日本郵船株式会社の基本情報

会社名日本郵船株式会社
業種海運業
従業員数連35230名 単1336名
従業員平均年齢38.1歳
従業員平均勤続年数14.4年
平均年収14354240円
1株当たりの純資産6735.03円
1株当たりの純利益(連結)1070.32円
決算時期3月
配当金325円
配当性向50.8%
株価収益率(PER)4.6倍
自己資本利益率(ROE)(連結)17.2%
営業活動によるCF5107億円
投資活動によるCF▲597億円
財務活動によるCF▲4277億円
研究開発費※149.34億円
設備投資額※1650億円
販売費および一般管理費※1793.98億円
株主資本比率※249.8%
有利子負債残高(連結)※36191.75億円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループでは、中長期的な経営方針として、次の経営課題に取り組んでいます。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針 当社グループは、存在意義、社会的使命として“Bringing value to life.”を企業理念に掲げています。 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標 当社グループは、2023年3月に中期経営計画“Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定し、2030年に向けた新たなビジョン「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を掲げ、その実現を目的とする2026年度までの4年間の行動計画にもとづき事業を進めています。ESGを中核に据えた成長戦略を推進し、経営戦略としては、各事業における機会とリスクを踏まえた事業戦略の方向性(両利きの経営:AX、及び事業変革:BX)を定めるとともに、人的資本の更なる充実・グループ経営の変革・ガバナンスの強化(CX)、デジタル基盤の整備推進(DX)等のコーポレート基盤の強化に加え、脱炭素に向けた取組みの加速(EX)を推進します。事業投資計画としては、中期経営計画策定時点において2026年度までに予定していた1.2兆円規模の事業投資を1.4兆円規模に増額して実施します。当連結会計年度末時点で中期経営計画期間中の投資が決定している案件は約9,500億円です。 (“Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標) 2024年度実績中期目標(2026年目途)当期純利益4,777億円2,000~3,000億円ROIC13.2%6.5%以上ROE17.2%8.0~10.0% (株主還元策) 当社は、株主の皆様への安定的な利益還元を経営上の最重要課題の一つと位置付け、連結配当性向30%を目安に1株当たりの配当下限金額を年間100円として、業績の見通し等を総合的に勘案して利益配分を決定します。現在推進中の中期経営計画(対象期間:2024年3月期~2027年3月期)の公表から2年が経過し、公表時に前提としていた当社の財務・投資進捗状況、中長期的な利益水準の目安及び外部環境等にも変化が見られる中、中期経営計画で示す事業運営の大きな方向性は維持しつつ、足元の変化に機動的に対応し、株主・投資家の皆様の期待に応えるべく、2026年3月期以降の配当方針を以下の通り変更することといたしました。配当の詳細については「第4 提出会社の状況 3配当政策」をご参照ください。 変更前変更後連結配当性向30%40%1株当たり配当下限金額100円200円  自己株式の取得については、2024年5月8日及び2024年11月6日の取締役会決議に基づき、2025年4月4日までに26,898,400株(取得価額の総額 約1,300億円)の取得を完了しました。なお、取得した自己株式は2025年5月30日に全株消却しました。翌連結会計年度(2026年3月期)においては、取得価額の総額(上限)を1,500億円、取得する株式の総数(上限)を48百万株、株式取得期間を2025年5月9日から2026年4月30日として自己株式の取得を決定しました。また、取得した自己株式は全株消却することを予定しています。 (3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題① 中期経営計画の遂行 地政学リスクの高まりを受け混迷を極める世界情勢の中、「物流を止めない」を合言葉に、エネルギー、医療物資や生活必需品を世界中に届け、人々のライフラインを守るべく、 “Bringing value to life.” を企業理念(ミッション)とし、新たに掲げたありたい姿(ビジョン)「総合物流企業の枠を超え、中核事業の深化と新規事業の成長で、未来に必要な価値を共創します」を目指して、中期経営計画? “Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing -” を進めています。 両利きの経営(AX)と事業変革(BX)から成る「基軸戦略」の下、既存中核事業を深化させると同時に新規成長事業を進化させ、これを「支えの戦略」となる人材・組織・グループ経営の変革(CX)、デジタルトランスフォーメーション(DX)、エネルギートランスフォーメーション(EX)が支えます。 ■中期経営計画 “Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing -” 完遂への取組み 経営戦略であるAX~EXの2024年度の主な進捗状況は以下の通りです。2025年度についても「既存中核事業の深化」と「新規成長事業の開拓」を加速していきます。  ◆脱炭素社会実現に向けたアンモニアサプライチェーン構築 アンモニア燃料タグボート「魁」AFMGC本船デザイン  当社グループは2023年11月にNYK Group Decarbonization Storyを発表し、2030年までにScope1+2で2021年度比45%の温室効果ガス(GHG)排出量削減、2050年までにネットゼロ達成という野心的な目標を掲げ、その達成に向け取り組んでいます。目標達成に向けた船舶燃料転換シナリオに基づき、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)からグリーンイノベーション基金事業として助成を受けて開発したアンモニア燃料タグボート「魁」が2024年8月23日に竣工しました。同船は、アンモニア燃料船として世界初となる実運航中の実証試験・解析を行い、重油使用時と比較して最大約95%の温室効果ガス(GHG)排出量削減を達成しました。 また、2025年2月にはアンモニア燃料アンモニア輸送船(AFMGC)として世界初の定期傭船契約を世界最大級のアンモニアプレーヤー、Yara International ASAのグループ会社であるYara Clean Ammonia Switzerland SAと締結しました。当社は今後もアンモニアの海上輸送に留まらず、多様な側面からアンモニアサプライチェーンの構築に取り組んでいきます。  ◆成長分野と位置付ける物流分野への投資拡大 Parts Express B.V.社  当社グループは中期経営計画において物流事業を中核事業と位置付けており、成長エンジンである物流事業への積極投資を続けています。 特に今後も成長が見込まれる自動車やヘルスケア、リテールなどのサービスを強化しており、2024年4月には当社グループの郵船ロジスティクス株式会社のオランダ法人が自動車部品の配送に強みを持つオランダの物流会社Parts Express B.V.を買収しました。郵船ロジスティクス株式会社オランダ法人はベネルクス(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)のお客様を中心に、さまざまなサプライチェーン・ロジスティクスサービスを展開しており、この買収により自動車産業に特化した配送、クロスドックサービスをより深化させます。 また、2024年7月にはベルギーで医薬品倉庫の稼働を開始しました。同倉庫は、自律走行搬送ロボット(AMR:Autonomous Mobile Robots)や無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)、自動仕分けシステムなどを導入したことで、効率的な保管と省人化を実現しました。欧州における医薬品輸送のハブでもあるベルギーで新たに医薬品倉庫を稼働することで、最先端の医療・医薬品物流をリードし、お客様のニーズに応える高付加価値サービスの提供を目指します。  ◆脱炭素社会に向けた洋上風力関連事業での貢献 作業員運搬船「Transporter」  当社では、洋上風力発電事業を、脱炭素化だけでなく「エネルギーの安定確保」、「地方創生と国際競争力の復活」という、日本が直面する課題の解決に取り組む重要事業と位置付けています。当社は洋上風力発電も含めた再生可能エネルギー事業の推進と関連人材の育成をはじめ、港湾活用、船舶関連人材の育成、観光振興、環境保全などの地方創生に取り組んでおり、2024年12月には秋田曳船株式会社と洋上風力事業に必要な船舶保守管理サービスを提供する合弁事業会社としてジャパンオフショアサポート株式会社を設立しました。 海外市場においては2025年1月に、洋上風力発電での作業員輸送船(Crew Transfer Vessel、以下「CTV」)運航の先駆企業であり、スウェーデンに本社を置くNorthern Offshore Group ABの過半数株式を取得し、連結子会社化しました。 これに加えて、2025年3月に台湾の洋上風力発電関連企業である國際海洋股?有限公司(IOVTEC Co.,Ltd.)が新規に発行する普通株式を引き受けました。台湾の洋上風力発電市場はアジアにおいて先行しており、同社はこれまでこの市場における数多くのプロジェクトに携わり豊富な実績を積み上げてきました。 当社は、外航海運で得た知見や海外パートナーとの提携を活用するとともに、CTVやトレーニングセンター等の事業を通じ、地域密着の強みを生かした洋上風力発電関連事業を進めています。  ◆循環型社会の実現に向けた取り組み 洋上回収イメージ図オオノ開發 知多解体事業所イメージ  当社は、循環型社会の実現に向けて本業である海運業で培った技術や知見を新しい分野で生かす取り組みを続けています。 宇宙関連事業においては(1)洋上でのロケット打ち上げ、(2)打ち上げたロケット1段目の洋上回収、(3)衛星データの利活用、の3つの領域で事業化を目指しています。再使用型ロケットの洋上での回収プロジェクトについては、2024年12月に国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙戦略基金事業の1つとして採択されており、今後本格的に研究開発を進めていきます。 また循環型社会の実現を目指し、2024年9月にオオノ開發株式会社と国内で船舶や大型海洋建造物を解体し、鉄スクラップ等のリサイクルを行う船舶リサイクルの事業化を目指して共同検討していくことに合意しました。 今後も当社のコアコンピテンシーを生かし、様々なパートナーと協力し合いながら循環型社会の実現を目指します。  ◆2025年7月から客船2隻運航体制へ、またオリエンタルランドとクルーズ事業における業務提携に向けた基本合意書を締結 「飛鳥Ⅲ」提供:郵船クルーズ株式会社  客船事業では、34年ぶりの新造客船「飛鳥Ⅲ」が2025年7月20日に就航を予定しており、「飛鳥Ⅱ」との2隻体制による運航に向けた準備を着実に進めています。 LNGを含む3種類の燃料に対応したエンジン及び陸上電力受電装置を採用し、環境に配慮した飛鳥Ⅲは、飛鳥クルーズが日本において培ってきたクルーズ文化、和のおもてなしを継承しながらも、多彩なダイニング、エンターテイメント、ウェルネスなど心身を満たすプログラムを備え、より自由により豊かに、新たなる時代のクルーズ価値を創造します。 また、当社、郵船クルーズ株式会社、株式会社オリエンタルランドの3社は、株式会社オリエンタルランドが日本を拠点として2028年度の就航を目指すクルーズ事業において、業務提携に向けた基本合意書を締結しました。 当社グループは、貨物輸送や飛鳥クルーズなどを通じて長年にわたって積み重ねてきた運航実績や高い安全技術を様々な形で活用し、中核事業としての持続的な成長を目指します。  ◆NYK Energy Ocean株式会社発足 NEO社ロゴLPG船「SUNNY VISTA」  当社は2025年4月1日、ENEOSオーシャン株式会社の原油タンカー以外の海運事業を承継する新会社NYK Energy Ocean株式会社(以下「NEO社」)株式の80%を取得し、NEO社が発足しました。 NEO社はENEOSオーシャン株式会社から承継したLPG船、ケミカルタンカー・プロダクトタンカー、貨物船の計47隻を運航します。 LPG船は当社で現在運航している15隻と合わせて33隻になり、当社グループは世界最大規模のLPG船運航事業者になります。 当社グループは、エネルギー輸送事業において成長事業と位置付けるLNG及びLPG船事業を中心に取り組みを強化するとともに、安定的なエネルギー輸送の責務を果たすことを目標としており、今回のNEO社の子会社化はこの戦略に沿ったものです。ENEOSオーシャン株式会社から承継した100名以上の優秀な人材と47隻の良質な船隊、そしてエネルギー事業を幅広く手掛けるENEOSグループとの連携強化によってシナジーを創出し、エネルギー輸送事業のさらなる成長を目指します。  ◆電気推進タグボートの運航開始に向けて モータードライブシステム  当社グループはリチウムイオンバッテリー搭載の電気推進タグボートを建造し、2026年末に運航を開始します。電気推進船で中核となるモータードライブシステム(※)は、これまで舶用向けでの国産化が進んでいませんでしたが、パワーエレクトロニクス分野で業界トップクラスの技術力を持つ株式会社TMEICと協議を重ね、本船向けに新たに開発される技術を採用します。これにより、本船は国内メーカー製モータードライブシステムを搭載する日本初の電気推進タグボートとなります。さらに、本船には国内のタグボートとしては初めて船舶定点保持システム(DPS)を導入し、船体を自動的に一定エリアに留められるようにすることで、乗組員の心理的負担を軽減します。この取り組みは、国土交通省の内航変革促進技術開発支援事業の対象事業に採択されています。また、設計・建造・運航までの船舶バリューチェーンを当社グループ内で一貫して担い、電気推進船に必要な幅広い知見を集積していきます。将来的には、こうして培った知見を広く海事産業へ還元し、人手不足や脱炭素といった日本が抱える社会課題の解決に貢献していきます。※ パワーエレクトロニクス技術を利用したドライブ装置とモーターによる駆動方式  ◆「35,000人のグループ全社員の能力を挑戦に活かす日本郵船グループ」の実現  当社グループは2023年に、CX2030ビジョンを実現するための「CX Story」を発表し、「35,000人のグループ全社員の能力を挑戦に活かす日本郵船グループ」を実現するために、Diversity & Inclusion(ダイバーシティ・アンド・インクルージョン、以下「D&I」)を経営戦略の重要な柱と位置付けています。 まず、2024年9月にはD&Iについて、当社グループの姿勢を明確にするため、「D&I Promise」を策定しました。また、特に、「Gender」「Marine」「Global」の観点からインクルージョンを進めています。「Gender」については、女性の活躍の場を広げ、より多様な観点を意思決定の過程に取り込むことをトップコミットメントとして発信し、組織として最大限の能力を発揮できる環境を整えていきます。「Marine」については、海技者の活躍促進プロジェクト「CX NEO(NYK Empowering Oceans)」を立ち上げ、海技者が情熱とプライドを持って、長く働きたいと思える会社を実現していきます。「Global」については、引き続き海外人材の本社での活躍促進や、グローバルでの人材公募を進め、適所適材の人材戦略を実行します。 当社グループは今後も人材の多様性と、それを尊重し歓迎するインクルーシブな組織風土の醸成に努め、企業の持続的成長を目指します。  ◆「DX銘柄2025」に3年連続選定  当社は2025年4月に経済産業省、東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構が主催する「デジタルトランスフォーメーション銘柄(DX銘柄)2025」において「DX銘柄」に選ばれました。当社がDX銘柄に選定されるのは3年連続となります。今後もデジタルの力を活用して当社グループの中期経営計画を推進し、グループミッション“Bringing value to life.”を追求していきます。 ② 遵法の徹底 当社グループは、遵法の徹底を最重要事項と位置付け、当社と国内外にある様々な事業を展開するグループ会社を対象にグローバルなガバナンス体制の構築を目指しており、以下の対策を着実に実行し、法令に則った公正な事業の遂行を徹底することに全力を尽くしていきます。・米州・欧州・東アジア・南アジアの各拠点にRegional Management Officeを設置・ベストプラクティスの共有や課題の速やかな解決を図るため、Regional Governance Officerの下に法務担当や内部監査人を配置・国内外グループ会社が制定している行動規準に対する誓約書の取得等の活動を継続・独占禁止法の遵守を徹底すべく、社内各部門・グループ会社にヒアリングを実施し、これらを踏まえた独占禁止法に関する行動指針の作成、研修の実施・コンプライアンス委員会や遵法活動徹底委員会の開催を通じ、独占禁止法対応に加え贈収賄・ハラスメント防止等、包括的な法令遵守体制の整備・強化
経営者による財政状態の説明
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】1.経営成績等の状況の概要 当連結会計年度における当社グループの経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は以下のとおりです。(1)経営成績の状況 (単位:億円) 前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率売上高23,87225,8872,0148.4%売上原価19,73921,1931,4537.4%販売費及び一般管理費2,3852,5851998.4%営業利益1,7462,10836120.7%経常利益2,6134,9082,29587.8%親会社株主に帰属する当期純利益2,2864,7772,491109.0% 平均為替レート143.82円/US$152.73円/US$8.91円 円安平均消費燃料油価格US$620.83/MTUS$618.78/MTUS$2.05安 (概況) 当連結会計年度の業績は、売上高2兆5,887億円、営業利益2,108億円、経常利益4,908億円、親会社株主に帰属する当期純利益4,777億円となりました。なお、営業外収益で持分法による投資利益として2,933億円を計上しました。うち、当社持分法適用会社であるOCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.(“ONE社”)からの持分法による投資利益計上額は2,471億円となりました。 <セグメント別概況> 当連結会計年度のセグメント別概況は以下のとおりです。(単位:億円) 売上高経常利益前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率前連結会計年度当連結会計年度増減額ロラジイスナテ|ィ&クス事業定期船事業1,9231,804△119△6.2%6782,7432,064航空運送事業1,6111,85724515.2%57210153物流事業7,0228,1211,09815.6%259212△46自動車事業4,9095,3234148.5%1,0581,13375ドライバルク事業5,7336,0723395.9%1801810エネルギー事業1,7331,785513.0%463461△2その他事業2,2262,046△180△8.1%366933 当社グループにおける経営管理体制の一部見直しに伴い、報告セグメントについて再考した結果、当連結会計年度より、従来の「不定期専用船事業」を、「自動車事業」「ドライバルク事業」「エネルギー事業」に分割して表示する方法に変更しています。また、「不動産業」については、その相対的な事業規模を勘案し、「その他事業」に含めて表示する方法に変更しています。 これに伴い、前連結会計年度の数値を変更後の区分に合わせて組替再表示しています。 <定期船事業> コンテナ船部門:新造船竣工による船舶供給量の増加は続いたものの、堅調な荷動きや紅海情勢及び港湾混雑等に起因する需給の逼迫がみられ、市況は第3四半期まで好調に推移しました。第4四半期の市況は低調で推移しましたが、通年では前連結会計年度の水準を上回りました。ONE社においても、前連結会計年度比で運賃が上昇した結果、利益水準は前連結会計年度を上回りました。  ターミナル関連部門:国内ターミナルでは前連結会計年度比で取扱量が増加しました。 海外ターミナルでは、2023年9月末に北米西岸ターミナルの関係会社株式を売却した影響により、前連結会計年度比で取扱量が減少しました。  以上の結果、定期船事業全体では前連結会計年度比で減収増益となりました。 <航空運送事業> 主としてアジア発欧米向けの旺盛なEコマース需要や、半導体製造装置、自動車関連貨物の需要に支えられ、貨物取扱量は前連結会計年度比で増加しました。また、需給の引き締まりにより運賃単価も高い水準で推移しました。他方、燃料単価は前連結会計年度比で下落しました。  以上の結果、航空運送事業では前連結会計年度比で増収増益となりました。 <物流事業> 航空貨物取扱事業:アジア発の活発な荷動きに加え、第3四半期にはスポット貨物需要もあり、取扱量は増加した一方、仕入価格が上昇し、利益水準は前連結会計年度並みとなりました。  海上貨物取扱事業:アジア域内航路を中心とした堅調な荷動きに加え、米国における関税引き上げに伴う出荷の前倒し需要により、取扱量は増加した一方、仕入価格が上昇し、利益水準は前連結会計年度並みとなりました。  ロジスティクス事業:北米や東南アジアにおいて事業は堅調だったものの、欧州と東アジアにおいては減速しました。また、前連結会計年度に実施した成長投資に関連する一時的な費用が発生し、利益水準は前連結会計年度を下回りました。  以上の結果、物流事業全体では前連結会計年度比で増収減益となりました。 <自動車事業> 海上輸送においては、中東情勢の影響等による港湾混雑や航路変更が継続する中、最適な配船計画と本船運航により、堅調な輸送需要を取り込みました。  自動車物流においては、ターミナル事業を中心に旺盛な需要を取り込むことで業績は堅調に推移しました。  以上の結果、自動車事業全体では前連結会計年度比で増収増益となりました。 <ドライバルク事業> ケープサイズの市況は第1四半期及び第2四半期には好調を維持しましたが、12月から季節的調整局面に入りました。パナマックスサイズ以下の市況は年末に向かって軟化しましたが、好調だった第1四半期及び第2四半期に支えられました。  以上の結果、ドライバルク事業全体では前連結会計年度比で増収及び同程度の利益水準となりました。<エネルギー事業> VLCC(大型原油タンカー):中国での需要減退や米国からアジア地域への長距離輸送が減少したことを受け、市況は前連結会計年度を下回りました。また入渠船増加により稼働率が低下しました。  VLGC(大型LPGタンカー):新造船の竣工やパナマ運河の渇水の影響が緩和したことに伴う船腹供給の増加により、市況は前連結会計年度を下回りました。  石油製品タンカー:中国等での景気減速による需要減退を受け、市況は前連結会計年度を下回りました。  LNG船:安定的な収益を生む長期契約に支えられて順調に推移しました。  海洋事業:FPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)、ドリルシップ、シャトルタンカーが安定的に推移しました。  以上の結果、エネルギー事業全体では前連結会計年度比で増収及び同程度の利益水準となりました。 <その他事業> 船舶・技術事業:船用品・船用資材販売事業等は好調でしたが、燃料油販売事業は販売数量が減少しました。  客船事業:世界一周クルーズを6年ぶりに催行しました。また、夏季および第3四半期のクルーズを中心に全体として前連結会計年度比で高い乗船率を維持しました。  以上の結果、その他事業全体では前連結会計年度比で減収増益となりました。 (2)キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末と比べて50億円増加し、1,498億円となりました。 営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益5,154億円、減価償却費1,546億円、持分法による投資損益△2,933億円、利息及び配当金の受取額1,892億円等により5,107億円(前年同期4,014億円)となりました。 投資活動によるキャッシュ・フローは、船舶を中心とする固定資産の取得及び売却等により△597億円(前年同期△2,856億円)となりました。 財務活動によるキャッシュ・フローは、短期及び長期借入金の返済、自己株式の取得や配当金の支払い等により△4,277億円(前年同期△1,634億円)となりました。 (3)生産、受注及び販売の実績 当社グループは国際的な海上貨物運送業を中核として多角的事業を展開しているため、生産、受注の各実績を求めることが実務的に困難であり、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示していません。 当連結会計年度における売上高をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)定期船事業180,42493.8航空運送事業185,723115.2物流事業812,148115.6自動車事業532,392108.5ドライバルク事業607,256105.9エネルギー事業178,565103.0その他事業204,63491.9計2,701,145107.4消去(112,444)87.2合計2,588,700108.4(注) 売上高に対する割合が10%以上の顧客はいません。 2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの財政状態及び経営成績等の状況に関する分析・検討の内容は以下のとおりです。 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。(1)財政状態及び経営成績等の分析 当連結会計年度末の総資産は、投資有価証券の増加等により、前連結会計年度末に比べ654億円増加し、4兆3,202億円となりました。有利子負債は、短期借入金の減少等により1,753億円減少して7,384億円となり、負債合計額も2,111億円減少し、1兆3,502億円となりました。純資産の部では、利益剰余金が1,877億円増加し、株主資本とその他の包括利益累計額の合計である自己資本が2兆9,188億円となり、これに非支配株主持分510億円を加えた純資産の合計は、2兆9,699億円となりました。これらにより、有利子負債自己資本比率(D/Eレシオ)は0.25に、また自己資本比率は67.6%となりました。経営成績については「1.経営成績等の状況の概要(1)経営成績の状況」をご参照ください。 (2)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況 当社グループは、2023年4月から開始する4カ年の中期経営計画として“Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing -”を策定しました。“Sail Green, Drive Transformations 2026 – A Passion for Planetary Wellbeing -”の利益・財務目標並びに2024年度実績については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的なグループ経営戦略及び目標とする経営指標及び(3)中長期的なグループ経営戦略と優先的に対処すべき課題」をご参照ください。 (3)キャッシュ・フローの状況の分析並びに資本の財源及び資金の流動性① キャッシュ・フローの状況 「1.経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。 ② 資金需要 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループの自動車事業、ドライバルク事業及びエネルギー事業運営に関する海運業費用です。この中には燃料費・港費・貨物費等の運航費、船員費・船舶修繕費等の船費及び借船料などが含まれます。このほか物流事業や航空運送事業等の運営に関する労務費等の役務原価、各事業についての人件費・情報処理費用・その他物件費等の一般管理費があります。一方、設備資金需要としては、中期経営計画における船舶脱炭素化投資など既存事業への投資、新規事業やM&A投資を予定しています。当連結会計年度中には2,078億円の設備投資を行いました。 ③ 財務政策 当社グループの事業活動の維持拡大に必要な資金については、財務の健全性を損なうことなく、また、過度に特定の市場リスクに晒されることなく安定的に確保するために、金融機関からの借入や社債、コマーシャル・ペーパーの発行による調達を行うこととしているほか、船舶に関してはリース等を活用しています。 当社グループの主要な設備である船舶投資については、営業活動によって個々の船舶が将来収受する運賃もしくは貸船料収入の通貨や期間にあわせた長期の借入のほか、社債発行により調達した資金や内部留保した資金も投入しています。運転資金については、主に期間が1年以内の短期借入並びにコマーシャル・ペーパーの発行により調達することとしていますが、一部長期の借入によっても調達しています。2025年3月31日現在の短期及び長期借入金の残高は5,202億円で、通貨は円のみならず米ドル等の外貨建借入金を含んでおり、金利は変動及び固定です。また、資本市場から調達した社債の残高は、2025年3月31日現在990億円となっています。 当社グループは、資金の流動性確保に努めており、2025年3月31日現在2,000億円のコマーシャル・ペーパー発行枠に加え、予備的借入枠として円建て及び米ドル建てコミットメントライン(借入枠)を有しているほか、キャッシュマネージメントシステム等を活用しグループ内金融による資金効率向上にも取組んでいます。 なお、当社は国内2社、海外1社の格付機関から格付を取得しています。2025年3月31日現在の負債格付(長期)は、日本格付研究所(JCR):「AA-」、格付投資情報センター(R&I):「A+」、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:「Baa3」となっています。 (4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して作成されています。その作成にあたっては経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。経営者は、これらの見積りについて過去の実績等を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は、これらの見積りと異なる場合があります。 当社は、特に以下の重要な会計方針が、当社の連結財務諸表の作成における重要な見積りの判断に影響を及ぼすと考えています。 ① 収益の認識 当社グループの収益の認識は、主に一定の期間にわたり充足される履行義務として、航海期間及び輸送期間における日数等に基づき進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識しています。 ② 貸倒引当金 当社グループは、売上債権等の貸倒損失に備えて回収不能となる見積額を貸倒引当金として計上しています。将来、債務者の財政状況の悪化等の事情によってその支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上又は貸倒損失が発生する可能性があります。 ③ 投資の評価について 当社グループは、金融機関や取引先等の株式を保有しています。これらの株式は、市場価格が存在する株式等に関して原則として市場価格にて評価を行い、市場価格の存在しない株式等に関しては投資先の財政状態等を勘案し、価値の下落が一時的でないと判断する場合には減損処理を行います。 ④ 減価償却資産の償却 当社グループは、有形及び無形の減価償却資産を保有しています。これらの減価償却資産は、合理的と判断される償却方法及び償却期間で償却されていますが、実際の資産価値の減価は会計上の減価償却による貸借対照表価額の減少とは異なる場合があります。 ⑤ 退職給付 従業員の退職給付債務及び費用は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社グループは毎年数理計算の基礎となる前提条件を見直しており、必要に応じて、その時々の市場環境等をもとに調整を行っています。実際の結果が前提条件と異なる場合、又は前提条件が変更された場合、退職給付債務及び費用に影響を及ぼす可能性があります。 ⑥ 繰延税金資産 当社グループは、繰延税金資産の回収可能性を評価するに際して、将来の課税所得を合理的に見積っています。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存しますので、その見積額が減少し繰延税金資産の一部又は全部を将来実現できないと判断した場合、あるいは税率変動等を含む各国税制の変更等があった場合、その判断を行った期間に繰延税金資産が減額され税金費用が計上されます。 ⑦ 固定資産の減損 当社グループは、原則として事業用資産においては投資の意思決定を行う事業ごとにグルーピングを行い、賃貸不動産、売却予定資産及び遊休資産等においては個別物件ごとにグルーピングを行っています。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回った場合は、帳簿価額を回収可能価額まで減額しています。なお、資産グループの回収可能価額は正味売却価額と使用価値のいずれか高い価額としています。正味売却価額は第三者により合理的に算定された評価額等により、使用価値は将来キャッシュ・フローに基づき算定しています。 (5)今後の見通し<定期船事業> コンテナ船部門:紅海情勢に起因する喜望峰ルートの利用が継続することを想定していますが、引き続き新造船の竣工が予想され、船腹需給の軟化を見込んでいます。 <航空運送事業> 2025年5月19日の適時開示のとおり、日本貨物航空株式会社とANAホールディングス株式会社との株式交換の実行時期を2025年7月1日と予定しています。2026年3月期第1四半期連結会計期間の実績および今後の業績予想につきましては、同株式交換の実行時期をふまえ適切に開示する予定です。 <物流事業> 航空貨物取扱事業・海上貨物取扱事業:取扱量は当連結会計年度比で増加するものの、運賃の低下により利益水準は低下することを見込んでいます。  ロジスティクス事業:北米や東南アジアを中心に堅調な需要を見込んでいます。一方で、当連結会計年度に引き続き成長投資に伴う一時的な費用が発生することを想定しています。 <自動車事業> 新造船の竣工が継続する中で、現在の非常に引き締まった船腹需給が若干軟化することを見込んでいます。 <ドライバルク事業> 全船型について、船腹需給の環境は大きく変わらず、市況は概ね当連結会計年度と同水準となることを見込んでいます。 <エネルギー事業> VLCC:新造船の竣工量が限定的であることを想定し、市況は当連結会計年度の水準を若干上回ることを見込んでいます。  VLGC:堅調な北米での生産や極東地域での需要はあるものの、先行きの不透明感から市況は当連結会計年度の水準を下回ることを見込んでいます。  LNG船:中長期契約による安定収益に支えられ、堅調に推移する見通しです。  以上を踏まえ、翌連結会計年度は当連結会計年度比で減収減益を見込んでいます。  なお、各事業において米国をはじめとする各国の関税措置や、米国の新たな海事政策等の外部環境の変化に伴う影響を注視しています。

※本記事は「日本郵船株式会社」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

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連結財務指標と単体財務指標の違いについて

連結財務指標とは

連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。

単体財務指標とは

単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。

本記事での扱い

本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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