.6兆円に対し海外市場1.7兆円と初めて海外が国内を逆転するなど、とりわけ海外市場の伸びが著しい状況です。一方、当社が収益基盤の一つとして重視している不動産事業は、地価の上昇、資材価格や人員不足による建設費の高騰、水道光熱費等の各種経費の増加など、非常に厳しい経営環境に置かれております。それらの影響は不動産賃貸や再開発事業を中心とした当社の事業形態にも確実に及んでおり、今後の当社グループの不動産事業の方向性を定めるうえで無視できない状況となっております。そのような情勢下で、当社グループの2025年2月期の業績は、映画、アニメ、演劇、不動産の「事業の4本柱」が共に堅調に推移しました。その中でも映画事業が特に好調に推移しました。当社のオリジナルIPであるゴジラの70周年記念作品「ゴジラ-1.0」が国内のみならず米国でも大ヒットし、国内・海外での配信権販売、商品化ライセンス、マーチャンダイジング、パッケージ販売等により大きく業績に貢献しました。また、自社製作作品の「変な家」が興収50億円を超えたことも製作者利益に大きく貢献しました。映画事業の中に属するアニメ事業においては、TOHO animation作品の劇場用映画、TVアニメシリーズが非常に好調に稼働しました。興行収入115億円を超え大ヒットとなった「劇場版ハイキュー?ゴミ捨て場の決戦」をはじめ、「僕のヒーローアカデミア」「呪術廻戦」「葬送のフリーレン」「薬屋のひとりごと」「怪獣8号」等の人気タイトルを国内・海外に向けて動画配信、商品化ライセンス等で積極的に展開し、会社全体の業績を大きく牽引しました。演劇事業では、舞台「千と千尋の神隠し」をイギリス・ロンドンで日本人キャストによる日本語でのロングラン公演を成功させるという画期的な成果を実現しました。一方で、2025年2月末には当社の基幹劇場である帝国劇場が約60年の歴史に幕を下ろすことになりましたが、そのクロージング・ラインナップは大盛況で終了することができました。不動産事業では、厳しい事業環境の中、所有する不動産の空室率抑制、賃料アップに尽力し、堅調な成績を収めることができました。また、渋谷アクシュのグランドオープンなど、再開発事業も堅実に進めました。これらにより連結営業利益は646億円となり、「中期経営計画 2025」で目標としたそれまでの最高益(528億円)を大きく更新し、前期に更新した最高益(592億円)をさらに上回る好成績を達成することができました。このような成果は、当社グループが掲げている「長期ビジョン 2032」における成長戦略のキーワードである①企画&IP、②アニメーション、③デジタル、④海外の4つが、今後も積極果敢にチャレンジすべきキーワードであることを証明しており、これからも成長投資と変革を継続していくことで、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に資することができるとの認識を新たにしています。一方で、冒頭にも記した通り、世界的に不確実性を増す経済情勢や、深刻さを増す人手不足など、経営環境は依然として先行き不透明な状況が続いており、それらの影響について十分に注視する必要がありますが、これらの不透明な外部環境が当社業績に与える影響は、今のところ軽微であるとの認識です。以下、セグメント別に現在の経営環境等に対する認識を記します。 [映画事業]映画営業事業においては、2024年(自然暦)に、当社配給作品の年間累計興行収入が初めて900億円を超え、国内シェアで45%に迫る歴代1位の成績となりました。年間30本程度の強力な興行力を持つ実写、アニメ作品のラインナップに加え、音楽・舞台・スポーツなどのコンテンツを配給するTOHO NEXTレーベルも立ち上げ、豊富かつ多彩なコンテンツを継続的に提供できる配給会社として、競合他社との間で圧倒的な競争優位性を維持していると考えています。また、子会社の東宝東和㈱配給の「怪盗グルーのミニオン超変身」が大ヒットするなど、当社グループとして、東宝㈱で話題の邦画を、東宝東和㈱などで興行力のある洋画コンテンツを配給することで、国内で継続的に話題の作品を提供できる体制が確立できていると考えています。一方で、公開される作品の興行成績に大きな差が見られるようになっており、いわゆる作品の「優勝劣敗」が拡大していると認識しています。そのため、時代の感性をとらえたコンテンツの企画力はもちろん、SNS等の有効活用などを含めたマーケティング力の強化も大きな課題となっています。映画興行事業においては、自然暦における2024年の全国興行収入は2,069億円(前年比93.5%)と微減となりましたが、その内訳を見ると、アニメ作品が好調な邦画は1,558億円で過去最高を記録した一方、ハリウッドスタジオのストライキの影響が残る洋画は魅力ある新作に乏しく、511億円と落ち込みが顕著になりました。したがって映画興行界としては、ハリウッドを中心とした「洋画の復活」が待たれるところです。なお、2025年以降はストライキの影響から回復し、洋画の新作、大作の公開が予定されております。そのような状況下にあって当社グループのTOHOシネマズ㈱は、全国の主要都市の好立地にシネマコンプレックスを展開し、2024年においてスクリーンシェアでは約19%、興行収入のシェアは約27%と業界トップを維持しており、競合他社との競争優位性に揺るぎはありません。今後もお客様に「選ばれるTOHOシネマズ」であるべく、バラエティ豊かな強力作品を用意すること、積極的な設備投資で最高の鑑賞環境を提供すること、コンセッション(売店)やストア等の非興行収入を拡大・強化すること、適切な映画鑑賞料金施策を実施することなどが重要な課題です。一方で、建設費の高騰や出店適地の減少等により、新規出店のペースは鈍くならざるを得なくなっており、出店による収入やシェア拡大は以前より難しい状況になっております。また、エネルギー価格や人件費コストなどの上昇傾向が映画館の収支構造に与える影響や、動画配信の普及が映画館で映画を観る習慣に与える影響についても、引き続き懸念すべき課題です。また、長期的には国内の人口減も市場の縮小につながる大きな懸念材料です。映像事業においては、「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」において「第4の柱」、成長ドライバーとして位置付けたアニメ事業が急速な成長を遂げております。TOHO animationには、「僕のヒーローアカデミア」「ハイキュー?」「呪術廻戦」「SPY×FAMILY」「葬送のフリーレン」「薬屋のひとりごと」「Dr.STONE」といった強力タイトルに加え、新たな作品として「怪獣8号」「狼と香辛料」「天穂のサクナヒメ」「ぷにるはかわいいスライム」などがラインナップに加わりました。これらのタイトルの国内外の動画配信、商品化ライセンス、マーチャンダイジング、パッケージ販売などの幅広いビジネス展開や、ゲーム事業における「呪術廻戦 ファントムパレード」や「ゴジラ バトルライン」などが当社グループ全体の業績を大きく牽引しています。アニメ事業については市場そのものが着実に伸長しているという手ごたえが感じられ、国内外の多くの熱心なファンに支えられ、今後も中長期的に成長を続けるポテンシャルがあると認識しています。当社グループは、これら市場の成長を確実に取り込み、アニメ事業の持続的成長を目指してまいります。一方で、強力な原作のアニメ化権の獲得については競争が激化しております。それらの競争を勝ち抜くためには、良質なアニメ・コンテンツをさらに数多く企画・製作できる人員と体制の整備、海外の地域ごとにきめ細かいライセンス販売ができる拠点・機能の整備、ゲーム事業の開発・運営等のノウハウの習得などが課題になるものと認識しています。引き続き、当社グループの成長ドライバーとして経営資源を集中し、多面的・重層的・長期的なビジネス展開に注力してまいります。また、その他子会社においても、TOHOスタジオ㈱では、映画・映像制作及びスタジオ事業の一体化を図り、外資系動画配信プラットフォームのスタジオ賃貸を誘致するなど、順調に稼働しました。また、㈱東宝映像美術や東宝舞台㈱では、コロナ禍において中断していたテーマパークにおける展示物の製作業務や音楽ライブイベントが復活したことで、美術製作・舞台製作における受注の回復傾向が顕著に見られます。 [演劇事業]演劇事業においては、建て替えによる休館のため最後の年度となった帝国劇場において「レ・ミゼラブル」「モーツァルト!」「Endless SHOCK」や、掉尾を飾る記念コンサート「THE BEST New HISTORY COMING」等のクロージング・ラインナップが連日満席の賑わいとなり、配信やライブビューイングと合わせて多くのお客様が現帝国劇場との別れを惜しんでくださいました。 さらに「千と千尋の神隠し」は2024年4月から約4か月にわたるロンドンでのロングラン公演が大成功を収め、イギリスで最も権威のある演劇賞ローレンス・オリヴィエ賞4部門ノミネートという快挙を果たし、日本の演劇コンテンツの海外展開の可能性を感じた1年となりました。一方で、2025年3月以降の帝国劇場休館中においては、代替劇場での公演回数の確保に注力し、一定程度の興行収入を維持・確保する必要があります。また、コロナ禍において積極的に活用し始めた演劇コンテンツの動画配信や公演関連グッズの販売等、興行収入以外の収益源の確保や、海外への作品ライセンス展開等によって収益機会の拡大に向けた取り組みが課題となります。いずれにせよ帝劇休館中において、これまでの長い歴史で培ってきた東宝演劇、東宝ミュージカルのブランドを維持し、さらに高めていくことによって、新・帝国劇場へとつなげていくことが、演劇事業に課せられた大きな課題となります。また、東宝芸能㈱では、所属俳優がCM・TV・映画出演などで順調に稼働しております。 [不動産事業]不動産賃貸事業においては、足元の不動産市況は、東京都心地区のオフィス空室率が4%以下に低下するなどオフィスの移転・拡張需要は底堅く、成約賃料についても緩やかな上昇基調が見られます。好立地が多い当社グループ保有物件の空室率は1%未満の低い水準で推移しており、賃料も比較的底堅い状況にあります。しかしながら、建築コストの高騰、エネルギー価格や租税公課などの上昇傾向、さらには世界的な関税戦争、金融政策の変更等に伴う金利上昇が不動産賃貸事業に与える影響について、注視していく必要があります。道路事業においては、老朽化による道路関連のインフラ整備をはじめとする公共投資の受注は引き続き堅調であり、当面は順調に推移すると思われます。スバル興業㈱と同社の連結子会社が積極的な営業活動により新規受注や既存工事の追加受注による業績拡大に努めてまいります。不動産保守・管理事業においては、連結子会社である東宝ビル管理㈱及び東宝ファシリティーズ㈱が厳しい競争環境の中でも受注を回復させるとともに、価格転嫁についても積極的な営業展開に努めております。なお、道路事業、不動産保守・管理事業の両事業においては、深刻な人手不足やインフレによる賃金上昇の影響について、注視していく必要があります。 [その他事業]その他事業においては、「東宝調布スポーツパーク」でゴルフ練習場、テニスクラブ等を運営する東宝共榮企業㈱が、コロナ禍における屋外スポーツの一時的な特需は過ぎたものの、利用者数は堅調に推移しています。また、TOHOリテール㈱は、演劇事業のグッズ販売等を積極的に展開することで業績を回復しております。 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標当社グループは、経営目標の達成状況を判断するための指標として、営業利益とROEを特に重視しております。本業の稼ぐ力(収益性)や成長性を示す営業利益と、経営全体の資本効率性を示すROEの両面から、バランスの良い数値目標の設定を心がけております。営業利益については、「長期ビジョン 2032」において、2032年には営業利益750億~1,000億円の企業集団への成長を目指すとしております。また、2025年4月に策定した「中期経営計画 2028」においては、そのための橋渡しとして、2028年2月期までに営業利益700億円の達成を目指すとしております。ROEについては、長期ビジョンの策定時には2032年に8~10%と設定していましたが、「中期経営計画 2028」の期間においては9%以上とし、2032年までには恒常的に10%以上と目標値を引き上げております。なお、株主還元に関する指標としては、「中期経営計画 2028」において「年間85円の配当を下限に配当性向35%以上かつ機動的な自己株式取得の実施」としております。また、「中期経営計画 2028」においては、2028年2月期までの3カ年を「成長投資と変革を継続する期間」と位置付け、キャピタルアロケーションにおいて、コンテンツ・IP関連のM&Aやシネコン出店などの「成長投資」として3カ年で1,200億円程度を見込むとしております。 (5)当社グループが優先的に対処すべき課題当社グループは、2022年4月に公表した長期ビジョン「TOHO VISION 2032 東宝グループ 経営戦略」に基づき、創立100周年を迎える2032年に向けたコーポレート・スローガン「Entertainment for YOU 世界中のお客様に感動を」を掲げ、持続的な成長と中長期的な企業価値向上に向けて取り組んでいます。長期ビジョンにおいては、①成長に向けた「投資」を推進、②「人材」の確保・育成に注力、③アニメ事業を「第4の柱に」の3つを重要ポイントとし、成長戦略として「企画&IP」「アニメーション」「デジタル」「海外」の4つのキーワードを掲げ、これらに沿った事業展開、成長投資、資本政策を着実に実行してきた結果、「中期経営計画 2025」(FY2023-2025)の3カ年においては、数値目標として定めた①営業利益の最高益(528億円)の更新、②ROE8%以上を達成することができました。そして、本年4月には「中期経営計画 2028」を策定・公表し、新たな3カ年計画(FY2026-2028)をスタートさせました。「中期経営計画 2028」の位置づけとしては、長期ビジョンで掲げた「企画&IPをあらゆる価値の源泉として、その中でもアニメーションを成長ドライバーにし、デジタルの力で時間・空間・言語を超え、海外での飛躍的成長を実現する」という成長スト―リーを踏襲しつつ、「成長投資と変革を継続する期間」とし、成長戦略に沿った投資や組織の変革をさらに加速させ、次なる「飛躍的成長を実現し、未来へとつなぐ期間」への着実な橋渡しとなることを目指します。 <「中期経営計画 2028」の指針>“人”が情熱を傾けて“企画”をし、エンタテインメントを創り、“世界”に届ける。これが、どんなに外部環境が変化したとしても、当社グループの変わることのないシンプルで本質的な価値創造ストーリーです。加えて、当社グループがより持続的に成長していくためには、エンタテインメントを単に広く届けるだけではなく、世界中のお客様の好みやニーズを深く知り、お客様ともっと積極的に“つながる”ことで、ファンになっていただくことが大切になると考えています。“人”、“企画”、“世界”、そして、お客様ともっと“つながる”これを「中期経営計画 2028」の指針として、これに基づく重点ポイントや各事業戦略、数値目標、人材と組織の戦略等を策定いたしました。その概要は以下の通りです。 <「中期経営計画 2028」の重点ポイント>「中期経営計画 2028」では、「人材」「コンテンツ・IP」「デジタル」「海外」を重点領域とし、以下の通り重点ポイントを定めました。これらの目標に向かって、グループ一丸となって各事業戦略を積極的に推進してまいります ① 人材? 少数精鋭から精鋭多数への転換――成長の源泉である“人”を3年間で約200名採用、人への投資とエンゲージメント向上に注力② コンテンツ・IP? 映画・アニメ・演劇・ゲーム等のコンテンツの企画・製作、IP創出に対し、3年間で約700億円を投下? 約200タイトルの豊富で良質なエンタテインメントを提供、世界中のお客様に感動を届ける? 2032年までにTOHO animationの人員を倍増、IP・アニメ事業の営業利益200%以上(2025年2月期比)を目指す? ゴジラIPの開発・展開に3年間で約150億円を投下し、IPビジネスを本格的に強化する? コンテンツ・IP領域のM&Aやシネコン出店等の成長投資として3年間で1,200億円程度を設定③ デジタル? 東宝グループの顧客データ基盤を整備する TOHO-ONE プロジェクトに対して約50億円を投資   ――2026年春、お客様と一つにつながる“新しい会員サービス”ローンチ予定④ 海外? 海外拠点の拡充を加速するとともに、新たにグループインした企業とのシナジーを創出? 2032年に向けて海外売上高比率を現状の10%程度から30%まで引き上げる <「中期経営計画 2028」の数値目標>① 営業利益 700億円以上(FY2028までに達成)② 株主還元 年間85円の配当を下限に配当性向35%以上かつ機動的な自己株式取得の実施③ ROE 9%以上 <事業の4本柱の戦略>当社グループは、2026年2月期より会計上の報告セグメントを「事業の4本柱」に沿って「映画事業」「IP・アニメ事業」(新設)「演劇事業」「不動産事業」に変更いたします。「中期経営計画 2028」における各セグメントの事業戦略の概要は、次の通りです。映画事業においては、自社企画作品の製作推進、映画以外のコンテンツ配給の拡充により収益力をさらに高め、収益基盤をより強固にしていきます。また、海外グループ会社との連携により、世界を見据えた日本実写コンテンツの企画開発を推進します。IP・アニメ事業においては、良質なコンテンツ・IPを数多く製作し世界へ展開するために、人員増による体制の拡充と制作スタジオ機能の強化を図ります。また、成長領域である海外とゲームの収益をさらに伸長させ、同事業の営業利益を2032年までに200%以上(2025年2月期対比)にすることを目指します。演劇事業においては、外部劇場での主催公演、新会員サービス、多様なチケット価格や販売形態の多角化により、帝劇休館中の興行収入の下支えを図ります。また、既存人気作品の価値最大化、オリジナル作品開発、海外展開により、東宝演劇のブランド力を高め、新・帝国劇場へとつなげていきます。不動産事業においては、中長期的な収益基盤の維持を図りつつ、資産効率の向上を目指します。既存物件の賃料アップに注力し物件価値の向上を図るとともに、「帝劇ビル」の再開発事業を着実に推進してまいります。 <人材と組織の戦略/サステナビリティ経営の推進>以上のような成長戦略を推進していくためには、お客様に感動を届ける当社グループの社員一人ひとりが、朗らかにいきいきと働けていること、つまり“心が動く”状態であることが、なによりも大切だと考えます。そこで「中期経営計画 2028」においては「心が動き、心を動かす仕事を通じて幸福を得られる会社へ」という新たな「人材と組織のビジョン」を策定しました。また、「東宝グループは、エンタテインメントの提供を通じて誰もが幸福で心豊かになれる社会の実現に向けて“朗らかに、清く正しく美しく”貢献します」という「サステナビリティの基本方針」に基づき、人的資本、気候変動、人権、文化継承の4つの重要課題を軸として、持続可能な社会の実現に向け、引き続き取り組んでまいります。 世界中のファンから愛されるエンタテインメント企業になる。そのような未来を目指して、当社グループはさらなる成長と企業価値向上に向けて、果敢に挑戦してまいります。
経営者による財政状態の説明
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。 ① 財政状態及び経営成績の状況(経営成績の概況)当連結会計年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境が改善する下で、景気の緩やかな回復基調が見られる一方、海外景気の下振れによる景気の下押しリスクや物価上昇、アメリカの政策動向、金融資本市場の変動の影響などにより、依然として先行き不透明な状況が続いております。このような情勢下にあって当社グループの当連結会計年度における経営成績は、営業収入は3131億7千1百万円(前年度比10.5%増)、営業利益は646億8千4百万円(同9.2%増)、経常利益は644億5千5百万円(同2.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は433億5千7百万円(同4.3%減)となりました。「中期経営計画 2025」の実現に向けて取り組みを進めた結果、数値目標として掲げていた「営業利益の最高益(528億円)更新」を2年連続で達成することができました。セグメントごとの経営成績は以下のとおりです。 映画事業映画営業事業では、東宝㈱において、共同製作や配給した作品のうち、「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」が大ヒット、「キングダム 大将軍の帰還」「ラストマイル」「変な家」「映画ドラえもん のび太の地球交響楽」「グランメゾン・パリ」「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト」「劇場版ドクターX FINAL」「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」「映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記」「室井慎次 敗れざる者」「室井慎次 生き続ける者」「スオミの話をしよう」「ファーストキス1ST KISS」がヒットいたしました。また、東宝東和㈱において配給した「怪盗グルーのミニオン超変身」もヒットいたしました。前連結会計年度中に公開された「劇場版ハイキュー? ゴミ捨て場の決戦」も高稼働となりました。その他、「ゴジラ-1.0」の国内外における配信権収入やテレビ放映権収入が業績に寄与いたしました。これらの結果、映画営業事業の営業収入は55,958百万円(前年度比20.3%増)、営業利益は22,088百万円(同23.3%増)となりました。なお、上記営業収入の主な内訳として、映画館への配給が34,176百万円(前年度比1.6%増)、劇場用映画の国内配信が3,524百万円(同164.3%増)となりました。 映画興行事業では、TOHOシネマズ㈱等において、上記配給作品の他、「はたらく細胞」「インサイド・ヘッド2」「モアナと伝説の海2」等の話題作を上映いたしました。当連結会計年度における映画館入場者数は38,399千人と前年度比6.1%の減少となりました。これらの結果、映画興行事業の営業収入は75,633百万円(前年度比3.6%減)、営業利益は9,772百万円(同11.8%減)となりました。当連結会計年度中の劇場の異動につきましては、2025年1月12日に関西共栄興行㈱が島根県松江市「松江東宝5」(5スクリーン)を閉館いたしました。これにより、当企業集団の経営するスクリーン数は5スクリーン減の全国で717スクリーン(共同経営56スクリーンを含む)となっております。 映像事業では、東宝㈱において、「呪術廻戦」「僕のヒーローアカデミア」「ハイキュー!!」「SPY×FAMILY」「葬送のフリーレン」「薬屋のひとりごと」「怪獣8号」等、製作出資いたしましたTOHO animation作品の国内外の配信・商品化権収入に加え、各種配分金収入が業績に大きく貢献いたしました。パッケージ事業では「ゴジラ-1.0」が好調なセールスとなった他、TOHO animation作品の「劇場版ハイキュー? ゴミ捨て場の決戦」「葬送のフリーレン」「ウマ娘 プリティーダービー」等の販売が伸長いたしました。出版・商品事業では、劇場用パンフレット、キャラクターグッズにおいて「劇場版ハイキュー? ゴミ捨て場の決戦」「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト」をはじめとする当社配給作品の販売が好調に推移いたしました。また、「ハイキュー!!」「呪術廻戦」をはじめとするTOHO animation作品や生誕70周年を迎えた「ゴジラ」を中心とする東宝怪獣キャラクターのキャラクターグッズ販売が大きく伸長し営業収入に寄与いたしました。ゲーム事業では、「呪術廻戦 ファントムパレード」グローバル版の全世界配信を開始いたしました。㈱東宝ステラでは、ECサイトでの販売が好調に推移いたしました。TOHOスタジオ㈱では、制作及びスタジオ事業の一体運営を図り、堅調に稼働いたしました。㈱東宝映像美術及び東宝舞台㈱では、原価管理に努めながら、映画やTV・ライブイベント等での舞台製作・美術製作やテーマパークにおける展示物の製作業務、メンテナンス業務等を受注いたしました。これらの結果、映像事業の営業収入は77,661百万円(前年度比14.5%増)、営業利益は18,946百万円(同20.5%増)となりました。なお、上記営業収入の主な内訳として、アニメコンテンツの利用が33,881百万円(前年度比16.1%増)、パッケージの販売が6,741百万円(同5.0%減)、映像作品等に係る美術製作が9,784百万円(同6.7%増)となりました。 以上の結果、映画事業全体では、営業収入は209,253百万円(前年度比8.5%増)、営業利益は50,807百万円(同13.6%増)となりました。 演劇事業演劇事業では、東宝㈱の帝国劇場におきまして、「帝国劇場 クロージングラインナップ」として「舞台『千と千尋の神隠し』」「Endless SHOCK(Endless SHOCK/ Endless SHOCK Eternal)」「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」「モーツァルト!」「DREAM BOYS」「Endless SHOCK」「レ・ミゼラブル」「CONCERT THE BEST New HISTORY COMING」を上演し全席完売となりました。なお、帝国劇場は2025年2月28日をもって予定の公演をすべて終了し、再開発のために一時休館することとなりました。シアタークリエにおきましては「ファンレター」「Next to Normal」が満席となった他、「骨と軽蔑」「町田くんの世界」「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」「ライムライト」「VOICARION XVⅢ~Mr.Prisoner~」「tick, tick…BOOM!」「VOICARION XIX ~スプーンの盾~」等を上演いたしました。また、「舞台『千と千尋の神隠し』」「モーツァルト!」「ムーラン・ルージュ!ザ・ミュージカル」等の社外公演を展開し、「舞台『千と千尋の神隠し』」はロンドン・コロシアムでのロングラン公演も大盛況となりました。その他、「CONCERT THE BEST New HISTORY COMING」のライブ配信及びライブビューイングや「Endless SHOCK」のライブビューイングなどを実施いたしました。東宝芸能㈱では、所属俳優がCM出演等で堅調に推移いたしました。以上の結果、演劇事業の営業収入は22,890百万円(前年度比13.6%増)、営業利益は4,129百万円(同32.6%増)となりました。 不動産事業不動産賃貸事業では、前連結会計年度末に㈱東京楽天地を連結子会社としており、当連結会計年度より経営成績に含んでおります。賃貸用不動産の空室率は、当連結会計年度末において0.9%となりました。再開発物件や新規に取得した物件の寄与がありましたが、建設工事費の高騰や大規模修繕費など一時的な費用の増加もあったことから、不動産賃貸事業の営業収入は37,949百万円(前年度比29.1%増)、営業利益は10,740百万円(同7.3%減)となりました。 道路事業では、公共投資が底堅く推移しましたが、慢性的な建設技能者の不足や建設業界にも適用された「働き方改革関連法」への対応が喫緊の課題となる等、依然として予断を許さない状況が続きました。このような状況の中、スバル興業㈱と同社の連結子会社は、一般競争入札における総合評価落札方式への対応強化を図り各種工事の受注に努めましたが、大型の工事案件の受注が前期と比べ減少いたしました。その結果、道路事業の営業収入は30,274百万円(前年度比3.5%増)、営業利益は4,805百万円(同1.9%減)となりました。なお、営業収入の主な内訳は、道路の維持管理・清掃等28,056百万円(前年度比5.4%増)であり、またその他の収益980百万円(同19.7%増)が含まれております。 不動産保守・管理事業では、東宝ビル管理㈱及び東宝ファシリティーズ㈱において、原材料価格の高騰や人手不足が継続する中、新規受注や品質向上に取り組むとともに請負金額の改定や業務の効率化等に努めました。その結果、営業収入は11,430百万円(前年度比8.8%増)、営業利益は1,280百万円(同14.2%増)となりました。 以上の結果、不動産事業全体では、営業収入は79,653百万円(前年度比15.2%増)、営業利益は16,826百万円(同4.4%減)となりました。 その他事業東宝共榮企業㈱の「東宝調布スポーツパーク」やTOHOリテール㈱の劇場売店等において、積極的な営業活動に努めました。その結果、その他事業の営業収入は1,372百万円(前年度比9.2%増)、営業利益は162百万円(同6.8%減)となりました。 (財政状態の概況)当連結会計年度末における財政状態は、前連結会計年度末と比較して、総資産は37,241百万円増加し、653,068百万円となりました。これは主に、現先短期貸付金で20,004百万円の減少がありましたが、受取手形、売掛金及び契約資産で13,905百万円、棚卸資産で7,937百万円、土地で20,916百万円、のれんで16,119百万円の増加があったこと等によるものです。負債では前連結会計年度末から27,181百万円増加し、158,253百万円となりました。これは主に、未払金で11,877百万円、繰延税金負債で6,359百万円の増加があったこと等によるものです。純資産は前連結会計年度末と比較して10,059百万円増加し、494,815百万円となりました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益43,357百万円の計上及び剰余金の配当17,212百万円による利益剰余金26,145百万円の増加の他に、自己株式が22,203百万円の増加、その他有価証券評価差額金で10,561百万円の増加、為替換算調整勘定で4,399百万円の増加、非支配株主持分で9,439百万円の減少があったこと等によるものです。 ② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ5,815百万円減少し、76,608百万円となりました。(営業活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度における営業活動による資金は、税金等調整前当期純利益が66,065百万円、減価償却費が14,363百万円ありましたが、仕入債務の減少が5,842百万円、法人税等の支払額が21,763百万円あったこと等により、51,617百万円の資金の増加(前年度比8,267百万円の増加)となりました。(投資活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度における投資活動による資金は、有価証券の売却による収入が55,210百万円ありましたが、有価証券の取得による支出が16,988百万円、有形固定資産の取得による支出が32,532百万円、子会社株式の取得による支出が12,445百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が10,685百万円あったこと等により、18,465百万円の資金の減少(前年度比44,241百万円の増加)となりました。(財務活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度における財務活動による資金は、自己株式の取得による支出が20,060百万円、配当金の支払額が17,188百万円あったこと等により、39,298百万円の資金の減少(前年度比27,667百万円の減少)となりました。 ③ 生産、受注及び販売の状況当企業集団の事業について生産実績を定義することが困難なため「生産の状況」は記載しておりません。 a. 受注実績 セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)映画事業3,953△7.542039.8演劇事業----不動産事業27,942△6.27,393△1.5その他事業----合計31,896△6.37,8130.1 (注) 映画事業に含まれる映像事業の内テーマパーク関連事業及び不動産事業に含まれる道路事業における受注実績を記載しております。 b. 販売実績 セグメントの名称当連結会計年度(自 2024年3月1日至 2025年2月28日)(百万円)前年同期比(%)映画事業209,2538.5演劇事業22,89013.6不動産事業79,65315.2その他事業1,3729.2合計313,17110.5 (注) 当企業集団の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、重要性の   ある相手先がないため記載を省略しております。   映画事業、演劇事業及びその他事業の販売の相手先は主に不特定の個人であり、不動産事業についても総   販売実績の100分の10以上を占める相手先はありません。 (2) 経営者の視点による当該経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ① 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容1) 経営成績の分析当連結会計年度は、「中期経営計画 2025」の最終年度にあたり、長期ビジョンで掲げた成長戦略のキーワードである ①企画&IP、②アニメーション、③デジタル、④海外 を軸に各事業を推進してまいりました。当連結会計年度における当社グループの経営成績は、主力の映画事業において、「名探偵コナン 100万ドルの五稜星」や「キングダム 大将軍の帰還」等が大ヒットとなった他、収益性の高い自社企画・製作作品の貢献がありました。また、「ゴジラ-1.0」では、配信権をはじめとした各種利用が好調となり、業績に寄与いたしました。TOHOシネマズ㈱では、邦画興行が好調に推移し、当社グループ配給作品を中心に興行を牽引いたしました。TOHO animationレーベルでは、劇場用映画「劇場版ハイキュー!! ゴミ捨て場の決戦」「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ユアネクスト」の劇場公開が高稼働、「呪術廻戦」「ハイキュー!!」「僕のヒーローアカデミア」といった人気シリーズの配信・商品化権収入が国内外で好調であったことに加え、キャラクターグッズ販売が大きく伸長するなど、多面的な展開が順調に拡大し、成長ドライバーとしての成果をあげました。演劇事業では、帝国劇場において「帝国劇場 クロージングラインナップ」として上演した作品が連日完売となり、盛況に推移いたしました。また、ロンドン・コロシアムで上演した「舞台『千と千尋の神隠し』」は高い評価を受け、今後の海外戦略に自信を深めることができました。不動産事業では、前連結会計年度末に連結子会社となった㈱東京楽天地の保有物件や再開発物件の稼働もあり増収となりましたが、建設費やエネルギー価格の高騰により厳しい事業環境が続いております。この結果、当連結会計年度の営業収入は、前連結会計年度と比べ29,823百万円増収の313,171百万円、営業利益は、前連結会計年度と比べ5,432百万円増益の64,684百万円となりました。映画、アニメ、演劇、不動産それぞれが業績に寄与し、数値目標である「営業利益の最高益(528億円)更新」を2年連続で達成するとともに、長期ビジョンの実現に向けた成長戦略に手応えを感じる結果となりました。 (a) 営業収入当連結会計年度の営業収入は、前連結会計年度と比べ29,823百万円増収の313,171百万円となりました。(b) 営業原価、販売費及び一般管理費当連結会計年度の営業原価は、前連結会計年度と比べ15,831百万円増加の168,611百万円となりました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比べ8,559百万円増加の79,875百万円となりました。これは人件費が3,147百万円、広告宣伝費が1,835百万円、減価償却費が1,531百万円それぞれ増加したこと等によるものであります。(c) 営業利益当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度と比べ5,432百万円増加の64,684百万円となりました。その内訳は、「映画事業」で前連結会計年度と比べ6,097百万円増益の50,807百万円、「演劇事業」で前連結会計年度と比べ1,014百万円増益の4,129百万円、「不動産事業」で前連結会計年度と比べ783百万円減益の16,826百万円、「その他事業」では前連結会計年度と比べ11百万円減益の162百万円でした。 なお、上記事項を含む報告セグメントごとの詳細については、「第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1) 経営成績等の状況の概要」に記載しております。 (d) 営業外収益、営業外費用及び経常利益当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度と比べ228百万円増加の4,088百万円となりました。これは主として、持分法による投資利益が前連結会計年度に比べ176百万円減少しましたが、前連結会計年度と比べ受取配当金が417百万円増加したこと等によるものであります。また、営業外費用は、前連結会計年度と比べ4,230百万円増加の4,317百万円となりました。これは主として、当連結会計年度に持分法による投資損失を4,210百万円計上したこと等によるものであります。この結果、当連結会計年度の経常利益は、前連結会計年度と比べ1,430百万円増加の64,455百万円となりました。(e) 特別利益、特別損失当連結会計年度の特別利益は、投資有価証券売却益が前連結会計年度と比べて2,816百万円増加しましたが、前連結会計年度に㈱東京楽天地の株式を公開買付けにより取得し連結子会社化したことに伴う段階取得に係る差益2,281百万円、オーエス㈱の普通株式について阪急阪神ホールディングス㈱による公開買付けに応募し売却したことに伴う関係会社株式売却益1,866百万円等を計上したことにより、前連結会計年度と比べて922百万円減少の3,475百万円となりました。特別損失は、前連結会計年度と比べ1,444百万円増加の1,865百万円となりました。これは主として、減損損失が前連結会計年度と比べ1,318百万円増加したこと等によるものであります。(f) 親会社株主に帰属する当期純利益当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税、住民税及び事業税23,024百万円、法人税等調整額△1,773百万円、非支配株主に帰属する当期純利益1,458百万円を計上し、前連結会計年度と比べ1,926百万円減少の43,357百万円となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の259.51円から254.75円に減少しました。 2) 財政状態の分析(a) 資産当連結会計年度末の総資産は、GKIDS, INC.の連結子会社化に伴い31,865百万円の増加があったこと等により、前連結会計年度末と比べ37,241百万円増加して653,068百万円となりました。流動資産は、前連結会計年度末と比べ6,452百万円減少して202,050百万円となりました。このうち、前連結会計年度末と比べ現先短期貸付金は20,004百万円減少し14,995百万円、受取手形、売掛金及び契約資産は13,905百万円増加し55,981百万円、棚卸資産は7,937百万円増加し21,067百万円となりました。有形固定資産は、前連結会計年度末と比べ18,650百万円増加の243,502百万円となりました。このうち、前連結会計年度末と比べ、土地は20,916百万円増加し125,456百万円、建設仮勘定は2,043百万円減少し3,694百万円となりました。無形固定資産は、前連結会計年度末と比べ23,734百万円増加の30,751百万円となりました。これは主に、のれんが連結会計年度末と比べ16,119百万円増加したこと等によるものであります。投資その他の資産は、前連結会計年度末と比べ1,309百万円増加し176,764百万円となりました。(b) 負債当連結会計年度末の流動負債及び固定負債合計額は、GKIDS, INC.の連結子会社化に伴い12,664百万円の増加があったこと等により、前連結会計年度末と比ベ27,181百万円増加の158,253百万円となりました。流動負債は、前連結会計年度末と比べ21,800百万円増加の90,941百万円となりました。このうち、前連結会計年度末と比べて、未払金は11,877百万円増加して15,775百万円、買掛金は2,690百万円増加して35,455百万円となりました。固定負債は、前連結会計年度末と比べて5,381百万円増加して67,311百万円となりました。これは主に、繰延税金負債が6,359百万円増加して27,887百万円、資産除去債務が1,294百万円増加して9,374百万円となったこと等によるものであります。(c) 純資産当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比べて10,059百万円増加し、494,815百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益43,357百万円の計上及び剰余金の配当17,212百万円により前連結会計年度末と比べて利益剰余金が26,145百万円増加、自己株式が22,203百万円増加、その他有価証券評価差額金が10,561百万円増加したこと等によるものであります。なお、当連結会計年度末の自己資本比率は、前連結会計年度末と比べ1.2ポイント減少し、73.3%となりました。 ② キャッシュ・フローの状況の分析・資本の財源及び資金の流動性に係る情報キャッシュ・フローの分析につきましては、「第2[事業の状況]4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析](1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しているとおりであります。(財務戦略の基本的な考え方)当社グループは、持続的な成長と企業価値の向上を進めるにあたり、事業運営上必要な運転資金、設備投資等の資金は、自己資金を原則としておりましたが、今後、コンテンツ・IP関連の成長投資及び不動産事業の再開発等は必要に応じて機動的に金融機関からの借入及び社債発行等による資金調達を行ってまいります。また、グループ内の資金効率を向上させるべく、当社は、資金余剰が生じている子会社から借り入れる一方、資金需要のある子会社に対しては、貸付を行うことがあります。(資金需要の内容及び経営資源の配分)当社グループは、2025年に策定した「中期経営計画 2028」において成長投資を掲げており、2028年までの3年間の資金需要の主な内容は、成長投資1,200億円程度(コンテンツ・IP領域のM&Aや戦略出資等1,000億円、新規シネコン出店・既存館への設備投資/デジタル関連投資等200億円)、不動産関連投資として400億円程度の計1,600億円程度を見込んでおります。また、年間85円の配当を下限に配当性向35%以上かつ機動的な自己株式取得の実施により株主還元の充実に努めることとしております。(資金調達)当社グループでは、短期及び中期の投資資金としては自己資金を充てることを前提としつつ、必要に応じて銀行借入等金融機関からの調達を行います。また、政策保有株式や保有不動産の売却も検討、実施してまいります。一方、投資回収が長期にわたる大型M&Aに要する資金や大規模な設備投資資金については、案件の特性に応じて社債等の最適な手法により資金調達を行います。そのため、財務健全性や資金調達手段の多様化を考慮し、高い信用格付の維持を目指して、㈱格付投資情報センターより「AA-」の格付を取得しております。なお、当社グループは当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高76,608百万円に対し、有利子負債(リース債務含的)残高は3,014百万円と、自己資金での投資余力を高いレベルで維持しておりますが、今後の更なる成長投資に向け有利子負債の活用も行ってまいります。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。 ④ 経営成績に重要な影響を与える要因「第2[事業の状況]3[事業等のリスク]」に記載のとおりであります。

※本記事は「東宝株式会社」の令和7年2月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

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連結財務指標と単体財務指標の違いについて

連結財務指標とは

連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。

単体財務指標とは

単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。

本記事での扱い

本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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