会社名 | 花王株式会社 |
業種 | 化学 |
従業員数 | 連34257名 単8199名 |
従業員平均年齢 | 41.1歳 |
従業員平均勤続年数 | 17.6年 |
平均年収 | 8024000円 |
1株当たりの純資産 | 1518.89円 |
1株当たりの純利益 | 60.17円 |
決算時期 | 12月 |
配当金 | 150円 |
配当性向 | 249.3% |
株価収益率(PER) | 96.4倍 |
自己資本利益率(ROE) | 3.8% |
営業活動によるCF | 2024億円 |
投資活動によるCF | ▲1093億円 |
財務活動によるCF | ▲799億円 |
研究開発費※1 | 113億円 |
設備投資額※1 | 124.16億円 |
販売費および一般管理費※1 | 386.08億円 |
株主資本比率※2 | 57% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当社グループが有価証券報告書提出日現在において合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。 (1)会社の経営基本方針当社グループは、「豊かな共生世界の実現」をパーパス(社会における存在意義)に掲げ、生活者・顧客の立場にたって、心をこめた“ESG視点でのよきモノづくり”を行い、世界中の人々のこころ豊かな未来と、人と地球が共に生きる持続可能な共生世界の実現に貢献することを目指しています。私たちは、企業理念である「花王ウェイ」をグループ全員で共有し、考え方や行動の拠り所として日々実践し、清潔・美・健康の領域を中心に、時代の変化に対応しながら130年余り事業を展開してきました。2009年には、人類だけでなく自然界にもよき存在であるようにと「環境宣言」を行い、自然と調和するこころ豊かな毎日を目指して、その歩みをさらに一歩進めました。2019年にはESG戦略「Kirei Lifestyle Plan」(以下、KLP)を発表し、ESGを経営の根幹に据えることを宣言しました。しかし今、私たちが使命に掲げる「豊かな共生世界」を実現するための土台である人の生命に危機が及んでいます。そして今後もその脅威は、私たちの生活を根幹から脅かす存在であり続けることが予想されます。このような中、私たちはこの切実な社会的課題に花王らしいアプローチで取り組んでいきます。生活や生態に加え、人の生命を守ることを強く意識し、未来のいのちを守る会社になっていきます。「きれいを こころに 未来に」をコーポレートスローガンに掲げ、地球が生きる場として持続的にきれいに保たれること、社会が持続的に豊かであること、そして人が危害から守られて笑顔で暮らせること、これらすべてを実現するために貢献していきます。結果として、これらが財務的な成果、そしてステークホルダーへの還元へと繋がり、この仕組み自体が持続していきます。今後も花王グループは、より高いレベルでの企業価値向上を目指していきます。 (2)中長期的な会社の経営戦略と目標とする経営指標① 長期経営戦略当社グループは2030年までにあるべき姿として、持続的な利益ある成長と社会のサステナビリティへの貢献との両立によって、これまでの『グローバルで存在感のある会社「Kao」』になるという将来像をさらに一歩進め、『グローバルで存在価値のある企業「Kao」』を目指します。ESGを通じて将来にわたって、人・社会・地球にとって価値のある存在になっていきます。私たちは、環境(E)においては、ゼロ浪費、カーボンゼロ、さらにその先のカーボンネガティブを目指します。社会(S)においては、無駄な消費がなくなることを願い、その人に寄り添った唯一無二のパーソナライズを進めていきます。そして、ガバナンス(G)をしっかりと効かせながら、志を共にする仲間と共に正道を歩んでいきます。最小限の資源で最大の価値を生み出す、”Maximum with minimum”を経営の指針として、より良い明日をつくるために今後も我々は成長し続けます。 グローバルで存在価値のある企業「Kao」■持続可能な社会に欠かせない企業■高社会貢献&高収益グローバル企業■ステークホルダーへの成長レベル還元 ② 中期経営計画 ■2023年度の進捗と今後の計画「グローバル・シャープトップ」事業の構築のため、生活者・顧客に欠かせない事業・高収益事業へのグローバルシフトを進めています。2023年は、ビオレUVケアの欧州・ブラジルでの好調、セルフタンニングや日やけ止め、スキンケア商品等をオーストラリア・イギリス・アメリカ等で展開するBondi Sands社の買収等、スキンプロテクション事業のグローバル拡大の道筋を作りました。ファブリック&ホームケア事業ではグローバル拡大ポテンシャルの高い新商品を投入し、ヘアサロン向け製品では「ORIBE」を中心に欧米展開強化を進めました。また、自社ECサイト「My Kao Mall」において各事業カテゴリーの展開が始動しました。今後、UVケア製品の海外展開をさらに加速するほか、高付加価値のシート型製品やヘアケア事業における新製品の投入、エコケミカルオンリーワン技術のグローバル展開の継続強化を進めていきます。「グローバル・シャープトップ」事業を支える人財の育成・獲得、組織運営の改革も進めています。対話を軸としたアグレッシブな人財への投資を優先し、研鑽の場や自学共生機会の提供、権限委譲、透明性ある公正な評価・処遇、最適配置を行っていきます。また、部門に依存しないタスク型チーム編成により、スピード感のある推進体制に移行し、マトリックス運営から脱却していきます。資本効率・収益性の改善については、アタック、ビオレといった高収益事業を拡大するほか、戦略的値上げや構造改革による収益改善、事業ポートフォリオの見直しを行い、経営資本の価値最大化を進めました。これらの取り組みは、当社の業績や財務パフォーマンスに持続的で長期的な影響をもたらすと考えております。今後も引き続き、規律あるポートフォリオ管理、利益を重視した「よきモノづくり」を強化し、高付加価値化推進によりさらなる稼ぐ力の改革を推進します。さらに、パートナーとなる他社との共創による事業構築を進め、当社グループが有する技術資産の最大化を加速していきます。これらの戦略により、業績を向上させ、長期的な価値創造を実現することを目指しています。 ③ 目標とする経営指標当社グループは、EVA(経済的付加価値)及びROIC(投下資本利益率)を経営の主指標としています。その本質は、株主等の資金提供者の視点を持って、資本を効率的に活用し利益を生み出すことにあります。EVAを継続的に増加させていくことが企業価値の増大につながり、株主だけでなく全てのステークホルダーの長期的な利益とも合致するものと考えています。そして事業規模の拡大を図りながら、EVAを増加させることを事業活動の目標としており、個別事業の評価、設備や買収等の投資評価、年度ごとの業績管理や報酬制度等に活用しています。さらにROICにより事業ポートフォリオマネジメントを強化することで、EVA経営の深化を図っています。ROICは、各事業における資本コストに対する意識を高めるとともに、それぞれの特性や競争環境を踏まえた管理を可能にします。事業別に利益と併せて資本効率も重視することにより、成長事業への重点投資と健全なポートフォリオの改善を実施し、EVAの向上を目指します。 (3)会社の対処すべき課題気候変動、水や森林資源の枯渇等の環境問題及び人権問題、高齢化社会の進行等の社会問題はますます深刻化しています。世界は新型コロナウイルス感染症拡大前の状況に戻ってきていますが、中国市場の減速、欧州や中東の地政学リスクやインフレによるコストの高止まりの状況は続いており、経営環境も不透明な状況が続きました。このような状況の中で、当社グループは、社会課題の解決に軸足を据えて、環境に負の影響を与える既存の大量生産・大量消費型のビジネスから脱却し、無駄なモノはつくらず、お客様に長く愛される魅力ある商品を生み出し続ける循環型モデルへ転換しなければなりません。このモデルを目指すべく、2020年12月に中期経営計画「K25」を発表して企業活動を進めてまいりました。しかし、急激な原材料価格高騰と高止まり、インバウンド消失と中国市場の変化等、様々な外部要因の影響を受けました。そこで、構造改革と成長戦略を軸に中期経営計画を見直し、2023年8月に中期経営計画「K27」を発表いたしました。「K25」で設定した経営方針は変えず、戦略的値上げの実施やTCR(トータル・コスト・リダクション)強化、ROIC(投下資本利益率)の全社導入を進め、構造改革を断行します。そして、「グローバル・シャープトップ」事業を擁立する企業を目指し、適切なポートフォリオ管理を行い、戦略的な投資やM&A・再編もスピード感をもって実行していきます。 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において判断したものです。 (1)経営成績の分析注:以下、「実質」とは為替変動の影響を除く増減率を表示しています。また、数量等には製品構成差を含んでいます。 業績の評価及び、将来の予測に有用な情報を提供するため、非定常的な要因により一時的に発生した損益(事業撤退・縮小や資産の除売却から生じる損益等)を除いた利益を「コア利益」として、さらに化粧品のブランド統廃合による返品引当金は売上控除対象となるため、その影響を除いた売上高を「コア売上高」として表示します。なお、下記表内の営業利益以下の下段数値は、「コア利益」に基づいて算出しています。 売上高(億円)営業利益(億円)営業利益率(%)税引前利益(億円)当期利益(億円)親会社の所有者に帰属する当期利益(億円)基本的1株当たり当期利益(円)2023年12月期15,3266003.963846243994.371,1477.51,185883860184.952022年12月期15,5111,1017.11,158877860183.28増減率(1.2)%(45.5)%-(44.9)%(47.4)%(49.0)%(48.5)%実質(3.8)%4.2 %-2.3 %0.6 %(0.1)%0.9 % 当期は、世界中に様々な影響をもたらした新型コロナウイルス感染症が収束し、日常の生活を取り戻しましたが、一方で、成長が続いていた中国市場の減速、欧州や中東での地政学リスクやインフレによるコストの高止まり等、経営環境は不透明な状況が続きました。 当社グループの主要市場である日本のコンシューマープロダクツ(トイレタリー及び化粧品)市場は、小売店の販売実績や消費者購入調査データによると前期を上回りました。このような中、花王グループは人々の生活様式や消費行動、販売チャネル構造の変化、さらには世界的な原材料価格の上昇等への対応に努めました。売上高は、前期に対して1.2%減の1兆5,326億円(為替2.6%増、実質3.8%減(内訳:数量等3.6%減、価格0.1%減))となりました。コア売上高は、前期に対して0.7%減の1兆5,409億円(実質3.2%減)となりました。営業利益は、構造改革費用を547億円計上したことにより、600億円(対前期500億円減)、営業利益率は3.9%となりました。コア営業利益は、1,147億円(対前期46億円増)となりました。税引前利益は638億円(対前期520億円減)、当期利益は、462億円(対前期416億円減)となりました。基本的1株当たり当期利益は94.37円となり、前期の183.28円より88.91円減少(前期比48.5%減)しました。基本的1株当たりコア当期利益は184.95円となり、前期の183.28円より1.67円増加(前期比0.9%増)しました。当社グループが経営指標としているROIC(投下資本利益率)は4.1%となり、EVA(経済的付加価値)は、NOPAT(税引後営業利益)が増加する中、資本コストが増加し、前期を3億円上回り149億円となりました。 当期の海外連結子会社等の財務諸表項目(収益及び費用)の主な為替の換算レートは、次のとおりです。 第1四半期(1-3月)第2四半期(4-6月)第3四半期(7-9月)第4四半期(10-12月)米ドル132.29円[116.30円]137.30円[129.69円]144.49円[138.27円]147.84円[141.47円]ユーロ141.98円[130.45円]149.50円[138.14円]157.23円[139.25円]159.01円[144.22円]中国元19.33円[18.32円]19.58円[19.63円]19.94円[20.20円]20.45円[19.88円] 注:[ ]内は前期の換算レート 〔セグメント別の概況〕セグメントの業績 売上高営業利益(上段)コア営業利益(下段)通期増減率通期増減(億円)2022年12月期(億円)2023年12月期(億円)(%)実質(%)2022年12月期2023年12月期(億円)利益率(%)(億円)利益率(%) ファブリック&ホームケア製品3,4213,4912.11.340011.750714.5106 51014.6109 サニタリー製品1,7451,734(0.6)(2.6)(94)(5.4)(306)(17.6)(212) (91)(5.2)3 ハイジーン&リビングケア事業5,1655,2251.20.03075.92013.9(105) 4198.0112 ヘルス&ビューティケア事業3,6953,9296.33.13469.440510.359 42810.982 ライフケア事業5575631.0(0.6)(0)(0.0)(53)(9.4)(53) (13)(2.3)(13) 化粧品事業2,5152,386(5.1)(6.7)1415.6(54)(2.3)(195) 532.2(88)コンシューマープロダクツ事業11,93312,1031.4(0.5)7936.64994.1(294)8877.394ケミカル事業4,0253,661(9.0)(13.4)2957.32366.4(60)2486.8(48)小 計15,95815,764(1.2)(3.7)1,089-735-(354)1,135-46セグメント間消去又は調整(447)(439)--12-(134)-注 (146)12-0合 計15,51115,326(1.2)(3.8)1,1017.16003.9(500)1,1477.546 注:全社共通の構造改革費用 販売実績(億円、増減率%)通期日本アジア米州欧州合計 ファブリック&ホームケア製品2022年2,92945537-3,4212023年3,00345138-3,491増減率2.5(0.9)3.4-2.1実質2.5(6.2)0.9-1.3サニタリー製品2022年7749701-1,7452023年8049291-1,734増減率3.9(4.2)(22.2)-(0.6)実質3.9(7.7)(23.9)-(2.6)ハイジーン&リビングケア事業2022年3,7031,42537-5,1652023年3,8071,38038-5,225増減率2.8(3.2)2.9-1.2実質2.8(7.2)0.4-0.0ヘルス&ビューティケア事業2022年2,0023399064493,6952023年2,0533451,0125193,929増減率2.52.011.615.76.3実質2.5(2.3)4.95.93.1ライフケア事業2022年437011825572023年42111391563増減率(3.7)67.718.2(11.3)1.0実質(3.7)64.411.0(18.0)(0.6)化粧品事業2022年1,607596682442,5152023年1,535500772742,386増減率(4.5)(16.0)12.912.2(5.1)実質(4.5)(17.9)5.92.5(6.7)コンシューマープロダクツ事業2022年7,7502,3601,12969411,9332023年7,8172,2261,26679412,103増減率0.9(5.6)12.114.41.4実質0.9(9.2)5.44.7(0.5)ケミカル事業2022年1,4019827059374,0252023年1,3398676118443,661増減率(4.5)(11.7)(13.3)(9.9)(9.0)実質(4.5)(15.8)(21.7)(18.1)(13.4)セグメント間売上高の消去2022年(385)(39)(2)(21)(447)2023年(388)(32)(1)(19)(439)売上高2022年8,7663,3021,8331,61015,5112023年8,7683,0621,8771,62015,326増減率0.0(7.3)2.40.6(1.2)実質0.0(11.0)(5.0)(8.3)(3.8) 注:コンシューマープロダクツ事業は、外部顧客への売上高を記載しており、ケミカル事業ではコンシューマープロダクツ事業に対する売上高を含めています。地域別の売上高は、販売元の所在地に基づき分類しています。 売上高 対前年同期比分析 増減率(%) 為替(%)実質(%) 数量等(%)価格(%) ファブリック&ホームケア製品2.10.71.3(4.0)5.3 サニタリー製品(0.6)2.0(2.6)(7.1)4.5 ハイジーン&リビングケア事業1.21.10.0(5.0)5.0 ヘルス&ビューティケア事業6.33.23.11.12.0 ライフケア事業1.01.5(0.6)(3.2)2.6 化粧品事業(5.1)1.6(6.7)(7.3)0.6コンシューマープロダクツ事業1.41.9(0.5)(3.5)3.0ケミカル事業(9.0)4.4(13.4)(3.8)(9.6)合 計(1.2)2.6(3.8)(3.6)(0.1) 注:ケミカル事業の売上高は、セグメント間取引を含んでいます。 売上高に占める海外に所在する顧客への売上高の割合は、前期の45.4%から44.3%となりました。 コンシューマープロダクツ事業売上高は、前期に対して1.4%増の1兆2,103億円(為替1.9%増、実質0.5%減(内訳:数量等3.5%減、価格3.0%増))となりました。コア売上高は、前期に対して2.1%増の1兆2,187億円(実質0.2%増)となりました。世界の市場は、新型コロナウイルス感染症の収束に伴い需要は回復傾向にありますが、これまで成長をけん引してきた中国市場は、景況感の悪化やALPS処理水の影響を受け減速しました。このような中、原材料価格の上昇に対応した戦略的値上げを継続的に推進したほか、高付加価値製品の提案やブランドロイヤリティ強化の取り組みにより収益性が向上しました。以上の結果、日本の売上高は、前期に対して、0.9%増の7,817億円となりました。コア売上高は、前期に対して1.9%増の7,900億円となりました。アジアの売上高は、5.6%減の2,226億円(実質9.2%減)となりました。米州の売上高は、12.1%増の1,266億円(実質5.4%増)となり、欧州の売上高は、14.4%増の794億円(実質4.7%増)となりました。営業利益は、減損損失を含む構造改革費用388億円の計上の影響等により、499億円(対前期294億円減)となりました。コア営業利益は、戦略的値上げを実施し原材料価格の上昇を吸収したこと等により、887億円(対前期94億円増)となりました。 当社は、〔ハイジーン&リビングケア事業〕、〔ヘルス&ビューティケア事業〕、〔ライフケア事業〕、〔化粧品事業〕を総称して、コンシューマープロダクツ事業としております。 〔ハイジーン&リビングケア事業〕売上高は、前期に対し1.2%増の5,225億円(為替1.1%増、実質0.0%増(内訳:数量等5.0%減、価格5.0%増))となりました。ファブリック&ホームケア製品の売上高は、前期に対して2.1%増の3,491億円(為替0.7%増、実質1.3%増(内訳:数量等4.0%減、価格5.3%増)となりました。ファブリックケア製品では、日本では、衣料用洗剤で戦略的値上げの実施と新製品・改良品の発売が寄与し、売り上げは市場伸長を上回り、シェアも拡大しました。また、下期に改良と値上げを実施した衣料用漂白剤「ワイドハイター」が好調に推移し、柔軟仕上げ剤は回復傾向にあります。ホームケア製品の売り上げは、ほぼ前期並みでした。日本では、食器用洗剤「キュキュット」の改良等により、売り上げ、シェアを伸ばしたほか、新しいトイレ掃除を提案した「トイレマジックリン」の新製品が好調に推移しました。ファブリック&ホームケア製品のコア営業利益は、510億円(対前期109億円増)となりました。サニタリー製品の売上高は、前期に対して0.6%減の1,734億円(為替2.0%増、実質2.6%減(内訳:数量等7.1%減、価格4.5%増)となりました。生理用品「ロリエ」は、日本では共感型コミュニケーションによりロイヤルユーザーが増加すること等でブランド力が向上し、売り上げ、シェアが伸長しました。中国ではALPS処理水の影響で販売促進活動を抑制したことの影響を受けました。ベビー用紙おむつ「メリーズ」の売り上げは前期を下回りました。日本では、戦略的値上げを実施しましたが、中国向けの越境ECが苦戦し、売り上げは前期を下回りました。中国では市場縮小や厳しい競争環境により、売り上げは前期を下回りました。インドネシアは好調に推移しました。また、2023年12月11日にエステー株式会社と猫用システムトイレ「ニャンとも清潔トイレ」に関する事業の譲渡契約を締結しました。サニタリー製品のコア営業利益は、91億円(対前期3億円増)の損失となりました。ハイジーン&リビングケア事業の営業利益は、ベビー用紙おむつ事業等で減損損失を含む構造改革費用を218億円計上し201億円(対前期105億円減)となり、コア営業利益は、ファブリック&ホームケア製品で、原材料価格の上昇に対して戦略的値上げを積極的に実施し、収益性が改善し419億円(対前期112億円増)となりました。 〔ヘルス&ビューティケア事業〕売上高は、前期に対して6.3%増の3,929億円(為替3.2%増、実質3.1%増(内訳:数量等1.1%増、価格2.0%増))となりました。スキンケア製品の売り上げは前期を上回りました。日本では人流の回復に加え、猛暑に対応した「ビオレ」のUVケア製品等のシーズン品やメイク落としの新製品が貢献し、売り上げ、シェアともに伸長しました。米州では、売り上げは前期を上回りました。なお、2023年11月にプレミアムスキンケアブランド「Bondi Sands(ボンダイサンズ)」を有するBondi Sands Australia Pty Ltdの買収を完了し、連結子会社としました。ヘアケア製品の売り上げは伸長しました。日本では厳しい競争環境の中、「エッセンシャル」の新製品・改良品が順調に推移したほか、11月に発売した「ケープ」の新製品が貢献し、売り上げ、シェアともに伸ばしました。欧州では、売り上げは前期を上回りました。ヘアサロン向け製品は、米国の「ORIBE」が、Eコマースを中心に好調に推移しました。パーソナルヘルス製品は、売り上げは前期並みでした。日本では、新しいマーケティング施策により「めぐりズム」の売り上げは伸長しましたが、入浴剤は市場縮小の影響を受けました。営業利益は、構造改革費用を23億円計上し、405億円(対前期59億円増)となりました。コア営業利益は、428億円(対前期82億円増)となりました。 〔ライフケア事業〕売上高は、前期に対して1.0%増の563億円(為替1.5%増、実質0.6%減(内訳:数量等3.2%減、価格2.6%増))となりました。業務用衛生製品の売り上げは、前期を上回りました。日本では外食産業や宿泊施設等で厨房用洗浄剤や客室消耗品の需要が高まりましたが、消毒剤の市場縮小により売り上げはほぼ横ばいでした。米国では対象業界の回復、新規顧客の獲得等で売り上げは前期を上回りました。健康飲料は、特定保健用食品「ヘルシア」の売り上げは減少しました。営業利益は、構造改革で原材料の評価減等を40億円計上したことにより、53億円(対前期53億円減)の損失となりました。コア営業利益は、13億円(対前期13億円減)の損失となりました。 〔化粧品事業〕売上高は、前期に対して5.1%減の2,386億円(為替1.6%増、実質6.7%減(内訳:数量等7.3%減、価格0.6%増))となりました。コア売上高は、前期に対して1.8%減の2,469億円(実質3.4%減)となりました。日本では、構造改革による返品の計上や韓国のトラベルリテールにおける代理購買抑制等の影響を受け、売り上げは前期を下回りました。コア売上高は、「KANEBO」や「KATE」等のグローバル戦略ブランド「G11」が好調を維持し、前期を上回りました。中国の売り上げは、ALPS処理水の影響によりKOL(キー・オピニオン・リーダー)の活動自粛や販売促進活動の抑制等により大幅に前期を下回りました。欧州では、市場が低迷する中、「MOLTON BROWN」の新製品が順調に推移するとともに、「SENSAI」はリニューアルした新製品や既存品のプロモーションが奏功し、売り上げは前期を上回りました。営業利益は、構造改革で返品引当金や原材料の処分等を107億円計上したことにより、54億円(対前期195億円減)の損失となりました。コア営業利益は、53億円(対前期88億円減)となりました。 ケミカル事業売上高は、前期に対して9.0%減の3,661億円(為替4.4%増、実質13.4%減(内訳:数量等3.8%減、価格9.6%減))となりました。油脂製品では、天然油脂価格の下落に伴う販売価格の改定と海外における顧客の在庫調整の長期化が影響し、売り上げは減少しました。機能材料製品は、コスト増に対する販売価格の改定が寄与しましたが、需要低迷の影響を受けた分野があり、売り上げは前期を下回りました。情報材料製品では、ハードディスクや半導体関連分野の需要の低迷が続き、売り上げは減少しました。営業利益は、景気回復の遅れに伴う需要の減少と油脂製品の利幅の縮小が影響、さらに構造改革費用を12億円計上したことにより236億円(対前期60億円減)となりました。コア営業利益は、248億円(対前期48億円減)となりました。 (2)財政状態の分析(連結財政状態) 前連結会計年度2022年12月末当連結会計年度2023年12月末増減資産合計(億円)17,26417,697434負債合計(億円)7,3107,577267資本合計(億円)9,95410,120167親会社所有者帰属持分比率56.3%55.6%-1株当たり親会社所有者帰属持分(円)2,091.202,116.0124.81社債及び借入金(億円)1,2781,385106 資産合計は、前期末に比べ434億円増加し、1兆7,697億円となりました。主な増加は、のれん270億円、現金及び現金同等物234億円、無形資産216億円であり、主な減少は、有形固定資産188億円、棚卸資産146億円です。負債合計は、前期末に比べ267億円増加し、7,577億円となりました。主な増加は、契約負債等128億円、引当金127億円、社債及び借入金106億円であり、主な減少は、リース負債125億円です。資本合計は、前期末に比べ167億円増加し、1兆120億円となりました。主な増加は、当期利益462億円、在外営業活動体の換算差額402億円であり、主な減少は、配当金702億円です。なお、親会社所有者帰属持分比率は、前期末の56.3%から55.6%となりました。親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は4.5%となりました。 (3)キャッシュ・フローの分析(連結キャッシュ・フローの状況) 通期増減(億円)2022年12月期(億円)2023年12月期(億円)営業活動によるキャッシュ・フロー1,3092,025716投資活動によるキャッシュ・フロー(749)(1,093)(344)フリー・キャッシュ・フロー(営業活動+投資活動)560932372財務活動によるキャッシュ・フロー(1,393)(800)593 営業活動によるキャッシュ・フローは、2,025億円となりました。主な増加は、減価償却費及び償却費896億円、税引前利益638億円、棚卸資産の増減額294億円、減損損失217億円、営業債権及びその他の債権の増減額205億円、引当金の増減額125億円であり、主な減少は、法人所得税等の支払額246億円、営業債務及びその他の債務の増減額194億円です。投資活動によるキャッシュ・フローは、△1,093億円となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出542億円、企業結合による支出408億円、無形資産の取得による支出123億円です。営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計したフリー・キャッシュ・フローは、932億円となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、△800億円となりました。安定的かつ継続的な配当を重視しており、またEVA及びROIC視点から資本効率の向上を目的として、自己株式の取得及び消却も弾力的に行っています。当期の主な内訳は、非支配持分への支払いを含めた支払配当金703億円、リース負債の返済による支出214億円です。なお、2023年3月に借入金400億円を返済し、適正な資本コスト率の維持及び成長投資のための財務基盤の強化を目的に、同額の借り入れを行いました。その借り入れのうち200億円については、SPTs(サステナビリティ・パフォーマンス・ターゲット)の達成状況に応じて金利が変動するサステナビリティ・リンク・ローンを利用しています。また、社債の発行と償還を行い、その内訳は、社債の発行による収入249億円、社債の償還による支出250億円です。発行した社債は、SPTsの達成状況に応じて利率が変動する、サステナビリティ・リンク・ボンドです。当期末の現金及び現金同等物の残高は、為替変動による影響を含めて前期末に比べ234億円増加し、2,917億円となりました。なお、構造改革に係る営業利益への影響額547億円のうち、当期支出した金額は25億円であり、次期以降、135億円の支出を見込んでいます。 (4)重要な会計方針及び見積り当社の連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号。以下、「連結財務諸表規則」)第93条の規定により、国際会計基準(以下、「IFRS」)に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、採用している重要な会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表に関する注記事項 3.重要性がある会計方針」及び「4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。 (5)資本の財源及び資金の流動性についての分析使用権資産を含む重要な資本的支出の2024年度の予定額は、約900億円であり、主に当社グループ内の資金を有効活用する予定であります。なお、計画については「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。 (6)生産、受注及び販売の実績当社グループの生産・販売品目は、産業界向けのケミカル製品から一般消費者向けのコンシューマー製品まで極めて多種多様であり、それら製品の在庫をほぼ一定の必要水準に保つように、主として見込み生産を行っております。従って、生産実績は販売実績に類似しております。生産及び販売の実績については、「(1) 経営成績の分析」に記載のとおりであります。 (7)経営成績に重要な影響を与える要因経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。 (8)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」、達成状況は、「(1) 経営成績の分析」に記載のとおりであります。 |
※本記事は「花王株式会社」の令和5年12期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
コメント