会社名 | 富士通株式会社 |
業種 | 電気機器 |
従業員数 | 連112743名 単34850名 |
従業員平均年齢 | 43.1歳 |
従業員平均勤続年数 | 18.2年 |
平均年収 | 9291084円 |
1株当たりの純資産 | 611.02円 |
1株当たりの純利益(連結) | 120.93円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 28円 |
配当性向 | 23.5% |
株価収益率(PER) | 24.72倍 |
自己資本利益率(ROE)(連結) | 14.5% |
営業活動によるCF | 3038億円 |
投資活動によるCF | ▲891億円 |
財務活動によるCF | ▲2404億円 |
研究開発費※1 | 411億円 |
設備投資額※1 | 250億円 |
販売費および一般管理費※1 | 611.1億円 |
株主資本比率※2 | 55.8% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 当社グループは、社会における存在意義、パーパスを「イノベーションによって社会に信頼をもたらし、世界をより持続可能にしていくこと」と定めております。パーパス実現に向けて必要不可欠な貢献分野であるマテリアリティを、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、人々のウェルビーイングの向上の3分野に定め、この3分野において重点的に取り組むべき13の課題を設定しました。全社でマテリアリティへの取り組みを推進し、当社グループの企業価値向上と持続可能な世界の実現を目指しております。 また、2030年に向けて、クロスインダストリーでサステナビリティに貢献するデジタルサービスを提供して、社会・お客様・株主様・社員などのステークホルダーにとってネットポジティブを実現するテクノロジーカンパニーになる、というビジョンを定めております。このネットポジティブとは、社会に存在する富士通が、財務的なリターンの最大化に加え、地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、そして人々のウェルビーイングの向上というマテリアリティに取り組み、テクノロジーとイノベーションによって、社会全体へのインパクトをプラスにすること、と定義しております。財務資本、人的資本といった資本を投入し、重点戦略に沿ってマテリアリティに取り組み、財務・非財務の両面でアウトプットやアウトカムを生み出し、それをまたインプットとして投じる、これを継続することでステークホルダーへの提供価値の向上を図ってまいります。 <市場環境>当社グループをとりまく市場環境については、従来型の基幹システムなどの既存IT市場は、引き続き緩やかに縮小していくと予測されています。一方で、レガシーシステムのモダナイゼーションや、クラウド化・デジタル化への投資は、今後も堅調に増えると予測されています。さらには、生成型AI(人工知能)に代表されるAIなどのテクノロジーやデータ分析・活用といった業務の高度化に向けた投資は、社会や企業の成長・発展へのニーズに加えて、社会システムや産業構造の変化に対するニーズも加わることで、今後も拡大すると想定されています。 <2025年度までの中期経営計画について>このような状況のもと、当社グループは、2023年度から2025年度までの3年間を2030年及びそれ以降の目指す姿の実現に向けて持続的な成長と収益力向上のモデルを構築する期間として位置付けた3か年の中期経営計画を定めており、その達成に向けた取り組みを進めております。2025年における当社のあるべき姿と、ステークホルダーへの提供価値の最大化を実現するため、事業モデル・ポートフォリオ戦略、カスタマサクセス戦略/地域戦略、テクノロジー戦略、リソース戦略の4つの重点戦略に沿って施策を推進しております。 <2024年度の進捗と2025年度以降の取り組み>2024年度における、4つの重点戦略ごとの主な取り組みは以下の通りです。1つ目は、事業モデル・ポートフォリオ戦略における、Fujitsu Uvanceを中心とするサービスソリューションの拡大及びハードウェアソリューションの基盤強化です。サービスソリューションでは、売上収益に占めるFujitsu Uvanceの割合が伸長しています。Fujitsu Uvanceの2024年度の売上収益は、当初計画の4,500億円を上回る4,828億円となり、2023年度の3,679億円から31%増と伸長しました。2024年度は、2023年度より堅調に伸長しているテクノロジー基盤のHorizontal領域の売上収益に加えて、市場をクロスインダストリーでとらえるVertical領域の売上収益が伸長し、Fujitsu Uvance全体の売上収益に占めるVertical領域の売上収益の割合が2023年度の32%から36%へと増加しました。また、当社のコンサルティング事業ブランド「Uvance Wayfinders」が立ち上がり、コンサルティング主導によって従来のSI商談から商談の質が変化し、お客様経営変革のアジェンダ策定から実装までをリードする商談も生まれております。また、Fujitsu Uvanceのオファリングのグローバルでの標準化や、商談のリカーリング比率も着実に伸長しました。2025年度は、コンサルティングビジネスや、AI、パートナーソリューションなども活用したFujitsu Uvanceのオファリングの拡充を進め、商談の質・量ともに改善を図ってまいります。また、ハードウェアソリューションでは、当社グループ内に分散するハードウェアソリューションに関する研究開発から製造、販売、運用・保守といった一連の機能を集約・分社化することで、グローバルでの競争力強化を図っております。2024年4月にサーバ・ストレージ事業を担うエフサステクノロジーズ株式会社を設立しました。2025年7月には、ネットワークプロダクト事業を担う1FINITY株式会社を設立予定です。AIが、今後ますます存在感を増し、欠かせないものとなっていく中、そのデータ活用を支えるハードウェアソリューションも、同じスピードでの進化や実用化が求められています。テクノロジー企業として、今後も各ソリューションの最適な提供体制を検討してまいります。 2つ目は、カスタマサクセス戦略/地域戦略における、モダナイゼーションビジネスの推進及び海外ビジネスの変革です。モダナイゼーションビジネスは、受注、売上ともに順調に拡大しており、2024年度の売上収益は前期比86%増の大幅伸長となりました。2024年度は、リソースの効率的かつ機動的なアサインや、当社でモダナイゼーションマイスターと認定している専門人材の育成のほか、言語の自動変換ツールの整備など、業務の高度化、効率化を図りました。2025年度は、Fujitsu Uvanceにつながるモダナイゼーションとして、Fujitsu UvanceのHorizontalのソリューションを統合した、デジタルトランスフォーメーションの提案を加速させます。併せて、引き続き生成AIを活用した効率化、自動化を行い、競争力を高めてまいります。また、海外ビジネスについては、2024年度のリージョンズ(海外)セグメントの全体の売上収益は5,897億円、2023年度から約2.4%減となりましたが、事業ポートフォリオ変革や構造改革の効果により、営業利益率は2023年度の1.7%から、4.1%へと改善しました。各地域の状況として、Europeリージョンは、2025年度の構造改革完了に向けて、引き続き採算性の低い事業のカーブアウトや地域戦略の見直しなどを行いました。Americasリージョンは、サービスビジネスに注力しており、2024年度にコンサルティング事業を立ち上げました。Asia Pacificリージョンは、より採算性の高いビジネス及び地域にフォーカスしていくため、構造改革に着手しております。その一環として、2025年4月より、リージョンではなく、各国ごとの体制へと変更しております。2025年度は、引き続き利益体質に向けた構造改革を進めるとともに、Fujitsu Uvanceを中心とするサービスビジネスの拡大を図り、全エリアにおいて収益性の向上を図ってまいります。3つ目は、テクノロジー戦略におけるコアテクノロジーの強化です。AI、コンピューティングを中心に、外部パートナーとの戦略的な提携も行いながら、サービスの差別化につながる技術の強化を行っております。AIは、引き続き生成AIを中心に強化を進めております。2024年7月に、カナダのCohere Inc.との戦略的パートナーシップを発表し、同社と共同開発した、高い日本語性能を持つ企業向け大規模言語モデル「Takane」を、当社のAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」のラインナップの1つとして、提供を開始しました。AIエージェント及びマルチAIエージェントの提供も開始しており、生成AIによるお客様事業の高度化に取り組んでまいります。また、量子コンピューティングでは、256量子ビット機を開発しました。2025年度第1四半期中に、企業や研究機関に向けた提供の開始を予定しております。また、2026年度には、1,000量子ビット機を開発し、2025年9月に本社であるFujitsu Technology Park(神奈川県川崎市)に竣工予定の量子コンピュータの専用施設に設置する予定です。また、次世代プロセッサ「FUJITSU-MONAKA」の開発を進めており、Super Micro Computer, Inc.及びAdvanced Micro Devices, Inc.との戦略的な協業も行っております。引き続き、新たなテクノロジーの創出と実用化の両方を目指し、研究開発を加速させてまいります。4つ目は、リソース戦略における、事業と連動した人材ポートフォリオの実現です。当社は、事業ポートフォリオに連動した人材ポートフォリオの変革を進めており、そのために必要な制度や人材マネジメントの見直しを継続して行っております。グローバルで人材の流動性を高めるために、ジョブ型人事制度に移行しており、2026年4月からは、新卒入社者に対しても、ジョブ型人事制度を適用し、ジョブレベルに応じた処遇を実施いたします。また、国内の従業員を対象に、グローバルで競争力のある報酬水準を取り入れております。2023年度から2024年度でおよそ20%の引き上げを行っており、市場のトレンドを見ながら継続して見直していく予定です。2020年度に導入したポスティング制度は、キャリア形成の手段として定着しており、2024年度までに、年間平均約3,000人が本制度を活用して異動しました。それに伴い、注力事業領域やキャリア形成に必要なスキルを自律的に学ぶリスキリングも活発になっており、制度や環境の整備が社員の行動変容につながっております。今後も、注力事業領域のリソースの強化やコーポレートの効率化、外部転身を含むリソースシフトなどを行いながら、事業成長と生産性の向上に向けた取り組みを継続してまいります。以上4つの重点戦略に加えて、全社的な取り組みとしてサービスソリューション全体の収益性向上に向けた取り組みを継続して進めております。引き続き、グローバルデリバリーセンター及び海外の開発拠点を統括するジャパングローバルゲートウェイを中心にデリバリーの変革を行い、サービスソリューション全体の収益性の向上に努めております。2024年度は、ジャパングローバルゲートウェイや共通の開発基盤の活用により、開発の標準化及び自動化を進めました。また、お客様への提供価値に基づくプライシング戦略を拡大し、継続的な収益の増加に取り組みました。これらの施策を進めた結果、2024年度は売上総利益率が1.9%改善しました。2025年度は、サイバーセキュリティやAIの倫理的な活用にも十分に配慮しながら、生成AIをデリバリーに積極的に取り入れることでさらなる効率化・標準化を進めて、グローバルで最適なデリバリー体制を確立し、引き続き年間で2%程度の改善を図ってまいります。 <非財務面での取り組み>当社グループは、非財務の領域においても、環境、お客様、生産性、そして人材の4つの項目において2025年度のKPIを定め、達成に向けて取り組んでおります。環境でのKPIとして温室効果ガス削減量を定めており、2020年度と比較しScope1・2では当社グループで50%削減、Scope3ではサプライチェーンで12.5%の削減を目指しております。お客様については、お客様NPSRにおいて2022年度比で20ポイント上昇を目指してまいります。生産性については、従業員1人当たりの調整後営業利益において、2022年度比40%の上昇を目指しております。人材では、従業員エンゲージメントについて、グローバルでのスコア75の達成を目指しております。また、ダイバーシティリーダーシップの指標として、グローバルでの女性幹部社員比率を2022年度の15%から2025年度で20%に拡大することを目標としております。2025年度においても、上記2025年度のKPIのいずれも変更はなく、引き続き達成に向けて取り組んでまいります。また、非財務面での取り組みが財務面に対しどのように寄与するかについての定量的な分析についても、2024年度に引き続き、2025年度においても、さらに進めてまいります。 * Category11:製品の使用時消費電力によるCO2排出量のみ 当社グループは、引き続きデータを活用して迅速な意思決定を行いながら、デジタルテクノロジーと、これまで培った多様な業種への実績・知見を活かし、安心で安全で豊かな社会づくりに貢献してまいります。(注)1.お客様NPSR:お客様Net Promoter Scoreの略。顧客体験=カスタマー・エクスペリエンス(CX)の改善度や深化の把握のために、企業、商品やサービスへのお客様の信頼度や愛着度を示す「顧客ロイヤリティ」を測る指標。2.従業員エンゲージメント:会社の向かっている方向性・パーパスに共感し、自発的、主体的に働き貢献したいと思う意欲や愛着を表す指標。 |
経営者による財政状態の説明
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績等の状況の概要、経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容当連結会計年度における当社及び連結子会社並びに持分法適用会社(以下、当社グループ)の経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況の概要、経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2025年3月31日)現在において判断したものです。文中において、当連結会計年度は当年度、前連結会計年度は前年度と、省略して記載しています。 ① 中期経営計画の進捗状況パーパスの実現に向けて長期かつ安定的な貢献を行うためには、すべてのステークホルダーと信頼関係を築き自らがサステナブルに成長していくことが必要です。そのため、非財務面での指標を事業活動の中核に組み込み、財務目標と合わせて達成に向けた取り組みを推進しています。 (ⅰ)財務指標の進捗状況*1 全社連結の売上収益及び調整後営業利益からデバイスソリューションを除いております。*2 連結損益計算書上の営業利益から事業再編、事業構造改革、M&A等に伴う損益並びに制度変更等による一過性の損益(調整項目)を控除した、本業での実質的な利益を示す指標です。 当年度の全社連結の売上収益は3兆5,501億円で前年度比2.1%の伸長、うちサービスソリューションの売上収益は2兆2,459億円で前年度比5.1%の伸長でした。また調整後営業利益は全社連結で前年度比プラス15.8%の3,072億円、うちサービスソリューションは前年度比プラス22.2%の2,899億円と、増収効果に加えて採算性の改善も進んでいます。 (ⅱ)非財務指標の進捗状況非財務指標の進捗状況の詳細については、「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 <非財務面での取り組み>」をご参照ください。 ② 経営成績 <要約連結損益計算書> (億円) 前年度(自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) 当年度(自 2024年4月 1日 至 2025年3月31日) 前年度比 増減率(%) 継続事業 売上収益34,76935,501 7312.1 売上原価△23,589△23,821 △2311.0 売上総利益11,17911,679 4994.5 販売費及び一般管理費△8,747△8,871 △1231.4 その他の損益△938△157 781△83.2 営業利益1,4932,650 1,15777.5 金融損益511 △50△97.9 持分法による投資利益11182 △28△26.0 継続事業からの税引前利益1,6562,734 1,07865.1 法人所得税費用925△638 △1,564- 継続事業からの当期利益2,5812,095 △485△18.8非継続事業 非継続事業からの当期利益85225 140164.3当期利益2,6662,321 △345△13.0 親会社の所有者に帰属2,5442,198 △346△13.6 非支配持分122123 11.0 調整後営業利益および調整後当期利益 営業利益1,4932,650 1,15777.5調整項目△1,160△421 738-(上記調整項目を控除した)調整後営業利益2,6533,072 41915.8当期利益 (親会社所有者帰属)2,5442,198 △346△13.6調整項目186△211 △398-(上記調整項目を控除した)調整後当期利益(注1)2,3582,409 512.2(注1)連結損益計算書上の親会社の所有者に帰属する当期利益から事業再編、事業構造改革、M&A等に伴う損益並びに制度変更等による一過性の損益およびこれらに係る税金相当(調整項目)を控除した利益指標 (ご参考)財務指標 前年度当年度 前年度比調整後営業利益率7.6%8.7% 1.1%調整後EPS(注2)122.2円129.4円 5.9%(注2)1株当たり調整後当期利益(非継続事業を除く) (ⅰ)当年度決算概況売上収益は3兆5,501億円、サービスソリューションが牽引し、前年度から2.1%の増収です。なお、ユビキタスソリューションは低採算の欧州ビジネスから撤退した影響で減収となりました。当年度の営業利益は2,650億円、前年度比1,157億円の大幅増です。主に前年度において、海外リージョンを中心とした構造改革の実施に伴う一過性の損失があった影響により、増益となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は2,198億円、前年度比346億円の減です。主に前年度において、海外リージョンを中心とした構造改革の実施に伴う繰延税金資産の計上による税金費用の減少があった影響により、減益となりました。一過性の損益を除く調整後営業利益は3,072億円、前年度から419億円の増益です。利益面でも、サービスソリューションの伸長が寄与しました。調整後当期利益は2,409億円、前年度から51億円の増益で、前年度に引き続き過去最高益を更新しました。 (ⅱ)営業利益調整項目当年度は人材ポートフォリオ変革に向けた、リソースシフトを大きく進め、これに係る費用385億円を計上しました。上期は間接部門の幹部社員を対象にセルフ・プロデュース支援制度を拡充、下期には直接部門も含めてリソースの最適配置やリスキリングを実施し、外部転身を選択した者については転身支援を行いました。このほか、富士通コミュニケーションサービス株式会社の譲渡に伴う一過性の利益144億円、M&A関連費用などを当年度の一過性の損益として、営業利益の調整項目に計上しています。 (ⅲ)ノンコア事業のカーブアウト新光電気工業株式会社は2025年3月のTOB完了を経て、2025年6月11日に新光電気工業株式会社の自己株式取得に応じることによる当社所有株式の譲渡が完了しました。富士通オプティカルコンポーネンツ株式会社は、2025年4月に古河電気工業株式会社への株式譲渡が完了しました。FDK株式会社は、電子部品の製造を手掛ける台湾拠点の企業グループであるPSAグループを構成する企業の一つである、?暉實業股?有限公司(SILITECH TECHNOLOGY CORPORATION)への株式譲渡契約を締結、2025年3月に株式譲渡が完了しました。これらによりましてデバイスソリューションのセグメントに帰属していた事業はすべてカーブアウトすることになり、同セグメントは非継続事業に分類しております。また持分法適用関連会社の株式会社富士通ゼネラルについては、株式会社パロマ・リームホールディングスと2025年1月に株式譲渡契約を締結、2025年上期中に譲渡完了する予定です。 (ⅳ)セグメント情報当社グループは、経営組織の形態、製品・サービスの特性に基づき、複数の事業セグメントを集約した上で、「サービスソリューション」、「ハードウェアソリューション」、「ユビキタスソリューション」の3つを報告セグメントとしています。「サービスソリューション」については、Fujitsu Uvanceを中心としたグローバル共通の価値提供サービスの創出・提供を行う「グローバルソリューション」、日本市場に向けたサービスの提供・実装を行う「リージョンズ(Japan)」、海外市場に向けたサービスの提供・実装を行う「リージョンズ(海外)」により構成されています。「ハードウェアソリューション」は、ICTの基盤となる、サーバやストレージシステムなどのシステムプロダクトと携帯電話基地局や光伝送システムなどの通信インフラを提供するネットワークプロダクトにより構成されています。「ユビキタスソリューション」は、パソコンなどの「クライアントコンピューティングデバイス」により構成されています。「消去・全社」は、各セグメントに属さない全社共通の先進的先行研究開発、グローバルグループベースでの社内DX投資等のグループ共通の事業成長投資、共用資産等の売廃却およびセグメント間売上収益の消去を計上しております。当年度のセグメント別の売上収益(セグメント間の内部売上収益を含む)及び調整後営業利益は以下のとおりです。 (億円) 前年度(自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) 当年度(自 2024年4月 1日 至 2025年3月31日) 前年度比 増減率(%) サービスソリューション 売上収益21,37522,459 1,0845.1調整後営業利益2,3722,899 52722.2(調整後営業利益率)(11.1%)(12.9%) (1.8%) グローバルソリューション 売上収益4,8035,112 3096.4 調整後営業利益13756 △80△58.8 (調整後営業利益率)(2.9%)(1.1%) (△1.8%) リージョンズ(Japan) 売上収益12,62113,104 4833.8 調整後営業利益2,1312,603 47122.1 (調整後営業利益率)(16.9%)(19.9%) (3.0%) リージョンズ(海外) 売上収益6,0415,897 △144△2.4 調整後営業利益103239 136132.7 (調整後営業利益率)(1.7%)(4.1%) (2.4%) セグメント内消去 売上収益△2,091△1,654 436-ハードウェアソリューション 売上収益11,08011,199 1191.1調整後営業利益836613 △223△26.8(調整後営業利益率)(7.6%)(5.5%) (△2.1%) システムプロダクト 売上収益9,2509,383 1331.4 ネットワークプロダクト 売上収益1,8301,816 △13△0.8ユビキタスソリューション 売上収益2,7332,517 △215△7.9調整後営業利益242313 7129.6(調整後営業利益率)(8.9%)(12.5%) (3.6%) 消去・全社 売上収益△419△675 △256-調整後営業利益△797△753 43-連結 売上収益34,76935,501 7312.1調整後営業利益2,6533,072 41915.8(調整後営業利益率)(7.6%)(8.7%) (1.1%) a サービスソリューションサービスソリューションは増収増益です。当年度の売上収益は2兆2,459億円と、前年度比+5.1%の伸長、とくに国内向けは8%の伸長です。DXやモダナイゼーション商談が年間を通して売上を力強く牽引しました。Fujitsu UvanceはVerticalオファリングの立ち上がりも背景に前年度比プラス31%の伸長、モダナイゼーション商談は当年度より需要が本格化し、前年度比プラス70%の大幅伸長です。調整後営業利益は2,899億円と、前年度比527億円の増益です。国内を中心とした増収効果に加え、採算性改善が着実に進みました。ジャパン・グローバルゲートウェイ、グローバルデリバリーセンターの活用や共通開発基盤活用による開発プロセスの標準化・自動化など、生産性向上の取り組みに加え、提供価値に応じたプライシングの進展により、売上総利益率が約2%改善しています。費用面については、Fujitsu Uvanceのオファリング開発やモダナイゼーションナレッジセンターへのナレッジ集約、自動化ツールの開発など、成長に直結する投資を拡大したほか、セキュリティ対策、人材リスキリングへの取り組みを拡大しながらもそれらをカバーして大きな増益を達成しました。今後も採算性の改善と高付加価値戦略を推進し、更なる収益性向上を目指します。 (受注の状況)サービスソリューションの国内受注については、前年度比5%の増です。2022年度を起点にすると、2022年度から2024年度にかけて年平均10%の成長を達成しています。サービスソリューションの業種別は以下の通りです。まず、エンタープライズビジネス(産業・流通・小売)では前年度比6%増加しました。製造、モビリティ、リテールなど広い範囲で受注が拡大、Fujitsu UvanceのVertical領域でも商談を獲得しています。ファイナンスビジネス(金融・保険)は前年度比14%増加しました。メガバンクのお客様向け基幹システム保守など複数年契約の大型商談を獲得し、2年連続の2桁伸長を達成しました。パブリック&ヘルスケア(官公庁・自治体・医療)では、前年度に官公庁向けで複数年契約の大型案件を獲得した反動もあって前年度比マイナス2%ですが、システム更改案件は安定して複数獲得しており、2022年起点の年平均成長率は7%の伸びと、確実に拡大しております。ミッションクリティカル他では前年度比11%の増、とくにナショナルセキュリティ領域では当年度も大型商談を複数件獲得し、前年度の高い水準をさらに上回ることができました。海外の受注については以下の通りです。Europeでは、前年度の公共系大型商談の反動により、前年度から7%減少しました。ビジネスの拡大よりも、まずビジネスの健全性・採算性向上を優先しています。Americasは前年度の複数年契約の反動により対前年度比では12%の減少ですが、2022年起点の年平均成長率はプラス6%と、Fujitsu Uvanceを中心に成長基調です。Asia Pacificは34%の増加、オセアニアで公共系の新規案件、更新案件など複数獲得することができました。 (Fujitsu Uvanceの状況)事業成長とポートフォリオ変革の要と位置付けている、Fujitsu Uvanceの受注および売上収益の進捗状況です。当年度の受注は5,486億円、売上収益は4,828億円、ともに前年度比プラス31%の伸長です。とくに基盤となるHorizontalのデマンドは年初の想定より強く推移しました。サービスソリューション全体の売上に占める構成比も前年度の17%から当年度は21%に拡大し、ポートフォリオの転換も着実に進んでいます。 (モダナイゼーションの状況)モダナイゼーションビジネスの当年度の売上収益は2,969億円、Uvanceとの重複を除くサービス部分で前年度比プラス70%の伸長です。DXとクラウド化を基盤に旺盛な基幹システム刷新需要を確実に取り込み、レガシー資産からの移行を加速しています。 (リージョンズ(海外)の損益情報)当社グループは、グローバルでの売上収益の拡大と収益力向上を経営上の重要な課題の1つであると考えており、サービスソリューションに含まれるリージョンズ(海外)の損益情報は当社グループの事業管理において重要な項目であるとともに、株主、投資家の皆様に当社グループの損益概況をご理解頂くための有益な情報であると考えています。 (億円) 前年度(自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) 当年度(自 2024年4月 1日 至 2025年3月31日) 前年度比 増減率(%) Europe 売上収益 4,1913,904 △286△6.8 営業利益 23160 136569.4 (営業利益率)(0.6%)(4.1%) (3.5%) Americas 売上収益 541569 285.2 営業利益 3439 514.6 (営業利益率)(6.4%)(6.9%) (0.6%) Asia Pacific 売上収益 1,0241,029 50.6 営業利益 3536 01.9 (営業利益率)(3.5%)(3.5%) (0.0%) East Asia 売上収益 390378 △12△3.1 営業利益 1213 19.4 (営業利益率)(3.1%)(3.5%) (0.4%) その他・消去 売上収益 △10514 120- 営業利益 △2△9 △6-リージョンズ(海外) 売上収益 6,0415,897 △144△2.4 営業利益 103239 136132.7 (営業利益率)(1.7%)(4.1%) (2.4%) b ハードウェアソリューションハードウェアソリューションの売上収益は11,199億円と、前年度比1.1%の増収、為替影響を除くとほぼ前年度並みです。調整後営業利益は613億円と、前年度比223億円の減益です。サーバ、ストレージを中心とするシステムプロダクトは、前年度の新紙幣対応需要や大型・好採算商談の反動減、また海外は価格競争が拡大し、物量面・採算面とも厳しい事業環境でした。国内向け汎用品の物量増はあったものの、売上構成の変化により採算性低下、為替影響による輸入部材調達コストの上昇も加わり減益です。ネットワークプロダクトは需要回復の動きに前年度から大きな変化はなく、売上水準は低調な状態が継続しました。一方で、高速・低遅延・低消費電力の実現など、次の成長サイクルに向けた開発投資を継続しております。 c ユビキタスソリューションユビキタスソリューションの売上収益は2,517億円と、前年度比7.9%の減収となりました。調整後営業利益は313億円と、前年度比71億円の増益です。低採算の欧州事業から撤退し、一方で比較的採算のよい国内向けビジネスに集中することで損益は改善、減収ながら増益となりました。 d 消去・全社調整後営業利益753億円のマイナス、前年度比43億円の費用減です。AIや量子コンピュータといった先進的な先行研究、またOne Fujitsuプログラムやグローバルセキュリティの強化などの経営基盤強化といった中長期的な事業成長に資する投資を継続しております。一方で人材ポートフォリオ変革につながるリソースの最適配置等を行ったことで、生産性の向上、コストの最適化が進みました。 (ⅴ)事業成長投資 投資領域の代表的なものが4点あります。まず事業拡大に直結するFujitsu Uvance、モダナイゼーション、コンサル事業強化への投資で410億円です。主にオファリング開発、ナレッジの集約、教育も含めたリソース拡充への投資です。GK Software SEの100%子会社化に向けた追加出資など関連M&A投資も含まれます。次にAIや量子コンピュータなど先進的な研究開発に関する投資が580億円です。AIプラットフォームFujitsu Kozuchiの開発、生成AI開発のスタートアップCohere Inc.への出資、次世代プロセッサーFUJITSU-MONAKA、量子コンピュータの開発などです。またデータドリブン経営に向けた経営基盤強化領域で550億円、当年度にはグローバルワンインスタンスの基幹システムOne ERP+を日本国内で稼働、現在国内の従業員約7万人が利用しております。品質・セキュリティ強化で400億円、AIを活用したシステム構築時や運用時のトラブル予兆検知への取り組み、あるいは頻発するセキュリティインシデントへの対応強化を進めております。 ③ 財政状態<要約連結財政状態計算書> (億円) 前年度末(2024年3月31日)当年度末(2025年3月31日) 前年度末比 資産 流動資産18,96421,175 2,211非流動資産16,18313,802 △2,381資産合計35,14834,978 △170負債 流動負債13,11113,520 409非流動負債2,8482,436 △411負債合計15,95915,957 △2資本 自己資本17,52317,409 △114非支配持分1,6641,611 △53資本合計19,18819,020 △167負債及び資本合計35,14834,978 △170 有利子負債2,4562,470 14(ネット有利子負債)(△964)(110) (1,074)(注)自己資本 :親会社の所有者に帰属する持分合計 有利子負債 :借入金及びリース負債 ネット有利子負債 :有利子負債-現金及び現金同等物 当年度末の資産合計は3兆4,978億円と、前年度末から170億円減少しました。うち流動資産は2兆1,175億円と、前年度末比で2,211億円増加しました。一方で、非流動資産は1兆3,802億円と、前年度末比で2,381億円減少しました。主に、新光電気工業株式会社が保有する有形固定資産から振り替えて、売却目的で保有する資産として流動資産に計上した影響によるものです。負債合計は1兆5,957億円と、ほぼ前年度並みです。うち流動負債は1兆3,520億円と、前年度末比で409億円増加しました。年度ごとの株主還元額を平準化するための短期的な資金融通目的の借入金が増加しました。非流動負債は2,436億円と、退職給付に係る負債やリース負債の減少により前年度末比で411億円減少しました。資本合計は1兆9,020億円と、前年度末比で167億円減少しました。うち利益剰余金は1兆7,009億円と、親会社の所有者に帰属する当期利益を計上したことなどにより前年度末比で2,135億円増加しました。また、自己株式の保有額は5,597億円です。株主還元施策として当年度は自己株式1,800億円を取得しました。 ④ キャッシュ・フロー<要約連結キャッシュ・フロー計算書> (億円) 前年度(自 2023年4月 1日 至 2024年3月31日) 当年度(自 2024年4月 1日 至 2025年3月31日) 前年度比 Ⅰ営業活動によるキャッシュ・フロー3,0923,038 △53Ⅱ投資活動によるキャッシュ・フロー△1,572△891 680Ⅰ+Ⅱフリー・キャッシュ・フロー1,5192,147 627 調整項目△452△189 263 (上記調整項目を控除した) コア・フリー・キャッシュ・フロー1,9722,336 363Ⅲ財務活動によるキャッシュ・フロー△1,814△2,404 △589 (ご参考)ベース・キャッシュ・フロー (注)3,0303,866 835(注)成長投資前のフリー・キャッシュ・フローにリース料支払を加えたキャッシュ・フロー 当年度の営業活動によるキャッシュ・フローは3,038億円と、前年度比で53億円の収入減でした。投資活動によるキャッシュ・フローは891億円のマイナスと、前年度比で680億円の支出減となりました。主に、前年度にドイツGK Software SEの買収による支出があった反動によるものです。 営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは2,147億円のプラスと、前年度から627億円の収入増となりました。一過性の収支を除いたコア・フリー・キャッシュ・フローは当年度2,336億円、前年度から363億円のプラスです。財務活動によるキャッシュ・フローは2,404億円のマイナス、前年度の1,031億円を上回る、1,800億円の自己株式取得を実施しました。 (ベース・キャッシュ・フローとキャピタルアロケーションの進捗状況) ベース・キャッシュ・フローは3,866億円プラスと前年度から835億円の収入増となりました。ベース・キャッシュ・フローは、事業並びに保有資産最適化から生み出されたキャッシュ・フローで、事業成長投資と株主還元への配分原資となるものです。当年度は、Fujitsu Uvance・コンサル事業の強化、先端研究開発を中心とした事業成長投資に2,182億円、自己株式取得および配当による株主還元に2,305億円を配分しました(ベース・キャッシュ・フローを超過した分については短期借入等で充当)。 当年度末の現金及び現金同等物は3,200億円です。当社グループは、緊急の資金需要に対応するため、月商の数カ月分を目安に十分な手元流動性を確保しています。また、当社は、グローバルに資本市場から資金調達するため、ムーディーズ・インベスターズ・サービス(以下、ムーディーズ)及び株式会社格付投資情報センター(以下、R&I)から債券格付けを取得しています。本有価証券報告書提出日現在における格付けは、ムーディーズ:A3(長期)、R&I :AA-(長期)/a-1+(短期)です。 当社グループは、事業や国・地域毎の特性やリスクを加味し、株主資本コストと借入コストの加重平均として資金調達コストを算定し、これに基づいて各事業における投資意思決定や回収可能性の判断を行っています。当社グループは、今後ますます需要が高まるDXビジネスに経営資源を集中し、中長期的に安定して高い収益性を獲得していくことによって、資金調達コストより高いリターンをあげることができると考えています。 ⑤ 重要性がある会計方針及び見積りIFRSに準拠した連結財務諸表の作成において、経営陣は、会計方針の適用並びに資産、負債、収益及び費用に影響を与える判断、見積り及び仮定を必要としておりますが、実際の結果と異なる場合があります。また、見積り及びその基礎となる仮定は継続して見直されます。会計上の見積りの見直しによる影響は、その見積りを見直した連結会計期間及び影響を受ける将来の連結会計期間において認識されます。連結財務諸表の金額に重要な影響を与える見積り及び判断については、「第5 経理の状況 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」をご参照ください。 |
※本記事は「富士通株式会社」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
連結財務指標と単体財務指標の違いについて
連結財務指標とは
連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。
単体財務指標とは
単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。
本記事での扱い
本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
コメント