会社名 | 株式会社資生堂 |
業種 | 化学 |
従業員数 | 連27908名 単4023名 |
従業員平均年齢 | 38.9歳 |
従業員平均勤続年数 | 10.8年 |
平均年収 | 7205560円 |
1株当たりの純資産 | 1425.39円 |
1株当たりの純利益(単体) | -27.06円 |
決算時期 | 12月 |
配当金 | 40円 |
配当性向 | 74.3% |
株価収益率(PER) | 123.1倍 |
自己資本利益率(ROE)(連結) | 3.8% |
営業活動によるCF | 337億円 |
投資活動によるCF | ▲419億円 |
財務活動によるCF | ▲387億円 |
研究開発費※1 | 272億円 |
設備投資額※1 | 51.15億円 |
販売費および一般管理費※1 | 1276.13億円 |
株主資本比率※2 | 54.2% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の記載内容のうち、歴史的事実でないものは、有価証券報告書提出日(2025年3月26日)現在における当社グループの将来に関する見通しおよび計画に基づいた将来予測です。これらの将来予測には、リスクや不確定な要素などの要因が含まれており、実際の成果や業績などは、記載の見通しとは異なる可能性があります。 ①企業理念 THE SHISEIDO PHILOSOPHY当社は、1872年に創業し、2022年に150周年を迎えました。その創業当時から「『美と健康』を通じてお客さまのお役に立ち、社会へ貢献する」ことを目指して活動してきました。そして、2019年には、100年先も輝きつづけ、世界中の多様な人たちから信頼される企業になるべく、企業理念THE SHISEIDO PHILOSOPHYを定義しました。国・地域・組織・ブランドを問わず、この企業理念を常によりどころとして、“世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー”を目指しています。THE SHISEIDO PHILOSOPHYは、以下で構成されています。1. 私たちが果たすべき企業使命を定めた OUR MISSION2. これまでの150年を超える歴史の中で受け継いできた OUR DNA3. 資生堂全社員がともに仕事を進めるうえで持つべき心構え OUR PRINCIPLES 〔THE SHISEIDO PHILOSOPHY〕 〔OUR MISSION〕 BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD私たちは、美には人の心を豊かにし、生きる喜びやしあわせをもたらす力があると信じています。 資生堂は創業以来、人のしあわせを願い、美の可能性を広げ、新たな価値の発見と創造を行ってきました。これまでもこれからも、美しく健やかな社会と地球が持続していくことに貢献します。 美の力でよりよい世界を。それが、私たちの企業使命です。 THE SHISEIDO PHILOSOPHYの詳細については、当社企業情報サイトの「企業情報/THE SHISEIDO PHILOSOPHY」(https://corp.shiseido.com/jp/company/philosophy/)をご覧ください。 ②中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」と「アクションプラン 2025-2026」当社は、2023年に2023年から2025年までの3カ年を中心に取り組む中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」を策定しました。中長期的な成長を目指すために、本戦略において、「ブランド」、「イノベーション」、「人財」の3つの重点領域への投資を強化しています。これに加えて、2024年に昨今の急激な外部環境の変化を受け、2025年、2026年の2カ年を構造改革の加速フェーズとし、さらなる構造改革による収益性改善、現在の危機的な状況からの脱却と、その後の持続的成長を確実なものとするための基盤の再構築を行う「アクションプラン 2025-2026」を策定しました。「アクションプラン 2025-2026」では、変化の激しい市場でも安定的な利益拡大を実現するレジリエントな事業構造を目指し、「ブランド力の基盤強化」、「高収益構造の確立」および「事業マネジメントの高度化」を2025年、2026年で取り組む最優先課題として、その具体的施策を設定しています。 「アクションプラン 2025-2026」の詳細については、当社企業情報サイトの「投資家情報/IRライブラリー/決算短信・決算説明資料」(https://corp.shiseido.com/jp/ir/library/tanshin/)に掲載の「中期経営戦略の『アクションプラン 2025-2026』(2024年11月29日)」をご覧ください。 |
経営者による財政状態の説明
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。 (1) 経営成績(単位:百万円) 売上高コア営業利益営業利益税引前利益又は損失(△)親会社の所有者に帰属する当期利益又は損失(△)EBITDA当連結会計年度990,58636,3597,575△1,265△10,81389,564前連結会計年度973,03839,84228,13331,03721,74991,819増減率1.8%△8.7%△73.1%--△2.5%外貨増減率△2.7% 実質増減率△1.3% (注) 1 コア営業利益は、営業利益から構造改革に伴う費用・減損損失・買収関連費用等、非経常的な要因により発生した損益(非経常項目)を除いて算出しています。2 EBITDAは、コア営業利益に、減価償却費(使用権資産の減価償却費を除く)および償却費を加算しています。3 売上高における実質増減率は、為替影響、当連結会計年度・前連結会計年度におけるすべての事業譲渡影響および譲渡に係る移行期間中のサービス提供に関わる影響(以下「事業譲渡影響」という。)および「Dr. Dennis Gross Skincare」買収影響を除いて計算しています。 当連結会計年度における世界経済は、地政学リスクの高まり、物価高騰、為替相場のボラティリティ上昇等に伴う先行き不透明感が継続しました。中国では経済成長の減速が進んだ一方、欧州では緩やかな成長が続きました。また、米国では良好な雇用環境を背景に景気は堅調に推移したものの個人消費の勢いに陰りが見られるなど、先行きへの警戒感が高まりました。日本においては緩やかな景気回復となりました。国内化粧品市場は物価上昇が家計の重石になる状況が続くなか、堅調に推移しました。訪日外国人旅行者数はコロナ禍前を上回り過去最高を更新しましたが、旅行者の消費行動の変化を背景にインバウンド消費は想定よりも緩やかな成長となりました。海外化粧品市場の動向は地域ごとにばらつきが見られました。中国海南島などの免税市場では、規制強化に伴う流通在庫調整の影響は着実に縮小した一方で、中国人旅行者を中心とした消費の減速を背景に、厳しい市場環境が続きました。また中国では、景況感の悪化に伴う貯蓄の増加や消費低下を背景に停滞が続きました。欧米市場は下期に成長鈍化の兆しがみられ、全体としては緩やかな成長となりました。 当社グループは、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、環境問題やダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンを中心とした社会課題の解決に向けてイノベーションに積極的に取り組みながら、「Personal Beauty Wellness Company」として、スキンビューティーとウェルネスを融合し、一人ひとりの自分らしい健康美を実現する企業を目指します。そして2030年のビジョン「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」に取り組みます。 当期は、2023年から2025年までの3カ年を中心に取り組む中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」の2年目であり、グローバルコスト削減のための構造改革主要アクションの完遂と、グロスプロフィット最大化を追求する体制の構築に取り組みました。日本事業においては、「持続的な成長」、「稼げる基盤構築」、「人財変革」の3つを柱とする経営改革プラン「ミライシフトNIPPON 2025」の実行を通じて、収益性改善を着実に進めており、グローバルでも計画どおりにコスト構造改革の効果創出を実現しました。中国・トラベルリテール事業においては、組織構造の最適化を図るとともに、多様化する市場の変化を捉えた持続的な成長の実現を目指します。米州・欧州・アジアパシフィック事業においては、積極的な経営資源投下により成長加速を図ります。これらを通じ、適正な地域ポートフォリオへの転換を進め、不透明で変化の激しい市場環境にも柔軟に対応できる経営基盤の構築を進めていきます。2024年11月には、早期の収益性改善と、その後の持続的な成長をより確実なものとするために、次の2カ年で実行する「アクションプラン2025-2026」を策定しました。注力ブランドへの選択と集中とグローバルでの聖域なきコスト構造改革実行を通じて、変化の激しい市場でも安定的な利益拡大を実現するレジリエントな事業構造を目指し、「ブランド力の基盤強化」、「高収益構造の確立」、および「事業マネジメントの高度化」に取り組みます。① 売上高売上高は、中国・トラベルリテールにおいて、中国人旅行者を中心とした消費低下が継続し減収、米州でも、売上回復が遅れ、減収となりました。一方、日本・欧州は、成長性・収益性の高い注力領域への積極投資や戦略的マーケティングが功を奏し、力強い成長が継続しました。また、アジアパシフィックは緩やかな成長となりました。その結果、前年比1.8%増の9,906億円、現地通貨ベースでは前年比2.7%減、為替影響、事業譲渡影響および「Dr. Dennis Gross Skincare」買収影響を除く実質ベースでは前年比1.3%減となりました。 ブランド別には、事業譲渡・買収の影響を除いた「実質外貨前年比」の比較において、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「エリクシール」およびフレグランスは好調が継続した一方、「Drunk Elephant」は回復が遅れました。 ② 売上原価売上原価は、前年比8.6%減の2,374億円となりました。売上高に対する比率は、前年の減損損失や構造改革費用などによる影響に加え、在庫償却関連費用の減少や、事業譲渡に伴う製品供給影響の減少などにより前年比2.7ポイント減の24.0%となりました。なお、事業譲渡影響および減損損失影響などを除いた実質の原価率は生産数量減少に伴う原価増加により、前年比0.3ポイント増の23.4%となりました。 ③ 販売費及び一般管理費販売費及び一般管理費は、前年比7.9%増の7,514億円となりました。コア営業利益ベースの内訳は次のとおりです。(イ) マーケティングコスト(注) 1マーケティングコストの売上高に対する比率は、機動的なコストマネジメントにより減少したものの、ブランド価値向上のための投資継続強化により、前年比1.9ポイント増の28.6%となりました。(ロ) ブランド開発費・研究開発費ブランド開発費・研究開発費の売上高に対する比率は、前年比0.1ポイント減の3.9%となりました。(ハ) 人件費(注) 2人件費の売上高に対する比率は、インフレに伴い費用が増加したものの、構造改革等による人件費の適正化を進めた結果、前年比0.4ポイント減の23.0%となりました。(ニ) 経費経費(その他費用)の売上高に対する比率は、DX関連の投資費用が増加したことに伴い前年比0.4ポイント増の17.5%となりました。販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は272億円となり、売上高に対する比率は2.7%となりました。なお、研究開発活動についての詳細は、「6 研究開発活動」に記載しています。(注) 1 マーケティングコストは、PBP(パーソナルビューティーパートナー)関連諸費用を含めた場合は、売上高に対する比率は37.8%となりました。2 人件費は、PBP(パーソナルビューティーパートナー)関連諸費用を除いた場合は、売上高に対する比率は13.8%となりました。 ④ コア営業利益コア営業利益は364億円、2024年11月に公表した業績予想の350億円は超過したものの、前連結会計年度に対しては35億円の減益となりました。トラベルリテール・米州事業の減益を、日本事業での大幅な増益や、全社を挙げた構造改革効果およびコストマネジメントにて一部相殺しました。また、「その他」は、トラベルリテール・中国事業向けの内部売上高減少に伴う差益減等により減益となったほか、「調整額」は未実現利益消去額の変動影響などにより、減益となりました。 ⑤ 営業利益営業利益は、前連結会計年度にパーソナルケア製品の生産事業譲渡に伴う減損損失、構造改革費用、事業譲渡損に加え、大阪府内自社2工場の統合に係る減損損失等を計上したものの、社屋売却による固定資産除売却益の計上があった一方、当連結会計年度においては日本事業の早期退職支援プランに関する構造改革費用を計上したことなどから、前連結会計年度に対し206億円減益の76億円となりました。 ⑥ 税引前利益又は損失税引前利益又は損失は、営業利益が前連結会計年度に対し206億円減益の76億円となったことや、セラーノート(デットファイナンスの一種。売主が一部融資を行う)に関連する費用として128億円の長期貸付金の損失評価引当金繰入額を計上したことにより、前連結会計年度に対し323億円減少し、13億円の損失となりました。なお、長期貸付金の損失評価引当金繰入額の計上は当連結会計年度のキャッシュ・フローに影響を与えるものではありません。 ⑦ 親会社の所有者に帰属する当期利益又は損失親会社の所有者に帰属する当期利益又は損失は、前連結会計年度に対し326億円減少し、108億円の損失となりました。コア営業利益の減益や、非経常項目において主に日本事業の早期退職支援プランに関する構造改革費用を計上したことに加え、セラーノートに関連する費用として長期貸付金の損失評価引当金繰入額を計上したことが影響しました。 ⑧ EBITDA EBITDAは、前連結会計年度に対し23億円減益の896億円となり、マージンは9.0%となりました。 当連結会計年度における連結財務諸表項目(収益および費用)の主な為替換算レートは、1ドル=151.5円、1ユーロ=163.8円、1中国元=21.0円です。 (報告セグメントの業績)各報告セグメントの業績は次のとおりです。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、前連結会計年度との比較・分析は変更後の区分方法に基づいています。 売上高(外部顧客への売上高) 当連結会計年度(百万円)構成比(参考)前連結会計年度(百万円)構成比増減(百万円)増減率外貨増減率実質増減率日本事業283,77628.6%259,90026.7%23,8769.2%9.2%9.5%中国事業249,95225.2%247,92125.5%2,0300.8%△5.3%△4.6%アジアパシフィック事業71,6507.2%67,2836.9%4,3676.5%0.9%2.5%米州事業118,54712.0%110,29411.4%8,2527.5%0.0%△7.0%欧州事業132,66513.4%116,94912.0%15,71613.4%5.2%8.2%トラベルリテール事業107,83410.9%132,52513.6%△24,691△18.6%△23.8%△23.8%その他26,1582.7%38,1633.9%△12,004△31.5%△32.4%13.5%合計990,586100.0%973,038100.0%17,5471.8%△2.7%△1.3% コア営業利益又は損失 (参考) 当連結会計年度(百万円)売上比 (参考)前連結会計年度(百万円)売上比 増減(百万円)増減率 セグメント間の内部売上高又は振替高を含めた売上高 当連結会計年度(百万円)前連結会計年度(百万円)日本事業28,0729.9%1,3330.5%26,738- 284,675260,806中国事業12,2714.8%6,9672.8%5,30376.1% 254,107251,671アジアパシフィック事業6,0068.0%5,0697.1%93618.5% 75,49971,569米州事業2420.2%11,2009.7%△10,958△97.8% 124,365115,853欧州事業3,6772.6%3,3452.7%3319.9% 141,439123,727トラベルリテール事業5,0064.6%17,11112.9%△12,104△70.7% 108,274132,768その他△24,912△10.2%△22,824△9.0%△2,087- 243,246252,316計30,3642.5%22,2051.8%8,15936.7% 1,231,6081,208,715調整額5,995-17,636-△11,641- △241,022△235,676合計36,3593.7%39,8424.1%△3,482△8.7% 990,586973,038 (注)1 当連結会計年度より、当社グループ内の業績管理区分の一部見直しに伴い、従来「日本事業」に計上していた一部業績を「その他」に計上しています。なお、前連結会計年度のセグメント情報については、変更後の区分方法により作成したものを記載しています。2 売上高における実質増減率は、為替影響、事業譲渡影響および「Dr. Dennis Gross Skincare」買収影響を除いて計算しています。3 「その他」に計上しているパーソナルケア製品生産事業に係る売上高は、資生堂久喜工場の譲渡に伴い、2023年4月1日以降、一部を除き発生していません。4 「その他」は、本社機能部門、㈱イプサ、生産事業、飲食業およびヘルスケア事業(美容食品の販売)等を含んでいます。5 コア営業利益又は損失における売上比は、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めた売上高に対する比率です。6 コア営業利益又は損失の調整額は、主にセグメント間の取引消去の金額です。 ① 日本事業日本事業では、経営改革プラン「ミライシフト NIPPON 2025」の実行を通じた収益性改善を引き続き進めています。成長性・収益性の高いブランド・商品・お客さま接点へ活動を集中させることで成長の加速に取り組み、愛用者数の増加が続いている「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「エリクシール」を中心とした注力ブランドで力強い成長を実現しました。また、戦略的マーケティングによりファンデ美容液という新市場創出に取り組み、「SHISEIDO エッセンス スキングロウ ファンデーション」などが好調に推移したほか、「クレ・ド・ポー ボーテ」や「エリクシール」の新商品の好調も成長をけん引しました。訪日外国人旅行者数はコロナ禍前の水準を上回り過去最高を更新しましたが、旅行者の消費行動の変化を背景にインバウンド消費は想定よりも緩やかな成長にとどまりました。以上のことから、売上高は2,838億円となりました。前年比は9.2%増、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比9.5%増となりました。コア営業利益は281億円、売上増による差益増や費用効率化などにより、前年に対し267億円改善しました。 ② 中国事業中国事業では、市場環境変化のなかで成長と収益性のバランスを取りながら、より消費者のニーズを踏まえたブランド・商品の価値伝達による持続的成長への転換を進めています。景況感の悪化に伴う消費低下の影響を受ける中でも、中国最大のEコマースイベントである「ダブルイレブン」では、ALPS処理水の海洋放出後の日本製品買い控えの影響があった前年からの反動もあり、大幅伸長しました。通期では、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「アネッサ」、「NARS」は成長しましたが、「SHISEIDO」は苦戦が続きました。以上のことから、売上高は2,500億円となりました。前年比は0.8%増、現地通貨ベースでは前年比5.3%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比4.6%減となりました。コア営業利益は123億円、売上減に伴う差益減を、原価低減、固定費低減などの構造改革効果などにより相殺し、前年に対し53億円の増益となりました。 ③ アジアパシフィック事業アジアパシフィック事業の国・地域では、台湾で市場鈍化の影響を受けましたが、タイを中心とする東南アジアがけん引し成長を維持しました。「アネッサ」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、フレグランスで力強い成長となりました。以上のことから、売上高は717億円となりました。前年比は6.5%増、現地通貨ベースでは前年比0.9%増、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比2.5%増となりました。コア営業利益は60億円、売上増に伴う差益増などにより、前年に対し9億円の増益となりました。 ④ 米州事業米州事業では、「NARS」や「Tory Burch」が増収となりました。一方、上期に一時的な生産減・出荷減が生じ、第3四半期において生産は安定化したものの、「Drunk Elephant」は売上回復が遅れました。以上のことから、売上高は1,185億円となりました。前年比は7.5%増、現地通貨ベースでは前年並み、為替影響、事業譲渡影響および「Dr. Dennis Gross Skincare」買収影響を除く実質ベースでは前年比7.0%減となりました。コア営業利益は2億円、売上減に伴う差益減などにより、前年に対し110億円の減益となりました。 ⑤ 欧州事業欧州事業では、「SHISEIDO」や「NARS」が伸長したほか、フレグランスでは「narciso rodriguez」や新商品が貢献した「ISSEY MIYAKE」が好調をけん引しました。以上のことから、売上高は1,327億円となりました。前年比は13.4%増、現地通貨ベースでは前年比5.2%増、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比8.2%増となりました。コア営業利益は37億円、売上増に伴う差益増などにより、前年に対し3億円の増益となりました。 ⑥ トラベルリテール事業トラベルリテール事業(空港・市中免税店などでの化粧品・フレグランスの販売)では、訪日外国人旅行者数の増加により、日本において堅調な回復を実現しました。一方、中国海南島・韓国では、中国人旅行者を中心とした消費の大幅な減少の影響を受け、低い出荷レベルが続きました。以上のことから、売上高は1,078億円となりました。前年比は18.6%減、現地通貨ベースでは前年比23.8%減、為替影響および事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比23.8%減となりました。コア営業利益は50億円、売上減に伴う差益減などにより、前年に対し121億円の減益となりました。 (生産、受注および販売の実績)生産、受注および販売の実績は次のとおりです。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分方法を変更しており、増減率は変更後の区分方法に基づいています。① 生産実績当連結会計年度における生産実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。 セグメントの名称金額(百万円)増減率(%)日本事業--中国事業4,523△7.6アジアパシフィック事業2,409△13.7米州事業62,96445.1欧州事業29,853△7.4トラベルリテール事業--その他127,784△10.8合計227,5360.4 (注) 1 セグメント間取引については相殺消去しています。 2 金額は製造原価によっています。 ② 受注状況当社グループ製品については受注生産を行っていません。また、OEM(相手先ブランドによる生産)等による受注生産を一部実施しているものの金額は僅少です。 ③ 販売実績当連結会計年度における販売実績を報告セグメントごとに示すと、次のとおりです。 セグメントの名称金額(百万円)増減率(%)日本事業283,7769.2中国事業249,9520.8アジアパシフィック事業71,6506.5米州事業118,5477.5欧州事業132,66513.4トラベルリテール事業107,834△18.6その他26,158△31.5合計990,5861.8 (注) セグメント間取引については相殺消去しています。 (2) 財政状態① 資金調達と流動性マネジメント当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、流動性の維持、ならびに健全な財政状態を常に目指し、安定的な営業キャッシュ・フローの創出、幅広い資金調達手段の確保に努めています。成長を維持するために将来必要な運転資金および設備投資・投融資資金は、主に手元のキャッシュと営業活動からのキャッシュ・フローに加え、借入や社債発行により調達しています。資金調達に関しては、有利な条件で調達が可能となる格付シングルAレベルを維持すべく、ネットデット・エクイティ・レシオ0.2倍、ネットデット・EBITDA・レシオ0.5倍を目安としながら、市場環境などを勘案して最適な方法でタイムリーに実施します。ただし、今後の収益力およびキャッシュ・フロー創出力を考慮したうえで、上記指標は株主還元方針と併せて、さらなる資本効率の向上に資する最適資本構成になるよう、適宜見直します。手元流動性については、連結売上高の1.5ヶ月程度を一つの目安としています。当連結会計年度末の現金及び預金の総額は1,229億円となり、手元流動性は連結売上高(2024年1月1日から2024年12月31日までの期間)の1.5ヶ月分となりました。一方、当連結会計年度末現在の有利子負債残高は3,656億円となっています。金融機関と締結しているコミットメントライン契約の未使用額1,000億円、国内普通社債の発行登録枠の未使用枠2,850億円を有し、資金調達手段は分散化されています。当連結会計年度末現在において、当社グループの流動性は十分な水準にあり、資金調達手段は分散されていることから、財務の柔軟性は高いと考えています。 ② 格付け当社グループは、流動性および資本政策に対する財務の柔軟性を確保し、資本市場を通じた十分な資金リソースへのアクセスを保持するため、一定水準の格付けの維持が必要であると考えています。当社グループは、社債による資金調達を行うため、ムーディーズ・ジャパン株式会社より格付けを取得しています。2025年2月28日現在の発行体格付けはA3(見通し:ネガティブ)となっています。 ③ 資産および負債・資本(資産)総資産は、持分法で会計処理されている投資が減少した一方、「Dr. Dennis Gross Skincare」の買収によりのれんおよび無形資産などが増加したことにより、前連結会計年度末に比べ764億円増の13,318億円となりました。(負債)負債は、営業債務及びその他の債務が減少したものの、社債及び借入金の増加などにより、621億円増の6,772億円となりました。(資本)資本は、配当金支払いにより利益剰余金が減少した一方、円安により在外営業活動体の換算差額が増加したことなどから、143億円増の6,546億円となりました。1株当たり親会社所有者帰属持分は、前連結会計年度末に対し35.27円増の1,583.47円となり、親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末比1.8ポイント減の47.5%となりました。また、親会社の所有者に帰属する持分に対する現金及び預金の総額を除いた有利子負債(リース負債除く)の割合を示すネットデット・エクイティ・レシオは0.18倍となりました。 (3) キャッシュ・フローの状況(単位:百万円) 前連結会計年度当連結会計年度営業活動によるキャッシュ・フロー89,02648,403投資活動によるキャッシュ・フロー△35,536△83,738財務活動によるキャッシュ・フロー△75,64223,357現金及び現金同等物の期末残高104,68598,479 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ62億円減少し、985億円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、減価償却費及び償却費(757億円)、長期貸付金の損失評価引当金繰入額(128億円)などの増加項目があった一方、税引前損失(13億円)、営業債務の増減額(301億円)、営業債権の増減額(105億円)などの減少項目があったことにより、前連結会計年度末に比べ406億円減少の484億円の収入となりました。なお、利息及び配当金の受取額には(株)ファイントゥデイホールディングス(以下「FTH」という。)からの配当金(36億円)が含まれています。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローは、FTHの全株式を譲渡したことによる関連会社株式の売却による収入(128億円)があった一方、子会社の取得による支出(489億円)や、ITシステムへの投資等の無形資産の取得による支出(258億円)、工場設備への投資等である有形固定資産の取得による支出(249億円)などにより、前連結会計年度末に比べ482億円支出は増加し、837億円の支出となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入による収入(510億円)、短期借入金の増加(420億円)、社債の発行による収入(150億円)があった一方、長期借入金の返済による支出(300億円)、リース負債の返済による支出(264億円)、配当金の支払額(240億円)などにより、前連結会計年度末に比べ990億円収入は増加し、234億円の収入となりました。 (4) 重要性がある会計方針および見積り当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。その作成には経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としています。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案し合理的に判断していますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表で採用する重要性がある会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「3.重要性がある会計方針」および「4.重要な会計上の見積りおよび判断」に記載しています。 |
※本記事は「株式会社資生堂」の令和6年12期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
連結財務指標と単体財務指標の違いについて
連結財務指標とは
連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。
単体財務指標とは
単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。
本記事での扱い
本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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