川崎重工業株式会社の基本情報

会社名川崎重工業株式会社
業種輸送用機器
従業員数連40640名 単14597名
従業員平均年齢41.5歳
従業員平均勤続年数15.4年
平均年収7925901円
1株当たりの純資産3343.61円
1株当たりの純利益(連結)525.44円
決算時期3月
配当金150円
配当性向52.2%
株価収益率(PER)7.9倍
自己資本利益率(ROE)(連結)11.8%
営業活動によるCF970億円
投資活動によるCF▲729億円
財務活動によるCF73億円
研究開発費※166億円
設備投資額※1142億円
販売費および一般管理費※1611.1億円
株主資本比率※214.4%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものです。[経営の基本方針]当社グループは、カワサキグループ・ミッションステートメントにおいて、「世界の人々の豊かな生活と地球環境の未来に貢献する“Global Kawasaki”」をグループミッションとして掲げ、最先端の技術で新たな価値を創造し、顧客や社会の可能性を切り拓く企業グループを目指しています。また、「選択と集中」「質主量従」「リスクマネジメント」を指針とし、資本コストを上回る利益を安定的に創出するとともに、社会課題に対するソリューションの提供を通じてSDGs達成に貢献すべく、経済的価値・社会的価値の2つの軸で企業価値を高める経営を推進していきます。 [中長期的な会社の経営戦略・対処すべき課題]「グループビジョン2030」は今年で制定5年目となり、その実現に向けて各種施策を推進しています。既存事業の強化、事業間シナジー促進による将来の柱となる新事業育成、更に選択と集中を行って事業ポートフォリオの変革を実現し、持続的な成長を追求しています。進捗状況の詳細は、当社Webサイト「グループビジョン2030進捗報告会」をご参照下さい。https://www.khi.co.jp/groupvision2030/archive.html 《注力するフィールド》新たな時代の社会課題を見据え、様々なソリューションをタイムリーに提供するために、以下の3つのフィールドに注力しています。地球環境問題や高齢化社会・労働力不足への対応等に加え、昨今では防衛・防災・資源・食料の観点から国家の安全保障に対する関心が高まっており、これらの重要課題に対しても当社のソリューションを最大限に活かす取組を加速しています。取組の詳細は「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 戦略並びに指標及び目標 ① 事業を通じて創出する社会・環境価値~3つの注力フィールド~」をご参照下さい。 「安全安心リモート社会」-安全安心の新しい価値を創出医療・ヘルスケア、介護、ものづくり、産業インフラなど様々な分野で、当社グループが持つ遠隔操作・情報技術、ロボティクス技術等を用いて、リモート社会の実現によりすべての人々が社会参加できる新しい働き方・暮らし方を提案しています。また防衛・防災分野においても、様々なリモート技術を開発する等、安全かつ安心して暮らせる社会の実現に積極的に取り組んでいます。 「近未来モビリティ」-新しい輸送システムで人とモノの移動を変革物流量の増加や少子高齢化に伴う労働力不足の中で、新しい輸送・移動手段を提案し、豊かでスマートかつシームレスな移動が可能な社会を創造します。 「エネルギー・環境ソリューション」-クリーンエネルギーの安定供給に向けて世界ではエネルギー源として、液化天然ガス(LNG)に回帰する動きも見られますが、将来的にはカーボンニュートラルの実現に向けて水素の導入が進むと考えており、またエネルギー安全保障の観点からも、2030年以降の液化水素サプライチェーンの商用化に向けて、日本政府の協力を得ながら全社一丸となって取り組んでいます。 《成長シナリオ》「グループビジョン2030」の成長シナリオに沿って、初期段階は精密機械・ロボットやパワースポーツ&エンジン等の量産系事業が収益を支えてきました。現在は航空宇宙システムやエネルギーソリューション&マリンの需要回復により、受注系事業が中長期的な稼ぎ頭として軸となり、車両事業も安定して黒字を出せる体質となった結果、昨年度は受注・売上・利益・配当、すべてにおいて過去最高を更新しました。グループビジョン2030の目標として掲げる事業利益率10%超の達成に向け、順調に伸長しています。 そして、新しい社会の創出に向けて、水素事業では政府の支援(Green Innovation基金)による液化水素サプライチェーンプロジェクトを皮切りにマーケットを順調に成長させ、医療・介護・ソーシャルロボット事業、近未来モビリティ等をはじめとする新規事業についてもマーケットの拡大と安定した成長軌道を描くことを目指します。そのためにも政府や自治体、他企業、研究機関との連携を進めるべく、2024年11月に東京-羽田にソーシャルイノベーション共創拠点「CO-CREATION PARK ? KAWARUBA」を開設しました。約半年で2,000名超の来場者があり、多様なパートナーとともに、社会課題起点で新たなソリューション開発を進めています。成長シナリオを支える仕組みとしては、デジタル・トランスフォーメーション(DX)と人財育成を重視しています。DXにおいてはAI活用等を推進し、業務プロセスの見える化・効率化により、新たなソリューションの創出と経営の意思決定のスピードアップ、更には“やりがい”“成長”を実感できる働き方を実現していきます。人財育成においては多様性を尊重し、従業員が個性と能力を発揮する環境整備に取り組み、挑戦し続ける人と組織の実現を目指します。 《コンプライアンス強化に向けて》昨年、潜水艦修繕事業及び舶用エンジン事業における不正事案が相次いで判明しました。当社グループは、度重なるコンプライアンス違反が判明したことを深刻に受け止め、2024年4月16日に社長を委員長とするコンプライアンス特別推進委員会を立ち上げ、主体的に当社グループの組織風土・ガバナンスにおける課題に向き合い、再発防止策を検討してまいりました。改革の方向性として、「不正ができない仕組みの構築」「不正発見の強化」「組織風土・意識改革」の3つの柱を掲げ、川崎重工グループ一体となって改革に取り組んでいます。取組の詳細は、第202期事業報告における内部統制システムの運用状況の概要をご参照下さい。https://www.khi.co.jp/ir/pdf/kaiji_jikou_202.pdf また、両事案ともに外部有識者からなる特別調査委員会を設置し、コンプライアンス特別推進委員会とも連携しつつ、中立性を担保した上で、事実関係の調査と原因分析、再発防止策の提言を目的とし、類似案件の洗い出し等も含めて、客観的かつ専門的観点から調査を実施しています。当社グループは、この機会にすべての膿を出し切り、これまでの体制を見直すだけでなく、風土・文化を抜本的に変える覚悟を持ってコンプライアンス・ガバナンス体制を再構築し、再発防止策を徹底していきます。一部の社外取締役をコンプライアンス特別推進委員会のオブザーバーに配置するなどしてその取組を一層強化し、再び皆様からの信頼を得られるよう、全社一丸となって改革に全力で取り組んでまいります。 [経営環境、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題]世界経済は、米国では堅調な雇用・所得環境を背景に底堅く推移しているものの、新たな関税政策による各国の景気減速や経済成長の鈍化への警戒感が強まっています。加えて、長期化する中国経済の停滞や米中関係の緊張といった地政学的リスクの懸念など、先行きは依然として不透明な状況です。国内においては、好調な雇用・所得環境や設備投資の拡大、インバウンド需要の増加等、内需主導で緩やかな景気回復が見られるものの、米国関税政策及びそれに伴う産業構造の変化や金融資本市場の急激な変動など、先行きの不透明感が高まっています。このような状況の下、当社グループは収益性の向上に向け、適正な販売価格の実現やコスト競争力の強化、サプライチェーンの多様化に継続的に取り組んでいきます。また、経営資源の投入については、案件の厳選に努めつつも、注力する3つのフィールドについては、スピード感をもって積極的な投資を実行するなど、メリハリのある意思決定を行っていきます。資金面に関しても、前述の収益性向上や投資選別のほか、適正在庫の実現、資産圧縮などの対応策を進めることで、キャッシュ・フロー創出力の強化及び有利子負債の削減に努めていきます。 [経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等]経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標を、利益(事業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益)及び税後ROIC※とし、グループ全体として事業利益率を2027年度までに8%、2030年度までに10%超、税後ROICは資本コスト(WACC)+3%以上を目標としています。これらの経営指標の改善の結果として自己資本利益率(ROE = 親会社の所有者に帰属する当期利益 ÷ 自己資本の期首・期末平均)の向上も図っていきます。 ※税後ROIC = (親会社の所有者に帰属する当期利益 + 支払利息 × (1 - 実効税率)) ÷ 投下資本(純有利子負債の期首・期末平均 + 自己資本の期首・期末平均) [セグメントごとの戦略及び課題]① 航空宇宙システム事業・事業拡大に向けた体制整備:旺盛な需要に対応するサプライチェーン及び増産体制の再整備。新たな事業機会獲得に向け業務効率化・生産性の向上を推進。防衛航空機・ヘリコプタの既受注開発案件・量産契約の着実な推進。・防衛事業に係る活動強化:防衛省が掲げる、防衛力強化に向けた7つの重視分野への取り組み推進。・市場動向を踏まえた技術戦略の推進:防衛力強化の実現に向けた民生技術の活用を含む技術開発の促進。NEDOグリーンイノベーション基金活用による脱炭素社会に向けた環境技術開発の推進。 ② 車両事業・海外案件の納入スケジュール遵守:ダッカ6号線 2024年度 最終車両引き渡し完了、2025年度 基地設備引き渡し。米国R211 2024年度 最終車両の出車完了(Base契約)、量産車引き渡し開始(Option1契約)、2025年度 最終車両の引き渡し(Base契約)。・顧客に信頼される品質レベルの達成:仕損じ、手直し費用の削減。国内外拠点でのKPS(Kawasaki Production System)による生産管理の維持。・部品・サービスの拡販、保守分野の事業拡大:北米向け軌道遠隔監視装置の拡販とサービス提供プラットフォームの構築。国内鉄道事業者向け車両状態監視事業の推進。 ③ エネルギーソリューション&マリン事業・低炭素・脱炭素社会実現に向け貢献する製品の提供:LPG/アンモニア運搬船、高効率ガスタービン/ガスエンジン、ごみ処理施設(省エネ)、舶用ハイブリッド推進システム。・脱炭素エネルギーへのトランジション製品の展開:液化水素運搬船、水素出荷・受入基地の商用化、舶用水素ボイラ・舶用水素エンジンの開発、低炭素(天然ガス炊き、水素混焼)から脱炭素(水素専焼)に対応できるガスタービン/ガスエンジンを活用した省エネシステムの導入推進、CO2分離回収技術の開発。 ④ 精密機械・ロボット事業油圧事業の発展に向けた施策・建機向け新製品開発/市場開拓:電動化・自動化に向け、高い制御技術・開発力を活用し市場を開拓。・アフターセールス事業の強化:過去の販売実績を活かしたアフターセールスの拡大と販売ネットワーク構築・拡大。・水素関連事業/防衛事業の強化:水素圧縮機、燃料電池システムなどの開発や、当社グループ内向け防衛関連製品の拡充。 ロボット事業の戦略性のある挑戦・高付加価値領域への集中投資:半導体市場の本格的回復に向けた供給体制整備、及び新分野への事業拡大。・医療向け事業の強化:「hinotori?」の普及、及び遠隔操作技術等による差別化。・ブランド力の強化:オープン戦略の推進と協業・共創の拡大、及びソーシャルロボット分野の事業化推進。 ⑤ パワースポーツ&エンジン事業・市場動向に応じた製品の供給:継続的な新機種の投入。機動的な生産・販売計画の変更により製品供給を確保。・四輪ビジネスの拡大、脱炭素・電動化対応:製品競争力強化に向けた開発投資、外部環境の変化に柔軟に対応するため北米二工場(アメリカ、メキシコ)をフレキシブルに活用。電動・ハイブリッドモデル等あらゆる選択肢を通じてカーボンニュートラル社会の実現に貢献。・DXを通じた業務改革の推進:デジタル化によるグローバルオペレーションの効率化。デジタル技術活用による開発期間の短縮と効率化。・キャッシュ・フローの改善:収益力の強化、適正な在庫水準の維持。
経営者による財政状態の説明
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。これらは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の経営方針・経営戦略等を踏まえて分析しています。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。 (1) 経営成績の状況① 連結業績の概況世界経済は、米国では堅調な雇用・所得環境を背景に底堅く推移しているものの、新たな関税政策による各国の景気減速や経済成長の鈍化への警戒感が強まっています。加えて、長期化する中国経済の停滞や米中関係の緊張といった地政学的リスクの懸念など、先行きは依然として不透明な状況です。国内においては、好調な雇用・所得環境や設備投資の拡大、インバウンド需要の増加等、内需主導で緩やかな景気回復が見られるものの、米国関税政策及びそれに伴うサプライチェーンの変化や金融資本市場の急激な変動など、先行きの不透明感が高まっています 。このような経営環境の中で、当連結会計年度における当社グループの連結受注高は、航空宇宙システム事業、車両事業、エネルギーソリューション&マリン事業などでの増加により、前期比で増加となりました。連結売上収益については、航空宇宙システム事業を中心とした各事業での増収により、前期比で増収となりました。利益面に関しては、事業利益は、航空宇宙システム事業、精密機械・ロボット事業での改善や、エネルギーソリューション&マリン事業での増益などにより、前期比で増益となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は、事業利益の増加などにより、前期比で増益となりました。この結果、当社グループの連結受注高は前期比5,472億円増加の2兆6,307億円、連結売上収益は前期比2,800億円増収の2兆1,293億円、事業利益は前期比969億円増益の1,431億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は前期比626億円増益の880億円となりました。また、事業利益率は6.7%、税後ROIC※は8.0%、ROEは13.2%となりました。資本コスト(WACC)は7%台と算出しています。なお、当社グループの潜水艦修繕職場における不適切事案及び舶用エンジンにおける検査不正については、社長を委員長とするコンプライアンス特別推進委員会、並びに外部有識者で構成するそれぞれの特別調査委員会を設置し、昨年12月及び本年1月にそれぞれの特別調査委員会より個々の事案における事実関係の調査や原因分析等に関する中間報告書を受領し、その内容を公表しました。特別調査委員会の調査は継続中です。引き続き、当社グループとして、コンプライアンス・ガバナンス体制の再構築や企業風土の改革に取り組んでまいります。本件による業績への影響については、今後の調査結果を踏まえ、影響が見込まれる場合には速やかに業績見通しへ反映していきます。 ※ 税後ROIC = (親会社の所有者に帰属する当期利益 + 支払利息 × (1 - 実効税率)) ÷ 投下資本(純有利子負債の期首・期末平均 + 自己資本の期首・期末平均) ② セグメント別業績の概要航空宇宙システム事業抜本的な防衛力強化や航空旅客需要の回復による需要の増加が期待される中で、連結受注高は、防衛省向けや民間航空エンジン分担製造品などが増加したことにより、前期に比べ1,902億円増加の8,828億円となりました。連結売上収益は、民間航空エンジンの運航上の問題に係る損失を計上した前期に比べ、防衛省向けや民間航空エンジン分担製造品などが増加したことにより、1,716億円増収の5,678億円となりました。事業損益は、増収などにより、前期に比べ708億円改善して558億円の利益となりました。 車両事業国内市場はインバウンドの復調等により鉄道車両への投資が再開されつつあり、海外市場は大都市の混雑緩和対策のための都市交通整備などに伴う需要が見込まれる中で、連結受注高は、ニューヨーク市交通局向け新型地下鉄電車のオプション契約を受注したことにより、前期に比べ1,627億円増加の2,515億円となりました。連結売上収益は、国内・アジア向けが減少したものの、米国向けが増加したことなどにより、前期に比べ263億円増収の2,223億円となりました。事業利益は、増収などにより、前期に比べ46億円増益の84億円となりました。 エネルギーソリューション&マリン事業国内外の分散型電源需要やエネルギーインフラ整備需要は依然根強く、国内ごみ焼却設備の老朽化更新需要も継続しています。連結受注高は、LPG/アンモニア運搬船や防衛省向け潜水艦の受注増加などにより、前期に比べ1,403億円増加の5,420億円となりました。連結売上収益は、国内向けごみ処理施設整備・運営事業の大口案件や防衛省向け艦艇用機器での増収などにより、前期に比べ448億円増収の3,981億円となりました。事業利益は、増収や持分法による投資利益の増加などにより、前期に比べ123億円増益の442億円となりました。 精密機械・ロボット事業半導体メモリ市場の価格と需要が底を打ち、中国建設機械市場は輸出を中心に回復傾向にある中で、連結受注高は、半導体製造装置向けロボットや中国建設機械市場向け油圧機器が増加したことなどにより、前期に比べ359億円増加の2,492億円となりました。連結売上収益は、半導体製造装置向けロボットや精密機械分野での増収を主要因として、前期に比べ135億円増収の2,415億円となりました。事業損益は、増収に加え、これまで進めてきた価格転嫁等の収益改善活動の効果などにより、前期に比べ89億円改善して70億円の利益となりました。 パワースポーツ&エンジン事業米国政権による関税政策の影響が懸念されますが、連結売上収益は、リコールや生産遅延等の影響で北米向け四輪車が一時的に減少したものの、二輪車の増加と円安が収益を押し上げたことにより、169億円増収の6,093億円となりました。事業利益は、増収はあったものの、増産投資による固定費の増加などにより、前期並みの478億円となりました。 その他事業連結売上収益は、前期に比べ66億円増収の901億円となりました。事業利益は、前期に比べ41億円増益の52億円となりました。 当社グループは「グループビジョン2030」において、注力するフィールドを「安全安心リモート社会」「近未来モビリティ」「エネルギー・環境ソリューション」とし、手術支援ロボットをはじめとする医療・ヘルスケア事業、配送ロボットや無人輸送ヘリコプタの事業化、カーボンニュートラル社会の早期実現に向けた水素事業、CO2分離・回収事業や電動化の推進など、社会課題ソリューション創出への取組を新たなソーシャルイノベーション共創拠点「CO-CREATION PARK ? KAWARUBA」も活用しながら着実に進めています。更に、地震や豪雨などにより甚大な被害を受けた被災地の復興支援に協力するとともに、今後可能性が高まる様々な自然災害へ対応できる支援パッケージの充実に努めています。 (2) 財政状態の状況(資産)流動資産は、営業債権及びその他の債権などの増加により前期末に比べ2,969億円増加し、2兆239億円となりました。非流動資産は、有形固定資産の増加などにより前期末に比べ398億円増加し、9,930億円となりました。この結果、総資産は前期末に比べ3,367億円増加の3兆169億円となりました。 (負債)有利子負債は、前期末に比べ386億円増加の6,925億円となりました。負債全体では、営業債務及びその他の債務や契約負債の増加などにより前期末に比べ2,662億円増加の2兆2,918億円となりました。 (資本)資本は、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上などにより、前期末に比べ705億円増加の7,250億円となりました。 (3) キャッシュ・フローの状況当期末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は前期に比べ486億円増の1,327億円となりました。当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりです。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動の結果得られた資金は、前期に比べ1,172億円増の1,489億円となりました。収入の主な内訳は、契約負債の増加額988億円、減価償却費及び償却費934億円であり、支出の主な内訳は、営業債権及びその他の債権の増加額961億円、棚卸資産の増加額692億円です。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動の結果支出した資金は、前期に比べ213億円増の1,112億円となりました。これは主に有形固定資産の取得によるものです。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動の結果獲得した資金は、前期に比べ33億円減の96億円となりました。これは主に債権流動化による収入によるものです。 (4) 資本の財源及び資金の流動性についての分析 ① 財務政策当社グループの運転資金・投資向け資金等の必要資金については、主として営業キャッシュ・フローで獲得した資金を財源としていますが、必要に応じて、短期的な資金については銀行借入やコマーシャル・ペーパーなど、設備投資資金・投融資資金等の長期的な資金については、設備投資・事業投資計画に基づき、金融市場動向や固定資産とのバランス、既存借入金及び既発行債の償還時期などを総合的に勘案し、長期借入金や社債などによって調達しています。当社グループは上述の多様な資金調達源に加え、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しており、事業活動に必要な資金の流動性を確保しています。また、当社と国内子会社間、また海外の一部地域の関係会社間ではキャッシュ・マネジメント・システムによる資金融通を行っており、グループ内の資金効率向上に努めています。  ② 資金需要の主な内容当社グループの資金需要は、営業活動に係る資金支出では生産活動に必要な運転資金(材料費、外注費、人件費等)、受注活動又は販売促進のための販売費、新規事業の立ち上げや製品競争力の強化のための研究開発費などがあります。投資活動に係る資金支出には、事業の遂行、新規立ち上げ、生産性向上のための設備や施設への投資などがあります。 (5) 経営方針・経営戦略及び経営指標等に照らした経営成績等の分析・検討当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標を事業利益率及びROICとし、事業利益率については2027年度に8%、2030年度に10%超の水準、税後ROICについては資本コスト(WACC)+3%以上を確保すべく努めていきます。なお、現状のWACCは7%台と推計しています。2024年度は、事業利益1,431億円、事業利益率6.7%、税後ROIC8.0%と航空宇宙システム事業、エネルギーソリューション&マリン事業における増益に加え、為替レートが計画の前提レートより円安で推移したことにより年初に公表した計画から上振れし、過去最高益を達成しました。2025年度は、為替変動による減益を見込んでいるものの、エネルギーソリューション&マリン事業をはじめ利益率改善に向けた取組が進んでいることに加え、精密機械・ロボット事業の市況回復等により事業利益は1,450億円、事業利益率6.3%、税後ROIC6.9%を見込んでいます。収益性の向上及び有利子負債の圧縮に取り組み、掲げた見通しの超過達成に向けて取り組んでいきます。なお、米国関税政策による当社業績への影響については主にパワースポーツ&エンジン事業において生じる見込みであり、市場が軟調に推移するリスクを本見通しに一定程度反映しています。ただし、関税負担によるコストアップに関しては、政策が流動的である点を考慮し未反映です。「グループビジョン2030」においては、まずパワースポーツ&エンジン事業をはじめとする量産系事業がコロナ禍から立ち上がり、航空宇宙システム事業をはじめとする受注系事業の業績が回復・拡大し、更に水素や医療ロボットといった新規事業が収益の柱となって安定的な成長軌道を描くことを目指しています。現状はまさに受注系事業が成長軌道に回帰した段階であり、掲げた成長シナリオに沿って進捗していると考えています。為替の変動や関税政策動向をはじめ、先行きへの不透明感はありますが、目標とする水準に向け、各セグメントにおける重点施策の着実な実行に加え、適正な販売価格の実現やコスト競争力の強化に継続的に取り組んでいきます。 また、2024年度のフリー・キャッシュ・フローに関しては377億円と3期ぶりの黒字となりました。引き続き収益性の向上及び運転資本の効率的な運用により安定的なキャッシュ・フローの獲得に努めていきます。なお、前連結会計年度及び当連結会計年度の全社及びセグメントごとの事業利益率は、次のとおりです。(単位:%)セグメントの名称前連結会計年度当連結会計年度変動航空宇宙システム△3.89.813.6車両1.93.81.8エネルギーソリューション&マリン9.011.12.0精密機械・ロボット△0.92.93.7パワースポーツ&エンジン8.17.9△0.2全社2.56.74.2 航空宇宙システム事業においては、増収などにより、事業利益率は前期に比べ13.6ポイント上昇しました。また、エネルギーソリューション&マリン事業においては、増収や持分法による投資利益の増加などにより、前期に比べ2.0ポイント上昇しました。更に、精密機械・ロボット事業においては、増収に加え、これまで進めてきた価格転嫁等の収益改善活動の効果などにより、前期に比べ3.7ポイント上昇しました。 (6) 生産、受注及び販売の実績① 生産実績当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりです。セグメントの名称生産高(百万円)前期比増減(%)航空宇宙システム499,075+27.1車両190,864+14.9エネルギーソリューション&マリン350,535+13.2精密機械・ロボット215,461+3.7パワースポーツ&エンジン447,750+1.7その他98,566+8.5合計1,802,254+12.1 (注)  金額は、生産高(製造原価)によっています。 ② 受注実績当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績は、次のとおりです。セグメントの名称受注高(百万円)前期比増減(%)受注残高(百万円)前期比増減(%)航空宇宙システム882,899+27.51,301,937+27.0車両251,569+183.3519,791+6.1エネルギーソリューション&マリン542,071+35.0825,356+20.4精密機械・ロボット249,283+16.891,411+9.3パワースポーツ&エンジン611,602+3.22,244-その他93,333△1.341,989+8.1合計2,630,757+26.32,782,728+19.8 (注) 1 パワースポーツ&エンジン事業については、主として見込み生産を行っていることから、受注高について売上収益と同額とし、受注残高を表示していませんでしたが、当連結会計年度に個別受注案件を獲得したため、受注残高を表示しています。2 セグメント間の取引については、受注高及び受注残高から相殺消去しています。 ③ 販売実績当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりです。セグメントの名称販売高(百万円)前期比増減(%)航空宇宙システム567,838+43.3車両222,306+13.5エネルギーソリューション&マリン398,138+12.7精密機械・ロボット241,503+6.0パワースポーツ&エンジン609,357+2.9その他90,177+7.9合計2,129,321+15.1 (注) 1 販売高は、外部顧客に対する売上収益です。2 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合 相手先前連結会計年度当連結会計年度金額(百万円)割合(%)金額(百万円)割合(%)防衛省288,51015.6400,89018.8 (7) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されています。その作成においては、連結財政状態計算書上の資産、負債の計上額、及び連結損益計算書上の収益、費用の計上額に影響を与える見積り及び仮定を使用しています。詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (4) 重要な会計上の見積り及び判断の利用」及び「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。

※本記事は「川崎重工業株式会社」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

スポンサーリンク

連結財務指標と単体財務指標の違いについて

連結財務指標とは

連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。

単体財務指標とは

単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。

本記事での扱い

本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

コメント