会社名 | 三菱電機株式会社 |
業種 | 電気機器 |
従業員数 | 連149134名 単36520名 |
従業員平均年齢 | 41.4歳 |
従業員平均勤続年数 | 16.7年 |
平均年収 | 8298631円 |
1株当たりの純資産 | 796.69円 |
1株当たりの純利益 | 139.2円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 50円 |
配当性向 | 35.9% |
株価収益率(PER) | 18倍 |
自己資本利益率(ROE) | 18.1% |
営業活動によるCF | 4154億円 |
投資活動によるCF | ▲941億円 |
財務活動によるCF | ▲2401億円 |
研究開発費※1 | 123億円 |
設備投資額※1 | 89.71億円 |
販売費および一般管理費※1 | 1478.21億円 |
株主資本比率※2 | 50% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】(1) 経営方針 「私たち三菱電機グループは、たゆまぬ技術革新と限りない創造力により、活力とゆとりある社会の実現に貢献します。」という企業理念は、社会における私たちの存在意義そのものです。この企業理念の下、三菱電機グループは「成長性」「収益性・効率性」「健全性」の3つの視点によるバランス経営に加えて、「事業を通じた社会課題の解決」という原点に立ち、サステナビリティの実現を経営の根幹に位置づけています。これにより、企業価値の持続的向上を図り、社会・顧客・株主・従業員をはじめとしたステークホルダーへの責任を果たしていきます。 (2) 経営環境及び対処すべき課題①経営環境 世界経済の先行きは、引き続き消費の拡大が見込まれるものの、欧米を中心とした各国の金融引き締めの継続や中国における不動産不況等の影響により、緩やかな成長に留まることが見込まれます。さらに、ウクライナ情勢の長期化や米中対立など地政学的リスクの高まりに伴い、想定を超えた経営環境の変化も懸念されます。 ②対処すべき課題「ありたい姿(循環型 デジタル・エンジニアリング企業)」の実現へ向けた変革の加速 三菱電機グループは、お客様から得られたデータをデジタル空間に集約・分析するとともに、グループ内が強くつながり、知恵を出し合うことで新たな価値を生み出し、社会課題の解決に貢献する「循環型 デジタル・エンジニアリング企業」への変革を進めています。 この変革をさらに加速するためのデジタル基盤として、「Serendie(セレンディ)」を構築しました。Serendieを活用し、多様な人財が技術力と創造力を発揮することにより、新たなソリューションを提供します。そのために、デジタルによって経営や事業を変革する「DX人財」、新たな市場を開拓する「共創活動」、AIやモデルベース等の先進的な「デジタル技術開発」、経営のインフラとなる生産や業務の「プロセス改革」を強化します。 2023年4月に設立した「DXイノベーションセンター」は、上述の取組みを牽引するとともに、各事業部門によるソリューション事業の創出・拡大を後押ししていきます。 経営体質の強化 三菱電機グループは、「収益性」と「資産効率」の向上のため、ROIC*1を活用した事業運営を進めることで、資産効率とキャッシュ創出力を重視した経営に取り組んでいきます。これにより、重点成長事業については生産体制強化やM&A等の積極的な投資をスピーディーに実行する一方、収益性・資産効率の改善が見込まれない課題事業は撤退や売却の検討を進める等、事業ポートフォリオ戦略に基づくリソースシフトを強力に推進していきます。 さらに、グローバルでのエンジニアリングチェーン・サプライチェーンの最適化及びグループ経営の効率化にも取り組みます。また、足元の経済動向を踏まえ、経営環境の変化に柔軟に対応したオペレーションを徹底していきます。 あらゆる事業運営のベースとなる人財については、人的資本価値の最大化に向け、2024年度から新しい人事制度を導入しました。「成長に繋がる適正評価の実現」と「自律的キャリア開発支援」をコンセプトに、等級・評価・報酬制度を刷新し、従業員のキャリアオーナーシップに基づく自律的な成長を促すとともに、マネジメント層にはグローバル基準でのジョブグレード制度を新たに適用し、ジョブ型人財マネジメントへの転換を図ります。 本質的なサステナビリティ経営の推進 三菱電機グループは、サステナビリティの実現に向けて注力する5つの課題領域(「カーボンニュートラル」、「サーキュラーエコノミー」、「安心・安全」、「インクルージョン」、「ウェルビーイング」)を明確化しています。これらの課題領域において、事業を通じ社会課題を解決することで、社会の持続可能性と三菱電機グループの事業発展をトレード・オフの関係にするのではなく、この2つが両立する「トレード・オン」に挑戦していきます。かかる中、当社は、2024年4月に「サステナビリティ・イノベーション本部」を新設しました。同本部が中心となり、グローバルかつサステナビリティの視点で社会課題を解決する新たな事業創出に取り組むとともに、持続的成長を支える経営基盤の強化を包括的、戦略的に推進し会社を変革していきます。 カーボンニュートラルについては、当社の長期環境経営ビジョンである「環境ビジョン2050」において、2050年度までにバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すこととしています。また、その中間目標として、2030年度までに自社工場・オフィスからの温室効果ガス排出量実質ゼロを目指すこととしました。これら目標の達成に向け、技術革新により社会全体の脱炭素化に貢献する事業を育成するとともに、自社の技術も活用して自社排出の削減を進めていきます。加えて、TCFD*2の提言に基づいた気候変動に係るリスクと機会の開示に向けた取組みを継続していきます。 ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョンについては、多様な人財が活躍し、新たな価値を創出するために協働することを目指し、従業員の働き方や多様性を認め合えるような職場環境・風土の実現に向けた各種取組みを推進します。また、国際的に合意されている人権の保護を支持・尊重することを企業活動の前提とし、従業員やサプライチェーンの人権尊重に取り組みます。 サステナビリティに関する具体的な考え方や取組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。 当社が進める3つの改革の深化・発展と倫理・遵法の徹底 当社は、これまで明らかになった品質不適切行為の全容及び調査委員会・ガバナンスレビュー委員会からの指摘、提言を真摯に受け止め、2021年より信頼回復に向けた3つの改革(品質風土、組織風土、ガバナンス)への取組みを開始し、新しい三菱電機の創生に向けた変革に全力で取り組んでいます。エンジニアリングプロセスの変革を目指す「品質風土改革」、双方向コミュニケーションの確立を図る「組織風土改革」、予防重視のコンプライアンスシステムの構築を進める「ガバナンス改革」の3点は、確実に進捗しています。特に「ガバナンス改革」においては、外部の視点を入れながら、不正が起こらない・起こさないガバナンス/内部統制の仕組みの構築を進めています。 三菱電機グループのコンプライアンス・モットーである“Always Act with Integrity”(いかなるときも「誠実さ」を貫く)に基づき、品質不適切行為やこれまで発生した労務、サイバーセキュリティの問題の風化防止を含む、再発防止に向けた各種取組みを進めていきます。 *1 ROIC(投下資本利益率):各事業部門での把握・改善が容易となるように、「資本」「負債」ではなく、資産項目(固定資産・運転資本等)に基づいて算出する三菱電機版ROIC*2 TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures):G20の財務大臣・中央銀行総裁からの要請により設置された、民間主導による気候関連財務情報の開示に関するタスクフォース 中期経営計画 2025年度目標 これら施策を通じ、中期経営計画における2025年度財務目標の達成に取り組んでいきますが、一部事業における市況悪化の影響等を受け、目標は一部見直しを行います。今後は「連結売上高5兆円+(変更なし)」「営業利益率8%+(変更前10%)」「ROE9%(変更前10%)」「キャッシュ・ジェネレーション3.3兆円/5年(変更前3.4兆円/5年)」を新たな目標とし、追加の構造対策や、更なる価値の創出に取り組むことで営業利益率8%を上回る業績の達成を目指していきます。キャピタル・アロケーションは当初の計画を維持し、成長投資を最優先として重点成長事業を中心に2.8兆円を振り向けつつ、利益成長を通じた株主還元についても更に強化して0.6兆円を目標とする方針としています。 なお、セグメント別の事業戦略および営業利益率は次のとおりです。 セグメント事業戦略インフラ広範な社会インフラ事業におけるグローバルレベルの顧客基盤・ストックを活かし、「世界の重要インフラの安定稼働とカーボンニュートラルの実現」と「日本・アジアの安全保障への貢献」に取り組みます。そのために脱炭素コンポーネントや防衛・宇宙事業への重点的なリソース投入と、事業間シナジーを生む統合ソリューションであるE&F(Energy&Facility)ソリューションの推進に注力します。インダストリー・モビリティコアコンポーネントとデジタル技術の統合で、未来の“ものづくり”と“快適な移動”を支えます。インダストリー領域では重点成長事業におけるコンポーネントの提供価値拡大と、FAデジタルソリューションの事業モデル構築を推進します。モビリティ領域では新会社 三菱電機モビリティ㈱の下、環境変化に対応した事業ポートフォリオの再構築や事業運営の効率化などをスピーディーに行います。ライフ人々の生活を支える空調や昇降機などの設備事業に加え、お客さまとつながり続けることができる保守や運用管理などの循環型事業を通じて、あらゆる生活空間における快適で安全・安心な生活環境を創造するソリューションプロバイダとなることを目指します。顧客価値の創出を推進し、「グリーンエナジーソリューション」「安全・安心&快適ソリューション」「ビルマネジメントソリューション」を提供します。ビジネス・プラットフォーム「事業DX」と「業務DX」の両輪の取組みを通じて循環型 デジタル・エンジニアリングを推進させるための経営基盤を構築していきます。構築した経営基盤と、「グローバルオペレーション&メンテナンス(O&M)」を中心とした各種サービスを各ビジネスエリア・事業本部に提供することにより、統合ソリューションの創出を支え続けるとともに、情報システム・サービス事業の強化を図ります。セミコンダクター・デバイス社会のGX・DX実現に必要不可欠なキーデバイスの提供を通じて、三菱電機グループの統合ソリューションをコンポーネントから強化していくことに加え、社内関連事業の知見を幅広く取り込み、顧客目線で付加価値の高いデバイスの開発に取り組みます。特にパワーデバイス事業では、三菱電機が強い技術と豊富な市場実績を保有するSiC(Silicon Carbideの略:炭化ケイ素)を中核とした成長基盤の強化に取り組み、事業の成長をさらに加速していきます。 <営業利益率のセグメント別内訳>セグメント2023年度実績中期経営計画2025年度目標インフラ3.0%7%インダストリー・モビリティ7.0%9%ライフ7.1%9%ビジネス・プラットフォーム5.9%9%セミコンダクター・デバイス10.3%12% 三菱電機グループは、上記施策を着実に展開することにより、更なる企業価値の向上を目指します。 なお、上記における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年6月25日)現在において当社が判断したものです。 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】三菱電機グループが当連結会計年度中にとった主な施策及び翌連結会計年度以降に向けての施策については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」などに記載のとおりですが、これらの施策の実施状況を踏まえた当連結会計年度に関する財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は以下のとおりです。 (1) 業績概要 当連結会計年度の景気は、日本では緩やかな回復が続いてきましたが、足元では個人消費の回復に足踏みがみられました。米国では金融引き締めなどの影響を受けつつも個人消費を中心に回復が継続しました。中国では輸出の停滞に加え、不動産不況等を背景に内需も減速し、持ち直しの動きに弱さがみられました。欧州では金融引き締めなどの影響により、企業・家計部門ともに停滞しました。 このような状況の中、三菱電機グループは、これまでの事業競争力強化・経営体質強化に加え、ビジネスエリア経営体制での事業変革・ポートフォリオ戦略の加速による収益力最大化に、従来以上に軸足を置いて取り組んできました。この結果、当連結会計年度の業績は、以下のとおりとなりました。 <連結決算概要> 前連結会計年度当連結会計年度前連結会計年度比売上高50,036億円52,579億円2,542億円増営業利益2,623億円3,285億円661億円増税引前当期純利益2,921億円3,658億円736億円増親会社株主に帰属する当期純利益2,139億円2,849億円710億円増 ①売上高 売上高は、為替円安の影響や価格転嫁の効果などにより、前連結会計年度比2,542億円増加の5兆2,579億円となりました。ライフ部門では、ビルシステム事業は国内・アジア(除く中国)・欧州向けで増加し、空調・家電事業は上期を中心に空調機器の需要が堅調に推移し増加しました。インフラ部門では、社会システム事業は国内外の公共事業や海外の交通事業の増加、電力システム事業は国内外の電力流通事業で増加し、防衛・宇宙システム事業は防衛システム事業・宇宙システム事業の大口案件により増加しました。インダストリー・モビリティ部門では、FAシステム事業はデジタル関連分野やリチウムイオンバッテリーなどの脱炭素関連分野における需要の落ち込みなどにより減少しましたが、自動車機器事業は電動化関連製品や自動車用電装品などが増加しました。セミコンダクター・デバイス部門は、パワー半導体の堅調な需要により増加し、ビジネス・プラットフォーム部門では、システムインテグレーション事業・ITインフラサービス事業が増加しました。 <売上高における為替影響額> 前連結会計年度期中平均レート当連結会計年度期中平均レート当連結会計年度売上高への影響額連結合計–約1,640億円増内、米ドル136円145円約490億円増内、ユーロ142円158円約610億円増内、人民元19.7円20.2円約90億円増 ②営業利益 営業利益は、ビジネス・プラットフォーム部門での減益はありましたが、ライフ部門、インダストリー・モビリティ部門、インフラ部門、セミコンダクター・デバイス部門での増益により、前連結会計年度比661億円増加の3,285億円となりました。営業利益率は、売上原価率の改善などにより、前連結会計年度比1.0ポイント改善の6.2%となりました。 売上原価率は、為替円安の影響に加え、価格転嫁の効果などにより、前連結会計年度比1.3ポイント改善しました。販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比892億円増加し、売上高比率は前連結会計年度比0.5ポイント悪化しました。その他の損益は、固定資産減損損失の減少などにより前連結会計年度比164億円増加し、売上高比率は前連結会計年度比0.2ポイント改善しました。 ③税引前当期純利益 税引前当期純利益は、営業利益の増加などにより、前連結会計年度比736億円増加の3,658億円、売上高比率は7.0%となりました。 ④親会社株主に帰属する当期純利益 親会社株主に帰属する当期純利益は、税引前当期純利益の増加などにより、前連結会計年度比710億円増加の2,849億円、売上高比率は5.4%となりました。 なお、ROEは前連結会計年度比1.3ポイント改善の8.2%となりました。 事業の種類別セグメントの業績は、次のとおりです。① インフラ社会システム事業の事業環境は、国内外の交通分野における需要回復の動きが継続し、国内外の公共分野における投資も堅調に推移しました。このような状況の中、同事業は、受注高は国内外の交通事業や海外の公共事業の増加などにより前連結会計年度を上回り、売上高は円安の影響に加え、国内外の公共事業や海外の交通事業の増加などにより、前連結会計年度を上回りました。電力システム事業の事業環境は、国内電力会社の設備投資の動きが継続し、再生可能エネルギーの拡大に伴う電力安定化の需要などが国内外で堅調に推移しました。このような状況の中、同事業は、受注高は国内外の電力流通事業や国内の発電事業の増加などにより前連結会計年度を上回り、売上高は円安の影響に加え、国内外の電力流通事業の増加などにより前連結会計年度を上回りました。防衛・宇宙システム事業は、受注高は防衛システム事業の大口案件の増加により前連結会計年度を上回り、売上高は防衛システム事業・宇宙システム事業の大口案件の増加により前連結会計年度を上回りました。この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比107%の1兆366億円となりました。営業利益は、売上案件の変動や費用の増加はありましたが、前連結会計年度の防衛・宇宙システム事業の採算悪化の影響などにより、前連結会計年度比38億円増加の314億円となりました。 ② インダストリー・モビリティFAシステム事業の事業環境は、半導体などのデジタル関連分野やリチウムイオンバッテリーなどの脱炭素関連分野において、国内外で需要が減少しました。このような状況の中、同事業は、受注高・売上高ともに前連結会計年度を下回りました。自動車機器事業の事業環境は、一部半導体部品の需給状況の改善などによる新車販売台数の増加、電動車を中心とした市場の拡大により、電動化関連製品などの需要が堅調に推移しました。このような状況の中、同事業は、モーター・インバーターなどの電動化関連製品や自動車用電装品、ADAS*関連機器の増加に加え、円安の影響や価格転嫁の効果などにより、受注高・売上高ともに前連結会計年度を上回りました。この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比103%の1兆7,106億円となりました。営業利益は、FAシステム事業は円安の影響はありましたが、機種構成の変動や売上高の減少、費用の増加などにより減少し、自動車機器事業は円安の影響に加え、売上高の増加、前連結会計年度の固定資産減損損失の影響などにより増加しました。部門全体では、前連結会計年度比242億円増加の1,201億円となりました。* ADAS:Advanced Driver Assistance System / 先進運転支援システム ③ ライフビルシステム事業の事業環境は、需要回復の動きが国内外で継続しました。このような状況の中、同事業は、円安の影響や、国内・アジア(除く中国)・欧州向けの増加などにより、受注高・売上高ともに前連結会計年度を上回りました。空調・家電事業の事業環境は、上期を中心に世界的な脱炭素化の動きを受けて空調機器の需要が国内外で堅調に推移しましたが、下期に欧米における空調機器の需要減少がありました。このような状況の中、同事業は、円安の影響や価格転嫁の効果に加え、欧州・アジア向けの空調機器の増加などにより、売上高は前連結会計年度を上回りました。この結果、部門全体では、売上高は前連結会計年度比105%の2兆522億円となりました。営業利益は、売上高の増加や円安の影響に加え、価格転嫁の効果や物流費の改善、土地の売却などにより、前連結会計年度比443億円増加の1,456億円となりました。 ④ ビジネス・プラットフォーム情報システム・サービス事業の事業環境は、レガシーシステムの更新や、デジタルトランスフォーメーション導入関連の需要が堅調に推移しました。このような状況の中、同事業は、受注高は前連結会計年度並みとなり、売上高はシステムインテグレーション事業・ITインフラサービス事業の増加などにより前連結会計年度比105%の1,420億円となりました。営業利益は、費用の増加などにより、前連結会計年度比4億円減少の83億円となりました。 ⑤ セミコンダクター・デバイス電子デバイス事業の事業環境は、電鉄・電力向けのパワー半導体の需要が堅調に推移しました。このような状況の中、同事業は、受注高は電鉄・電力向けパワー半導体の増加などにより前連結会計年度を上回り、売上高は円安の影響に加え、産業、自動車、電鉄・電力向けパワー半導体の増加などにより前連結会計年度比103%の2,898億円となりました。営業利益は、円安の影響などにより、前連結会計年度比6億円増加の298億円となりました。 ⑥ その他売上高は、物流の関係会社における減少などにより、前連結会計年度比99%の8,435億円となりました。営業利益は、売上高の減少などにより、前連結会計年度比16億円減少の317億円となりました。 顧客の所在地別の売上高の状況は、次のとおりです。① 日本自動車機器事業やビルシステム事業などの増加により、前連結会計年度比104%の2兆5,594億円となりました。 ② 北米空調・家電事業などの減少はありましたが、自動車機器事業や社会システム事業などの増加により、前連結会計年度比111%の6,970億円となりました。北米のうち米国については、空調・家電事業などの減少はありましたが、自動車機器事業や社会システム事業などの増加により、前連結会計年度比111%の5,817億円となりました。 ③ アジア空調・家電事業やビルシステム事業などの増加はありましたが、FAシステム事業などの減少により前連結会計年度比97%の1兆1,770億円となりました。アジアのうち中国については、FAシステム事業などの減少により、前連結会計年度比91%の5,323億円となりました。 ④ 欧州空調・家電事業や自動車機器事業などの増加により、前連結会計年度比121%の7,330億円となりました。 ⑤ その他その他の地域にはオセアニアなどが含まれており、前連結会計年度比108%の912億円となりました。 (2) 生産、受注及び販売の実績① 生産実績 三菱電機グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、ソフトウエアやサービスなどの無形財も多く含まれることから、セグメントごとの生産規模を金額あるいは数量で示していません。 ② 受注実績 当連結会計年度における受注実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。事業の種類別セグメントの名称受注高(百万円)前連結会計年度比(%)インフラ1,605,357137インダストリー・モビリティ1,531,30791ライフ(空調・家電を除く)645,193114ビジネス・プラットフォーム146,121101セミコンダクター・デバイス307,269112(注) 1 「インフラ」の受注状況は、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 業績概要 事業の種類別セグメントの業績 ①インフラ」に記載のとおり、防衛システム事業の大口案件の増加などに伴い、前連結会計年度比137%の1兆6,053億円となりました。2 「ライフ」セグメントのうち空調・家電事業については、受注生産形態をとらない製品が多く、受注規模を金額で示していません。 ③ 販売実績 当連結会計年度における販売実績を事業の種類別セグメントごとに示すと、次のとおりです。事業の種類別セグメントの名称販売高(百万円)前連結会計年度比(%)インフラ1,036,613107インダストリー・モビリティ1,710,602103ライフ2,052,291105ビジネス・プラットフォーム142,058105セミコンダクター・デバイス289,848103その他843,57799消去△817,075-計5,257,914105(注) 各種類別セグメントの金額には、セグメント間の内部売上高(振替高)を含めて表示しています。 (3) 資産及び負債・資本の状況分析 総資産残高は、前連結会計年度末比5,848億円増加の6兆1,673億円となりました。退職給付に係る資産が2,876億円、現金及び現金同等物が1,195億円増加したことがその主な要因です。退職給付に係る資産の増加は、株価上昇等によるものです。 負債の部は、買入債務が553億円減少した一方、契約負債が668億円、その他の金融負債が252億円増加したことなどから、負債残高は前連結会計年度末比816億円増加の2兆3,009億円となりました。なお、リース負債を除く社債・借入金残高は前連結会計年度末比109億円減少の2,412億円、借入金比率は3.9%(前連結会計年度末比△0.6ポイント)となりました。 資本の部は、配当金の支払い969億円による減少等はありましたが、親会社株主に帰属する当期純利益2,849億円及び為替円安・株価上昇等を背景としたその他の包括利益3,653億円の計上等により、親会社株主に帰属する持分は前連結会計年度末比5,002億円増加の3兆7,393億円、親会社株主帰属持分比率は60.6%(前連結会計年度末比+2.6ポイント)となりました。 前連結会計年度末当連結会計年度末前連結会計年度末比売掛債権回転率3.71回転3.73回転0.02回転増棚卸資産回転率4.14回転4.19回転0.05回転増借入金比率4.5%3.9%0.6ポイント減親会社株主帰属持分比率58.0%60.6%2.6ポイント増(注) 1 売掛債権回転率は、売上債権と契約資産の合計より算出しています。 2 借入金比率は、リース負債を除く借入金・社債残高より算出しています。 (4) 資本の財源及び資金の流動性①財務戦略に関する基本的な考え方三菱電機グループは、健全な財務体質を維持するため、業績向上による資金収支の改善に加え、棚卸資産の縮減活動、売掛債権の回収促進といった資産の効率化、グループ内資金の更なる有効活用による資金の効率化に引き続き取り組んでいきます。また、2025年度に向けた中期経営計画におけるキャピタル・アロケーション方針のもと、成長投資を最優先としつつ、利益成長を通じた株主還元強化を踏まえた資本政策の実行により、更なる資本効率の向上を図っていきます。なお、成長戦略を進めて行く中で、必要となります設備投資、研究開発、M&A等の資金につきましては、重点成長事業を中心とした営業活動において創出されたキャッシュ・フローを源泉に、自己資金の活用を図りつつ、必要に応じて金融機関等から機動的に資金調達を行っています。 ②キャッシュ・フローの状況当連結会計年度は、営業活動によるキャッシュ・フローが4,154億円の収入となった一方、投資活動によるキャッシュ・フローが941億円の支出となったため、フリー・キャッシュ・フローは3,213億円の収入となりました。これに対し、財務活動によるキャッシュ・フローは2,401億円の支出となったことなどから、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末比1,195億円増加の7,653億円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、当期純利益の増加に加え、棚卸資産への支出の減少等により、前連結会計年度比2,487億円の収入増加となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有価証券等の取得の増加はありましたが、有価証券等の売却収入の増加等により、前連結会計年度比544億円の支出減少となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得の増加や短期借入金の調達の減少等により、前連結会計年度比1,205億円の支出増加となりました。 ③財源及び流動性運転資金需要のうち主なものは、生産に必要な材料購入費の他、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であり、投資を目的とした資金需要は、設備投資、M&A等によるものです。短期運転資金は、自己資金と金融機関からの短期借入等により、設備投資や長期運転資金は、自己資金の活用を図りつつ金融機関からの長期借入及び社債により調達を行っています。なお、環境課題の解決に貢献する事業の資金調達のため、2023年12月に当社として初めてのグリーンボンドを発行しました。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は7,653億円、社債、借入金及びリース負債残高は3,946億円です。社債、借入金及びリース負債の内訳は、短期借入金716億円、社債498億円、長期借入金1,197億円、リース負債1,533億円です。三菱電機グループは、上記施策を着実に展開することにより、更なる企業価値の向上を目指します。 (5) 重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断当社の連結財務諸表はIFRSに基づいて作成しています。これらの連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、資産、負債、収益及び費用の金額に影響を及ぼす判断、見積り及び仮定を使用する必要があります。実際の業績は、これらの見積りとは異なる場合があります。当社の連結財務諸表の金額に重要な影響を与える可能性のある主要な会計上の見積り及び仮定は以下のとおりです。 ①一定の期間にわたり履行義務を充足する契約における見積総費用 インフラ部門、ライフ部門及びビジネス・プラットフォーム部門における一定の要件を満たす特定の工事請負契約については、当該工事請負契約の当期末時点の進捗度に応じて収益を計上しています。進捗度は、当連結会計年度までの発生費用を工事完了までの見積総費用と比較することにより測定しています。 見積総費用は、契約ごとに当該工事請負契約の契約内容、要求仕様、技術面における新規開発要素の有無、過去の類似契約における発生原価実績などのさまざまな情報に基づいて算定しています。 工事請負契約は、契約仕様や作業内容が顧客の要求に基づき定められており契約内容の個別性が強く、また比較的長期にわたる契約が多いことから、作業工程の遅れ等による当初見積りに対する原価の増加や、新規開発技術を利用した工事遂行における当初想定していない事象の発生による原価の変動など、工事の進行途中の環境の変化によって、見積総費用が変動することがあります。 経営者は、四半期ごとに当四半期までの発生費用と事前の見積りとの比較や、その時点での工事の進捗状況等を踏まえた最新の情報に基づいて見直した工事請負契約の見積総費用を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループが認識する収益の金額に影響を与える可能性があります。 ②引当金の認識及び測定 受注工事損失引当金は、インフラ部門、ライフ部門及びビジネス・プラットフォーム部門における工事請負契約において、当該工事の見積総費用が請負受注金額を超える可能性が高く、かつ予想される損失額を合理的に見積もることができる場合に、将来の損失見込額を引当金として計上しています。当連結会計年度末における受注工事損失引当金の残高は、57,157百万円です。 見積総費用は、契約ごとに当該工事請負契約の契約内容、要求仕様、技術面における新規開発要素の有無、過去の類似契約における発生原価実績などのさまざまな情報に基づいて算定しています。 工事請負契約は、契約仕様や作業内容が顧客の要求に基づき定められており契約内容の個別性が強く、また比較的長期にわたる契約が多いことから、作業工程の遅れ等による当初見積りに対する原価の増加や、新規開発技術を利用した工事遂行における当初想定していない事象の発生による原価の変動など、工事の進行途中の環境の変化によって、見積総費用が変動することがあります。 経営者は、四半期ごとに当四半期までの発生費用と事前の見積りとの比較や、その時点での工事の進捗状況等を踏まえた最新の情報に基づいて見直した将来工事損失見込額を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループの損益に影響を与える可能性があります。 製造上やその他の不具合に対し、製品の種類や販売地域及びその他の要因ごとに定められた期間又は一定の使用条件に応じて製品保証を行っており、期末日現在において将来の費用発生の可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合に、製品保証引当金を計上しています。将来の発生費用は、主に過去の無償工事実績及び補修費用に関する現状に基づいて見積っています。当連結会計年度末における製品保証引当金の残高は、61,856百万円です。 経営者は、発生費用の見積り額を妥当なものと考えていますが、将来の状況の変化によって見積りと実績が乖離した場合は、三菱電機グループの損益に影響を与える可能性があります。 ③有形固定資産の回収可能価額 有形固定資産は、減損の兆候の有無を判断しており、減損の兆候が存在する場合は、減損テストを実施しています。 資産又は資金生成単位の見積回収可能価額は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか大きい方の金額としています。使用価値の算定における見積将来キャッシュ・フローは、貨幣の時間的価値及び当該資産に固有のリスクを反映した税引前割引率を用いて現在価値に割り引いています。資産又は資金生成単位の帳簿価額が見積回収可能価額を超過する場合には、当期の純損益において減損損失を認識しています。 経営者は、使用価値の算定における見積将来キャッシュ・フロー及び処分コスト控除後の公正価値の見積りはいずれも妥当なものと考えていますが、三菱電機グループのビジネスや前提条件の変化等によって見積りが変更となることにより資産又は資金生成単位の見積回収可能価額が変動し、結果として、将来において有形固定資産の減損損失の認識に影響を与える可能性があります。 これらの前提条件を用いた見積りは、合理的であると判断していますが、翌連結会計年度において、経済環境の変化等により、見直しが必要となった場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。 ④のれん及び無形資産の回収可能価額 耐用年数を確定できる無形資産は、減損の兆候の有無を判断しており、減損の兆候が存在する場合は、減損テストを実施しています。のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については少なくとも1年に一度、同時期に減損テストを実施しています。 重要なのれんはライフ部門に含まれる空調・家電事業及びビルシステム事業に配分されたのれんであり、減損テストの回収可能価額は、主として経営者が承認した今後5年度分の事業計画及び成長率を基礎としたキャッシュ・フローの見積り額を現在価値に割り引いた使用価値で算定しています。割引率は、税引前の加重平均資本コストを基に算定しており、当連結会計年度における主要な割引率は、9.6%~13.4%です。成長率は、のれんが配分されている資金生成単位グループが属する市場の長期期待成長率を参考に算定しており、当連結会計年度における主要な成長率は0.8%~2.0%です。 経営者は、事業計画や成長率を基礎としたキャッシュ・フローの見積り額や割引率は妥当なものと考えていますが、三菱電機グループのビジネスや前提条件の変化等によってキャッシュ・フローの見積り額や割引率が変更となることにより使用価値が変動し、結果として、将来においてのれん及び無形資産の減損損失の認識に影響を与える可能性があります。 ⑤繰延税金資産の回収可能性 繰延税金資産は、将来減算一時差異、未使用の税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。繰延税金資産は期末日に見直し、税務便益が実現する可能性が高くない場合は、繰延税金資産の計上額を減額しています。 三菱電機グループは繰延税金資産の実現可能性の評価にあたり、繰延税金資産の一部又は全部が実現する可能性が実現しない可能性より高いかどうかを考慮しています。繰延税金資産の実現は、最終的には将来減算一時差異、未使用の税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除が減算可能な期間における将来課税所得によって決定されます。その評価にあたり、予定される繰延税金負債の戻入、予測される将来課税所得及び税務戦略を考慮しています。 経営者は、当連結会計年度末の認識可能と判断された繰延税金資産が実現する蓋然性は高いと考えていますが、繰延期間における将来の見積課税所得が減少した場合には、実現する可能性が高いと考えられる繰延税金資産は減少することとなります。 ⑥確定給付制度債務の測定 三菱電機グループは、従業員を対象とする従業員非拠出制及び拠出制の確定給付型退職給付制度を採用しています。従業員の確定給付制度債務は、割引率、退職率、一時金選択率や死亡率など年金数理計算上の基礎率に基づき算定しています。確定給付制度債務の現在価値及び制度資産の公正価値の再測定による変動は、発生した期においてその他の包括利益として一括認識し、直ちに利益剰余金に振り替えています。 割引率は、将来の毎年度の給付支払見込日までの期間を基に割引期間を設定し、割引期間に対応した期末日時点の優良社債の市場利回りに基づき算定しており、当連結会計年度末の割引率は1.5%です。 経営者は、年金数理計算上の基礎率の算定は妥当なものと考えていますが、実績との差異又は基礎率自体の変更により、確定給付制度債務の金額に影響を与える可能性があります。 ⑦金融商品の公正価値 三菱電機グループは、主に取引関係維持・強化を目的として保有している資本性金融商品をその他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産に指定しています。このうち非上場株式及び出資金の公正価値については、投資先の純資産等に関する定量的な情報及び投資先の将来キャッシュ・フローに関する予想等を総合的に勘案して算定しています。 経営者は、公正価値の見積りは妥当なものと考えていますが、投資先の業績や将来キャッシュ・フロー等の見積りの前提条件が変動した場合は、三菱電機グループのその他の包括利益の金額に影響を与える可能性があります。 |
※本記事は「三菱電機株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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