会社名 | エーザイ株式会社 |
業種 | 医薬品 |
従業員数 | 連11067名 単2984名 |
従業員平均年齢 | 44.2歳 |
従業員平均勤続年数 | 18.5年 |
平均年収 | 10538622円 |
1株当たりの純資産 | 1499.91円 |
1株当たりの純利益 | 70.82円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 160円 |
配当性向 | 225.9% |
株価収益率(PER) | 87.78倍 |
自己資本利益率(ROE) | 4.6% |
営業活動によるCF | 559億円 |
投資活動によるCF | ▲253億円 |
財務活動によるCF | ▲227億円 |
研究開発費※1 | 1690.21億円 |
設備投資額※1 | 152.47億円 |
販売費および一般管理費※1 | 3740.06億円 |
株主資本比率※2 | 56.9% |
有利子負債残高(連結)※3※4 | 0円 |
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1)企業理念当社グループは、患者様と生活者の皆様の喜怒哀楽を第一義に考え、そのベネフィット向上に貢献することを企業理念としています。この理念のもとですべての役員および従業員が一丸となり、世界のヘルスケアの多様なニーズを充足し、いかなる医療システム下においても存在意義のあるヒューマン・ヘルスケア(hhc)企業となることをめざしています。当社グループの使命は、患者様と生活者の皆様の満足の増大であり、他産業との連携によるhhcエコシステムを通じて、日常と医療の領域で生活する人々の「生ききるを支える」ことです。その結果として売上や利益がもたらされ、この使命と結果の順序を重要と考えています。当社グループは、このhhc理念の実現に向けて、主要なステークホルダーズである患者様と生活者の皆様、株主の皆様および社員との信頼関係の構築に努めるとともに、コンプライアンス(法令と倫理の遵守)を日々実践し、企業価値の向上に取り組んでいます。本企業理念は、定款に定め、株主の皆様と共有化をはかっています。当社グループは、hhc理念に基づき、人々の「健康憂慮の解消」と「医療較差の是正」という社会善を効率的に実現し、社会的インパクトを創出することで、長期的な企業価値の増大をめざします。 (2)経営環境、経営方針・経営戦略、ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等当社グループは、中期経営計画「EWAY Future & Beyond」を2021年4月よりスタートしました。 ① 中期経営計画「EWAY Future & Beyond」「EWAY Future & Beyond」では、2021年度からの5年間を「EWAY Future」、2026年度以降を「EWAY Beyond」とし、当社グループが貢献すべき主役を「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」に拡大しました。患者様と生活者の皆様の「生ききるを支える」という想いとともに、アンメット・メディカルニーズが極めて高く、当社グループが最も強みを持つ認知症領域とがん領域に立脚したサイエンスとデータに基づくソリューションを創出し、他産業やグループとの連携によるエコシステムの構築を通じて、hhceco(hhc理念+エコシステム)企業へと進化することをめざしています。2023年にはhhcエコシステムを通じて社会善を効率的に実現するための新たなマテリアリティを策定しました。認知症領域、がん領域、グローバルヘルス領域における社会善の実現に加え、人財価値の最大化、および財務戦略を重要マテリアリティとして特定し、2030年度に向けた長期目標とKPIおよびリスクを設定・特定しました。これらのマテリアリティを羅針盤とし、社会善の効率的な実現に取り組んでいきます。 ② 中期経営計画「EWAY Future & Beyond」の主な進捗と取り組み病態生理学に基づき疾患を連続体(Disease Continuum)として捉え、ヒューマンバイオロジーエビデンスに基づく創薬研究を実践するDeep Human Biology Learning(DHBL)研究開発体制のもと、当社グループが当該領域のヒューマンバイオロジーに最も早く深くアクセスすることが可能な5つの創薬領域(ドメイン)にフォーカスし、創薬仮説の構築・検証から承認取得までの創薬活動を推進しています。具体的には、「微小環境」、「タンパク質恒常性破綻」、「細胞系譜や細胞分化」、「細胞老化を伴う炎症、低酸素、酸化ストレス」、「顧みられない熱帯病やパンデミックの制圧」の創薬領域で構成され、アルツハイマー病(AD)に代表される神経変性疾患と難治性がんの分野でフロントランナーになるとともに、グローバルヘルスにおいても継続的な貢献を果たしていくことをめざしています。また、人々の日常領域から医療領域までの全てのライフステージを支えるエコシステムを、アカデミア、企業、自治体などのパートナーと連携して構築することで、価値創造をめざします。 (a) 認知症領域レカネマブ(ブランド名:「レケンビ」)について、早期ADを対象に、2023年7月に米国において、米国食品医薬品局(FDA)よりフル承認を取得しました。2023年9月に日本、2024年1月に中国、2024年5月には韓国においても承認を取得しています。現在、欧州、英国(北アイルランドを除く)、カナダなど13の国と地域で申請中です。ADは、早期の診断と治療が必要な進行性の疾患であり、既に上市を果たしている米国、日本では、AD領域におけるパイオニアとして、認知機能検査、アミロイドβ(Aβ)検査(PET、CSF)、APOE4検査、投薬、ARIAモニタリングと続く、一連の診断・治療パスウェイの構築に取り組んでいます。また、血液によるAβテストの共同開発や血液バイオマーカーを用いた認知症診断ワークフロー構築に向けた共同研究を複数のパートナー企業と進め、診断・治療パスウェイの簡素化をめざしています。AD Continuumに基づく他のプロジェクトの開発も進行中です。レカネマブについては、プレクリニカル(無症状期)ADを対象とするAHEAD 3-45試験(フェーズⅢ試験)も進行中です。また、優性遺伝アルツハイマーネットワーク試験ユニット(DIAN-TU)が実施し、抗MTBR(Microtubule binding region: 微小管結合領域)タウ抗体「E2814」の効果を評価するTau NexGen試験(フェーズⅡ/Ⅲ試験)が日本、米国、欧州において進行中です。同試験の基礎療法となる抗アミロイド療法にはレカネマブが選定されています。孤発性ADを対象としたフェーズⅡ試験についても計画中です。また、ダメージを受けたコリン作動性神経の機能を回復し、コリン作動性神経の変性を予防することが期待される選択的Tropomyosin receptor kinase A(TrkA)結合シナプス再生剤「E2511」については、フェーズⅠ試験が米国において進行中です。日本においては、慶應義塾大学と共同で設立した産医連携拠点「エーザイ・慶應義塾大学 認知症イノベーションラボ(EKID)」における、脳が本来備えている防御機構、堅牢性の維持・強化に関わる創薬ターゲットの探索研究や創薬研究も行っています。 (b) 認知症エコシステム認知症エコシステムを通じて、認知症発症前の日常領域における健康状態の維持、疾患啓発、予防から、発症後の医療領域における正確な診断、治療(薬物・非薬物)効果の確認、QOL(Quality of Life)の向上に寄与する施策といったソリューションの提供をめざしています。2023年9月には、デジタル事業会社Theoria technologies株式会社を当社の完全子会社として設立し、事業活動を開始しました。認知症の診療における当事者様・医師・介護者間のコミュニケーション円滑化を支援するアプリ「ササエル」の開発・提供や、MCI・認知症の早期発見に向けた認知機能低下リスク予測AI等の開発を推進しています。日本においては、保険、金融、自動車などの他産業や自治体と共に、デジタルツール「のうKNOW」(非医療機器)の活用を中心に、認知症エコシステム拡大に向けた様々な連携を進めています。中国においては、日常生活から医療までのワンストップオンライン健康プラットフォームである銀髪通(Yin Fa Tong)を通じてオンライン診療を提供し、デジタル技術を活用した医療較差の是正に取り組んでいます。アジア地域においても、他産業や非営利団体とのエコシステム構築を拡大し、認知症の疾患認知率向上、早期発見、早期診断に向けた取り組みを進めています。 (c) がん領域抗がん剤「レンビマ」(Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAと共同開発)については、単剤療法としての甲状腺がん、肝細胞がん、胸腺がん(日本)やペムブロリズマブとの併用療法による腎細胞がん、子宮内膜がん等の既存適応症における価値最大化に引き続き取り組む一方、肝動脈化学塞栓療法併用肝細胞がん、胃がん、食道がんなど、複数の適応追加に向けた臨床試験(LEAP試験)が進行中です。さらに、次世代オンコロジー製品の開発では、「レンビマ」や「キイトルーダ」に抵抗性を示す難治性がんに対するファーストインクラスの中分子治療薬「E7386」や、当社グループが強みを持つケミストリー力を具現化するモダリティーとしてエリブリン、スプライシングモジュレーター、タンパク質分解誘導剤をペイロードに有する独自の抗体薬物複合体(ADC)の創製に注力しています。エリブリンをペイロードとしたADCとして、「MORAb-202」および「BB-1701」について、外部パートナーと共同開発を進めています。 (d) グローバルヘルス領域グローバルな医薬品アクセスの課題解決への取り組みを、当社グループの責務であるとともに、将来への長期的な投資であると考え、政府や国際機関、非営利民間団体等との官民パートナーシップのもと、積極的に推進しています。開発途上国および新興国に蔓延する顧みられない熱帯病(NTDs)の一つであるリンパ系フィラリア症を制圧するため、その治療薬である「DEC(一般名:ジエチルカルバマジン)錠」を当社グループのインド・バイザッグ工場で製造し、本剤を必要とするすべての蔓延国において制圧が達成されるまで、世界保健機関(WHO)に「プライス・ゼロ(無償)」で提供することにコミットしています。2024年3月末までに30カ国に22.8億錠を供給しました。さらに、日本発のグローバルヘルス技術振興基金(GHIT Fund)、NTDsに対する新薬開発の経験豊富な非営利団体/非政府組織とのパートナーシップのもと、マイセトーマ(菌腫)をはじめとするNTDs、結核、マラリアに対する新薬開発を推進しているほか、疾患啓発活動にも取り組んでいます。当社グループは、2022年6月、NTDs制圧に関する「キガリ宣言」に署名し、今後もNTDs制圧支援を継続することを表明しました。 (e) 人財価値の最大化当社は、定款において社員を主要なステークホルダーの一つと定め、「安定的な雇用の確保」に加え、「人権および多様性の尊重」、「自己実現を支える成長機会の充実」、「働きやすい環境の整備」に努めることを明記するとともに、「統合人事戦略」を策定し、「社員の健康を含めたウェルビーイング」、「多様な働き方」、「社員の成長」、「組織、事業の成長」を柱とした、個と組織が共に成長するための人事施策を実行しています。DE&I(ダイバ―シティ、エクイティ、インクルージョン)は、当社のイノベーション創出の源泉であるとともに、企業理念の実現に向けた重要なアプローチであり、グローバルに推進体制を構築し、国籍・性別・年齢などを問わず多様な価値観を持つ人財が活躍できる風土づくりを進めています。さらにグローバルエンゲージメントサーベイを実施し、人事戦略の検証・強化に活用するなど、中長期的な人財価値の最大化を推進しています。2023年度からは「Human Capital Report」を発行し、人事戦略と連動する人的資本に関する取り組みやKPIを開示し、その改善に向けて継続的に取り組んでいます。 ③ 目標とする経営指標当社グループは、2021年度からスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」においては、売上収益・利益に関しては、社会環境や開発品の承認状況に大きく左右されることから中長期での数値目標は設定していません。その代わりに、年次事業計画を精緻に策定しています。2024年度の業績予想は以下のとおりです。 2024年度業績予想売上収益7,540億円営業利益535億円親会社の所有者に帰属する当期利益430億円ROE*15.2%*1 ROE(親会社所有者帰属持分当期利益率)= 親会社の所有者に帰属する当期利益÷親会社の所有者に帰属する持分 上記に加え、中長期の経営指標として、2032年度にはROE25%レベル、10年平均ROE15%レベルを目標としています。 (3)資本政策の基本的な方針当社グループの資本政策は、財務の健全性を担保した上で、株主価値向上に資する「中長期的なROE経営」、「持続的・安定的な株主還元」、「成長のための投資採択基準」を軸に展開しています。 ① 中長期的なROE経営当社グループは、ROEを持続的な株主価値の創造に関わる重要な指標と捉えています。「中長期的なROE経営」では、売上収益利益率(マージン)、財務レバレッジ、総資産回転率(ターンオーバー)を常に改善し、中長期的に正のエクイティ・スプレッド*1を創出すべく、資本コストを上回るROEを目指していきます。2032年度にはROE25%、エクイティ・スプレッド17%レベルを目指します。*1 エクイティ・スプレッド=ROE-株主資本コスト ② 持続的・安定的な株主還元当社グループは、健全なバランスシートのもと、連結業績、DOE*2およびフリー・キャッシュ・フローを総合的に勘案し、シグナリング効果も考慮して、株主の皆様への還元を継続的・安定的に実施します。DOEは、連結純資産に対する配当の比率を示すことから、バランスシートマネジメント、ひいては資本政策を反映する指標の一つとして位置づけています。自己株式の取得については、市場環境、資本効率等に鑑み適宜実施する可能性があります。なお、健全なバランスシートの尺度として、親会社所有者帰属持分比率、負債比率(Net DER)*3を指標に採用しています。*2 DOE(親会社所有者帰属持分配当率)= 配当金総額÷親会社の所有者に帰属する持分*3 負債比率(Net DER)= (有利子負債(借入金)-現金及び現金同等物-3カ月超預金等-親会社保有投資有価証券等)÷親会社の所有者に帰属する持分 ③ 成長のための投資採択基準当社グループは、成長投資による価値創造を担保するために、戦略投資に対する投資採択基準を採用し、リスク調整後ハードルレートを用いた正味現在価値と内部収益率スプレッドにハードルを設定し、投資を厳選しています。 |
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1)事業の概況○ 当社グループは2021年4月よりスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」に基づき、「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」に視点を拡大し、人々の健康憂慮の解消と医療較差の是正に向けたソリューションをお届けすべく、他産業との協業によるエコシステムの構築をめざしています。また、持続的な企業価値向上のため、人財の価値を最大限に引き出すべく人的資本経営を推進しています。企業理念・経営戦略と連動した統合人事戦略を策定し、国籍・性別・年齢などを問わず多様な価値観を持つ人財が活躍できる風土づくりを進め、イノベーションの創出を目指しています。○ 疾患の根本原因に紐づくゲノム情報、病態生理学に基づいたDeep Human Biology Learning(DHBL)創薬体制のもと、当社グループのみが有するヒューマンバイオロジーの知見や、高質な臨床サンプルから得られるゲノム情報に基づいて、注力分野である神経変性疾患および難治性がんに加えて、顧みられない熱帯病(Neglected Tropical Diseases: NTDs)をはじめとするグローバルヘルス分野における創薬を推進しています。○ 認知症領域では、2023年度においてアルツハイマー病(AD)治療剤「レケンビ」は米国、日本、中国で承認を取得し、さらに世界各国における承認の取得とアクセス拡大に向けた取り組みを加速しています。また、すべての当事者様の健康憂慮の解消と医療較差の是正に貢献すべく、中国における認知症を対象としたワンストップオンライン健康プラットフォームの構築や、日本、アジアにおける他産業や非営利団体との提携といったソリューションを備えたエコシステムの構築を進めています。○ がん領域では、抗がん剤「レンビマ」について、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USAの共同販促による既存適応症における価値最大化に取り組んでいます。また、肝動脈化学塞栓療法併用肝細胞がん、胃がん、食道がんなど、複数の適応追加に向けた臨床試験(LEAP試験)が進行中です。○ これらの活動の結果、2023年度の売上収益は7,418億円となりました。うち、「レンビマ」は2,976億円、不眠症治療剤「デエビゴ」は418億円、「レケンビ」は43億円となり、前年度から大幅な成長を遂げました。営業利益は、「レケンビ」への患者様アクセス拡大や新たな適応、製剤の開発に対する投資を継続する一方、研究開発費、販売管理費の総額については、財務規律に基づいた管理を行った結果、534億円と前期から大幅な成長を果たしました。安定した利益およびフリー・キャッシュ・フロー創出により、2023年度末におけるNet DER(負債比率)は-0.19倍、自己資本比率は62.8%と健全な財務ポジションを堅持しており、成長投資と安定配当を両立しています。 (2)経営成績の状況○ 当期(2023年4月1日~2024年3月31日)の連結業績は、次のとおりです。(単位:億円、%) 2022年度2023年度前期比売上収益7,4447,41899.6売上原価1,7781,55387.3売上総利益5,6665,864103.5販売費及び一般管理費3,5833,744104.5研究開発費1,7301,69097.7営業利益400534133.4税引前当期利益450618137.3法人所得税△118180-当期利益56843877.0親会社の所有者に帰属する当期利益55442476.5当期包括利益9691,228126.7基本的1株当たり当期利益193円31銭147円86銭76.5 ○ 売上収益は、抗がん剤「レンビマ」および不眠症治療剤「デエビゴ」(英名「Dayvigo」)が引き続き伸長したことに加え、選択的エストロゲン受容体分解薬elacestrant(一般名)に係る経済的収益受領権の譲渡による一時金を計上した一方で、前期に抗てんかん剤「フィコンパ」(英名「Fycompa」)の米国における権利の譲渡による一時金を計上した影響などにより、前期と同水準となりました。なお、Merck & Co., Inc., Rahway, NJ, USA(以下 米メルク社)からの販売マイルストンペイメント(当期189億円、前期167億円)を計上しました。医薬品事業の売上収益は6,915億円(前期比101.0%)となりました。○ グローバルブランドの売上収益は、「レンビマ」が2,976億円(前期比119.3%)、「デエビゴ」が418億円(同142.3%)、抗がん剤「ハラヴェン」が375億円(同90.7%)、「フィコンパ」が259億円(同69.7%)となりました。アルツハイマー病(AD)治療剤「レケンビ」の売上収益は43億円(前期は0.2億円)となりました。○ 販売費及び一般管理費は、AD治療剤「Aduhelm」および米国における「Fycompa」の関連費用が無くなった一方で、「レケンビ」の米国と日本での上市による販売費の増加や「レンビマ」の売上拡大に伴う米メルク社への折半利益の支払いが増加したことなどにより、増加となりました。○ 研究開発費は、「レケンビ」への積極的な資源投入を行った一方で、パートナーシップモデルの活用や優先度を踏まえた資源投入等により効率性を高めた結果、減少となりました。○ 以上に加え、製品ミックスの改善により売上総利益が増加するとともに、精神疾患治療剤「Loxapac」およびパーキンソン病治療剤「Parkinane LP」に係るフランス等における権利の譲渡益をその他の収益に計上した結果、営業利益は大幅な増益となりました。また、医薬品事業のセグメント利益は3,436億円(前期比105.5%)となりました。○ 当期利益については、税引前当期利益が大幅な増益となった一方で、前期に一時的な要因により税金費用の減少が生じた影響で、減益となりました。 [セグメントの状況](各セグメントの売上収益は外部顧客に対するものです) 当社グループは、セグメントを医薬品事業とその他事業に区分しており、医薬品事業を構成する日本、アメリカス(北米)、中国、EMEA(欧州、中東、アフリカ、ロシア、オセアニア)、アジア・ラテンアメリカ(韓国、台湾、インド、アセアン、中南米等)の5つの事業セグメントを報告セグメントとしています。なお、当連結会計年度における日本事業の再編に伴い、一般用医薬品等事業を日本医薬品事業へ統合しています。前連結会計年度のセグメント情報は、当該変更を反映しています。 <日本医薬品事業>○ 売上収益は2,169億円(前期比90.8%)、セグメント利益は728億円(同99.9%)となりました。売上収益の主な内訳は、医療用医薬品が1,943億円(同90.2%)、一般用医薬品等が227億円(同96.5%)でした。○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「デエビゴ」が355億円(前期比146.7%)、「フィコンパ」が69億円(同114.8%)と、共に大幅に伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ」が155億円(同113.3%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は79億円(同93.7%)となりました。ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」は、2023年6月にアッヴィ合同会社(東京都)との共同販促契約が満了した影響により134億円(同28.4%)となりました。ヤヌスキナーゼ阻害剤「ジセレカ」は126億円(同171.2%)と大幅に伸長し、慢性便秘症治療剤「グーフィス」は70億円(同106.4%)と伸長しました。一般用医薬品等では、チョコラBBグループの売上収益が150億円(同106.1%)と伸長しました。○ 2023年12月、「レケンビ」を新発売しました。 <アメリカス医薬品事業>○ 売上収益は2,324億円(前期比109.2%)、セグメント利益は1,472億円(同110.3%)となりました。○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「Dayvigo」は51億円(前期比108.3%)と伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ」が2,041億円(同126.3%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は124億円(同89.1%)となりました。 <中国医薬品事業>○ 売上収益は1,119億円(前期比101.0%)、セグメント利益は577億円(同103.7%)となりました。○ 品目別売上収益については、「レンビマ」がジェネリック品の影響などにより269億円(前期比83.5%)となりました。めまい・平衡障害治療剤「メリスロン」は、外部パートナーとの連携で販路が拡大した影響などにより132億円(同134.1%)と大幅に伸長しました。末梢性神経障害治療剤「メチコバール」は126億円(同87.1%)、プロトンポンプ阻害剤「パリエット」は82億円(同98.4%)となり、胃炎・胃潰瘍治療剤「セルベックス」は73億円(同144.9%)と大幅に伸長しました。○ 2023年10月、香港において、パーキンソン病治療剤「エクフィナ」を新発売しました。 <EMEA医薬品事業>○ 売上収益は760億円(前期比105.3%)、セグメント利益は420億円(同101.0%)となりました。○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「Fycompa」は128億円(前期比109.4%)と伸長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ/Kisplyx」が382億円(同123.4%)と大幅に伸長し、「ハラヴェン」は117億円(同85.8%)となりました。 <アジア・ラテンアメリカ医薬品事業>○ 売上収益は542億円(前期比108.8%)、セグメント利益は240億円(同108.4%)となりました。○ 品目別売上収益については、「レンビマ」が130億円(前期比116.8%)と伸長しました。アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」は135億円(同103.8%)と伸長しました。○ 2023年10月に台湾、同年11月に韓国において、「ジセレカ」を新発売しました。○ 2024年2月、シンガポールにおいて、「グーフィス」を新発売しました。 (3)財政状態の状況○ 資産合計は、1兆3,938億円(前期末より1,304億円増)となりました。円安の進行により海外連結子会社の資産が増加したことに加え、「レケンビ」の生産を進めたことなどにより棚卸資産が増加したほか、パートナーに対する未収金等が増加しました。○ 負債合計は、4,948億円(前期末より540億円増)となりました。営業債務及びその他の債務が減少した一方で、サステナビリティ・リンク・ローンを実行したことにより借入金が増加したことに加え、未払費用が増加しました。○ 資本合計は、8,990億円(前期末より764億円増)となりました。円安の進行に伴い在外営業活動体の換算差額が増加しました。○ 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は62.8%(前期末より0.5ポイント減)となりました。 (4)キャッシュ・フローの状況○ 営業活動によるキャッシュ・フローは、560億円の収入(前期は18億円の支出)となりました。運転資本は、「レケンビ」についての棚卸資産の増加などにより増加となりました。○ 投資活動によるキャッシュ・フローは、253億円の支出(前期より26億円の支出増)となりました。研究設備および製造設備の増強を進め、設備投資に係る支出が発生しました。○ 財務活動によるキャッシュ・フローは、227億円の支出(前期より18億円の支出減)となりました。主に配当金の支払いによるものです。○ 以上の結果、現金及び現金同等物の残高は3,047億円(前期末より373億円増)、営業活動によるキャッシュ・フローから資本的支出等を差し引いたフリー・キャッシュ・フローは304億円の収入となりました。 (5)生産、受注および販売の実績① 生産実績(a) 生産実績当期における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)日本医薬品事業224,418124.6アメリカス医薬品事業550,874120.5中国医薬品事業90,48081.4EMEA医薬品事業111,81092.1アジア・ラテンアメリカ医薬品事業62,345123.8報告セグメント計1,039,927113.0その他事業4,523149.5合計1,044,450113.1(注1) 金額は販売見込価格により算出し、セグメント間の取引については相殺消去しています。 (b) 商品仕入実績当期における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)日本医薬品事業26,48748.1アメリカス医薬品事業411.3中国医薬品事業5,277125.5アジア・ラテンアメリカ医薬品事業1,412121.2報告セグメント計33,17954.8その他事業668173.7合計33,84755.6(注1) 金額は仕入価格により算出し、セグメント間の取引については相殺消去しています。(注2) 当期においてEMEA医薬品事業の商品仕入実績はありませんでした。 ② 受注実績当社グループは販売計画に基づいた生産を行っているため、該当事項はありません。 ③ 販売実績当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)日本医薬品事業216,93590.8アメリカス医薬品事業232,381109.2中国医薬品事業111,928101.0EMEA医薬品事業75,989105.3アジア・ラテンアメリカ医薬品事業54,226108.8報告セグメント計691,458101.0その他事業50,29383.9合計741,75199.6(注1) セグメント間の取引については相殺消去しています。(注2) 主な相手先別の販売実績については、前期・当期とも総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しています。 (6)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容① 重要な会計方針及び見積り連結財務諸表作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しています。重要な会計方針及び見積りの詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3. 重要性のある会計方針、 4. 重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。 ② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)事業の概況、(2)経営成績の状況、 (3)財政状態の状況、(4)キャッシュ・フローの状況」に記載しています。 ③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報当社グループは、資金調達手段について、「手元現金」、次に「負債による資金調達(デット)」、最後に「株式の新規発行による資金調達(エクイティ)」とするペッキング・オーダー理論にもとづく優先順位付けをしています。原則として、手元現金の活用および負債が優先であり、既存株主の価値を毀損する可能性があるエクイティによる資金調達は最終手段として考えています。そのため、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)管理による運転資本のコントロール、投資有価証券を含む資産売却などによるバランスシートマネジメントを継続的かつグローバルに推進することで資産効率を高め、最適資本構成にもとづく最適配当政策と積極的な成長投資の両立を可能としています。2023年度において、株主還元については、健全なバランスシートを維持していることから、1株当たり年間配当金を前年と同額の160円としました。成長投資については、将来の成長のための川島工園・筑波研究所の設備・施設への投資継続などを積極的に実施しました。2024年度においても積極的な成長投資を継続する計画で、資本的支出は525億円を見込み、手元資金を充当する予定です。資金の流動性については、現時点では概ね月商の3倍を適正な運転資金の水準と考えています。2023年度末における現金及び現金同等物残高は3,047億円であり、十分な流動性を確保しています。さらに、当座借越・コミットメントラインなどの流動性補完により、流動性を一層強化しています。また、手元資金の効率的な活用を企図して、日本国内・EMEA域内におけるキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)に加え、グローバル・キャッシュ・マネジメント・システム(GCMS)を導入しています。2023年度末時点での実質的なキャッシュ残高である有利子負債控除後のネットキャッシュは1,687億円と、実質無借金を維持しています。引き続き、「ネットキャッシュの維持」を主要な財務規律として重視するとともに、Net DERを±0.3レベルにコントロールすることで財務の健全性を維持します。 ④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営環境、経営方針・経営戦略、ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等 ③目標とする経営指標」に記載のとおり、中長期での数値目標は設定していません。その代わり、年次事業計画を精緻に策定し、中長期の経営指標として、2032年度にはROE25%レベル、10年平均ROE15%レベルを目標としています。2023年度業績予想(売上収益:7,120億円 営業利益:500億円 親会社の所有者に帰属する当期利益:380億円ROE:4.9%、2022年度有価証券報告書提出日時点)との比較では、売上収益は7,418億円(業績予想対比104.2%)、営業利益は534億円(同106.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は424億円(同111.6%)、ROE5.1%(業績予想差0.2ポイント増)となりました。売上収益は、グローバルブランドの抗がん剤「レンビマ」が想定以上に伸長したことにより業績予想を上回りました。営業利益は、アルツハイマー病(AD)治療剤「レケンビ」へ計画どおりの資源投入を行ったことに加え、「レンビマ」の売上拡大に伴う米メルク社への折半利益の支払い増加した一方、製品ミックスの改善による売上総利益の改善、パートナーシップモデルの活用、開発テーマの優先度を踏まえた研究開発費の効率的な投入等により、業績予想を上回りました。 |
※本記事は「エーザイ株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
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