会社名 | パナソニック ホールディングス株式会社 |
業種 | 電気機器 |
従業員数 | 連228420名 単1421名 |
従業員平均年齢 | 43.7歳 |
従業員平均勤続年数 | 17.9年 |
平均年収 | 9304992円 |
1株当たりの純資産 | 668.47円 |
1株当たりの純利益 | 22.6円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 35円 |
配当性向 | 154.9% |
株価収益率(PER) | 63.96倍 |
自己資本利益率(ROE) | 3.3% |
営業活動によるCF | 8668億円 |
投資活動によるCF | ▲5788億円 |
財務活動によるCF | ▲834億円 |
研究開発費※1 | 630億円 |
設備投資額※1 | 2921億円 |
販売費および一般管理費※1 | 21043.56億円 |
株主資本比率※2 | 35.4% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において判断したものです。 (1) 会社経営の基本方針 当社は創業以来、「事業を通じて、世界中の人々のくらしの向上と社会の発展に貢献する」ことを経営基本方針の中心に据えて事業を進めてまいりました。今後も、「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向け、社会課題に正面から向き合って、新しい価値を創造することを目指してまいります。地球環境問題をはじめ、さまざまな社会課題に正面から向き合い、社会の発展や課題解決に大きな貢献を果たすために、事業競争力を強化し、株主の皆様や投資家、お客様、取引先、従業員をはじめとするすべての関係者の皆様にご満足いただけるような価値提供を通じて、持続的な企業価値の向上に努めてまいります。 (2) 会社の経営戦略と対処すべき課題 当社の使命である「物と心が共に豊かな理想の社会」の実現に向けては、喫緊の課題である地球環境問題を筆頭に、様々な社会課題を解決しなければなりません。そこで当社は、グループ共通の戦略として「地球環境問題の解決」と「お客様一人ひとりの生涯にわたる健康・安全・快適」の領域において競合を超えるお役立ちを果たしてまいります。 2024年度においては、イスラエル・パレスチナ情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクに加え、欧米を中心に、これまでの金融引き締めによる実体経済への影響などが懸念され、世界経済の先行きの見通しにくい状況が続きます。日本においては、設備投資需要が堅調に推移し、実質賃金の改善を背景に個人消費も持ち直すことが期待される一方で、こうした世界経済の動向が懸念材料となっています。 このような経営環境のもと、当社は2022年度から取り組む中期戦略の最終年度として、ROE(株主資本利益率)向上に資する取り組みに注力していきます。特に、投資領域と定めた車載電池・空質空調・SCMソフトウェアの3事業について、事業基盤をより強固にするために収益性の向上に取り組んでいきます。また、人的資本経営や競争力強化のスピードを加速する取り組み(現場革新活動・PX(注)など)によるグループ全体の経営基盤強化も進めていきます。(注) PX (Panasonic Transformation):DX(デジタルトランスフォーメーション)を核としたパナソニックグループ横断の取り組みで、ITシステムの変革に留まらない、経営基盤強化のための重要戦略として推進。 <中期経営指標(KGI:Key Goal Indicator)と進捗> 事業の競争力を徹底強化し、キャッシュ創出力を向上。 ・累積営業キャッシュ・フロー :2.0兆円(2022-2024年度) ・ROE(株主資本利益率) :10%以上(2024年度) ・累積営業利益 :1.5兆円(2022-2024年度) 2023年度の経営成績は、「4.経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」に記載しています。上記中期経営指標に対して、2022年度は営業キャッシュ・フロー 5,207億円、ROE 7.8%、営業利益 2,886億円であり、2023年度は営業キャッシュ・フロー 8,669億円、ROE 10.9%、営業利益 3,610億円でした。2024年度の見通しでは、ROEと累積営業利益は未達が見込まれる一方で、累積営業キャッシュ・フローは達成が視野に入ってきています。これは、各事業が当初想定通りの収益力を付けられなかったものの、キャッシュ・フロー重視の経営が定着したものと認識しています。 今後は各事業の成長性を見極め、ROIC(投下資本収益率)に基づいて厳格に全ての事業を管理し、次期中期戦略に向けて成長性と収益性を軸とした事業ポートフォリオマネジメントに取り組んでまいります。これらの活動を通して、中長期的に収益成長を果たすグループへと変革してまいります。 <投資領域の事業基盤強化>・車載電池事業 当社の重点投資領域である車載電池事業の市場において、長期的にはモビリティの電動化は進行するも、当社が注力する北米市場では、自動車メーカー各社の車両ラインアップ拡充戦略の転換により、バッテリーEV市場の一時的な減速が起こっています。 そうした中で、当社は車載電池事業での強固な競争基盤の構築に向け、日米における顧客拡大に伴う供給基盤の拡充や各工場における生産性の向上、高容量を実現した4680サイズの開発を始めとする技術基盤の強化を継続して進め、ROIC(投下資本収益率)の改善を図ります。また、投資戦略については、顧客需要に基づき柔軟かつ慎重に決定してまいります。 ・空質空調事業 欧州市場において、ヒートポンプ式温水給湯暖房機(A2W)の市場環境は、ガス価格の高騰が落ち着き、補助金施策の見直しや欧州景気の悪化を受け、足元の成長は鈍化しているものの、環境規制が先行する欧州では、中長期的に需要拡大へ転換すると見込んでいます。 そうした中で、当社は、需要回復に備え、インストーラー(設置事業者)との関係強化やインストーラーに選ばれる価値訴求をした商品力強化など、シェア獲得に向け着実に手を打ち、この領域での当社のポジションを優位なものとするための基盤強化を継続推進してまいります。 ・サプライチェーンマネジメントソフトウェア事業 当社の連結子会社である米国ソフトウェア会社Blue Yonder Holding, Inc.が進める改革を継続して推進してまいります。具体的には、R&D強化による商品力向上やお客様接点の強化などの事業基盤強化の継続や、M&Aによる商品力強化やリアルタイムに多方向でデータ連携ができるSCMプラットフォームの提供により、競争基盤の強化を進めてまいります。そして、パナソニック コネクト㈱の強みである現場のエッジデバイスから得られる様々なデータとの連携による自律化ソリューションによって、さらなるお役立ちを果たしてまいります。 <事業ポートフォリオマネジメント> 株主の皆様やお客様、お取引先様、従業員を含む全ての利害関係者の幸せとグループの価値向上に向けて、1つ目の判断軸にグループ共通の戦略との適合性を、2つ目の判断軸に将来の変化を見越した事業の立地・競争力を置き、3つ目の判断軸にはベストオーナーの視点を考え方に据えて、事業ポートフォリオの見直しや事業構造の組み換えを推進しています。 さらには、事業ポートフォリオの見直しを進めていく上で、各事業の立地・競争力を管理するため、2022年度からは各事業会社の財務健全性を評価し、キャッシュ・フローを重視する経営を定着させてきました。2024年度からは、これに加えて各事業が強固な収益体質を構築するためにROIC(投下資本収益率)での管理を厳格化していきます。 そして、ROICが事業別WACCを下回り、かつ成長性のない事業を課題事業と位置付け、そうした課題事業を2026年度までにはゼロにしていきます。また、事業別WACC+3%ポイントを超えるROIC水準を全事業で目指してまいります。 車載電池事業、空質空調事業、サプライチェーンマネジメントソフトウェア事業は、それぞれエナジーセグメント、くらし事業セグメント、コネクトセグメントの事業です。なお、セグメント毎の成長戦略については、2024年6月にPanasonic Group事業会社戦略説明会2024を開催し、説明資料を当社ウェブサイトに掲載していますのでご参照ください。https://holdings.panasonic/jp/corporate/investors/presentations.html |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)重要性がある会計方針及び見積り当社の連結財務諸表はIFRSに基づいて作成されています。また、当社は連結財務諸表を作成するために、種々の仮定と見積りを行っています。それらの仮定と見積りは資産・負債・収益・費用の計上金額並びに偶発資産及び債務の開示情報に影響を及ぼします。重要な仮定と見積りは、繰延税金資産の回収可能性、確定給付制度債務、非金融資産(のれんを含む)の減損に反映しています。なお、実際の結果がこれらの見積りと異なることもあり得ます。重要性がある会計方針及び見積りの内容は、連結財務諸表注記「3.重要性がある会計方針」に記載しています。 (2)生産、受注及び販売の実績当社グループ(当社及び連結子会社)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また製品の性質上、原則として見込生産を主体とする生産方式を採っています。なお、当社グループは製品の在庫を一定の必要水準に保つように生産活動を行っていることから、生産実績は販売実績に概ね類似しています。 (3)当連結会計年度の経営成績の分析2023年度の世界経済は、総じて、緩やかに減速しました。イスラエル・パレスチナ情勢やウクライナ情勢などの地政学リスクに加え、欧米を中心とした金融引き締めが下押ししました。一方、日本経済は、緩やかに持ち直しました。個人消費を中心に、物価高によるマイナス影響があったものの、設備投資が堅調に推移したほか、インバウンド需要が回復したことなどが背景となります。当社は2022年度から持株会社と事業会社からなる新しいグループ体制における3カ年の中期戦略を実行しています。このような経営環境のもと、同戦略の2年目となる2023年度は、中期経営指標(KGI)として掲げた「累積営業キャッシュ・フロー2兆円、ROE(株主資本利益率)10%以上、累積営業利益1.5兆円」の達成に向けて、競争力の徹底強化を推進し、各事業におけるキャッシュ・フロー重視経営の定着と成長領域での事業基盤の構築を進めてきました。重点投資領域と定めた車載電池事業では、パナソニック エナジー㈱が、ゼロエミッションモビリティとインフラソリューションを製造するノルウェーのHexagon Purus ASAと、北米における商用車向け車載電池供給契約を2023年4月に締結しました。また、マツダ㈱及び㈱SUBARUとそれぞれ中長期的パートナーシップの構築に向けた協議を開始し、その結果、2024年3月に車載用円筒形リチウムイオン電池供給につき、マツダ㈱とは供給に向けた合意書を、㈱SUBARUとは供給に関する協業基本契約を締結するなど、顧客基盤の拡大を図ってきました。さらに、投資領域に定めたサプライチェーンマネジメント(SCM)ソフトウェア事業では、パナソニック コネクト㈱の子会社であるBlue Yonder Holding, Inc.(以下、「ブルーヨンダー」)が、米国のOne Network Enterprises, Inc.を買収する契約を2024年3月に締結するなど、成長に向けた事業変革を行ってきました。また、当社は各事業の成長性を見極め、ベストオーナーの視点に基づく事業ポートフォリオの見直しを実施しており、2024年3月には、当社とApollo Global Management, Inc.をはじめとするアポロ・グループは、パナソニック オートモーティブシステムズ㈱(以下、「PAS」)の事業に関して両社が共同パートナーになることを目的に、PAS株式の譲渡に関する株式譲渡契約及び株主間契約を締結しました。 ①売上高当年度の連結売上高は、8兆4,964億円(前年度比1%増)となりました。インダストリー・エナジーが減収となりましたが、オートモーティブ・コネクトの販売増に加え、為替換算の影響もあり、増収となりました。 ②営業利益営業利益は、3,610億円(前年度比25%増)となりました。戦略投資などの固定費の増加や原材料高騰の影響はありましたが、価格改定・合理化の進捗や為替の影響に加え、米国インフレ抑制法に係る補助金(以下、「米国IRA補助金」)の計上(連結財務諸表注記「24.政府補助金」参照)などにより、増益となりました。 ③税引前利益金融収益は890億円(前年度490億円)、金融費用は247億円(前年度211億円)となりました。この結果、税引前利益は、4,252億円(前年度3,164億円)となりました。 ④親会社の所有者に帰属する当期純利益法人所得税費用は、前年度の359億円の損に対し、402億円の益となりました。これは、当年度にパナソニック液晶ディスプレイ㈱の解散(特別清算)及び同社に対する債権放棄を決議したことに伴う法人所得税費用の減少を1,213億円認識したこと(連結財務諸表注記「13.法人所得税」参照)によるものです。この結果、親会社の所有者に帰属する当期純利益は、4,440億円(前年度2,655億円)となりました。また、基本的1株当たり親会社の所有者に帰属する当期純利益は、190円21銭(前年度113円75銭)となりました。 ⑤セグメントの経営成績当社グループは、経営管理上、事業の成果を「くらし事業」「オートモーティブ」「コネクト」「インダストリー」「エナジー」の5つの報告セグメントに区分して評価、開示しています。なお、2023年10月1日付で、一部の事業をセグメント間で移管しています。2022年度のセグメント情報については、2023年10月1日付の形態に合わせて組み替えて算出しています。 a くらし事業 当セグメントの売上高は、前年度並みの3兆4,944億円となりました。 当年度は、電材事業や北米コールドチェーン事業などは増収となりましたが、海外家電事業の減収や、空質空調事業での欧州を取り巻く環境の悪化による需要減に加え、中国事業の一部を非連結化した影響もあり、全体では前年度並みの売上となりました。 主な分社の状況は、くらしアプライアンス社では、美容家電が堅調も、その他商品は中国・アジアなどで需要が伸び悩み、減収となりました。 空質空調社では、アジアの空質空調等が増収となりましたが、市況悪化の影響を受けた国内ルームエアコンや欧州のヒートポンプ式温水給湯暖房機(Air to Water、以下、「A2W」)の需要減などにより、減収となりました。 コールドチェーンソリューションズ社では、北米のショーケースが好調に推移し、増収となりました。 エレクトリックワークス社では、国内の非住宅照明をはじめ、電設資材の販売が堅調に推移し、価格改定の効果もあり、増収となりました。 当セグメントの営業利益は、1,216億円となりました。海外家電事業や欧州A2Wの減販影響はありましたが、北米コールドチェーン事業や国内・海外の電材事業の増販益に加え、前年度に計上した一時費用の反動などもあり、前年度から182億円の増益となりました。 b オートモーティブ 当セグメントの売上高は、前年度比で15%増加し、1兆4,919億円となりました。 当年度は、世界的な車載半導体及び部材のひっ迫が緩和したことにより、市場の自動車生産台数が当年度当初の見通しに比べて増加、また、顧客の自動車生産の回復基調も継続しました。加えて、為替換算の影響もあり、増収となりました。 当セグメントの営業利益は、428億円となりました。人件費の高騰による固定費の増加や車載半導体などの部材高騰の影響は継続しましたが、増販益に加えて、部材価格の高騰や為替影響に対する価格改定、合理化及び車載充電器の収益性改善などの取り組みを行いました。また、国内工場でのAI導入ライン展開により生産性を2倍にするなどのオペレーション力強化施策を継続し、経営体質強化の取り組みによる効果もありました。同時に車載コックピットシステム事業では統合HPC(高性能車載コンピューター)戦略を進め、車載エレクトロニクス事業では車載充電器の高電圧・高出力化の取り組みや、新たな車室空間コンセプトモデルの提案、ソリューションビジネスの開発・推進など、将来に向けた成長投資を行いつつも、セグメント全体では、前年度から266億円の増益となりました。 c コネクト 当セグメントの売上高は、前年度比で7%増加し、1兆2,028億円となりました。 当年度は、プロセスオートメーション事業は減収となりましたが、アビオニクス事業、現場ソリューション事業、ブルーヨンダーなどが堅調に推移し、増収となりました。 主な事業部の状況は、モバイルソリューションズ事業部では、国内向けノートパソコンの販売増加などにより、増収となりました。 プロセスオートメーション事業部では、パソコン・スマートフォン市場での需要減が継続し、中国市況停滞の影響もあり、実装機が低調に推移したことにより減収となりました。 現場ソリューションカンパニーでは、既存事業での大型案件の獲得を含む国内ソリューション案件の順調な獲得などにより、増収となりました。 パナソニック アビオニクス㈱では、世界的に旅客需要が堅調に推移し、機内エンターテインメント・通信システム及び機体メンテナンス・リペアサービスがともに好調で、増収となりました。 ブルーヨンダーでは、SaaS(注) の好調な販売が継続するなど、増収となりました。 当セグメントの営業利益は、404億円となりました。プロセスオートメーション事業の減販損やブルーヨンダーでの戦略投資などはありましたが、アビオニクス事業及び現場ソリューション事業の増販益や、モバイルソリューション事業の収益性改善などにより、前年度から200億円の増益となりました。 (注)SaaS:Software as a Serviceの略。ベンダーが提供するクラウドサーバーにあるソフトウェアを、インターネットを経由してユーザーが必要な機能を利用できるサービス d インダストリー 当セグメントの売上高は、前年度比で9%減少し、1兆426億円となりました。 当年度は、環境車向けコンデンサーや生成AIサーバー向け製品の販売増加に加え、為替換算の影響もありましたが、中国FA市場や情報通信インフラ市場などの市況低迷に加え、半導体事業譲渡に伴う商流変更の影響などにより、全体では減収となりました。 主な事業の状況は、電子デバイス事業では、環境車向けコンデンサーが引き続き好調に推移し、生成AIサーバー向けコンデンサーの需要拡大により販売が増加しました。一方、汎用サーバーや基地局向けコンデンサーに加え、中国市況停滞による産業用リレーの販売が減少するなど、全体では減収となりました。 FAソリューション事業では、中国やアジアの市況停滞に加え、中国FA市場での競争激化の影響で産業用モーター等の販売が減少し、減収となりました。 電子材料事業では、生成AIサーバー向けの多層基板材料の需要拡大により、増収となりました。 当セグメントの営業利益は、311億円となりました。原材料価格の高騰や固定費の増加の影響を価格改定や合理化でカバーし、円安の効果もありましたが、中国市況低迷の影響による減販損が大きく、前年度から357億円の減益となりました。 e エナジー 当セグメントの売上高は、前年度比で6%減少し、9,159億円となりました。 当年度は、北米での車載電池生産は搭載車種の旺盛な需要により好調に推移しました。一方、米国における電気自動車購入者への補助金対象外となった高価格帯車種の需要減の影響を受けて、当該車種向けの国内工場は減産となりました。加えて、民生・動力向けの販売が減少し、米国IRA補助金の顧客との有効活用に係る会計処理(注)の影響もあり、全体では減収となりました。 主な事業の状況は、車載事業では、需要が好調な北米工場は販売が増加しましたが、国内工場は需要減により販売が減少。加えて、米国IRA補助金の会計処理の影響もあり、全体でも減収となりました。 産業・民生事業では、生成AI市場の拡大によりデータセンター向け蓄電システムが好調に推移しましたが、市況回復の遅れから、電動アシスト自転車など民生・動力向けリチウムイオン電池などの販売減少の影響が大きく、減収となりました。 当セグメントの営業利益は、888億円となりました。産業・民生向けの減販損や、車載電池事業で国内工場減産による影響や将来の成長に向けた固定費の増加、過去の製造不具合品対応に関する引当計上がありましたが、北米車載電池工場の増販益や生産性の向上に加え、米国IRA補助金の計上などにより、前年度から556億円の増益となりました。(注)顧客との有効活用分は、有効活用の方法は未確定も、収益認識基準が適用され、売上高のマイナス計上を実施 f その他(報告セグメントに含まれない事業) その他の事業については、売上高は、1兆2,195億円(前年度比1%増)、営業利益は、前年度に比べ増益の595億円(前年度比5%増)となりました。 (4)経営成績に重要な影響を与える要因について 「3.事業等のリスク」に記載しています。 (5)財政状態及び流動性①流動性と資金の源泉 当社グループでは、事業活動に必要な資金は自ら生み出すことを基本方針としています。また、生み出した資金については、グループ内ファイナンスにより効率的な資金活用を行っています。その上で、運転資金や事業投資などのため所要の資金が生じる場合には、財務体質や金融市場の状況を踏まえた適切な手段により外部からの資金調達を行っています。 (資金) 当年度末の現金及び現金同等物の残高は1兆1,196億円となり、前年度末に比べ3,001億円増加しました。当年度は、社債償還資金への充当及び今後の事業展開に必要な資金の確保を目的とし、2023年9月に円建無担保普通社債2,600億円を発行しました。運転資金などの調達を主にコマーシャルペーパー(CP)の発行により行いました。なお、2023年9月に第16回円建無担保普通社債700億円(2016年9月発行)、2023年12月に第20回円建無担保普通社債800億円(2020年12月発行)を満期到来により償還いたしました。 これらの結果、当年度末の円建無担保普通社債の残高は7,100億円、円建公募ハイブリッド社債(劣後特約付社債)(注)の残高は4,000億円、米ドル建無担保普通社債の残高は15億米ドルとなりました。(注)ハイブリッド社債(劣後特約付社債):資本と負債の中間的性質を持ち、利息の任意繰延、超長期の償還期限、清算手続き及び倒産手続きにおける劣後性等、資本に類似した性質及び特徴を有した社債 (有利子負債) 有利子負債は、無担保普通社債の発行等により、前年度末の1兆4,571億円から当年度末には1兆6,263億円へと増加しました。なお、当社は不安定な金融経済環境における資金調達リスクに備え、2021年6月に複数の取引銀行と期間を3年間とするコミットメントライン契約(注)を締結しています。当該契約に基づく無担保の借入設定上限は総額6,000億円ですが、借入実績はありません。なお、当該契約は2024年6月に満期を迎えたことに伴い、同月に総額6,000億円で契約を更新しています。(注)コミットメントライン契約:金融機関との間で予め契約した期間・融資枠の範囲内で融資を受けることを可能とする契約 (格付け) 当社は、㈱格付投資情報センター(R&I)、S&Pグローバル・レーティング・ジャパン㈱(S&P)及びムーディーズ・ジャパン㈱(ムーディーズ)から格付けを取得しています。当年度末の当社の格付けは、次のとおりです。 R&I:A (長期、アウトルック:安定的)、a-1 (短期) S&P:A-(長期、アウトルック:安定的)、A-2 (短期) ムーディーズ:Baa1 (長期、アウトルック:安定的) ②キャッシュ・フロー 当社グループは、事業収益力強化によりフリーキャッシュ・フローを向上させ、中長期的に事業を発展させていくことが重要と考えています。同時に、継続的な運転資本の圧縮、保有資産の見直しなどによるキャッシュ・フローの創出にも徹底して取り組んでいます。 当年度の営業活動により増加したキャッシュ・フローは8,669億円、投資活動により減少したキャッシュ・フローは5,788億円となり、両者を合計したフリーキャッシュ・フローは、2,881億円(前年差1,114億円の良化)となりました。 なお、キャッシュ・フローの分析の詳細は、次のとおりです。 (営業活動によるキャッシュ・フロー) 当年度の営業活動により増加したキャッシュ・フローは8,669億円(前年度は5,207億円の増加)となりました。前年差の主な要因は、棚卸資産の減少などによるものです。 (投資活動によるキャッシュ・フロー) 投資活動により減少したキャッシュ・フローは5,788億円(前年度は3,440億円の減少)となりました。前年差の主な要因は、車載電池を中心とした設備投資の増加などによるものです。 (財務活動によるキャッシュ・フロー) 財務活動により減少したキャッシュ・フローは835億円(前年度は6,070億円の減少)となりました。前年差の主な要因は、前年度に新体制への移行に伴う一時的な借入を返済したことや、当年度において無担保普通社債を発行したことなどによるものです。 これらに為替変動の影響等を加味した結果、当年度末で現金及び現金同等物の残高は1兆1,196億円となり、前年度末に比べ3,001億円増加しました。 ③設備投資額と減価償却費 当社グループでは、将来の成長に向けて、重点事業を中心に投資を着実に行っていくという考え方に基づき設備投資を行った結果、当年度の設備投資額(有形固定資産のみ)については、前年度の3,091億円から2,589億円増加し、5,680億円となりました。主要な設備投資は、「エナジー」における車載用のリチウムイオン電池等の生産設備及び北米の新工場建設、「くらし事業」におけるA2W他の家庭用電化機器・電設資材等の生産設備、「インダストリー」における電子部品・制御機器等の生産設備、「オートモーティブ」における車載機器等の生産設備、「コネクト」におけるB2Bソリューション事業関連機器等の生産設備です。 減価償却費(有形固定資産のみ)は、前年度の1,966億円から106億円増加し、2,072億円となりました。 ④資産、負債及び資本 当年度末の総資産は9兆4,112億円となり、前年度末に比べ1兆3,517億円の増加となりました。これは、主に現金及び現金同等物、有形固定資産などの増加や、円安による為替変動の影響などによるものです。 負債は、前年度末に比べ4,197億円増加し、4兆6,893億円となりました。これは、主に無担保普通社債の発行や円安による為替変動の影響によるものです。 親会社の所有者に帰属する持分は4兆5,441億円となり、前年度末に比べ9,257億円増加しました。これは、主に親会社の所有者に帰属する当期純利益及び円安の進行によるその他の包括利益の計上などによるものです。また、非支配持分を加味した資本合計は4兆7,219億円となりました。 この結果、親会社所有者帰属持分比率は前年度末の44.9%から増加し、48.3%となりました。 |
※本記事は「パナソニック ホールディングス株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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