協和キリン株式会社の基本情報

会社名協和キリン株式会社
業種医薬品
従業員数連5669名 単4013名
従業員平均年齢43.2歳
従業員平均勤続年数16.5年
平均年収9935667円
1株当たりの純資産1171.3円
1株当たりの純利益(連結)113.06円
決算時期12月
配当金58円
配当性向50.6%
株価収益率(PER)20.7倍
自己資本利益率(ROE)(連結)4.3%
営業活動によるCF678億円
投資活動によるCF▲1423億円
財務活動によるCF▲846億円
研究開発費※11035億円
設備投資額※1294.63億円
販売費および一般管理費※11276.13億円
株主資本比率※276.8%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年12月31日現在)において当社グループが判断したものです。 (1) 経営の基本方針「協和キリングループは、ライフサイエンスとテクノロジーの進歩を追求し、新しい価値の創造により、世界の人々の健康と豊かさに貢献します。」を経営理念とし、2030年に向けたビジョン「協和キリンは、イノベーションへの情熱と多様な個性が輝くチームの力で、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値の継続的な創出を実現します。」を掲げています。この経営理念に謳う「新しい価値」を社会と共有できる価値(CSV:Creating Shared Value)と捉え、社会課題への取組みによる「社会的価値の創造」と「経済的価値の創造」の両立により、企業価値向上を実現するCSV経営を実践しています。また、協和キリングループで働く全ての人々が、行動の拠り所となる考え方や姿勢を示す中心概念の“Commitment to Life”と3つのキーワードで構成される価値観を、全員で共有、実践することで、社会から信頼される企業であり続けることを目指しています。 (2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題世界中で医療費の抑制の圧力が強まり、また新薬開発の難度が高まるなど製薬業界にとって厳しい環境変化が起きています。そのような環境の中、2030年のビジョン実現に向けたマテリアリティ(重要経営課題)*1を選定しており、「Story for Vision 2030」により戦略としての解像度を高め、2030年ビジョン達成に向けて取組みを推進しました。今まで培った技術に関する蓄積と疾患に関する知見を融合することにより、Life-changingな価値の創造と創薬のさらなるスピードアップを目指すために、「骨・ミネラル」「血液がん・難治性血液疾患」「希少疾患」を自社で注力する疾患領域に設定し推進します。技術面では、先進的抗体技術やOrchard Therapeutics社が保有する造血幹細胞遺伝子治療技術の活用など、革新的なモダリティ*2を活用したプラットフォームを着実に築いていきます。これに加え、オープンイノベーションやパートナー連携、ベンチャーキャピタル/コーポレートベンチャーキャピタルファンド活動などの強化も推し進めます。このような取組みで生み出されるLife-changingな価値は、「自社で注力する疾患領域のアセット」、又は、「戦略的パートナリングアセット」として、最善のビジネスモデルを構築することにより、より早くかつより多くの患者さんに届けることで、価値の最大化を図っていきます。「Story for Vision 2030」の戦略ストーリーに沿って、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての成長を実現していきます。*1 マテリアリティ(重要経営課題)の詳細は、「第2 事業の状況 3 サステナビリティに関する考え方及び取組」に記載のとおりです。*2 モダリティ:構想した治療コンセプトを実現するための創薬技術(方法・手段)の分類 Story for Vision 2030 自社で注力する疾患領域のアセット:Crysvita(日本製品名:クリースビータ)、Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)、OTL-200(欧州製品名:Libmeldy、米国製品名:Lenmeldy)などの価値最大化に向け、上市国・地域の拡大や市場浸透に継続して取組んでいきます。開発品では、Kura Oncology社とziftomenib*3の開発と販売に関する戦略的提携を進め、急性白血病に対する新たな治療選択肢の提供を目指していきます。加えて、Crysvita(日本製品名:クリースビータ)と同じ適応症のKK8123*3、自社初の抗体薬物複合体(ADC)であるKK2845*3、造血幹細胞遺伝子治療のOTL-203*3及びOTL-201*3についても着実に開発を進めていきます。 戦略的パートナリングアセット:KHK4083*3(一般名:rocatinlimab)の開発では、Amgen社と連携し、複数の臨床試験を継続して推進していきます。加えて、低分子であるKHK4951*3(一般名:tivozanib)、当社独自のバイスペシフィック抗体技術REGULGENTを搭載したKK2260*3及びKK2269*3、並びにPOTELLIGENT抗体であるKK4277*3については、今後パートナーとの連携も含め、価値の最大化を図っていきます。*3 開発パイプラインの詳細は、「第2 事業の状況 6 研究開発活動」に記載のとおりです。
経営者による財政状態の説明
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】<事業の概況>世界中で医療費の抑制の圧力が強まり、また新薬開発の難度が高まるなど製薬業界にとって厳しい環境変化が起きています。そのような環境の中、当社は「Story for Vision 2030」により戦略としての解像度を高め、2030年ビジョンの実現に向けてより焦点を明確化した取組みを推進しました。アンメットメディカルニーズを満たす医薬品の提供に向けて、生産・品質保証・物流の強化を継続するとともに、新たなLife-changingな価値を創出すべく研究開発活動を行ってきました。Crysvita(日本製品名:クリースビータ)*1、Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)*2では、上市国・地域の拡大や市場浸透に取組み、着実な成長を推進しました。また、Orchard Therapeutics社の子会社化を完了し、小児の異染性白質ジストロフィーを適応として開発した造血幹細胞遺伝子治療OTL-200(欧州製品名:Libmeldy、米国製品名:Lenmeldy)の米国での承認を取得しました。免疫・アレルギー疾患領域のKHK4083(一般名:rocatinlimab)の開発ではAmgen社と連携しながら複数の臨床試験を推進し、第III相臨床試験プログラム「ROCKET」の中の「Horizon」試験において、主要評価項目及び全ての主要な副次評価項目を達成したトップライン結果が得られました。また、Kura Oncology社と急性白血病を適応症とした開発品であるziftomenibの開発・販売に関する契約を締結しました。Crysvita(日本製品名:クリースビータ)と同じ適応症で開発中のKK8123及び自社初の抗体薬物複合体(ADC)であるKK2845*3の臨床試験を開始しました。日本においては、透析中の慢性腎臓病における高リン血症の改善を適応症としたフォゼベルの販売を開始し、骨系統疾患を対象としたinfigratinib(開発番号:KK8398)に関する日本での独占的ライセンス契約をBridgeBio Pharma社と締結しました。上記に加えて、「Story for Vision 2030」に沿って、創薬力強化を目指したグローバルでの研究体制の変革、バイオ医薬の開発加速化を推進するための米国新バイオ医薬品工場建設の着工、アジア・パシフィック地域に係る事業の再編を取り進めました。*1:主に遺伝的な原因で骨の成長・代謝に障害をきたす希少な疾患の治療薬。*2:特定の血液がんの治療薬。*3:急性骨髄性白血病の治療を目的とする開発品。 (1)当期の財政状態の概況(単位:億円) 前連結会計年度末当連結会計年度末増減資産10,25910,674414非流動資産流動資産4,1486,1115,6335,0401,485△1,071負債1,8952,166270資本8,3648,508144親会社所有者帰属持分比率(%)81.5%79.7%△1.8% ◎ 資産は、前連結会計年度末に比べ414億円増加し、10,674億円となりました。・非流動資産は、繰延税金資産や持分法で会計処理されている投資の減少等がありましたが、Orchard Therapeutics社株式の取得に伴う企業結合の結果、のれん及び無形資産が増加したことに加えて、開発品導入による無形資産の取得のほか、有形固定資産の取得等により、前連結会計年度末に比べ1,485億円増加し、5,633億円となりました。・流動資産は、営業債権及びその他の債権やその他の流動資産の増加等がありましたが、現金及び現金同等物の減少等により、前連結会計年度末に比べ1,071億円減少し、5,040億円となりました。◎ 負債は、契約負債の減少によるその他の非流動負債の減少等がありましたが、営業債務及びその他の債務やその他の金融負債(非流動)の増加等により、前連結会計年度末に比べ270億円増加し、2,166億円となりました。◎ 資本は、配当金の支払いに加えて、自己株式の取得及び消却の実施による減少等がありましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上や為替影響による在外営業活動体の換算差額による増加等により、前連結会計年度末に比べ144億円増加し、8,508億円となりました。この結果、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べ1.8ポイント減少し、79.7%となりました。 (2)当期の経営成績の概況① 業績の概況当社グループは、グローバルに事業を展開していることから、国際会計基準(以下「IFRS」という。)を適用していますが、事業活動による経常的な収益性を示す段階利益として「コア営業利益」を採用しています。当該「コア営業利益」は、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」及び「研究開発費」を控除し、「持分法による投資損益」を加えて算出しています。(単位:億円) 前連結会計年度当連結会計年度増減増減率%売上収益4,4224,95653312.1%コア営業利益968954△14△1.4%税引前利益972835△138△14.2%親会社の所有者に帰属する当期利益812599△213△26.3% <期中 平均為替レート>通貨前連結会計年度当連結会計年度増減米ドル(USD/円)140円151円11円英ポンド(GBP/円)174円193円19円ユーロ(EUR/円)151円164円13円 当連結会計年度の売上収益は4,956億円(前期比12.1%増)、コア営業利益は954億円(同1.4%減)となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は599億円(同26.3%減)となりました。 ◎ 売上収益は、北米及びEMEAを中心としたグローバル戦略品の伸長に加え、技術収入の増加により、増収となりました。なお、売上収益に係る為替の増収影響は244億円となりました。◎ コア営業利益は、海外売上収益や技術収入の増収に伴い売上総利益が増加しましたが、研究開発費が大きく増加したことにより、減益となりました。なお、コア営業利益に係る為替の増益影響は86億円となりました。◎ 親会社の所有者に帰属する当期利益は、金融費用や法人所得税費用が増加したこと等により、減益となりました。 ② 地域統括会社別の売上収益(単位:億円) 前連結会計年度当連結会計年度増減増減率%日本1,4701,347△123△8.4%北米1,3781,74436626.5%EMEA73384911615.8%アジア/オセアニア3574165916.7%その他48459911523.8%売上収益合計4,4224,95653312.1%(注)1.One Kyowa Kirin 体制(地域(リージョン)軸、機能(ファンクション)軸と製品(フランチャイズ)軸を組合わせたグローバルマネジメント体制)における地域統括会社(連結)の製商品の売上収益を基礎として区分しています。2.EMEAは、ヨーロッパ、中東及びアフリカ等です。3.アジア/オセアニアには、事業再編に伴い開始された同地域のパートナーへの製品供給による売上収益が含まれています。4.その他は、技術収入、造血幹細胞遺伝子治療(Orchard Therapeutics社の売上収益)及び受託製造等です。 <日本リージョンの売上収益>(単位:億円) 前連結会計年度当連結会計年度増減増減率%クリースビータ1051171211.9%ダルベポエチン アルファ注シリンジ「KKF」140116△24△17.3%ダーブロック991272827.8%フォゼベル-4747-ジーラスタ319205△114△35.7% ◎ 日本の売上収益は、腎性貧血治療剤ダーブロックの伸長や高リン血症治療剤フォゼベルの新発売があったものの、2023年4月及び2024年4月に実施された薬価基準引下げの影響等を受け、前連結会計年度を下回りました。・FGF23関連疾患治療剤クリースビータは、2019年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしています。・腎性貧血治療剤ダルベポエチン アルファ注シリンジ「KKF」は、薬価基準引下げ及び競合品浸透の影響を受け、売上収益が減少しました。・腎性貧血治療剤ダーブロックは、2020年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしています。・高リン血症治療剤フォゼベルは、2024年2月に販売を開始し、市場浸透により順調に売上収益を伸ばしています。・発熱性好中球減少症発症抑制剤ジーラスタは、2023年11月に発売されたバイオ後続品の影響や薬価基準引下げの影響を受け、売上収益が減少しました。 <海外リージョン及びその他の売上収益>(単位:億円) 前連結会計年度当連結会計年度増減増減率%Crysvita1,4201,84842930.2%Poteligeo2843819734.3%Libmeldy/Lenmeldy-3333- ◎ 北米の売上収益は、グローバル戦略品が伸長し、前連結会計年度を上回りました。・X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)は、2018年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしています。・抗悪性腫瘍剤Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)は、2018年の発売以来、売上収益を伸ばしています。◎ EMEAの売上収益は、エスタブリッシュト医薬品の売上収益が減少しましたが、グローバル戦略品の伸長や3ブランド(Abstral、Adcal D3、Sancuso)の権利譲渡による収入などにより、前連結会計年度を上回りました。・X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)は、2018年の発売以来、適応及び上市国を拡大しながら売上収益を伸ばしています。・抗悪性腫瘍剤Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)は、2020年の発売以来、上市国を拡大しながら売上収益を伸ばしています。・エスタブリッシュト医薬品事業のGrunenthal社との合弁化に伴い、2023年8月より13ブランドの売上収益が製品売上から売上ロイヤルティ及びライセンス利用料に移行し、さらに、2024年7月よりうち3ブランドの売上ロイヤルティがなくなったため、エスタブリッシュト医薬品の売上収益が減少しました。・エスタブリッシュト医薬品3ブランドに関する権利(知的財産権)の合弁会社への譲渡により、2024年7月に66.4百万ポンド(131億円)の売上収益を計上しました。◎ アジア/オセアニアの売上収益は、前連結会計年度を上回りました。・X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)は、順調に売上収益を伸ばしています。・APACリージョンの事業再編に伴い、エスタブリッシュト医薬品の製品在庫をライセンス契約先へ供給したことにより、売上収益が増加しました。◎ その他の売上収益は、前連結会計年度を上回りました。・Orchard Therapeutics社の新規連結に伴い、同社が欧州で販売した異染性白質ジストロフィー(MLD)治療Libmeldy(2024年3月にLenmeldyとして米国での承認を取得)の売上収益を計上しました。・AstraZeneca社からのベンラリズマブに関する売上ロイヤルティの増加やBoehringer Ingelheim社からの契約一時金収入等により、売上収益が増加しました。 ③ コア営業利益◎ コア営業利益は、北米を中心としたグローバル戦略品の伸長や技術収入の増収に伴い売上総利益が増加しましたが、第Ⅲ相国際共同治験を実施中のKHK4083の開発進展やOrchard Therapeutics社の新規連結に伴い研究開発費が大幅に増加したこと等により、前連結会計年度を下回りました。 (3)当期のキャッシュ・フローの概況「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析 ③ キャッシュ・フローの状況、資本の財源及び資金の流動性についての分析」に記載のとおりです。 (4)生産、受注及び販売の実績① 生産実績当連結会計年度の生産実績は、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)医薬138,29095.1合計138,29095.1(注)1.金額は販売価格によっています。2.当社グループ内において原材料等として使用する中間製品については、その取引額が僅少であるため相殺消去等の調整は行っていません。 ② 受注実績当社グループは、主として販売計画に基づいた生産を行っています。一部の製品で受注生産を行っていますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しています。 ③ 販売実績当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)医薬495,558112.1合計495,558112.1(注)主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。相手先前連結会計年度当連結会計年度金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)CVS Caremark社46,92310.658,47611.8 (5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2024年12月31日現在)において当社グループが判断したものです。 ① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたって、用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5) 会計上の判断、見積り及び仮定」に記載のとおりです。 ② 当期の財政状態及び経営成績の分析当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 当期の財政状態の概況、(2) 当期の経営成績の概況」に記載のとおりです。 ◎ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等2021-2025年中期経営計画の財務指標の最終年度である2025年度の経営目標及び当連結会計年度の実績は、以下のとおりです。 2025年度経営目標当連結会計年度実績 ROE10%以上7.1%当期利益÷期首期末平均資本売上収益成長率(CAGR)10%以上11.7%2020年度を基準年度とした年平均成長率研究開発費率18~20%を目処に積極投資20.9%研究開発費÷売上収益コア営業利益率25%以上19.3%コア営業利益÷売上収益配当性向(注)40%を目処に継続増配47.8%8期連続の増配 (注)コアEPS(経常的な収益性を示す指標として、「当期利益」から「その他の収益」及び「その他の費用」並びにこれらに係る「法人所得税費用」を控除した「コア当期利益」を期中平均株式数で除して算定)に対する配当性向を記載しています。 当社グループは、2021-2025年中期経営計画において、成長性、イノベーション創出能力、収益性を持続的に高めていくことにより、中長期的なROEの向上と継続増配を実現し、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての安定した収益構造の確立と持続的な成長を目指しています。その目標達成状況を判断するための客観的な指標として、「ROE」「売上収益成長率」「研究開発費率」「コア営業利益率」「配当性向」の5つの財務指標(KPI)を掲げています。当連結会計年度は、Crysvita、Poteligeoでは、上市国・地域の拡大や市場浸透に取組み、着実な成長を推進しました。また、Orchard Therapeutics社の子会社化を完了し、造血幹細胞遺伝子治療OTL-200(欧州製品名:Libmeldy、米国製品名:Lenmeldy)の米国での承認を取得しました。また、研究開発では、Amgen社と第Ⅲ相国際共同治験を実施中のKHK4083(一般名:rocatinlimab)の開発進展や造血幹細胞遺伝子治療に対する投資の強化等により、研究開発費は1,000億円を超える水準となりました。そのほか、「Story for Vision 2030」に沿って、創薬力強化を目指したグローバルでの研究体制の変革、バイオ医薬の開発加速化を推進するための米国新バイオ医薬品工場建設の着工、APACリージョンに係る事業の再編を取り進めました。これらの結果、売上収益は4,956億円と前連結会計年度に比べ533億円増加しました(売上収益成長率11.7%)。販売費及び一般管理費は1,675億円と前連結会計年度に比べ45億円増加し、研究開発費も1,035億円(研究開発費率20.9%)と前連結会計年度に比べ314億円増加しましたが、コア営業利益は954億円(コア営業利益率19.3%)と前連結会計年度に比べ14億円、当期利益は599億円と前連結会計年度に比べ213億円それぞれ減少しました。ROEは7.1%(前連結会計年度は10.2%)となりました。なお、当期末の剰余金の配当につきまして、1株につき29円とすることを取締役会で決議しました。2025年3月19日開催予定の第102回定時株主総会で承認されますと、中間配当金29円を加えた年間配当金は、前連結会計年度に比べ2円増配の年間58円(配当性向47.8%)と、8期連続の増配となる予定です。 ③ キャッシュ・フローの状況、資本の財源及び資金の流動性についての分析◎ 当期のキャッシュ・フローの概況(単位:億円) 前連結会計年度当連結会計年度増減増減率%営業活動によるキャッシュ・フロー1,156679△477△41.3%投資活動によるキャッシュ・フロー△204△1,424△1,220598.6%財務活動によるキャッシュ・フロー△325△847△522160.3%現金及び現金同等物の期首残高3,3924,03163918.8%現金及び現金同等物の期末残高4,0312,447△1,584△39.3% ◎ 当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末の4,031億円に比べ1,584億円減少し、2,447億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。◎ 営業活動によるキャッシュ・フローは、679億円の収入(前連結会計年度は1,156億円の収入)となりました。主な収入要因は、税引前利益835億円に加えて、減価償却費及び償却費248億円、連結子会社からの外貨建預り金の期末における換算差額等の為替差損益83億円です。一方、主な支出要因は、営業債権の増加額315億円、法人所得税の支払額177億円、契約負債の減少額99億円、子会社株式売却益及び残存持分評価益74億円です。◎ 投資活動によるキャッシュ・フローは、1,424億円の支出(前連結会計年度は204億円の支出)となりました。主な支出要因は、無形資産の取得による支出792億円、Orchard Therapeutics社株式の取得による支出482億円、有形固定資産の取得による支出260億円です。一方、主な収入要因は、貸付金の回収による収入45億円、有形固定資産の売却による収入34億円です。◎ 財務活動によるキャッシュ・フローは、847億円の支出(前連結会計年度は325億円の支出)となりました。主な支出要因は、自己株式の取得による支出400億円、配当金の支払額309億円、Orchard Therapeutics社による新株予約権付社債の償還による支出96億円です。 ◎ 資本政策の基本的な方針当社グループは、2021-2025年中期経営計画において、持続的成長と中長期的な企業価値向上を目指すための重要な財務指標(KPI)として「ROE」(自己資本利益率)を掲げ、株主資本コストを安定的に上回る「10%以上」を早期に達成し、この水準を中長期的に維持向上させていくことを目標としています。このための経営資源の配分、株主還元、資金調達についての方針は、以下のとおりです。 ・経営資源の配分についての方針2025年以降の持続的成長と企業価値最大化に向けた成長投資(R&D投資、戦略投資、設備投資)を最優先に考えています。 R&D投資については、2021-2025年中期経営計画において、売上収益の18~20%を目処に研究開発費を継続的に積極投資することを目標としています。研究開発活動への資源投入としては、自社で注力する疾患サイエンス領域を骨・ミネラル、血液がん・難治性血液疾患、希少疾患に設定し、創薬テクノロジーについては、先進的抗体技術や造血幹細胞遺伝子治療などの革新的なモダリティを強化することで、Life-changingな価値を持つ新薬を継続的に創出することを目指します。開発品では、自社で注力する疾患領域のアセットとして、ziftomenib(Kura Oncology社との共同開発)、KK8123、KK8398、KK2845、OTL-203及びOTL-201について着実に開発を進めていきます。加えて、戦略的パートナリングアセットであるKHK4083の開発では、Amgen社と連携し、複数の臨床試験を継続して推進するほか、KHK4951、KK4277、KK2260及びKK2269については、今後パートナーとの連携も含め、価値の最大化を図っていきます。当連結会計年度のR&D活動は、「第2 事業の状況 6 研究開発活動」に記載のとおりです。 戦略投資については、オープンイノベーションを積極活用した創薬技術などの外部イノベーションの取り込みやパイプラインの獲得を目的とした戦略的なパートナリング活動(導入・提携等)やM&Aなどの外部資源の活用にも積極的に取組み、中長期的なパイプラインの拡充や、グローバル戦略品とのシナジー創出を図ることにより、さらなる持続的成長の加速を目指しています。これらの戦略的な成長投資に関しては、社長を中心に毎月開催している「戦略的投資検討会議」において具体的な案件の検討を行っています。当連結会計年度は、造血幹細胞遺伝子治療のグローバルリーダーであるOrchard Therapeutics社の買収(取得総額478百万米ドル)を完了したほか、QED Therapeutics社と骨・ミネラル領域の開発品infigratinibの日本への導入契約(契約一時金100百万米ドル)を締結し、Kura Oncology社と急性骨髄性白血病(AML)及びその他の血液腫瘍の治療薬ziftomenibの開発・販売に関するライセンス契約(契約一時金330百万米ドル)を締結するなど1,374億円の戦略投資を実行しました。 設備投資については、グローバル戦略品の価値最大化に向けた競争力ある事業基盤整備のための投資も積極的に実施しています。医薬品という確かな品質が求められる製品をグローバルに安定的に供給するために、強固な生産体制を確立するとともに、品質保証体制及びサプライチェーンマネジメントの強化に努めています。また、戦略的なITデジタル活用基盤の構築・整備等により、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての持続的な成長を支えるグローバルな事業基盤の確立を目指しています。2024年度は、440億円の設備投資(無形資産、長期前払費用を含む)を実行しました。よりフレキシブルな少量多品目の初期開発治験原薬の製造を可能とする新バイオ医薬原薬製造棟(HB7棟:投資予定金額168億円)の建設を継続するとともに、バイオ医薬の開発加速化を推進するための米国新バイオ医薬品工場建設(同530百万米ドル)に着手しました。 これらの投資案件や開発プロジェクトの事業性評価においては、投資家の皆様が当社に期待する資本コスト(WACC)を反映したハードルレート(地域別)を用いた正味現在価値(NPV)と期待現在価値(EPV)を主たる定量的な基準としています。投資の判断においても、資本コストを上回るリターンの創出による中長期的な企業価値向上への寄与を重視しています。 ・株主還元についての方針配当方針については、2021-2025年中期経営計画で掲げたコアEPSに対する配当性向(以下、「配当性向」)40%を目処とし、中長期的な利益成長に応じた安定的かつ継続的な配当水準の向上(継続的な増配)を目指しています。この方針に基づき、2024年度は、2023年度より2円増配の58円(配当性向47.8%)の配当を実施しました。また、2025年度の配当については60円(配当性向50.3%)と、9期連続の増配を予定しています。また、自己株式の取得については、株価状況等を勘案したうえで機動的に検討する方針としており、資本効率の向上及び株主還元の拡充のため、2024年2月から10月までの期間において、過去最大の400億円(14百万株、発行済株式総数の2.7%)の自己株式の取得及び消却を実施しました。日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての持続的成長と企業価値最大化に向けて、成長性、イノベーション創出能力、収益性を高め、中長期的なROE向上と継続増配を目指していきます。 ・資金調達についての方針引き続きネットキャッシュポジションの維持を原則としますが、手元資金に加えて、戦略的な大型投資案件に備えた借入余力と機動的な資金調達手段(CP(コマーシャル・ペーパー)、コミットメントライン)も確保し、十分な財務柔軟性を維持します。

※本記事は「協和キリン株式会社」の令和6年12期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

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連結財務指標と単体財務指標の違いについて

連結財務指標とは

連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。

単体財務指標とは

単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。

本記事での扱い

本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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