会社名 | 古河電気工業株式会社 |
業種 | 非鉄金属 |
従業員数 | 連51167名 単4433名 |
従業員平均年齢 | 43.5歳 |
従業員平均勤続年数 | 19.1年 |
平均年収 | 6984561円 |
1株当たりの純資産 | 4844.96円 |
1株当たりの純利益(連結) | 473.49円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 120円 |
配当性向 | 26.1% |
株価収益率(PER) | 10.41倍 |
自己資本利益率(ROE)(連結) | 9.96% |
営業活動によるCF | 598億円 |
投資活動によるCF | ▲72億円 |
財務活動によるCF | ▲441億円 |
研究開発費※1 | 53.71億円 |
設備投資額※1 | 16.1億円 |
販売費および一般管理費※1 | 611.1億円 |
株主資本比率※2 | 35% |
有利子負債残高(連結)※3 | 3061.5億円 |
経営方針
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1) 会社の経営の基本方針[古河電工グループの理念体系] 当社グループは、経営の判断の軸となり、従業員一人ひとりが理解・共感し、当社グループで誇りを持って働くことにつながるパーパス(存在意義)を2024年3月に制定し、これまでのグループ理念体系を見直しました。 「古河電工グループ パーパス」(以下、パーパス)は、多様なステークホルダーから真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献する企業グループとして認知され、従業員が誇りを持って挑戦し続けるために定めた当社グループの存在意義を明文化したものです。また、持続的に成長していく上で、特に大事にし、より強化していきたい価値観を、「Core Values」としております。「古河電工グループ ビジョン2030」は、将来社会像やパーパスを踏まえ、時間軸を2030年と定めて描いた当社グループの将来の在りたい姿を定めたものです。ビジョン2030のありたい姿からのバックキャストで中間地点としての2025年の目指す姿を定義したものが25中期経営計画です。「古河電工グループCSR行動規範」は、パーパス及びCore Valuesに基づき企業活動を展開するにあたり、企業の社会的責任の観点から、当社グループの役員・従業員のとるべき基本的行動の規範を定めたものです。 ■古河電工グループ パーパス* 「古河電工グループ パーパス」(以下、パーパス)(主文:「つづく」をつくり、世界を明るくする。)は、多様なステークホルダーから真に豊かで持続可能な社会の実現に貢献する企業グループとして認知され、経営の判断軸となり、従業員が誇りを持って挑戦し続けるために定めた当社グループの存在意義を明文化したものです。 創業以来磨き続けてきた技術力と提案力を強みとし、さまざまな社会課題に向き合い挑戦することで、よりよい未来へとつながる「つづく」をつくることが当社グループの存在意義である、との思いを込めています。また、創業者である古河市兵衛の「日本を明るくしたい」という思いを継承しつつ、グローバルに事業を展開していることを鑑みた表現にしています。*「古河電工グループ パーパス」は、2024年3月に制定され、2024年4月19日から施行されています。 ■Core Values(コア・バリュー)当社グループが持続的に成長していく上で、特に大事にし、より強化していきたい価値観としての5つを定め、「Core Values」としております。 ■古河電工グループ ビジョン2030当社グループは、古河電工グループ パーパス「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」に基づき、国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs*)」が示す社会課題の解決を念頭に置いて2030年におけるありたい姿を描き、そこへ向けて目指す時間軸と領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、「ビジョン2030」という)を策定しております。ビジョン2030のもと、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域において、当社グループは社会課題の解決を目指してまいります。さらに、新領域においても、これまでにない新たな事業の創出を通じた社会課題の解決を目指してまいります。古河電工グループは「地球環境を守り」「安全・安心・快適な生活を実現する」ため、情報 / エネルギー / モビリティが融合した社会基盤を創る。 さらに、当社グループでは、ビジョン2030を達成するために当社グループが対処すべき経営上の重要課題を「マテリアリティ」と定義し、収益機会とリスクの両面で次のとおりマテリアリティを特定しております。これらのマテリアリティに取り組むことにより、ビジョン2030を達成するとともに、SDGsの達成にも寄与してまいります。また、当社グループの中長期的な企業価値向上を目指してまいります。*SDGs…国連で採択されたSustainable Development Goals(持続可能な開発目標)の略称であり、17のゴール・169のターゲットで構成される国際目標 (2) 経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題当社は、ビジョン2030のありたい姿からのバックキャストで中間地点としての2025年の目指す姿を定義し、その達成に向け2025年度を最終年度とする4か年の中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦-」(以下、「25中計」という)を2022年度に策定し、各施策に取り組んでまいりました。 <経営環境>25中計の前提となる当社を取り巻く経営環境は、今後も急速に、時には非連続的に変化していくものと考えております。例えば、ESG/SDGsが企業の存続に欠かせない経営課題となる、人生100年時代等を踏まえた新たなライフスタイルが広がる、人口減少・高齢化の進展により国内市場が縮小する、DX(Digital Transformation)が急速に進展する、等があげられます。このような環境においては、Beyond5G*の実現やカーボンニュートラルの実現、安全・安心・快適に人とモノが移動の自由を享受するための次世代インフラの実現、健康寿命延伸の実現、サーキュラー・エコノミーの実現等の社会課題解決の期待がより高まるものと想定されます。*Beyond5G…5Gの特徴(高速・大容量、低遅延、多数端末との接続)の更なる高度化に加えて、空・海・宇宙への利用領域の拡張、超低消費電力、超高信頼等の特徴を備えることが想定されている。6G(第6世代移動通信システム)とも呼ばれる。<各事業領域における市場環境の見通し>世界経済は、インフレ率が低下する中で、底堅く推移しました。もっとも、インフレ率の展望や地政学的リスクには不透明な状況が続きました。また、年度末にかけて貿易環境の不確実性が急速に高まる等、経済の先行きは一段と不透明なものとなっています。こうした中でも、当社グループが注力分野と位置づけているデータセンタやAI関連市場については増勢が顕著な状況が続き、中長期にも継続的な市場成長が見込まれます。情報通信分野は、クラウドをベースとしたサービスが様々な分野で成長しており、中でも生成AIの分野は急成長を果たしています。それらを支えるデータセンタ関連の光ネットワークの建設は今後も続くと考えられます。足元では世界的な光ファイバ等の需給バランスが復調傾向であり、データセンタ関連分野がけん引する形で中長期での継続的な市場成長が見込まれます。エネルギー分野は、国内では国のエネルギー政策に伴う洋上風力を中心とする再生可能エネルギーや電力会社のリプレース需要が見込まれ、海外では欧米、新興国での旺盛な需要が継続する見通しであります。自動車分野は、経済が拡大基調をたどる中、自動車需要は堅調に推移すると見られ、今後も当該分野は継続的に成長する見通しであります。機能製品分野は、生成AI関連市場は好調、スマートフォン・パソコン・HDDの需要は緩やかに復調すると見込んでおり、中長期的には継続的に市場拡大・成長する見通しであります。 <25中計達成に向けた取組み(対処すべき課題)>25中計のもと、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域における社会課題解決型事業の強化・創出を掲げ、収益の拡大に向けた取組みとして、「資本効率重視による既存事業の収益最大化」及び「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」を推進しております。また、これらを下支えする「ESG経営の基盤強化」に取り組んでおります。 ①資本効率重視による既存事業の収益最大化25中計目標達成のため、各事業の収益の拡大に向け、引き続き収益性・成長性等の観点から投資配分の最適化を進め、事業ポートフォリオの見直しを含む、資本コストをより意識した経営管理と意思決定を一層加速してまいります。事業ポートフォリオの見直しについては、2022年に「事業ポートフォリオ検討委員会」を設置し、25中計における各事業の位置づけ等、事業ポートフォリオの変革に関する重要事項を審議し、経営会議に提案・報告を行っています。そして、主にこの事業ポートフォリオ委員会の場で、データセンタを中心とした注力分野を選定し、設備投資等の経営資源を集中的に配分しております。具体的には、統一された戦略による事業運営の効率化及びリソースの効率的な配分による競争力強化等を目的とした光ファイバ・ケーブル事業及びメタル電線事業の再編を実施しました。また、シナジーの発揮により成長市場における当社の優位性を確立するため、光コネクタにおいて開発力・コスト競争力に強みを持つ会社や、高速光変調器において世界トップレベルのシェアを有する会社の子会社化を実施しました。一方で、資本効率改善や成長事業に必要なリソース確保のため、関連会社株式の一部売却や持分譲渡を行っております。25中計達成に向けて、情報通信ソリューション事業は光ファイバ・ケーブル事業において、一体となったグローバル経営により効率的かつ迅速な意思決定を行い、データセンタ関連分野に注力し、収益拡大を図ってまいります。エネルギーインフラ事業では、メタル電線の事業運営効率化による相乗効果を発揮することで、多様化・高度化するニーズに迅速に対応してまいります。加えて、マーケティング活動の推進による拡販やケーブル製造能力・工事施工能力の増強、及び利益確保重視の受注に取り組んでまいります。自動車部品事業では、電動自動車市場向けの高電圧に対応したワイヤハーネス等の関連製品の開発や、製造の自動化に取り組んでまいります。また、電装エレクトロニクス材料事業では、高付加価値製品の品揃えの充実と拡販に努めてまいります。機能製品事業では、引き続き高い成長が見込まれるデータセンタ・AI関連市場に向け、放熱・冷却製品における次世代製品の開発や、半導体製造用テープ及び高周波基板用電解銅箔の供給体制の整備に取り組んでまいります。各事業の収益拡大に向け、製品群単位で当社の強みを生かすという観点で事業ポートフォリオの見直しを継続的に行うことにより、付加価値を訴求し、利益を創出する製品群・ビジネスモデルへの変革をさらに進めてまいります。なお、資本効率重視の経営を推進するために、各事業を評価する管理指標として、投下資本利益率(ROIC)や投下資本利益額(FVA)(※1)を導入しています。事業ポートフォリオ最適化に向け、将来の成長性、当社の競争力及び炭素効率性(GHG(※2)排出量売上高原単位)を加味した上で、M&Aを含む成長を模索、撤退有無の判断等、必要なアクションを迅速に進めています。また、事業別FVAのコストの算出には、財務要素に加えて「気候変動」(※3)や「人権・労働慣行」等のESGの要素も組み込まれています。事業別FVAは毎年振り返りや見直しを行い経営会議にて報告され、事業ポートフォリオの最適化や経営資源配分等に活用しています。※1 FVA(Furukawa Value Added):EVAを当社向けにアレンジし、社内管理指標として2022年度より導入。※2 GHG(greenhouse gas):温室効果ガス※3 具体的には、事業別の「GHG排出量」及び「GHG排出量売上高原単位」を考慮 ②開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備当社グループは、素材力を核として長年培ってきた「メタル」「ポリマー」「フォトニクス」「高周波」の4つのコア技術を活用するとともに、外部パートナーとの共創を進めるほか、デジタル技術やデータの利活用を推進し、課題解決を起点とした製品・サービスの開発・提供を通じて、新たな社会課題解決型事業創出に向けた基盤整備を進めております。環境負荷の低減及び労働衛生の改善に向けて、メタルやポリマー等の素材をフォトニクス技術で加工するレーザー施工システム(産業用レーザ、インフラレーザ)の開発を加速してまいります。また、フォトニクス技術・メタル技術を生かした低侵襲医療向けのライフサイエンス関連製品については、開発の促進と製造能力確保のため特殊ファイバ製品の製造会社を子会社化し、顧客への提案活動を進めるとともに、更なる高度化を目指してまいります。加えて脱炭素社会・循環型社会の実現を目指し、引き続き化石資源によらないグリーンLPガス(※1)の開発・製造を進めてまいります。さらに安全でサステナブルなエネルギーの供給に貢献する核融合(※2)発電関連製品である超電導線材の開発を進めるとともに、超電導マグネット設計会社へ出資し市場開拓を加速してまいります。また、B5G社会に対応するため、データトラフィックの増加への対応やデータセンタの高速大容量化・省エネ化の推進が求められる中、当社のコア技術であるフォトニクス技術及び高周波技術を生かし、光電融合を実現するフォトニクス製品を開発することによって、オール光ネットワークと高効率エネルギー社会の実現に貢献してまいります。また、さらに、スタートアップ企業との共創基盤を活用し、人工衛星搭載用途や環境観測機器用途の各種製品の開発をすすめてまいります。※1 グリーンLPガス…バイオガス(家畜の排泄物や生ゴミ等を発酵させた際に発生するメタンガスと二酸化炭素)を原料に生成したLPガスのこと。※2 核融合…強力な超電導マグネットで高温プラズマ(数億度)を閉じ込め、核融合反応でエネルギーを発生させる。核融合の燃料の元は海水(重水素(2H))であり、二酸化炭素(CO2)を排出せずに発電可能で環境負荷も低いことから、核融合による発電は次世代のエネルギー源として期待されている。 ③ESG経営の基盤強化25中計では、特定したマテリアリティごとに2025年度の目指す姿を定め、それらを実現する施策を策定するとともに、進捗を測定するサステナビリティ指標・目標値を設定しており、それらの達成を図ることで、ESG経営の基盤を強化しております。持続可能な企業へ変革する上で必須となっている「気候変動に配慮したビジネス活動の展開」に対しては、低炭素経済への移行を支援する一連の目標と行動である気候移行計画を策定し、それに基づいたカーボンニュートラル実現への取組みを加速しております。また、人的資本の強化を図るため、パーパス浸透活動のほか、人材に対するグループ・グローバル共通の考え方である「古河電工グループPeople Vision」に基づき、「人材・組織実行力」の強化に取り組んでおります。具体的には、従業員エンゲージメントの要素を含む人材・組織実行力調査を実施し、これをモニタリングツールとして、人材マネジメントに関わる取組みを強化しております。「リスク管理強化に向けたガバナンス体制の構築」は、当社グループ全体のリスクマネジメントのみならず、サプライチェーンを含む人権マネジメントに関わる取組みを強化しています。具体的には、従業員と取引先を優先して対応すべきステークホルダーとし、人権デューディリジェンスを実施しています。取引先については、古河電工グループCSR調達ガイドラインに基づく自己評価調査(SAQ)について、当社から国内外グループ会社の主要な取引先へ段階的に拡大しサプライチェーン上の人権リスクの実態把握を行っています。 <ビジョン2030達成に向けた具体的な取組み>前述のように、25中計では、情報/エネルギー/モビリティの各領域及びこれらの融合領域における社会課題解決型事業の強化・創出に取り組んでおります。ビジョン2030の達成や更なる成長に向けては、新領域における目指す時間軸とありたい姿をより明確にし、さまざまな社会課題解決に取り組んでまいります。 (3) 目標とする経営指標25中計において、資本効率を意識した事業の強化と創出を行うため、ROICやROE等を経営指標として重視し、最終年度である2026年3月期の到達目標水準は、ROIC(税引後)6%以上、ROE11%以上、連結売上高1.1兆円以上、連結営業利益580億円以上、親会社株主に帰属する当期純利益370億円以上としております。また、25中計では、これらの財務目標に加え、各マテリアリティにおける2025年度の目指す姿を実現するためのサステナビリティ指標(温室効果ガス排出量削減率、従業員エンゲージメントスコア、管理職に対する人権リスクに関する教育実施率等)及びそれらの目標を設定しております。ビジョン2030の実現に向けて、本中期経営計画を着実に推進してまいります。 2025年度の財務目標値ROIC(税引後)6%以上ROE11%以上Net D/Eレシオ0.8以下自己資本比率35%以上連結売上高1.1兆円以上連結営業利益580億円以上親会社株主に帰属する当期純利益370億円以上 2025年度のサステナビリティ目標値環境調和製品売上高比率70%新事業研究開発費増加率(2021年度基準)125%事業強化・新事業創出テーマに対するIPランドスケープ実施率(*1)温室効果ガス排出量削減率(スコープ1、2)(2021年度基準)△18.7%電力消費量に占める再生可能エネルギー比率30%従業員エンゲージメントスコア80(*2)(単体)管理職層に占める女性比率7%(単体)スタッフ新規採用者に占めるキャリア採用比率 30%全リスク領域に対するリスク管理活動フォロー率100%主要取引先に対するCSR調達ガイドラインに基づくSAQ実施率100%管理職に対する人権リスクに関する教育実施率100% (*1) 2022年度に設定したテーマに関して全件実施を意味する100%を目標としたが、2024年度において既に達成済み。(*2) 2023年度に対象範囲を国内外グループ会社に拡大し、単体目標からグループ目標に変更。 |
経営者による財政状態の説明
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度の期首より、会計方針の変更を行っており、前連結会計年度との比較分析に当たっては、遡及適用後の数値を用いております。詳細については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。(業績等の概要)(1)業績当期の世界経済については、米国では、インフレの鈍化及び所得環境の改善、雇用者数の緩やかな増加があったものの、追加関税措置によるインフレ懸念を受け個人消費に減速感が生じる等、景気の先行きに不透明感が高まりました。欧州では、金融緩和やインフレの落ち着き、所得環境の改善があったものの、個人消費、設備投資の伸び悩みや輸出の減速により、景気の回復は限定的なものとなりました。中国では、政府による景気刺激策の効果が見られましたが、不動産市場停滞の長期化等の影響から個人消費は低迷し、景気は伸び悩みました。さらに、ロシア・ウクライナ情勢や中東での軍事衝突等不安定な経済環境が継続しました。わが国の経済においては、高水準の企業収益を背景に、主としてIT関連の需要に基づく設備投資が底堅く推移したものの、賃金・所得の伸びが物価上昇を安定的に上回る状況には至らず個人消費は力強さに欠け、景気の回復ペースは緩やかなものとなりました。このような環境の下、当社グループでは、2030年におけるありたい姿を描き、そこへ向けての時間軸と領域を明確にした「古河電工グループ ビジョン2030」(以下、「ビジョン2030」という)からバックキャストして2025年に目指す姿の達成を見据えて策定した中期経営計画「Road to Vision2030-変革と挑戦-」(以下、「25中計」という)に基づき、「資本効率重視による既存事業の収益最大化」及び「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」を推進してまいりました。また、これらを下支えする「ESG経営の基盤強化」に取り組んでまいりました。「資本効率重視による既存事業の収益最大化」については、事業ポートフォリオ最適化の取組みを進めることで、利益創出を図ってまいりました。主な取組みとして、統一された戦略による事業運営の効率化及びリソースの効率的な配分による競争力強化等を目的とした光ファイバ・ケーブル事業及びメタル電線事業の再編のほか、シナジーの発揮により成長市場における当社の優位性を確立するため、光コネクタにおいて開発力・コスト競争力に強みを持つ会社や高速光変調器において世界トップレベルのシェアを有する会社の子会社化を決定いたしました。また、データセンタ・AI関連市場においては、機能製品関連事業等において製品供給体制を強化し売上拡大を図ってまいりました。特に放熱・冷却製品について、競合他社との差別化を図り、より高機能な製品を顧客に対して提供することによって収益基盤の拡大に取り組んでまいりました。 「開発力・提案力の強化による新事業創出に向けた基盤整備」については、日本国内において道路や鉄道等の社会インフラの老朽化と労働人口の減少が進行するなか、社会インフラ維持管理向けデジタルソリューションの提供により省人化・省力化に貢献してまいりました。また、環境負荷や労働衛生の観点から課題の多い薬品等を使用することなく錆・塗膜を除去できるレーザ施工システムの開発を進めてまいりました。加えて、ライフサイエンスを中心とするフォトニクス技術の非通信領域に関する事業の強化を図るため、医療・産業機器向け光ファイバ及び光関連部品を製造する会社を子会社化いたしました。「ESG経営の基盤強化」については、脱炭素社会実現に向けた更なる貢献のためバリューチェーン全体で温室効果ガスの排出量ネットゼロを目指すべく「古河電工グループ環境ビジョン2050」を改定いたしました。また、当社グループの存在意義を表す古河電工グループ パーパス「『つづく』をつくり、世界を明るくする。」(以下、「パーパス」という。2024年3月制定)について、従業員の理解促進及び共感の醸成を目的とした活動を実施してまいりました。これにより、従業員が当社グループで働くことへの誇りをもつことにつなげて従業員エンゲージメントの向上に取り組んでまいりました。加えて、従業員及びサプライチェーンにおける人権リスクの再評価により新たに特定したリスクについてそれらを低減させる施策に取り組むとともに、責任ある鉱物調達に関する対応ルールを策定いたしました。当期の業績につきましては、電装エレクトロニクス事業におけるワイヤハーネス等の自動車部品での増収や機能製品事業におけるデータセンタ関連製品での増収、また銅地金価格・為替の変動の影響により、グループ全体の売上は増加しました。損益面では、高付加価値製品のラインナップ拡充や生産性の改善、販売価格の適正化に取り組んだことにより増益となりました。 これらの結果、連結売上高は1兆2,018億円(前期比13.7%増)、連結営業利益は471億円(前期比359億円増)、連結経常利益は486億円(前期比383億円増)となりました。株式交換差益48億円、投資有価証券売却益104億円等を特別利益に、減損損失26億円、製品補償引当金繰入額61億円等を特別損失として計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は334億円(前期比269億円増)となりました。なお、海外売上高は6,378億円(前期比17.0%増)で、海外売上高比率は53.1%(前期比1.5ポイント増)となりました。単独の業績につきましては、売上高は3,535億円(前期比19.1%増)、営業利益は15億円(前期比106億円改善)、経常利益は130億円(前期比127億円増)、当期純利益は324億円(前期比305億円増)となりました。 セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。 〔インフラ〕情報通信ソリューション事業では、データセンタ・AI関連市場の伸長を背景に、ローラブルリボンケーブル等の高付加価値製品をはじめとする製品ラインナップの拡充及び供給体制の強化により、売上の増加を図ってまいりました。また、北米テレコム市場においては、光ファイバ等について顧客の投資抑制や在庫調整による需要低迷から緩やかに回復しつつあり、継続的なマーケティング活動の強化や製造体制の整備を実施するとともに、生産性の改善に取り組んだことで、増収増益となりました。エネルギーインフラ事業では、電力事業において、国内の超高圧地中線や再生可能エネルギー向け海底線及び地中線の堅調な需要を背景に、ケーブルの製造能力及び工事施工能力の増強に取り組んでまいりました。産業電線・機器事業においては、軽量かつ柔軟性に優れ建設工事の省力化・効率化に貢献するアルミCVケーブル等の機能線及び送配電部品の堅調な需要のもと、マーケティング活動の推進による拡販に努めてまいりました。さらに、利益確保を重視した受注活動と販売価格の適正化に取り組んだことで増収増益となりました。これらの結果、当セグメントの連結売上高は3,094億円(前期比11.2%増)、連結営業利益は45億円(前期比158億円改善)となりました。また、単独売上高は979億円(前期比26.4%増)となりました。情報通信ソリューション事業では、急速に外部環境が変化するなか光ファイバ・ケーブル事業の運営体制を刷新し、グローバルに統一された戦略のもとで効率的かつ迅速な意思決定による事業運営を行うことで、収益拡大を図ってまいります。また、拡大傾向が継続すると見込まれるデータセンタ・AI関連市場に向け、光ケーブル等の供給体制を強化するとともに、通信の高速大容量化に不可欠な光コネクタ関連技術に強みを持つ会社を子会社化し、開発力とコスト競争力におけるシナジーを発揮することで、市場での優位性を確立してまいります。加えて、テレコム市場の本格的な需要回復に備え、製造体制の整備や生産性改善等の取組みを継続してまいります。さらに、高速光変調器において世界トップレベルのシェアを有する会社の子会社化により、B5G*時代の光ネットワークに向けた集積デバイス等の開発を推進してまいります。*B5G…Beyond5G。5Gの特徴(高速・大容量、低遅延、多数端末との接続)の更なる高度化に加えて、空・海・宇宙への利用領域の拡張、超低消費電力、超高信頼等の特徴を備えることが想定されている。6G(第6世代移動通信システム)とも呼ばれる。エネルギーインフラ事業では、電力事業においては引き続き国内の超高圧地中線の引替え需要や再生可能エネルギー関連需要を捉え売上の拡大を図るとともに、産業電線・機器事業においては、アルミCVケーブル等の機能線やデータセンタ向けプラグインコネクタ等の戦略製品の拡販に取り組んでまいります。また、当社グループ内のメタル電線事業の統合を実施することで、商圏・商流の集約による販路拡大、リソースの効率的な配分による競争力強化等のシナジー効果の最大化を目指してまいります。 〔電装エレクトロニクス〕自動車部品事業では、車両の軽量化に貢献するアルミワイヤハーネスの搭載車種拡大等により売上が堅調に推移いたしました。また、電動自動車市場に向けた高電圧に対応したワイヤハーネス等の製品開発及び拡販に取り組んでまいりました。さらに、円安の影響により海外子会社において生産した製品の輸入価格が上昇したものの、顧客の安定的な生産計画に基づく受注により生産性が改善したことに加え、販売価格の適正化に取り組んだことで、増収増益となりました。電装エレクトロニクス材料事業では、エレクトロニクス関連市場の低迷が続いたものの、パワー半導体用及び放熱部品用耐熱無酸素銅条等の高付加価値製品の品揃えの充実及び拡販や、販売価格の適正化を含む製品ミックスの改善に取り組んでまいりました。さらに、銅地金価格の高騰や円安の影響により、増収増益となりました。 これらの結果、当セグメントの連結売上高は7,364億円(前期比12.7%増)、連結営業利益は323億円(前期比72.7%増)となりました。また、単独売上高は1,597億円(前期比12.8%増)となりました。自動車部品事業では、引き続き電動自動車市場に向けた製品開発や生産の自動化等による生産性改善に取り組むことで収益の拡大を図ってまいります。電装エレクトロニクス材料事業では、今後も販売価格の適正化を含む製品ミックスの改善による収益の確保に努めるとともに、高付加価値製品の品揃えの充実と拡販に取り組んでまいります。 〔機能製品〕機能製品事業では、データセンタ・AI関連市場の成長に伴う需要を取り込むべく各施策を実施してまいりました。特に、放熱・冷却製品については需要が旺盛な空冷方式ヒートシンクの供給体制を整備してまいりました。また、ハードディスクドライブ用アルミブランク材については、顧客の在庫調整の解消を受け回復した需要を捉えたことにより収益を拡大し、増収増益となりました。これらの結果、当セグメントの連結売上高は1,470億円(前期比27.4%増)、連結営業利益は140億円(前期比84億円増)となりました。また、単独売上高は919億円(前期比25.1%増)となりました。機能製品事業では、引き続き高い成長が見込まれるデータセンタ・AI関連市場に向け、次世代製品の開発、製造体制の整備、顧客対応力の強化等に取り組んでまいります。半導体製造用テープについては、三重事業所内に開設した新工場が2025年度より量産開始予定であり、高性能かつ高品質な製品の安定供給を図ってまいります。また、データセンタ向け放熱・冷却製品については、従来の空冷方式に加え、新たに水冷モジュールの量産開始に向け工場新設等の製造体制の整備を図ってまいります。 〔サービス・開発等〕水力発電、新製品の研究開発、不動産の賃貸、各種業務受託等による当社グループ各事業のサポート等を行っております。なお、当社日光事業所においては、必要な電力のほとんどを再生可能エネルギー(水力発電)で賄っており、本水力発電は25中計におけるサステナビリティ目標「電力消費量に占める再生可能エネルギー比率30%」達成の一端を担っております。当セグメントの連結売上高は338億円(前期比7.1%増)、連結営業損失は36億円(前期比17億円悪化)となりました。また、単独売上高は40億円(前期比7.0%減)となりました。 (2)キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、661億円(前連結会計年度比+130億円)となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益+541億円、減価償却費+413億円、持分法による投資損益(△は益)△106億円、有価証券及び投資有価証券売却損益(△は益)△78億円等により+598億円(前連結会計年度比+279億円)となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の取得による支出△95億円、投資有価証券の売却及び償還による収入+433億円、有形固定資産の取得による支出△367億円等により△72億円(前連結会計年度比+176億円)となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの純増減額(△は減少)△340億円、長期借入れによる収入+607億円、長期借入金の返済による支出△595億円等により△442億円(前連結会計年度比△348億円)となりました。 (生産、受注及び販売の状況)当社グループの生産・販売品目は、広範かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額又は、数量で示すことはしておりません。 (財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)(1)財政状態の分析当連結会計年度末の資産の部では、合計が前連結会計年度末に比べ20億円増加して9,870億円となりました。現金及び預金が111億円、受取手形、売掛金及び契約資産が149億円、棚卸資産が114億円増加し、有形固定資産が16億円、投資有価証券が329億円減少しました。流動資産から流動負債を差し引いた運転資本は、前連結会計年度末に比べ451億円増加して1,620億円となりました。有形・無形固定資産は、資本的支出で386億円の増加、減価償却で413億円の減少のほか、除売却による減少等により変動しております。負債の部では、合計が前連結会計年度末に比べ131億円減少して6,137億円となりました。借入金、社債、コマーシャル・ペーパーを含む有利子負債が3,062億円と前連結会計年度末比で269億円減少しました。純資産の部では、合計が前連結会計年度末に比べ151億円増加して3,733億円となりました。その他の包括利益累計額が66億円増加しました。この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末比1.3ポイント上昇し34.6%となりました。キャッシュ・フローの概況については、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(業績等の概要)(2)キャッシュ・フローの状況」に記載しております。 (2)経営成績の分析当連結会計年度の連結売上高は、前連結会計年度比13.7%増の1兆2,018億円、連結営業利益は、前連結会計年度比359億円増の471億円となりました。電装エレクトロニクス事業におけるワイヤハーネス等の自動車部品での増収や機能製品事業におけるデータセンタ関連製品での増収、また銅地金価格・為替の変動の影響により、グループ全体の売上は増加しました。損益面では、高付加価値製品のラインナップ拡充や生産性の改善、販売価格の適正化に取り組んだことにより増益となりました。営業外損益では、前連結会計年度に比べ持分法による投資利益が43億円増加、為替差損が21億円悪化しました。この結果、連結経常利益は前連結会計年度比383億円増の486億円となりました。特別損益は、55億円の利益(純額)となりました。株式交換差益48億円、投資有価証券売却益104億円等を特別利益に、減損損失26億円、製品補償引当金繰入額61億円等を特別損失として計上いたしました。以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比269億円増の334億円となりました。なお、セグメント別の概況は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(業績等の概要)(1)業績」に記載しております。 (3)資本の財源及び資金の流動性についての分析当社グループでは、事業活動の継続及び発展のための成長投資や運転資金需要に対して、営業活動を通じて獲得したキャッシュ・フローの他、金融機関からの借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行等の負債性調達や、資産の流動化等により、資金調達を実施しております。具体的な調達手段については、市場環境や当社のバランスシート状況を踏まえ、経済合理性や財務構造の安定化の観点から判断しております。また、日本、中国及びタイにおいては、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)を導入し、効率的な資金活用に努めております。手元流動性については、手元現預金とコミットメントラインにより、短期的な支払リスクをカバー出来うる水準を確保しております。 (重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するに当たって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。 |
※本記事は「古河電気工業株式会社」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
連結財務指標と単体財務指標の違いについて
連結財務指標とは
連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。
単体財務指標とは
単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。
本記事での扱い
本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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