株式会社荏原製作所の基本情報

会社名株式会社荏原製作所
業種機械
従業員数連18372名 単4688名
従業員平均年齢43.6歳
従業員平均勤続年数15.8年
平均年収8611499円
1株当たりの純資産3438.27円
1株当たりの純利益452.39円
決算時期12月
配当金229円
配当性向47.2%
株価収益率(PER)14.1倍
自己資本利益率(ROE)13.9%
営業活動によるCF685億円
投資活動によるCF▲317億円
財務活動によるCF▲251億円
研究開発費※114.81億円
設備投資額※127.48億円
販売費および一般管理費※1739.44億円
株主資本比率※254.5%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。 (1)経営方針<長期ビジョン「E-Vision2030」>当社グループは1912年の創業以来、創業の精神である「熱と誠」のもとに、「水と空気と環境の分野で広く社会に貢献する」ことを企業理念とし、事業を行ってきました。創業当時は日本の水インフラの整備に貢献し、「水を安全かつ安定的に供給するための事業を通じて国づくりに貢献する」という意思をもって社会の要請に応えてきました。第2次世界大戦からの戦後復興と高度経済成長期には、産業インフラや都市化による建設需要に対して、さまざまなニーズに基づく多種多様な風水力製品・サービスや、市民生活の高度化に伴って生じる廃棄物を処理する焼却設備等を提供してきました。さらに、情報化社会の進展に伴う半導体の爆発的な需要拡大に対して半導体製造装置・機器を開発し、進化する情報化社会に貢献しています。近年は持続可能な社会の要請に対して製品の省エネ化を徹底するなど、事業を通じて社会の様々な課題の解決に貢献してきました。今後100年の人類社会や地球環境を展望した場合、多くの課題が考えられますが、当社グループは、気候変動、特に温暖化現象の激化による異常気象と自然災害の激甚化、海面上昇による高潮、陸地の浸食、さらには食料や水の資源枯渇等を大きな課題と捉えています。また、高度情報化社会はますます進化し、デジタル社会の加速によりライフスタイルが大きく変化することが予想され、社会を支える半導体の技術革新はさらに進むとともに需要も拡大していくと考えられます。このように事業環境が見通しにくい中で、当社グループが今後も社会課題の解決を通じて更なる成長を続けていくためには、今後の社会の展望と課題を認識したうえで、将来のありたい姿を描き、その実現に向けた方針・戦略を明確にすることが不可欠と考え、2020年2月に長期ビジョン「E-Vision2030」を策定しました。 <5つのマテリアリティ>荏原グループは今後も “荏原らしさ”、培われた技術力および信頼性を強みとして、事業を通じてさらに広く社会に貢献し続けていきます。また、2030年に向けて荏原グループが解決・改善していく重要課題を「5つのマテリアリティ」として設定し、その実現プロセスを価値創造ストーリーとして策定・実践していきます。 ① 持続可能な社会づくりへの貢献技術で、熱く、持続可能で地球にやさしい社会、安全・安心に過ごせる社会インフラ、水や食べるものに困らない世界を支えます。② 進化する豊かな生活づくりへの貢献技術で、熱く、世界が広く貧困から抜け出す経済発展と、進化する豊かで便利なくらしを実現する産業を支えます。③ 環境マネジメントの徹底二酸化炭素排出を実質的にゼロにするカーボンニュートラルに向けて、再生可能エネルギー利用を含めた二酸化炭素削減を推進します。 ④ 人材の活躍促進多様な人材が働き甲斐と働き易さを感じながら活躍し、“競争し挑戦する企業風土”を具体化します。⑤ ガバナンスの更なる革新成長へのビジョンを描き、グローバルで勝ち続ける経営を後押しする攻めと守りのガバナンスを追求します。 (2)2030年にありたい姿当社グループは、2030年までに、SDGsをはじめとする社会課題の解決に資する5つのマテリアリティの実現を通じて持続的に貢献し、①社会・環境価値と②経済価値を同時に向上させていくことで企業価値を向上させることにより、グローバルエクセレントカンパニーを目指します。2030年における企業価値向上の目安として、時価総額1兆円規模を設定します。  <成果目標の代表例>  ①社会・環境価値  ・CO2約1億トン相当の温室効果ガスを削減する  ・世界で6億人に水を届ける  ・最先端の半導体デバイスである14オングストローム(100億分の1m)世代への挑戦により、くらしの進化に寄与する  ②経済価値  ・投下資本利益率(ROIC)10.0%以上  ・親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)15.0%以上   ・売上収益1兆円規模 <ROIC経営>「ROIC経営」は株主が重視する企業価値の最大化と、事業部門が重視すべき事業価値の最大化とを橋渡しする有用な経営手法と捉えています。当社の「ROIC経営」においては、管理すべき事業単位毎にWACC(ハードル・レート)を設定し、各事業単位でROIC・WACCスプレッドの最大化を目指した施策を展開しています。ROICツリーにより、事業単位で管理し易い指標にまで分解し、それらを各担当者レベルの評価指標として位置付けると共に、プロセスKPI*として進捗を月次でモニタリングしています。 (3)中期的な経営戦略と目標とする経営指標<E-Plan2025の位置付け・方向性>E-Plan2022での成果をベースに次のステージとして、それぞれの事業で更なる競争力強化を図るべく、E-Plan2025では「顧客起点での価値創造」をテーマとしています。その上で、E-Plan2025期間を、E-Vision2030に掲げる「2030年にありたい姿」に着実に近づき、2030年にそれを確実に実現するための3年間と位置付け、以下のとおり方向性を定めました。 1.マーケットインを強化していくことで、プロダクトアウトから脱却し、「顧客起点での新たな価値創造」を行う企業文化を根付かせる。2.対面市場に向かってそれぞれの事業がパフォーマンスを最大限に発揮する体制となることを企図し、対面市場別5カンパニー制へと組織改変を行う。3.「2030年にありたい姿」の実現をより確かなものとしていくための資本投下(成長投資/基盤投資)を積極的に行う。4.効率性/収益性指標(ROIC、営業利益率)については、2022年に実現したE-Vision2030で掲げた目標水準(ROIC 10%など)を維持する。5.“ROIC経営の深化”を継続的に進めつつ、「2030年に時価総額1兆円」の実現をより強力に推進するために、E-Vision2030で目標として掲げるROEを重要指標として加え15%以上を目指す。6.グループ全体最適と機能毎のグループガバナンス高度化を目的としてCxO制を導入する。 以上の1~6の実践を通じ、「2030年にありたい姿」実現への道筋がより確実に見通せる位置に到達していることがE-Plan2025の目標となります。事業成長については、E-Plan2025期間のトップラインのCAGRを7%と置くこととし、成長分野と位置付ける「建築・産業」と「精密・電子」の2事業を中心にそれを実現していくものとします。 <E-Plan2025のテーマと重点領域>E-Plan2025では対面市場別組織が顧客起点での価値の創発を行うことで新たな事業創出を目指していきます。 テーマ: 「顧客起点での価値創造=起業化」 挑戦し続けるマインドセットをサポートする組織風土を醸成するとともに、会社全体を顧客の要望、課題に真摯に向き合う組織構造へと変化させ、ビジネスを創出する一連の流れを生み出すことにより、継続的な「起業」とそれによる価値創造を目指します。また、テーマ実現を支える5つの重点領域を以下のとおり定めます。1. 対面市場・顧客起点2. 新たな価値創発3. グローバル事業基盤の確立4. 経営インフラの高度化5. ESG経営の推進 <事業セグメントの変更>当社グループでは、長期ビジョンの実現に向けた次の成長ステージとして、「E-Plan2025」の中で、より市場に向き合い顧客起点での価値創造を実現していくためには、従来の製品軸のセグメントから対面市場軸のセグメントへと事業セグメントを変更することが合理的と判断いたしました。「風水力事業」「環境プラント事業」「精密・電子事業」の従来の3事業セグメントを、「建築・産業」「エネルギー」「インフラ」「環境」「精密・電子」の5事業セグメントに変更いたしました。 具体的には、ポンプ、コンプレッサ・タービン、冷熱機械等の製品軸で構成される現行の「風水力」セグメントを、「建築・産業」「エネルギー」「インフラ」の3つの対面市場別セグメントに再構成した上で、それらを「環境」「精密・電子」と並ぶ事業セグメントに位置づけています。 <目標とする経営指標>E-Plan2025の最終年度である2025年度に達成すべき目標として以下の各項目を設定します。財務数値目標分類項目2025年度目標収益性全社営業利益率10.0%以上<セグメント毎営業利益率>- 建築・産業7.0%以上- エネルギー12.0%以上- インフラ6.0%以上- 環境7.0%以上- 精密・電子17.0%以上効率性ROIC※110.0%以上ROE15.0%以上成長性建築・産業売上CAGR(2022-2025年度)6.0%以上精密・電子売上CAGR(2022-2025年度)15.0%以上健全性D/E レシオ(倍)0.3~0.5(管理目安) ※1 ROIC計算式NOPLAT(みなし税引後営業利益)÷投下資本{有利子負債(期首期末平均)+株主資本(期首期末平均)} 非財務目標分類項目2023年度~2025年度目標環境(E)CDP評価(気候変動) B以上を維持Scope1,2 GHG排出量2018年比32%削減Scope3/削減貢献量/他(バリューチェーン) 2030年1億トン削減に向けた合理的測定手法の確立社会(S)競争し、挑戦する風土へ変革し、多様な社員が働きやすさを感じて活躍できる環境づくりを目指す・エンゲージメントサーベイスコア向上(連結) 2025年度 83以上2030年度 86以上グローバルモビリティの向上を目指す・Global Key Position(GKP)における非日本人社員比率(連結)2025年度 30%以上2030年度 50%以上男女の賃金差異解消①GKP女性ポジション比率(連結)②女性管理職比率(単体)①2025年度 8%以上 2030年度 10%以上②2025年度 8%以上性別に関係なく仕事と育児を両立できる企業風土を醸成・男性育児休暇取得比率(単体)2025年度 100%※2023年度11月に目標設定障がいのある社員の活躍促進・障がい者雇用比率(単体+グループ適用会社4社)2025年度 2.6%以上サプライヤ向けの人権デューデリジェンスの結果に基づく必要な施策の実施ガバナンス(G)取締役会の実効性の向上と G to V(Governance to Value)への貢献 E-Plan2025期間におけるキャッシュ・アロケーションの目安(3年間累計) 項目 内容 2023~2025年度3年間累計成長投資 事業ポートフォリオに基づく成長投資(増産対応設備、研究開発、新規事業、M&A等) 1,800億円~2,250億円(内、研究開発費650億円)基盤投資 持続的成長を支える基盤の強化等(維持更新設備、人的資本、ERP等のIT、ビジネスインフラ、ESG関連投資)500億円~800億円株主還元 配当方針:連結配当性向35.0%以上自己株式取得:親会社所有者帰属持分水準、他の投資対象、手元現預金水準、株価の動向、業績の動向等を総合的に勘案し、適切な局面で機動的に実施する (4)経営環境E-Plan2025を策定するうえで前提とした経営環境は以下の通りです。 表中「市場別・地域別トレンド」の矢印は市場の成長動向を示す。 (5)E-Plan2025期間中に対処すべき課題(5-1)事業別の対処すべき課題各事業は、下記の基本方針と基本戦略で課題解決を行っていきます。 ① 建築・産業(ⅰ)基本方針・建築・産業市場において、顧客視点でのポンプ・冷熱製品・サービスを組合せた新たなソリューション提供により、事業の更なる成長を目指す。・DXを活用した業務・事業運営の高度化、効率化(ⅱ)基本戦略・ソリューション事業強化-顧客へのソリューション提供によるモノ売りからコト売りへの転換-新たなビジネスモデルの創出と展開-IoT+クラウドを使った顧客との接点強化・成長市場(海外)の取り込み-M&A拠点製品(Vansan社、Hayward Gordon社)のグローバル展開-高付加価値製品の投入による新市場の開拓-食品、半導体市場を中心とした先進国の産業ユーティリティ市場への参入-アフリカ地域での販路拡大と灌漑向け製品強化-アフリカ、南米、アジア、北欧地域への新拠点の設立・グローバルでの事業インフラ再構築-海外生産拠点の拡充及び地政学リスクを考慮したグローバル調達・生産配分の見直し ② エネルギー(ⅰ)基本方針・エネルギーシフトをリードし、脱炭素社会に貢献するため、サステナビリティやサービス分野で新たなビジネスモデルを確立する。・既存事業領域の収益性を更に向上させるため構造改革を行う。・コンプレッサ・タービンとカスタムポンプの統合により、顧客や市場に新たな価値を提供する。(ⅱ)基本戦略・製品(New Apparatus)-選別受注の継続による、収益性の向上-新規ソリューションの市場投入準備完了・S&S(Global Service)-サービス拠点の構造改革-コンプレッサ・タービンとカスタムポンプのサービスリソース活用-新たなS&Sビジネスの開発と市場投入・グローバルでの生産体制(Global Manufacturing)-荏原グループ全体最適化の視点でのエンジニアリングの最適化、統一の推進-自動設計の対象機種拡大-生産体制の再構築-LCC(Low Cost Country)からの調達拡大による調達コストの低減 ③ インフラ(ⅰ)基本方針・国内:生産工場との協働により製品開発力を強化し、底堅い官需のシェアと収益を維持する。・海外:成長市場を見定めて、ポンプ設備や周辺技術、エンジニアリング技術を用いた新たな価値を創造する。(ⅱ)基本戦略・国内ポンプ市場でのシェア拡大-製品開発力・エンジニアリング機能の強化-大型機場の延命化提案の推進-有資格技術者の増員と代理店の活用による、機会損失の低減・海外ポンプ市場の深堀と利益確保-国内で高評価を得ているエンジニアリング技術の海外拠点への展開による競争力の強化-フロントローディングによる戦略受注の継続および収益性の確保・国内外での生産性向上-マーケットニーズに即した製品開発-調達能力の強化-生産拠点の連携の深化-DX、AIを活用した生産技術の向上④ 環境(ⅰ)基本方針・中核事業の基盤強化・脱炭素や資源循環など市場の変化を適切に捉え、Life Cycle Assessment(LCA)を基軸とした、ソリューションプロバイダとしての取り組み強化(ⅱ)基本戦略・新規DBOの価格競争力向上・EPCの追加原価発生防止     [EPC]-工事費用・機器購入費・設計管理費などの削減-設計の標準化や方針の見直しによる施設のコンパクト化-設計の標準化や自動化等の設計業務プロセス改善成果の徹底活用-計画精度の向上による、土木建築やプラント施工時の追加原価発生の防止[O&M]-長期包括案件におけるメンテナンスメニューの最適化、相見積によるコスト低減・既設O&M案件の収益基盤のさらなる強化-周辺業務の拡大-施設運営期間の最大化・LCAを基軸とした脱炭素・資源循環ソリューションプロバイダとしての取り組み強化    -ケミカルリサイクル技術の精度向上と、実用化に向けたスキーム構築    -ロボット開発による運転やメンテナンスなどの高度化    -新技術やサービスの開発・提供   ・地域戦略の推進    -中国拠点との協業で、機器販売およびエンジニアリングビジネスの東南アジアへの拡大 ⑤ 精密・電子(ⅰ)基本方針・製品・サービスを提供するのみでなく、顧客のプロセスやユーティリティにおける課題解決を通じてユニークな価値を提供する。・地域戦略からグローバルアカウント戦略に転換し、顧客のグローバル展開に合わせた戦略立案とグローバル全体最適化によりシェア拡大を図る。(ⅱ)基本戦略・製品・ソリューション開発力の強化[コンポーネント]-顧客の半導体製造の脱炭素化への貢献、AI・DXを活用した新たな価値、半導体以外の産業領域への展開など、半導体工場のサブファブ領域全体に対する価値・ソリューション提供-ドライ真空ポンプ、排ガス処理装置、半導体製造装置向けチラー、次世代EUV露光装置向け排気システムなどの製品開発-データモニタリング、故障予知機能などのソリューション開発[CMPおよびその他装置]-マーケットインのソリューション開発体制構築-研究開発施設の増強-データサイエンス活用によるさらなる価値創造・生産能力増強[コンポーネント]-ドライ真空ポンプは、自動化工場の稼働率向上、グローバルでのオーバーホール能力増強の実施-EUV露光装置向け排気システムを含む各製品は、需要増に向けた設備投資[CMPおよびその他装置]-熊本事業所へ新棟建設・事業規模拡大に対応したグローバルでの事業インフラ再構築-ローカル中心の対応から、グローバルでの顧客サポート強化によるS&Sの強化-サプライヤのマルチ化、海外調達拠点の設立、在庫戦略の再構築によるサプライチェーンの強靭化-需要増に対応したグローバル組織体制の再構築
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。 (1)経営成績(単位:百万円) 前連結会計年度当連結会計年度増減額増減率 (%)受注高815,218820,5985,3790.7売上収益680,870759,32878,45811.5営業利益70,57286,02515,45221.9売上収益営業利益率 (%)10.411.3--親会社の所有者に帰属する当期利益50,48860,2839,79419.4基本的1株当たり当期利益 (円)548.61653.64105.0319.1 当連結会計年度における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行により社会経済活動の正常化が進み、個人消費や企業の設備投資には緩やかな回復が見られました。一方、世界経済ではウクライナ情勢の長期化や世界的なインフレの継続、金融引き締め政策に伴う企業の投資抑制など経済活動には減速感がみられました。中国や欧米を中心とした景気後退懸念や、米中の対立による半導体輸出管理規制強化など地政学リスクは継続しており、依然として先行き不透明な状況が継続しています。このような環境の下、当社グループは2023年を初年度とする3か年の中期経営計画「E-Plan2025」を策定し、「顧客起点での価値創造」をテーマに、更なる競争力の強化を図るため対面市場別組織へ移行し、経営指標の達成に向けた各種施策の取り組みを進めています。当連結会計年度の受注高は、「エネルギー」においては、北米を中心にLNG市場向けの需要が活況で大型案件を複数受注したほか、アジアでも石油化学市場向けの大型案件を受注し、前期と比べて大幅に増加しました。一方で、「精密・電子」においては、半導体メーカの設備投資抑制や工場稼働調整に一部で底打ちの兆しは見られたものの、低調に推移しました。全社の受注高は、「精密・電子」の減少を他の事業がカバーしたことで前期を上回りました。売上収益は、「環境」を除く各事業で前期を上回り好調に推移しました。「建築・産業」や「エネルギー」、「インフラ」が順調に受注を伸ばしたことや、「精密・電子」において部材不足の解消により生産状況が改善し、前期末から高水準で推移していた受注残高の消化が進んだことで売上収益が増加しました。営業利益は、人件費の上昇や事業活動拡大に伴う固定費が増加傾向にあるものの、増収に加え、価格改定効果等により増益となりました。これらの結果、当連結会計年度における受注高は8,205億98百万円(前期比0.7%増)、売上収益は7,593億28百万円(前期比11.5%増)、営業利益は860億25百万円(前期比21.9%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益は602億83百万円(前期比19.4%増)となり、いずれの項目においても過去最高額を更新しました。 セグメントごとの経営成績は、次のとおりです。なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 5.事業セグメント」に記載のとおり、第1四半期連結累計期間より報告セグメントを変更しています。以下、前連結累計期間との比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えて比較しています。 (単位:百万円)セグメント受注高売上収益セグメント損益前連結会計年度当連結会計年度増減率(%)前連結会計年度当連結会計年度増減率(%)前連結会計年度当連結会計年度増減率(%)建築・産業204,869221,3518.0193,529222,18114.811,40115,73738.0エネルギー148,032222,77650.5143,605167,22916.516,93622,34731.9インフラ53,58656,6585.746,25850,1788.53,9244,60417.3環境105,810100,854△4.773,73871,540△3.03,6696,93389.0精密・電子301,551217,791△27.8222,259246,99811.136,18338,2855.8報告セグメント計813,849819,4320.7679,391758,12811.672,11487,90721.9その他1,3681,165△14.91,4781,199△18.8△1,216△933-調整額------△325△949-合計815,218820,5980.7680,870759,32811.570,57286,02521.9 <建築・産業>建築設備市場は、全般的に海外では成長がやや鈍化する一方、国内の設備投資は堅調に推移しました。受注高は、不動産市況が低調な中国において、省エネ製品への需要の高まりや公共インフラ投資の進展などもあり、産業市場や公共系市場向けで増加しました。売上収益は、受注高の増加や価格改定効果などにより前期を上回りました。セグメント利益は、増収効果に加え、製品価格改定による収益性改善もあり増益となりました。これらの結果、受注高は前期から164億82百万円増の2,213億51百万円、売上収益は286億52百万円増の2,221億81百万円、営業利益は43億36百万円増の157億37百万円となりました。 <エネルギー>LNG市場は北米を中心に活発な動きが見られました。また、石油化学市場においても北米、アジア、中東の需要が堅調に推移し受注も好調に推移しました。特に中国では石油化学向け、電力向けも堅調でした。売上収益は、製品受注が好調で北米や中東、中国を含むアジアで増収となり、サービス&サポートも堅調に推移しました。セグメント利益は、増収効果に加え、製品の収益性改善や価格改定効果によって、増益となりました。これらの結果、受注高は前期から747億43百万円増の2,227億76百万円、売上収益は236億23百万円増の1,672億29百万円、営業利益は54億10百万円増の223億47百万円となりました。 <インフラ>国内においてポンプ設備の更新・補修に対する需要は堅調で、受注高は下期に大型案件を複数受注したことで前期を上回りました。海外の水インフラ向けでも受注高は増加しました。国内外ともに売上収益を伸ばしたことによる増益効果と収益性の高い工事進行売上が進捗したことにより、セグメント利益は前期比で増益となりました。これらの結果、受注高は前期から30億72百万円増の566億58百万円、売上収益は39億19百万円増の501億78百万円、営業利益は6億79百万円増の46億4百万円となりました。 <環境>受注高は、DBOの大型案件および長期包括案件を合計で2件受注しましたが、前期と比較して減少しました。売上収益は、過年度のEPC案件における受注が少なかった影響で、当期のEPC売上が減少しました。一方で、O&Mは安定して売上を計上しました。セグメント利益は、O&M売上比率の上昇に加え、売電事業における収益性改善などにより増益となりました。これらの結果、受注高は前期から49億56百万円減の1,008億54百万円、売上収益は21億98百万円減の715億40百万円、営業利益は32億64百万円増の69億33百万円となりました。※O&M(Operation & Maintenance)…プラントの運転管理・メンテナンス  EPC(Engineering, Procurement, Construction)…プラントの設計・調達・建設  DBO(Design, Build, Operate)…プラントの設計・調達・建設に加え、建設後の運転管理・メンテナンスを 一定期間請け負う。 <精密・電子>半導体市場は、中国の半導体メーカで活発な投資が継続していますが、グローバルにおいては設備投資の延期や一部中止が継続しています。受注高は、中国の一部顧客による積極投資も見られましたが、全体的な需要は依然として低水準でした。売上収益については、CMPにおいては、期初受注残の消化が着実に進んだことで増収となりましたが、コーポネントにおいては、顧客の工場の稼働率が低調だった影響を受け減収となりました。セグメント利益については、サービス&サポート売上が減少し固定費も増加したものの、増収効果や為替影響により増益となりました。これらの結果、受注高は前期から837億59百万円減の2,177億91百万円、売上収益は247億38百万円増の2,469億98百万円、営業利益は21億2百万円増の382億85百万円となりました。 《セグメント別の事業環境と事業概況》セグメント2023年12月期の事業環境2023年12月期の事業概況と受注高の増減率 (注)1建築・産業 <海外>・北米は金利の高止まりと建設コストの高騰、労働力不足により市場が停滞している。・欧州はインフレ及び金利上昇により投資が抑制され、特に住宅市場が低迷している。・中国は商業や住宅向け等の不動産投資の抑制により、建築市場が低迷している。一方、産業・公共系市場などは政府の投資により堅調である。 <国内>・建築設備市場は、建築着工棟数が前年同期減少に転じているが、サービス市場での需要は増加傾向である。・産業市場は、脱炭素化を見据えた設備投資の検討や事業構造の転換など中長期で大きな変化が想定されるが、足元では堅調に推移している。<海外>・中国の産業・公共系市場における投資継続、および2022年の北米ポンプメーカ買収効果等により、中国及び北南米での受注が堅調に推移しており、受注高は前期を上回る。 <国内>・低環境負荷製品投入などの施策効果により堅調に推移しており、受注高は前期を上回る。 エネルギー ・新規製品市場は、北米・アジア・中東地域を中心に石油化学市場向け案件の需要が継続している。LNG市場向けは、前期に引き続き、特に北米・中東地域で活発な動きがみられる。中国の電力市場も引き続き活発に推移している。・サービス市場は、全般的にメンテナンス・修理・部品等の需要が堅調に推移している。 ・製品の受注高は、前期を上回る。・サービス分野の受注高は、前期の活況に比べ落ち着きがみられる。 インフラ <海外>・水インフラ市場は、中国では政府による景気刺激策が需要を下支えしたほか、東南アジアや北米においても経済成長や施設の老朽化による整備などが進み需要は堅調に推移している。 <国内>・社会インフラの更新・補修に対する投資は、堅調に推移している。・公共向け建設市場は、前期を上回る水準で推移している。既存設備のアフター関連は堅調な需要が継続している。 <海外>・水インフラ向けの受注高は前期を上回る。 <国内>・公共向けの受注高は総合評価案件やアフターサービスの受注拡大などの施策の継続的な取組みにより、前期を上回る。環境(注)2<国内>・公共向け廃棄物処理施設の新規建設需要は例年通りに推移している。・既存施設のO&Mの発注量は例年どおり推移している。・民間向けの木質バイオマス発電施設や廃プラスチックなどの産業廃棄物処理施設は、一定の建設需要が継続している。 <国内>・EPCの受注高は前期比では下がっているもののほぼ計画通り。・O&Mの受注高は期末の大型案件受注により前期を上回る。[大型案件の受注状況]・公共向け廃棄物処理施設のDBO案件(1件)・公共向け廃棄物処理施設の基幹的設備改良工事及び長期包括運営契約(1件) 精密・電子・半導体需要の低迷は底打ちして、顧客の製品在庫の正常化も進んではいるものの、未だ本格的な増産投資再開には至っていない。一部の顧客では工場稼働率が上がってきたが、総じて調整局面が継続している。 ・中国の一部半導体メーカを除き、ロジック・ファウンドリ、メモリメーカはいずれも投資を減速させており、受注高は前期を下回る。 (注)1.矢印は受注高の前期比の増減率を示しています。 +5%以上の場合は、△5%以下の場合は、±5%の範囲内の場合はで表しています。 2.EPC(Engineering, Procurement, Construction)………プラントの設計・調達・建設 O&M(Operation & Maintenance)………プラントの運転管理・メンテナンス DBO(Design, Build, Operate)………プラントの設計・調達・建設に加え、建設後の運転管理・メ   ンテナンスを一定期間請け負う。 生産、受注及び販売の状況は以下のとおりです。① 生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。セグメントの名称生産高(百万円)前期比(%)報告セグメント  建築・産業217,29712.0 エネルギー160,37526.2 インフラ44,502△30.1 環境11,550△46.2 精密・電子199,5328.7  報告セグメント計633,2587.4 その他328△16.1合計633,5867.4 ② 受注状況当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)報告セグメント  建築・産業221,3518.060,693△3.3 エネルギー222,77650.5210,15942.5 インフラ56,6585.767,40913.2 環境100,854△4.7346,9659.3 精密・電子217,791△27.8205,462△11.0  報告セグメント計819,4320.7890,6908.9 その他1,165△14.933△51.0合計820,5980.7890,7238.9  ③ 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりです。セグメントの名称販売高(百万円)前期比(%)報告セグメント  建築・産業222,18114.8 エネルギー167,22916.5 インフラ50,1788.5 環境71,540△3.0 精密・電子246,99811.1  報告セグメント計758,12811.6 その他1,199△18.8合計759,32811.5 (注)上記①から③の金額は、いずれも販売価格によっており、セグメント間取引消去後の金額です。 (2)財政状態① 資産当連結会計年度末における資産総額は、前年度末に比べて現金及び現金同等物が319億22百万円、棚卸資産が 192億78百万円、営業債権及びその他の債権が116億98百万円、有形固定資産が101億66百万円、のれん及び無形資産が70億48百万円増加したことなどにより、858億50百万円増加し、9,139億円となりました。 ② 負債当連結会計年度末における負債総額は、前年度末に比べて営業債務及びその他の債務が230億23百万円減少した一方、契約負債が297億50百万円、社債、借入金及びリース負債が259億15百万円増加したことなどにより、340億4百万円増加し、4,923億27百万円となりました。 ③ 資本当連結会計年度末における資本は、配当金を189億43百万円支払った一方、親会社の所有者に帰属する当期利益602億83百万円を計上し、在外営業活動体の換算差額が99億29百万円増加したことなどにより、前年度末に比べて518億46百万円増加し、4,215億72百万円となりました。親会社の所有者に帰属する持分は4,098億75百万円で、親会社所有者帰属持分比率は44.8%となりました。 (3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報① キャッシュ・フロー営業活動によるキャッシュ・フローは、堅調な営業利益に支えられ、700億12百万円の収入超過(前期比329億42百万円の収入増加)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の取得による支出344億67百万円などにより、356億25百万円の支出超過(前期比26億99百万円の支出減少)となりました。営業活動及び投資活動によるキャッシュ・フローを合わせたフリー・キャッシュ・フローは、343億87百万円の収入超過(前期比356億41百万円の収入増加)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、短期借入金及び長期借入金が純額で224億33百万円増加したことや、配当金の支払い189億43百万円などにより、46億58百万円の支出超過(前期比190億90百万円の支出減少)となりました。以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前年度末から319億22百万円増加し、1,480億59百万円となりました。 ② 財務戦略の基本方針当社グループは、資本効率と財務健全性のバランスに配慮しつつ、適宜適切なタイミングで資本の調達と配分を行うことを財務戦略の基本と考えています。現在の事業推進に必要十分と考える「シングルAフラット(※)」の信用格付け維持を基本とし、D/Eレシオを財務規律としつつ負債の活用を図ります。また、キャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善と非効率資産の選別/処分を通じ投下資本の効率的活用を促進します。その上で、株主還元として連結配当性向35%以上を維持しつつ、企業価値向上に繋がる投資対象への資本投下の機を逃さずに行い、「長期的な企業価値の最大化」を目指します。(※)格付投資情報センター(R&I)による格付 ③ 資金調達について当社グループは、事業を行う上で必要となる運転資金や成長のための投資資金として、営業キャッシュ・フローを主とした内部資金だけでなく金融機関からの借入や社債の発行などの外部資金を有効に活用していきます。D/Eレシオは0.3~0.5を基準に負債の活用を進め、資本コストの低減・資本効率の向上を図ります。また、現金・預金等の水準(手元流動性)については、連結売上収益の2か月分を目安に適正水準の範囲でコントロールする方針です。これに加えて、金融上のリスクに対応するためにコミットメントライン契約等を締結することで、代替流動性を確保しています。なお、グループ内の資金効率を高めるため、資金を当社に集中する制度を運用しています。 契約の種別並びに当連結会計年度末の借入未実行残高は次のとおりです。 種別金額当座貸越契約50億円コミットメントライン契約800億円借入実行高-借入未実行残高850億円 (4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づいて作成されています。連結財務諸表の作成にあたり、期末時点の状況をもとに、種々の見積りと仮定を行っていますが、それらは連結財務諸表、偶発債務に影響を及ぼします。詳細については、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」及び「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。

※本記事は「株式会社荏原製作所」の令和5年12期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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