キリンホールディングス株式会社の基本情報

会社名キリンホールディングス株式会社
業種食料品
従業員数連11203名 単977名
従業員平均年齢42.3歳
従業員平均勤続年数14.8年
平均年収9565557円
1株当たりの純資産1190.61円
1株当たりの純利益86.91円
決算時期年1
配当金71円
配当性向81.7%
株価収益率(PER)23.77倍
自己資本利益率(ROE)7.35%
営業活動によるCF2032億円
投資活動によるCF▲2260億円
財務活動によるCF359億円
研究開発費※1718億円
設備投資額※1176.78億円
販売費および一般管理費※17619.71億円
株主資本比率※242.2%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。 (1)経営の基本方針当社は2019年度に、2027年に向けた新たなキリングループ長期経営構想である「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)を策定しました。また、KV2027の実現に向けて、社会と価値を共創し持続的に成長するための指針である「キリングループCSVパーパス」(略称:CSVパーパス)を策定しました。 長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」キリングループは、グループ経営理念及びグループ共通の価値観である“One KIRIN”Values のもと、食から医にわたる領域で価値を創造し、世界のCSV先進企業となることを目指します。 食から医にわたる領域における価値創造に向けては、既存事業領域である「食領域」(酒類・飲料事業)と「医領域」(医薬事業)に加え、キリングループならではの強みを活かした「ヘルスサイエンス領域」を立ち上げました。「ヘルスサイエンス領域」では、キリングループ創業以来の基幹技術である発酵&バイオテクノロジーに磨きをかけ、これまで培ってきた組織能力や資産を活用し、キリングループの次世代の成長の柱となる事業を育成しています。また、社会課題の解決をグループの成長機会と捉え、イノベーションを実現する組織能力をより強化し、持続的な成長を可能にする事業ポートフォリオを構築しています。 持続的成長のための経営諸課題「グループ・マテリアリティ・マトリックス:GMM」キリングループは、社会とともに、持続的に存続・発展していく上での重要テーマを事業へのインパクトとステークホルダーへのインパクトの2つの観点から評価し、「持続的成長のための経営諸課題(グループ・マテリアリティ・マトリックス:GMM)」に整理しています。GMMは時間の経過とともに変化していくものと捉え、中期経営計画策定(3年)ごとに再評価し、改訂しています。2022年中期経営計画の策定に合わせ、新型コロナウイルス感染症の拡大をはじめとする環境変化やステークホルダーからの期待を踏まえて、GMMの粒度を細分化して重要性を再評価することにより、社会的要請への適合度を高めました。※各象限内の重要性に差異はありません。 「キリングループCSVパーパス」GMMに基づき、当社は「酒類メーカーとしての責任」を果たすことを前提に、「健康」「コミュニティ」「環境」の4つの領域の課題解決を目指しており、これを「CSVパーパス」と定めています。また、具体的なアクションプランをCSVコミットメントとして、成果指標を会社別により具体化して目標値を設定し、グループ各社の取り組みに繋げています。 価値創造モデル/CSV経営の概念CSV経営のベースの考え方である「社会課題の解決を通じて、社会的価値と経済的価値を創出すること」を持続的に推進していく仕組みとして、当社は価値創造モデルを策定しています。イノベーションを生み出すための組織能力(INPUT)を基盤として、社会課題の解決に事業活動(BUSINESS)を通じて取り組むことで、価値(OUTPUT/OUTCOME)を創出しCSVパーパスを実現しています。特に人的資本や自然資本などの非財務資本の強化は、社会と共に自然の恵みを利用しながら事業を行う当社にとって、継続的な価値の創造につながります。事業を通じて、当社は社会的価値と経済的価値を同時に生み出し、それらを組織能力などの経営基盤に再投資することで、持続的に資本と価値を成長させることを目指しています。 このCSV経営を推進していくことがどのように企業価値の向上に繋がっているかを図示すると以下のようになります。 社会課題の解決を通じた事業活動(Business)は経済的価値を生み、フリー・キャッシュフローを増加させると共に、事業リスクを低減することにつながるため、資本コストを下げ、企業価値の向上に寄与します。他方、これらの活動から社会的価値を創出し、その価値がお客様のニーズを充足することで、弊社の製品・サービスに対するWillingness to Payが高まり、長期的にはフリー・キャッシュフローの増加にも影響すると考えられます。さらに、社会的価値が創出され高い水準になることで、従業員エンゲージメントの上昇や採用での優位性などにも影響することが考えられ、価値創造モデルにおけるINPUTの基盤である人的資本の強化に繋がります。その結果、企業の成長率にもポジティブな影響を及ぼすと当社は認識しています。 (参考)・持続的な成長のための経営諸課題(グループ・マテリアリティ・マトリックス)URL https://www.kirinholdings.com/jp/impact/materiality/・キリングループ CSVパーパスURL https://www.kirinholdings.com/jp/purpose/csv_purpose/・キリングループ CSVコミットメントURL https://www.kirinholdings.com/jp/impact/csv_management/commitment/・価値創造モデルURL https://www.kirinholdings.com/jp/purpose/model/ (2)中長期的な経営戦略と目標とする経営指標 キリングループ2022年-2024年中期経営計画近年、世界各地で起こる異常気象、天候不順など、社会システムを大きく揺るがす環境変化が続きましたが、特に2020年以降は、世界的な新型コロナウイルスの感染拡大により、生活者の意識は大きく変化しました。このような環境下においても、キリングループは、新型コロナウイルスの影響を最小限に抑え、新たな社会課題に向き合ってきました。KV2027の実現に向けた最初の3カ年計画「キリングループ2019年-2021年中期経営計画」(略称:2019年中計)では、食、ヘルスサイエンス、医の各ビジネス領域で、新たな成長軌道に向けた変革の基盤づくりに取り組みました。さらに、各ビジネスが健全に成長できるよう、コーポレートガバナンス体制を強化するなど、2022年度から始まる新たな中期経営計画を実行する準備を整えることができました。 2019年中計期間中に起きた外部環境の変化を受けて、改めて当社が目指すKV2027の方向性に間違いはなく、10年後に想定していた社会が前倒しで到来していると認識しています。2027年までの長期経営構想の第2ステージとなる「キリングループ2022年-2024年中期経営計画」(略称:2022年中計)は、変革の基盤づくりを行った2019年中計から、新たな成長軌道へシフトし、KV2027実現に向けた成長ストーリーを固めていくステージです。食、ヘルスサイエンス、医の3領域の成長により企業価値を向上させるべく、ポートフォリオマネジメントを強化し、投資の優先順位を明確にすることで経営資源を集中させています。 (基本方針)2021年度までに実現した成果を基礎とし、ポストコロナを見据えた事業構造改革の実行と新たな価値創造により、成長を加速しています。 (重点課題)①キャッシュ創出をリードする食領域での利益の増大②将来の大きな柱となるヘルスサイエンス領域での規模の拡大③グローバル・スペシャリティファーマの地位を確立する医領域でのグローバル基盤の強化 (重要成果指標)2022年中計の財務指標について、平準化EPSの成長による株主価値向上を目指すと共に、成長投資を優先的に実施する3ヵ年の財務指標としてROICの採用を継続します。非財務目標については、CSVを経営の根幹にすえる当社にふさわしいものとして、より直接的に経済的価値に繋がる指標に変更しました。また、重要成果指標(財務目標・非財務目標)及び単年度連結事業利益目標の達成度を役員報酬に連動させることにより、株主・投資家との中長期的な価値共有を促進しています。(なお、役員報酬に関する詳細は、第4[提出会社の状況]4[コーポレート・ガバナンスの状況等](4)[役員の報酬等]をご参照ください。) [財務目標※1]・ROIC※22024年度 10%以上 ・平準化EPS※3年平均成長率11%以上 ※1 財務指標の達成度評価にあたっては、在外子会社等の財務諸表項目の換算における各年度の為替変動による影響等を除く。※2 ROIC=利払前税引後利益/(有利子負債の期首期末平均+資本合計の期首期末平均)※3 平準化EPS=平準化当期利益/期中平均株式数 平準化当期利益=親会社の所有者に帰属する当期利益±税金等調整後その他の営業収益・費用等[非財務目標] (財務方針)中計3年間で創出する営業キャッシュ・フローの総額は約7,000億円を想定しています。資金使途として最も優先順位の高い配当金については、平準化EPSに対する配当性向40%以上を継続し、約2,300億円を予定しています。2019年中計では、設備投資計画を約3,100億円としましたが、2022年中計では基盤投資・成長投資に区分した上で、合計約4,000億円に増額しています。通常の設備投資に加え、3領域の新たな成長に向けた投資枠として区分し、ウェイトを高めることで企業価値向上に繋げます。オーガニック成長に加え規模の拡大を目指すべく、M&A投資の機会についても探索しています。特に、規模の拡大を目指すヘルスサイエンス領域においては、国内外で幅広く機会を検討しています。なお、M&A投資を行う際の原資は、バランスシートのスリム化やポートフォリオマネジメントによるノンコア事業の売却で賄うことを基本とします。M&Aを除く事業領域ごとのキャッシュ・フロー計画として、食領域では、投資額を一定水準に抑えた上で、利益成長による営業キャッシュ・フローの最大化を目指しています。ヘルスサイエンス領域では、中長期的な営業キャッシュ・フロー最大化に向けた設備投資を行います。医領域については、グローバル戦略品の成長により営業キャッシュ・フローが順調に拡大する計画ですが、グローバル・スペシャリティファーマとしての持続的成長に必要な生産・営業基盤をグローバルレベルで整えるべく、必要な設備投資を進めています。 キャッシュ・フロー計画に加え、2022年中計ではバランスシートマネジメントを重視しています。2021年に導入したグローバルキャッシュマネジメントシステムを通じて、国内外のグループ会社が保有するキャッシュの一元管理による運転資金の最適化や、SCM※4の効率化によるキャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善などにより、中計3年間で約1,000億円規模のキャッシュを創出します。また、事業ポートフォリオについては、取締役会での継続的な議論により、ノンコアと判断した事業の売却を検討していきます。これら、バランスシートマネジメント、ポートフォリオマネジメントにより創出したキャッシュは、将来の成長ドライバーを獲得するためのM&A投資に優先して振り向けます。一方、自己株式の取得を中心とする追加的株主還元については、投資機会や、キャッシュイン/アウトのバランスを考慮しながら機動的に判断していきます。 ※4 サプライ・チェーン・マネジメント(Supply Chain Management)の略。原材料の調達、工場での生産、商品の需給・物流の供給連鎖を効率よく構築し管理することを指す。 (非財務方針)2022年中計基本方針に従い、非財務への取り組みもより強化しています。ポストコロナを見据えた「イノベーションを実現する組織能力」の強化や、キリングループのDNAである品質本位の徹底、効率と持続可能性を両立するSCM※体制の構築、価値創造を支えるガバナンスの強化により、強固な組織基盤の構築を目指しています。また、組織能力の強化とステークホルダーからの期待を踏まえ、経済的価値に直接的につながる非財務目標を設定し、価値創造モデルのInput~Business~Outputを強化することでより大きなOutcomeの創出を目指しています。非財務資本への戦略的な取り組みを通じて、当社はCSV経営を推進し、社会のサステナビリティ課題の解決にも貢献していきます。 (3)会社の対処すべき課題世界各地で紛争が続き、社会生活や経済活動に負の影響を与えています。およそ4年にわたったコロナ禍は収束しつつありますが、感染症の発生は今後も避けられません。地球温暖化の深刻度も高まり、経営環境は一層複雑さを増しています。このような時代だからこそ、キリングループは社会課題に正面から向き合い、課題解決と同時に経済価値を創出するCSV経営を実践し、持続可能な社会への貢献とグループの持続的成長を追求していきます。食領域、医領域、ヘルスサイエンス領域の成長に国内外で取り組み、特にヘルスサイエンス領域では、Blackmores Limitedを加えたグローバル事業体制を推し進めていきます。キリングループの成長を支えるのは、発酵・バイオテクノロジーを根幹とした技術力に加えて、人財、ICT等の組織能力です。人財に関しては、グループが持つ事業ポートフォリオによる多様な事業経験を通じ、専門性と多様性を備えた人財を育成すると同時に、イノベーションを創発し続ける組織風土の醸成を目指します。人権尊重の取り組みでは、改定した「キリングループ人権方針」のもと、原材料の調達先を含めたバリューチェーンにおける人権の負の影響の特定、その予防・軽減・是正、モニタリング、情報開示まで一貫して取り組む「人権デューデリジェンス」を進めていきます。ICTの領域では、営業や商品開発、調達・生産・物流など様々な分野で、生成AI等のデジタル技術を活用した業務プロセス改革や効率化を進めていきます。これらの取り組みを通じて、財務目標である「平準化EPS」「ROIC」と、非財務目標である「環境」「健康」「従業員」各項目の達成を目指します。なお、2024年度より事業セグメントを「酒類事業」「飲料事業」「医薬事業」「ヘルスサイエンス事業」「その他事業」と改めます。   ①食領域(酒類・飲料事業)「食領域」では、引き続き主力ブランドを中心とした強固なブランド体系の確立と、高付加価値・高単価商品の育成による高収益化に取り組みます。麒麟麦酒㈱は、「キリン一番搾り生ビール」を中心に、多様なラインアップでブランドの魅力や楽しみ方を提案します。「本麒麟」はリニューアルを行い、ブランド価値の発信を継続していきます。また、今春にはビールカテゴリーの新ブランドを発売するなど、強固なブランド体系の確立を目指します。クラフトビールの拡大にも引き続き取り組みます。3月に「スプリングバレー」ブランドをリニューアルし、ビールがより身近に感じられる機会を増やすことで、ビールが持つ多様な楽しみ方を伝えていきます。また、同ブランドの直営店「スプリングバレーブルワリー東京」(東京都渋谷区)を全面リニューアルし、気軽にクラフトビールを体験できる機会を提供します。これらにより、新価値を提供する事業・ブランドの着実な成長にも取り組みます。キリンビバレッジ㈱は、「午後の紅茶」ブランドや「生茶」ブランドから付加価値の高い商品を展開することで、紅茶カテゴリーの活性化と無糖茶カテゴリーの魅力化に取り組みます。4月に「キリン 生茶」をリニューアルし、ブランド力の強化を図ります。また、プラズマ乳酸菌入り飲料にも引き続き注力します。「おいしい免疫ケア」「おいしい免疫ケア カロリーオフ」をリニューアルするほか、お客様の生活シーンやニーズを捉えた新商品を投入し、「免疫ケア」の習慣化を一層進めることで、「免疫ケア」市場の拡大を目指します。LIONは、豪州での主力ビールブランド「XXXX (フォーエックス)」や、新たに豪州とニュージーランドで販売を開始した「キリン 氷結R」等のブランド強化に注力します。また、豪州や北米でクラフトビールの拡大に引き続き取り組みます。メルシャン㈱は、日本ワイン「シャトー・メルシャン」を中心に取り組み、収益性を強化します。Coke Northeastは、売り上げ成長を実現させながら、サプライチェーンの生産性を高めるITの活用により、高収益体制を維持していきます。 ②医領域(医薬事業)協和キリン㈱は、グローバル戦略品である「Crysvita」や「Poteligeo※1」のさらなる成長を目指します。また、パイプライン充実に向け、主要開発品の「KHK4083(一般名:rocatinlimab)」 や 「KHK4951(一般名:tivozanib)※2」 のグローバル開発を着実に進捗させるとともに、Orchard Therapeutics plcとの統合・連携を進めます。 ※1 特定の血液がんの治療薬です。国内では製品名「ポテリジオ」として販売しています。※2 滲出型加齢黄斑変性(視細胞が密着する黄斑と呼ばれる部位に異常な血管新生が起こり、急激な視力低下を招く疾患)   及び糖尿病黄斑浮腫(高血糖により網膜が損傷を受ける疾患の合併症として、黄斑部の毛細血管が障害され、黄斑に浮    腫が生じて視力が低下する疾患)の治療を目的とした開発品です。 ③ヘルスサイエンス領域(ヘルスサイエンス事業)コロナ禍を経て、人々の健康意識は高まっています。グループの強みであるお客様主語のマーケティング力や価値を創出する技術力をさらに高め、アジア・パシフィックを中心にグローバル展開を進めます。Blackmores Limitedや㈱ファンケルのブランド力を生かし、キリングループ全体で独自の事業モデルを確立します。国内では、2024年も「免疫ケア」ニーズの拡大に引き続き取り組み、プラズマ乳酸菌関連事業の成長を目指します。㈱ファンケルとは、「カロリミット」ブランドのキリングループ各社での展開や、通販事業のノウハウ共有による効率化、共同研究の推進等、グループシナジーを拡大します。海外では、豪州を基盤とするBlackmores Limitedを中心に、成長市場である東南アジアでの地位を盤石なものとします。「プラズマ乳酸菌」を活用した商品開発も進めます。キリングループは、強みである発酵・バイオテクノロジーを軸に、食、医、ヘルスサイエンスの各領域で社会的価値と経済的価値を創造するCSV経営を実践しています。2022年中計最終年度となる2024年も、グループ全従業員の挑戦と創意工夫で戦略実行力をさらに高め、世界のCSV先進企業への歩みを進めます。 今後とも、株主の皆様の一層のご理解とご支援を賜りますようお願い申し上げます。
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 文中における将来に関する事項は、当年度末現在において、当社グループが判断したものであります。 (1) 重要な会計方針及び見積り 当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたりまして、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。 詳細につきましては、「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等]内、連結財務諸表注記」に記載のとおりであります。 (2) 経営成績の状況①事業全体の状況 2023年、日本国内では、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の感染症法上の位置付けが5類に移行し、社会生活や働き方がふたたび変化した1年でした。人の移動が活発になり、街は賑わいを取り戻しつつあります。一方、世界では様々な地域で地政学リスクが高まり、世界的なインフレや為替変動等が続いています。加えて、地球温暖化による新たな感染症のリスク増大や、生成AIをはじめとしたITテクノロジーが急速に進化するなど、消費者の価値観や行動、社会の変化はますます複雑で先行きが見通せない時代です。  キリングループは、創業以来一貫して発酵・バイオテクノロジーをコア技術とし、酒類・飲料事業だけでなく、医薬事業にも強みを持つ、世界でも類を見ない企業グループへ進化を続けています。 このコア技術を背景に、「プラズマ乳酸菌」等特長ある素材を生かしたヘルスサイエンス事業に2019年から取り組んでいます。 健康課題のみならず、社会が抱える課題をキリングループの強みで解決し、同時に企業としての経済的価値を創出し企業価値の最大化を実現していきます。 2023年のキリングループは、不確実性が高まる厳しい環境下でも、着実に成果を上げました。長期経営構想「キリングループ・ビジョン2027」(略称:KV2027)のもと、「キリングループ 2022年-2024年中期経営計画」(略称:2022年中計)の達成に向け、食領域の利益増大や医領域のグローバル基盤強化、ヘルスサイエンス領域の拡大を推進しました。 ・食領域酒類・飲料事業では、国内外で主力ブランドの強化と、新たな成長エンジン育成に向けた高付加価値商品の拡大に取り組みました。また、原材料価格の高騰など厳しい環境下でもコスト削減や価格改定で対応し、収益性改善に取り組みました。・医領域協和キリン㈱では、グローバル戦略品の価値最大化に注力しました。また、次世代パイプラインの拡充と将来の医療ニーズへの対応に向けて英国のバイオ医薬品メーカー、Orchard Therapeutics plcの株式取得のための契約を締結するなど、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして、持続的成長に向けた基盤強化を進めました。・ヘルスサイエンス領域プラズマ乳酸菌関連事業を中心に、飲料やサプリメント等自社グループ商品の積極展開に加え、外部パートナー企業による商品展開を通じ、事業規模を拡大しました。また、豪州を拠点にアジア・パシフィックでサプリメント等の健康食品(ナチュラル・ヘルス)事業を展開する、Blackmores Limitedの株式を取得し、ヘルスサイエンス領域の成長加速に向けた体制を構築しました。 ESGの観点でも多くの実績を上げ、国内外で高い評価を獲得しました。7月に発行した「環境報告書2023」では、TCFDとTNFDに基づく統合的な環境経営情報を開示した事例が、投資家をはじめとする世界のステークホルダーから、先駆的な取り組みと評価されました。麒麟麦酒㈱では、国内全ての工場・営業拠点で購入電力の再生可能エネルギー(以下、再エネ)100%化を進めました。メルシャン㈱では、「シャトー・メルシャン 椀子ヴィンヤード」が、生物多様性の損失を止め回復させる世界目標「30by30」達成に資する自然共生サイトとして、環境省から正式認定されました。ヘルスサイエンス領域では、「プラズマ乳酸菌」の発見・商品化による社会への貢献が評価され、「令和5年度全国発明表彰」で、健康食品素材で初、食品企業としては59年ぶりに「恩賜発明賞」を受賞しました。また、「第7回日経スマートワーク経営調査」では、7年連続で最高位を獲得しました。多様で柔軟な働き方やエンゲージメントの項目が評価されたものです。「第5回日経SDGs経営調査」でも、5年連続で最高位を獲得しました。事業を通じ、持続可能な資源活用や生物多様性の保全に取り組んだ成果が評価されたものです。 2023年実績2022年実績対前年増減対前年増減率連結売上収益2兆1,344億円1兆9,895億円1,449億円7.3%連結事業利益2,015億円1,912億円103億円5.4%連結営業利益1,503億円1,160億円343億円29.5%連結税引前利益1,970億円1,914億円57億円3.0%親会社の所有者に帰属する当期利益1,127億円1,110億円17億円1.5% (重要成果指標)ROIC8.0%8.5% 平準化EPS177円171円6円3.5% 当年度の連結売上収益は、国内ビール・スピリッツ事業、国内飲料事業、オセアニア酒類事業、医薬事業及びコーク・ノースイースト社の増収により増加しました。連結事業利益は、国内飲料事業、協和発酵バイオ㈱等が減益となりましたが、国内ビール・スピリッツ事業、オセアニア酒類事業、医薬事業及びコーク・ノースイースト社等が増益となり、全体では増益となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、ミャンマー事業撤退による為替換算調整勘定の実現損、協和発酵バイオ㈱および協和キリン㈱に係る減損損失の計上があったものの、協和キリン㈱の欧州事業売却や持分法投資損益の増加等により増益となりました。 重要成果指標について、ROICは、Blackmores Limitedの取得等により8.0%となりました。平準化EPSは、連結事業利益の増加等により前年より6円増加の177円と過去最高となりました。 ②セグメント情報に記載された区分ごとの状況セグメント別の業績は次のとおりです。 2023年実績2022年実績対前年増減対前年増減率連結売上収益2兆1,344億円1兆9,895億円1,449億円7.3% 国内ビール・スピリッツ6,849億円6,635億円213億円3.2% 国内飲料2,550億円2,433億円118億円4.8% オセアニア酒類2,810億円2,559億円251億円9.8% 医薬4,419億円3,979億円440億円11.1% その他4,716億円4,289億円427億円10.0%連結事業利益2,015億円1,912億円103億円5.4% 国内ビール・スピリッツ777億円747億円31億円4.1% 国内飲料169億円188億円△19億円△10.1% オセアニア酒類324億円315億円9億円2.7% 医薬960億円825億円135億円16.4% その他△215億円△163億円△52億円― 連結売上収益 対前年 連結事業利益 対前年 <国内ビール・スピリッツ事業>国内酒類市場は、原材料価格高騰の影響を受ける中、各社収益性確保に向け価格改定が進みました。10月の酒税改正と価格改定により、ビールと発泡酒・新ジャンルの価格差が縮小しました。それに伴い、ビールカテゴリーが活況を呈しました。麒麟麦酒㈱では主力ブランドの「キリン一番搾り生ビール」と、健康志向を捉えた「キリン一番搾り糖質ゼロ」をリニューアルし堅調に推移したことに加え、業務用市場の回復も追い風となり、「一番搾り」ブランド全体の販売数量は、前年比5%増となりました。新たな成長エンジンであるクラフトビールカテゴリーでは、「スプリングバレー」ブランドから「スプリングバレージャパンエール<香>」と、限定商品の「スプリングバレーアフターダーク<黒>」を発売しラインアップを強化するとともに、流通企業やクラフトビールメーカーとも連携し、クラフトビールの売場拡大を進めました。また、業務用市場においても、飲食店向けビールサーバー「Tap Marche (タップ・マルシェ)」の取り扱い店舗拡大に取り組み、クラフトビールの体験機会を提供しました。麒麟麦酒㈱のウイスキーづくりは、富士御殿場蒸溜所が稼働した1973年に始まり、2023年に50周年を迎えました。代表ブランドの「富士」は、国内での販売実績が前年の2.7倍に伸長したほか、海外では欧州における展開国をさらに拡大しました。RTDカテゴリーでは、主力の「キリン氷結R」ブランドが好調に推移しました。特に「キリン氷結R無糖」シリーズが、年間の販売目標を10月に達成するなど、前年比35%増と大きく伸長しました。また、高付加価値RTD商品として、「キリン上々焼酎ソーダ」を10月に発売し、食事に合うRTDとして新たな需要を開拓しました。これらの結果、売上収益は3.2%増加し6,849億円となりました。また、事業利益は、原材料等の高騰影響を上回る価格改定効果等により、4.1%増加し777億円となりました。 <国内飲料事業>国内の清涼飲料市場は、原材料価格の高騰等厳しい環境の中でも、猛暑や健康意識の高まりにより、夏場の需要や健康市場は拡大しました。「午後の紅茶」ブランドは、主力の「キリン午後の紅茶」をリニューアルし夏の需要拡大に取り組みました。また、「キリン午後の紅茶おいしい無糖ミルクティー」を発売し無糖紅茶の強化を図り、「午後の紅茶」ブランド全体は前年比2%増となりました。「生茶」ブランドからは、「キリン生茶リッチ」を9月に発売し、販売開始から2週間で1,000万本を突破するなど、好調に推移しました。注力するヘルスサイエンス領域では、プラズマ乳酸菌入り飲料を中心に、お客様のニーズに合わせた多様な商品を市場に投入し、「免疫ケア」の習慣化に取り組みました。新たに発売した「キリンおいしい免疫ケア」シリーズは、「キリンおいしい免疫ケアカロリーオフ」と「キリンおいしい免疫ケア睡眠」も加わり、2022年から同容器で発売していた商品と比べて、販売数量は3.4倍に拡大しました。また、「iMUSE」ブランドは、好評な「キリンiMUSE ヨーグルトテイスト」を11月にリニューアルし、健康意識の高まる冬に向けて強化しました。これらの結果、プラズマ乳酸菌入り飲料の販売数量は前年比35%増と大きく伸長しました。㈱ファンケルとの取り組みでは、「キリン×ファンケルカロリミットアップルスパークリング」や「キリン×ファンケルカロリミットブレンド茶」等を共同開発し、シナジーを創出しました。これらの結果、売上収益は4.8%増加し2,550億円となりました。また、原材料等の高騰影響を価格改定効果で相殺したものの、販売数量減やブランド投資の実施等により、事業利益は10.1%減少し169億円となりました。 <オセアニア酒類事業>豪州の酒類市場は、新型コロナの影響が収束する一方、インフレ率が高い水準で推移し、Lionもその影響を受けました。その中で主力ブランドの強化に取り組んだ結果、健康意識の高まりを捉えた「Hahn(ハーン)」の販売が好調だったほか、「XXXX(フォーエックス)」等も堅調に推移しました。また、成長するRTDカテゴリーにおいて麒麟麦酒㈱が展開する「キリン氷結R」ブランドの、豪州での製造を新たに開始し、豪州・ニュージーランドで販売を開始しました。北米で注力するクラフトビール事業では、New Belgium Brewingの「Voodoo Ranger(ブードゥー・レンジャー)」が引き続き好調に推移したことに加え、Bell’s BreweryもNew Belgium Brewingとの統合効果により、好調に推移しました。これらの結果、円ベースの売上収益は9.8%増加し2,810億円となりました。また、構造改革等のコスト削減の取り組みにより、事業利益は円ベースで2.7%増加し324億円となりました。 <医薬事業>協和キリン㈱は、同社の中期経営計画の3年目にあたる2023年も、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして、成長に向けた取り組みを進めました。グローバル戦略品の「Crysvita」は、北米における自社販売を開始し、前年比20%増と順調に推移しました。開発パイプラインについては、「KHK4083(一般名:rocatinlimab)」等が順調に進捗する一方、「RTA 402」は開発を中止しました。また、今後の新薬創出力強化に向け、造血幹細胞遺伝子治療を用いた製品や開発品を持ち、事業に必要なプラットフォームを確立しているOrchard Therapeutics plcの株式取得のための契約を締結しました。これらの結果、北米を中心としたグローバル戦略品等の海外医薬品売上の増加により売上収益は11.1%増加し4,419億円となりました。また、事業利益は、研究開発費が増加したものの、売上収益増収に伴う売上総利益の増加により、16.4%増加し960億円となりました。 また、その他の主な各事業の業績は以下のとおりです。 (協和発酵バイオ㈱)協和発酵バイオ㈱では、スペシャリティ素材に注力し、収益改善を進める構造改革に取り組みました。海外で展開する「CognizinR」の販売が堅調に推移したほか、「HMO(ヒトミルクオリゴ糖)」は、展開予定各国で規制当局からの承認が進みました。一方で、市場の競争激化に加え、原料価格や燃料価格の高騰により、アミノ酸事業を中心に厳しいビジネス環境が続きました。これらの結果、売上収益は0.8%増加し514億円、事業損失は85億円となりました。 (メルシャン㈱)メルシャン㈱では、輸入ワインや原材料に対する円安影響により、主力のワイン事業が大きく影響を受ける中、収益性の高い自社ブランドの育成を進めました。日本ワインの「シャトー・メルシャン」では、「シャトー・メルシャン椀子ワイナリー」が「ワールドベストヴィンヤード2023」でアジア最高位を獲得したほか、イタリアへの輸出を開始しました。「Mercian Wines (メルシャン・ワインズ)」ブランドでは、スパークリングワインの「カンティアーモ」や、小容量サイズの「サニーサイドオーガニックスパークリング缶」を発売し、好調に推移しました。これらの結果、売上収益は6.5%増加し644億円、事業利益は8億円となりました。 (Coke Northeast)米国の飲料市場は、インフレによる物価の上昇が続く中でも消費は底堅く推移しました。Coke Northeastでは、炭酸飲料やプレミアムミネラルウォーターを中心に販売が順調に推移しました。また、工場や物流拠点の構造改革やICT導入などオペレーション改革や、価格改定効果等により、高い収益性を一層向上させました。これらの結果、売上収益は15.7%増加し2,501億円、事業利益は29.0%増加し339億円となりました。   ③生産、受注及び販売の状況(ⅰ) 生産実績当年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)国内ビール・スピリッツ677,7694.8国内飲料126,319△0.7オセアニア酒類286,2708.5医薬145,370△4.4その他300,0926.1合計1,535,8204.3 (注) 金額は、販売価格によっております。  (ⅱ) 受注状況当社グループの製品は見込生産を主体としているため、受注状況の記載を省略しています。  (ⅲ) 販売実績当年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)国内ビール・スピリッツ684,8633.2国内飲料255,0284.8オセアニア酒類280,9909.8医薬441,88211.1その他471,63010.0合計2,134,3937.3 (注) 1 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。 相手先前年度(自 2022年1月1日 至 2022年12月31日)当年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)三菱食品㈱220,07411.1230,87210.8   2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。 (3) 財政状態①事業全体の状況 当年度末の資産合計は、前年度末に比べ3,273億円増加して2兆8,696億円となりました。有形固定資産、のれん、及び無形資産については、Blackmores Limitedの買収や為替変動の影響等によって、前年度末に比べ2,360億円の増加となりました。また、現金及び現金同等物が前年度末比433億円増加しました。一方、Myanmar Brewery Limitedの売却等により、売却目的で保有する資産が461億円減少しました。 資本は、利益剰余金が647億円増加、その他の資本の構成要素が921億円増加し、前年度末に比べ1,726億円増加して1兆4,258億円となりました。その他の資本の構成要素の増加要因は、主に円安の影響によって在外営業活動体の換算差額が901億円増加した影響です。 負債は、前年度末に比べ1,547億円増加して1兆4,437億円となりました。2023年10月にBlackmores Limitedの買収に伴うソーシャルボンド600億円を含む社債930億円を発行したこと及び新規借入等により、社債及び借入金が1,333億円増加しました。  これらの結果、親会社所有者帰属持分比率は39.5%、グロスDEレシオは0.58倍となりました。   ②セグメント情報に記載された区分ごとの状況  <国内ビール・スピリッツ> 当年度末のセグメント資産は、その他の非流動資産が増加したこと等により、前年度末に比べ110億円増加して4,431億円となりました。  <国内飲料> 当年度末のセグメント資産は、設備投資による有形固定資産の増加及びその他の非流動資産が増加したこと等により、前年度末に比べ145億円増加して1,477億円となりました。  <オセアニア酒類> 当年度末のセグメント資産は、為替変動の影響等によって、のれん及び有形固定資産が増加したこと等により、前年度末に比べ605億円増加して6,072億円となりました。  <医薬> 当年度末のセグメント資産は、欧州エスタブリッシュト医薬品事業の合弁化に伴う持分法で会計処理されている投資の増加及び為替変動の影響等による有形固定資産やのれんの増加、並びに現金及び現金同等物が増加したこと等により、前年度末に比べ911億円増加して9,714億円となりました。 (4) キャッシュ・フロー ①キャッシュ・フロー及び流動性の状況当年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前年度末に比べ433億円増加の1,314億円となりました。活動毎のキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。(営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動による資金の収入は前年同期に比べ676億円増加の2,032億円となりました。非資金損益項目である減損損失が362億円減少したものの、持分法で会計処理されている投資の売却益が326億円減少し、子会社株式売却損も191億円増加した他、運転資金の流出が149億円減少したこと等により、小計では334億円の増加となりました。小計以下でも法人所得税の支払額が322億円減少したこと等により、営業活動によるキャッシュ・フローが前年同期比で増加となりました。(投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動による資金の支出は前年同期に比べ2,157億円増加の2,261億円となりました。当年度の資金の収入には、子会社株式の売却や政策保有株式の縮減に向けた取組みを引き続き推進したことによる投資の売却がそれぞれ80億円ありました。一方、当年度に豪州子会社を通じてBlackmores Limitedに対する支配を獲得したことにより子会社株式の取得による支出が前年同期に比べ1,159億円増加したことや前年度の華潤麒麟飲料(大中華)有限公司売却の影響で持分法で会計処理されている投資の売却による収入が前年同期に比べ982億円減少となったことなどが前年同期比の支出増加要因となりました。なお、有形固定資産及び無形資産の取得については、前年同期に比べ153億円増加の1,138億円を支出しました。(財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動による資金の収支は359億円の収入(前年同期は1,678億円の支出)となりました。これは、Blackmores Limitedの買収に伴い有利子負債が1,630億円増加した他、前年度に株主還元の拡充を目的とした自己株式取得を実行した影響で自己株式の取得による支出が500億円減少したことなどが要因となります。なお、安定した株主還元を継続的に行う方針に基づき、平準化EPSに対する連結配当性向40%以上の配当を実施しており、非支配持分を含めた配当金の支払いは712億円となりました。 当社グループは、引き続き「BS(バランスシート)・PF(ポートフォリオ)マネジメントによるキャッシュ創出」により生じる資金を「機動的な株主還元施策」と「成長ドライバー獲得への規律ある投資」に振り向け、適切な利益還元と企業価値の向上に繋げていきます。 ②資本政策の基本的な方針当社は、2022年中計にて策定した資本政策に基づき、事業への資源配分及び株主還元について以下の通り考えております。事業への資源配分については、ヘルスサイエンス領域を中心とした成長投資を最優先としながら、既存事業の強化・収益性改善に資する投資を行います。また、将来のキャッシュ・フロー成長を支える無形資産(ブランド・研究開発・ICT・人的資本など)及び新規事業創造への資源配分を安定的かつ継続的に実施します。なお、投資に際しては、グループ全体の資本効率を維持・向上させる観点からの規律を働かせます。株主還元についても、経営における最重要課題の一つと考えており、1907年の創立以来、毎期欠かさず配当を継続しております。「平準化EPSに対する連結配当性向40%以上」による配当を安定的かつ継続的に実施するとともに、自己株式の取得については、追加的株主還元として最適資本構成や市場環境及び投資後の資金余力等を総合的に鑑み、実施の是非を検討していきます。資金調達については、経済環境等の急激な変化に備え、金融情勢に左右されない高格付けを維持しつつ、負債による資金調達を優先します。中長期的な目標達成に必要とされる投資に係る資金調達により支配権の変動や大規模な希釈化をもたらす資金調達については、ステークホルダーへの影響等を十分に考慮し、取締役会にて検証及び検討を行った上で、株主に対する説明責任を果たします。

※本記事は「キリンホールディングス株式会社」の令和5年年1期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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