住友電気工業株式会社の基本情報

会社名住友電気工業株式会社
業種非鉄金属
従業員数連288145名 単7124名
従業員平均年齢43.2歳
従業員平均勤続年数17.7年
平均年収8500000円
1株当たりの純資産2936.93円
1株当たりの純利益(連結)248.47円
決算時期年3
配当金97円
配当性向62.1%
株価収益率(PER)9.9倍
自己資本利益率(ROE)(連結)8.6%
営業活動によるCF4022億円
投資活動によるCF▲2239億円
財務活動によるCF▲1508億円
研究開発費※159.13億円
設備投資額※1243億円
販売費および一般管理費※14276.14億円
株主資本比率※247.4%
有利子負債残高(連結)※36879.91億円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。(1) 会社の経営の基本方針当社グループは、連綿と引き継がれる「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」のもと、公正な事業活動を通して社会に貢献していくことを不変の基本方針としています。この基本方針を堅持し、「公益を重視し、ステークホルダーの皆様との共栄を図る」という「五方よし」*(マルチステークホルダーキャピタリズム)の考え方に基づいて、ステークホルダーとの適切な協働を通じ、適正なコーポレートガバナンスに基づく経営の透明性・公正性を確保し、その充実に取り組むことにより、当社グループの持続的な成長と中長期的な企業価値の向上とともに、これらのゴーイングコンサーンとしての成果のステークホルダーの皆様への着実な還元を図ることとしています。* 「五方よし」:当社経営における「還元・配分」についての基本的な考え方を表現したもの(Goho Yoshi)。 [住友事業精神]住友の事業は、今から約400年前、銅と銀を吹き分ける「南蛮吹き」と呼ばれる技術による銅精錬事業に遡り、その後別子銅山における鉱山業を中心に発展を遂げてきました。こうした事業の隆盛を支えてきた精神的基盤が「住友事業精神」であり、住友家初代・住友政友が後生に遺した商いの心得『文殊院旨意書』を礎とし、住友の先人により何代にもわたって深化・発展を遂げてきたものです。その要諦は、1891年に改訂された住友家法の中で「営業の要旨」として端的に示されています。営業の要旨 ※ここでは、住友合資会社社則(1928年制定)より抜粋しました。第一条 我が住友の営業は、信用を重んじ確実を旨とし、以てその鞏固隆盛を期すべし第二条 我が住友の営業は、時勢の変遷、理財の得失を計り、弛張興廃することあるべしと雖も、苟も浮利に趨り、軽進すべからずこの他にも、『技術の重視』、『人材の尊重』、『企画の遠大性』、『自利利他、公私一如』といった精神が今に至るまで脈々と受け継がれています。 [住友電工グループ経営理念] ※創業100周年を機に明文化(1997年6月)住友電工グループは、・顧客の要望に応え、最も優れた製品・サービスを提供します。・技術を創造し、変革を生み出し、絶えざる成長に努めます。・社会的責任を自覚し、よりよい社会、環境づくりに貢献します。・高い企業倫理を保持し、常に信頼される会社を目指します。・自己実現を可能にする、生き生きとした企業風土を育みます。 (2) 経営戦略及び経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等<住友電工グループ2030ビジョン>当社グループは、様々な社会変革が起こりつつある中で当社グループの目指す姿を示すため、2030年を節目とする長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」を策定し、2022年5月に公表いたしました。ステークホルダーの皆様のご理解のもと、当社グループが一体となり企業価値向上に取り組み、「Glorious Excellent Company*」の企業像実現を目指してまいります。* Glorious Excellent Company:”Glorious”は「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」という精神的基盤を具現化したあるべき姿、”Excellent”は具体的・定量的な事業目標達成の意を込めています。 住友電工グループ「2030ビジョン」グリーンな地球と安心・快適な暮らし- その実現へ技術で挑戦し続けます -Connect with Innovation 1.経営方針「住友事業精神」と「住友電工グループ経営理念」を堅持し、「事業を通じて公益に資する」という経営哲学のもと、常に公益を重視し、ステークホルダーの皆様との共栄を図っていくことを基本思想としています。そして、この基本思想のもと、これからも「トップテクノロジー」を追求し、グループの総合力とイノベーションにより、世界のインフラ・産業の発展を支えていきたいと考え、当社グループの存在価値(パーパス)を次のように定義しました。 住友電工グループの存在価値(パーパス)トップテクノロジーを追求し、つなぐ・ささえる技術をイノベーションで進化させ、グループの総合力により、より良い社会の実現に貢献していく 今後も様々なリスクに的確に対応しながら、世界で活躍する当社グループ28万人(2025年3月末現在)の従業員による新たな価値の創造を通じ、グローバル市場の多様なニーズに応え、永続的な企業価値向上に取り組んでいきたいと考えています。 2.2030年の社会像と事業領域当社グループは「安心」「快適」な社会への貢献に加え、「グリーン」な環境社会の実現に、グループの総力を挙げて取り組みます。そして、この目指す社会像の実現に向けて、これからも幅広く「インフラや産業を支える製品・サービス」を提供します。 3.事業の方向性「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」を3つの注力分野と位置づけ、取り組んでいきます。また、これらの注力3分野を支える高機能製品の提供や、グリーン化に向けた様々な取組みを展開します。 4.経営基盤と目標ビジョンの実現に向けて、「的確・迅速・柔軟」に変化に対応できる強い組織づくりを進めるため、3つのグループ共有資本(人的資本・知的資本・財務資本)の充実を図るとともに、3つの推進力(研究開発・サプライチェーン・モノづくり)の強化に取り組み、中長期的な企業価値向上を目指します。 <中期経営計画2025>上記の「2030ビジョン」を踏まえ、2023年度から2025年度の3カ年の実行計画として「中期経営計画2025」を策定し、2023年5月に公表しました。「中期経営計画2025」の具体的な内容は、以下のとおりです。 1.基本方針「中期経営計画2025」は、「つなぐ・ささえる技術でグリーン社会の未来を拓く」をスローガンに、「脱炭素社会の進展」や「情報化社会の進化」に伴うグローバルな事業機会を確実に捉え、グループの総合力で成長戦略を推進するとともに経営基盤の強化に取り組み、その成長の成果を適切にマルチステークホルダーの皆様へ還元していくことを基本方針としています。2.マルチステークホルダーキャピタリズム(「五方よし」)当社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上には、マルチステークホルダーの皆様との協働が不可欠であり、成長の成果を着実にマルチステークホルダーの皆様に還元していくこととしています。このことを「マルチステークホルダーキャピタリズム(「五方よし」)」の実践として、具体的には、以下のそれぞれの指標・目標の実現に向けて取り組んでまいります。 3.成長戦略成長を牽引する「エネルギー」「情報通信」「モビリティ」の注力3分野において、「脱炭素社会」「情報化社会」で広がる事業機会を捉えたグループ横断的な9つのテーマを「成長テーマ」として位置づけ、それらへの取組みを通して技術で新たな価値を創造し、「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」の実現へ貢献してまいります。 また、5つの事業セグメントにおける売上高・営業利益の目標及び成長戦略については以下の通りです。                                     (単位:億円) 売上高営業利益 2022年度実績2025年度目標2022年度実績2025年度目標環境エネルギー9,28210,200379500情報通信2,5032,800219250自動車21,86825,0005571,100エレクトロニクス3,6603,600383300産業素材他3,6333,900240350全社 計40,05644,0001,7742,500 ・環境エネルギー2030への方針グリーン社会の未来に向けて、脱炭素に資する製品・サービスを提供することで、次世代のエネルギーインフラをグローバルにささえます2025成長戦略事業環境世界各国で再生可能エネルギーの大量導入に向けた大型投資が本格化し、遠隔地を結ぶ長距離送電や電力需給のバランス調整が求められる中、高電圧技術を進化させ、電力系統の更なる強化・効率化に貢献します2025成長戦略取組方針①大型連系線向け超高圧直流ケーブル・国内外での製造能力・施工力の大幅な増強・環境に優しい高性能絶縁材料の開発・プロジェクトリスク管理力の向上・戦略的パートナーとの連携強化 ②再生可能エネルギー向け製品・サービス・グループ会社(日新電機、住友電設)との連携強化によるソリューションの提案・洋上風力用アレイケーブル、エクスポートケーブルの大容量化と拡販・レドックスフロー電池の大型案件獲得・地産地消推進、家庭用蓄電池のEV連携機能を搭載した新製品投入 ③電動車用駆動モータ平角巻線・電動車の高電圧化に対応する次世代品・差別化製品の上市・電動車の普及拡大に対応した製造能力の増強、生産性の改善・グローバルな供給体制の構築 ・情報通信2030への方針AIや仮想空間の活用などに必要な大容量・低遅延通信を低消費電力にて実現するオール光ネットワークやBeyond5Gの発展に、オリジナリティのある多彩な製品を提供していきます2025成長戦略事業環境データドリブン社会の進展により通信データ量は年率約30%で増加、通信ネットワークの大容量・低遅延化がますます求められる中、多彩な製品・サービスでソリューションを提案し、低消費電力型通信ネットワークの実現に貢献します2025成長戦略取組方針①データセンタ内・間の光通信関連製品・圧送用高密度光ケーブルの展開・極低損失光コネクタにより、低消費電力化・光通信用InP(インジウムリン)デバイスの高速化・省エネ性能向上とInP基板品質向上 ②大容量光通信向け高機能・高付加価値製品・マルチコア光ファイバを大陸間海底光通信で実用化・光ファイバ融着接続機にAI/DX機能を搭載し、施工業務を高度化・光ファイバの高性能化(極低損失・耐曲げ性能向上) ③大容量携帯無線通信(5G/Beyond5G)向けデバイス・機器・携帯無線基地局用GaN(窒化ガリウム)デバイスの広帯域化と省エネ性能向上、生産能力の増強・工場/交通向けなどの産業用5G端末、5Gアクセス光伝送装置供給開始 ・自動車2030への方針ワイヤーハーネスの更なる進化と、電動化・高速通信化への対応で、モビリティの「つなげる」パートナーとして「つながる」ビジネスを拡大します2025成長戦略事業環境2025年には、電動車(BEV、Full-HEV、PHEV、FCV)が世界の自動車生産台数の約30%を占め、自動運転技術や安全支援機能がますます高度化する中、従来ハーネスの進化に加え、電動化・高速通信・インフラ連携の技術を進化させ、モビリティの発展に貢献します2025成長戦略取組方針①ワイヤーハーネスのグローバル供給体制・軽量化に寄与するアルミハーネスの更なる拡販・地産地消など、グローバル最適地生産体制の再構築・ワイヤーハーネスの新設計、新工法の実現・DXによるサプライチェーンの見える化 ②拡大するCASE*市場をとらえた新製品・電動化の進展に高圧製品や電池関連部品の供給を拡大・通信機能の増加/高速化に対応した新製品開発加速・既存顧客とのパートナー関係強化・協業推進・欧米及び新興EVメーカーへの参入 ③モビリティの新時代へ、グループ内連携・高分子材料を用いた次世代モビリティ向け新製品の開発強化、既存事業である防振ゴムやホースの製造拠点再編や事業体質強化(住友理工)・交通システムや電力システムとの連携による、コネクティッド事業とEVエネルギーマネジメント事業の拡大* CASE:自動車業界のトレンドを表す言葉で、Connected(つながる)、Autonomous(自動運転)、Shared(シェアリング)、Electric(電動化)の頭文字をとったもの。 ・エレクトロニクス2030への方針情報化社会やCASEの進展に求められる新しいニーズをとらえ、高機能配線材を開発・提供するとともに、環境や医療に役立つ製品の拡販も進めます2025成長戦略事業環境GX(グリーントランスフォーメーション)、DX、CASEに代表されるさまざまな社会・産業の変革が加速する中、当社独自技術の高機能素材・配線技術を幅広い分野に提供し、快適で環境に優しい社会の実現に貢献します2025成長戦略取組方針①次世代情報端末をささえる高機能FPC・超微細回路形成技術と多層化による更なる差別化・高速伝送パフォーマンスに優れたフッ素樹脂・高周波対応FPCの開発を推進・電動化をはじめとするCASE対応FPCの事業規模拡大 ②電動化など幅広い用途で使われる高機能電線・EV用バッテリー電極リード線の需要増に対応する増産体制構築・情報電線及び車載・航空機用高圧ケーブルの開発・能力増強・人工衛星やロボットまで幅広い用途に高機能電線を供給 ③環境や医療に貢献する高機能部材・半導体製造装置用精密ろ過膜の生産能力増強・水処理膜モジュールの高性能化、高付加価値膜の開発・カテーテル用など医療分野における高機能材の開発・拡販 ・産業素材他2030への方針材料加工技術を更に進化させ、グリーン社会に役立つ高精度・高強度な製品でインフラ・産業の発展を幅広くささえます2025成長戦略事業環境さまざまな産業が転換期を迎え、モノづくりやモノの使われ方が変化していく中、これまで培ってきた高度な素材加工技術を電動車やグリーン関連施設などの幅広い分野に展開し、グリーン社会の実現に貢献します2025成長戦略取組方針①差別化と生産体制強化をすすめる切削工具・次世代CBNや新材種で電動車や風力発電、航空機部品の切削用途に需要を開拓・加工の改善点や工具寿命を予測するセンシング技術とデータ活用で差別化を図り新たな需要を発掘・切削加工全般のグローバルなサービス体制強化 ②技術進化と伸長市場への展開を図る超硬材料・電動車向け磁石用切断ダイヤ砥石や電子部品用高精度カッターを拡販・革新技術・生産能力増により車載・医療用途でヒートシンクを拡販・核融合市場向けに超硬耐熱機能を有するタングステンモノブロックを供給 ③インフラ強化や環境へ貢献する高精度・高強度材・需要増が見込まれる北米・アジア地域で高耐久・高付加価値PC鋼線を拡販・インフラ構造物やのり面地盤を見守る光ファイバ組込み式PC鋼材の開発・拡販・焼結部品のEV用製品の拡充、非車載分野への展開 4.基盤強化経営基盤(研究開発・モノづくり・サプライチェーン・財務資本・人的資本・知的資本)を更に強化し、変化に強い企業体質を構築してまいります。特に、「研究開発」において、顧客ニーズを捉えた現行事業の進化や未来社会ニーズを捉えた新規テーマへの挑戦に取り組むとともに、世界最高水準を実現する「モノづくり力」や構造的変化と急激な変動に対応できる「強靭なサプライチェーン」の構築に向けた取組みを進めてまいります。 (3) 経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題今後の経済情勢は、米国の追加関税をはじめとする政策見直しが経済活動全体に甚大な影響を及ぼすおそれがあるほか、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や中東情勢の緊張、欧州・中国経済の停滞など政治的・地政学的リスクの高まりにより、世界経済の減速感が強まることが懸念され、当社グループを取り巻く事業環境は予断を許さない状況が続くものと予想されます。このような情勢のもと、当社グループは、ありたい将来像「Glorious Excellent Company」の実現を目指して、長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」で掲げている「グリーンな地球と安心・快適な暮らし」の実現に向けて、グループが一体となり企業価値向上に取り組み、その成果をステークホルダーの皆様、すなわち、「従業員」「お客様」「お取引先」「地域社会」「株主・投資家」に着実に還元・配分していくというマルチステークホルダーキャピタリズム(「五方よし」)に基づく経営を実践してまいります。具体的には、製造業の基本であるS(安全)、E(環境)、Q(品質)、C(コスト)、D(物流・納期)、D(研究開発)のさらなるレベルアップに取り組むとともに、資産効率向上については、重要指標としているROIC*の改善に向けて、棚卸資産残高や営業債権・債務残高の適正化、設備投資案件の厳選実施、高付加価値品へのシフト、政策保有株式の圧縮などの取り組みを一層強化してまいります。特に、喫緊の課題である米国の追加関税につきましては、グローバルな生産レイアウトの最適化やサプライチェーンの見直しなど、当社として取り得る対策を講じるとともに、顧客とも丁寧に対話をおこない、業績への影響を最小化できるよう努めてまいります。また、2025年度は「中期経営計画2025」の最終年度であり、グループの総合力で成長戦略を推進するとともに経営基盤の強化に取り組み、各事業においては次の施策を進めてまいります。* ROIC:Return on Invested Capital(投下資産利益率)の略。 環境エネルギー関連事業では、電力ケーブルにおいては、国内の設備更新需要等の捕捉に加え、脱炭素化に貢献する国家・地域間連系線や再生可能エネルギー関連の受注に努めるとともに、欧州での新拠点立上げ、コスト低減、品質向上、新製品開発、プロジェクトマネジメント強化にも注力してまいります。電動車向けのモーター用平角巻線においては、コスト低減による収益力の向上と、電動車の高電圧化に対応する次世代品の開発を進めてまいります。また、日新電機㈱との一層のシナジー創出に取り組むとともに、受変電設備においては国内の設備更新需要の確実な捕捉、生産能力増強、環境配慮製品の開発・提案強化に、またイオン注入装置や電子線照射装置においては国内外での拡販に取り組んでまいります。さらには、住友電設㈱も含めたグループ総合力を活かして、一層の受注拡大に努めてまいります。 情報通信関連事業では、生成AI*の急速な普及によるデータセンター関連市場の一層の拡大が期待されるなか、この需要を確実に捕捉すべく、光デバイス、光配線機器、光ケーブルの生産能力増強、さらなる通信の高速化や低消費電力化を実現する新製品の開発に注力し、事業拡大に努めてまいります。また、海底ケーブル用の極低損失・大容量光ファイバ、世界で初めて量産に成功したマルチコアファイバ、第5世代移動通信システム(5G)やさらに高度化する次世代移動通信システム(Beyond 5G)基地局用の高効率な電子デバイス、新方式採用が進むアクセス系ネットワーク機器など、低消費電力等の環境性能を含めた高機能製品の開発・拡販を継続・加速するとともに、徹底したコスト削減による収益性の改善に努めてまいります。* 生成AI:質問や作業指示等に応え、画像や文章、音楽、映像、プログラム等の多様なコンテンツを生成するAI(人工知能:Artificial Intelligence)。 自動車関連事業では、モビリティの「つなげる」パートナーとして「つながる」ビジネスの拡大を目指し、一層のコスト低減と資産効率化の徹底、軽量化ニーズに対応したアルミハーネスのさらなる拡販、生産自動化やコスト低減に繋がる新設計・新工法の拡充など従来ハーネスの進化に取り組んでまいります。また、グループ内連携、顧客との協業やパートナー関係の深化により、電動車向けの高電圧ハーネス、高速通信用のコネクタなど今後も拡大が見込まれるCASE市場をとらえた新製品創出・拡販にも努めてまいります。住友理工㈱では、自動車用防振ゴム及びホースなどの分野において、既存事業の収益力強化を図るとともに、今後の事業成長に向けては、次世代モビリティ向けの新製品開発に重点をおいて取り組んでまいります。 エレクトロニクス関連事業では、微細回路形成技術を活かしたFPC製品やCASE対応製品、医療用製品の拡販、高周波化に対応した新製品の開発を加速するとともに、徹底したコスト低減を進めてまいります。照射架橋技術を活用した耐熱・高機能電線、リチウムイオン電池用リード線(タブリード)、熱収縮チューブに加えて、多孔質分離膜製品においても、多様な客先ニーズを捕捉して事業の拡大を図ってまいります。また、㈱テクノアソシエとの連携強化にも取り組んでまいります。 産業素材関連事業では、超硬工具においては、グローバルな営業力の強化により、主力の自動車分野に加えて、建設機械、農業機械、エレクトロニクス分野等での需要を確実に捕捉するとともに、電動車、航空機、半導体、再生可能エネルギー関連などの新規開拓も進め、市場シェアの拡大に努めてまいります。焼結部品は、電動車や非車載向けの新製品開発・拡販とコスト競争力の一段の強化を図ってまいります。PC鋼材やばね用鋼線は、グローバルな製造販売体制の強化と新製品開発による収益力の向上に取り組んでまいります。研究開発では、多様な技術創出の「要」となる研究開発の活性化・スピードアップを目指し、社会課題からのバックキャスティングやプロセスの高度化・効率化、オープンイノベーションや社外との連携強化に取り組んでまいります。具体的な取り組みとしては、現行事業の進化として、事業部門・営業部門との密な関係や顧客とのパートナー関係を活かし、中長期計画の注力事業分野である、送電網強化と再生可能エネルギーの安定供給、通信ネットワークの大容量・低遅延化、モビリティにおける電動化などのテーマに取り組んでまいります。また新規テーマの挑戦として、「地球」「暮らし」「ヒト」の3つを価値領域として定め、「地球」の持続可能性のため、省エネルギー、再生可能エネルギー、材料循環等の研究を推進するとともに、安心で安全な「暮らし」、「ヒト」の可能性の拡大を目指す研究を推進してまいります。最後に、法令遵守や企業倫理の維持は、当社経営の根幹をなすものであり、企業として存続・発展するための絶対的な基盤と考えております。今後とも、住友事業精神の「萬事入精(ばんじにっせい)」「信用確実」「不趨浮利(ふすうふり)」*という理念のもと、社会から信頼される公正な企業活動の実践に真摯に取り組んでまいります。また、住友事業精神と住友電工グループ経営理念のもと、サステナビリティを巡る課題である、気候変動などの地球環境問題への配慮、人権の尊重、従業員の健康・労働環境への配慮や公正・適切な処遇、取引先との公正・適正な取引、自然災害等の危機管理を通じて、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。* 萬事入精:まず一人の人間として、何事にも誠心誠意を尽くすべきとの考え。信用確実:何よりも信用を重んじること。不趨浮利:常に公共の利益との一致を求め、一時的な目先の利益、不当な利益の追求を厳に戒めること。
経営者による財政状態の説明
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。 (1) 経営成績等の状況の概要① 経営成績 売上高(百万円)営業利益(百万円)経常利益(百万円)親会社株主に帰属する当期純利益(百万円)当連結会計年度4,679,789320,663309,496193,771前連結会計年度4,402,814226,618215,341149,723増減率(%)6.341.543.729.4 当連結会計年度の世界経済は、米国では個人消費が安定し引き続き好調に推移しましたが、欧州では景気の持ち直しの動きが見られたものの停滞が続いており、また、中国では不動産不況が続き個人消費も低調で成長のペースが鈍化しました。日本経済については、企業収益の改善を背景に設備投資が増え、雇用や所得環境も改善が進み、世界的な物価上昇の影響を受けつつも景気は緩やかに回復しました。当社グループを取り巻く事業環境につきましては、自動車分野でワイヤーハーネスの需要が堅調に推移したほか、環境エネルギー分野では電力ケーブルや受変電設備の需要が、また情報通信分野ではデータセンター関連市場向けの需要が、それぞれ拡大しました。このような環境のもと、当連結会計年度の連結決算は、売上高は、4,679,789百万円(前連結会計年度4,402,814百万円、6.3%増)と前連結会計年度に比べ増収となりました。利益面では、売上増加に加えて、徹底した生産性改善やコスト低減、売値改善に努め、営業利益は320,663百万円(前連結会計年度226,618百万円、41.5%増)と前連結会計年度に比べ増益、営業利益率は6.9%(前連結会計年度5.1%、1.8ポイント上昇)となりました。営業外収益は、持分法による投資利益の減少などにより3,352百万円減の40,696百万円、営業外費用は、クレーム損の減少などにより3,462百万円減の51,863百万円となり、経常利益は309,496百万円(前連結会計年度215,341百万円、43.7%増)と前連結会計年度に比べ増益となりました。特別利益では固定資産売却益2,135百万円、投資有価証券売却益11,085百万円に加え、退職給付信託返還益12,919百万円を計上し、合計では26,139百万円となりました。特別損失では、固定資産除却損4,296百万円、減損損失5,204百万円に加え、事業構造改善費用22,071百万円を計上し、合計では31,571百万円となりました。この結果、税金等調整前当期純利益は304,064百万円となりました。ここから法人税等82,238百万円及び非支配株主に帰属する当期純利益28,055百万円を差し引いた結果、親会社株主に帰属する当期純利益は193,771百万円(前連結会計年度149,723百万円、29.4%増)と前連結会計年度に比べ増益となりました。また、棚卸資産や政策保有株式の圧縮など資産効率の改善にも取り組み、税引前ROICは9.3%(前連結会計年度7.6%)と、前連結会計年度を上回る結果となりました。 セグメントごとの経営成績は次のとおりです。 売上高営業利益又は営業損失前連結会計年度(百万円)当連結会計年度(百万円)増減率(%)前連結会計年度(百万円)当連結会計年度(百万円)増減率(%)環境エネルギー979,9771,081,34410.342,89078,71883.5情報通信206,074223,2768.3△11,55219,926-自動車2,596,4042,734,7305.3144,674172,39119.2エレクトロニクス356,478377,2485.829,29729,3110.0産業素材他364,185372,6672.321,06720,592△2.3合計4,503,1184,789,2656.4226,376320,93841.8調整額△100,304△109,476-242△275-連結損益計算書計上額4,402,8144,679,7896.3226,618320,66341.5 環境エネルギー関連事業は、電力ケーブル、電動車向けのモーター用平角巻線、日新電機㈱における受変電設備などの増加に加えて、銅価格上昇の影響もあり、売上高は1,081,344百万円と101,367百万円(前連結会計年度比10.3%)の増収となりました。営業利益は、売上増加に加えて、生産性の改善や銅価格上昇の影響もあり、78,718百万円と35,828百万円の増益となりました。売上高営業利益率は7.3%と2.9ポイント上昇しました。なお、工事・プラント受注高は492,648百万円(当連結会計年度末の受注残高は673,287百万円)と、前連結会計年度比52,206百万円(11.9%)増加しました。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ119,129百万円増加の1,101,981百万円となりました。情報通信関連事業は、生成AI市場の拡大を背景にデータセンター向けの光デバイスや光配線機器の需要が増加し、売上高は223,276百万円と17,202百万円(8.3%)の増収となりました。営業利益は、売上増加に加えて、生産性の改善や円安の影響もあり、19,926百万円と31,478百万円の改善となりました。売上高営業利益率は8.9%と14.5ポイント上昇しました。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ2,711百万円減少の284,622百万円となりました。自動車関連事業は、ワイヤーハーネスの販売数量は中国を中心に前連結会計年度を下回りましたが、円安や銅価格上昇の影響もあり、売上高は2,734,730百万円と138,326百万円(5.3%)の増収となりました。営業利益は、生産性の改善や為替影響もあり、172,391百万円と27,717百万円の増益となりました。売上高営業利益率は6.3%と0.7ポイント上昇しました。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ57,774百万円増加の2,231,268百万円となりました。エレクトロニクス関連事業は、主要顧客向けFPCの需要が堅調に推移したことにより、売上高は377,248百万円と20,770百万円(5.8%)の増収となり、営業利益は29,311百万円と14百万円の増益となりました。売上高営業利益率は7.8%と0.4ポイント低下しました。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ5,257百万円減少の307,998百万円となりました。産業素材関連事業他は、自動車向け超硬工具の需要は前連結会計年度を下回りましたが、円安の影響もあり、売上高は372,667百万円と8,482百万円(2.3%)の増収となりました。営業利益は、超硬工具の販売数量減少や人件費の上昇により、20,592百万円と475百万円の減益となりました。売上高営業利益率は5.5%と0.3ポイント低下しました。セグメント資産は、前連結会計年度末に比べ871百万円減少の993,532百万円となりました。なお、各セグメントの営業利益又は営業損失は、連結損益計算書の営業利益又は営業損失に対応しております。② 財政状態 資産合計(百万円)負債合計(百万円)純資産合計(百万円)自己資本比率(%)当連結会計年度末4,441,6291,911,1922,530,43751.6前連結会計年度末4,365,3971,933,5092,431,88850.6増減76,232△22,31798,5491.0 当連結会計年度末の資産合計は、主に退職給付信託の一部返還や株価の下落により退職給付に係る資産が減少した一方、棚卸資産や有形固定資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ76,232百万円増加し、4,441,629百万円となりました。当連結会計年度末の負債合計は、主に借入金や社債の減少などにより、前連結会計年度末に比べ22,317百万円減少し、1,911,192百万円となりました。当連結会計年度末の純資産合計は、退職給付に係る調整累計額の減少や配当金支払の一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上などにより、前連結会計年度末に比べ98,549百万円増加し2,530,437百万円となりました。自己資本比率は51.6%と、前連結会計年度末対比1.0ポイント上昇しております。③ キャッシュ・フロー 営業活動によるキャッシュ・フロー(百万円)投資活動によるキャッシュ・フロー(百万円)財務活動によるキャッシュ・フロー(百万円)現金及び現金同等物の残高(百万円)当連結会計年度402,253△223,904△150,825294,487前連結会計年度393,465△123,809△292,313268,273増減8,788△100,095141,48826,214 まず、営業活動によるキャッシュ・フローで402,253百万円の資金を獲得(前連結会計年度比8,788百万円の収入増加)しました。これは、税金等調整前当期純利益304,064百万円と減価償却費206,152百万円との合計、すなわち事業の生み出したキャッシュ・フローが510,216百万円あり、これに運転資本の増減などを差し引いた結果であります。投資活動によるキャッシュ・フローでは、223,904百万円の資金を使用(前連結会計年度比100,095百万円の支出増加)しました。これは、設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出199,824百万円などがあったことによるものであります。なお、営業活動によるキャッシュ・フローから投資活動によるキャッシュ・フローを差し引いたフリー・キャッシュ・フローは、178,349百万円のプラス(前連結会計年度は269,656百万円のプラス)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローでは、150,825百万円の資金の減少(前連結会計年度は292,313百万円の資金の減少)となりました。これは、借入金の減少や配当金の支払などがあったことによるものであります。以上により、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より26,214百万円(9.8%)増加し294,487百万円となりました。また、当連結会計年度末における有利子負債は、前連結会計年度末より25,629百万円減少し775,870百万円となり、有利子負債から現金及び現金同等物を差し引いたネット有利子負債は、51,843百万円減少し481,383百万円となりました。④ 生産、受注及び販売の実績当社及び連結子会社の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため生産、受注及び販売の状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績」に記載のセグメントごとの経営成績に関連付けて示しております。(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容① 経営成績等の状況の分析当社グループは、長期ビジョン「住友電工グループ2030ビジョン」の実現に向けたマイルストーンとして2023年度からスタートした「中期経営計画2025」において、経営上の目標の達成状況を、売上高、営業利益、税引前ROICを重要な指標として測定することとしております。当連結会計年度における「売上高」は4,679,789百万円(前連結会計年度比276,975百万円増)、「営業利益」は320,663百万円(前連結会計年度比94,045百万円増)、「税引前ROIC」は9.3%(前連結会計年度比1.7ポイント上昇)と、いずれの指標も前連結会計年度を上回る結果となりました。なお、営業利益の前連結会計年度比での増減要因は以下のとおりとなっております。前期営業利益226,618百万円売上数量の増加34,000 売値の低下・品種構成の変化△13,000 銅価・資材価格変動の影響△5,000 収益体質の改善58,000 為替変動の影響16,000 その他4,045 当期営業利益320,663 ② キャッシュ・フローの状況の分析、資本の財源及び資金の流動性に係る状況当社グループの資金需要のうち主なものは、事業運営に必要な設備資金や運転資金であり、必要資金については自己資金の充当及び金融機関からの借入や社債発行等により調達しております。当社グループは、健全かつ強固な財務体質を維持することを基本方針とし、自己資本比率を50%水準に維持することとしております。当連結会計年度末における「自己資本比率」は51.6%(前連結会計年度末比1.0ポイント上昇)となりました。また、資金の流動性を確保するために、金融機関とコミットメントライン契約を締結するとともに、当連結会計年度末現在において、日本格付研究所(JCR)より「AA(長期)、J-1+(短期)」、格付投資情報センター(R&I)より「AA-(長期)、a-1+(短期)」の格付を取得しております。キャッシュ・フローの状況については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フロー」に記載のとおりであります。 ③ 重要な会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。また、連結財務諸表を作成する際には、当連結会計年度末日時点の資産・負債及び当連結会計年度の収益・費用を認識・測定するため、合理的な見積り及び仮定を使用する必要があります。当社グループが採用している会計方針のうち重要なものについては、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」及び「重要な会計方針」に記載しております。また、当社グループが用いた会計上の見積りのうち重要なものについては、「第5 経理の状況」の「重要な会計上の見積り」に記載しております。

※本記事は「住友電気工業株式会社」の令和7年年3期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

スポンサーリンク

連結財務指標と単体財務指標の違いについて

連結財務指標とは

連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。

単体財務指標とは

単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。

本記事での扱い

本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

コメント