鹿島建設株式会社の基本情報

会社名鹿島建設株式会社
業種建設業
従業員数連21029名 単8854名
従業員平均年齢41.9歳
従業員平均勤続年数16.4年
平均年収11847369円
1株当たりの純資産2672.64円
1株当たりの純利益(連結)266.49円
決算時期年3
配当金104円
配当性向47%
株価収益率(PER)11.4倍
自己資本利益率(ROE)(連結)10.2%
営業活動によるCF306億円
投資活動によるCF▲1048億円
財務活動によるCF616億円
研究開発費※1222億円
設備投資額※1125億円
販売費および一般管理費※1611.1億円
株主資本比率※233.8%
有利子負債残高(連結)※37772.13億円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】当社グループにおける経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものであり、また、様々な要素により異なる結果となる可能性がある。 (1) 会社の経営の基本方針当社グループは、経営理念として「全社一体となって、科学的合理主義と人道主義に基づく創造的な進歩と発展を図り、社業の発展を通じて社会に貢献する。」ことを掲げ、さらに、企業経営の根幹を成す安全衛生・環境・品質に関する基本方針として「関係法令をはじめとする社会的な要求事項に対応できる適正で効果的なマネジメントシステムを確立・改善することにより、生産活動を効率的に推進するとともに、顧客や社会からの信頼に応える。」ことを定めている。こうした方針に基づく取組みを通して、より高い収益力と企業価値の向上を目指すとともに、社業の永続的発展により株主、顧客をはじめ広く関係者の負託に応え、将来に亘りより豊かな社会の実現に貢献していく。 (2) ビジョン当社グループを取り巻く経営環境は、近年、変化のスピードが加速している。こうした経営環境において、当社グループが持続的に成長するためには、多様な人材を呼び込み、外部リソースと連携しながら価値を共創することが重要と考えている。この認識のもと、当社グループが目指す方向性を広くグループ内外と共有するため、ビジョンを定めている。ビジョンは、目指す方向性を文章で表現した「ステートメント」とそれを実現するうえで「大切にしたい価値観」から構成されており、過去に対する敬意と未来への挑戦という2つの意を込めている。また、大切にしたい価値観は、当社グループを木に見立て、いかに大きく成長させるかという視点に基づいている。 (3) 鹿島グループのマテリアリティ当社グループは、SDGsをはじめとした社会課題と事業活動の関連を確認・整理したうえで、社会・環境への影響度が大きく、かつ当社グループの企業価値向上や事業継続における重要度が高い課題を抽出し、7つのマテリアリティを特定している。マテリアリティに取り組むことを通じて、社会課題解決と企業価値向上の両立を目指していく。 (4) 経営環境当連結会計年度における世界経済は、インフレの鎮静化や政策金利引き下げの動きが次第に拡がり、地域差はあるものの景気は全体として安定的に推移した。我が国経済については、物価や金利が上昇する局面が続いたものの、雇用・所得環境の改善やインバウンド需要が支えとなり、緩やかな回復基調が継続した。国内建設市場においては、公共投資が底堅く推移し、企業の設備投資は増加傾向が継続した。建設コストに関しては、資機材価格が総じて高い水準にとどまり、労務費も繁忙により一部の地域・職種において上昇が見られた。今後の世界経済においては、各国・地域の通商・金融政策や地政学的リスクにより、景気の先行きに不確実性の高まりが見られる。さらに、人的資本が一段と重要視され、環境面では循環型経済への対応が求められるなど、社会の要請や顧客のニーズには変化が続くことが見込まれる。こうした様々な変化や課題を確実に捉え、確かな技術力をベースとしたソリューション、そして新たな価値を提供していくことが、持続的な成長を実現するために重要であると考えている。建設市場では、国内、海外ともに堅実な建設需要が当面は継続すると見通している。特にインフラ老朽化対策やデジタル化に関連した投資は、中長期的な拡大が期待される。一方、建設コストの上昇には依然として留意が必要であり、旺盛な需要に応えられる施工体制を整えることが大きな課題となっている。コスト管理の徹底とともに、建設業従事者の処遇改善や生産性向上などによりサプライチェーンも含めた施工力の強化を図ることが一層求められている。 (5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題<「鹿島グループ中期経営計画(2024~2026)-中核をさらに強化し、未来を開拓する-」の推進>このような経営環境の中、当連結会計年度を開始年度とする新たな中期経営計画を策定した。中核である国内建設事業、不動産開発事業、海外事業の更なる強化を進めるとともに、技術立社としてバリューチェーンの拡充やR&D、イノベーション推進により新たな価値を創出し、社会や顧客とともに未来を開拓していく計画としている。① ありたい姿中期経営計画の策定にあたり、経営理念や受け継いできた企業風土、価値観などを「ありたい姿」として具体化している。当社グループの基盤である人と技術をつなぎ合わせ、顧客、さらにその先にある社会に貢献することを目指していく。 ② 成長戦略の取り組み状況「ありたい姿」を念頭に置きつつ経営環境などを踏まえ、成長戦略は、1)国内建設事業を深める、2)成長領域を伸ばす、3)技術立社として新たな価値を創る、4)サステナビリティを4つの柱としている。 1)国内建設事業を深める当社グループの提案力や設計・エンジニアリング力を結集し、生産施設や再開発事業などの重点分野において、大型工事を着実に受注している。また、生産性を高める新工法や自動化施工技術などの開発、進化により、顧客の求める工期、品質を実現する施工力強化を図っている。加えて、個々の人材が持つ知識やノウハウを体系的にデジタル化する取り組みは、業務効率や技術水準の向上に効果を発揮し始め、多様な人材が多様な働き方で活躍できる魅力ある現場づくりに寄与している。 ■当連結会計年度における成果、取り組み事例・「株式会社コーセー南アルプス工場新築工事(山梨県)」等の大型工事を含め、生産施設分野において3,000億円以上の工事を受注・先端半導体工場「Rapidus IIM-1建設計画(北海道)」の施工が、2026年3月期の竣工に向け順調に進捗・特許技術「スマート床版更新(SDR)システム」を適用し、高速道路更新工事の大幅な工期短縮を実現・山岳トンネル掘削作業の自動化・遠隔化を実現する自動化施工システム「A4CSEL(クワッドアクセル)for Tunnel」が完成 2)成長領域を伸ばす建設技術・ノウハウを活かした不動産開発事業を、当社グループの強みとして、国内・海外において積極的に展開している。海外では投資と売却による回収のサイクルが確立しつつあり、地域ごとの市場動向を見極めながら収益力強化を図っている。国内では、適時の物件売却を進めるとともに、将来の利益成長につながる優良プロジェクトへの投資を着実に進めている。また、米国において、安定的な需要が見込まれる医療・教育分野に強みを持つ建設会社を買収するなど、M&Aや外部パートナーとの連携によるバリューチェーンの拡充を推進している。 ■当連結会計年度における成果、取り組み事例・海外の流通倉庫開発事業において、米国にて16件、欧州にて3件を売却・開発事業主、設計施工会社の両面から参画する「八重洲二丁目中地区第一種市街地再開発事業(東京都)」が着工・国内で開発・設計・施工を一貫して担う「KALOC(カロック)」ブランドの物流施設2件が竣工・医療・教育分野に強みを持つ米国の建設会社ロジャーズ・ビルダーズ社を買収 3)技術立社として新たな価値を創る日本国内の技術研究所やシンガポールの研究開発拠点「The GEAR」では、政府機関・大学・スタートアップなどの外部パートナーと協働し、社会の要請に応える実践的な研究を進めている。また、技術マーケティングに取り組み、鹿島グループの保有技術を必要とする顧客を探索し、新たな収益源の開拓を図っている。 ■当連結会計年度における成果、取り組み事例・製造過程でCO2を吸収するコンクリート「CO2-SUICOM」のCO2固定の実績を環境省が算定し、国連に報告。大型プレキャストコンクリート製品の開発などにより、普及・展開を促進・英国サウサンプトン大学と共同開発した立体音響技術「OPSODIS(オプソーディス)」を搭載した小型スピーカーを開発し、クラウドファンディングで販売開始・自律飛行ドローンとデジタル技術を活用した森林管理サービス「Forest Asset」の提供を開始し、鹿島グループ社有林を含め13件を受託・シンガポールに当社技術のマーケティングを担う新会社「The GEAR by Kajima Pte Ltd」を設立 4)サステナビリティ「鹿島環境ビジョン2050plus」に基づき、脱炭素、資源循環、自然再興の取り組みを推進している。社会や顧客と協力して、環境保全と経済活動が両立する持続可能な社会の実現を目指している。当期から建設業に適用された時間外労働上限規制に対しては、継続的に推進してきた働き方改革等により、時間外労働は大幅に減少している。社員のエンゲージメントを高める取り組みや重層下請構造改革の推進等により、成長・変革を担う人材の確保・育成と持続可能なサプライチェーンの維持・強化を図っている。また、社会や顧客から信頼される企業グループであり続けるために、サプライチェーン全体でコンプライアンスや人権の尊重を徹底している。 ■当連結会計年度における成果、取り組み事例・2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)会場の舗装(約3,300㎡)に、NEDO※事業の一環として製造過程でCO2を吸収するコンクリートを活用し、約9.7トンのCO2をコンクリートに固定※国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構・燃料の脱炭素化に向け、バイオディーゼル燃料を混合した軽油の使用を拡大・総合職女性採用比率を2029年3月期までに30%以上とするなどの新たなDE&I(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン)に関する目標を設定・当社社員に対して実施したエンゲージメントサーベイの結果は、前回調査から向上  <利益成長の加速と財務戦略の更新>① 現状分析・評価中期経営計画(2024~2026)において、企業価値・市場評価の向上を目指した財務戦略を策定した。取締役会では、複数回にわたり、資本コストを踏まえ、事業ごとの資本収益性を確認、評価している。加えて、市場評価を把握し、IR活動の実績を確認した上で、成長投資や株主還元などの財務戦略を検証している。初年度となる当連結会計年度は、目標を上回る利益を確保しており、2026年3月期についても、親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高益となる1,300億円を目指している。当社グループの株主資本コストは、7~8%程度と認識している。当連結会計年度のROEは10.2%となり、2026年3月期以降も継続して10%を上回る水準を確保できると見通している。当連結会計年度の実績、2026年3月期の経営目標ともに、株主資本コストを十分に上回る資本収益性を確保していることを確認している。また、当連結会計年度の業績予想の修正と増配を公表した2025年2月以降、当社の株価は上昇しており、タイムリーな業績予想の開示と業績向上に伴う機動的な株主還元の実施が、株式市場において評価されたと認識している。② 経営目標の達成状況 中期経営計画(2024~2026)経営目標経営目標2025年3月期実績2026年3月期予想 2025年3月期2027年3月期2031年3月期親会社株主に帰属する当期純利益1,258億円1,300億円1,050億円1,300億円以上1,500億円以上ROE10.2%-10%を上回る水準 ③ 今後の取組みこうした利益成長が加速している状況を踏まえ、企業価値・市場評価の更なる向上を図るため、財務戦略を更新した。引き続き、成長に向けた施策と投資を実行するとともに、株主還元の充実を図っていく。また、株式市場からの信頼と評価を得るために、今後も経営方針や業績見込みについてのタイムリーな情報開示と投資家・市場との対話を強化していく。④ 財務戦略更新のポイント成長投資・人的資本への投資やAI・デジタル関連の技術開発、国内外の不動産開発事業における投資と回収のサイクル加速により、一層の利益成長を目指す。・3年間の投資総額は計画比700億円増額。開発資産売却による回収は400億円増加。・ROEは10%を上回る水準を継続。資本構成・政策保有株式は、『2027年3月期末までに連結純資産の20%未満』としていた目標を、当連結会計年度末時点で達成。2026年3月期以降も継続的に縮減を進め、3年間の売却額は、計画比200億円程度の増加を目指す。・D/Eレシオの目安は0.7倍程度を継続。株主還元・配当性向40%を目安に、利益成長に連動した配当金の引き上げを目指す。・資本効率向上と株主還元充実のための自己株式取得を継続。当面は、政策保有株式の売却実績をベースとして機動的に実施。2026年3月期は200億円の自己株式取得を予定。(当連結会計年度の政策保有株式売却額は203億円)・3年間の株主還元総額を計画比300億円程度拡充。 ガバナンス IR・2026年3月期から役員報酬の評価指標にROEを採用。・経営方針や業績見込みについてのタイムリーな情報開示と投資家・市場との対話の強化を継続。 ⑤ 投資計画投資計画を更新し、3年間の投資総額は700億円増加の1兆2,700億円、ネット投資額は300億円増加の5,400億円を計画している。デジタル投資は100億円増加させ、建設DXを推進する。AI技術の適用範囲拡大、自動化施工技術の進化、バリューチェーンにおけるデータ連携などにより、安全性・品質・生産性の向上と競争力の強化を図る。また、デジタル人材の育成を加速していく。国内・海外の開発事業に関しては、投資が為替変動影響を含め海外で600億円増加する一方で、売却による回収も400億円増加するため、ネット投資額は200億円増加する見通しである。  当連結会計年度のネット投資額は1,820億円となり、計画の概ね3分の1程度の進捗となった。 中期経営計画(2024~2026) 2025年3月期投資実績策定時今回更新増減 R&D投資600億円600億円- 210億円デジタル投資500億円600億円+100億円 170億円戦略的投資枠800億円800億円- 80億円業務用不動産などへの設備投資600億円600億円- 170億円国内開発事業  (売却による回収)  (ネット投資額)3,200億円(1,700億円)(1,500億円)3,200億円(1,500億円) (1,700億円)-(△200億円)(+200億円) 1,190億円(390億円) (800億円)海外開発事業  (売却による回収)  (ネット投資額)6,300億円(5,200億円)(1,100億円)6,900億円(5,800億円) (1,100億円)+600億円(+600億円)(-) 1,620億円(1,230億円) (390億円)投資総額(ネット投資額)1兆2,000億円(5,100億円)1兆2,700億円(5,400億円)+700億円(+300億円) 3,440億円(1,820億円) (6) 目標とする経営指標2026年3月期の国内建設事業は、協力会社・技能者を含めた堅実な施工体制を構築することにより、高い水準の売上高を維持するとともに、建設コスト上昇への的確な対応や生産性向上を推進し、売上総利益率の向上を目指す。国内開発事業では、これまでの投資の成果が着実に現れており、複数の販売物件を売却することを計画している。海外事業については、リスク対策の徹底と時機を捉えた事業展開により、建設、開発の両事業における収益力向上を図る。各国・地域の通商政策による2026年3月期の業績への大きな影響はないと見ているが、景気動向を慎重に見極める必要があると考えている。なお、為替レートは1米ドル145円を想定している。このような国内外の状況を勘案し、2026年3月期の業績は5期連続の増収増益を予想し、2025年5月14日に下記のとおり公表している。 売上高営業利益経常利益親会社株主に帰属する当期純利益2026年3月期連結業績予想(百万円)2,950,000159,000166,000130,000 また、中期経営計画(2024~2026)における経営目標として、国内建設事業における着実な利益成長と、成長領域である不動産開発事業、海外事業の収益拡大、バリューチェーン拡充により、ROE10%以上の継続と、2027年3月期の親会社株主に帰属する当期純利益1,300億円以上、2031年3月期の1,500億円以上を掲げている。2026年3月期に、1年前倒しで1,300億円の達成を予想した上で、2027年3月期以降も利益成長を継続し、1,500億円以上の早期達成を目指す。
経営者による財政状態の説明
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりである。 ① 経営成績の状況売上高は、海外関係会社の売上高増加を主因に、前連結会計年度比9.3%増の2兆9,118億円(前連結会計年度は2兆6,651億円)となった。利益については、建設事業、開発事業等ともに売上総利益が増加したことにより、営業利益は前連結会計年度比11.5%増の1,518億円(前連結会計年度は1,362億円)、経常利益は同7.0%増の1,606億円(同1,501億円)、親会社株主に帰属する当期純利益は同9.4%増の1,258億円(同1,150億円)となった。 セグメントごとの経営成績は次のとおりである。(セグメントの経営成績については、セグメント間の内部売上高又は振替高を含めて記載している。) a 土木事業(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)売上高は、大型工事を中心に施工が着実に進捗したことから、前連結会計年度比11.2%増の4,041億円(前連結会計年度は3,633億円)となった。営業利益は、売上高の増加に加え、売上総利益率が向上したことから、前連結会計年度比53.4%増の357億円(前連結会計年度は232億円)となった。 b 建築事業(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)売上高は、当期が大型工事の施工量が少ない時期に当たることから、前連結会計年度比4.6%減の1兆534億円(前連結会計年度は1兆1,042億円)となった。営業利益は、売上高が減少したものの、売上総利益率の改善により前期と概ね同水準を確保し、前連結会計年度比3.9%減の512億円(前連結会計年度は533億円)となった。 c 開発事業等(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)不動産販売事業における計画に沿った売却により、売上高、売上総利益が増加し、売上高は前連結会計年度比19.9%増の1,023億円(前連結会計年度は853億円)、営業利益は同51.0%増の278億円(同184億円)となった。 d 国内関係会社(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業等)前連結会計年度は開発系関係会社が保有する販売用不動産の売却があり、売上高及び営業利益が高水準であったことから、売上高は前連結会計年度比3.5%減の3,546億円(前連結会計年度は3,674億円)となり、営業利益は同32.1%減の164億円(同241億円)となった。 e 海外関係会社(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)売上高は、建設事業、開発事業等ともに増加し1兆円を超え、前連結会計年度比29.6%増の1兆1,145億円(前連結会計年度は8,596億円)となった。営業利益は、東南アジアの建設事業や米国の開発事業等における売上総利益の増加を主因に、前連結会計年度比18.6%増の200億円(前連結会計年度は169億円)となった。 ② 財政状態の状況当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末比3,194億円増加し、3兆4,545億円(前連結会計年度末は3兆1,351億円)となった。これは、受取手形・完成工事未収入金等の増加1,212億円、棚卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他の棚卸資産)の増加512億円及び有形固定資産の増加484億円があったこと等によるものである。なお、政策保有株式に関しては、当連結会計年度に34銘柄を203億円で売却したことなどにより、当連結会計年度末の残高は2,535億円(前連結会計年度末は3,161億円)となり、純資産に対する比率は19.8%(前連結会計年度末は25.8%)となった。負債合計は、前連結会計年度末比2,651億円増加し、2兆1,766億円(前連結会計年度末は1兆9,114億円)となった。これは、有利子負債残高※の増加1,793億円、支払手形・工事未払金等の増加477億円及び未成工事受入金の増加466億円があったこと等によるものである。なお、有利子負債残高は、7,920億円(前連結会計年度末は6,126億円)となった。純資産合計は、株主資本9,991億円、その他の包括利益累計額2,589億円、非支配株主持分198億円を合わせて、前連結会計年度末比543億円増加の1兆2,779億円(前連結会計年度末は1兆2,236億円)となった。また、自己資本比率は、前連結会計年度末比2.2ポイント悪化し、36.4%(前連結会計年度末は38.6%)となった。(注) ※短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債(1年内償還予定の社債を含む)及び長期借入金の合計額 ③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、306億円の収入超過(前連結会計年度は1,237億円の収入超過)となった。これは、税金等調整前当期純利益1,761億円に減価償却費308億円等の調整を加味した収入に加えて、未成工事受入金及び開発事業等受入金の増加389億円の収入があった一方で、未払又は未収消費税等の増減による支出823億円、法人税等の支払額639億円、売上債権の増加557億円及び棚卸資産(販売用不動産、未成工事支出金、開発事業支出金及びその他の棚卸資産)の増加155億円の支出があったこと等によるものである。投資活動によるキャッシュ・フローは、1,048億円の支出超過(前連結会計年度は629億円の支出超過)となった。これは、有形固定資産の取得による支出666億円、貸付けによる支出537億円及び投資有価証券の取得による支出115億円があった一方で、投資有価証券の売却等による収入226億円及び貸付金の回収による収入156億円があったこと等によるものである。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金、長期借入金、コマーシャル・ペーパー及び社債による資金調達と返済の収支が1,426億円の収入超過となった一方で、配当金の支払額478億円及び自己株式の取得による支出300億円があったこと等により、616億円の収入超過(前連結会計年度は95億円の支出超過)となった。これらにより、当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末から5億円減少し、3,495億円(前連結会計年度末は3,500億円)となった。 ④ 生産、受注及び販売の実績当社グループでは生産実績を定義することが困難であるため、また、受注高について当社グループ各社の受注概念が異なるため、「生産の実績」及び「受注の実績」は記載していない。 売上実績 セグメントの名称前連結会計年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)増減(△)率(%) 土木事業(百万円)363,333(13.6%)404,143(13.9%)11.2 建築事業(百万円)1,102,932(41.4%)1,052,902(36.1%)△4.5 開発事業等(百万円)81,997(3.1%)97,953(3.4%)19.5 国内関係会社(百万円)257,540(9.7%)242,463(8.3%)△5.9 海外関係会社(百万円)859,371(32.2%)1,114,353(38.3%)29.7合計(百万円)2,665,175(100%)2,911,816(100%)9.3 (注) 1 売上実績においては、「外部顧客への売上高」について記載している。2 前連結会計年度及び当連結会計年度ともに売上高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。 〔参考〕提出会社単独の受注高及び売上高の状況a 受注高、売上高及び繰越高 期別種類別期首繰越高(百万円)当期受注高(百万円)計(百万円)当期売上高(百万円)期末繰越高(百万円)前事業年度建設事業建築工事1,214,8001,358,5352,573,3361,104,2331,469,102自 2023年4月1日至 2024年3月31日土木工事643,856448,4941,092,351363,333729,017計1,858,6571,807,0293,665,6871,467,5662,198,120開発事業等30,035136,999167,03585,38381,652合計1,888,6931,944,0293,832,7231,552,9502,279,773当事業年度建設事業建築工事1,469,1021,334,6682,803,7711,053,4741,750,297自 2024年4月1日至 2025年3月31日土木工事729,017438,8991,167,916404,143763,773計2,198,1201,773,5673,971,6881,457,6172,514,070開発事業等81,65257,539139,192102,39836,793合計2,279,7731,831,1074,110,8801,560,0162,550,864 (注) 1 前事業年度以前に受注したもので、契約の更改により請負金額に変更があるものについては、当期受注高にその増減額を含む。したがって、当期売上高にもかかる増減額が含まれる。2 期末繰越高は、(期首繰越高+当期受注高-当期売上高)である。 b 受注工事高 期別区分国内海外計官公庁(百万円)民間(百万円)(百万円)(百万円)前事業年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)建築工事62,7601,295,774-1,358,535土木工事295,398152,148946448,494計358,1591,447,9239461,807,029当事業年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)建築工事13,6551,321,013-1,334,668土木工事251,294147,90439,700438,899計264,9491,468,91739,7001,773,567 c 受注工事高の受注方法別比率建設工事の受注方法は、特命と競争に大別される。期別区分特命(%)競争(%)計(%)前事業年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)建築工事38.8 61.2 100 土木工事42.1 57.9 100 当事業年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)建築工事45.0 55.0 100 土木工事27.8 72.2 100 (注) 百分比は請負金額比である。 d 完成工事高 期別区分国内海外計官公庁(百万円)民間(百万円)(百万円)(百万円)前事業年度(自 2023年4月1日至 2024年3月31日)建築工事35,9211,068,312-1,104,233土木工事224,301137,3631,668363,333計260,2221,205,6761,6681,467,566当事業年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)建築工事29,5221,023,951-1,053,474土木工事271,946129,7712,425404,143計301,4681,153,7232,4251,457,617 (注) 1 前事業年度及び当事業年度ともに完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。2 当事業年度の完成工事のうち主なものは、次のとおりである。 発注者 工事名称○ 西日本鉄道㈱ONE FUKUOKA BLDG.○ 日本原子力発電㈱東海第二発電所 防潮堤(放水路エリア区間)設置他工事○ 三菱倉庫㈱芝浦ダイヤビルディング○ キオクシア㈱キオクシア四日市工場 新製造棟(Y7棟) 第3期建築工事○ オリックス不動産㈱厚木Ⅲロジスティクスセンター○ 阪神高速道路㈱海老江工区開削トンネル工事○ ㈱日立ハイテク日立ハイテク笠戸地区新製造棟○ ㈱ベルーナ札幌ホテルbyグランベル e 繰越工事高(2025年3月31日現在) 区分国内海外計官公庁(百万円)民間(百万円)(百万円)(百万円)建築工事85,3071,664,989-1,750,297土木工事489,465226,04848,259763,773計574,7721,891,03848,2592,514,070 (注) 繰越工事のうち主なものは、次のとおりである。 発注者 工事名称○ Rapidus㈱Rapidus IIM-1建設計画○ 防衛省馬毛島(R5)仮設工事他○ 三菱地所㈱・㈱TBSホールディングス赤坂二・六丁目地区開発計画(A工区)既存建物地下解体工事及び新築工事他○ ㈱世界貿易センタービルディング世界貿易センタービルディング新本館・ターミナル建設工事○ SMC㈱(仮称)柏の葉キャンパス新技術センター計画新築工事○ 東日本高速道路㈱関東支社横浜環状南線 公田笠間トンネル工事○ 東日本旅客鉄道㈱品川開発プロジェクト(第Ⅰ期)2街区新築工事○ ㈱IHI・三菱地所㈱豊洲セイルパークビル (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。なお、文中の将来に関する事項は、別段の記載がない限り当連結会計年度末現在において判断したものである。① 経営成績及び財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容当社グループの当連結会計年度の経営成績は、国内建設事業(土木事業・建築事業)の売上総利益率改善に加え、国内開発事業の不動産販売事業の利益拡大等により、4期連続で前連結会計年度比増収増益を達成し、ROE(自己資本利益率)は10.2%となった。売上高(2兆9,118億円)は海外関係会社の売上高増加を主因に過去最高、親会社株主に帰属する当期純利益(1,258億円)は過去2番目の水準である。国内建設事業については、建設コストの上昇や時間外労働上限規制等の課題に適切に対応しつつ、着実に利益を積み上げることができている。業績予想との比較では、売上高が増加し、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益も業績予想を上回った。当連結会計年度の経営成績(連結業績予想との対比)                 (単位:百万円) 売上高営業利益経常利益親会社株主に 帰属する 当期純利益連結業績予想(A)2025年2月12日公表2,870,000144,000147,000120,000経営成績 (B)2,911,816151,882160,663125,817増減額(B-A)41,8167,88213,6635,817増減率(%)1.5%5.5%9.3%4.8% 財政状態については、当連結会計年度末の資産合計が前連結会計年度末比3,194億円増加し、3兆4,545億円となった。建設事業における売上債権(受取手形・完成工事未収入金等)が増加し、計画に基づく国内外の不動産開発投資の進捗により、開発事業資産(販売用不動産及び有形固定資産等)も増加している。投資有価証券については、政策保有株式の中長期的な縮減に向けて、保有する株式の一部34銘柄を203億円で売却したことなどにより減少した。なお、当連結会計年度末の政策保有株式の残高は2,535億円、純資産に対する比率は19.8%となり、中期経営計画に掲げた政策保有株式の残高縮減目標(2027年3月期末までに連結純資産の20%未満)を前倒しで達成している。連結自己資本は、保有株式の株価下落などにより、その他有価証券評価差額金が391億円減少したものの、1,200億円を上回る親会社株主に帰属する当期純利益の計上に伴い前連結会計年度末から479億円増加の1兆2,581億円、自己資本比率は36.4%となった。連結有利子負債残高は、国内外の不動産開発投資において外部資金を活用したことや海外の借入金における為替変動に伴う外貨換算増により前連結会計年度末から1,793億円増加し、7,920億円となったものの、D/Eレシオ(負債資本倍率)は0.63倍であり、財務の健全性は十分に維持できていると考えている。経営成績に重要な影響を与える主な要因は、国内外の建設事業及び開発事業における需要やコストの急激な変動等の事業環境の変化である。当連結会計年度において、国内建設需要は、底堅い公共投資と民間企業の旺盛な設備投資意欲により高い水準を維持し、そうした建設需要を背景に受注競争は緩和の動きが見られた。海外における建設需要は、米国を中心に住宅需要が底堅く、景気の影響を受けにくい医療福祉・教育関連施設等の需要も堅調である。また、東南アジアでは、コロナ禍における停滞から回復し、今後の着実な成長が見込まれる。コストに関しては、国内外ともに資機材価格は総じて高い価格水準に留まっており、労務費にも上昇の傾向が見られるため、動向を注視した適切な対応が必要と考えている。今後については、国内における建設需要が当面、高い水準で推移することが予想されるため、旺盛な需要に応えられる施工体制を確保し、工期遵守や品質保全、着実な利益確保に取り組むとともに、ICTツール等を積極的に活用した施工の自動化、デジタル化、遠隔管理化などによる安全性・品質・生産性の向上などを推進していく。また、長期的には建設技能労働者が減少していく見通しであることから、賃金・休暇面での処遇改善やデジタル技術活用による建設業の魅力向上など次世代の担い手確保に向けた施策に取り組んでいる。国内開発事業、海外事業においては、各国・地域の通商・金融政策や地政学的リスクが事業環境に与える影響を見極めつつ、リスク管理の徹底と時機を捉えた事業展開により、収益力向上を図っていく。 セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりである。 a 土木事業(当社における建設事業のうち土木工事に関する事業)売上高は、大型工事を中心に施工が着実に進捗したことなどから前連結会計年度を大きく上回る4,041億円となった。2026年3月期についても、7,500億円を超える繰越工事高や大型工事が最盛期を迎えることなどを踏まえ4,000億円を予想し、それ以降も3,500億円を超える水準が継続すると見込んでいる。売上総利益率に関しては、大型工事における追加・設計変更の獲得などにより、前連結会計年度の利益率(13.7%)を上回る15.4%となった。2026年3月期についても、各工事の順調な施工進捗や竣工を迎える工事の損益向上などにより、売上総利益率は17.5%になると予想している。土木事業における建設需要は、インフラ更新などの国土強靭化に関連した分野や、電力需要の増加に対応するエネルギー分野などの需要拡大が続き、今後も堅調に推移すると考えている。 b 建築事業(当社における建設事業のうち建築工事に関する事業)売上高は、前連結会計年度と比較して施工初期段階の工事が多かったことから減収となった。2026年3月期は、大型工事の着実な進捗により、増収となる1兆600億円を予想している。売上総利益率は、建設コスト上昇や時間外労働上限規制などの課題に適切に対応したことに加え、受注時の利益率改善が進んだことから、前連結会計年度における9.2%から9.6%に上昇した。2026年3月期も、引き続き建設コストの上昇に注意が必要であるものの、売上総利益率は9.7%に向上すると見込んでいる。競争環境については、高水準の建設需要を背景に緩和の動きが見られ、受注時の利益率は改善傾向が継続している。サプライチェーンを含めた施工体制の確保に注力するとともに、技術力や提案力を軸とした受注活動により、採算性の維持・向上を図り、2027年3月期までの中期経営計画期間中に10%を上回る売上総利益率の達成を目指す。 c 開発事業等(当社における不動産開発全般に関する事業及び意匠・構造設計、その他設計、エンジニアリング全般の事業)開発事業等の売上高及び営業利益は、不動産販売事業において、大型分譲マンションの引渡しやオフィスビルの売却があったことを主因に、前連結会計年度を上回った。当社が保有する賃貸ビルは総じて高い稼働率を維持しており、不動産賃貸事業も堅調に推移した。2026年3月期については、不動産販売事業において、複数物件の売却を計画していることから当連結会計年度を上回る売上高を予想している。営業利益は、高い水準であった当連結会計年度を下回る見通しではあるものの、物件売却益の最大化を図り、更なる上積みを目指していく。国内の不動産開発事業においては、中期経営計画(2024~2026)の投資計画に基づき、レパートリー拡充、優良資産の積み上げによる収益源の多様化及び収益機会の拡大を目指している。当連結会計年度に、開発・設計・施工を一貫して担う「KALOC(カロック)」ブランドの物流施設2件が完成した。今後も更なるレパートリー拡充を推進し、当社グループのネットワークを活用したテナント誘致による安定した賃貸収益に加え、市況を見極めた売却により利益水準の引き上げを図っていく。 d 国内関係会社(当社の国内関係会社が行っている事業であり、主に日本国内における建設資機材の販売、専門工事の請負、総合リース業、ビル賃貸事業等)当連結会計年度は、開発系国内関係会社の保有するオフィスの売却が実現した前連結会計年度と比較して、減収減益となったが、建設事業等は安定した利益を確保した。2026年3月期は、建設事業等が引き続き堅調に推移する見通しであることに加え、開発系国内関係会社において不動産開発物件の売却を予定していることから、増収増益を予想している。 e 海外関係会社(当社の海外関係会社が行っている事業であり、北米、欧州、アジア、大洋州などの海外地域における建設事業、開発事業等)海外関係会社は、米国流通倉庫開発事業における16件の物件売却や、米国建設会社(ロジャーズ・ビルダーズ社)の買収などが寄与し、売上高は過去最高となる1兆1,145億円となり、営業利益も前連結会計年度を上回った。建設事業では、豪州の特定工事においてコロナ禍によるコスト上昇や人手不足などを主因とした一過性の損失が発生したものの、東南アジアにおける追加収入の獲得などにより、前連結会計年度を上回る業績を確保している。開発事業等は、米国の流通倉庫開発事業における物件売却件数が前連結会計年度を上回った一方で、その他の地域や事業において売却時期を変更した物件があった。2026年3月期については、各地域における施工中工事の着実な進捗と開発事業における物件売却により、売上高は引き続き1兆円を上回る見通しである。利益面でも、各地域における建設事業の業績安定化と、時機を捉えた開発物件の売却を推進することにより増益を見込んでいる。建設事業では、大洋州における着実な業績回復を見込んでいる。開発事業では、主力である米国流通倉庫開発事業における物件売却を15件程度予定していることに加え、欧州の流通倉庫や再生可能エネルギー施設において、売却時期を当連結会計年度から変更した物件を含め、複数物件の売却を計画している。海外事業は当社グループの成長領域であり、中期経営計画(2024~2026)に定めた施策や投資を推進する。各地域の経済情勢に的確に対応し、建設・開発両事業のプラットフォームを活かして、2027年3月期に当期純利益300億円以上の達成を目指す。② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報当社グループは当連結会計年度において、国内建設事業で着実な利益を確保するとともに、国内外の不動産開発事業における物件売却などによりキャッシュを創出した。これに加え、政策保有株式の売却や有利子負債の活用等によるキャッシュを原資として、投資計画に基づくR&D・デジタル投資や事業領域を拡張する米国建設会社の買収、国内外の不動産開発投資など当社グループの着実な利益成長と経営基盤強化に繋がる投資を積極的に実施した。また、配当の引き上げとともに、機動的な株主還元として、300億円の自己株式取得を実施するなど、株主還元を拡充している。当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ5億円減少し3,495億円となった。当連結会計年度は前連結会計年度を上回る利益計上に加え、政策保有株式の売却や有利子負債の増加などによる収入があったものの、増配や自己株式取得300億円などの株主還元拡充と、中期経営計画(2024~2026)に沿った成長投資の実施などによる支出が上回った。工事の大型化に伴い、協力会社等への支払先行による一時的な資金負担が増加しているものの、現金及び現金同等物の残高は月商程度の水準を上回り、D/Eレシオも0.6倍程度と財務健全性は維持している。また、コミットメントラインを設定する等、安定的な資金運営に向けた多様な資金調達手段を備えており、建設事業における資金需要の予測は難しいものの、資金面に懸念はないと考えている。なお、有利子負債による資金調達に関して、金利上昇が見込まれる国内においては、長期、固定金利による資金調達を進めている。中期経営計画(2024~2026)の投資計画に基づき推進するR&D・デジタル投資やバリューチェーン拡充・新規事業創出等に向けた戦略的投資、国内外の不動産開発投資などの原資として、今後も国内外における建設事業の収益力を高め、キャッシュの創出に努めるとともに、開発事業資産の計画的な売却を進めていく方針である。株主還元については、配当性向の目安を40%としており、利益成長に連動した配当金の引き上げを目指すとともに、資本効率の向上と株主還元の充実のため、自己株式の取得を継続する方針である。自己株式の取得は、当面、政策保有株式の売却実績をベースとして機動的に実施することを予定している。また、投資計画の実施に伴う資金需要に対しては、投資効率の向上に向けて、金利動向を見極めながら弾力的に外部資金を活用していく。2026年3月末の連結有利子負債残高は8,300億円に増加する見通しであるものの、拡大する開発事業資産などに対するリスク耐性を備えるため、D/Eレシオ0.7倍程度を目安として財務健全性を維持していく方針である。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されているが、この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者により、一定の会計基準の範囲内で見積りが行われている部分があり、資産・負債や収益・費用の数値に反映されている。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っているが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果は、これらとは異なることがある。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載している。

※本記事は「鹿島建設株式会社」の令和7年年3期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

スポンサーリンク

連結財務指標と単体財務指標の違いについて

連結財務指標とは

連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。

単体財務指標とは

単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。

本記事での扱い

本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

コメント