会社名 | 日本碍子株式会社 |
業種 | ガラス・土石製品 |
従業員数 | 連19931名 単4876名 |
従業員平均年齢 | 40.5歳 |
従業員平均勤続年数 | 15.2年 |
平均年収 | 8453574円 |
1株当たりの純資産 | 2455.87円 |
1株当たりの純利益(連結) | 185.96円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 60円 |
配当性向 | 51.4% |
株価収益率(PER) | 9.9倍 |
自己資本利益率(ROE)(連結) | 7.8% |
営業活動によるCF | 966億円 |
投資活動によるCF | ▲550億円 |
財務活動によるCF | ▲342億円 |
研究開発費※1 | 9.76億円 |
設備投資額※1 | 15.5億円 |
販売費および一般管理費※1 | 611.1億円 |
株主資本比率※2 | 52.3% |
有利子負債残高(連結)※3 | 2160.26億円 |
経営方針
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。(1)会社の経営の基本方針 当社グループが掲げる「NGKグループ理念」と「NGKグループビジョン Road to 2050」は以下の通りです。 <NGKグループ理念> https://www.ngk.co.jp/info/philosophy/私たちの使命「社会に新しい価値を そして、幸せを」 私たちが目指すもの「人材 挑戦し高めあう」「製品 期待を超えていく」「経営 信頼こそが全ての礎」 <NGKグループビジョン Road to 2050> https://www.ngk.co.jp/info/vision/ 2050年の未来社会を見据え、カーボンニュートラルの実現とデジタル社会への爆発的進化という大きな流れを新たな発展機会と捉え、①ESG経営の推進、②収益力向上、③研究開発への注力、④商品開花への注力、⑤DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進の5つの変革に取り組み“Surprising Ceramics.”をスローガンに当社独自のセラミック技術を活かし、「第三の創業」に向けて事業構成の転換を図ってまいります。 (2)主要な経営指標と資本政策 当社グループは、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、資本効率を重視した経営を推進しております。関連性の高い投下資本利益率(NGK版ROIC)を管理指標に採用し、投下資本の代わりに事業資産(売掛債権、棚卸資産、固定資産)、税引後利益の代わりに事業部門の営業利益を用いることにより、事業部門が自ら目標管理できるようにしております。既存事業の収益力の向上とともに、2030年に新事業化品売上高を1,000億円以上とする「New Value 1000」を目標に掲げ、研究開発とマーケティングに注力することにより売上高成長率の維持・向上を実現し、利益成長を目指します。中長期の観点でROE10%以上の水準を意識し、持続的な企業価値の向上に資するよう事業リスクの変化に適合した資本政策を展開します。株主・投資家との透明で適切なコミュニケーションで資本コストの引き下げに努めると共に、これを上回る収益性確保に向けて事業計画の立案や設備投資の意思決定プロセスを回してまいります。また、配当性向及び純資産配当率等を参照して積極的な株主還元に努めます。これらにより財務健全性との両立を図りつつ、ROEを構成する利益率、資本回転率、財務レバレッジを事業戦略と整合した健全な水準に維持することを目指します。 更に、当社の企業価値向上に資する管理指標として、営業利益にCO2排出コストや労務費、研究開発費、ESG目標達成率を加味したNGK版付加価値(NGK Value-added)を使用しております。環境負荷の低減や人権尊重への取組みなど多岐にわたる社会的責任を果たすとともに、将来の競争力の源泉である人的資本や研究開発への投資を積極的に行いつつ、着実に利益成長を実現できるよう付加価値の拡大に努めてまいります。 (3)中長期的な会社の経営戦略、経営環境及び優先的に対処すべき事業上、財務上の課題 当社グループを取り巻く環境は、各国の保護主義がグローバル経済の緊張を高めているほか、ロシアによるウクライナ侵攻や中東の紛争に関する和平交渉も一進一退の展開が継続しており、先行きの見通しが困難な状況が続いております。一方、中長期の視点では、CO2排出量取引制度が策定されるなど脱炭素に対する社会的な要請が徐々に高まっており、カーボンニュートラルに向けた方向性に変化はありません。また、AI(人工知能)やビッグデータの活用など、情報技術の高度化に対しては、官民ともに大規模なインプットを継続しており加速度的にデジタル社会の発展が進んでおります。 当社グループは社会に新しい価値を提供する企業となることを目指し、NGKグループビジョンにおいて「独自のセラミック技術でカーボンニュートラルとデジタル社会に貢献する」ことをありたい姿として定め、その実現に向けて「5つの変革」を推進しております。2025年1月には事業構成の転換を加速させるべく、当社商号から祖業の「ガイシ(INSULATORS)」の記載を外し、和文と英文の表記を「NGK」に統一することを、2025年6月26日に開催予定の第159期定時株主総会で定款の一部変更が承認されることを条件に取締役会で決議いたしました。当社グループの基幹事業である自動車関連製品についても電動化の進展により中長期的には縮小していくことが見込まれますが、2050年の未来社会に向けて、カーボンニュートラルやデジタルソサエティ関連の製品を拡大させ、事業構成の転換を着実に進めるべく、「ESG経営の推進」と「既存事業の収益力向上と新規事業の創出」を図ってまいります。 当社グループの重点課題に対する取組みは以下の通りです。 ① ESG経営の推進 当社グループは、持続的な成長と将来のありたい姿への変容を推進すべく、ESGを経営の中心に位置づけております。NGKグループ理念「社会に新しい価値を そして、幸せを」に基づき、独自のセラミック技術で新しい価値を提供することで持続可能な社会の実現に貢献し、社会の皆さまからの期待に応え、信頼を得たいと考えています。これをNGKグループのサステナビリティに係わる基本的な考え方とし、NGKグループ理念の実現に向けて、ESG(環境・社会・企業統治)及びSDGs(持続可能な開発目標)を念頭に置きつつ、カーボンニュートラルとデジタル社会の実現に貢献し、持続的な企業価値の向上を目指します。 また、当社グループは海外18カ国で35のグループ会社(うち製造会社18社)がビジネスを展開しており、これらの目標達成と経営の透明性・自律性を高めるべく、グループで働く全員が公正な価値観や国際的な水準の判断基準に従って行動できるよう環境整備を進めております。その一環として、国の内外において、関係法令、国際ルール及びその精神を遵守しつつ、高い倫理観をもって社会的責任を果たすべく、会社の姿勢を示す「NGKグループ企業行動指針」と役員や従業員が従うべき道筋を示した「NGKグループ行動規範」を制定しグループ全体への周知を実施しております。 社長を委員長とするサステナビリティ統括委員会のもと、全てのステークホルダーに信頼されることを目指してESG要素を始めとする当社グループのサステナビリティ課題に取組み、これを取締役会が適切に監督してまいります。 〔環境(E)〕 当社グループは、2050年までにCO2排出量ネットゼロとする目標を掲げ、カーボンニュートラル、循環型社会、自然との共生への寄与を骨子とした「NGKグループ環境ビジョン」を策定し、具体的な行動計画として「カーボンニュートラル戦略ロードマップ」と「第5期環境行動5カ年計画」を定め、その実現を目指しております。5カ年計画の最終年度となる2025年度には目標値であるScope1及びScope2におけるCO2排出量55万トン(2013年度比25%削減)を達成できる見通しであります。マイルストーン(中間目標)とする2030年度の同37万トンの排出量(同50%削減)についても、海外拠点を中心とした使用電力の再生可能エネルギー由来への切り替え、国内外の製造拠点への太陽光発電設備の導入などにより達成を目指します。さらに、目標達成を前倒しで実現すべく、水素やアンモニアなどカーボンニュートラル燃料によるセラミック焼成技術や、ガス分離膜や大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture:直接空気回収)の開発、CO2を再利用するメタネーションの実証試験を進めており、当社グループ内での適用を図るなどカーボンニュートラル関連製品・サービスの開発に取り組んでおります。カーボンニュートラル関連での開発資金については、2024年11月に4年連続となるグリーンボンド(無担保社債)を発行しました。また、バリューチェーンを通じた温室効果ガスの排出削減の取組みも開始しております。2050年までにScope3におけるCO2排出量を90%以上削減(2022年度比)することを目標とし、これを達成するためのステップとして2030年までに25%削減をする計画について認証機関SBT(Science Based Targets)イニシアチブの認証を受けました。 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)に関する情報を当社ウェブサイト等に開示しているとともに、自然との共生への対応については自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のアーリーアダプター(早期採用者)として賛同を表明し、関連情報の開示拡充を進めております。2025年2月には、新たに国際的な非営利団体のCDPより「CDP水セキュリティ」の最高評価であるAリスト企業にも選定されました。 〔社会(S)〕 当社グループは、自社及びサプライチェーンにおける人権を尊重する取組みを展開することで、事業活動が影響を及ぼす全ての人々の人権が侵害されることのない社会づくりに貢献します。国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に基づき、「NGKグループ人権方針」を定めたほか、英国現代奴隷法に関する声明を開示、また「子どもの権利とビジネス原則」を支持し事業活動において子どもの権利を尊重し、子どもの権利の推進に向けた社会貢献活動等に取り組むことを宣言しております。 当社グループは、NGKグループ理念の中で、「挑戦し高めあう人材」を私たちが目指すものの1つと位置づけ、「社会に新しい価値を そして、幸せを」という私たちの使命の実現と、NGKグループビジョンの実現に向けた「5つの変革」に取り組んでおります。これらを成し遂げるためには、人材一人ひとりの活躍が不可欠です。「NGKグループ人的資本経営方針」、「人材育成方針」ならびに「社内環境整備方針」に基づき、採用や育成を通じて5つの変革に取り組む人材の充実を図ること、その人材が持てる力を十分に発揮できる環境を整えることを推進しております。2025年4月には管理職の人事制度を改定し、年齢や在籍年数にとらわれず職務内容に応じた処遇とするなど、多様な人材の活躍と自律的な行動を促進してまいります。また、テレワーク活用といった柔軟な働き方、長時間労働の削減を中心とする社内環境整備などの施策にも引き続き取り組んでまいります。 女性活躍については、新卒採用に占める女性比率の数値目標を設定すると共に、配属先・異動先での職域拡大を図っています。また、育休・産休取得者のキャリア早期再開を促すための早期復職支援制度の導入、育休からの復職者研修の実施、男性育休制度の拡充などの制度面からのアプローチに加えて、仕事と家庭の両立への理解を深めることを目的とした社内講演会を開催するなど、女性が活躍しやすい環境づくりに取り組んでおります。 海外人材については、当社グループは従業員約20,000人のうち、約6割が海外に所在しています。グループ運営において、それぞれの地域の事情、文化、習慣に基づく素早く適切な意思決定を行うためには現地人材の活躍が不可欠と考えており、海外拠点の幹部層も現地化するなど、現地人材の積極的な登用に努めております。 当社は、内閣府、中小企業庁が推進する「パートナーシップ構築宣言」を公表しております。当社グループのサプライチェーンにおいては、サプライチェーンを構成する調達パートナーと公正・公平な取引を行い、共に繁栄を図るため、「門戸開放」「共存共栄」「社会的協調」を調達の基本軸に掲げ、地球環境の保全、人権尊重、労働環境などに配慮した「NGKグループ調達方針」を定めております。またサプライチェーン全体で持続可能な調達を実現すべく「NGKグループサプライヤー行動規範」を策定し、取引先企業への訪問や実態調査アンケート等を通して、サステナブル調達へのリスク・CSR詳細評価を行っております。 〔ガバナンス(G)〕 コーポレートガバナンスについては、取締役会の更なる機能発揮の観点から、会社の持続的成長と中長期的な企業価値の向上に資する独立社外取締役を選任し、その数を全取締役の3分の1以上としております。また、経営の透明性を確保し取締役会の監督・監視機能を強化するため、独立社外取締役を過半数として構成する指名・報酬諮問委員会で役員の人事及び報酬決定等に係る公正性の確保及び透明性の向上を図ると共に、社外役員を主要な構成員とし役員等が関与する不正及び法令違反等への対応を取り扱う経営倫理委員会を設置し、取締役会への答申又は報告、勧告等を行うこととしております。役員等が関与する不正・法令違反に歯止めをかける仕組みとして、従業員からの相談・報告を受けるヘルプライン制度とは別に、社外弁護士を通じて経営倫理委員会に直接報告するホットライン制度を設置し、経営陣から独立した通報体制を設けるなど、コンプライアンス体制の充実を図っております。 また、当社グループで働く全ての人が倫理観を持って正しい事業活動を行うための道しるべとして「NGKグループ企業行動指針」及び「NGKグループ行動規範」の周知徹底に取り組んでおります。さらに様々な領域で取り組むコンプライアンス活動を国際的な水準に照らして評価検証し、共通の理解と価値観に基づき継続的に改善する仕組み作りを行うため、「コンプライアンス活動基本要領」を制定しております。 当社は、競争法及び海外腐敗行為防止法をはじめとする国内外の法令遵守のために、経営トップによる継続的なメッセージ発信、国内外グループ会社の役員・従業員向けのコンプライアンス教育、国際的基準に則った競争法遵守プログラムの運用、及び「競争法遵守ハンドブック」の活用促進を行っております。2024年4月には「NGKグループ腐敗防止方針」を新たに策定し、全ての事業活動において腐敗防止への取り組みを一層強化しました。 品質コンプライアンスについては、品質委員会での経営トップによる直接指導などの仕組みを備えると共に、経営層と従業員との対話の促進や教育の徹底、現場にムリ、ムダを生じさせない仕組みへの見直しなどにより、組織風土と業務の改善に取り組んでおります。また、従業員等の労働安全衛生面では、リスクアセスメントの推進による重大災害のリスク特定と未然防止対策の強化に加え、グループ全体の現場マネジメント力の強化を図り、業務災害の低減に取り組んでまいります。 リスクマネジメントについては、経営レベルの視点から重要と考えるリスクを外部環境、戦略、オペレーションに分類し継続的に見直しを行っております。当社グループのサステナビリティ課題を含む個別のリスク事項については、各種の委員会を設置してリスク管理を行っておりますが、国内外の環境変化が加速する中、部門を横断し全社視点で取締役会につながる統合的なリスク管理の仕組みを構築するため、2023年度より社長直轄の統括委員会として「リスク統括委員会」を設置し、重点フォローリスクについて取締役会の決議を経て対応策を検討しております。 ② 既存事業の収益力向上と新規事業の創出 当社グループは、全社の視点から企業価値を高めるために事業ポートフォリオ方針を定め、NGK版ROICを用いた収益性と、売上高成長率を用いた成長性の二軸で精査しております。コア事業や今後の成長が期待される事業群への経営資源の投入を検討するほか、低成長・低収益に区分される事業については、今後の事業継続の判断において単年度及び中期的な経営計画に基づく計数面での評価に加えて、長期的な視点での成長可能性、収益性等を個別に社内の戦略会議等で議論し、経営に関する重要な事項として取締役会が監督いたします。また、設備投資の意思決定にあたっては、個別の投資の回収期間のほか、NGK版ROICやインターナルカーボンプライシング(ICP)を用いたESG視点での価値評価も考慮し判断してまいります。さらに持続的な利益成長と将来の企業価値の源泉となる人的資本や知的資本への投資を両立させ、同時に環境負荷の低減や人権尊重への取組みなどサステナビリティに関する取組みも総合的に評価するため、管理指標として営業利益にCO2排出コストや労務費、研究開発費、ESG目標達成率を加味したNGK版付加価値(NGK Value-added)を導入しております。短期の収益性や中長期の成長性、超長期の社会性をバランス良く高めていくことにより財務価値と財務諸表に表れない非財務価値の両面から企業価値向上につなげてまいります。 各事業の収益性改善に向けて、世界的なインフレに伴う費用増を適切に価格に転嫁していくほか、収益力をさらに高めるべく「モノづくり∞(チェーン)革新」を進めております。モノづくりチェーンにおける理想と現状のギャップを埋める「生産革新活動」、工場単位のロス削減により製造原価を改善する「原価低減活動」を柱とし、デジタル技術の活用によりモノづくりシステムの高度化とグローバル連携を進め、原燃料費などの高騰や需要変動に対して、更なる原価低減とリードタイムの短縮、在庫の削減に取り組むことで、収益力強化につなげてまいります。 DX推進については、NGKグループデジタルビジョンのもと、グループ全体で加速させてまいります。モノづくり領域に加え、開発とマーケティング領域では、新規材料の開発リードタイムを短縮するマテリアルズ・インフォマティクスや特許戦略へのIPランドスケープの活用、当社の要素技術(シーズ)と社会課題(ニーズ)を高精度に掛け合わせる独自AIによる新規用途探索の加速等による価値の創造を進めるとともに、本社や間接部門を含めた全社では、社内情報を学習した自社専用の対話型AIを構築しクラウド環境で運用する生成AIと併用することで業務効率化を後押しし、固定費の削減やデータに基づく業務履行と意思決定へと変革を推進します。 事業構成の転換には新規事業の創出が不可欠であり、その重要指標として、2030年に新事業化品売上高を1,000億円以上とする「New Value 1000」を掲げております。マーケティング機能を主体としたNV推進本部、セラミック材料技術や要素技術など当社独自の差異化技術を有する研究開発本部、生産技術・エンジニアリングなどの製造技術本部の3本部が各事業本部との連携を強め「研究開発」から「商品開花」へのスピードを高めてまいります。研究開発に関しては、「NGKグループビジョン」において2021年から10年間で3,000億円、うち8割をカーボンニュートラルとデジタル社会関連に配分し、社会課題の解決に資する将来の有望なテーマに対して重点的に経営資源を投じることとしており、2025年度は過去最高を上回る360億円を投入する計画をしております。また、開発スピードを上げつつこれまで以上の差異化技術を作るべく、早い段階から製造技術本部を巻き込んだコンカレント開発に取り組むほか、当社事業や技術とのシナジーが期待される企業のM&A、ベンチャーキャピタルやスタートアップ企業への出資など外部とのアライアンスを活用した新製品・新規事業の創出も積極的に推進し、事業構成の転換を図ってまいります。2025年2月には、ドイツDeutsche KNM GmbH社の株式取得について合意をいたしました。同社傘下のBorsig GmbHグループが持つエンジニアリングや膜装置に関する知見と当社のセラミック技術を融合し競争力を強化してまいります。 セグメント別の重点課題は以下の通りです。 〔エンバイロメント事業〕 米国の関税措置により自動車販売へのマイナス影響が予想されますが、各国の排ガス規制強化等を背景とする当社製品の需要増を取り込み、生産性の改善やグローバル生産体制の最適化により利益の最大化を目指します。電気自動車の伸び率は低下しておりますが、将来的には内燃機関ビジネスは漸減する予測のもと、短期的には欧州をはじめとする更なる規制強化に対応すべく、新製品のガソリンセンサーの量産準備を整えることに加え、CO2センサー等の開発を進め既存の市場の枠組みを越えた潜在的な需要獲得も目指します。中長期の需要縮小局面を見据えて価格の見直しを継続し適正な収益水準の維持、向上を進めてまいります。一方、世界的に拡大が期待されるカーボンニュートラル関連市場に対しては、大気中のCO2を直接回収するDAC(Direct Air Capture:直接空気回収)や、CO2、窒素、水素など分子レベルで分離するサブナノセラミック膜など、社会の環境ニーズに貢献できる製品や設備の早期事業化に向けた取組みに注力いたします。広義に環境関連を包含する事業として、高付加価値品の投入、技術イノベーションで貢献してまいります。 〔デジタルソサエティ事業〕 NGKグループビジョンで掲げたデジタル社会関連の事業領域に関しては、世界経済は減速感が見られるものの、AIやビッグデータの活用については着実に拡大が進んでおります。市況の減速により採算が悪化しているセラミックパッケージや絶縁放熱回路基板については、事業戦略の見直しを進め競争力と収益性を高めてまいります。一方、中長期ではIoTの進展や通信の高度化などにより、半導体関連や電子部品関連の継続的な高機能化及び市場拡大が期待されています。半導体製造装置用製品や電子部品関連については、次世代製品の開発や顧客開拓を進めるほか、中長期を見据えた設備投資を進め、拡大する需要に対応してまいります。通信分野の更なる発展に対応した次世代複合ウエハーや半導体の高機能化に貢献するハイセラムキャリアなどの新製品を軌道に乗せ、デジタル社会に貢献する製品群の拡大を目指します。 〔エネルギー&インダストリー事業〕 脱炭素の流れが継続する中、中長期的に蓄電池の果たす役割が増していくことが想定されます。一方、足下では欧州における景気停滞もありクリーンエネルギーへの転換の流れが鈍化し、需要の拡大を見込んでいたエナジーストレージ事業のNASR電池は、当面厳しい事業環境に置かれる見通しです。工場の生産工程を一部停止する対応をとっており赤字が継続する見通しですが、NASR電池の大容量、長寿命、長時間充放電等の特性を生かした市場は将来的に需要が拡大すると予測しており、協業するBASF社との体制強化を進め収益化を図り、社会課題の解決に寄与してまいります。また、NASR電池を活用し、エネルギーリソースをIoT技術で統合制御し電力の需給バランスを調整するVPPサービスを開始するなど、従来の「モノ売り」に加え、サービスや価値を提供する「コト売り」を新事業領域として注力してまいります。がいしは、足下ではデータセンターの増設等により国内外の電力関連設備投資が安定的に実施されており、縮小した事業体制の中で最大限のリターンを得るべく効率的に運営してまいります。 当社グループは、こうした取組みを通じて経営基盤の更なる強化に努め、資本効率重視、株主重視の経営を継続すると共に、持続的な成長と企業価値の向上を通して将来のありたい姿の実現を目指してまいります。 |
経営者による財政状態の説明
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 (1)経営成績 当連結会計年度におけるわが国経済は、堅調な企業業績が個人所得を改善し消費を喚起する好循環が続きました。米国経済は雇用情勢が底堅く、安定した推移となりました。一方、中国では不動産不況の長期化や厳しい雇用情勢を背景として景気の停滞が継続しました。欧州経済については持ち直し基調にあるものの、製造業では中国景気低迷の影響を受け回復に遅れが生じております。先行きにつきましては、各国の保護主義がグローバル経済の緊張を高めているほか、ロシアによるウクライナ侵攻や中東の紛争に関する和平交渉も一進一退の展開が継続しており、先行きの見通しは不透明な状況が続いております。 このような状況のもと、当社グループにおきましては、エンバイロメント事業では、グローバルの電気自動車(EV)化がやや鈍化したものの、中国市場や東南アジア市場、欧州市場で自動車需要が弱含んだことから、自動車関連製品の出荷も減少しました。デジタルソサエティ事業では、AI(人工知能)用途の半導体需要増加や旺盛なデータセンター投資を背景に半導体製造装置用製品やハードディスクドライブ(HDD)用圧電マイクロアクチュエーター等の出荷が増加しました。エネルギー&インダストリー事業では、国内外の送配電投資が活況でがいしの出荷が増加しました。 これらの結果、当連結会計年度における売上高は、自動車関連製品などの物量が減少したものの、半導体製造装置用製品などの物量増加や為替円安によるプラス効果から前期比7.0%増の6,195億13百万円となりました。利益面では、営業利益は売上増や円安等により同22.4%増の812億41百万円となりました。経常利益は同24.1%増の782億49百万円、親会社株主に帰属する当期純利益については、同35.4%増の549億33百万円となりました。 当社グループは、自己資本利益率(ROE)を主要な経営指標とし、資本効率を重視した経営を推進しております。関連性の高い投下資本利益率(NGK版ROIC)を管理指標に採用し、投下資本の代わりに事業資産(売掛債権、棚卸資産、固定資産)、税引後利益の代わりに事業部門の営業利益を用いることにより、事業部門が自ら目標管理できるようにしております。中長期の観点でROE10%以上の水準を意識し、持続的な企業価値の向上に資するよう事業リスクの変化に適合した資本政策を展開します。 当連結会計年度におけるROEは、親会社株主に帰属する当期純利益が増加したこと等から7.8%(前年同期比1.7ポイント改善)となり、目標である10%以上の水準を下回りましたが、今後は資本効率の向上等を通して、ROEの改善・向上に努めてまいります。 セグメントの業績は次の通りであります。〔エンバイロメント事業〕 当事業の売上高は、3,907億98百万円と前期とほぼ同水準で推移いたしました。 為替円安のプラス効果があったものの、中国や東南アジア、欧州における自動車販売が減速し、需要が弱含んだことから微減収となりました。 営業利益は、コストダウンや売価改善の効果も加わり前期比5.7%増の682億54百万円となりました。 〔デジタルソサエティ事業〕 当事業の売上高は、1,715億91百万円と前期に比して24.2%増加いたしました。 市況の弱含みにより水晶デバイス向けセラミックパッケージやパワー半導体モジュール向け絶縁放熱回路基板では需要が想定を下回ったものの、AI用途の半導体需要増加や旺盛なデータセンター投資等に伴い、半導体製造装置用製品やハードディスクドライブ(HDD)用圧電マイクロアクチュエーター等の出荷が増加したと共に、為替円安のプラス影響も加わり増収となりました。 営業利益は、出荷物量の増加に加え、為替円安のプラス効果が加わり前期比652.5%増の171億91百万円となりました。 〔エネルギー&インダストリー事業〕 当事業の売上高は、583億68百万円と前期に比して14.9%増加いたしました。 国内外の送配電網強化に伴いがいしの需要が増加したことに加え、電力貯蔵用NASR電池(ナトリウム/硫黄電池)も海外案件の出荷により売上が増加し、全体でも増収となりました。 営業損益は、がいしの需要増の一方でNASR電池は見込んでいた海外案件の消失により工場の一部工程を停止し、保有する棚卸資産で評価減を計上したことから損失が拡大し、41億96百万円の営業損失となりました。 なお、当連結会計年度より、「エネルギー&インダストリー事業」に含まれていた産業機器関連製品を、「エンバイロメント事業」へ報告セグメントの変更をしており、各セグメントの前期比につきましては、前期の数値を変更後のセグメントに組み替えた上で算出しております。 生産、受注及び販売の実績は、次の通りであります。①生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)前年同期比(%)エンバイロメント事業(百万円)385,56995.8デジタルソサエティ事業(百万円)178,043125.4エネルギー&インダストリー事業(百万円)62,582111.2合計(百万円)626,194104.2(注)1.購入品仕入実績については区分して記載することが困難なため、生産実績に含めて記載しております。2.上記は、販売価格をもって表示しております。3.セグメント間取引については、相殺消去しております。 ②受注実績当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。セグメントの名称受注高(百万円)前年同期比(%)受注残高(百万円)前年同期比(%)エンバイロメント事業383,76693.729,63581.5デジタルソサエティ事業189,557232.7128,035137.4エネルギー&インダストリー事業54,709110.140,804109.4合計628,033116.2198,475119.0(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。 ③販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。セグメントの名称当連結会計年度(自 2024年4月1日至 2025年3月31日)前年同期比(%)エンバイロメント事業(百万円)390,37199.9デジタルソサエティ事業(百万円)171,587124.2エネルギー&インダストリー事業(百万円)57,553115.1合計(百万円)619,513107.0(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。 (2)財政状態 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比し1.4%増加し1兆1,429億86百万円となりました。 流動資産は、有価証券や現金及び預金などが増加したことから、前期比4.2%増の6,688億74百万円となりました。固定資産は、前期比2.3%減の4,741億12百万円となりました。 流動負債は、1年内返済予定の長期借入金などが減少した一方で、短期借入金などが増加したことなどから、前期比1.8%増の1,789億12百万円となりました。固定負債は、社債が増加した一方、長期借入金などが減少したことにより、4.8%減の2,365億67百万円となりました。 純資産は、自己株式が減少したほか、利益剰余金などが増加したことなどから、前期比3.5%増の7,275億6百万円となりました。 これらの結果、当連結会計年度末における自己資本比率は63.0%(前連結会計年度末61.7%)となり、1株当たり純資産は2,455.87円と、前期を121.66円上回りました。 セグメントごとの資産は、次の通りであります。〔エンバイロメント事業〕 当事業の総資産は、売上債権や有形固定資産が減少したことなどにより前期比4.1%減少の5,159億7百万円となりました。 〔デジタルソサエティ事業〕 当事業の総資産は、売上債権や棚卸資産が増加したことなどにより前期比3.3%増加の2,163億66百万円となりました。 〔エネルギー&インダストリー事業〕 当事業の総資産は、棚卸資産や売上債権が増加したことなどにより前期比19.3%増加の838億60百万円となりました。 (3)キャッシュ・フロー 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動による966億58百万円の収入、投資活動による550億81百万円の支出、及び財務活動による342億19百万円の支出などにより、前期末に比し62億76百万円増加し、当期末残高は1,777億8百万円となりました。 〔営業活動によるキャッシュ・フロー〕 当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権が増加しましたが、税金等調整前当期純利益724億56百万円に減価償却費を加え、合計では966億58百万円の収入となりました。前期との比較では、25億1百万円の収入減となりました。 〔投資活動によるキャッシュ・フロー〕 当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、自動車関連製品や半導体製造装置用製品を中心とした設備投資に加え、有価証券の取得による支出もあり、合計で550億81百万円の支出となりました。前期との比較では、135億12百万円の支出減となりました。 〔財務活動によるキャッシュ・フロー〕 当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、将来の設備投資やカーボンニュートラルへの取組みなどへ充当するため長期借入れ及び社債の発行を実施した一方、長期借入金の返済や配当金の支払い、自己株式の取得などによる支出から、合計で342億19百万円の支出となりました。前期との比較では、19億3百万円の支出減となりました。 資本の財源及び資金の流動性について、当社グループの運転資金需要のうち主なものは原材料の購入費用、労務費等の製造費や販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資等によるものであります。当社グループは、事業運営上必要な資金の調達について、調達手段の多様化を図ることで、低コストかつ安定的に資金を確保するよう努めております。また、グループ各社における余剰資金の一元管理を図り、資金効率の向上と金融費用の削減を目的として、国内外でCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入しております。 (4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][注記事項](重要な会計上の見積り)」に記載しております。 |
※本記事は「日本碍子株式会社」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
連結財務指標と単体財務指標の違いについて
連結財務指標とは
連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。
単体財務指標とは
単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。
本記事での扱い
本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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