会社名 | 出光興産株式会社 |
業種 | 石油・石炭製品 |
従業員数 | 連13991名 単4985名 |
従業員平均年齢 | 42歳 |
従業員平均勤続年数 | 18年 |
平均年収 | 9800598円 |
1株当たりの純資産 | 1305.18円 |
1株当たりの純利益 | 161.32円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 32円 |
配当性向 | 40.4% |
株価収益率(PER) | 6.5倍 |
自己資本利益率(ROE) | 13.4% |
営業活動によるCF | 3773億円 |
投資活動によるCF | ▲658億円 |
財務活動によるCF | ▲2805億円 |
研究開発費※1 | 130億円 |
設備投資額※1 | 56.64億円 |
販売費および一般管理費※1 | 5008.04億円 |
株主資本比率※2 | 26.9% |
有利子負債残高(連結)※3 | 12884.42億円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】(1)2050年ビジョン当社は、2050年カーボンニュートラル・循環型社会の実現に向けて、2022年11月に2050年ビジョン「変革をカタチに」を策定しました。「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」の3つの事業領域で変革を具現化していくことで、人びとの暮らしを支える責任と未来の地球環境を守る責任を果たしていきます。 (2)2030年ビジョン 2030年ビジョン「責任ある変革者」の実現に向けて、事業構造改革投資と人的資本投資の両輪により事業ポートフォリオの転換を進めます。また、カーボンニュートラルの実現に向けては、非連続的な技術革新が必要となる一方で、エネルギーと素材の供給においては、人々の暮らしや産業を支える不可欠なものとして、連続性を伴ったトランジションが必要となります。そこで2030年ビジョン「責任ある変革者」として進める打ち手を、2040年、2050年と着実に具現化・社会実装を進めることで、2050年ビジョン「変革をカタチに」の実現を目指します。 (3)中期経営計画(2023~2025年度)の取組み当社は2022年11月の中期経営計画公表以降、資本市場をはじめとしたステークホルダーとの対話を重ね、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応への観点も踏まえて、取締役会等において継続的に議論を行ってまいりました。中期経営計画初年度である2023年度においては、収支および財務状況の改善が想定を上回る進捗であったことから、2025年度のROE(8%→10%以上)およびROIC(5%→7%)目標の上方修正を行い、あわせて達成に向けた道筋を明確化しました。株主還元方針についても、3ヵ年累計の在庫影響除き当期利益に対し総還元性向50%以上の株主還元を行う方針は維持しつつ、1株当たり配当金を「24円」から「32円」へ引き上げるとともに、下限配当を「32円」に設定したことに加え、株価水準を意識した機動的な自己株式取得を実施することについて公表しました。既存事業における資本効率の更なる向上、キャッシュアロケーションの再構築の両取り組みを通じ、2025年度目標および早期のPBR1.0倍の達成を目指します。 2025年度の経営目標の見直しと達成に向けた道筋 *1 大きな外部環境影響を除いて比較する為、燃料油セグメントのタイムラグ影響、資源セグメントの石炭価格(実績を25年度計画前提120$/tへ)等を補正した数値*2 2022年11月中期経営計画公表時の当初目標8% ①既存事業における資本効率の更なる向上資本効率の更なる向上により、2025年度ROIC目標7%(既存事業)、及び営業利益+持分法投資損益2,300億円へ上方修正しました。各セグメントの課題に対する具体的な取り組みを強力に推進することにより、2025年度目標を達成します。 (燃料油+基礎化学品セグメント)西部石油の精製機能停止などを通じた投下資本の圧縮を進める一方、成長余地の高いバイオ系燃料等の海外事業拡大、NSRPの収益改善(2025年度黒字化へ)、富士石油との資本業務提携を軸とした既存燃料油事業のシナジー創出、国内外マージンの改善等を推進します。 (高機能材セグメント)機能化学品の事業見直しによる不採算事業からの撤退に加え、潤滑油事業、電子材料事業等での収益改善とM&Aを含む戦略投資を推進します。 (電力・再生可能エネルギーセグメント)BOT(Build Operate and Transfer)事業、海外ガス火力事業の戦略再構築やソーラーフロンティアの収益改善(2025年度黒字化へ)等の構造改革を推進します。 (資源セグメント)石炭関連の権益集約による投下資本を圧縮する一方、安定供給の継続を通じて高い資本収益性を確保しつつ、リチウム、バナジウムなどの権益の取得により、既存アセットを活かしたポートフォリオ転換を推進します。 (共通)全社、組織横断でのDXの推進、調達機能集約化による生産性向上やコスト低減を通じ、各セグメントの資本収益性の改善を更に後押していきます。*1 既存事業計にはコーポレート費用等を含む*2 ROIC値の分子はNOPATを用いて算出*3 投下資本のうち、土地は時価評価で算出、燃料油の備蓄借入は実質的な負担が生じない為除外 ②キャッシュアロケーションの再構成ア.「CNに資する新規事業」16PJのスクリーニング結果中期経営計画で掲げた16の新規事業プロジェクトについて、市場の蓋然性、当社既存アセットの活用度、有力事業パートナーの有無、当社の技術優位性などの基準をもとに投資スクリーニングを行い、2050年のカーボンニュートラルに向け取り組むべき投資として以下重点4事業を設定しました。2030年までの早期実装、2030年代以降の収益化に向け、Key Success Factorを設定して取り組みを推進します。 *企業名は敬称略 イ.投資配分(2023~2030年度)投資スクリーニングや本中計期間中のキャッシュ・フロー増分を踏まえ、2023~2030年度の戦略投資を、時間軸をもとに整理しました。2030年までのキャッシュ・フローおよびROIC向上に資する投資(成長投資:既存戦略投資、及び主に多様な省資源・資源循環ソリューション、スマートよろずや関連投資)による既存事業の収益力強化を通じて、ROIC/ROE目標を達成するとともに、2050年カーボンニュートラルに向け取り組むべき投資(CN投資:主に一歩先のエネルギー関連投資)を約8,000億円計画し、GHG削減や事業ポートフォリオ転換を着実に進めます。 ウ.株主還元方針と自己資本の適正化(2023~2025年度)中期経営計画初年度である2023年度の順調な滑り出しを踏まえて2023~2025年度の利益、及びキャッシュ・フローを見直した結果、いずれも中期経営計画を大きく上回る見込みであり、財務体質の改善が大きく進んだことなどから、株主還元方針に加えて、自己資本の適正化を目的とした1,000億円の追加的な自己株式取得を実施します。 エ.3ヵ年キャッシュ・フロー配分(2023~2025年度)2025年度ROE10%の達成に向けた具体策を踏まえた3ヵ年のキャッシュインは中期経営計画対比2,200億円増加する見込みであり、この増加分は、①戦略投資(CN投資、成長投資)、②株主還元、③財務構成の見直しへ、それぞれ以下の通り充当します。 ③GHG削減目標の達成に向けて2030年度△46%(Scope1+2、2013年度対比)の削減目標に向け、2023年度末時点で必要削減量730万tの約20%に削減の目途が立っており、引き続き目標達成に向け取り組みを加速します。 (主な取り組み)製油所統廃合/稼働減:西部石油精製機能停止、エルモーデュ・アクリル酸装置停止、千葉地区クラッカー停止検討他排出量削減 :事業所、製造設備の省エネ投資、燃料転換の検討他吸収・除去等 :森林投資、苫小牧CCS他 (4)事業上及び財務上の対処すべき課題①セグメント毎の課題当社のセグメント毎の具体的な課題は以下のとおりです。ア.燃料油セグメント(ア)石油精製の最適化とCNXセンター化の取り組み石油精製については、長期的なコスト競争力向上と設備信頼性向上のために、継続的且つ効率的に投資を行っていくとともに、国内の需要動向に合わせた最適な製油所体制を目指します。また、カーボンニュートラルの実現に向けて、製油所・事業所機能を転換していくCNXセンター化を進めています。コンビナートの広大な敷地や大型船が入れる桟橋、タンク群などの既存設備は、バイオマス燃料をはじめ、水素・アンモニアや合成燃料などの製造や貯蔵、使用済みプラスチックのリサイクルなどに活用できるポテンシャルを有しており、各製油所・事業所の特性に合わせた取り組みを検討しています。 (イ)燃料油事業の海外展開アジア・太平洋地域におけるトレーディング事業、ベトナムにおけるニソン製油所の操業とSSの展開、北米における卸事業、豪州における卸小売事業の展開を通じて、海外での燃料油事業を推進していきます。ニソン製油所については、安定操業を継続し、コスト適正化により引き続き収益改善に取り組みます。また、これまで培った知見を活用し、脱炭素関連商材の調達にも取り組みます。 (ウ)特約販売店ネットワークの基盤強化特約販売店のネットワークは、燃料油、ガス等の、地域で必要となるエネルギー供給の担い手です。特約販売店の収益力強化のため、また、地域の抱える課題の解決に貢献するために、今まで培ってきたリテール施策を通じて、コンサルティング、情報処理、商品・サービスの開発・投入を行い、より一層強固な関係を構築していきます。当社の最大の「資産」である特約販売店とのネットワークは、2021年4月より展開を開始したSS新ブランドapollostationを通じて、スマートよろずやを展開し、それぞれのまちの人と豊かなくらしをサポートしていきます。具体的には、「いろんなa!を、このまちに。」の新スローガンのもと、人と「多様なエネルギー」をつなぐエネルギーよろずや、人と「これからの移動」をつなぐモビリティよろずやを柱に、地域の暮らしを支える生活支援基地へと進化していきます。また、デジタル技術(ICT)を活用した出荷予測、SS在庫情報、船舶、ローリー運行状況等の情報をリアルタイム且つ双方向に高度に連携することで、物流システムの最適化、サービスの向上を実現しつつ、物流の需要密度低下と現場人材不足に対応していきます。 イ.基礎化学品セグメント燃料油事業との連携による原料多様化・留分最適化を追求するとともに、保全費や維持更新投資をはじめとしたコスト削減や物流最適化に取り組み、国内事業の収益基盤の安定化を図ります。具体的には2023年に稼働を開始した愛知事業所パラキシレン製造装置の活用により、余剰となるガソリン基材を付加価値の高い化学品に転換するケミカルシフトを継続していくほか、オフサイトファシリティの合理化による輸送効率の向上、DXの導入などによる保安の高度化や保全工事仕様の最適化を進め、設備の信頼性向上とコスト競争力強化の両立に取り組みます。また基幹装置であるエチレン装置については、三井化学㈱との折半出資である千葉ケミカル製造有限責任事業組合における連携を一歩進め、将来的な出光装置停止、三井化学装置への集約を目的とした詳細検討を開始します。余剰能力の削減による生産最適化を進め稼働率の向上を図ることで一層の競争力強化を図ります。2050年カーボンニュートラル実現に向けては、「バイオ化学品の供給」と「ケミカルリサイクルによる資源循環システムの確立」を推進します。バイオ化学品については、海外から調達したバイオナフサを原料とした化学品のマーケティングを強化し需要拡大を図るとともに、SAF事業との連携により、将来的なバイオナフサの自社製造化を進めていきます。ケミカルリサイクルに関しては、使用済みプラスチックを原料に原油代替となる生成油を生産する油化装置を千葉事業所に建設し、2025年度の商業生産開始を目指します。カーボンニュートラル化を推進するにあたっては製油所・事業所の既存設備を活用するだけではなく、グループ企業の㈱プライムポリマー、PSジャパン㈱を含めた化学品のバリューチェーン全体でよりサステナブルな事業へ進化させるべく変革を推進します。 ウ.高機能材セグメント(ア)潤滑油事業お客様が抱えている課題やニーズに沿った商品開発・提案を推進します。特にカーボンニュートラルの取り組み進展により、需要が拡大しているEVに適合する製品や、省エネ・省資源に資する製品の上市、拡販に取り組みます。海外においては出光ブランドモーターオイル「IBMO(Idemitsu Brand Motor Oil※)シリーズ」の展開により、出光ブランドの強化を図り、更なる収益拡大を目指します。※Idemitsu Brand Motor Oil:海外において展開されている出光ブランドのエンジンオイル (イ)機能化学品事業技術・商品の優位性が重要視される分野に経営資源を集約し、成長拡大を図ります。エンプラ・コンパウンド事業に注力、次世代モビリティ、高速通信分野のニーズに対応する開発を加速、また、電動・電化、ICTを成長領域とし、分子設計、配合技術を駆使、機能材料事業の用途開発を推進します。CNXセンター構想と連携、カーボンニュートラルにも取組み、現・中期経営計画で掲げた事業構造改革を着実に実行していくとともに、先進マテリアルカンパニーが目指す3つの成長事業領域での新規事業創出に積極的にも参画・推進していきます。 (ウ)電子材料事業有機ELディスプレイは、スマートフォンやテレビといった既存用途に加え、今後はノートパソコン・タブレット端末・車載(産業用ディスプレイ)への適用拡大が期待されており、有機EL材料市場の成長が見込まれます。そのような需要拡大や韓国及び中国における国産化の流れに対応するため、海外顧客との接合強化による自社材料の採用拡大を目指し、現地の研究開発機能強化を推進します。更に、日本の研究開発機能では将来の技術動向を先取りした差別化技術の開発に取り組みます。また、市場環境の変化に柔軟に対応するため、日本・韓国・中国の3拠点での効率的な経営体制の構築を推進します。 (エ)高機能アスファルト事業2024年度は、国土交通省が打ち出した「防災・減災、国土強靭化のための5か年加速化対策」の4年目であり、継続して国内の道路舗装需要は堅調に推移するものと予測され、インフラ公共資材としての安定供給に努めていきます。高機能アスファルト分野においては、顧客、社会のニーズに基づき舗装の長寿命化やカーボンニュートラルの実現に向けた製品・技術開発を推進するとともに、海外事業においては、マレーシアにおける高機能アスファルトの事業会社を設立し、マレーシア高速道路運営会社等への販売開始し、同国でのインフラ整備に貢献していきます。 (オ)農薬・機能性飼料事業近年、農作物の生産量低下に繋がる、薬剤耐性を獲得した病害虫・雑草の発生が問題となっています。農薬事業では本課題に対し、国内では耐性菌発生事例の無い殺菌剤「ダコニール」の普及推進、海外では難防除雑草に対して優れた除草効果を示す水稲除草剤「ベンゾビシクロン」の普及拡大等に継続的に取り組みます。機能性飼料事業では近年の世界的な気候変動の流れを受け、家畜が排出する温室効果ガスの1種であるメタンガスが問題視されています。本課題に対し、牛の生産性維持及びメタンガスの排出削減効果が期待されるカシューナッツ殻液を含む機能性飼料の国内外での販売推進に継続的に取り組みます。 (カ)全固体リチウムイオン二次電池(全固体電池)向け固体電解質全固体電池は、主にEVの航続距離拡大、充電時間の短縮、安全性向上といった性能ニーズに応える技術として実用化と普及拡大が期待される次世代電池です。当社はそのキーマテリアルである固体電解質を開発しています。量産に向けては、現在稼働中の2つの小型実証設備での実証を足掛かりに、次のステージとなる大型パイロット装置での量産技術の確立※とその先の事業化を目指します。また、材料メーカー、自動車メーカーなどとの協力も進めており、お互いのニーズを把握しながら、それぞれの知見や技術力を活かした迅速な開発を推進します。固体電解質の性能向上及び量産技術開発を加速させ、世の中に広く使っていただける固体電解質と全固体電池の量産実現を目指します。※NEDO「グリーンイノベーション基金事業 次世代蓄電池・次世代モーターの開発」プロジェクトに採択 エ.電力・再生可能エネルギーセグメント国内においては、競争力ある火力電源を始め、風力、太陽光、バイオマスといった多様な再生可能エネルギー電源など、多様なポートフォリオで構成された発電所を活用し、安定的で低炭素社会の実現に貢献する電力供給を行っています。また、太陽光発電事業では、EPC事業を始めとする太陽光発電所の開発、長期安定利用の取り組みに加え、将来的に大量廃棄が見込まれるパネルのリサイクル・リパワリングなど循環型社会への対応も進めており、ライフサイクル全体を通じたソリューションを提供していきます。更に、今後進展する分散型社会に向けて、再生可能エネルギーと蓄電池を組み合わせた需給調整ビジネスにも取り組みます。海外においても脱炭素の潮流は国内と同様であり、北米や東南アジアにおける太陽光発電を中心とした再生可能エネルギー事業を展開しています。加えて、北米におけるガス火力発電事業にも取り組んでいます。 オ.資源セグメントロシア・ウクライナ問題によりエネルギーセキュリティの強化が求められる中で、継続して安定供給を行うために、既存の石油、石炭の資源資産価値の維持・向上とアジア圏でのガス田開発に取り組みます。石炭については、環境負荷低減を図る中で、石炭を代替するためのバイオマス燃料生産に向けて取り組むとともに、オーストラリアでの事業基盤を活用して、レアメタル鉱山事業への参入や鉱山資産を活用した再生可能エネルギー事業に取り組みます。また、地熱開発については、大分県での地熱事業の維持・継続と秋田県での新規発電所建設を着実に行うとともに、新規事業の調査・実証を進めます。 ②財務上の課題2030年に向けた事業構造転換を着実に推進するための適切なキャッシュ・フロー配分を実施するとともに、財務基盤強化と資本効率性のバランスを考慮した財務戦略を進めていきます。なお、今中期経営計画の期間中には、財務構成の見直しとして1,000億円の自己株取得を決定しています。 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要①経営成績の状況ア.一般経済情勢及び当社グループを取り巻く環境当連結会計年度におけるわが国の経済は、新型コロナウィルスからの経済活動の正常化や物価上昇の値上げ浸透などにより企業業績は改善に向かい、多くの企業が昨年に引き続き賃上げを進める中で、日銀がゼロ金利政策の解除に動くなど、デフレ脱却につながる重要な変化が見られました。一方で、経済成長のペースは、インフレによる実質賃金の低迷もあり、緩やかな動きにとどまりました。国内石油製品販売量は、ガソリン等主燃料は2020年以降のコロナ禍における需要減からの回復が一服し、前年度から減少しましたが、ジェット燃料は引き続き前年度を上回って推移しました。原油価格は、ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や米国の利上げ長期化観測の後退などにより、9月までは上昇基調で推移し、以降は米中の経済指標の弱さから景気減速が意識され、OPECプラスによる追加減産が見送られたことなどを背景に下落基調へ転じましたが、年末頃から中東情勢の緊迫化などにより再び上昇しました。この結果、ドバイ原油価格は前期比10.2ドル/バレル下落の82.3ドル/バレルとなりました。円の対米ドルレートは、日米の金融政策の差を背景に円安ドル高が進行し、年明け以降もFRBによる利下げ観測の後退により、日銀のマイナス金利解除後も円安が続きました。その結果、平均レートは前期比9.2円/ドル円安の144.6円/ドルとなりました。 イ.事業構造改革の進捗当社は企業価値の更なる向上、及びPBR1倍超の早期達成に向け、25年度のROE目標を従来の8%から10%以上へ上方修正しました。その達成に向けた事業戦略として「既存事業の更なる収益力向上と資本効率化」及び、「新規事業の拡大による事業ポートフォリオ転換とGHG削減」、また財務戦略として「資本収益性を高める財務戦略の推進」に取り組んでいます。既存のエネルギーと素材の安定供給を果たしながら高い資本収益性を確保しつつ、カーボンニュートラルに向けた社会実装を着実に進め、3つの事業領域(「一歩先のエネルギー」「多様な省資源・資源循環ソリューション」「スマートよろずや」)へポートフォリオを転換することが、2030年ビジョン「責任ある変革者」、2050年ビジョン「変革をカタチに」を実現する道筋と考えています。3つの事業領域における取り組み状況は以下のとおりです。 (一歩先のエネルギー)SAF(Sustainable Aviation Fuel)、アンモニア、CO?の回収・利用・貯留(CCUS)設備、合成燃料などの早期の社会実装を目指し、取り組みを開始しました。SAFについては、当社は2030年に年間50万KLの国内供給体制の構築を目指し、2028年度の供給開始に向け千葉事業所及び徳山事業所における製造装置の建設に向けた検討を進めています。また海外では、豪州Jet Zero Australia社との協業を開始し、SAFのグローバルなサプライチェーン構築に向けた取り組みを進めています。アンモニアについては、サプライチェーン構築に向けて、徳山事業所の既設インフラを活用したアンモニア輸入基地化に向けた検討を進めており、コンビナート各社を含む周辺広域の事業所向けに2030年に100万トン超のアンモニア供給を目指しています。また、2024年2月、当社は三菱商事㈱及びProman社が米国ルイジアナ州レイクチャールズで検討を進めているクリーンアンモニア製造プロジェクトへの参画を決定し、本プロジェクトで生産されるアンモニアを、日本国内へ供給することを構想しています。CCUSについては、北海道苫小牧エリアにおいて、当社、北海道電力㈱、石油資源開発㈱で、3社の事業拠点や強みを活かし、2030年までの事業立ち上げを視野に共同検討を進めています。合成燃料については、南米・北米・豪州などで合成燃料の製造を行うHIF Global社と、戦略的パートナーシップに関する基本合意書を締結しました。国内で回収したCO?の国際輸送と活用、海外における合成燃料生産等の検討を進めています。また、当社グループ製油所・事業所における合成燃料の生産検討を進め、2030年までに国内での生産・供給体制の確立を目指します。これらの早期社会実装に向け、CNX戦略本部を2023年12月付で設置し、社内体制を強化しました。グループ内のタイムリーな情報共有と迅速な意思決定を行い、社内の知見・情報・人財を結集させることで取り組みを更に加速していきます。 (多様な省資源・資源循環ソリューション)2050年カーボンニュートラル実現に向けては、「バイオ化学品の供給」と「ケミカルリサイクルによる資源循環システム確立」の取り組みを推進しました。「バイオ化学品の供給」については、バイオ化学品の認証システムである「ISCC Plus」を、これまでの千葉事業所・徳山事業所に加え、2023年4月にマレーシアのパシルグダン事業所でも取得しました。外部調達したバイオナフサをベースに、マスバランス方式でのバイオ化学品の供給を推進しています。「ケミカルリサイクル」については、2023年4月に、油化ケミカルリサイクル商業生産設備(使用済みプラ処理能力2万t/年、2025年度商業運転開始予定)の投資を正式決定し、環境エネルギー㈱と「ケミカルリサイクル・ジャパン株式会社」を設立しました。幅広い業種の企業から問合せをいただいており、資源循環システムの確立に向け共同で実証実験を進めています。次世代電池向け固体電解質の量産に向けては、2023年夏に小型実証設備 第1プラントの能力増強を決定しました(2024年度完工予定)。また、同時期に第2プラントの新規稼働も開始し、お客様へのサンプル供給及び量産技術の実証を加速しています。更に、2023年10月にはトヨタ自動車㈱との協業を発表しました。2027-2028年の全固体電池実用化をより確実なものとするために、固体電解質の量産技術開発や生産性向上、サプライチェーン構築に両社で取り組みます。両社の技術を融合することで、固体電解質と全固体電池の量産実現を目指します。 (スマートよろずや)当社は、中期経営計画において「スマートよろずや構想」を掲げ、全国に広がるapollostationを重要なインフラ網として維持・活用するため、従来の給油所のみならず、地域の生活支援基地としての役割も担うべく変革を進めています。その一つの類型として、2023年10月より、洗車、カーコーティング、カーシェア、レンタカー、車検、板金、整備、車販売・買取といったニーズに高い専門性をもって対応する新しい業態のサービスステーション(SS)「apolloONE」をスタートしました。地域に根差した特約販売店が運営するSSネットワークのもと、サービスステーションのDXの基点となるスマートフォンアプリDrive Onの施策等もあわせ、お客様のカーライフを豊かにする取り組みを展開していきます。 ウ.業績当社グループの当期の売上高は、原油価格の下落等により、8兆7,192億円(前期比△7.8%)となりました。売上原価は、7兆8,721億円(前期比△9.1%)となり、販売費及び一般管理費は、5,008億円(前期比△2.1%)となりました。営業損益は、資源セグメントにおいて石炭市況の下落等があったものの、燃料油セグメントにおけるタイムラグを主要因とした国内マージン改善や海外トレーディング事業の増益等により、3,463億円(前期比+22.6%)となりました。営業外損益は、持分法投資利益の減少等により、389億円(前期比△0.4%)となりました。その結果、経常損益は3,852億円(前期比+19.8%)となりました。特別損益は、前年度の遊休不動産等の固定資産売却益計上の反動や貸倒引当金繰入額の計上等により、△585億円(前期比△852億円)となりました。法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合わせた税金費用は、999億円(前期比+2.5%)となり、非支配株主に帰属する当期純損失は17億円(前期比△41.6%)となりました。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は2,285億円(前期比△9.9%)となりました。 エ.事業の経過及び成果セグメント別の事業の経過及び成果は以下のとおりです。当社グループの決算期は、一部を除き、海外子会社が12月、国内子会社が3月であるため、当連結会計年度の業績については、海外子会社は2023年1月~12月期、国内子会社は2023年4月~2024年3月期について記載しています。 セグメント別売上高(単位:億円) 前連結会計年度当連結会計年度増減 (2023年3月期)(2024年3月期)増減額増減率燃料油74,03970,808△3,231△4.4%基礎化学品6,6696,016△653△9.8%高機能材5,1105,154+44+0.9%電力・再生可能エネルギー1,9711,415△555△28.2%資源6,7213,705△3,016△44.9%その他・調整額5495+41+77.0%合計94,56387,192△7,371△7.8% セグメント別利益又は損失(△)(単位:億円) 前連結会計年度当連結会計年度増減 (2023年3月期)(2024年3月期)増減額増減率燃料油(在庫評価影響除き)730(173)2,197(1,672)+1,466(+1,499)200.8%(+867.6%)基礎化学品101220+120+119.0%高機能材170276+106+62.6%電力・再生可能エネルギー5△76△81-資源2,3091,169△1,140△49.4%その他125△7△56.3%調整額△242△161+81-合計(在庫評価影響除き)3,084(2,527)3,630(3,106)+546(+579)+17.7%(+22.9%)(注)セグメント別利益又は損失(△)は、セグメント別の営業損益と持分法投資損益の合計額です。 (ア)燃料油セグメント日本のエネルギーセキュリティを支えるという社会的使命の下、国内サプライチェーンの競争力強化に取り組むとともに、持続的成長の実現に向けた海外事業の強化と製油所・事業所のCNXセンター化に向けた取り組みを進めてきました。国内製造供給においては、グループ供給体制の最適化、及びCNXセンター化に向けて2024年3月に山口製油所(西部石油株式会社)の精製機能を停止いたしました。また、富士石油株式会社との間で既存燃料油事業の競争力強化及び将来の脱炭素化を見据えた取り組みについての協業の深化に関する協議を進めています。更に、設備・オペレーションの最適化、AI・IoTなど先進技術の活用による製油所信頼性の向上、物流の効率化に取り組みながら、燃料油の安定供給に努めました。国内販売においては、お客様の利便性向上・ブランド顧客の拡大に向けて、2024年2月よりドコモが提供するポイントサービス「dポイント」を導入しました。また、出光グループの財産であるSSネットワークを活かした事業を維持・拡大するため、2021年11月にリリースしたアプリ「Drive On」を積極展開しています。「Drive On」は、スマートよろずやのベースとなるアイテムであり、ここを起点にカーメンテナンス予約管理システム「PIT in plus」、個人向けカーリース「オートフラット」、「らくらく安心車検」などに繋げていきます。また、2022年11月より決済機能「モバイルDrive Pay」を搭載し、お客様にとって「Drive On」一つで、メンテナンス予約、給油決済、クーポン利用等が可能となりました。2024年3月時点で、「Drive On」は800万ダウンロードまで利用が拡大しています。海外においては、ベトナムのニソン製油所の安定操業に努めるとともに、下期に実施した定期補修工事において生産性向上等の対策を実施しました。また、シンガポール現地法人の出光アジア(IDEMITSU INTERNATIONAL(ASIA) PTE. LTD.)を中心に海外拠点の事業拡充を進め、アジア・環太平洋地域等の成長市場における販売ネットワーク強化に努めました。 以上の結果、原油価格の下落等もあり、燃料油セグメントの売上高は7兆808億円(前期比△4.4%)となりました。セグメント損益は、タイムラグによる国内製品輸出マージン改善や海外トレーディング事業の増益及び自家燃コストの減少等により、2,197億円(前期比+200.8%)となりました。なお、セグメント損益に含まれる在庫評価益は525億円です。 (イ)基礎化学品セグメント競争力強化の一環としてENEOS㈱より譲受した愛知事業所のパラキシレン製造装置は、2022年12月に本格稼働を開始し、余剰ガソリン基材の活用によるケミカルシフトを更に推進しています。また、千葉地区での生産最適化及び化学品原料の低炭素化の推進を目的に、三井化学㈱との間で2027年度を目途としたエチレン装置集約の検討を開始しました。 以上の結果、基礎化学品セグメントの売上高は6,016億円(前期比△9.8%)となりました。セグメント損益は、前年度の定期修繕実施による反動及び愛知事業所のパラキシレン製造装置稼働に伴う生産数量増に加え、製品マージンの改善等により、220億円(前期比+119.0%)となりました。 (ウ)高機能材セグメント(潤滑油事業)物流の2024年問題解決に貢献する、業界初の無リン無灰ディーゼルエンジンオイルを2022年9月に上市しています。本製品はディーゼル車のDPF(排ガスフィルター)トラブルを解決します。既に2024年3月時点で900社以上にご使用いただいており、ドライバー・整備士の方々の労働時間の削減、精神的負担の軽減に貢献しています。また、海外においては出光ブランド製品の拡販をすすめ、収益への貢献を果たしました。 (機能化学品事業)コロナ禍後の経済活動正常化等を受けた原燃料価格高騰に対し、徹底した採算改善活動によって収益力強化に努めました。中国での新増設により中長期的に厳しい市場環境が継続すると予想されるビスフェノールAは、事業からの撤退を決断し、更に筋肉質な体質への変革を進めました。また、機能性に優れる液状ゴム事業を行っている出光クレイバレー㈱を2023年5月に完全子会社化(10月に吸収合併)することで収益力を強化しました。一方、エンプラ・コンパウンド事業では、高付加価値分野での拡販に注力し、マレーシアでSPS2号機が2023年11月から商業運転を開始しました。 (電子材料事業)インフレ継続やコロナによる巣ごもり需要の反動が影響し、ディスプレイ市場は低迷し、材料需要は減少しましたが、材料のコストダウン、高付加価値材料の採用拡大を進めました。 (機能舗装材事業(高機能アスファルト事業))国内において、2022年度と同様にアスファルトの需要は減退傾向でしたが、社会インフラ資材として安定供給に努めるとともに、発注者ニーズに基づく製品開発や、低炭素・カーボンニュートラルに貢献する技術開発を行いました。海外事業においては、マレーシアにおいて高機能アスファルト事業の現地企業との合弁会社を設立しました。 (農薬・機能性飼料事業)㈱エス・ディー・エス バイオテックにおいて国内農薬登録の新規取得を芝生用除草剤で1件実施し、適用拡大を殺菌剤5件、殺虫剤を1件、殺菌・殺虫剤を2件、生物農薬殺虫剤を1件、生物農薬殺菌剤を1件、緑地管理用除草剤を2件実施することで製品の更なる普及拡大を進めて参りました。また、海外事業では水稲除草剤ベンゾビシクロン剤の中国における新規混合剤の上市やベトナムでの単剤の販売を開始しました。 以上の結果、高機能材セグメントの売上高は、5,154億円(前期比+0.9%)となり、セグメント損益は、潤滑油事業における前年度のマイナスのタイムラグ影響の解消や機能化学品事業における不採算事業からの撤退等が寄与し、276億円(前期比+62.6%)となりました。 (エ)電力・再生可能エネルギーセグメント安定的な収益基盤の確立に取り組むとともに、社会の電化・脱炭素ニーズへの対応として、再生可能エネルギー電源の保有促進や、蓄電池の活用等を通じたソリューション事業における実証と展開を進めています。国内においては、宮崎大学におけるPPA契約による太陽光発電システムの稼働が開始するとともに、当社製油所跡地を活用した、系統用蓄電池事業への参入を決定しました。2025年の稼働開始を予定しており、電力系統の需給バランス調整を始め、カーボンニュートラル社会実現に向けた取り組みを強化していきます。海外においては、米国での太陽光発電所の開発・運用等の事業や、経済成長に伴い需要が伸長する東南アジアにおける、需要家施設の屋根上への太陽光発電設備設置に取り組んでいます。また、ソーラーフロンティアにおいては、EPC事業を始めとする太陽光発電所の開発、長期安定利用、並びにリサイクルまでのライフサイクル全体を通じたソリューション提供を行っています。 以上の結果、電力・再生可能エネルギーセグメントの売上高は、1,415億円(前期比△28.2%)となりました。セグメント損益は、ソーラー事業は、構造改革に伴うコスト低減や自家消費型太陽光発電販売の進展により前期比で改善となった一方、電力事業おける販売価格の低下及び装置トラブルに伴う調達の増加等の影響が上回り△76億円(前期比△81億円)となりました。 (オ)資源セグメント(石油・天然ガス開発事業・地熱事業)石油・天然ガス開発事業について、ベトナム南部の海上鉱区プロジェクトでは当社がオペレーターとなって天然ガス開発に取り組み、安定生産を継続しました。欧州では持分法適用会社である㈱INPEXノルウェー及び現地法人を通じて、ノルウェー北部北海地域の既存油田における安定生産、探鉱を行いました。地熱事業においては、既存発電所の安全操業に努めるとともに、秋田県湯沢市小安地域における新規発電所の建設を進め、その他国内での新規案件の調査を進めました。石油・天然ガス開発事業・地熱事業の売上高は383億円(前期比△11.7%)となりました。セグメント損益は、原油価格の下落や操業費用の増加等により、191億円(前期比△41.7%)となりました。 (石炭事業・その他事業)石炭事業では、事業構造改革の一環としてエンシャム鉱山権益を売却しました。競争力の高いボガブライ鉱山からの安定供給を継続していきます。その他事業については、石炭代替のバイオマス燃料であるブラックペレット(商品名:「出光グリーンエナジーペレット?」)の商業プラントをベトナムで竣工するとともに、ボイラー排ガス中のCO?を固定化した合成炭酸カルシウム(炭酸塩)を用いたCO?再資源化(カーボンリサイクル)の事業化検討を進めました。また、石炭鉱山の運営で培った事業基盤を活かし、豪州でリチウム事業を推進するDelta Lithium Limitedへの出資を行うなど、レアメタル鉱山事業への参入を推進するとともに、鉱山資産を活用した再生可能エネルギーやグリーン水素・アンモニアプロジェクトの事業化検討など、カーボンニュートラル・地域貢献に向けた取り組みも進めました。石炭事業・その他事業の売上高は、鉱山規模縮小による生産数量の減少や石炭市況の下落等により、3,321億円(前期比△47.2%)となりました。セグメント損益は978億円(前期比△50.6%)となりました。 以上の結果、資源セグメントの売上高は3,705億円(前期比△44.9%)、セグメント損益は1,169億円(前期比△49.4%)となりました。 (カ)その他セグメントその他セグメントの売上高は、95億円(前期比+77.0%)となり、セグメント損益は5億円(前期比△56.3%)となりました。 (キ)研究開発石油・石油化学の基幹製造拠点である千葉事業所(千葉県市原市)内に、新たな統合研究所「イノベーションセンター(仮称)」(2027年度完工予定)を新設することを決定しました。現在は複数拠点にまたがる生産技術、開発技術等の研究所をイノベーションセンターに集約し、事業を横断した研究開発体制の構築と社外連携の強化を図ることで、研究開発から分析・解析、実証、プロセスエンジニアリング、商業生産までの一気通貫体制の構築と、中期経営計画で掲げる事業構造改革に向けた技術開発の加速を実現します。 ②財政状態の状況要約連結貸借対照表(単位:億円) 前連結会計年度(2023年3月期)当連結会計年度(2024年3月期)増減流動資産27,32129,168+1,848固定資産21,33320,955△378資産合計48,65450,123+1,469流動負債21,64021,925+285固定負債10,72110,073△648負債合計32,36131,998△363純資産合計16,29318,125+1,832負債純資産合計48,65450,123+1,469 ア.資産の部当期末における資産合計は、円安影響などによる棚卸資産の増加や当期末の休日影響による売掛金の増加等により、5兆123億円(前期末比+1,469億円)となりました。 イ.負債の部当期末における負債合計は、円安影響などによる買掛金の増加や当期末の休日影響による未払金の増加があった一方、有利子負債の減少等により、3兆1,998億円(前期末比△363億円)となりました。 ウ.純資産の部当期末の純資産合計は、自己株式の取得や配当金の支払いがあった一方、親会社株主に帰属する当期純利益の計上や円安による為替換算調整勘定の増加等により、1兆8,125億円(前期末比+1,832億円)となりました。 以上の結果、自己資本比率は前期末の33.2%から当期末は35.9%(前期末比2.7ポイント)となりました。また、当期末のネットD/Eレシオは0.7(前期末:0.9)となりました。 ③キャッシュ・フローの状況要約連結キャッシュ・フロー計算書(単位:億円) 前連結会計年度(2023年3月期)当連結会計年度(2024年3月期)営業活動によるキャッシュ・フロー△3283,774投資活動によるキャッシュ・フロー701△658財務活動によるキャッシュ・フロー△904△2,805現金及び現金同等物に係る換算差額17227現金及び現金同等物の増減額(△は減少)△360338現金及び現金同等物の期首残高1,3901,031現金及び現金同等物の期末残高1,0311,369 当期末の現金及び現金同等物は、1,369億円となり、前期末に比べ、338億円増加しました。その主な要因は次のとおりです。 ア.営業活動におけるキャッシュ・フロー税金等調整前当期純利益や減価償却費等の資金増加要因が、円安影響に伴う運転資本の増加等の資金減少要因を上回ったことにより、3,774億円の収入となりました。 イ.投資活動におけるキャッシュ・フロー製油所設備の維持更新投資等による有形固定資産の取得等により、658億円の支出となりました。 ウ.財務活動におけるキャッシュ・フロー自己株式の取得や配当金の支払い、長期借入金の返済等により、2,805億円の支出となりました。 ④生産、受注及び販売の実績ア.生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)燃料油4,000,26990.9基礎化学品523,18189.2高機能材303,72797.8電力・再生可能エネルギー--資源249,71454.8その他--合計5,076,89388.2(注)上記の金額は、資源セグメントは販売金額、その他のセグメントは製品生産額によって記載をしています。 イ.受注実績当社グループでは主要製品について受注生産を行っていません。 ウ.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前年同期比(%)燃料油7,080,75495.6基礎化学品601,57490.2高機能材515,377100.9電力・再生可能エネルギー141,52171.8資源370,45855.1その他9,514177.0合計8,719,20192.2(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。2.「主な相手先別の販売実績」に該当する販売相手先はないため、記載を省略しています。3.各セグメントの販売実績は、外部顧客への売上高を記載しています。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容①経営成績の分析経営成績の分析については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」における「ウ.業績」及び「エ.事業の経過及び成果」に記載しています。 ②資本の財源及び資金の流動性についての分析ア.資金需要当社グループの主な運転資金需要は、製品製造のための原油・原材料の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用及び税金の支払いなどによるものです。設備投資資金については、エネルギー安定供給のための操業維持投資に加え、販売・供給体制の競争力強化を目的とした投資、一歩先のエネルギーや多様な省資源・資源循環ソリューション及びスマートよろずや等の事業ポートフォリオ転換推進投資、石油開発事業等における保有鉱区の開発・安定生産継続に向けた投資等の需要があります。 イ.財務政策当社グループは、中長期的な成長を維持するために資本効率と財務健全性のバランスを勘案しつつ、必要な運転資金及び設備投資資金を、営業活動によるキャッシュ・フロー、金融機関からの借入、社債・コマーシャルペーパーの発行、及び流動性確保のための特定融資枠契約(コミットメントライン契約)の維持等、多様なリソースから効果的に組み合わせて調達しています。なお、国内子会社は、当社が一括して資金調達し、子会社に融通するグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。また、海外子会社は金融機関からの借入れの他、子会社間のグループ金融を通じて運転資金及び設備投資資金を調達しています。また、円滑な資金調達を行うため、当社は格付投資情報センター(R&I)、日本格付研究所(JCR)の2社から格付けを取得しています。当連結会計年度末において当社の格付けはR&IがA(方向性:安定的)、JCRがA+(見通し:安定的)となっています。 (特定融資枠契約)当社グループは、運転資金の効率的な調達や十分な流動性確保、また、災害発生時の円滑な資金調達のため、取引先銀行で作られるシンジケート団と短期借入を実行できる特定融資枠契約2,100億円を締結し、機動的・安定的な資金調達が可能な体制を敷いています。当連結会計年度末において同契約にかかる借入残高はありません。 ③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。④経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標当社グループは、2030年ビジョン「責任ある変革者」の実現に向けて、事業構造改革投資と人的資本投資の両輪により事業ポートフォリオの転換を進めるため、自己資本利益率(ROE)、投下資本利益率(ROIC)、ネットD/Eレシオ、自己資本比率を主要な経営指標としています。中期経営計画(2023~2025年度)の最終年度である2025年度の経営指標目標は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中期経営計画(2023~2025年度)の取組み」に記載のとおり、自己資本利益率(ROE)が10%、実態投下資本利益率(ROIC)が7%(既存事業)です。2024年3月期の自己資本利益率(ROE)が前期対比で減少している主な要因は、特別損失の増加等による親会社株主に帰属する当期純利益の減少、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等に伴う当期末自己資本の増加によるものです。また、同様に実態投下資本利益率(ROIC)の主な増加要因は、燃料油セグメントにおけるタイムラグを主要因とした国内マージンの改善等による在庫影響除き営業利益の増加、借入返済に伴う投下資本の減少によるものです。 当社グループの主要な経営指標のトレンドは次のとおりです。 2020年3月期2021年3月期2022年3月期2023年3月期2024年3月期自己資本利益率(ROE)(%)-2.69.214.211.3投下資本利益率(ROIC)(%)(全社計)-2.86.86.28.4実態投下資本利益率(ROIC)(%)(既存事業計)---3.44.8ネットD/Eレシオ(倍)1.01.00.90.90.7自己資本比率(%)29.629.130.733.235.9(注)1.各指標は、以下の計算式によって計算しています。自己資本利益率(ROE):在庫影響除き親会社株主に帰属する当期純利益/自己資本(期首期末平均)※2024年3月期より算定方法を変更しています。その結果、2021年3月期、2022年3月期及び2023年3月期の指標も変更しています。投下資本利益率(ROIC):(在庫影響除き税後営業利益+持分法投資損益)/(株主資本+有利子負債)※2024年3月期より算定方法を変更しています。その結果、2023年3月期の指標も変更しています。実態投下資本利益率(ROIC):計算式は投下資本利益率(ROIC)と同様。ただし、大きな外部環境影響を除いて比較するため、燃料油セグメントのタイムラグ影響、資源セグメントの石炭価格(実績を2026年3月期計画前提である120USD/tへ)等を補正ネットD/Eレシオ:(有利子負債-現預金及び短期運用有価証券)/(純資産-非支配株主持分)自己資本比率:(純資産-非支配株主持分)/総資産2.有利子負債は、短期借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及び長期借入金として連結貸借対照表に計上されている金額及びリース債務の金額を使用しています。3.2020年3月期の自己資本利益率(ROE)については、親会社株主に帰属する当期純損失を計上しているため記載していません。4.2020年3月期の投下資本利益率(ROIC)、2020年3月期と2021年3月期及び2022年3月期の実態投下資本利益率(ROIC)については、主要な経営指標に含んでいなかったため記載していません。 |
※本記事は「出光興産株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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