会社名 | 日東電工株式会社 |
業種 | 化学 |
従業員数 | 連25769名 単6729名 |
従業員平均年齢 | 40.9歳 |
従業員平均勤続年数 | 12.7年 |
平均年収 | 8336000円 |
1株当たりの純資産 | 773円 |
1株当たりの純利益(連結) | 195.74円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 168円 |
配当性向 | 41.3% |
株価収益率(PER) | 20.2倍 |
自己資本利益率(ROE)(連結) | 12.7% |
営業活動によるCF | 2179億円 |
投資活動によるCF | ▲1151億円 |
財務活動によるCF | ▲788億円 |
研究開発費※1 | 59.62億円 |
設備投資額※1 | 151.08億円 |
販売費および一般管理費※1 | 793.98億円 |
株主資本比率※2 | 65.2% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び当社の関係会社、以下同じ)が判断したものであります。なお、業績見通し等の将来に関する記述は、当社グループが現時点で入手している情報や合理的であると判断する一定の前提に基づいており、実際の業績等は様々な要因により大きく異なる可能性があります。 (1)会社の経営の基本方針当社グループは、経営理念のミッションである「新しい発想でお客様の価値創造に貢献します。」の下、ESG(環境・社会・ガバナンス)を経営の中心に置いて、事業を通じた社会課題の解決に努め、持続可能な未来を実現するために、地球環境と社会に貢献しながら成長し続ける企業グループを目指します。そのため、これまでの歴史で培ってきた基幹技術、多様な事業領域や強い知的財産、さらには幅広い業界における顧客基盤といった強みを結集し、「三新活動」※1と「ニッチトップ戦略」※2でイノベーションを加速させ、地球環境や社会に貢献できる製品やソリューションを創出していきます。また、地球環境や人類・社会、世の中にとって「なくてはならない」存在となり、持続的な成長をさらに加速させるために、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定しています。ESG領域に対して定めた10のマテリアリティに取り組むことで、社会課題の解決と経済価値の創造の両立を実現し、企業価値向上を図ります。 領域ありたい姿マテリアリティE(環境)未来の地球を守る脱炭素社会の実現循環型社会の実現生物多様性の保全PlanetFlagsTM※3の創出S(社会)人と社会を豊かにする安全なモノづくり多様な人財の活躍人権の支持と尊重サプライチェーンの強靭化HumanFlagsTM※3の創出G(ガバナンス)ステークホルダーの期待と信頼に応える経営の安全性向上 サステナビリティに関する考え方及び取組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。 ※1.新用途開拓と新製品開発に取り組むことで、新しい需要を創造する当社グループ独自のマーケティング活動です。※2.変化しながら成長するマーケットを見極め、その中のニッチな領域を対象に、当社グループ固有の技術・知見の融合と、ステークホルダーとの共創により、なくてはならない「製品」「機能」「ビジネスモデル」を継続的に生み出し、シェアNo.1を狙う、当社グループ独自の差別化戦略です。※3.当社グループは環境・人類に貢献する製品の認定スキームを2022年度に制定しました。当社グループの生み出す製品・サービスの環境・人類への貢献を可視化し、特に貢献度合いの高い製品・サービスをPlanetFlagsTM/HumanFlagsTMとして認定しています。 (2)中長期的な会社の経営戦略① 2030年ありたい姿と中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」当社グループは、2030年ありたい姿として、“ニッチトップクリエーターとして驚きと感動を与え続ける「なくてはならないESGトップ企業」”を掲げています。「Nittoらしさ」である、「チャレンジを楽しむ」社風・文化を土壌に、「環境・人類に貢献するニッチトップ」を創出し、お客様に最高の「驚きと感動」を提供することで、豊かな未来に貢献します。当社グループは、お客様をはじめステークホルダーとの共創イノベーションで新たな価値を生み出し、持続可能な地球環境・人類社会になくてはならない存在として、皆様からの信頼と期待に応えていきます。 2023年度から2025年度までを実行期間とする中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」では、「ニッチトップ戦略×Nitto流ESG戦略」の実践をスローガンに掲げ、「環境・人類に貢献する事業ポートフォリオ変革」、「ニッチトップを生み出すイノベーションモデルの進化」、「人財・チームの挑戦を加速する組織文化の改革」、「変化を先取る経営インフラへの変革」の4つの重点項目に取り組んでいます。2030年ありたい姿「なくてはならないESGトップ企業」を実現するために、中期経営計画を確実に遂行していきます。 ② 中期経営計画「Nitto for Everyone 2025」の重点項目と進捗a.環境・人類に貢献する事業ポートフォリオ変革社会価値と経済価値の両軸で見極めた“伸ばすもの”に対しては重点投資を進める一方で、将来の成長が見込まれない、環境化学物質規制で製造できなくなる可能性があるなどの“残さないもの”に対しては、撤退・売却も含めた打ち手で構造改革を実行します。M&Aやスタートアップ企業への出資を含む戦略的アライアンスを積極的に活用し、新規領域では、環境ビジネス・ソリューションビジネス創出にもチャレンジすることで、事業ポートフォリオの変革を進めます。当連結会計年度においては、Global Niche TopTM※1製品であるCISやHumanFlagsTM認定製品である高精度基板の増産に対応するための新工場が、亀山事業所とベトナム拠点において竣工しました。今後のデータセンター需要の増加に伴う高容量HDD市場の拡大やハイエンドスマートフォンでの新たな展開への対応を強化していきます。また、HumanFlagsTM認定製品の一つである核酸合成用ポリマービーズNittoPhaseTM※2を製造する東北事業所において、自家再生エネルギーを最大利用した、当社グループ初となるCO2排出量ゼロを達成する工場を竣工し、当連結会計年度より生産稼働を開始しました。NittoPhaseTM製造能力の増強により、今後急速に成長する核酸医薬業界をサポートし、人々の健康と安心な社会に貢献していきます。新規領域においては、環境ビジネスとして、脱溶剤化などによる消費エネルギー削減に加え、製造工程での排出が避けられないCO2の回収などのネガティブエミッション技術(大気中のCO2を回収・吸収し、貯蓄・固定することで大気中のCO2を除去する技術)の開発を加速させ、CO2削減のためのトータルソリューションとしての提案に向けて取り組んでいくネガティブエミッションファクトリー構想を推進しています。当連結会計年度は、2024年11月11日~22日にアゼルバイジャン共和国のバクーで開催された国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)において、環境省が設置する「ジャパン・パビリオン」に出展する企業に採択され、CO2分離回収・変換・利用技術をテーマに実地展示しました。 ※1.「Global Niche Top」「Area Niche Top」は当社の登録商標です。※2.NittoPhaseTMは核酸原薬合成用ポリマービーズで、多孔質構造による多量の核酸合成が可能な高収量の特徴と、粒子が均一で高い再現性が得られる高品質の特徴を合わせ持った製品です。 b.ニッチトップを生み出すイノベーションモデルの進化当社グループは、ESGを経営の中心に置き、社会課題の解決と経済価値の創造の両立を目指しています。「パワー&モビリティ」「デジタルインターフェース」「ヒューマンライフ」の3つを重点分野として位置付け、さらにこれらの交わる領域で当社グループの技術の強みやコンバージェンスを活かし、「なくてはならない」存在を目指します。社会課題に対してなくてはならないニッチトップソリューションを提供する差別化技術を磨き、PlanetFlagsTM/HumanFlagsTMを生み出すこと、マーケティング力の強化で事業開発力を高めること、お客様をはじめステークホルダーとの共創による事業化を進めることで、これまで当社グループが培ってきた勝ち方に加えて、新しい勝ち方の確立を進めていきます。当連結会計年度においては、PlanetFlagsTM/HumanFlagsTMとして新たに11製品(累計35製品)を認定しました。その一つとしてPlanetFlagsTMに認定されたハーネス外装保護PVCテープは、薄さと耐摩耗性を両立したテープであり、自動車の軽量化に貢献するとともにライフサイクルCO2排出量46%削減※に貢献しています。また、HumanFlagsTMに認定された車載ディスプレイ用高耐久LUCIACSTMは、フラットディスプレイ面と光学フィルムの貼り合わせに用いられる透明粘着シートです。車載ディスプレイの耐久性と視認性の向上に寄与し、自動車の安全性に貢献しています。また、当製品はGlobal Niche TopTM製品にも認定されています。当社グループは、ESG経営をさらに加速させるため、このような社会課題の解決と経済価値の創造の両立を実現するPlanetFlagsTM/HumanFlagsTMとGlobal Niche TopTM製品/Area Niche TopTM製品の双方に認定される製品(ダブル認定製品)を増やしていきます。 ※ データの得られた車種で計算。車種によって削減率は異なる。 c.人財・チームの挑戦を加速する組織文化の改革当社グループは、「人財は最も重要な財産」と位置付けています。持続的な成長に必要となる新しいイノベーションを生み出すために、「チャレンジを楽しむ」文化の醸成と人事・育成制度の変革を行います。その一環として、新規事業創出大会「Nitto Innovation Challenge」に取り組んでいます。新規事業創出のためのアイデアをグループ全社から募り、その中から有望なアイデアについては会社として実現に向け支援を行う取組みです。当連結会計年度は開催5回目を迎え、エントリー数は過去最高の1,500件を超える結果となりました。当取組みはPlanetFlagsTM/HumanFlagsTMひいてはGlobal Niche TopTM製品/Area Niche TopTM製品創出を促進する仕組みの一つにもなっています。なお、人的資本についての機会とリスクをしっかりと捉えている点や複数の独自指標を用いながら人的資本経営を推進している点が高く評価され、「人的資本調査2024」において、「人的資本リーダーズ2024」及び「人的資本経営品質(ゴールド)」を2年連続で受賞しました。 d.変化を先取る経営インフラへの変革当社グループが目指す「ニッチトップ戦略×Nitto流ESG戦略」の実践には、取り巻く事業環境の変化を先取りすることが必要です。そのため、「なくてはならないESGトップ企業」を支える強靭な経営インフラへの変革を進めます。当連結会計年度においては、サプライチェーンリスクへの先見力と対応力の向上を目指し、前連結会計年度より導入しているEcoVadis※1社が提供しているプラットフォームを日本に加えて、欧州、北米、東・南アジアのサプライヤー様へも展開しました。今後も、対象サプライヤー様の拡大、受審率の向上、低スコアの改善に注力し、評価サイクルを適正化していきます。デジタル活用によるデータドリブン経営の実践においては、業務改革やビジネスモデル変革などを進める中で、基幹システムの整備やデータを活用する基盤の構築を進めました。ESG先進企業への取組み加速・ブランド認知獲得においては、「Nitto ATP Finals」※2の協賛活動の一環として、ATP(男子プロテニス協会)及びFITP(イタリアテニスパデル協会)、開催地のトリノ市とともに、CO2排出量の削減を目的とした共創活動である「Nitto ATP Finals Torino Green Project」を進めました。活動を通じ、チャリティーオークションによる収益や寄付を原資としイナルピアリーナ会場周辺の公園への植樹、バス停屋根の緑化など、トリノ市の緑地化を推進しました。また、サステナブルな大会運営に向けて、当社グループで製造する環境に配慮した材料を使った物品を寄贈しました。なお、当社グループのESGを経営の中心に置いた各種取組みが評価され、当連結会計年度において世界的な調査・格付け会社であるS&P Global社が発行した「The Sustainability Yearbook 2025」※3において、「Sustainability Yearbook Member」に初選定されました。また、業界内で前年度から最も評価が向上した企業として「Industry Mover」に選定されました。 ※1.EcoVadisは、組織がバリューチェーン全体にわたってサステナビリティパフォーマンスを管理、測定、改善できるように設計された、さまざまなサステナビリティソリューションを提供する企業です。評価対象となる企業に対して、EcoVadisレーティングは、環境、労働と人権、倫理、持続可能な資材調達などの分野における企業のサステナビリティパフォーマンスの詳細な評価を提供するものです。※2.「Nitto ATP Finals」は、男子プロテニスシーズンのクライマックスを飾るイベントとして、世界のシングルス並びにダブルスから選抜されたベスト8が進出し、シーズンの最終タイトルを競う大会です。1970年に始まり、現在はイタリアのトリノで開催されています。当社グループでは2017年からタイトルスポンサーを務めています。※3.S&P Global社は、世界の企業を対象に経済・環境・社会の側面から企業の持続可能性を同社独自の評価手法であるCSA(Corporate Sustainability Assessment)より、各産業において特に評価の高い上位15%の企業を掲載した「The Sustainability Yearbook」を毎年発行しています。 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、「Nitto for Everyone 2025」において、2025年度末における経営上の目標を営業利益1,700億円、営業利益率17%及びROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)15%と定めました。また、当社グループでは、現時点では未だ財務には至っていないが将来的に財務となり得る要素、あるいは財務に転換していく要素を“未財務”と呼び、9つの未財務指標を設定しています。これら未財務指標の目標達成に向けた活動を推進することで変革を加速し、企業価値向上を図ります。環境系未財務指標の一つであるCO2排出量は、「Nittoグループ カーボンニュートラル2050」の達成に向けScope1+2をターゲットに目標を設定していましたが、当社グループだけではなくサプライチェーン全体での環境負荷ゼロに向け、新たにScope3をターゲットにSBT※1に基づく2030年度の目標として「排出量1,460kton」を設定しました。脱溶剤化や再生可能エネルギーの推進※2などに取り組み、脱炭素社会の実現に向けての活動をさらに加速していきます。 未財務指標2024年度実績2025年度目標2030年度目標関連するマテリアリティ製品系ニッチトップ売上収益比率(1)48%50%50%以上-PlanetFlagsTM/HumanFlagsTMカテゴリ売上収益比率(2)44%40%50%以上PlanetFlagsTMの創出HumanFlagsTMの創出新製品比率(3)41%35%以上35%以上-環境系廃プラスチックリサイクル率(4)50%50%60%循環型社会の実現サステナブル材料使用率(5)18%※320%30%CO2排出量(6)472kton/年470kton/年400kton/年脱炭素社会の実現人財系エンゲージメントスコア(7)※4-7885多様な人財の活躍チャレンジ比率(8)41%70%85%女性リーダー比率(9)22%24%30% (1)なくてはならないNitto製品の拡大を計る指標(2)Nitto流ESG経営の根幹であるPlanetFlagsTM/HumanFlagsTM製品の拡大を計る指標(3)当社グループの競争力の源泉である新製品の創出度合を計る指標(4)サーキュラーエコノミーに対する取組みの進捗を計る指標(5)環境やサプライチェーンの人権を考慮したサステナブルな材料の調達度合を計る指標(6)「Nittoグループカーボンニュートラル2050」に向けた取組みの進捗を計る指標、対象はScope1+2(7)組織の業績成長との関係性が強い、従業員の「帰属意識・貢献意欲」「生産的な職場環境」「心身の健康・活力」の3要素を計る指標(8)新たな価値創造に向けて自分の経験や可能性を拡げるチャレンジをした従業員の割合を計る指標(9)組織を牽引する女性リーダー増加によるダイバーシティの促進を計る指標 ※1.SBTとは、Science Based Targetsの略で、パリ協定で採択された科学的根拠に基づく目標(産業革命前比で気温上昇を1.5℃未満に抑える目標)と整合した、企業が設定する「温室効果ガス排出削減目標」を指します。当社グループは2030年度に向けた温室効果ガス排出目標が、科学的根拠に基づいた目標であるとしてSBT認定を取得しました。※2.当社グループは、使用電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指していることから、RE100(企業が自らの事業の使用電力を100%再エネで賄うことを目指す国際的なイニシアチブ)へ加盟しました。※3.国内(単体)での集計です。※4.エンゲージメントスコアについては、当連結会計年度は調査対象外としています。 (4)各報告セグメントの戦略と取組み各報告セグメントにおける主な戦略と取組みは、次のとおりであります。 ・インダストリアルテープ欧州を中心に法制化が進むスマートフォンなどの電子機器における修理する権利(Right to Repair)に対し、当連結会計年度に新たに販売を開始したバッテリー固定用電気剥離テープの採用機種が拡大することが見込まれます。資源循環型社会構築の機運を追い風に当社グループの剥離技術を活用し、さらなる事業拡大を図ります。また、生成AIの普及を背景に、半導体やセラミックコンデンサー向け工程用材料の需要が増加することが見込まれます。一方で、自動車材料は、グローバル自動車生産台数が伸び悩むなど、引き続き厳しい事業環境が想定されますが、インダストリアルテープ全体として安定的に高い利益率を生み出せる事業基盤の構築を進めます。 ・オプトロニクス情報機能材料は、ディスプレイ市場が成熟化する中、車載ディスプレイやフォルダブル(折り畳み式)スマートフォン向けのハイエンド製品に注力します。車載ディスプレイは1台当たりの搭載数の増加と大型化が年々進んでおり、当社グループの耐久性に優れた光学フィルムの需要が引き続き堅調に推移する見込みです。フォルダブルスマートフォン向けには、光学フィルムが不要な新たなディスプレイが主流となる中で、当社グループは透明粘着シートに光学特性を付与した製品の開発を進めています。また、製造プロセスにおいて、脱溶剤によるCO2排出削減を積極的に推進し、ディスプレイ周辺部材のトータルソリューションプロバイダーとして、さらなる付加価値を追求していきます。回路材料は、HDD市場においてデータセンター向けのストレージ需要が引き続き増加することに加え、HAMR(Heat-Assisted Magnetic Recording)などの新たな技術の進展によりHDDのさらなる高容量化が進むことが想定されます。これらに対し、当社グループのベトナム拠点の生産能力を増強するとともに、HAMR向け製品の拡販を進めます。また、ハイエンドスマートフォン向け高精度基板は、既存顧客向けに新たな用途での新製品開発に取り組んでおります。 ・ヒューマンライフライフサイエンスは、核酸医薬の受託製造事業において、将来商用化が見込まれる大型案件が進捗し需要が増加する見通しです。また、当連結会計年度に稼働を開始した米国マサチューセッツ州の新工場で増産を予定しています。核酸創薬においては、核酸DDS(Drug Delivery System)設計技術の開発とライセンス契約締結に注力していきます。なお、難治性の癌治療薬の開発は、ライセンスアウトに向けて、引き続き取り組んでまいります。メンブレンは、各国における排水規制強化に対して、インドを中心に排水・廃液のゼロ化に貢献する製品の需要が増加する見通しです。パーソナルケア材料は、おむつ向け衛生材料の新製品と生分解性技術を用いた環境貢献型製品の拡販により、収益性の改善を図ります。 ・その他その他における新規事業では、次世代半導体、環境ソリューション、デジタルヘルスの分野でPlanetFlagsTM/HumanFlagsTMの候補となるテーマに経営資源を集中的に投入し、早期の事業化を目指します。 |
経営者による財政状態の説明
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】経営成績等の状況の概要(1)財政状態当連結会計年度末(以下「当期末」という。)の資産合計は、前連結会計年度末(以下「前期末」という。)に比べ70,833百万円増加し、1,321,920百万円となりました。流動資産は32,251百万円増加の750,209百万円、非流動資産は38,581百万円増加の571,711百万円となりました。流動資産の増加は、現金及び現金同等物が21,074百万円増加したこと、売上債権及びその他の債権が1,077百万円増加したこと、棚卸資産が6,127百万円増加したこと、その他の金融資産が2,511百万円増加したこと、その他の流動資産が1,460百万円増加したことによるものであります。非流動資産の増加は、有形固定資産が39,101百万円増加したこと、のれんが8,889百万円減少したこと、無形資産が3,648百万円減少したこと、持分法で会計処理されている投資が5,203百万円増加したこと、金融資産が1,904百万円増加したこと、繰延税金資産が3,112百万円減少したこと、その他の非流動資産が8,284百万円増加したこと等によるものであります。当期末の負債合計は、前期末に比べ10,767百万円増加し、276,806百万円となりました。流動負債は14,878百万円増加の221,735百万円、非流動負債は4,111百万円減少の55,070百万円となりました。流動負債の増加は、仕入債務及びその他の債務が1,542百万円増加したこと、未払法人所得税等が14,781百万円増加したこと、その他の金融負債が2,294百万円減少したこと等によるものであります。非流動負債の減少は、確定給付負債が4,139百万円減少したこと等によるものであります。当期末の資本合計は、前期末に比べ60,065百万円増加し、1,045,114百万円となりました。これは、利益剰余金が前期末に比べ81,977百万円増加したこと、自己株式が8,501百万円増加したこと、その他の資本の構成要素が13,419百万円減少したこと等によるものであります。 (2)経営成績当連結会計年度における経済環境は、世界的なインフレ圧力の緩和を受けて、欧米の中央銀行が利下げに転じるなど、金融政策に変化が見られました。米国では、個人消費が堅調に推移する一方で、労働市場の緩やかな減速により、連邦準備制度理事会(FRB)は金利を引き下げました。トランプ新政権発足以降は、追加関税などの意向を表明したことでインフレ再燃への警戒感が広がりました。欧州では、実質所得の増加により個人消費が回復する一方で、ドイツを中心に製造業の低迷が見られました。中国では、長引く不動産不況と厳しい雇用環境による国内需要の低迷に対して、政府は消費財の買い替え促進策を実施しました。日本においては、物価高を上回る賃金上昇に加え、訪日外国人旅行者数が過去最高を更新したことによるインバウンド消費の伸びや、企業の積極的な設備投資により、景気が緩やかに回復しました。なお、為替相場は、1ドル160円を超える歴史的な円安水準から、急速に円高が進むなど不安定な状況が見られたものの、前連結会計年度に対しては円安が進みました。このような中、当社グループの主要な市場においては、データセンター向けの高容量ハードディスクドライブ(HDD)やIT機器の生産が想定を上回り、当社製品の需要が増加しました。当連結会計年度の対米ドル為替レートは、前連結会計年度と比較し6.3%円安の1ドル152.9円となり、円安による影響は、営業利益で233億円の増益要因となりました。以上の結果、売上収益は前連結会計年度と比較し、10.8%増(以下の比較はこれに同じ)の1,013,878百万円となりました。また、営業利益は33.4%増の185,667百万円、税引前当期利益は33.4%増の185,329百万円、当期利益は33.6%増の137,307百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は33.7%増の137,237百万円となりました。 セグメント別の経営成績① インダストリアルテープ 基盤機能材料は、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。ハイエンドスマートフォン向け組み立て用部材は、既存製品の採用モデル拡大に加え、新たにバッテリー固定用電気剥離テープの販売を開始し、需要が増加しました。また、半導体メモリやセラミックコンデンサー等の生産に使用される工程用材料の需要が、引き続き緩やかに回復しました。自動車材料は自動車生産台数の減少により低調に推移しました。 以上の結果、売上収益は355,733百万円(5.3%増)、営業利益は46,043百万円(19.0%増)となりました。 ② オプトロニクス 情報機能材料は、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。ハイエンドノートパソコンやタブレット端末の生産が好調に推移したことで、光学フィルムや透明導電性フィルムの需要が大幅に増加しました。また、グローバル自動車生産台数が低迷する一方で、車載ディスプレイの大型化や搭載数の増加に伴い、高耐久な光学フィルムの需要も増加しました。 回路材料は、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。生成AIの普及によりデータセンター向けのストレージ需要の高まりやHDDのさらなる高容量化により、CIS(Circuit Integrated Suspension)の需要が大幅に増加しました。高精度基板はハイエンドスマートフォンの生産が堅調に推移したことにより需要が増加しました。なお、第3四半期連結会計期間にプラスチック光ファイバー・ケーブルについて、事業化を中止することを決定し、減損損失等2,690百万円を計上しました。 以上の結果、売上収益は542,999百万円(15.4%増)、営業利益は173,121百万円(39.0%増)となりました。 ③ ヒューマンライフ ライフサイエンスは、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。核酸受託製造は、米国マサチューセッツ州の拠点に新設した工場で、将来商用化が見込まれる案件の生産を開始しました。また、核酸材料(NittoPhaseTM)は、一部顧客の商用薬向けに需要が増加しました。核酸医薬の創薬においては、難治性の癌治療薬の臨床第1相試験が第1四半期連結会計期間に完了し、ライセンスアウトに向けて、引き続き取り組んでまいります。 メンブレン(高分子分離膜)は、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。各種産業用途向けの需要が中国を中心に減少する一方で、インドにおいて、排水規制強化に伴い、排水・廃液のゼロ化に貢献するZLD(Zero Liquid Discharge)の需要が増加しました。 パーソナルケア材料は、前連結会計年度に対して売上収益が伸長しました。おむつ向け衛生材料の新製品と生分解性技術を用いた環境貢献型製品の拡販を進めました。なお、第4四半期連結会計期間に当社連結子会社であるNitto Advanced Film Gronau GmbH社の事業計画を見直した結果、のれんに関して3,298百万円を減損損失として計上しました。 以上の結果、売上収益は132,098百万円(6.1%増)、営業損失は11,902百万円(前年同期は営業損失9,490百万円)となりました。 ④ その他 当セグメントには未だ十分な売上収益を伴っていないその他製品が含まれております。なお、第3四半期連結会計期間に当社連結子会社であるNitto Bend Technologies社のフレキシブルセンサの事業計画を見直した結果、のれんに関して5,199百万円を減損損失として計上しました。 以上の結果、売上収益は19百万円(53.9%増)、営業損失は12,229百万円(前年同期は営業損失5,661百万円)となりました。 当連結会計年度において、マネジメント体制の変更を行った結果、「インダストリアルテープ」の一部関連事業を「オプトロニクス」へ移管しております。 当該変更を反映した組替後の数値で前連結会計年度との比較を行っております。 (3)キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は363,344百万円となり、前連結会計年度末より21,074百万円増加しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果、増加した資金は217,908百万円(前連結会計年度は155,521百万円の増加)となりました。これは主に、税引前当期利益185,329百万円、減価償却費及び償却費65,595百万円、減損損失12,339百万円、確定給付負債の増減額1,048百万円、仕入債務及びその他の債務の増減額2,369百万円、利息及び配当金の受入額2,849百万円による増加、売上債権及びその他の債権の増減額3,791百万円、棚卸資産の増減額8,526百万円、法人税等の支払額又は還付額34,304百万円による減少の結果であります。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果、減少した資金は115,105百万円(前連結会計年度は67,927百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産及び無形資産の取得による支出106,003百万円、定期預金の増減額2,371百万円、関係会社株式の取得による支出6,256百万円による減少の結果であります。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果、減少した資金は78,890百万円(前連結会計年度は90,784百万円の減少)となりました。これは主に、リース負債の返済による支出5,822百万円、自己株式の増減額35,062百万円、配当金の支払額38,040百万円による減少の結果であります。 なお当社グループのキャッシュ・フロー指標の推移は以下のとおりであります。 2022年3月期2023年3月期2024年3月期2025年3月期 親会社所有者帰属持分比率(%)75.078.278.779.0 時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%)119.3108.1155.8143.8 キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)0.20.10.20.1 インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)269.8337.4255.0269.3 (注)1 各指標はいずれも連結ベースの財務数値を用いて、以下の計算式により算出しております。 親会社所有者帰属持分比率(%) 親会社所有者帰属持分÷総資産 時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%) 株式時価総額÷総資産 キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) 有利子負債÷キャッシュ・フロー インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) キャッシュ・フロー÷利払い2 株式時価総額は、期末株価終値×自己株式控除後の期末発行済株式数により算出しております。3 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。4 有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。 生産、受注及び販売の実績(1)生産実績 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)インダストリアルテープ230,513109.6オプトロニクス622,425117.9ヒューマンライフ124,541110.3その他018.5合計977,480114.9 (注)金額は、売価換算値によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。 (2)受注実績 当社グループは、おおむね需要動向から見た見込み生産を行い、それ以外の製品については一部受注生産を行っておりますが、受注生産高の売上高に占める割合の重要性が乏しいため、記載を省略しております。(3)販売実績 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)インダストリアルテープ351,698105.5オプトロニクス537,481115.9ヒューマンライフ123,203105.6その他1,495111.8合計1,013,878110.8 (注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対応する割合は、販売実績が総販売実績の100分の10以上の相手が無いため記載を省略しております。3 当連結会計年度において、報告セグメントの分類に一部変更があります。前年同期比は、当該変更を反映した前連結会計年度の数値に基づき算定しております。 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容当連結会計年度(以下「当期」という。)は、売上収益は前連結会計年度(以下「前期」という。)と比べて10.8%増の1,013,878百万円となりました。これは情報機能材料、回路材料等の売上収益が増加したこと等によるものです。売上原価は、前期比5.8%増の618,365百万円となりました。売上収益に対する売上原価の比率は、前期比2.8ポイント減の61.0%となりました。販売費及び一般管理費は、前期比3.9%増の151,835百万円となりました。売上収益に対する販売費及び一般管理費の比率は、前期比1.0ポイント減の15.0%となりました。研究開発費は、前期比7.6%増の46,771百万円となりました。売上収益に対する研究開発費の比率は、前期より0.2ポイント減少し4.6%となりました。以上の結果、営業利益は前期比33.4%増の185,667百万円となりました。税引前当期利益は前期比33.4%増の185,329百万円となりました。法人所得税費用は、前期の36,146百万円から、当期は48,021百万円となり、税効果会計適用後の法人税等の負担率は25.9%(前期は26.0%)となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、前期比33.7%増の137,237百万円となりました。基本的1株当たり当期利益は、前期比36.0%増の195円74銭となりました。 なお、経営成績の概況及びセグメント別の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 経営成績等の状況の概要」に記載しております。資本の財源及び資金の流動性 当社グループは、変化の激しい事業環境下においても継続的に企業価値を向上させていくために、資金の使途を①設備投資、②配当、③M&A、④自己株式取得と順位付けし、経営の目安としています。 当社グループの資金の源泉は、主として自己資金であり、トレジャリーマネジメントシステムを活用し、グループ内資金をタイムリーに漏れなく把握するとともに、各エリアに設置した資金統括拠点へ配当やキャッシュ・プーリングを活用して集約し、資金効率の向上に努めています。 なお、当連結会計年度末の連結借入金総額は前連結会計年度末に比べ109百万円増加し、455百万円となりました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は363,344百万円となっております。 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針の要約 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しております。 |
※本記事は「日東電工株式会社」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
連結財務指標と単体財務指標の違いについて
連結財務指標とは
連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。
単体財務指標とは
単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。
本記事での扱い
本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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