会社名 | 本田技研工業株式会社 |
業種 | 輸送用機器 |
従業員数 | 連194993名 単32443名 |
従業員平均年齢 | 44.7歳 |
従業員平均勤続年数 | 21.9年 |
平均年収 | 8311000円 |
1株当たりの純資産 | 671.27円 |
1株当たりの純利益 | 141.32円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 126円 |
配当性向 | 48.1% |
株価収益率(PER) | 13.4倍 |
自己資本利益率(ROE) | 22.2% |
営業活動によるCF | 7472億円 |
投資活動によるCF | ▲8672億円 |
財務活動によるCF | 9186億円 |
研究開発費※1 | 264億円 |
設備投資額※1 | 3155.24億円 |
販売費および一般管理費※1 | 1907.19億円 |
株主資本比率※2 | 63.6% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社、連結子会社および持分法適用会社(以下「当社グループ」という。)が判断したものであり、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もあります。詳細は「3 事業等のリスク」を参照ください。 (1) 経営方針・経営戦略等当社グループは、「人間尊重」と「三つの喜び」(買う喜び、売る喜び、創る喜び)を基本理念としています。「人間尊重」とは、自立した個性を尊重しあい、平等な関係に立ち、信頼し、持てる力を尽くすことで、共に喜びをわかちあうという理念であり、「三つの喜び」とは、この「人間尊重」に基づき、お客様の喜びを源として、企業活動に関わりをもつすべての人々と、共に喜びを実現していくという信念であります。こうした基本理念に基づき、「わたしたちは、地球的視野に立ち、世界中の顧客の満足のために、質の高い商品を適正な価格で供給することに全力を尽くす」という社是を実践し、株主の皆様をはじめとするすべての人々と喜びを分かち合い、企業価値の向上に努めていきます。当社グループは、モビリティカンパニーとして、「環境負荷ゼロ」「絶対安全」という大きな課題に真摯に向き合い、当社グループのめざす未来のモビリティや魅力的なモビリティ社会を、「環境・安全」という社会的価値を携えて実現することで、企業としての新たな成長軌道を描いていきたいと考えています。こうした想いのもと、この大きな変革の時代を「第二の創業期」と位置づけてさまざまな取り組みを進めてきましたが、さらにスピードを上げ、Hondaで働くすべての仲間が共通の目的に向かって一丸となって取り組んでいくためには、「我々がめざす方向」、そして「提供価値」をより明確にしていく必要があると考え、グローバルブランドスローガンである「The Power of Dreams」の再定義を行いました。 <グローバルブランドスローガンの再定義>当社グループがこれからも提供し続けたい価値は、「時間や空間の制約からの解放」と、「人のあらゆる可能性の拡張」です。この2つの価値を徹底的に追求し続けた先に、当社グループが夢見るこれからのモビリティと、魅力的なモビリティ社会があると考え、2つの提供価値を「Transcend」と「Augment」としました。 「Transcend(解放)」モビリティを通じた「時間的制約」と「空間的制約」からの解放という大きな価値の創出をめざしていきます。 「Augment(拡張)」さまざまなモビリティによって、「これまでできなかったことができるようになる」という、「人の可能性を拡張する」ことをめざしていきます。 そして、「これらの提供価値を生み出し、実現していくカギとなるのが一人ひとりの創造力」であり、全社一丸となって高い目標を掲げ、変化を恐れず、新しい価値を生み出していくための「Create(創造)」に取り組んでいきます。 モビリティカンパニーとして「物理的にひとを動かす」「ひとの心を動かす」(How we move you.)ことで、「意志を持って動き出そうとしている世界中のすべての人を支えるパワー」となり、世の中から「存在を期待される企業」であり続けることをめざします。 (2) 経営環境当社グループを取り巻く経営環境は、大きな転換期を迎えています。価値観の多様化や、高齢化の進展、都市化の加速、気候変動の深刻化、さらに電動化、自動運転化、IoTといった技術の進化による産業構造の変化が、グローバルレベルで進んでいます。また、ウクライナおよび中東などにおいて、国際情勢の見通しが不透明な状況が続くなど、地政学的リスクも顕在化しています。さらには、企業活動に関わるすべてのステークホルダーと、長期的な社会課題を解決するための、積極的な関係構築も求められています。将来の成長に向けては、提供価値の質の向上に取り組むことが不可欠です。四輪事業においては、EV(電気自動車)市場に多種多様な製品が投入され、これまでHondaが強みとしてきたエンジン等のデバイス性能による差別化が難しくなっています。今後は、電動化の加速により、バッテリーに用いられるニッケル、リチウム、コバルトの需要が急拡大するとともに、鉱物など原材料の供給不足によるバッテリー価格の高騰が懸念されます。バッテリーをはじめとする部品調達のあらゆるリスクに備え、リサイクルやリユースなどの再資源化やサステナブルマテリアルの活用を推進することで、リソースサーキュレーションの実現をめざしていきます。二輪事業は、若年人口が増加する新興国を中心に、今後も市場の拡大が見込まれます。また、先進国だけでなく新興国でも政府による電動化目標が設定されるなど、環境意識の高まりが顕在化しています。対応策としてモビリティの電動化が期待されていますが、その一方で、新興国の電動車需要は、政府のインセンティブによる影響が大きく、かつ電力の安定供給や充電ネットワークの整備など、インフラ面での課題が残ります。電動車へのシフトは、不透明な要素を踏まえ、ICE(内燃機関)車へのニーズが継続する市場、電動化が進む市場を見極めながらリソースを最適配分し、電動新興メーカーに対しては当社グループの強みを活かし差別化をはかっていきます。パワープロダクツ事業及びその他の事業においては、環境規制の高まりを背景に、小型建機領域やガーデン領域で比較的「小型」で「短時間運転」の商品から電動化が進んでいます。その一方、ICE商品も「高出力・長時間運転」「お求めやすい価格」といった特徴が用途に見合うことから、需要が継続しています。そのため当社グループは電動化に主軸を置きながら、ICE領域についても環境対応を進化させることで、多様化する市場ニーズへ応える必要性を認識しています。 (3) 優先的に対処すべき課題経営環境を踏まえ、持続可能性の観点から網羅的に抽出した社会課題を、当社グループがめざす方向性に照らしあわせ、優先的に対処すべき課題を選定しています。従来より経営の重要テーマとして掲げてきた「環境」と「安全」に加え、当社グループの成長の原動力である「人」と「技術」、またすべての企業活動の総和ともいえる「ブランド」の5つの非財務領域を重要テーマとして選定し、財務戦略と連携させることで社会的価値・経済的価値の創出を実現していきます。 <5つの重要テーマ>① 環境負荷ゼロ社会の実現当社グループは、環境負荷ゼロ社会の実現をめざします。「カーボンニュートラル」「クリーンエネルギー」「リソースサーキュレーション」、この3つを1つのコンセプトにまとめた「Triple Action to ZERO」を中心にして、取り組みます。 1.カーボンニュートラルの取り組み四輪事業は中長期目標として、2030年にはグローバルで年間200万台を超えるEV生産体制を構築し、2040年までにEV・FCEV(燃料電池自動車)販売比率をグローバルで100%とすることをめざしています。この実現に向けて、当社グループは、EVラインナップの拡大、複数のバッテリー調達手法の確立、充電サービスの拡大、ソフトウェア開発の加速、グローバルHondaにおける電動車生産体制の構築に取り組んでいきます。 (EVラインナップの展開)地域投入商品北米・2024年にゼネラルモーターズ(GM)との共同開発モデルである「PROLOGUE」をHondaから、「ZDX」をAcuraからそれぞれ発売・2025年にHonda独自のEV専用プラットフォームをベースとした、新たなE&Eアーキテクチャーを採用した中大型EVを発売予定・「Honda 0シリーズ」の第1弾となるモデルを、2026年より北米市場を皮切りに、グローバル各地域にて発売予定中国・「e:NS2」「e:NP2」を2024年初頭に発売・2024年4月に北京モーターショーで公開した中国における次世代EV「イエ」シリーズから「イエP7」「イエS7」を2024年末以降に発売予定加えて、「イエGT CONCEPT」をベースとした量産モデルを2025年内に発売予定・上記5モデルを含め、2027年までに10機種のEVを投入予定日本・2024年秋に「N-VAN」ベースの軽商用EV「N-VAN e:」を発売予定・2025年に「N-ONE」ベースのEV、2026年にSUVタイプを含む小型EV2機種を発売予定欧州・「e:N」シリーズの欧州市場向けモデルとして「e:Ny1」を2023年秋から欧州各国にて発売 (バッテリー戦略)バッテリーについては、足元から将来まで複数のバッテリー調達手法を準備し、電動化の加速に対応していきます。新たなバリューチェーンを構築するため、北米ではLGエナジーソリューションとの合弁会社で2025年からバッテリーの量産を開始予定です。重要鉱物の調達については、阪和興業㈱やPOSCOホールディングスと、リサイクル観点ではアセンド・エレメンツやサーバ・ソリューションズとパートナーシップを締結しています。2020年代後半からは、液体リチウムイオン電池の進化に加え、半固体電池・全固体電池などの次世代電池を開発・投入していきます。液体リチウムイオン電池の性能進化に向けては、㈱GSユアサと高容量・高出力なEV用液体リチウムイオン電池の開発に着手し、日本国内における電動化の加速に貢献していきます。また、次世代電池の技術進化に向けて、半固体電池については、SES AI コーポレーションへの出資を通じて、安全で高い耐久性を持つ大容量バッテリーの実現をめざし、共同開発を推進していきます。全固体電池については、2024年に栃木県さくら市での実証ラインを立ち上げ、2020年代後半の市場投入をめざし、取り組みを加速させていきます。 (充電・インフラ戦略)EVの拡充にあわせた充電サービスの拡大に取り組んでいます。公共充電については、北米でのEVの普及加速をめざし、Hondaの米国現地法人であるアメリカンホンダモーターカンパニー・インコーポレーテッドと、BMWグループ、ゼネラルモーターズ(GM)、ヒョンデ、キア、メルセデス・ベンツグループ、ステランティスN.V.の計7社が、米国とカナダでEV用高出力充電網を新たに構築する合弁会社の設立に合意しました。同社は、2024年夏に米国で初となる充電ステーションの開設を計画しており、大都市圏や主要幹線道路沿いから順次充電網を拡大していきます。家庭充電は、北米ですでに展開しているEV向け充電サービス「Honda Smart Charge」をベースとし、EVの電力供給能力を活用したスマートエネルギーサービスを順次、展開予定です。 (ソフトウェア戦略)ソフトウェアがハードウェアやサービスの価値を定義する「ソフトウェアデファインドモビリティ」の発想に基づき、ソフトウェアの開発を加速させます。具体的には2025年に北米で投入する中大型EVからの採用をめざして、E&Eアーキテクチャーをさらに進化させるとともに、Honda独自のビークルOSの開発を進めています。このビークルOSを基盤として、車載ソフトウェアを常に進化させることで、車両販売後も機能やサービスを進化させていきます。また、EVと親和性の高いデジタルサービスを、安心・快適・信頼をベースとしつつ、一元管理で分かりやすい充電案内などUX起点の魅力的なサービスとしてスピーディに提供していきます。 (EV生産体制)世界的な電動化加速に伴い、グローバルHondaにおける電動車生産体制の構築を推進しています。北米では、米国オハイオ州内の3つの既存工場(四輪車を生産するメアリズビル工場とイーストリバティ工場、四輪車用パワートレインを生産するアンナ・エンジン工場)をEV生産のハブ拠点と位置づけ、既存工場を活用しながら、高効率かつフレキシビリティの高いEV生産ラインを構築しています。なお、上記のようなカーボンニュートラルの取り組みおよび後記「② 交通事故ゼロ社会の実現」に向けた取り組みをさらに加速するためには、環境対応技術・電動化技術・ソフトウェア開発などの領域に関する強化が不可欠となります。そこで、当社は、2024年3月15日に日産自動車株式会社との間で自動車の電動化・知能化に向けて戦略的パートナーシップの検討を開始する覚書を締結しました。これを受け、当社グループでは、同社との間で、自動車車載ソフトウェアプラットフォーム、バッテリーEVに関するコアコンポーネントおよび商品の相互補完を含む幅広いスコープで提携の検討を進めています。さらに、バッテリー戦略とEV生産体制においては、2024年4月に、北米での将来的なEV需要の増加に向けたEV供給体制の強化をはかるため、EVの包括的バリューチェーンをカナダに構築することをめざし、本格的な検討を開始することを発表しました。このバリューチェーンの内容には、EV専用の完成車工場・EV用バッテリー工場の建設に加え、パートナー企業との合弁会社設立による、セパレーターや正極材といったバッテリーの主要部材のカナダ国内での生産体制の確立を含んでいます。今後も、共同開発や合弁などの手法を用いながら様々な領域での提携を進めバッテリー戦略、充電・インフラ戦略、ソフトウェア戦略、EV生産体制の構築を進めていきます。 二輪事業においては、当社グループの二輪車は世界中のお客様の「移動のニーズ」に対応し、多くの人々に利用されています。これまでICE車のプラットフォーム展開で培った競争力あるものづくりの技術とノウハウを活かし、各国のお客様のニーズに適応する電動二輪プラットフォームを順次開発していきます。高効率なものづくりにより、電動車においてもICE車同様に「移動の喜び」を適切な価格でお届けすることで、グローバルでの二輪車の電動化を牽引していきます。2026年には電動二輪車をグローバルで合計10モデル以上投入し、販売台数年間100万台をめざします。2030年にはラインナップをさらに拡充し、400万台の販売をめざします。この実現に向けては、当社グループの強みである、商品のフルラインナップ展開、開発・生産・調達能力、「走る・曲がる・止まる」の基本性能に加えたコネクティビティの進化、3万店の販売網を活用したオフライン・オンライン融合の顧客接点を活かして取り組んでいきます。 (商品のフルラインナップ展開)当社グループは、2030年までにスーパースポーツ、オフロード、Kids向けバイク、ATVなど合計30機種以上を積極的に投入し、電動二輪車のフルラインナップ化への取り組みを加速させていきます。またお客様がそれぞれの環境にあわせて選択できるよう、バッテリー交換式と固定バッテリーによるプラグイン充電の2つの方式を用意して幅広い需要に応えていきます。 (開発・生産・調達戦略)電動二輪車の開発においては、モジュールプラットフォームという形で、バッテリー、パワーユニット、車体をそれぞれモジュール化し、これらを組み合わせることで、多様なバリエーション展開が可能になります。これによりグローバルのさまざまな顧客ニーズに対応できる商品を、スピーディに、かつ、効率よく市場に投入していきます。生産については、まずは既存のICE用インフラを活用しますが、2030年の販売台数400万台の実現に向けた盤石な体制構築と一層の競争力を確保すべく、2027年以降をめどに、電動二輪車専用生産工場をグローバルで順次稼働させます。調達については、これまで完成部品で調達していたものを、材料、加工、組み立て、物流などの各工程を見直すことで、より競争力のある体制にしていきます。 (ソフトウェア戦略)電動二輪車で大きく進化する装備の一つに、コネクティビティがあります。これにより購入後もOTAなどを通じてソフトウェアの機能追加などのアップデートを行うことが可能となります。将来的には、ICE搭載車と電動二輪車の双方から得られるデータを活用し、車両の利用状況から顧客のニーズを理解することで、新しい発見や安全性を高める機能など、当社グループならではの体験を提供していきます。 (オフライン・オンライン融合の顧客接点)電動二輪事業では、店舗に行くことなく二輪車を購入できるオンライン販売を行い、お客様の利便性を向上させていくとともに、グローバルで3万店を超える当社グループの既存の販売網のサービスによる安心感も提供していきます。既存の販売店の強みに加え、オンラインサービスの強化で、これまで以上に、お客様により便利で安心感のあるオンオフ融合の顧客接点を提供していきます。また、電動化に限ることなくICE領域での燃費向上、バイオエタノール燃料の対応技術など、カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みを、地域特性に合わせながら一層加速させていきます。 パワープロダクツ事業の電動商品の展開においては、小型建機領域とガーデン領域の電動化に注力し進めていきます。また、二輪事業で発売した交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack e:」をパワープロダクツ事業へも拡大していきます。小型建機領域では、基幹事業で培ったBtoBの顧客基盤を活かした電動化を推進していきます。電動パワーユニット「eGX」の販売と搭載支援を通じ、完成機メーカーの電動化を後押しします。また、既存顧客のみならず、今後電動化が期待される領域での製品搭載の拡大を推進していきます。ガーデン領域では、歩行芝刈機の「きれいに刈れる」「耐久性」といった強みを武器に培った高いプレゼンスがあります。今後は、外部協業先とのパートナーシップも視野に、効率の良い開発・生産スキームで電動化を加速させていきます。マリン領域でも、今後、湖沼等でのICE製品の使用に関する規制が想定されるため、小型船舶用の電動推進機の実証実験を開始するなど、電動化に向けた取り組みを行っていきます。国や地域によって多様化するニーズに柔軟に対応しながら、ICE製品の投入市場を見極め、二輪事業とのシナジーを活かし、部品の共用化や生産・調達体制の最適化など開発・生産領域における効率的なオペレーションを追求していきます。これを通じて、生産領域においても、商品魅力を向上させて、電動化に向けた事業体質の強化をはかります。同時に燃費改善、カーボンニュートラル燃料対応技術といった環境性能を高めることで、さらなる競争力の高い商品・サービスの展開をめざしていきます。 2.「クリーンエネルギー」3.「リソースサーキュレーション」の詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。 ② 交通事故ゼロ社会の実現当社グループは、2050年に全世界で、当社グループの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者ゼロをめざしています。また、そのマイルストーンとして2030年に全世界で当社グループの二輪車、四輪車が関与する交通事故死者の半減をめざしています。これらは、新車だけでなく、市場に現存するすべての二輪車、四輪車が対象となります。 詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。 ③ 人的資本経営の進化当社グループの人的資本経営の取り組みとして、事業戦略と人材戦略の連動をはかるため、人領域において集中的に取り組むべき課題を「人材マテリアリティ」として定義しています。人材マテリアリティの定義にあたっては、全社重要テーマである「人的資本経営の進化」において中長期的に取り組むべき観点と、事業戦略に資するための短中期的観点の両面で、集中的に取り組むべき方向性を全社での議論を経て定めています。そして、人材マテリアリティが達成された状態を測る指標として経営管理指標(KGI)とその目標値を定め、この目標値を達成するための人材戦略・施策・施策KPIを一連のストーリーとして定義しています。KGIおよび関連する施策KPIは経営管理の枠組みで定期的にモニタリングされ、必要に応じて指標・目標値の見直しや施策の修正・追加などを行い、PDCAサイクルを実行していきます。 詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (3) 人的資本(人材の多様性を含む。)に関する戦略並びに指標及び目標」を参照ください。 ④ 独創的な技術の創出めざす提供価値として定めた「Transcend」・「Augment」の実現に向け、「コア技術の創出こそが将来にわたるサステナブルな事業基盤や競争力を生む源泉になる」という考え方に立脚し、イノベーションマネジメントの強化に取り組んでいます。研究子会社である㈱本田技術研究所は、2019年から2020年にかけて二輪・四輪・パワープロダクツ事業における商品開発機能を本田技研工業㈱へ移管し、より長期的な視点での価値創造に向けた基礎技術の研究に専念できる体制へと再編しました。モビリティの価値のさらなる拡張に向けて、先進技術研究、パワーユニット研究、材料研究などの領域への資源投入を強化するとともに、新たなモビリティやロボット、水素活用をはじめとする次世代エネルギー、バッテリー、知能化/AI、サステナブルマテリアルなどのさまざまな技術ドメインを定め、各領域のエキスパートが新価値の創出に向けた技術開発をリードしています。また国内だけでなく、世界中のさまざまな研究機関と共同研究を行うことで、グローバルでの知の探究と結集をはかっています。このような体制のもと、それぞれの技術ドメインにおいて生み出された新たな技術を応用し、空、海洋、宇宙など、さまざまなフィールドにおいて新しい価値をお届けできる魅力的な次世代モビリティの開発を進めています。具体的には「eVTOL」、「アバターロボット」、さらには宇宙領域へのチャレンジといった幅広い領域で新価値の創出に取り組んでおり、燃焼・電動・制御・ロボティクス技術などの当社グループが培ってきたコア技術を活用することで、「人々の生活の可能性を拡げる喜び」の実現をめざしています。 ⑤ ブランド価値の向上Hondaのブランドは、創業時から現在に至るまで、お客様とともに歩み続けたあらゆる企業活動の積み重ねによって形作られてきました。75年の歴史によって紡がれたHondaブランドをさらに輝かせ、将来に亘ってその価値を高めていくことは、当社グループにとって極めて重要な課題の一つであると認識しています。この大きな変革期において、当社グループが創造する価値を世界中のお客様に明確に示すとともに、全ての従業員が共通の目的に向かって一丸となって取り組むことをめざし、グローバルブランドスローガンである「The Power of Dreams」の再定義を行いました。これを単なる「言葉」に留めることなく、商品・サービスを含めた全ての企業活動へ反映し、一貫性のある「実践」へと繋げていくことが、さらに進化したHondaブランドを創り上げていくと考えています。このような考え方を踏まえ、再定義したグローバルブランドスローガンを当社グループのブランドマネジメントの起点と位置づけ、その根底に流れる信念をさまざまなブランドアセットへと投影することで、一貫したブランディングの支柱を形成していきます。社内外において、揺らぐことのない共通の基軸に基づくブランディングを展開することで、当社グループで働くすべての仲間の「夢」を原動力とした創造性の発揮を後押しするとともに、ステークホルダーの皆様から共感いただける魅力的なブランドの確立をめざしてまいります。 <財務戦略>⑥ 経済的価値の向上当社グループを取り巻く環境が大きく変化するとともに、地政学的リスクをはじめとした事業リスクが多様化する中、企業価値の向上に向けては、財務・非財務資本を活用し、キャッシュ・フローの持続的な成長と資本効率の向上を実現する必要があります。この実現に向けては、「事業変革のフェーズごとにめざす目標を明確に定め、戦略的な資源配分を実行すること」「資本コストを意識した経営の強化などガバナンスの強化とリスクマネジメントを適切に行うこと」「ステークホルダーと積極的な対話を行いながら、経営の質と透明性を高めること」が重要なミッションであると考えています。 1.事業変革フェーズに応じた戦略的な資源配分~2025年:「ICE製品事業の体質強化とEV事業への資源投入」フェーズ事業ポートフォリオの変革に必要なEV事業への資源投入を行うとともに、ICE製品事業の体質強化とEV事業への資源投入に注力し全社ROS(売上高営業利益率)7%以上をめざします。また、これまで取り組んできた四輪事業体質の強化により強固な財務基盤を築いた上で、EV事業への資源投入を着実に実行していきます。 ~2030年:「ICE製品からEVへの事業転換」フェーズEV事業の成長につながる戦略的な投資を加速させるとともに、EVのラインナップを二輪と四輪を中心に拡充し、市場での競争力を強化していきます。一時的な先行投資の影響はありますが、さらにICE事業のキャッシュ創出力を高め、変革に向けた資源投入を支えると同時に、資本コストを上回るROIC(投下資本利益率)(注1)を維持し、2030年度には、全社ROICは10%以上をめざします。 (注) 1 (親会社の所有者に帰属する当期利益+支払利息(金融事業を除く事業会社))÷投下資本(注2) 2 親会社の所有者に帰属する持分+有利子負債(金融事業を除く事業会社)、期首期末平均により算出しています。 なお、市場動向を見極めながら投資タイミングは柔軟に変更するものの、2030年にEV200万台生産体制の構築に向けて、2021年度からの10年間で、設備投資と研究開発費などで合わせて10兆円の資源投入を計画しています。 2030年代:「EV事業の成長と新たな価値の創造」フェーズ2040年にEV・FCEVの販売比率100%をめざし、キャッシュ・フローの持続的な成長を実現します。新たな価値創造の実現に向けては、カーボンニュートラル技術を中心とした基礎研究領域に、年間1,000億円レベルの研究予算を今後も安定的に資源配分していきます。 なお、成果の配分については、株主の皆様に対する利益還元を、経営の最重要課題の一つとして位置づけており、長期的な視点に立ち将来成長に向けた内部留保資金や連結業績などを考慮しながら決定していきます。配当は、連結配当性向30%を目安に、変革に向けた資源投入を加速させながらも、当社グループの強みを活かしたキャッシュ創出力を原資に安定的・継続的な配当に努めます。また、資本効率の向上および機動的な資本政策の実施などを目的として、自己株式の取得も適宜実施していきます。 2.ガバナンスの強化とリスクマネジメント大きな変革の時代において、環境変化に柔軟かつ適切に対応し企業価値の向上を実現するために、資本コストを意識した経営の浸透をはかりガバナンスを強化していきます。具体的にはROICツリーを活用し、現場のアクションと全社目標を有機的に結び付け、ROICの分子である利益を最大化するとともに、保有する資産の効率的な活用や必要投資の見極めを通じて分母の投下資本を最適化することで資本効率を向上させます。金融サービス事業については、負債による資金調達を基本とするため、ROE(自己資本利益率)を活用することで収益性と健全性のバランスをはかりながら、資本効率を最大化し、変革を支えていきます。 3.ステークホルダーとの積極的な対話企業価値の向上には、キャッシュ・フローの持続的成長と資本効率の向上に向けたロードマップを発信するとともに、当社グループの将来性が資本市場に浸透することが重要と考えています。そのためには、株主や投資家をはじめとしたステークホルダーに、経営の方向性が正しく理解され評価いただけるよう、経営陣が主体となり、イベントや個別面談等を通じて、これまで以上に対話を積極的に行っていきます。また、対話を通じて資本市場が求めていることや関心のあることを経営陣が直接把握し、これをステークホルダーからの貴重なフィードバックとして経営に活かしながら、さらなる企業価値の向上へつなげていきます。 以上のような企業活動全体を通した取り組みを行い、株主、投資家、お客様をはじめ、広く社会から「存在を期待される企業」となることをめざしていく所存でございます。 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況当連結会計年度の当社、連結子会社および持分法適用会社(以下「当社グループ」 という。)を取り巻く経済環境は、ウクライナおよび中東における国際情勢やインフレ影響など、先行きの不透明な状況が続きましたが、新型コロナウイルス感染症の収束や半導体不足の解消などにより、持ち直しの動きがみられました。米国では、金融引締めが進んだものの、個人消費の増加などにより、景気は拡大しました。欧州では、個人消費や生産が低迷し、景気は弱含みがみられました。アジアの景気においては、インドでは回復、インドネシアでは緩やかに回復、タイでは持ち直しており、中国では持ち直しの動きに足踏みがみられました。日本では、足踏みもみられたものの、景気は緩やかに回復しました。主な市場のうち、二輪車市場は前年度にくらべ、インド、ブラジル、インドネシアでは拡大しましたが、タイではおおむね横ばい、ベトナムでは縮小となりました。四輪車市場は前年度にくらべ、中国、米国、欧州、ブラジル、日本、インドでは拡大しましたが、インドネシア、タイでは縮小となりました。このような中で、当社グループは、「意志を持って動き出そうとしている世界中のすべての人を支えるパワー」となることで、世の中から「存在を期待される企業」であり続けるため、従来より経営の重要テーマとして掲げてきた「環境」と「安全」に加え、当社グループの成長の原動力である「人」と「技術」、またすべての企業活動の総和ともいえる「ブランド」の5つの非財務領域を重要テーマとして選定し、財務戦略と連携させることで社会的価値・経済的価値の創出に努めてまいりました。研究開発面では、安全・環境技術や商品の魅力向上、モビリティの変革にむけた先進技術開発に、外部とのオープンイノベーションも活用し、積極的に取り組みました。生産面では、生産体質の強化や、グローバルでの需要の変化に対応した生産配置を行いました。販売面では、新価値商品の積極的な投入や、グローバルでの商品の供給などにより、商品ラインアップの充実に取り組みました。当連結会計年度の連結売上収益は、四輪事業における増加や為替換算による増加影響などにより、20兆4,288億円と前連結会計年度にくらべ20.8%の増収となりました。 営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響や販売影響による利益増などにより、1兆3,819億円と前連結会計年度にくらべ77.0%の増益となりました。税引前利益は、1兆6,423億円と前連結会計年度にくらべ86.7%の増益、親会社の所有者に帰属する当期利益は、1兆1,071億円と前連結会計年度にくらべ70.0%の増益となりました。 事業の種類別セグメントの状況(二輪事業) Hondaグループ販売台数 ※連結売上台数 ※ 2022年度(千台)2023年度(千台)増 減(千台)増減率(%)2022年度(千台)2023年度(千台)増 減(千台)増減率(%)二輪事業計18,75718,819620.312,16112,219580.5 日 本246241△5△2.0246241△5△2.0 北 米459498398.5459498398.5 欧 州3474409326.83474409326.8 アジア16,10816,016△92△0.69,5129,416△96△1.0 その他1,5971,624271.71,5971,624271.7 二輪事業の外部顧客への売上収益は、連結売上台数の増加や為替換算による増加影響などにより、3兆2,201億円と前連結会計年度にくらべ10.7%の増収となりました。営業利益は、品質関連費用を含む諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響による利益増などにより、5,562億円と前連結会計年度にくらべ13.8%の増益となりました。 ※Hondaグループ販売台数は、当社および連結子会社、ならびに持分法適用会社の完成車(二輪車・ATV・Side-by-Side)販売台数です。一方、連結売上台数は、外部顧客への売上収益に対応する販売台数であり、当社および連結子会社の完成車販売台数です。 (四輪事業) Hondaグループ販売台数 ※連結売上台数 ※ 2022年度(千台)2023年度(千台)増 減(千台)増減率(%)2022年度(千台)2023年度(千台)増 減(千台)増減率(%)四輪事業計3,6874,10942211.42,3822,85647419.9 日 本550595458.2484525418.5 北 米1,1951,62843336.21,1951,62843336.2 欧 州841031922.6841031922.6 アジア1,7441,651△93△5.3505468△37△7.3 その他1141321815.81141321815.8 四輪事業の外部顧客への売上収益は、連結売上台数の増加などにより、13兆5,675億円と前連結会計年度にくらべ28.1%の増収となりました。営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響や販売影響による利益増などにより、5,606億円と前連結会計年度にくらべ5,772億円の増益となりました。 ※Hondaグループ販売台数は、当社および連結子会社、ならびに持分法適用会社の完成車販売台数です。一方、連結売上台数は、外部顧客への売上収益に対応する販売台数であり、当社および連結子会社の完成車販売台数です。また、当社の日本の金融子会社が提供する残価設定型クレジット等が、IFRSにおいてオペレーティング・リースに該当する場合、当該金融サービスを活用して連結子会社を通して提供された四輪車は、四輪事業の外部顧客への売上収益に計上されないため、連結売上台数には含めていませんが、Hondaグループ販売台数には含めています。 (金融サービス事業)金融サービス事業の外部顧客への売上収益は、ローン収益の増加や為替換算による増加影響などにより、3兆2,488億円と前連結会計年度にくらべ10.0%の増収となりました。営業利益は、為替影響などはあったものの、諸経費の増加などにより、2,739億円と前連結会計年度にくらべ4.2%の減益となりました。 (パワープロダクツ事業及びその他の事業) Hondaグループ販売台数/連結売上台数 ※ 2022年度(千台)2023年度(千台)増 減(千台)増減率(%)パワープロダクツ 事業計5,6453,812△1,833△32.5 日 本376302△74△19.7 北 米2,2741,083△1,191△52.4 欧 州1,168794△374△32.0 アジア1,4081,294△114△8.1 その他419339△80△19.1 パワープロダクツ事業及びその他の事業の外部顧客への売上収益は、パワープロダクツ事業の連結売上台数の減少などにより、3,922億円と前連結会計年度にくらべ13.0%の減収となりました。営業損失は、パワープロダクツ事業の販売影響による利益減などにより、88億円と前連結会計年度にくらべ317億円の減益となりました。なお、パワープロダクツ事業及びその他の事業に含まれる航空機および航空機エンジンの営業損失は、329億円と前連結会計年度にくらべ71億円の悪化となりました。 ※Hondaグループ販売台数は、当社および連結子会社、ならびに持分法適用会社のパワープロダクツ販売台数です。一方、連結売上台数は、外部顧客への売上収益に対応する販売台数であり、当社および連結子会社のパワープロダクツ販売台数です。なお、当社は、パワープロダクツを販売している持分法適用会社を有しないため、パワープロダクツ事業においては、Hondaグループ販売台数と連結売上台数に差異はありません。 所在地別セグメントの状況前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)(単位:百万円) 日本 北米 欧州 アジア その他の地域 計 消去 連結売上収益4,548,002 9,416,252 703,718 4,857,837 819,615 20,345,424 △3,437,699 16,907,725営業利益(△損失)25,821 258,805 △2,556 408,728 58,935 749,733 31,036 780,769 当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)(単位:百万円) 日本 北米 欧州 アジア その他の地域 計 消去 連結売上収益5,392,760 12,073,777 966,320 5,009,961 1,081,946 24,524,764 △4,095,962 20,428,802営業利益(△損失)151,070 694,940 60,340 397,804 153,957 1,458,111 △76,134 1,381,977 (注) 1 国又は地域の区分の方法および各区分に属する主な国(1) 国又は地域の区分の方法……………地理的近接度によっています。(2) 各区分に属する主な国………………北米:米国、カナダ、メキシコ欧州:英国、ドイツ、ベルギー、イタリア、フランスアジア:タイ、中国、インド、ベトナム、インドネシアその他の地域:ブラジル、オーストラリア2 各セグメントの営業利益(△損失)の算出方法は、連結損益計算書における営業利益の算出方法と一致しており、持分法による投資利益、金融収益及び金融費用および法人所得税費用を含んでいません。3 消去の金額は、セグメント間取引消去によるものです。 (日本) 売上収益は、四輪事業における増加などにより、5兆3,927億円と前連結会計年度にくらべ18.6%の増収となりました。営業利益は、品質関連費用を含む諸経費の増加などはあったものの、販売影響による利益増や為替影響などにより、1,510億円と前連結会計年度にくらべ485.1%の増益となりました。 (北米) 売上収益は、四輪事業における増加や為替換算による増加影響などにより、12兆737億円と前連結会計年度にくらべ28.2%の増収となりました。営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、販売影響や売価およびコスト影響による利益増などにより、6,949億円と前連結会計年度にくらべ168.5%の増益となりました。 (欧州) 売上収益は、二輪事業や四輪事業における増加などにより、9,663億円と前連結会計年度にくらべ37.3%の増収となりました。営業利益は、売価およびコスト影響による利益増などにより、603億円と前連結会計年度にくらべ628億円の増益となりました。 (アジア) 売上収益は、二輪事業やパワープロダクツ事業における減少などはあったものの、為替換算による増加影響などにより、5兆99億円と前連結会計年度にくらべ3.1%の増収となりました。営業利益は、売価およびコスト影響による利益増などはあったものの、販売影響による利益減や諸経費の増加などにより、3,978億円と前連結会計年度にくらべ2.7%の減益となりました。 (その他の地域) 売上収益は、二輪事業や四輪事業における増加などにより、1兆819億円と前連結会計年度にくらべ32.0%の増収となりました。営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響や販売影響による利益増などにより、1,539億円と前連結会計年度にくらべ161.2%の増益となりました。 ② キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、4兆9,545億円と前連結会計年度末にくらべ1兆1,515億円の増加となりました。当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況と、前連結会計年度に対する各キャッシュ・フローの増減状況は以下のとおりです。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における営業活動の結果得られた資金は、7,472億円となりました。この営業活動によるキャッシュ・インフローは、顧客からの現金回収の増加などはあったものの、部品や原材料の支払いや金融サービスに係る債権の増加などにより、前連結会計年度にくらべ1兆3,817億円の減少となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における投資活動の結果減少した資金は、8,672億円となりました。この投資活動によるキャッシュ・アウトフローは、持分法で会計処理されている投資の取得による支出の増加などにより、前連結会計年度にくらべ1,892億円の増加となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度における財務活動の結果増加した資金は、9,186億円となりました。この財務活動によるキャッシュ・インフローは、資金調達による収入の増加などにより、前連結会計年度にくらべ2兆3,870億円の増加となりました。 ③ 生産、受注及び販売の状況(生産実績)セグメントの名称前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)増減台数(千台)台数(千台)台数(千台)増減率(%)二輪事業12,19912,5603613.0四輪事業2,5082,95845017.9パワープロダクツ事業及びその他の事業5,7992,856△2,943△50.7 (注) 1 生産台数は、当社および連結子会社の完成車の生産台数の合計です。 2 二輪事業には二輪車、ATVおよびSide-by-Sideが含まれています。 3 パワープロダクツ事業及びその他の事業にはパワープロダクツの生産台数を記載しています。4 当連結会計年度において、パワープロダクツ事業の生産実績が著しく減少しました。この生産実績の変動については、OEM向けエンジン(注5)や芝刈機の減少といった影響があったためです。5 相手先ブランドで販売される商品に搭載されるエンジン(OEM:Original Equipment Manufacturer) (受注実績)見込生産のため、大口需要等の特別仕様のものを除いては、受注生産はしていません。 (販売実績)仕向地別(外部顧客の所在地別)売上収益は、以下のとおりです。セグメントの名称前連結会計年度(自 2022年4月1日 至 2023年3月31日)(百万円)当連結会計年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)(百万円)増 減(百万円)増 減 率(%) 総 合 計16,907,72520,428,8023,521,07720.8 日 本2,013,0952,242,213229,11811.4 北 米8,945,93211,713,6682,767,73630.9 欧 州690,663961,185270,52239.2 アジア4,335,7654,313,810△21,955△0.5 その他922,2701,197,926275,65629.9 二輪事業計2,908,9833,220,168311,18510.7 日 本109,393113,7464,3534.0 北 米306,725335,55828,8339.4 欧 州250,088351,851101,76340.7 アジア1,739,7641,793,32753,5633.1 その他503,013625,686122,67324.4 四輪事業計10,593,51913,567,5652,974,04628.1 日 本1,385,8301,600,619214,78915.5 北 米5,990,5448,510,2422,519,69842.1 欧 州332,983506,755173,77252.2 アジア2,523,8622,449,802△74,060△2.9 その他360,300500,147139,84738.8 金融サービス事業計2,954,0983,248,808294,71010.0 日 本428,228440,77512,5472.9 北 米2,466,5372,729,108262,57110.6 欧 州13,26418,1204,85636.6 アジア16,57614,713△1,863△11.2 その他29,49346,09216,59956.3 パワープロダクツ事業 及びその他の事業計451,125392,261△58,864△13.0 日 本89,64487,073△2,571△2.9 北 米182,126138,760△43,366△23.8 欧 州94,32884,459△9,869△10.5 アジア55,56355,9684050.7 その他29,46426,001△3,463△11.8 (注) 各事業の主要製品およびサービス、事業形態につきましては、連結財務諸表注記の「4 セグメント情報」を参照ください。 (2) 経営成績等の状況の分析当社グループは2050年に、製品だけでなく企業活動を含めたライフサイクルでの環境負荷ゼロ、全世界で当社グループの二輪車・四輪車が関与する交通事故死者ゼロをめざします。詳細については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」と「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」を参照ください。 これらの目標の実現に向けて、適切なタイミングでの戦略的な投資が必要不可欠であると考えています。当社グループは、二輪事業および四輪事業のICE/ハイブリッドモデルの安定した収益基盤を活用し、2030年200万台のEV生産を見据えて、Hondaならではの魅力的なEVの投入、バッテリーを中心としたEVの包括的バリューチェーンの構築、生産技術・工場の進化など電動化・ソフトウェア領域へ、EVの市場への浸透度を見定めながら、リソースシフトをさらに進めていきます。 当社グループが展開する事業は厳しい経済・社会環境下に置かれており、その収益性は様々な要因により左右されます。その中でも、当社グループは気候変動をはじめとした様々な社会課題の解決、リスクへの対処に積極的に取り組んでおり、認識している課題、リスク事象の詳細については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」「3 事業等のリスク」を参照ください。それらへの対処の過程、結果により販売台数の増減や追加費用などが生じ、将来の収益性に重要な影響を及ぼす可能性があると考えます。 以降の経営成績等の状況の分析は、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与えた事象や要因を経営者の立場から分析し、説明したものです。なお、この経営成績等の状況の分析に記載した将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであり、リスクと不確実性を内包しているため、将来生じうる実際の結果と大きく異なる可能性もありますので、ご留意ください。 ① 経営成績の分析当社グループの業績当連結会計年度の連結売上収益は、四輪事業における増加や為替換算による増加影響などにより、前連結会計年度にくらべ増収となりました。営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響や販売影響による利益増などにより、増益となりました。二輪事業の概要当連結会計年度の連結売上台数は、ベトナムやタイなどで販売が減少したものの、インドやブラジル、トルコなどで増加したことにより、1,221万9千台と前連結会計年度にくらべ0.5%の増加となりました。 四輪事業の概要当連結会計年度の連結売上台数は、米国などで販売が増加したことにより、285万6千台と前連結会計年度にくらべ19.9%の増加となりました。 パワープロダクツ事業及びその他の事業の概要当連結会計年度のパワープロダクツ事業の連結売上台数は、米国などで販売が減少したことにより、381万2千台と前連結会計年度にくらべ32.5%の大幅な減少となりました。 (当連結会計年度の連結業績の概況)売上収益当連結会計年度の連結売上収益は、四輪事業における増加や為替換算による増加影響などにより、20兆4,288億円と前連結会計年度にくらべ3兆5,210億円、20.8%の増収となりました。また、前連結会計年度の為替レートで換算した場合、前連結会計年度にくらべ約2兆5,842億円、約15.3%の増収と試算されます。 営業費用営業費用は、19兆468億円と前連結会計年度にくらべ2兆9,198億円、18.1%の増加となりました。売上原価は、四輪事業における連結売上収益の増加に伴う費用の増加や為替影響などにより、16兆166億円と前連結会計年度にくらべ2兆4,405億円、18.0%の増加となりました。販売費及び一般管理費は、諸経費の増加などにより、2兆1,065億円と前連結会計年度にくらべ4,366億円、26.1%の増加となりました。研究開発費は、9,236億円と前連結会計年度にくらべ427億円、4.8%の増加となりました。 営業利益営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響や販売影響による利益増などにより、1兆3,819億円と前連結会計年度にくらべ6,012億円、77.0%の増益となりました。なお、為替影響約1,511億円の増益要因を除くと、約4,500億円の増益と試算されます。 ここで記載されている変動要因の各項目については、当社が現在合理的であると判断する分類および分析方法に基づいています。なお、一部の分析項目において、当社および主要な連結子会社を対象に分析しています。・「為替影響」については、海外連結子会社の財務諸表の円換算時に生じる「為替換算差」と外貨建取引から生じる「実質為替影響」について分析しています。「実質為替影響」については、米ドルなどの取引通貨の、対円および各通貨間における為替影響について分析しています。・「売価およびコスト影響」については、販売価格の変動影響、コストダウン効果および原材料価格の変動影響などを対象に分析し、当該項目に影響する「為替影響」は除いています。・「販売影響」については、連結売上台数や機種構成の変化に伴う利益の変動、金融サービス事業の売上収益の変化に伴う利益の変動に加え、その他の売上総利益の変化要因を対象に分析し、当該項目に影響する「為替影響」は除いています。・「諸経費」については、販売費及び一般管理費の前連結会計年度との差から、当該科目に影響する「為替換算差」を除いて表示しています。・「研究開発費」については、研究開発費の前連結会計年度との差から、当該科目に影響する「為替換算差」を除いて表示しています。また、為替影響を除いた試算数値は、当社の連結財務諸表の金額とは異なっており、IFRSに基づくものではなく、IFRSで要求される開示に代わるものではありません。しかしながら、これらの為替影響を除いた試算数値は当社の業績をご理解いただくために有用な追加情報と考えています。 税引前利益税引前利益は、1兆6,423億円と前連結会計年度にくらべ7,628億円、86.7%の増益となりました。営業利益の増加を除く要因は、以下のとおりです。 持分法による投資利益は、日本の持分法適用会社における利益の増加はあったものの、アジア地域の持分法適用会社における利益の減少などにより、66億円の減益要因となりました。 金融収益及び金融費用は、受取利息の増加やデリバティブから生じる損益の影響などにより、1,682億円の増益要因となりました。なお、詳細については、連結財務諸表注記の「22 金融収益及び金融費用」を参照ください。 法人所得税費用法人所得税費用は、4,597億円と前連結会計年度にくらべ2,975億円、183.4%の増加となりました。また、当連結会計年度の平均実際負担税率は、前連結会計年度において、従前は未認識であった税務上の欠損金、税額控除または過去の期間の一時差異から生じた便益を認識した影響などにより、前連結会計年度より9.6ポイント高い28.0%となりました。なお、詳細については、連結財務諸表注記の「23 法人所得税 (1) 法人所得税費用」を参照ください。 当期利益当期利益は、1兆1,825億円と前連結会計年度にくらべ4,652億円、64.9%の増益となりました。 親会社の所有者に帰属する当期利益親会社の所有者に帰属する当期利益は、1兆1,071億円と前連結会計年度にくらべ4,557億円、70.0%の増益となりました。 非支配持分に帰属する当期利益非支配持分に帰属する当期利益は、754億円と前連結会計年度にくらべ95億円、14.5%の増益となりました。 (二輪事業)連結売上台数は、欧州地域で増加したことなどにより、1,221万9千台と前連結会計年度にくらべ0.5%の増加となりました。二輪事業の外部顧客への売上収益は、連結売上台数の増加や為替換算による増加影響などにより、3兆2,201億円と前連結会計年度にくらべ3,111億円、10.7%の増収となりました。なお、販売価格の変動はあったものの、売上収益に与える影響は軽微でした。また、前連結会計年度の為替レートで換算した場合、前連結会計年度にくらべ約2,046億円、約7.0%の増収と試算されます。営業費用は、2兆6,639億円と前連結会計年度にくらべ2,436億円、10.1%の増加となりました。売上原価は、連結売上台数の増加に伴う費用の増加や為替影響などにより、2兆2,257億円と前連結会計年度にくらべ1,258億円、6.0%の増加となりました。販売費及び一般管理費は、品質関連費用を含む諸経費の増加などにより、3,564億円と前連結会計年度にくらべ1,080億円、43.5%の増加となりました。研究開発費は、816億円と前連結会計年度にくらべ97億円、13.6%の増加となりました。営業利益は、品質関連費用を含む諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響による利益増などにより、5,562億円と前連結会計年度にくらべ675億円、13.8%の増益となりました。 日本2023年度二輪車総需要(注)は、約39万台と前年度にくらべ約3%の減少となりました。当連結会計年度の連結売上台数は、新型「CL250」の投入効果などはあったものの、「PCX」や「ジョルノ」の減少などにより、24万1千台と前連結会計年度にくらべ2.0%の減少となりました。 (注) 出典:JAMA(日本自動車工業会) 北米主要市場である米国の2023年(暦年)二輪車・ATV総需要(注)は、約73万台と前年にくらべ約1%の増加となりました。当連結会計年度の北米地域の連結売上台数は、主にメキシコにおいて、「Navi」の増加などにより、49万8千台と前連結会計年度にくらべ8.5%の増加となりました。 (注) 出典:MIC(米国二輪車工業会) 二輪車・ATVの合計であり、Side-by-Side(S×S)は含まない。 欧州欧州地域の2023年(暦年)二輪車総需要(注1)は、約118万台と前年にくらべ約10%の増加となりました。当連結会計年度の連結売上台数は、「XL750 TRANSALP」や「CB750 HORNET」の増加などにより、44万台と前連結会計年度にくらべ26.8%の大幅な増加となりました。 (注) 1 英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン、スイス、ポルトガル、オランダ、ベルギー、オーストリアの10ヵ国の合計、当社調べ(ICE車の合計であり、EV/EM/EB(注2)は含まない。) 2 EM:Electric Moped(電動モペッド)、最高速度25km/h~50km/hのカテゴリー。 EB:Electric Bicycle(電動自転車)、最高速度25km/h以下のカテゴリー。 電動アシスト自転車は含まない。 アジア最大市場のインドの2023年(暦年)二輪車総需要(注1)は、約1,661万台と前年にくらべ約8%の増加となりました。その他アジア地域主要国の2023年(暦年)二輪車総需要(注2)は、インドネシアなどで販売が増加したものの、パキスタンなどで減少したことにより、約1,847万台と前年にくらべ約4%の減少となりました。当連結会計年度の連結売上台数は、ベトナムにおける「Air Blade」シリーズや「Wave」シリーズの減少などにより、941万6千台と前連結会計年度にくらべ1.0%の減少となりました。なお、持分法適用会社であるインドネシアのピー・ティ・アストラホンダモーターの販売台数は連結売上台数に含まれませんが、当連結会計年度の販売台数は、「BeAT」シリーズや「PCX」の増加などにより、約477万台と前連結会計年度にくらべ約7%の増加となりました。 (注) 1 当社調べ(ICE車の合計であり、EV/EM/EBは含まない。) 2 タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、パキスタン、中国の7ヵ国の合計、当社調べ(ICE車の合計であり、EV/EM/EBは含まない。) その他の地域主要市場であるブラジルの2023年(暦年)二輪車総需要(注)は、約153万台と前年にくらべ約13%の増加となりました。当連結会計年度の連結売上台数は、ブラジルにおける「Biz」シリーズや「PCX」シリーズの増加などにより、162万4千台と前連結会計年度にくらべ1.7%の増加となりました。 (注) 出典:ABRACICLO(ブラジル二輪車製造者協会) (四輪事業)連結売上台数は、北米地域で増加したことなどにより、285万6千台と前連結会計年度にくらべ19.9%の増加となりました。四輪事業の外部顧客への売上収益は、連結売上台数の増加などにより、13兆5,675億円と前連結会計年度にくらべ2兆9,740億円、28.1%の増収となりました。なお、販売価格の変動はあったものの、売上収益に与える影響は軽微でした。また、前連結会計年度の為替レートで換算した場合、前連結会計年度にくらべ約2兆3,305億円、約22.0%の増収と試算されます。セグメント間取引を含む四輪事業の売上収益は、13兆7,915億円と前連結会計年度にくらべ3兆97億円、27.9%の増収となりました。営業費用は、13兆2,308億円と前連結会計年度にくらべ2兆4,325億円、22.5%の増加となりました。売上原価は、連結売上台数の増加に伴う費用の増加などにより、10兆9,099億円と前連結会計年度にくらべ2兆1,317億円、24.3%の増加となりました。販売費及び一般管理費は、諸経費の増加などにより、1兆5,065億円と前連結会計年度にくらべ2,683億円、21.7%の増加となりました。研究開発費は、8,142億円と前連結会計年度にくらべ324億円、4.1%の増加となりました。営業利益は、諸経費の増加などはあったものの、売価およびコスト影響や販売影響による利益増などにより、5,606億円と前連結会計年度にくらべ5,772億円の増益となりました。 各カテゴリ別の販売台数構成比は概ね以下のとおりです。(小売販売台数ベース)パッセンジャーカー(セダン・コンパクト等):前連結会計年度42%、当連結会計年度39%ライトトラック(SUV・ミニバン等):前連結会計年度50%、当連結会計年度54%軽自動車:前連結会計年度8%、当連結会計年度7% 四輪事業における主要な製品は以下のとおりです。パッセンジャーカー(セダン・コンパクト等):「ACCORD」 、「CITY」 、「CIVIC」 、「FIT」 、「INTEGRA」、「JAZZ」 ライトトラック(SUV・ミニバン等):「BREEZE」 、「CR-V」 、「FREED」 、「HR-V」 、「ODYSSEY」 、「PILOT」 、「VEZEL」 、「ZR-V」軽自動車:「N-BOX」 カテゴリ別の収益性を決定する要因はさまざまですが、販売価格は重要な要素の一つと考えています。上記カテゴリごとの販売価格については、各モデルによって異なるものの、全体的には、ライトトラックは比較的高く、軽自動車は比較的低い傾向があります。車両の貢献利益も各モデルによって異なりますが、一般的にライトトラックは販売価格が高いことから貢献利益も高く、軽自動車は販売価格が低いことから貢献利益も低い傾向があります。例えば、当社グループの主要な販売地域である日本市場と米国市場における、当連結会計年度のカテゴリ別の貢献利益は、ライトトラックは全カテゴリ平均と比較して約20%高く、パッセンジャーカーは同水準、軽自動車は約65%低いと試算されます。上記の貢献利益は売上収益から販売量に比例して発生すると考えられる材料費を控除した金額の台当たり金額と定義して算定したものです。 日本2023年度四輪車総需要(注1)は、約452万台と前年度にくらべ、約3%の増加となりました。当連結会計年度の連結売上台数(注2)は、新型車「ZR-V」の投入効果や「VEZEL」の増加などにより、52万5千台と前連結会計年度にくらべ8.5%の増加となりました。当連結会計年度の生産台数は、70万7千台と前連結会計年度にくらべ9.9%の増加となりました。 (注) 1 出典:JAMA(日本自動車工業会:登録車+軽自動車)2 当社の日本の金融子会社が提供する残価設定型クレジット等が、IFRSにおいてオペレーティング・リースに該当する場合、当該金融サービスを活用して連結子会社を通して提供された四輪車は、四輪事業の外部顧客への売上収益に計上されないため、連結売上台数には含めていません。 北米主要市場である米国の2023年(暦年)四輪車総需要(注)は、約1,560万台と前年にくらべ約12%の増加となりました。当連結会計年度の北米地域での連結売上台数は、「CR-V」や「CIVIC」が増加したことなどにより、162万8千台と前連結会計年度にくらべ36.2%の大幅な増加となりました。当連結会計年度の北米地域での生産台数は、160万台と前連結会計年度にくらべ28.1%の大幅な増加となりました。 (注) 出典:Autodata 欧州欧州地域の2023年(暦年)四輪車総需要(注)は、約1,284万台と前年にくらべ約14%の増加となりました。当連結会計年度の連結売上台数は、新型車「ZR-V」の投入効果や「HR-V」の増加などにより、10万3千台と前連結会計年度にくらべ22.6%の大幅な増加となりました。 (注) 出典:ACEA(欧州自動車工業会)乗用車部門(EU27ヵ国、EFTA3ヵ国、英国) アジアアジア地域主要国の2023年(暦年)四輪車総需要(注1)は、インドやマレーシアなどで増加したことにより、約885万台と前年にくらべ約6%の増加となりました。中国の2023年(暦年)四輪車総需要(注2)は、約3,009万台と前年にくらべ約12%の増加となりました。当連結会計年度の連結売上台数の合計は、インドネシアにおける「BRIO」や「BR-V」の減少などにより、46万8千台と前連結会計年度にくらべ7.3%の減少となりました。なお、持分法適用会社である中国の東風本田汽車有限公司および広汽本田汽車有限公司の販売台数は連結売上台数に含まれませんが、当連結会計年度の販売台数は、「ACCORD」や「VEZEL」の減少などにより、118万5千台と前連結会計年度にくらべ4.4%の減少となりました。アジア地域の連結子会社の当連結会計年度の生産台数(注3)は、55万9千台と前連結会計年度にくらべ0.5%の増加となりました。なお、持分法適用会社である中国の東風本田汽車有限公司および広汽本田汽車有限公司の当連結会計年度の生産台数は116万3千台と前連結会計年度にくらべ11.0%の減少となりました。 (注) 1 タイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、台湾、インド、パキスタンの8ヵ国の合計、当社調べ2 出典:中国汽車工業協会3 タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、台湾、インド、パキスタンの7ヵ国の合計 その他の地域主要市場であるブラジルの2023年(暦年)の四輪車総需要(注)は、約218万台と前年にくらべ約11%の増加となりました。当連結会計年度の連結売上台数は、ブラジルにおける「HR-V」の増加などにより、13万2千台と前連結会計年度にくらべ15.8%の増加となりました。当連結会計年度のブラジル工場での生産台数は、7万7千台と前連結会計年度にくらべ17.4%の増加となりました。 (注) 出典:ANFAVEA(ブラジル自動車製造業者協会:乗用車+軽商用車) (金融サービス事業)当社グループは、製品販売のサポートを主な目的として、日本・米国・カナダ・英国・ドイツ・ブラジル・タイにある金融子会社を通じて、顧客に対する金融サービス(小売金融、オペレーティング・リースおよびファイナンス・リース)および販売店に対する金融サービス(卸売金融)を提供しています。 金融サービスに係る債権およびオペレーティング・リース資産残高の合計は、13兆3,780億円と前連結会計年度末にくらべ2兆7,569億円、26.0%の増加となりました。また、前連結会計年度末の為替レートで換算した場合、前連結会計年度末にくらべ約1兆3,439億円、約12.7%の増加と試算されます。金融サービス事業の外部顧客への売上収益は、ローン収益の増加や為替換算による増加影響などにより、3兆2,488億円と前連結会計年度にくらべ2,947億円、10.0%の増収となりました。また、前連結会計年度の為替レートで換算した場合、前連結会計年度にくらべ約1,239億円、約4.2%の増収と試算されます。セグメント間取引を含む金融サービス事業の売上収益は、3兆2,517億円と前連結会計年度にくらべ2,956億円、10.0%の増収となりました。営業費用は、2兆9,778億円と前連結会計年度にくらべ3,075億円、11.5%の増加となりました。売上原価は、ローン収益の増加に伴う費用の増加や為替影響などにより、2兆8,053億円と前連結会計年度にくらべ2,611億円、10.3%の増加となりました。販売費及び一般管理費は、諸経費の増加などにより、1,724億円と前連結会計年度にくらべ463億円、36.8%の増加となりました。営業利益は、為替影響などはあったものの、諸経費の増加などにより、2,739億円と前連結会計年度にくらべ118億円、4.2%の減益となりました。 (パワープロダクツ事業及びその他の事業)パワープロダクツ事業の連結売上台数は、北米地域で減少したことなどにより、381万2千台と前連結会計年度にくらべ32.5%の減少となりました。パワープロダクツ事業及びその他の事業の外部顧客への売上収益は、パワープロダクツ事業の連結売上台数の減少などにより、3,922億円と前連結会計年度にくらべ588億円、13.0%の減収となりました。また、前連結会計年度の為替レートで換算した場合、前連結会計年度にくらべ約748億円、約16.6%の減収と試算されます。セグメント間取引を含むパワープロダクツ事業及びその他の事業の売上収益は、4,223億円と前連結会計年度にくらべ541億円、11.4%の減収となりました。営業費用は、4,312億円と前連結会計年度にくらべ223億円、4.9%の減少となりました。売上原価は、パワープロダクツ事業の連結売上台数の減少に伴う費用の減少などにより、3,325億円と前連結会計年度にくらべ367億円、9.9%の減少となりました。販売費及び一般管理費は、諸経費の増加などにより、710億円と前連結会計年度にくらべ138億円、24.2%の増加となりました。研究開発費は、276億円と前連結会計年度にくらべ5億円、1.9%の増加となりました。営業損失は、パワープロダクツ事業の販売影響による利益減などにより、88億円と前連結会計年度にくらべ317億円の減益となりました。なお、パワープロダクツ事業及びその他の事業に含まれる航空機および航空機エンジンの営業損失は、329億円と前連結会計年度にくらべ71億円の悪化となりました。 日本当連結会計年度の連結売上台数は、OEM向けエンジンが減少したことなどにより、30万2千台と前連結会計年度にくらべ19.7%の減少となりました。 北米当連結会計年度の連結売上台数は、OEM向けエンジンが減少したことなどにより、108万3千台と前連結会計年度にくらべ52.4%の大幅な減少となりました。 欧州当連結会計年度の連結売上台数は、OEM向けエンジンが減少したことなどにより、79万4千台と前連結会計年度にくらべ32.0%の大幅な減少となりました。 アジア当連結会計年度の連結売上台数は、OEM向けエンジンが減少したことなどにより、129万4千台と前連結会計年度にくらべ8.1%の減少となりました。 その他の地域当連結会計年度の連結売上台数は、芝刈機やOEM向けエンジンが減少したことなどにより、33万9千台と前連結会計年度にくらべ19.1%の減少となりました。 ② 重要な会計上の見積り当社および連結子会社は、IFRSに準拠した連結財務諸表を作成するにあたり、会計方針の適用、資産・負債および収益・費用の報告額ならびに偶発資産・偶発債務の開示に影響を及ぼす判断、見積りおよび仮定の設定を行っています。実際の結果は、これらの見積りとは異なる場合があります。なお、これらの見積りや仮定は継続して見直しています。会計上の見積りの変更による影響は、見積りを変更した報告期間およびその影響を受ける将来の報告期間において認識されます。 当社の連結財務諸表に重要な影響を与える可能性のある会計上の見積りおよび仮定に関する情報は、連結財務諸表注記の「2 作成の基礎 (5) 見積りおよび判断の利用」を参照ください。 ③ 流動性と資金の源泉(資金需要、源泉、使途に関する概要)当社および連結子会社は、事業活動のための適切な資金確保、適切な流動性の維持および健全なバランスシートの維持を財務方針としています。当社および連結子会社は、主に二輪車、四輪車およびパワープロダクツの製造販売を行うとともに、製品の販売をサポートするために、顧客および販売店に対する金融サービスを提供しています。生産販売事業における主な運転資金需要は、製品を生産するために必要となる部品および原材料や完成品の在庫資金のほか、販売店向けの売掛金資金です。また設備投資資金需要のうち主なものは、新機種の投入に伴う投資や、生産設備の拡充、合理化および更新ならびに販売施設や研究開発施設の拡充のための必要資金です。また、当社グループは、モビリティカンパニーとして、「環境負荷ゼロ」「絶対安全」という大きな課題に真摯に向き合い、当社グループのめざす未来のモビリティや魅力的なモビリティ社会を、「環境・安全」という社会的価値を携えて実現することで、企業としての新たな成長軌道を描いていきたいと考えています。こうした「環境・安全」の実現に向けて事業変革フェーズに応じた戦略的な資源配分を実施していきます。なお、市場動向を見極めながら投資タイミングは柔軟に変更するものの、2030年にEV200万台生産体制の構築に向けて、2021年度からの10年間で、設備投資と研究開発費などで合わせて10兆円の資源投入を計画しています。上記取り組みに関する資源配分の計画に関しては、「1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 ⑥ 経済的価値の向上 1.事業変革フェーズに応じた戦略的な資源配分」を参照ください。 生産販売事業における必要資金については、主に営業活動から得られる資金、銀行借入金および社債の発行などによりまかなっております。なお、当社は、2021年度において、「環境」と「安全」への取り組みに対する支出の一部を社債発行により調達するためのサステナブル・ファイナンス・フレームワークを設定し、資金使途をそのフレームワークに準じた環境事業に限定する米ドル建てグリーンボンドを、総額27.5億米ドル発行しました。これらを踏まえ、現在必要とされる資金水準を十分確保していると考えています。これら生産販売事業の資金調達に伴う当連結会計年度末の債務残高は8,630億円となっています。また、顧客および販売店に対する金融サービスでの必要資金については、主にミディアムタームノート、銀行借入金、金融債権の証券化、オペレーティング・リース資産の証券化、コマーシャルペーパーの発行および社債の発行などによりまかなっています。これら金融子会社の資金調達に伴う当連結会計年度末での債務残高は9兆3,085億円となっています。当社および連結子会社の借入必要額に、重要な季節的変動はありません。今後も必要資金と手元資金の状況を鑑みながら、必要に応じて資金調達を検討していきます。 (流動性)当社および連結子会社の当連結会計年度末の現金及び現金同等物4兆9,545億円は、主に米ドル建てと円建てを中心としていますが、その他の外貨建てでも保有しています。 当社および連結子会社の当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、売上収益の約2.9ヵ月相当の水準となっており、当社および連結子会社の事業運営上、十分な流動性を確保していると考えています。しかしながら、景気後退による市場の縮小や金融市場・為替市場の混乱などにより、流動性に一部支障をきたす場合も考えられます。このため、特に1兆1,923億円の短期債務を負う金融子会社では、継続的に債務を借り換えしているコマーシャルペーパーについて、代替流動性として合計1兆4,615億円相当の契約信用供与枠(コミットメントライン)を保有しています。さらに、有価証券報告書提出日現在、当社および連結子会社は世界的に有力な銀行と契約に基づかない信用供与限度額を十分に設定しています。 当社および連結子会社の当連結会計年度末の資金調達に係る債務は、主に米ドル建てを中心としていますが、円建てやその他の外貨建てでも保有しています。資金調達に係る債務の追加情報については、連結財務諸表注記の「15 資金調達に係る債務」および「25 金融リスク管理」を参照ください。また、当社および連結子会社が発行する短期および長期債券は、ムーディーズ・インベスターズ・サービス、スタンダード・アンド・プアーズおよび格付投資情報センターなどから、2024年3月31日現在、以下の信用格付を受けています。 信用格付短期格付長期格付ムーディーズ・インベスターズ・サービスP-2A3スタンダード・アンド・プアーズA-2A-格付投資情報センターa-1+AA なお、これらの信用格付は、当社および連結子会社が格付機関に提供する情報または格付機関が信頼できると考える他の情報に基づいて行われるとともに、当社および連結子会社の発行する特定の債券に係る信用リスクに対する評価に基づいています。各格付機関は当社および連結子会社の信用格付の評価において異なった基準を採用することがあり、かつ各格付機関が独自に評価を行っています。これらの信用格付はいつでも格付機関により改訂または取り消しされることがあります。また、これらの格付は債券の売買・保有を推奨するものではありません。 ④ 簿外取引(貸出コミットメント)当社および連結子会社は、販売店に対する貸出コミットメント契約に基づき、貸付金の未実行残高を有しています。当連結会計年度末において、販売店への保証に対する割引前の将来最大支払額は、923億円です。これらの貸出コミットメント契約には、貸出先の信用状態等に関する審査を貸出の条件としているものが含まれているため、必ずしも貸出実行されるものではありません。 (従業員の債務に対する保証)当社および連結子会社は、当連結会計年度末において、従業員のための銀行住宅ローン50億円を保証しています。従業員が債務不履行に陥った場合、当社および連結子会社は、保証を履行することを要求されます。債務不履行が生じた場合に、当社および連結子会社が負う支払義務の割引前の金額は、当連結会計年度末において、上記の金額です。2024年3月31日現在、従業員は予定された返済を行えると考えられるため、当該支払義務により見積られた損失はありません。 ⑤ 契約上の債務当連結会計年度末における契約上の債務は、以下のとおりです。 期間別支払金額(百万円)合計1年以内1~3年3~5年それ以降資金調達に係る債務10,941,6184,379,8344,050,7141,824,995686,075その他の金融負債736,378239,112166,843104,716225,707発注残高およびその他契約残高(注1)108,440101,0687,152220-確定給付制度への拠出(注2)38,25238,252---合計11,824,6884,758,2664,224,7091,929,931911,782 (注) 1 当社および連結子会社の発注残高は、設備投資に関するものです。 2 2025年度以降の拠出額は未確定であるため、確定給付制度への拠出は、次連結会計年度に拠出するもののみ記載しています。 ⑥ 市場リスクに関する定量および定性情報の開示連結財務諸表注記の「25 金融リスク管理 (2) 市場リスク」を参照ください。 |
※本記事は「本田技研工業株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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