富士フイルムホールディングス株式会社の基本情報

会社名富士フイルムホールディングス株式会社
業種化学
従業員数連72254名 単821名
従業員平均年齢45.7歳
従業員平均勤続年数19.3年
平均年収10742168円
1株当たりの純資産968.06円
1株当たりの純利益5.34円
決算時期3月
配当金150円
配当性向936.3%
株価収益率(PER)631.1倍
自己資本利益率(ROE)0.5%
営業活動によるCF4079億円
投資活動によるCF▲5274億円
財務活動によるCF▲4億円
研究開発費※1110.95億円
設備投資額※14207.29億円
販売費および一般管理費※1181.78億円
株主資本比率※261.1%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、次のとおりであります。 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。 (1)経営方針、経営環境 当社は、2024年1月20日に迎えた創立90周年を機に、グループパーパス「地球上の笑顔の回数を増やしていく。」を制定しました。当社は創業以来、先進・独自の技術に基づいた商品やサービスの提供を通じて人々の「笑顔」に寄り添ってきました。来たる100周年、さらにその先も、全事業を通じて社会課題の解決に貢献するとともに、世界中の人々に幸せな笑顔が何度も訪れるよう、従業員一人ひとりが「アスピレーション(志)」を持って挑み続けていきます。 当社は、2017年8月に長期CSR計画「Sustainable Value Plan 2030」(以下、「SVP2030」と記載します。)を策定しました。当社の中期経営計画は「SVP2030」の具体的なアクションプランとして位置付けており、2021年4月に発表した中期経営計画「VISION2023」では、事業活動を通じて「新たな価値」を創出することで、社会課題の解決に取り組んできました。「VISION2023」で掲げた売上高・営業利益目標は1年前倒しで達成し、2023年度も「売上高」「営業利益」「税金等調整前当期純利益」「当社株主帰属当期純利益」で過去最高を更新しました。また、「事業ポートフォリオマネジメント」と「キャッシュフローマネジメント」の強化等により、成長投資の原資確保と、重点・新規/将来性事業への経営資源の集中投下、及びポートフォリオ内の資源循環の加速・強化を図ることで、事業を通じて「環境」「健康」「生活」「働き方」の課題に取り組み、「ヘルスケア・高機能材料の成長加速と、持続的な成長を可能とする事業基盤の構築」を進めてきました。 2024年4月17日には、新たな中期経営計画「VISION2030」を発表しました。「VISION2030」では、収益性と資本効率を重視した経営により富士フイルムグループの価値を高め、世界TOP Tierの事業の集合体として、世界をひとつずつ変え、様々なステークホルダーの価値(笑顔)を生み出すことで、さらなる強靭な事業基盤の構築を実現していきます。 2024年度は、世界的な雇用情勢の回復、及び人手不足の深刻化を背景とした実質賃金の改善が進むとともに、企業の投資意欲の持続や、IT・半導体関連市況の回復等が、景気の追い風となることが予想されます。一方で、ロシア・ウクライナ情勢の長期化やイスラエル・ガザ紛争を発端とした中東情勢の緊迫化、中国経済の停滞、インフレを背景とする金融引き締めの持続等により、世界経済が減速するリスクも懸念されています。このような状況下で、当社グループは全事業の収益力向上に努め、安定的なキャッシュ創出を進めるとともに、ヘルスケア・エレクトロニクスの成長加速と、持続的な成長を可能とするさらに強靭な事業基盤の構築をより一層推進し、「稼げる力」を高めていくことで、この難局を乗り越えていきます。 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、次のとおりであります。 (単位:億円) 2023年度2024年度(次期の見通し)対前年度 2026年度(中期経営計画)売上高29,60931,0001,391 34,500営業利益2,7673,000233 3,600当社株主帰属当期純利益2,4352,400△35 2,700ROE8.2%7.8%0.4ポイント減 8.1%ROIC5.6%5.4%0.2ポイント減 5.8% (2)対処すべき課題「ヘルスケア部門の成長戦略」 ヘルスケア部門では、高齢化社会におけるQOL(Quality Of Life)向上や新興国における医療環境の整備といった医療分野の社会課題に対し、当社独自のAI技術やバイオ技術等、最先端の技術を駆使した製品やサービスを投入し続けます。これにより、2024年度は、ヘルスケア部門で初となる売上高1兆円超えによる増収・増益を目指します。 メディカルシステム事業では、重点課題として設定している、富士フイルムヘルスケアとのグループシナジー創出と、IT・AI技術の活用による付加価値の向上に引き続き注力していきます。今夏には、メディカルシステム事業に関わる国内グループ会社を機能軸で再編成し、事業戦略立案や研究開発、販売・保守サービスの各機能の体制をさらに強化します。また、当社の強みである幅広い製品ポートフォリオと医療ITを組み合わせた付加価値の高いソリューションの提供により、「モノ」としての医療機器の付加価値を向上させるだけではなく、AIを活用した故障予兆監視、疾患別ソリューション、そして健診センターのようなトータルパッケージの提供等、「モノ+コト売り」による価値提供へのシフトを推し進めます。2024年4月には、医療機関や研究機関における画像診断支援AI技術の開発を支援するサービス「SYNAPSE Creative Space」を発売しました。高度な工学的知識を必要とせず、手元にPCを用意すれば利用できるクラウドサービスであり、希少疾患を始めさまざまな疾病を対象とした画像診断支援AI技術の開発を促進します。本サービスの提供を通じて、医療現場をサポートするAI技術の開発を支援するとともに、AIの社会実装や教育支援にも力を入れていきます。 バイオCDMO事業では、抗体医薬品の旺盛な需要に応えて事業を拡大すべく、2024年度からデンマーク拠点の大型原薬製造設備を稼働させるとともに、米国ノースカロライナ拠点に、追加で新たな大型原薬製造施設の建設を開始します(2028年稼働予定)。また、バイオテック企業への投資環境の冷え込みに起因する細胞・遺伝子治療薬の開発停滞、及び臨床試験開始件数の減少により、英国や米国拠点の中小型製造設備における受託ビジネスが低調となる中、特に需要停滞の長期化が見込まれる遺伝子治療薬については、原薬生産設備を抗体医薬品用途へ転用する等、生産体制の最適化を進め、ビジネスの拡大を図ります。 ライフサイエンス事業では、創薬支援材料分野においてiPS細胞・培地・試薬を組み合わせたソリューション販売と、特徴ある製品開発によって顧客提案力を向上させ、製薬企業・バイオテック企業・アカデミアのニーズにきめ細かく対応できるカスタマーサポート体制で継続的な事業拡大を図っていきます。また、iPS細胞技術・ノウハウを生かした細胞治療薬の開発製造受託ビジネスも拡大していきます。 医薬品事業では、コロナ禍後の感染症流行により需要の高まる抗菌剤の安定供給を進めます。 コンシューマーヘルスケア事業では、2023年度に発売した「アスタリフト アドバンスドシリーズ」や、機能性表示食品の「ヒザテクト」といった新製品を拡販するとともに、独自性の高い化粧品・サプリメント新製品を逐次投入して、事業を継続的に拡大していきます。 CRO事業では、当社独自のAI技術や化合物ライブラリ、iPS細胞等を駆使した特徴のあるサービスを、主に基礎研究から非臨床試験までの創薬初期段階の顧客に広めていきます。 「エレクトロニクス部門の成長戦略」(旧マテリアルズ部門) エレクトロニクス部門では、「高機能材料戦略本部」の下、中長期視点での新規事業開発と、同領域の顧客アプリケーション軸での事業ポートフォリオの構築・戦略マネジメントにより事業拡大を進めていきます。 半導体市場では、AI、IoT、5Gの普及やDXの加速等により需要が拡大し、半導体の高性能化に必要な微細化・高集積化がさらに進むとみられています。半導体材料事業(旧電子材料事業)ではこうした市場ニーズに応えるために、高性能化を支える材料開発や安定供給を目的とする積極的な設備投資をタイムリーかつ継続的に実施していきます。また、2023年度のプロセスケミカル事業買収により、当社の製品ラインアップが拡充し、半導体製造プロセスのより多様な工程に当社製品を提供できるようになりました。今後、新製品開発によりさらなる製品ラインアップの拡充を進めるとともに、CMPスラリーとポストCMPクリーナーといった補完し合う材料を有する強みを生かし、単一材料では解決できない複雑な顧客課題を解決していく等、「ワンストップソリューション」を提供することで、事業成長を加速させます。 ディスプレイ材料事業では、車載ディスプレイやAR/VRスマートグラス向け等に薄膜・積層塗布や光コントロール等、当社が蓄積してきた技術を活用した新規用途向け部材の開発・導入を推進し、次世代エレクトロニクスデバイスの普及に積極的に貢献していくことで、事業を拡大していきます。また、液晶パネル向けTAC製品の強いマーケットポジションの維持、及び有機EL向け材料のシェア向上も推進していきます。 産業機材事業では、タッチパネル用センサーフィルムの「エクスクリア」や、データセンターで使用されるデータテープ、半導体やディスプレイ等デバイス製造工程に使用される圧力測定フィルム「プレスケール」、メンブレンろ過フィルター等、当社独自技術を活用した高機能製品の販売拡大を継続するとともに、爆発的に増加する「通信」と「エネルギー」インフラに向けた新規ビジネスの開拓を行い、積極的に事業を拡大していきます。 ファインケミカル事業では、「フロー合成」「高純度化」等の当社が有する技術により半導体材料等のエレクトロニクス分野向けに差別化製品を供給拡大していきます。また、「エレクトロニクス」「ライフサイエンス」「環境・エネルギー」3分野を重点領域と位置づけ、高純度化技術や高度な品質保証機能を活かした差別化製品を創出し、事業領域を拡大していきます。 「ビジネスイノベーション部門の成長戦略」 ビジネスイノベーション部門では、グラフィックコミュニケーション事業をビジネスイノベーションへ統合し、「プリンティング&ソリューション」事業として、オフィスから商業印刷(アナログ・デジタル)・産業印刷まで全領域をカバーする業界で唯一の「ソリューションパートナー」として事業展開を進めていきます。加えて、他社との業務提携を通じた、原材料・部材調達やトナー開発・生産供給体制構築により、事業基盤をさらに強化していきます。 ビジネスソリューション事業では、DXのニーズの高まりを背景に、ITインフラ環境の構築・運用を支援する「IT Expert Services」をベースとして、顧客企業のインフラのクラウド化や顧客企業が現在利用しているシステムを最大限生かした業務プロセス変革を支援し、DXを加速するクラウドサービス「FUJIFILM IWpro」の提供、「Microsoft Dynamics 365」を主力としたERPソリューションの販売・導入支援等を通じて、顧客企業のDXに貢献し、事業成長を図ります。 オフィスソリューション事業では、ハイブリッドワークの浸透により、プリントボリュームが漸減する中で、当社が特に強みをもつA3カラー領域に注力し、環境対応と生産基盤強化を軸に、効率的な販売に転換します。加えて、欧州各国の有力代理店による当社複合機の新規取り扱いを開始し、新規市場での販売拡大を図ります。 グラフィックコミュニケーション事業では、商業印刷・パッケージ印刷市場で、大ロットのアナログ印刷やモノクロ印刷が減少する一方、多品種・小ロット印刷やカラー印刷が増加し、高速フルカラーデジタル印刷・DXのニーズが拡大することを見込んでいます。当社は、成長を期待できる高速・高画質のデジタル印刷・DXへ投資し、国内市場で圧倒的シェア・海外でもトップレベルのシェアをもつ刷版の顧客を中心に販売を拡大し、デジタルシフトを加速していきます。刷版事業では、グローバルでの生産ライン統廃合によるリーンな体制の下、高付加価値な無処理版*の販売拡大に集中し、収益性改善を進めていきます。インクジェットインク・ヘッドについては、生産体制の再編で収益性改善を図るとともに、インク・ヘッドという基幹部材を自社でもつ強みを活かし販売を拡大することに加えて、インク・ヘッドを組み合わせたカスタムシステムをブランドオーナーに提供し、顧客製品の生産ラインへデジタル印刷技術を組み込む等、商業印刷・パッケージ印刷のデジタル市場の成長に応えていきます。* 現像機が不要であり、コスト・作業時間が削減されることに加え、現像液不使用による廃液レスのため環境性能に優れる。 「イメージング部門の成長戦略」 イメージング部門では、「写真を撮る・写真を楽しむ・共有する」ことを核とした当社独自のエコシステムを発展させ、新しい感動や体験を創造し続けることで持続的成長を実現させます。 コンシューマーイメージング事業では、2024年4月に発売したアナログインスタントカメラの最上位モデル「INSTAX mini 99」をはじめとし、さらなる新製品の発売、イベント・ビジネス需要の取り込みや異業種との協業により新たなユーザー層拡大を図ります。また、富士フイルムビジネスイノベーション製トナー方式フォトプリンター機の展開拡大や異業種パートナーとのアライアンスによる若い世代との新たなタッチポイント創出等により、新規プリント需要の掘り起こしを進めていきます。 プロフェッショナルイメージング事業では、デジタルカメラ「Xシリーズ」「GFXシリーズ」マルチブランド戦略強化により、スマホでは飽き足らない潜在ニーズを掘り起こし、当社ファン拡大を図ります。また、プロジェクターの拡販、遠望監視カメラの新規用途への展開や最先端の光学技術・画像処理技術・AI駆使によるDXソリューションビジネス等、新規分野の立ち上げも進めていきます。 「SVP2030の下での重点分野と取組み」 当社グループは、「SVP2030」のもと、「事業を通じた社会課題の解決」と「事業プロセスにおける環境・社会への配慮」との2つの側面から、4つの重点分野「環境」「健康」「生活」「働き方」と、事業活動の基盤となる「サプライチェーン」「ガバナンス」における各分野で設定した目標達成に向けた取組みを進めています。 「環境」においては、気候変動への対応や水資源を含む生物多様性の保全、資源循環の促進等を重点課題として取り組んでいます。脱炭素化については、パリ協定で定められている「1.5℃目標」に整合した目標「自社の製品ライフサイクル全体での温室効果ガス(GHG)排出を2030年度までに50%削減(2019年度比)」を掲げています。本目標は「Science Based Targets(SBT)イニシアチブ*1」より、パリ協定の「1.5℃目標」を達成するための科学的根拠に基づいた目標として認定されました。本目標の達成に向け、富士フイルムグループ環境戦略「Green Value Climate Strategy」の下、環境負荷の少ない生産活動や、優れた環境性能を持つ製品・サービスの創出・普及を推進していきます。2023年度は、自社エネルギー起因(Scope1+2)のGHG排出削減目標11%削減(2019年度比)を達成する見込みです。さらに前年度導入したインターナルカーボンプライシング(社内炭素価格)を用いて低炭素投資を促進することで、脱炭素社会の実現に貢献しています。このような活動が評価され、当社は国際的な非営利団体CDPが実施する企業調査において「気候変動」で最高評価である「Aリスト企業」に認定されました。「気候変動」分野での「Aリスト企業」認定は、前年に続いて2年連続です。 「健康」においては、2023年度に100ヶ国まで拡大した医療AI技術を活用した製品・サービスの導入国を、2030年度には世界196の全ての国に導入することを目標にしています。内視鏡システム、超音波診断装置、デジタルマンモグラフィ、CT、MRIといった診断用の医療機器・サービスを提供することで、疾病の早期発見に取り組む医師をサポートし、人々の健康維持増進に貢献しています。また、従業員の健康に対する意識向上やがん対策等が評価され、経済産業省と東京証券取引所が共同で選定する「健康経営銘柄」に4年連続で選ばれました。また、経済産業省と日本健康会議より、優良な健康経営R*2を実践している法人として「健康経営優良法人ホワイト500」に8年連続で認定されました。今後もヘルスケア事業を通じた社会課題の解決に取り組み、健康長寿社会の実現に貢献していきます。 「働き方」においては、ビジネスに革新をもたらす当社のソリューション・サービスの利用を通じて、働く人の生産性向上と創造性発揮を支援する働き方を2030年度まで累計5,000万人に提供していきます。また、厚生労働省が後援する日本の人事部「HRアワード2023(主催:「HRアワード」運営委員会)の企業人事部門で、最高位となる最優秀賞を受賞しました。本受賞は、当社グループ独自の自己成長支援プログラム「+STORY(プラストーリー)」の取組みが高く評価されたものです。 「ガバナンス」においては、コーポレート・ガバナンスを経営上の重要な課題と位置づけ、その強化に取り組んでいます。取締役会議長をCEOと分離し、業務執行の「監督」と「執行」の役割を明確化しました。また、取締役に対し、「譲渡制限付株式報酬」、及び「中期業績連動型株式報酬」の導入、取締役会の多様性確保(女性取締役の増員、スキル・マトリックスの再検証)を行ってきました。当社は誠実かつ公正な事業活動を通じて、当社グループの持続的な成長と企業価値の向上を図るとともに、社会の持続的発展に貢献することを目指していきます。*1 CDP、国連グローバル・コンパクト、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)による国際的な共同イニシアチブ。科学的根拠に基づいてGHG排出削減目標の検証や削減施策のベストプラクティスを推進している。*2 「健康経営R」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。 「2024年度グループ基本方針」 当社グループの2024年度の経営方針は「アスピレーション(志)を持って卓越した価値を届けよう!」です。グループパーパスを実現するためには、①事業の持続的成長につながる新製品開発や設備投資、②環境・人権・サプライチェーンマネジメント等のESG課題への取組み、③人材育成や労働環境の向上、賃金引き上げ等、従業員の働きがいや能力発揮につながる取組みを実現させることが必要です。当社グループは、これらの活動の原資となる利益を生み出すために「稼げる力」をさらに高め、経済的価値と社会的価値の両方を追求しながら、「稼げる会社」に進化させていきます。そして、獲得した利益を上記①②③に再投資することで、永続的な好循環を実現させます。地球上の人々に何度も幸せな笑顔が訪れるよう、多様な「人・知恵・技術」を結集させ、独創的な発想のもと、様々なステークホルダーとイノベーションを起こし、アスピレーション(志)を持って、卓越した価値を世の中に届けていきます。
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況 当連結会計年度における連結売上高は、ヘルスケア部門のメディカルシステム、イメージング部門等を中心に売上を伸ばし、2,960,916百万円(前年度比3.6%増)となりました。営業利益は、276,725百万円(前年度比1.3%増)となりました。税金等調整前当期純利益は317,288百万円(前年度比12.4%増)、当社株主帰属当期純利益は243,509百万円(前年度比11.0%増)となりました。 事業セグメント別の業績は次のとおりであります。 (事業セグメント別の連結売上高)セグメント前連結会計年度(百万円)当連結会計年度(百万円)増減額(百万円)増減率(%)ヘルスケア928,875975,08146,2065.0マテリアルズ681,793690,0418,2481.2ビジネスイノベーション838,080826,136△11,944△1.4イメージング410,293469,65859,36514.5連結合計2,859,0412,960,916101,8753.6  ヘルスケア部門の連結売上高は、前年度の928,875百万円に対し、メディカルシステム事業、バイオCDMO事業等で売上を伸ばしたことにより46,206百万円増加し、975,081百万円となりました。マテリアルズ部門の連結売上高は、前年度の681,793百万円に対し、電子材料事業、ディスプレイ材料事業等で売上を伸ばしたことにより8,248百万円増加し、690,041百万円となりました。ビジネスイノベーション部門の連結売上高は、前年度の838,080百万円に対し、欧米向け輸出が減少したこと等により11,944百万円減少し、826,136百万円となりました。イメージング部門の連結売上高は、前年度の410,293百万円に対し、コンシューマーイメージング事業、プロフェッショナルイメージング事業で売上を伸ばしたことにより59,365百万円増加し、469,658百万円となりました。 (事業セグメント別の営業利益)セグメント前連結会計年度(百万円)当連結会計年度(百万円)増減額(百万円)増減率(%)ヘルスケア102,77097,378△5,392△5.2マテリアルズ65,46642,897△22,569△34.5ビジネスイノベーション69,49170,7501,2591.8イメージング72,876101,94729,07139.9全社費用及びセグメント間取引消去△37,524△36,2471,277-連結合計273,079276,7253,6461.3  ヘルスケア部門の営業利益は、前年度の102,770百万円に対し、棚卸資産評価減等により5,392百万円減少し、97,378百万円となりました。マテリアルズ部門の営業利益は、前年度の65,466百万円に対し、M&A関連費用やインクジェット生産体制再編の一時費用増加等により22,569百万円減少し、42,897百万円となりました。ビジネスイノベーション部門の営業利益は、前年度の69,491百万円に対し、価格改定の効果等により1,259百万円増加し、70,750百万円となりました。イメージング部門の営業利益は、前年度の72,876百万円に対し、コンシューマーイメージング事業、プロフェッショナルイメージング事業で売上を伸ばしたことにより29,071百万円増加し、101,947百万円となりました。  当連結会計年度末では、総資産は有形固定資産の増加等により649,149百万円増加し、4,783,460百万円(前年度末比15.7%増)となりました。負債は社債及び短期借入金の増加等により263,694百万円増加し、1,610,145百万円(前年度末比19.6%増)となりました。純資産は当社株主帰属当期純利益の計上等により385,455百万円増加し、3,173,315百万円(前年度末比13.8%増)となりました。 ② キャッシュ・フローの状況 当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」と記載します。)は、前連結会計年度末より88,893百万円減少し、当連結会計年度末において179,715百万円となりました。(営業活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度の営業活動により得られた資金は407,941百万円となり、前連結会計年度と比較して197,489百万円増加(前年度比93.8%増)しておりますが、これは棚卸資産が減少したこと等によるものです。(投資活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度の投資活動に使用した資金は527,416百万円となり、前連結会計年度と比較して204,191百万円増加(前年度比63.2%増)しておりますが、これは有形固定資産の購入額が増加したこと等によるものです。(財務活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度の財務活動に使用した資金は462百万円となり、前連結会計年度と比較して123,233百万円減少(前年度比99.6%減)しておりますが、これは満期日が3ヶ月以内の短期債務が増加したこと等によるものです。③ 生産、受注及び販売の実績 当社グループの生産・販売品目は多種多様であり、同種の製品であっても、その容量・構造・形式等は必ずしも一様ではなく、セグメント毎に生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことは行っておりません。 販売の実績につきましては、「① 財政状態及び経営成績の状況」の記載に含めております。 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。 ① 資本の財源及び資金の流動性ⅰ)キャッシュ・フロー 当連結会計年度のキャッシュ・フローの分析につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。(連結キャッシュ・フロー指標) 前連結会計年度当連結会計年度株主資本比率(%)66.866.3時価ベースの株主資本比率(%)65.084.8キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)1.81.2インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)42.048.1 (注)株主資本比率:株主資本/総資産時価ベースの株主資本比率:株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数*)/総資産*自己株式を除くキャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債(社債、短期・長期借入金)/営業キャッシュ・フローインタレスト・カバレッジ・レシオ:営業キャッシュ・フロー/利払い(支払利息) ⅱ)財務政策 当社グループの資金需要には、運転資金需要及び投資を目的とした資金需要、株主還元のための資金需要が含まれます。 運転資金需要のうち主なものは、原材料等の購入費用、製造費用、販売費及び一般管理費、研究開発費等の営業費用によるものであり、投資を目的とした資金需要のうち主なものは、設備投資、事業買収を含む投融資等によるものであります。また、株主還元の方針は次のとおりであります。 (株主還元方針) 配当につきましては、連結業績を反映させるとともに、成長事業のさらなる拡大に向けたM&A、設備投資、研究開発投資等、将来にわたって企業価値を向上させていくために必要となる資金の水準等も考慮した上で決定いたします。また、その時々のキャッシュ・フローを勘案し、株価推移に応じて自己株式の取得も機動的に実施していきます。株主還元方針については、配当を重視し、配当性向30%を目安としております。  これらの資金は、主として内部資金により充当し、必要に応じ金融機関からの借入や社債による資金調達を実施しています。 なお、当連結会計年度末における短期の社債及び借入金の残高は317,103百万円、長期の社債及び借入金の残高は185,716百万円であります。  ② 経営成績 ⅰ)売上高、営業費用及び営業利益 当連結会計年度の売上高は、前年度の2,859,041百万円に対し、101,875百万円増加し、2,960,916百万円(前年度比3.6%増)となりました。国内売上高は1,049,550百万円(前年度比2.3%増)、海外売上高は1,911,366百万円(前年度比4.3%増)となりました。実績為替レートは145円/米ドル(前年度比9円安)、157円/ユーロ(前年度比16円安)となりました。 販売費及び一般管理費は、前年度の710,702百万円に対し、41,725百万円増加し、752,427百万円(前年度比5.9%増)となりました。販売費及び一般管理費の売上高に対する比率は25.5%となりました。 研究開発費は、前年度の154,147百万円に対し、2,961百万円増加し、157,108百万円(前年度比1.9%増)となりました。研究開発費の売上高に対する比率は5.3%となりました。 事業セグメント別の業績は次のとおりであります。 「ヘルスケア部門」 本部門の連結売上高は、975,081百万円(前年度比5.0%増)となりました。営業利益は、97,378百万円(前年度比5.2%減)となりました。 メディカルシステム事業では、内視鏡、CT・MRI等の分野で販売が好調に推移したことにより、売上が増加しました。X線画像診断分野では、中南米や米国を中心にデジタルマンモグラフィ撮影装置「Amulet Innovality」の販売が伸長したことに加え、日本・欧州を中心とした保守サービス事業の拡大により、売上が増加しました。医療IT分野では、医用画像情報システム(PACS)「SYNAPSE」や3D画像解析システム「SYNAPSE VINCENT」を中心としたシステム・サービス販売が日本・米国・欧州等の主要市場を中心に好調に推移し、売上が増加しました。超音波診断分野では、中国での販売が低調となったものの、据置型超音波診断装置の新製品DeepInsightシリーズの販売が日本を中心に堅調に推移し、前年度並みの売上となりました。内視鏡分野では、粘膜の僅かな色の違いを強調し、内視鏡観察をサポートするLCI(Linked Color Imaging)をはじめとする画像強調機能を搭載した「7000システム」等の販売が日本・米国・欧州・中国を中心に伸長し、売上が大幅に増加しました。体外診断(IVD)分野では、COVID-19関連の検査試薬の需要低下による影響を受けるも、血液生化学検査「富士ドライケム」機器・スライドの販売伸長により、売上が増加しました。CT・MRI画像診断分野では、中南米や中東、インドでの販売が伸長したこと等により売上が増加しました。 バイオCDMO事業では、抗体医薬品の製造受託が堅調に推移したことに加え、デンマーク拠点での生産性向上等が寄与し、売上が増加しました。2024年3月には、Johnson & Johnson グループの Janssen Supply Group, LLCとの間で、米国ノースカロライナ拠点で建設中の大型設備(2025年稼働予定)で、長期にわたりバイオ医薬品製造を受託する契約を締結しました。当社は、高い成長を続けるバイオ医薬品市場に対して、生産プロセスの開発受託に加え、小規模生産から大規模生産、原薬から製剤・包装の受託等、顧客のニーズに応え、事業の成長を一段と加速していきます。 ライフサイエンス事業では、抗体医薬品製造向け培地製品の販売が回復したことに加え、創薬支援用iPS細胞の販売が堅調に推移しました。また、大手製薬企業Bayer AGの子会社であるBlueRock Therapeutics LPに、iPS細胞を用いた網膜疾患治療法の開発・商業化に関するライセンスを供与したことに伴い、一時的なライセンス収入を計上したことで売上が増加しました。 医薬品事業では、コロナ禍後の抗菌剤の需要回復や、COVID-19に対する国産ワクチンの治験薬受託製造が寄与し、売上が増加しました。 コンシューマーヘルスケア事業では、化粧品の新製品の販売が伸長しましたが、既存化粧品及び主力サプリメントの販売減少等により、事業全体では売上が減少しました。 CRO事業では、2023年4月に創薬CROビジネスに本格参入後、特徴あるiPS細胞技術やAI技術を活用し、新たな医薬品のシーズ探索や有効性・安全性評価等のサービスを提供しました。今後も当社は、製薬企業をはじめとする顧客の創薬研究を強力にサポートしていきます。 「マテリアルズ部門」 本部門の連結売上高は、690,041百万円(前年度比1.2%増)となりました。営業利益は、42,897百万円(前年度比34.5%減)となりました。 電子材料事業では、半導体市場の市況軟化の影響を受けたものの、2023年10月に米国Entegris社からの買収を完了した半導体用プロセスケミカル事業が寄与し、売上が増加しました。今後、製品ラインアップ拡充による顧客提案力強化を通じて、新規ビジネスのさらなる拡大を図っていきます。また、今後の半導体市場拡大を見据えて、2023年4月には欧州における半導体材料工場の生産設備増強、2023年5月には台湾における最先端半導体材料工場の新設を発表し、さらに2024年1月には熊本拠点でのCMPスラリーの生産設備を本格稼働させるとともに、イメージセンサー用カラーフィルター材料の生産設備導入を発表しました。当社は、積極的な設備投資を継続し、高品質材料の安定生産や強固なグローバル供給体制を構築していきます。 ディスプレイ材料事業では、サプライチェーン全体での生産調整期にあった前年度に対して、売上が増加しました。 産業機材事業では、大手IT企業によるデータセンター建設への投資抑制等を受けたデータアーカイブ用のテープ需要停滞や、業務用PCの需要低迷の影響を受けたタッチパネル用センサーフィルム「エクスクリア」の販売減少等により、売上が減少しました。 ファインケミカル事業では、重合材料の欧州での需要低迷等の影響を受け、化成品販売が減少したことにより、売上が減少しました。 グラフィックコミュニケーション事業では、刷版材料分野は、欧米を中心とした印刷物需要減の影響等により売上が減少しました。デジタル印刷分野は、2023年4月から米国・英国・フランス・カナダにおいてプロダクションプリンターの販売を開始し、欧米向けの販売が伸長したこと等により売上が増加しました。インクジェット分野は、中国での不動産市況の低迷や欧州での金融引き締めによる需要停滞の影響を受けて、セラミック市場向けインクジェットヘッドの販売が減少したこと等により、売上が減少しました。 「ビジネスイノベーション部門」 本部門の連結売上高は、826,136百万円(前年度比1.4%減)となりました。営業利益は、70,750百万円(前年度比1.8%増)となりました。 オフィスソリューション事業では、OEM供給の拡大やワールドワイドでの販売価格改定効果等があったものの、欧米向け輸出が減少したこと等により、売上が減少しました。 ビジネスソリューション事業では、DX関連ソリューションの販売が増加したこと等により、売上が増加しました。2024年2月に、富士フイルムビジネスイノベーション㈱と、㈱サーバーワークスは、クラウドサービスの導入支援・運用保守を行う合弁会社「富士フイルムクラウド㈱」の設立に合意し、4月より営業を開始しました。富士フイルムビジネスイノベーション㈱の全国販売網、及びITインフラ管理の実績と、㈱サーバーワークスが有する、IaaS*の提供をはじめとするクラウドビジネスへの知見と高い技術力を組み合わせ、クラウドサービスの導入支援から運用保守までワンストップで提供していきます。* Infrastructure as a Service。Microsoft Azure、AWS(Amazon Web Services)等のサーバー・CPU・ストレージを指す。 「イメージング部門」 本部門の連結売上高は、469,658百万円(前年度比14.5%増)となりました。営業利益は、101,947百万円(前年度比39.9%増)となりました。 コンシューマーイメージング事業では、インスタントフォトシステムINSTAXの販売が好調に推移し、売上が増加しました。従来の製品ラインアップに加え、「INSTAX mini Evo」や2023年10月に発売した“手のひらサイズカメラ”「INSTAX Pal」を中心に付加価値の高い製品の販売が好調に推移しました。 プロフェッショナルイメージング事業では、デジタルカメラの販売が好調に推移し、売上が増加しました。2024年3月には、高級コンパクトデジタルカメラ「X100シリーズ」の最新モデルとなる「FUJIFILM X100VI」を発売しました。約4020万画素センサーと最新プロセッサーを採用するとともに、シリーズ初のボディ内手振れ補正機能も搭載し、さらなる高画質・高性能を追求しています。  ⅱ)営業外損益及び税金等調整前当期純利益 営業外収益及び費用は、前年度9,145百万円の営業外収益に対し31,418百万円増加し、40,563百万円の営業外収益となりました。 税金等調整前当期純利益は、前年度の282,224百万円に対し35,064百万円増加し、317,288百万円となりました。  ⅲ)法人税等 法人税等は、前年度の65,206百万円に対し12,896百万円増加し、78,102百万円となりました。  ⅳ)持分法による投資損益及び非支配持分帰属損益 持分法による投資損益は、前年度4,656百万円の利益に対し545百万円減少し、4,111百万円の利益となりました。 非支配持分帰属損益は、前年度の2,252百万円の利益に比べ2,464百万円減少し、212百万円の損失となりました。  ⅴ)当社株主帰属当期純利益 当社株主帰属当期純利益は、前年度の219,422百万円に対し24,087百万円増加し、243,509百万円となりました。基本的1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の182.40円に対し、202.29円となりました。また、希薄化後1株当たり当社株主帰属当期純利益は、前年度の182.14円に対し、202.05円となりました。 なお、当社は、2024年4月1日付で普通株式を1株につき3株の割合で株式分割を行っております。1株当たり当社株主帰属当期純利益の各金額は、前連結会計年度の期首に当該株式分割が行われたと仮定して算定しております。 ③ 次期の見通し (単位:億円) 2024年度(次期の見通し)2023年度(実績)増減率・増減額売上高31,00029,6094.7%営業利益3,0002,7678.4%税金等調整前当期純利益3,1003,173△2.3%当社株主帰属当期純利益2,4002,435△1.4%ROE(%)7.88.20.4ポイント減ROIC(%)5.45.60.2ポイント減為替レート(円/米ドル)140円145円△5円為替レート(円/ユーロ)150円157円△7円  2024年度業績は、連結売上高は3兆1,000億円(前年度比4.7%増)、営業利益は3,000億円(前年度比8.4%増)、税金等調整前当期純利益は3,100億円(前年度比2.3%減)、当社株主帰属当期純利益は2,400億円(前年度比1.4%減)を予想しております。 通期での対米ドル円為替レートを140円、対ユーロ円為替レートを150円で想定しております。 ④ 重要な会計上の見積り 当社の連結財務諸表は、米国において一般に公正妥当と認められた会計基準に準拠して作成されております。これらの財務諸表の作成にあたっては、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす見積り及び仮定を行う必要があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは次のとおりであります。ⅰ)企業結合 企業結合は取得法で処理しております。取得法では、取得した全ての資産及び引き受けた全ての負債を、支配獲得日における公正価値に基づき認識及び測定します。公正価値の決定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率及び永久成長率等の、重要な見積りを伴います。 企業結合の処理における公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化に伴い公正価値が修正され、取得した資産の将来における減損損失の計上、引き受けた負債の増加につながる可能性があります。 なお、当事業年度に実施した事業買収については、連結財務諸表注記「23 事業買収及び事業売却」に記載しております。 ⅱ)営業権の減損 営業権は償却せず、毎年1月1日時点で減損の有無を検討しております。営業権の減損テストは、当社の報告単位毎に見積将来キャッシュ・フローの現在価値に基づく公正価値に基づいて行われており、使用される割引率は、報告単位のWACC(加重平均資本コスト)に基づいて算出しております。また、客観的事実や状況の変化により当該資産の公正価値が帳簿価額を下回る可能性がある場合には、その都度減損の有無を検討しております。 見積将来キャッシュ・フローの現在価値に基づく公正価値の算定には、将来キャッシュ・フローの予測、割引率及び永久成長率等の、重要な見積りを伴います。 営業権の減損判定に使用した公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化によって公正価値が減少し、将来において営業権の減損損失を認識することになる可能性があります。 なお、事業セグメント毎の営業権の残高については、連結財務諸表注記「8 営業権及びその他の無形固定資産」に記載しております。 ⅲ)長期性資産の減損 営業権及び耐用年数を確定できないその他の無形固定資産を除く、保有及び使用予定の長期性資産について、客観的事実や状況の変化により当該資産の帳簿価額の回収可能性に疑いのある場合には、減損の有無を検討しております。減損の兆候があると判断されるときは、その資産に関連する見積割引前将来キャッシュ・フローとその資産の帳簿価額を比較し、帳簿価額の減額が必要かどうかを検討しております。この結果、帳簿価額が割引前将来キャッシュ・フローを超過すると判断される場合は、当該資産の帳簿価額を見積公正価値へ減額処理しております。公正価値を決定するにあたり、当社は市場取引価格又はその他の評価方法を使用しております。市場取引価格を利用できない場合には、主に資産の使用や最終的な処分から生じる見積将来キャッシュ・フローに基づく割引現在価値法、ロイヤルティ免除法又は超過収益法を使用しております。 これらの手法は、将来見積利益又はキャッシュ・フローの予測及び割引率等の、重要な見積りを伴います。 長期性資産の減損判定に使用した公正価値の算定に用いられた見積りは合理的であると考えていますが、見積りの根拠となる前提条件の予測不能な変化によって公正価値が減少し、将来において長期性資産の減損損失を認識することになる可能性があります。 ⅳ)退職給付引当金及び退職給付費用 当社の一部の子会社は確定給付企業年金制度を採用しており、当該制度に係る退職給付引当金及び退職給付費用は、数理計算上の仮定に基づいて算出しております。これらの仮定には、割引率、年金資産の長期期待収益率、予想再評価率、退職率、死亡率等が含まれております。 数理計算上の仮定は、最善の見積りにより決定しておりますが、見直しが必要となった場合には、退職給付引当金及び退職給付費用が増加する可能性があります。 なお、数理計算上の仮定については連結財務諸表注記「10 退職給付制度」に記載しております。 ⅴ)信用損失引当金 金融資産の信用損失引当金は、残存期間において将来的に発生すると予測される全ての信用損失を見積っています。 信用損失引当金の計上において、当社は、信用の質を一括評価債権及び個別評価債権として管理しており、債務者の財政状態や支払の延滞状況等、過去の信用損失実績及び合理的かつ裏付け可能な予測に基づき、金融資産について一括評価及び個別評価を行っています。 なお、信用損失引当金の残高については、連結財務諸表注記「21 金融資産の信用の質及び信用損失引当金」に記載しております。 ⅵ)繰延税金資産 資産及び負債の財務会計上の金額と税務上の金額の差異に基づいて繰延税金資産及び負債を認識しており、その算出にあたっては差異が解消される年度に適用される税率及び税法を適用しております。また、繰延税金資産のうち回収されない可能性が高い部分については、評価性引当金を計上しております。 回収可能性の検討にあたっては、評価時点で利用可能な情報に基づいた最善の見積りを行っておりますが、見積りの前提とした仮定や条件に変更が生じた場合には、繰延税金資産の回収可能性の評価を見直す可能性があります。 なお、繰延税金資産の残高については、連結財務諸表注記「11 法人税等」に記載しております。 ⅶ)棚卸資産 棚卸資産については、原則として移動平均法による低価法により評価しております。また、当社は定期的に陳腐化、滞留、又は過剰在庫の有無を検討し、該当する場合には正味実現可能価額まで評価減しております。 評価損の見積りにあたっては、過去の出荷実績や評価時点で入手可能な情報等を基に、合理的と考えられる様々な要因を考慮した上で判断しておりますが、市場環境が予測より悪化して正味実現可能価額が下落する場合には、追加の評価損計上が必要となる可能性があります。

※本記事は「富士フイルムホールディングス株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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