JFEホールディングス株式会社の基本情報

会社名JFEホールディングス株式会社
業種鉄鋼
従業員数連62218名 単53名
従業員平均年齢47.5歳
従業員平均勤続年数23.6年
平均年収11710000円
1株当たりの純資産1782.71円
1株当たりの純利益83.12円
決算時期3月
配当金100円
配当性向120.3%
株価収益率(PER)30.6倍
自己資本利益率(ROE)4.7%
営業活動によるCF4789億円
投資活動によるCF▲3252億円
財務活動によるCF▲454億円
研究開発費※136.37億円
設備投資額※1-4412000000円
販売費および一般管理費※14086.82億円
株主資本比率※239.9%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】(1) 会社の経営の基本方針企業理念:JFEグループは、常に世界最高の技術をもって社会に貢献します。行動規範:挑戦。柔軟。誠実。 (2) 企業構造JFEグループは鉄鋼、エンジニアリング、商社の3つの事業を中心とした企業グループです。鉄を中核として、エネルギー技術や資源リサイクル技術等幅広い分野に領域を広げており、世界最高の技術に裏打ちされた3つの事業が生み出し続けるシナジーを、持続可能な社会の構築に向けて更に拡大していきます。 (3) JFEグループの競争力の源泉(鉄鋼事業・商社事業)鉄鋼事業は、世界有数の生産規模と高い技術開発力を有する銑鋼一貫メーカーのJFEスチール㈱を中核としており、お客様や社会の多様なニーズにお応えする鉄鋼製品をグローバルに供給しています。また商社事業は、JFE商事㈱を中核として、鉄鋼製品を中心に、鉄鋼原料・非鉄金属・化学品・資機材・船舶から食品・エレクトロニクスまで幅広く取り扱い、サプライチェーン全体の付加価値を向上させるサービスをグローバルに提供しています。鉄鋼・商社事業の競争優位の源泉は、①お客様のニーズに基づいた最先端の「技術開発力」と、②製造現場で培われてきた「生産」の実力、および③JFEスチール㈱とJFE商事㈱が一体となって長年築いてきた強固なお客様との信頼関係に基づく「販売力」の3つを基礎としています。これらをベースに、お客様のニーズに沿った新たな価値を創造し、最適なソリューションを提供し続けてきました。これらの競争優位性は私たちが長年の努力により積み重ねてきた貴重な財産であり、他社が容易に真似できない持続的成長のドライバーです。 ○新たな価値の創造を可能とする技術開発力(鉄鋼事業)世界各地のお客様の高度なご要望にお応えすることで、業界をリードする技術力を蓄積してきました。幅広い分野での高機能・高品質の商品やサービスの開発と提供を通じて新たな価値を創造し、世界中の産業や社会の発展と人々の生活の進化に貢献しています。また、優れた環境保全・省資源・省エネ技術により、世界で最も低いレベルの環境負荷で鉄鋼製品を生産することができ、その技術を世界各地の環境対策に役立てるとともに、成長の機会として活用しています。 ○高い競争力を持つ、集約された国内2大製鉄所(鉄鋼事業)JFEスチール㈱の競争力の第一の源泉は、東西2製鉄所への拠点集約により固定費が抑えられ、高効率生産が可能であることです。特に世界有数の規模を誇る西日本製鉄所は、年間2,000万トンレベルの鋼材を生産でき、コストや商品ラインナップ、技術力の観点からも高い競争力を持っています。現場では長年の努力を通じて優れた製造・商品技術や知的財産、ノウハウ等が無数に蓄積されており、これらにより培われた製造実力は、同社固有の競争力の源泉です。なお、事業環境の変化に対応した国内最適生産体制を構築し、当該競争力を維持・向上させるため、東日本製鉄所(京浜地区)において2023年9月に高炉を含む上工程(製銑、製鋼)および熱延設備を休止いたしました。  ○ニーズへの対応力と安定したお客様基盤(鉄鋼事業・商社事業) 長年のお取引による数多くのお客様との双方向のコミュニケーションにより、お客様との信頼関係を構築してきました。お客様との綿密なニーズの摺り合わせや、開発初期段階からの協働等の取り組みを通じて新たな価値を創造し、お客様の課題解決に貢献してきました。結果として、他社が容易に入り込むことができない堅固なお客様基盤を構築しています。 ○JFEグループのグローバル鋼材SCM(Supply Chain Management)網(商社事業)JFEスチール㈱と戦略的に連携を取りながら日本、中国、北米、ASEANの4極を主軸にグローバル展開する鋼材SCMを構築しています。日本で製造されるJFEスチール材のみならず、JFEスチール㈱の海外製造拠点やJFEグループのアライアンス先で製造される鋼材も含めたJFEブランドを、世界各地に製造拠点を展開するお客様へ良質なサービスとともに提供しています。またお客様のニーズに合わせ、スリット等の切断加工製品や、環境規制・省エネを背景に拡大している自動車用モーターコアや高効率変圧器用トランスコア等の鋼材加工部品をグローバルに提供できる体制を整えています。 ○JFEグループの中核商社としての機能(商社事業)変化が激しいグローバル市場においてお客様のニーズを先取りし、中核商社としてJFEグループの全体最適を考えながらトレードビジネスや事業を展開し、お客様への価値貢献を最大化しています。こうした他社にはないグループ全体最適を追求する商社事業モデルを通じ、グローバル市場におけるグループ全体の競争優位性を維持拡大していきます。 (エンジニアリング事業)エンジニアリング事業は、JFEエンジニアリング㈱を中核として、ガス・石油・水道パイプライン、再生可能エネルギー発電設備、都市ごみ焼却炉、水処理システム、橋梁・港湾構造物等、人々が生活する上で不可欠となるインフラの構築等を行っており、それらのEPC(設計・調達・建設)、O&M(運転・維持管理)に加え、リサイクル・発電事業等の事業運営を展開しています。また数多くの国内支店・営業所、海外現地法人・海外支店を有することでグローバルかつきめ細かな販売ネットワークを構築しており、長年にわたり、官公庁や、大手電力会社・ガス会社等様々な民間企業のお客様へ高度な技術・サービスを提供しています。エンジニアリング事業の競争力の源泉は、時代の変化に対応する先進かつ多種多彩な商品・サービスや、高度なプロジェクト遂行能力、ものづくりのノウハウを強みにした事業運営に至るまでの幅広い事業展開を基礎としています。 ○高度な基盤技術、多種多彩な商品技術造船事業がベースの加工・組立技術と鉄鋼事業がベースの素材・燃焼技術を融合・進化させた高度な技術力を強みとして、エネルギー・環境や橋梁等幅広い分野で事業を展開してきました。とりわけ、世界的な課題となっている地球温暖化に対しても、次世代エネルギーの創出や、高効率発電プラントによるCO2排出量の抑制等、課題解決に向けた技術を数多く保有しており、これらの技術に基づいた新たなビジネスモデルの企画・立案・推進に積極的に取り組んでいます。 ○豊富な実績と多様な人材によるプロジェクト遂行能力エネルギー・環境や橋梁等様々な分野で、設計から引き渡しまで、お客様のニーズに即した高機能・高品質な施設を数多く建設してきました。また、国内最大級の鋼構造物製作工場をはじめとする生産拠点を有しており、高品質・低コストでの製品供給を可能としています。更に、アジア諸国を中心とした海外拠点にグローバルエンジニアリング体制を構築し、一段と競争力を強化しています。 ○ものづくりのノウハウを強みにした事業運営環境・上下水等のプラントを中心として、長きに亘りオペレーション・メンテナンスのノウハウを培い、公共サービス分野で数多くの官民連携事業を手掛けています。また、自らが建設したプラントで、リサイクル事業や再生可能エネルギー発電事業を行い、循環型社会、持続可能な社会の構築に取り組んできました。こうした、ものづくりや運営ノウハウを強みにした官民連携事業やエネルギーサービス事業等の運営型事業領域を更に拡大していきます。 (4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題JFEグループを取り巻く事業環境は、新型コロナウイルスの影響も一服し経済活動が正常化に向かう等、総じて緩やかな回復基調となったものの、中国経済の低迷やロシアによるウクライナ侵攻の長期化、中東情勢の悪化等、先行きについては不透明な状況が継続すると考えられます。また、温暖化をはじめとする地球環境に対する危機感はますます高まっており、気候変動問題への取り組みはより一層重要な経営課題となっています。 <第7次中期経営計画>こうしたなか、当社グループは、第7次中期経営計画(2021~2024年度)で掲げた施策を推進し、社会の持続的発展と人々の安全で快適な生活のために「なくてはならない」存在を目指して、変革に向けた挑戦を続けています。「JFEグループ環境経営ビジョン2050」で示した気候変動問題への取り組みをはじめ、人材の活躍推進、地域社会への貢献やサプライチェーンにおける人権尊重等の取り組みを推進することにより、環境的・社会的持続性を確かなものといたします。また、鉄鋼事業においては、構造改革完遂後の競争力の高い生産体制を構築して、「量」から「質」への転換を着実に推進するとともに、インド等を中心とした海外戦略やDXの推進、ソリューションビジネスの拡大等を通じて、更なる収益の拡大を進めてまいります。更に、脱炭素化の進展を事業機会ととらえ、高機能電磁鋼板等の環境負荷低減に資する高付加価値品の供給や再生可能エネルギー発電の拡大等、成長戦略を推進することにより、強靭な経営基盤を確立し経済的持続性を確保いたします。 第7次中期経営計画グループ全体連結事業利益3,200億円親会社の所有者に帰属する当期利益2,200億円ROE10%Debt/EBITDA倍率3倍程度D/Eレシオ70%程度事業会社鉄鋼事業 ・トン当たり利益10千円/トン・セグメント利益2,300億円エンジニアリング事業 ・セグメント利益350億円・売上収益6,500億円商社事業 ・セグメント利益400億円 (注)1 D/Eレシオ:格付け評価上の資本性を持つ負債について、格付け機関の評価により資本に算入しております。2 鉄鋼事業のトン当たり利益:(連結セグメント利益÷単体出荷数量) <各事業会社の取り組み>◆ JFEスチール㈱においては、人口の減少により国内の鉄鋼市場は縮小に向かう一方、海外では、汎用品の価格競争激化に加え、鉄鋼製品の地産地消の流れが強まることが想定されており、第7次中期経営計画において掲げた「量」から「質」への転換を徹底するとともに、成長戦略を着実に推進してまいります。同社では、2023年9月に予定どおり東日本製鉄所(京浜地区)の上工程および熱延設備を休止いたしました。粗鋼生産能力の削減による固定費削減に加え、DX推進を通じた生産効率の向上等による大幅なコスト削減を実現するとともに、高付加価値品比率の向上や賃金の上昇および物流費の高騰を踏まえた販売価格の改善を進めてまいります。また、今後電力需要の拡大が見込まれるインドにおいては、JSWスチール・リミテッドと方向性電磁鋼板製造販売会社を共同で設立いたしました。今後も現地生産化を通じた事業戦略の深化や環境負荷低減等に関する高度な製造・操業・研究ノウハウを提供するソリューションビジネスの拡大等、成長戦略を着実に推進いたします。更に、自動車の電動化の進展による高機能電磁鋼板の需要拡大を見据え、西日本製鉄所(倉敷地区)において電動車用の無方向性電磁鋼板の製造能力を増強すべく追加の設備投資を決定いたしました。また、洋上風力発電の風車を支える着床式基礎構造物向けの大単重厚鋼板についても、今後日本各地でプロジェクトが本格化することから、製造能力の増強を完了する等、成長分野への投資を着実に実施し収益の拡大に努めてまいります。 ◆ JFEエンジニアリング㈱においては、『くらしの礎を「創る」「担う」「つなぐ」-Just For the Earth』というパーパスのもと、世界の人々のくらしを支え、地球を守り次世代につなげることを使命として事業を推進してまいります。 第7次中期経営計画の達成に向け、Waste to Resource(※1)分野、カーボンニュートラル分野、橋梁改築工事等の基幹インフラ分野を中心とした受注の拡大に取り組むとともに、既に受注したプロジェクトの着実な遂行やコスト削減、更には資機材費・労務費の上昇や建設業への時間外労働の上限規制適用にも適切に対応し、収益の確保に努めてまいります。また、洋上風力発電用の基礎構造物の製造・供給拠点として2024年4月から本格稼働した笠岡モノパイル製作所の早期安定稼働に向けて取り組むほか、安定的な収益の確保を目指して、運営型事業の拡大にも取り組んでまいります。更には、2023年10月に実施した同社の国内水エンジニアリング事業と月島ホールディングス㈱の水環境事業の統合によるシナジー効果の実現に努めていくとともに、今後も海外事業の拡大に加えて、M&Aや業務提携等を活用した事業の拡大や競争力強化を図ってまいります。 ◆ JFE商事㈱においては、電磁鋼板の世界No.1グローバル流通加工体制の構築に向け、グローバル4極体制(日本・米州・中国・ASEAN)に加え、今後成長が見込まれる欧州の電動車向けの需要を捕捉するべく、初めてセルビアに加工・販売拠点を設置いたしました。自動車向け鋼材については、ニューコア・JFEスチール・メキシコ・S.DE R.L.DE C.V.に隣接する加工センターにおいて、レーザーブランキング設備(※2)を導入し、グループ連携によるサプライチェーン強化を図っております。また、海外建材事業では、鋼製薄板建材製品の製造・販売会社であるスタッドコ・ビルディング・システムズ・US・LLCおよびスタッドコ・コーポレーションを買収いたしました。同社は米国、豪州において事業を展開しており、今回の買収により新たに米国東部エリアと豪州に拠点を獲得いたしました。米国においては、2022年に買収したセムコ・LLCとのシナジーを追求しプレゼンスの向上と収益の拡大を図ってまいります。また、豪州においても、今後安定した成長が見込まれる薄板建材の需要を捕捉し、収益の安定化を目指すとともに、脱炭素化の進展を事業機会ととらえ事業の拡大を図ってまいります。更に、鋼材加工拠点における再生可能エネルギーの活用を進めており、栃木の鋼材加工センターにおいても新たに太陽光パネルを設置いたしました。引き続き他拠点の脱炭素化にも取り組んでまいります。今後も第7次中期経営計画の達成に向け、マーケットにおけるグループの存在感を高めるとともに、収益の拡大に努めてまいります。 <グループ共通の取り組み>○気候変動問題への取り組み当社グループは、気候変動問題への対応を経営の最重要課題と位置付け、「JFEグループ環境経営ビジョン2050」を掲げ、「鉄鋼事業のCO2排出量削減」と「社会全体のCO2削減への貢献」を両輪として脱炭素への道程を示すとともに、この課題への対応を成長の機会ととらえ、様々な取り組みを進めています。鉄鋼事業においては、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた具体的なロードマップを策定・公表し、その中間目標である2030年度CO2排出量30%以上削減(2013年度比)の達成に向けて、既存プロセスの省エネルギー・高効率化や電気炉技術の活用等に取り組んでいます。西日本製鉄所(倉敷地区)においては高炉の改修時期にあわせて2027年度に高効率・大型電気炉を導入することを検討しています。様々な開発技術を適用することで、既存の大型電気炉では実現困難であった高品質・高機能鋼材を大量かつグリーンに供給できる体制の実現を目指しています。更に、複線的に開発に取り組んでいるカーボンリサイクル高炉等の超革新技術の試験炉建設に着手しており、2024年度以降に順次稼働を予定しています。引き続き、研究開発を推進するとともに、超革新技術の早期実装化を目指してまいります。 また、脱炭素化の社会的要請が高まるなか、自社のCO2排出削減技術により創出した排出削減量を適用したグリーン鋼材「JGreeXR(ジェイグリークス)」の供給を2023年度より開始しました。「JGreeXR」の環境価値を認めて頂き、船舶や建築物等の種々の用途に採用されています。今後もカーボンニュートラル社会の実現に貢献できるグリーン鋼材の市場創出に積極的に取り組んでまいります。社会全体のCO2削減への貢献に関しては、世界的に需要の高まる電動車向けモーターや変圧器の効率性向上に資する電磁鋼板等の環境配慮型商品の供給や、再生可能エネルギーによる発電事業等の拡大にも取り組んでおり、洋上風力発電においては、国内初となる着床式基礎構造物の製造工場を稼働させました。当社グループの総力を挙げて、洋上風力発電ビジネスの事業化を推進してまいります。なお、気候変動問題への取り組みを加速させるインセンティブとして、2023年度より気候変動に関する指標を役員報酬の業績連動指標として導入いたしました。引き続き、気候変動問題の解決に向けた取り組みを強力に推進することにより、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。 〇DX推進第7次中期経営計画では、DXを創立以来最大の変革の鍵となる重要な戦略として位置付けています。長年にわたる事業の中で蓄積し続けてきた膨大な操業データやノウハウ、技術は、他社が容易に真似ることのできない貴重な財産であり、世界最高水準の技術で社会を支える当社グループの価値創造の源泉です。鉄鋼事業においては、製鉄所・製造所の基幹システムのクラウド環境への完全移行を、製造業としては他社に先駆けて次期中期経営計画期間中に完了する予定であり、レガシーシステム(※3)からの脱却による事業継続性と発展性の確保に加え、様々な最新テクノロジーの導入により蓄積されたデータやノウハウの高度活用が可能となります。生産性の向上と競争力強化を実現すべくCPS(Cyber Physical System ※4)によるインテリジェント製鉄所の具体化に向けた取り組みを加速いたします。また、エンジニアリング事業においては、GRC(Global Remote Center ※5)をベースとした洋上風力事業のプラント操業支援サービスを展開する等、グループ全体でDX戦略を推進し、差別化を図ってまいります。更に、高度化するサイバー攻撃や情報漏洩リスクへの対策はグローバルに事業展開を行う上で避けて通ることのできない極めて重要な課題です。2024年4月にはグループのサイバーセキュリティ業務を担う会社を新たに設立し、人材の獲得・育成、およびセキュリティ監視等の体制整備を進めております。今後も、グループ全体のサイバーセキュリティ対策の一層の強化を進めてまいります。 〇人的資本・人権尊重複雑化・多様化する変化の激しい経営環境下で、当社グループが将来にわたって持続的な成長を成し遂げるためには、人的資本への投資を通じて従業員の能力や活力を最大限に引き出すことが不可欠です。ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みや、DX人材等経営戦略に対応した人材育成を進めるとともに、従業員が働きがいを感じられる環境整備に努めてまいります。また社員が安心して働く上での基本要件である、安全で健康的な職場環境づくりに向けた取り組みにも注力してまいります。また、当社グループは、人権が尊重・擁護される社会の実現に向けて人権デューディリジェンスに取り組んでおります。サプライチェーンにおける人権尊重の実現に向け、2023年度にはサプライヤーの人権リスクに関する調査を実施しており、今後、調査結果を踏まえ必要な対応を進めてまいります。引き続き、サプライチェーンも含めたすべてのステークホルダーに対する人権尊重の取り組みを拡大してまいります。 〇京浜地区の土地利用転換2023年9月に上工程および熱延設備を休止した東日本製鉄所(京浜地区)の土地利用については、既に売却を決定している南渡田エリア北地区北側・扇町地区の解体工事を2024年4月より開始し、約400haにおよぶ大規模土地利用転換の先鞭となる事業がはじまりました。南渡田エリア北地区北側については事業パートナーとともに、革新的な素材を生み出す研究開発拠点として2027年度のまちびらきに向けて整備を進めてまいります。扇島地区は、国の重点課題の解決に資する公共・公益性の高い土地利用への転換を図るべく、土地利用構想「OHGISHIMA2050」を取りまとめ、2028年度の一部土地利用開始に向けて精力的に事業を推進してまいります。また水江地区では、リサイクル拠点の拡張整備の一環として、首都圏最大級となるプラスチックリサイクル施設「Jサーキュラーシステム川崎スーパーソーティングセンター」の建設を開始しました。今後も、川崎市をはじめとする行政や近隣エネルギー企業を含む地域の企業と連携し、地域・社会の持続的発展に貢献してまいります。 〇財務健全性の確保中長期の成長に向けた攻めの経営には安定した財務基盤の確立が必要であり、選択と集中に基づく効果的な投資の実行と財務健全性の確保を両立させることが重要です。中長期の成長に向けた戦略投資のための資金確保ならびに財務体質の強化を目的として2023年度には海外募集による新株式発行及び自己株式の処分ならびに転換社債型新株予約権付社債の発行を行いました。なお、成長戦略やカーボンニュートラルに資する投資を実施した一方で、構造改革によるコスト削減や販価改善等による収支改善を進めた結果、当期末の有利子負債残高は、前期に比べ327億円減少し、1兆8,302億円となりました。また、増資による現預金の増加により、ネット有利子負債残高(※6)は、前期に比べ1,564億円減少し、1兆5,871億円となりました。この結果、第7次中期経営計画の財務目標として掲げているDebt/EBITDA倍率は3.2倍、D/Eレシオは58.0%となりました。引き続き、事業や資産の見直しによる徹底した資産圧縮と、棚卸資産圧縮等によるCCC(Cash Conversion Cycle)の改善により、投資に向けた必要資金を確保するとともに財務健全性の確保に努めてまいります。 〇コーポレートガバナンス当社はグループの経営課題を着実に実行するため、株主利益に適うグループ経営および健全なコーポレートガバナンスの要としてその機能を充実させるとともに、更に効率的な運営を図ってまいります。 なお、JFEエンジニアリング㈱が2017年6月および2020年6月に沖縄県竹富町と契約した海底送水管更新工事に関して、入札談合等関与行為防止法違反容疑および公契約関係競売入札妨害容疑で、同社社員3名が起訴され、2022年8月に1名(同社元社員)が、2023年10月に2名が、那覇地方裁判所において有罪判決を受けました。本事案を厳粛かつ真摯に受け止め、特定した発生原因を踏まえた再発防止策を実行することにより、早期の信頼回復に努めてまいります。 JFEグループは、社会との信頼関係の基本である、コンプライアンスの徹底、環境課題への取り組み、安全の確立について、グループをあげて真摯な努力を継続してまいります。また、第7次中期経営計画で掲げた施策を完遂し、企業としての持続的な成長と株主の皆様をはじめすべてのステークホルダーにとっての企業価値の向上に努めることにより資本市場の評価を高めてまいります。 (注)1 上記の記載には、2024年5月7日の決算発表時点の将来に関する前提・見通し・計画に基づく予測や目標が含まれております。2 ※1 Waste to Resource:リサイクルや廃棄物発電等3 ※2 レーザーブランキング設備:レーザー切断による型抜き加工設備4 ※3 レガシーシステム:老朽化・肥大化・複雑化・ブラックボックス化したシステム5 ※4 Cyber Physical System:製造プロセスの仮想モデルと現実のプロセスのリアルタイム融合化技術6 ※5 Global Remote Center:AI/ビッグデータ基盤を備えた次世代の国内外プラント遠隔監視サービス 拠点7 ※6 ネット有利子負債残高:有利子負債残高-現預金および現金同等物
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の状況の概要① 財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度における当社グループの経営成績等の状況の概要は、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 a.当連結会計年度の経営成績の分析」に記載しております。 ② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、「(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性についての分析」に記載しております。 ③ 生産、受注及び販売の実績当社グループにおける生産実績については鉄鋼事業の粗鋼生産量を、また受注実績についてはエンジニアリング事業の受注実績・受注残高を記載しております。鉄鋼事業は、特定顧客からの受注については反復循環的に生産しているため、受注実績の記載を省略しております。エンジニアリング事業は、請負工事を中心としているため、生産実績を金額あるいは数量で示すことはしておりません。商社事業は、受注生産形態をとらない製品が多いため、生産実績・受注実績を金額あるいは数量で示すことはしておりません。a.生産実績当連結会計年度における生産実績は、以下のとおりであります。 セグメントの名称粗鋼生産量(千トン)前期比(%)鉄鋼事業(うちJFEスチール㈱)24,801(23,449)△2.6(△2.7) b.受注実績当連結会計年度における受注実績は、以下のとおりであります。 セグメントの名称受注実績(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)エンジニアリング事業563,006△0.3613,829△0.3 c.販売実績当連結会計年度における販売実績は、以下のとおりであります。 セグメントの名称販売実績(百万円)前期比(%)鉄鋼事業3,716,057△4.3エンジニアリング事業539,975+5.4商社事業1,476,452△2.5計5,732,485 調整額△557,852―合計5,174,632△1.8 (注) 主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する割合については、各販売先への当該割合が100分の10未満のため、記載を省略しております。 d.その他鉄鋼事業において、長期的な鋼材需給の動向を見据えた設備の統廃合等による最適な生産体制の構築の一環として、2023年9月にJFEスチール㈱東日本製鉄所(京浜地区)の上工程(製銑、製鋼)および熱延設備を休止し、国内の生産体制を高炉8基体制から7基体制へ変更しております。 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、特に記載のあるものを除き、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ① 会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表はIFRSに準拠して作成しております。重要性のある会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性のある会計方針」、重要な見積りについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の判断、見積りおよび仮定」に記載しております。 ② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容a.当連結会計年度の経営成績の分析JFEグループは、「常に世界最高の技術をもって社会に貢献します。」という企業理念の実践を通じて、企業としての持続的な成長を図り、株主の皆様をはじめすべてのステークホルダーにとっての企業価値の向上に努めてまいりました。当連結会計年度の国内および海外経済は、総じて緩やかに回復したものの、中国経済の停滞や、地政学リスクの拡大に加え、国内における土木建築分野を中心に人手不足や資材高騰の影響等もあり、足踏み状態が続きました。このような状況のもと、JFEグループでは、主原料や諸物価の価格転嫁による国内販売価格の改善や高付加価値品比率を上昇させる取り組みとともに、構造改革完遂による固定費削減等により、収益基盤の強化を進めてまいりました。その結果、輸出市況が低迷する厳しい事業環境の中、事業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益ともに前連結会計年度に比べ増益となりました。当連結会計年度のセグメント別の業績は、以下のとおりです。鉄鋼事業は、国内外の軟調な鋼材需要や、海外鋼材市況の低迷等を背景に、当連結会計年度の連結粗鋼生産量は2,480万トンと前連結会計年度に比べ減少しました。売上収益については、販売数量の減少や海外鋼材市況の悪化等を受け、3兆7,160億円と前連結会計年度に比べ1,651億円(4.3%)の減収となりました。セグメント利益については、海外鋼材市況の悪化や棚卸資産評価差等の一過性の減益要因等があったものの、構造改革の効果発現、および継続的な販売価格改善やコスト削減の取り組み等により、前連結会計年度に比べ559億円(38.1%)の増益となる2,027億円となりました。エンジニアリング事業は、Waste to Resource(リサイクルや廃棄物発電等)分野を中心とした受注済プロジェクトを着実に遂行した結果、売上収益は5,399億円となり前連結会計年度に比べ274億円(5.4%)の増収となり過去最高を更新しました。セグメント利益は売上収益の増加およびコスト削減に努めたことにより、前連結会計年度に比べ109億円(80.9%)の増益となる243億円となりました。商社事業は、過去最高益であった前連結会計年度と比較し、鋼材販売数量の減少、販売管理費の増加、北米事業を中心に利益率が低下したことにより、年間の売上収益は1兆4,764億円、セグメント利益は489億円となり、前連結会計年度に比べそれぞれ377億円(2.5%)の減収、162億円(24.8%)の減益となりました。以上の結果、当社単体業績等と合わせ、当連結会計年度における連結での売上収益は5兆1,746億円となり、前連結会計年度に比べ941億円(1.8%)の減収となりました。事業利益は2,982億円となり、前連結会計年度に比べ624億円(26.5%)の増益となりました。税引前利益は2,683億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は1,974億円となり、前連結会計年度に比べそれぞれ581億円(27.6%)、348億円(21.4%)の増益となりました。 b.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性についての分析当連結会計年度のキャッシュ・フローについては、営業活動によるキャッシュ・フローが4,789億円の収入(前連結会計年度に比べ収入が832億円増加)であったのに対し、投資活動によるキャッシュ・フローは有形固定資産、無形資産及び投資不動産の取得による支出を中心として3,252億円の支出(前連結会計年度に比べ支出が509億円増加)であったことから、これらを合計したフリー・キャッシュ・フローは1,537億円の収入(前連結会計年度に比べ収入が322億円増加)となりました。また、財務活動によるキャッシュ・フローは、海外募集による株式の発行による収入520億円および自己株式の処分による収入624億円ならびに転換社債型新株予約権付社債の発行による収入900億円等に対し、長期借入金の返済による支出1,306億円等により、合計では454億円の支出(前連結会計年度に比べ支出が647億円減少)となりました。この結果、当連結会計年度末の有利子負債残高は前連結会計年度末に比べ327億円減少し、1兆8,302億円となり、現金及び現金同等物の残高は前連結会計年度末に比べ1,237億円増加し、2,430億円となりました。なお、有利子負債は、社債、借入金及びリース負債であります。 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、次のとおりです。当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の仕入、製造費用、受注建設工事の費用支払および販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資資金需要の主なものは、鉄鋼事業における収益向上、GX(グリーントランスフォーメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)等の戦略投資および製造基盤整備を目的とした設備投資です。運転資金は、主に金融機関からの借入やコマーシャル・ペーパーの発行等により調達しております。投資資金は、自己資金を基本としておりますが、自己資金を上回る資金需要については、金融機関からの長期借入金や社債の発行等で調達しております。当社グループでは、複数の金融機関との間でコミットメントラインを設定することにより、十分な資金の流動性を確保しております。 c.目標とする指標の達成状況JFEグループは、2021年5月に公表した第7次中期経営計画(2021~2024年度)の中で、以下の財務・収益目標を掲げています。2023年度は主原料や諸物価の価格転嫁による国内販売価格の改善や高付加価値品比率を上昇させる取り組みとともに、構造改革完遂による固定費削減等により、収益基盤の強化を進めてまいりました。その結果、輸出市況が低迷する厳しい事業環境の中、事業利益および親会社の所有者に帰属する当期利益ともに前連結会計年度に比べ増益となりました。引き続き、第7次中期経営計画の目標達成に向けて取り組んでまいります。 ■第7次中期経営計画 目標(2024年度)実績(2023年度)グループ全体連結事業利益3,200億円2,982億円親会社の所有者に帰属する当期利益2,200億円1,974億円ROE10%8.6%Debt/EBITDA倍率3倍程度3.2倍D/Eレシオ70%程度58.0%事業会社鉄鋼事業 ・トン当たり利益10千円/トン10千円/トン・セグメント利益2,300億円2,027億円エンジニアリング事業 ・セグメント利益350億円243億円・売上収益6,500億円5,399億円商社事業 ・セグメント利益400億円489億円 (注)1 D/Eレシオ:格付け評価上の資本性を持つ負債について、格付け機関の評価により資本に算入しております。2 鉄鋼事業のトン当たり利益:(連結セグメント利益÷単体出荷数量) 目標実績(2023年度)株主還元方針(配当性向)30%程度30.9% なお、当連結会計年度の分析につきましては、「② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 a.当連結会計年度の経営成績の分析」に記載しております。

※本記事は「JFEホールディングス株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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