大和ハウス工業株式会社の基本情報

会社名大和ハウス工業株式会社
業種建設業
従業員数連48483名 単16135名
従業員平均年齢40.4歳
従業員平均勤続年数15.5年
平均年収9645959円
1株当たりの純資産3810.21円
1株当たりの純利益457.16円
決算時期3月
配当金143円
配当性向38.22%
株価収益率(PER)9.9倍
自己資本利益率(ROE)12.65%
営業活動によるCF3022億円
投資活動によるCF▲3104億円
財務活動によるCF973億円
研究開発費※1109.15億円
設備投資額※1481.28億円
販売費および一般管理費※15521.97億円
株主資本比率※241.2%
有利子負債残高(連結)※319865.03億円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、その達成を保証するものではありません。 <CEOメッセージ> 代表取締役社長/CEO 芳井 敬一 創業100周年の夢の実現へ折り返し地点から描く10兆円の風景 大和ハウスグループは1955年の創業以来、「世の中の役に立つからやる」という創業者の想いとともに歩んできました。その結果、創業者が“夢”として掲げた「創業100周年に売上高10兆円」の折り返し地点である売上高5兆円を2023年度に超えることができました。歴代の経営陣をはじめ従業員が一丸となって、さまざまな事業のアイデアをデザインし、実行し、幅広い事業ポートフォリオを構築しながら、目標へと向かってきた、まさに大和ハウスらしさを体現してきた成果だと思います。“将来の夢”(パーパス)の「生きる歓びを分かち合える世界の実現」に向けて、現在当社グループは戸建住宅事業、賃貸住宅事業、マンション事業、商業施設事業、事業施設事業、環境エネルギー事業の6つのコアセグメントで事業を展開しています。過去を振り返ると、売上高2兆円、3兆円、4兆円は中期経営計画にて計画した通りの道のりではありましたが、5兆円については、予期せぬ新型コロナウイルス感染症の影響等もあり、想定より1年遅れての達成となりました。しかし、この期間があったことは、次のステージに向けて事業ポートフォリオを見つめ直す機会になりました。売上高10兆円の達成に向けた道のりは、現在の事業を成長させるだけでは難しいと考えており、新しい事業の創出、そして何よりも事業を生み出す人財の育成が必要だと考えています。そこで新たなビジネスモデルや市場の開拓を見据えて、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)ファンドを設立し、最大300億円規模のスタートアップ投資を行うことを決めました。また「社会課題の解決が、人財の成長の原動力になる」という人財育成の観点も踏まえ、社内起業制度を設立し、同じく最大300億円を投資します。この第7次中期経営計画(以下、7次中計)で種まきをし、8次中計以降で次の成長の柱となる事業を育てていきます。一方、まちの“再耕”実現に向けた「リブネスタウンプロジェクト」も進めています。SDGsの目標にある「つくる責任、つかう責任」は、建設会社として達成すべき目標の1つであると考えており、我々が50年以上前に開発した住宅団地の高齢化や空き家問題など地域が抱える課題に寄り添い、「つくった責任」を果たしていきます。現在は、地域住民の交流や地域の活気を取り戻すための取り組みとして、コミュニティスペースの開設や、イベント開催など、人のつながりを促す環境を整えています。多くの課題はありますが、各団地では多世代での交流や、産官学との繋がりが生まれ、「再耕」への道筋が少しずつ見えてきたように思います。当社グループは社会のニーズに応じて事業領域を拡大してきましたが、どの事業においても「住宅の心」を継承しています。ものづくりでは、そこに住む人、施設を利用する人がより幸せを感じられるように、そして、その後も価値を提供し続けるにはどのようにしたら良いか、一人ひとりのお客さまに長く寄り添っていくことを考えながら事業を進めています。2024年の初めは、能登半島地震や羽田空港における航空機衝突事故などがあり、自然の脅威、そして命の大切さについて再び深く考えさせられました。能登半島地震に対しては、当社グループとしても1月2日から初動対策本部を立ち上げ、現場とお客さまの安全確認や、復興支援等に尽力してきました。我々は自然災害から逃れることはできません。しかし、あらゆる危機・リスクに備え、日頃から準備をしておくことが大切であると再認識しています。 第7次中期経営計画の2年目を終えて評価と今後の取り組み 海外事業の成長戦略 海外事業は、私が担当していた当時から、次の成長の柱としてどのように育てていくか、考え続けてきた事業の1つです。4代目社長を務めた上村圭一氏が、海外事業部長として、携帯電話もない1980年頃、時には苦しみながらも知恵を絞って、米国、南米、東南アジア等世界各国で事業を進めてくれました。この財産を受け継ぎ、今は各地域で最適な事業を展開していますが、最終的には、世界に向けて、住宅事業、賃貸住宅事業、商業施設事業等、幅広い事業領域で成長を目指す、いわゆる「大和ハウスモデル」そのものを輸出するのが私の夢です。そのような海外事業の中でも、特に米国は重点エリアと位置付けています。7次中計の初年度は想定していなかった米国の住宅金利の上昇や、資材価格の高騰などがあり、受注スピードが一時的に鈍化した時期もありました。しかし現場での工期短縮や最適な販売手法の選択など様々な努力により、米国戸建住宅事業3社(Stanley Martin社、Trumark社、CastleRock社)の引渡戸数は順調に拡大しています。機関投資家との対話で、M&Aにより取得した米国3社について多くの質問をいただきます。私は、米国での事業拡大においては、いかに良質な住宅を継続的に提供し続けられるかが重要だと考えています。そこで、各エリアに精通し、エリア特有のニーズに応じてノウハウを活かし、より一歩進んだ住環境を提供している3社をグループに迎えました。私たちのノウハウを彼らに共有するだけでなく、彼らから学ぶことも数多くあります。米国住宅市場においては分譲事業(建売住宅)が一般的であり、米国3社の従業員一人当たりの売上高は国内の戸建住宅事業と比較して優れています。お互いの良い点を共有しながら、グループ全体で生産性の高い事業を展開していきたいと考えています。2023年度は、CastleRock社がアリゾナ州とテネシー州に進出し、Trumark社が中央カリフォルニアに進出。さらに2024年5月にはStanley Martin社がノースカロライナ州シャーロットに本社を置く土地開発・土地造成請負会社のPrestige社の取得を発表するなど、3社はお互いに切磋琢磨しながら事業拡大しています。米国3社トップとは定期的に集まり、今後の米国の住宅事業の拡大に向けて議論しています。2024年4月はコロラドで会議を開催し、7次中計最終年度の目標達成に向けた綿密な議論を交わしました。私は、各社の成長への意欲を重視していますが、彼らの成長に対する貪欲さ、自主的に戦略を立てて次々と実行していく姿を見ていると、今後ますます期待が高まります。国内と同様に、戸建住宅事業にとどまらず、賃貸住宅や商業施設など幅広い領域での成長を目指す「大和ハウスモデル」の米国での展開に向けて、綿密なコミュニケーションを通じて、当社グループの方針を理解してもらいながら、今後も協業していきます。その面では、Stanley Martin社は、当初は戸建住宅しか手がけないとしていましたが、事業領域の拡大に対して意欲を示しており、賃貸住宅や分譲マンションへの参入も視野に入れつつあります。 米国戸建住宅事業の「工業化」の推進については、我々が日本で培った工業化の技術を一方的に押し付けるのではなく、実際に米国3社に日本の工場や施工現場も見てもらい、参考にしたいと思ってもらった部分のノウハウ、知見を共有しています。米国は労務費が高く、職人不足もあり、工業化の推進は各社の成長の鍵の1つになると考えています。工業化ノウハウの共有によるオフサイト化を進めることで品質の安定化を図り、グループ購買によるサプライチェーンの効率化に向けた支援などにも取り組みながら、引き続き米国事業の拡大に注力していきます。 国内住宅事業は、分譲事業強化を推進 国内戸建住宅事業については、新設住宅着工戸数が低位で推移する中、分譲事業(建売住宅)強化を軸とした経営改革を進めており、お求めやすい価格帯の商品を充実させることで、より多くのお客さまに我々の商品・サービスをお届けできると考えています。その一つとして、価格以上の価値を感じられる注文住宅品質の分譲住宅「Ready Made Housing.」の提案を開始しました。我々が今まで提供してきた住宅メーカーの品質と長期サポートを兼ね備えた提案です。分譲事業を拡大する狙いは、注文住宅と比較すると設計コストが抑えられるため、高品質な建物を安く提供できることです。分譲事業強化への取り組みは九州エリアから始めていますが、その成果は少しずつ表れています。2024年度は、エリアごとに分譲と請負の最適なバランスを見きわめながら、全国へと拡げていきます。 環境事業に注力し、社会価値を創出 自然災害を目の当たりにする機会が増え、国としてもカーボンニュートラルを掲げる中で、当社もその実現は我々の責務であると感じています。2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、2030年度までに当社グループが新たに提供する建物は原則ZEH・ZEB率100%、またすべての建物に太陽光発電設備を搭載するという目標を設定しています。事業によって取り組むべき課題は異なるものの、商品開発から営業・設計・施工まで一体となってZEH・ZEB化の取り組みを推進しており、いずれも順調に進捗しています。また業界トップレベルの供給実績を持つという自負のもと、お住まいの方や建物を利用されるお客さまのウェルビーイングへの配慮や災害時の安全・安心を守る役割を担うなど、社会価値の創出にも取り組んでいます。当社グループが蓄積してきた知恵に加え、外壁や屋根材などの各メーカーのノウハウも採用し、志を共にする取引先パートナーとの協業による価値創出も目指していきます。さらには木造建築を選好されるお客さまが多い中、Future with Woodプロジェクトを立ち上げ、今後、市場の成長が期待される非住宅建築物の木造・木質化にも挑戦していきます。持続可能なサプライチェーンの強化を図りながら、ネイチャーポジティブの観点からも生態系ネットワークの維持・回復に配慮した木造事業を、新たな成長の柱に育てていきたいと考えています。 理念体系を再構築し、経営基盤のさらなる強化を図る さらなる成長に向けた人的資本経営 社是に「事業を通じて人を育てること」「企業の前進は先づ従業員の生活環境の確立に直結すること」とあるように、当社は「人財」を価値創造の源泉として重視してきました。“世の中の役に立つ”事業を通じて社員の成長を促し、成長した社員が生み出す事業が新たな社会を創っていくという過程にこそ、人と企業の成長につながる経営の本質があると思います。社是は創業者の想いがそのまま込められたもので、当社グループの理念体系の最上位に位置しています。この度、理念体系を再構築し、創業100周年に向けた私たちの新たな羅針盤としての“将来の夢”(パーパス)、そして新たにその実現に向けた5つの大切にしたい価値観を策定しました。この新・理念体系を浸透させ、様々なバックグラウンドを持つ多様な人財の多様な考え方を尊重し、たたえ合える文化を醸成することで、従業員一人ひとりが輝ける企業にしていきたいと考えています。企業の持続的な成長を実現していくためにも、時代に合わせて教育システムを再整備しながら人財の成長を促進させていきます。 2024年問題への対応 建設業界では、労働力不足や工期長期化等によるコストアップの課題に直面するなか、当社グループでは2021年度より施工現場の完全週休2日制(4週8休)を導入するなど準備を進めてきました。2024年4月より建設業界・物流業界での時間外労働時間に関する規制が適用される、いわゆる2024年問題がいよいよ始まりました。2024年度の業績計画策定時には、当社の現場を支えていただいている協力施工業者への配慮が、より一層必要となってくることを鑑み、そして何より法令を遵守することを最優先とし、十分な工程・予算等を踏まえた計画とさせていただきました。並行して、自社で柔軟に工期等をコントロールできる分譲事業比率の上昇により、生産性向上や適正工期の確保を進め、継続して働き方の改革に取り組んでいきます。労働時間については、残業時間の見える化をはかり、部下が長時間労働にならないよう上司に徹底させており、万が一、長時間労働になってしまいそうな場合に、その理由を従業員から直接私に届ける「社長 2024年問題BOX」も設置しました。投稿内容から長時間労働につながりかねない原因を特定し、改善を図る取り組みも全社的に行っています。物流業界においても重層的な下請け構造のため業者間の対話が生まれにくく、2024年問題は大きな課題となっています。当社は物流施設開発シェアNo.1企業として、施設建設だけに留まらず、DXの活用を含めた幅広いソリューション提供を進めることで、トラックドライバーの雇用環境改善につながる働き方改革、労働時間の削減に貢献してまいります。 様々な状況に対応できる柔軟な経営により、企業価値向上を目指す 毎年、年初に「今年の漢字」を一文字決めていますが、2024年は「伸」を選びました。人も業績も、環境の変化等、様々な状況に対応できる柔軟な伸び方をしてほしいという想いを込めていますが、1996年から3年間、社長を務めた石橋伸康氏の名前の一文字でもあります。当時、今ほど環境問題が重視されていなかった時代に「社会的な責任である環境対応に取り組まない企業は生き残れない」と、環境対応の大切さを説き、環境事業に取り組みました。石橋伸康氏の想いも意識しながら、世の中にとって大事なことを見きわめ、さらなる成長を実現していきたいと、改めて私自身、強く思っています。大和ハウスグループは、従業員一人ひとりが、目標数字達成へのこだわりや推進力、そして一度決めたところに突き進む力を発揮したことで、これまでの成長を実現してきました。創業者の言葉や社是が今なお受け継がれている事実は、人と企業を育ててきた歴史を表しています。しかしながら、単なる売上高10兆円という高い目標値だけを従業員に強いるとなれば、本質を見誤らないとも限りません。業績を伸ばすだけでなく、ガバナンス、従業員の働きがいや働きやすさ、自然環境にも十分に配慮しながら、様々な状況に対応できる柔軟な経営を推進してまいります。 マテリアリティと第7次中期経営計画大和ハウスグループでは、2030年頃のメガトレンドをふまえ、機会とリスクを認識し、“将来の夢”を実現するために取り組むべきマテリアリティ(最重要課題)を設定しています。マテリアリティをふまえ、第7次中期経営計画では、第8次中期経営計画以降の成長も見据えた企業価値の最大化に向けて、「収益モデルの進化」「経営効率の向上」「経営基盤の強化」の3つの経営方針に基づく8つの重点テーマに取り組み、持続的成長モデルの構築を目指します。        ※ 大和ハウスグループへの影響(リスクと機会)の詳細については、統合報告書2024(2024年8月発行予定)をご覧ください。
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】(1) 経営成績等の状況の概要当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。 1.財政状態及び経営成績の状況当連結会計年度におけるわが国経済は、円安を背景としたインバウンド需要や、賃上げ率の上昇、資源価格や人件費の増加分を価格転嫁する動きがみられるなど、緩やかな回復基調となりました。しかしながら、円安が続く為替の状況、ロシア・ウクライナ情勢の長期化や中東情勢の悪化等の地政学的リスクが資源価格等に与える影響により、依然として景気の先行きは不透明な状況が続いております。国内の住宅市場における新設住宅着工戸数は、持家、貸家及び分譲住宅の全てにおいて前年比マイナスとなりました。一般建設市場でも、建築着工床面積において、事務所が増加したものの全体では前年比マイナスとなりました。このような事業環境の中で当社グループは、2022年度よりスタートした5ヵ年計画「第7次中期経営計画」において、「収益モデルの進化」・「経営効率の向上」・「経営基盤の強化」の3つの経営方針を掲げ、持続的な成長モデルの実現に向け、海外事業とストック事業の拡大やDXによる顧客体験価値向上等、様々な高付加価値提案や施策を積極的に推進してまいりました。以上の結果、当連結会計年度における売上高は5,202,919百万円(前連結会計年度比6.0%増)、営業利益は440,210百万円(前連結会計年度比5.4%減)、経常利益は427,548百万円(前連結会計年度比6.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は298,752百万円(前連結会計年度比3.1%減)となりました。なお、上記の営業利益には退職給付数理差異等償却益46,515百万円を含んでおり、数理差異等を除いた営業利益は393,694百万円(前連結会計年度比6.8%増)となりました。 セグメント別の概況は次のとおりです。なお、当連結会計年度より、報告セグメントの区分を変更しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 (1)連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。下記の連結会計年度との比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組替えた数値で比較しております。 戸建住宅事業では、住まいのあり方が多様化する中、省エネ性に優れ、レジリエンス性能を備えた良質な住宅の提供と、住まう方の人生や変化する価値観に寄り添い、生活を豊かにするライフスタイル提案を行ってまいりました。国内の住宅事業では、分譲住宅の取組み強化を図るため分譲専用の木造住宅商品「ComfortWood(コンフォートウッド)」に加えて、2023年11月より注文住宅品質を継承した新しい分譲住宅「Ready Made Housing.(レディ メイド ハウジング)」という考え方を発信し、注文住宅と変わらない高い設計力と品質、安心の長期保証、そしてアフターサポートを叶えながら、価格以上の価値を目指した良質な分譲住宅の提供を開始いたしました。注文住宅では、鉄骨商品の主力商品である「xevoΣ(ジーヴォシグマ)」、3・4・5階建商品「skye(スカイエ)」を中心に販売を強化。また、ZEH販売率の向上に取組むとともに、木造住宅商品「xevo GranWood(ジーヴォグランウッド)」や、富裕層をターゲットとした当社最高級戸建住宅商品「Wood Residence MARE-希-(マレ)」を販売するなど、カーボンニュートラルの実現とお客様の多様なニーズに対応してまいりました。さらに、ストック型社会の到来を見据え、既存建物の再生・循環にも注力しております。特に、かつて当社が開発した各地の住宅団地において、地域活性化や空き家問題等の社会課題に向き合い、まちの再生・再耕する「リブネスタウンプロジェクト」に取組んでおります。そこに暮らす人々と共に考え、まちと暮らしに寄り添い、未来に向かって輝き続けるまちの価値構築を進めております。海外では、米国において、東部・南部・西部を結ぶスマイルゾーンで東部のStanley Martin、南部のCastleRock、西部のTrumarkのグループ3社を軸とした事業拡大を進めております。住宅ローン金利と住宅価格の高止まりは見られますが、中古住宅の在庫が低水準にあることから、新築住宅への需要は底堅く、足元では持ち直しの動きが継続しております。また、2023年10月にはTrumarkが米国で戸建住宅事業を行うJP Holdings, LLCの事業を譲受いたしました。加えて、2024年1月にはCastleRockが米国で戸建住宅事業を行うThe Jones Company of Tennessee, LLCの事業を譲受する契約を締結いたしました。これらにより、米国での戸建住宅供給の更なる拡大を図ってまいります。以上の結果、当事業の売上高は951,083百万円(前連結会計年度比8.5%増)、営業利益は35,164百万円(前連結会計年度比24.5%減)となりました。 賃貸住宅事業では、ご入居者様・地球環境・街への3つの視点から持続的な価値を提供することで、オーナー様の資産価値の最大化につながる賃貸住宅経営のご提案とサポートを行ってまいりました。加えて、環境負荷を低減し、省エネ・創エネ対応のZEH-M物件の普及に努めてまいりました。大和リビング株式会社では、幅広いご入居者様に選ばれる、高品質で住み心地の良い賃貸住宅「D-ROOM」の供給に加え、リノベーション事業の強化も奏功し、管理戸数の増加及び高い入居率の維持につながっております。大和ハウス賃貸リフォーム株式会社では、当社施工の賃貸住宅を所有されているオーナー様に対し、定期点検・診断を通じたリレーションの強化を図り、保証延長工事やリノベーション提案を推進してまいりました。また、2024年3月には賃貸住宅事業に携わる当社グループ3社(※1)と大東建託グループ3社(※2)は「災害における連携及び支援協定」を締結いたしました。平時より共同で防災イベントを開催し、ご入居者様・地域住民の方へ防災に関する啓蒙活動を行うとともに、災害時には被災された方に対して両社グループの空室提供等を行うことで地域の防災力の更なる強化とご入居者様が安心して暮らせる住まいの提供に尽力いたします。そして更なる賃貸住宅のイメージと価値の向上を目指してまいります。海外では、主要エリアである米国において、金利の高止まりにより厳しいマーケットが続いておりますが、金利動向や不動産市況を注視しながら、賃貸収入による収益の最大化を目指し、マーケットの回復時には遅滞なく売却できるよう稼働率や収益性の向上に注力してまいります。以上の結果、当事業の売上高は1,250,288百万円(前連結会計年度比5.7%増)、営業利益は115,791百万円(前連結会計年度比5.5%増)となりました。※1. 大和ハウス工業株式会社、大和リビング株式会社、大和ハウス賃貸リフォーム株式会社。※2. 大東建託株式会社、大東建託パートナーズ株式会社、大東建託リーシング株式会社。 マンション事業では、お住まいになる方々の多彩なライフスタイルに応えるため、ハウスメーカーとして培ってきたノウハウを駆使しながら、長寿命の住まいに欠かせない基本性能や快適性、安全性、管理体制の提供を追求してまいりました。お客様にとっての資産価値に加えて、環境や社会への配慮、地域社会への貢献を目指した付加価値の高いマンションづくりに努めております。2021年11月に販売開始した北8西1地区第一種市街地再開発事業である「ONE札幌ステーションタワー」は、長年にわたる大規模複合再開発事業への期待感や札幌市営地下鉄東豊線・南北線「さっぽろ駅」から直結・徒歩1分の場所に位置する交通利便性と生活利便性の高い立地が評価され、竣工前の2023年8月には全戸完売、2024年3月より引渡しを開始いたしました。大和ライフネクスト株式会社では、2024年3月に株式会社東急コミュニティーの子会社である株式会社マリモコミュニティの全株式を取得する契約を締結いたしました。今後とも各マンションが抱える課題に向き合い、安全・安心かつ快適な暮らしの提供を目指してまいります。株式会社コスモスイニシアでは、2024年1月に販売開始した「イニシア日暮里」(東京都)において、JR山手線「日暮里」駅から徒歩4分、「西日暮里」駅から徒歩5分の交通利便性と商店街や飲食店といった公共機関が揃う生活利便性、ZEH Oriented認定を受けた高い快適性・省エネ性等が好評を博し、販売が順調に進捗しております。なお、当連結会計年度末時点で株式会社コスモスイニシアは当社の連結子会社から持分法適用関連会社となっております。海外では、主な展開エリアとなる中国に加えて、英国ロンドンでの分譲マンション開発事業に参画しております。欧州での慢性的な住宅不足という社会課題解決に貢献すべく2026年の竣工に向け順調に推進しております。しかしながら、中国における分譲マンション引渡戸数の減少等により、当事業の売上高は441,867百万円(前連結会計年度比8.8%減)、営業利益は37,372百万円(前連結会計年度比8.6%減)となりました。 商業施設事業では、テナント企業様の事業戦略やエリアの特性を活かし、ニーズに応じたバリエーション豊富な企画提案を行ってまいりました。特に、大型物件への取組みの強化や、当社で土地取得し、開発企画・設計施工・テナントリーシングまで行った物件を投資家様に販売する分譲事業等にも注力してまいりました。2024年2月には、神奈川県横浜市西区みなとみらいにおいて、世界初のゲームアートミュージアム、地域熱供給プラント、オフィスを併設した「みなとみらい21中央地区52街区開発事業」を着工しております。都市型ホテル事業では、大和ハウスリアルティマネジメント株式会社において、2024年3月に「ダイワロイネットホテル大宮西口」(埼玉県)が開業し、同年3月末時点で国内76店舗16,209室となり、2024年1月から3月末における平均稼働率は約86.6%となりました。フィットネスクラブ事業では、スポーツクラブNAS株式会社において、2024年3月よりクラブ月会費価格を見直し、会員数の回復を図りました。ホームセンター事業では、ロイヤルホームセンター株式会社において、株式会社大創産業と販売代理店契約を締結し、2024年2月に堺店、2024年3月に津島店にてDAISO商品売場の展開を開始いたしました。海外では、米国カリフォルニア州において、稼働中の商業施設である「TRADE(トレード)」と「Village Center(ビレッジセンター)」に対し、日系テナントの入居を推進することで安定的に高い稼働率を維持しております。以上の結果、当事業の売上高は1,181,561百万円(前連結会計年度比8.2%増)、営業利益は143,630百万円(前連結会計年度比8.0%増)となりました。 事業施設事業では、法人のお客様の様々なニーズに応じた施設建設のプロデュースや不動産の有効活用をトータルサポートすることで業容の拡大を図ってまいりました。物流施設関連では、2024年2月に「DPL坂戸B」(埼玉県)と「DPL仙台泉」、2024年3月に「DPL群馬太田」など、2024年1月からの3ヶ月間において8件が竣工いたしました。市場環境の変化の中でも当社の強みであるリーシング力を活かし、堅実なテナントニーズを取り込むべく案件開発を継続しており、リーシング成果として「DPL仙台泉」、「DPL群馬太田」、「DPL岡山玉島」は竣工前に満床、「DPL坂戸B」、「DPL仙台利府Ⅱ」、「DPL松戸Ⅱ」(千葉県)も順次賃貸借契約を締結しております。主に当社が開発した物流施設を管理・運営する大和ハウスプロパティマネジメント株式会社では、2024年2月完成の「DPL坂戸B」をはじめとする物流施設等8棟について新規プロパティマネジメント(PM)契約を締結し、累計管理棟数は247棟、累計管理面積は約986万㎡となりました。ロジスティクスサービス業を展開するダイワロジテックグループでは、IT事業において顧客企業のDX化に伴うIT関連投資の拡大が続いている一方で、今後は2024年問題に関わる物流業務の省人化・自動化システムの導入推進及び新製品の発売により新規顧客獲得へつなげてまいります。物流事業では、大和物流株式会社において2024年1月に地域別の配車業務の属人化や負荷の偏りなどの問題を解消し、効率化を図るため中部エリアの配車業務を集約した「中部統括配車センター」(愛知県)を開設いたしました。当センターでは、各物流センターのオペレーションと連携しつつ配車情報を集約することで地区全体の輸配送効率化に取組んでおります。海外では、主な展開エリアとなるASEANにおいて、2024年3月にベトナム北部における物流ニーズの高まりに対応するため、首都ハノイから東へ約40kmに位置する工業団地内において、マルチテナント型物流施設「(仮称)DPLベトナムミンクアン」を着工いたしました。今後もASEAN・東アジアにおいて、事業施設等の大型開発で更なるインフラ整備や雇用を促進してまいります。以上の結果、当事業の売上高は1,294,455百万円(前連結会計年度比14.5%増)、営業利益は123,244百万円(前連結会計年度比23.7%増)となりました。 環境エネルギー事業では、脱炭素への流れが加速し、再生可能エネルギー導入のニーズが高まる中、EPC事業(再生可能エネルギー発電所の設計・施工)、PPS事業(電力小売事業)、IPP事業(発電事業)の3つの事業を推進してまいりました。EPC事業では、脱FIT(再生可能エネルギーの固定買取制度)の取組みとして、太陽光発電所から離れた需要家に供給する「オフサイトPPA(※)」、屋根上や隣接地に設置した太陽光発電所から直接電力を供給する「オンサイトPPA」の2つのPPA事業の拡大に取組んでまいりました。再生可能エネルギーを求める需要は着実に増加しております。当社が創業以来積み重ねてきた用地開発のノウハウを活かして適地管理による太陽光発電所用地の確保と大手エネルギー会社との協業による需要家の開拓を行い、今後の主力事業として引き続き注力してまいります。PPS事業では、仕入れに合わせた供給量のコントロール、新料金体系への移行、電源調達調整費(独自燃調)の導入等の取組みとともに、電力卸売市場のスポット価格が安定したことにより、収益性が改善いたしました。しかしながら、電力業界における事業環境動向の予見は困難なため、今後も事業リスクの対策を継続しPPS事業の安定化に取組んでまいります。IPP事業では、太陽光発電を中心に、風力発電、水力発電を全国551ヶ所で運営しております。今後も第7次中期経営計画における重点テーマの一つ「すべての建物の脱炭素化によるカーボンニュートラルの実現」の取組みの中核を担い、当社グループ全体で推進し、更なる再生可能エネルギーの普及拡大を目指してまいります。以上の結果、当事業の売上高は139,441百万円(前連結会計年度比26.1%減)、営業利益は9,131百万円(前連結会計年度比45.3%増)となりました。※ Power Purchase Agreement(パワー・パーチェース・アグリーメント)の略。電力購入契約。 (注) 各セグメント別の売上高は、外部顧客への売上高にセグメント間の内部売上高又は振替高を加算したものです。(「第5 経理の状況 1 (1) 連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」を参照。) 2.キャッシュ・フローの状況当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、営業活動による資金の増加302,294百万円、投資活動による資金の減少310,419百万円、財務活動による資金の増加97,399百万円等により、あわせて93,418百万円増加いたしました。この結果、当連結会計年度末には439,572百万円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において営業活動による資金の増加は302,294百万円(前連結会計年度比31.3%増)となりました。これは、主に法人税等の支払いや販売用不動産の取得を行ったものの、税金等調整前当期純利益を455,834百万円計上したことによるものです。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において投資活動による資金の減少は310,419百万円(前連結会計年度は505,181百万円の減少)となりました。これは、主に大規模物流施設や商業施設等の有形固定資産の取得を行ったことによるものです。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)当連結会計年度において財務活動による資金の増加は97,399百万円(前連結会計年度比66.1%減)となりました。これは、主に株主配当金の支払いや自己株式の取得を行ったものの、棚卸資産や投資用不動産の取得等のために、社債の発行や借入金による資金調達を行ったことによるものです。 3.生産、受注及び販売の実績① 生産実績当社グループの生産・販売品目は、広範囲かつ多種多様であり、生産実績を定義することが困難であるため「生産の実績」は記載しておりません。 ② 受注実績当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称受注高(百万円)前期増減率 (%)受注残高(百万円)前期増減率 (%)戸建住宅925,37716.6206,4370.2賃貸住宅1,261,8098.2187,7817.5マンション392,336△18.684,687△45.1商業施設1,153,3204.2207,948△9.7事業施設1,324,38410.01,030,2456.8環境エネルギー90,678△27.93,525△75.8その他40,122△29.79-合計5,188,0295.11,720,635△1.4 (注) 各セグメントの金額は外部顧客への受注高・受注残高を表示しております。 ③ 販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称金額 (百万円)前期増減率 (%)戸建住宅944,4618.6賃貸住宅1,248,6736.0マンション432,969△9.0商業施設1,175,7158.5事業施設1,259,23914.3環境エネルギー101,746△29.0その他40,112△29.8合計5,202,9196.0 (注) 1.各セグメントの金額は外部顧客への売上高を表示しております。(「第5 経理の状況 1 (1)連結財務諸表 注記事項 (セグメント情報等)」を参照。)2.総販売実績に対する割合が10%以上の相手先はありません。 (参考)提出会社個別の事業の状況は次のとおりです。受注高、売上高及び繰越高期別部門別前期繰越高(百万円)当期受注高(百万円)計(百万円)当期売上高(百万円)次期繰越高(百万円)第84期自 2022年4月1日至 2023年3月31日建築請負部門556,0831,071,8751,627,9581,145,560482,397不動産事業部門87,762856,874944,637772,203172,434その他事業部門-88,30288,30288,302-計643,8462,017,0522,660,8982,006,066654,831第85期自 2023年4月1日至 2024年3月31日建築請負部門482,3971,184,3561,666,7531,144,087522,666不動産事業部門172,434917,6971,090,131929,249160,882その他事業部門-76,37776,37776,377-計654,8312,178,4312,833,2622,149,713683,548 (注) 1.損益計算書においては、建築請負部門は「完成工事高」、不動産事業部門は「不動産事業売上高」、その他事業部門は「その他の売上高」として表示しております。2.前期以前に受注したもので契約の更改により金額に変更あるものについては、当期受注高及び当期売上高にその増減を含めております。3.次期繰越高は(前期繰越高+当期受注高-当期売上高)です。 4.重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。 (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであり、その達成を保証するものではありません。  <CFOメッセージ> 企業価値向上に向けて戦略的資本政策と、資本効率向上を目指す 代表取締役副社長/CFO 香曽我部 武 変化に対応し、さらなる成長を遂げる第7次中期経営計画(以下、7次中計)の2年目にあたる2023年度、売上高は5兆円を突破し、過去最高の5兆2,029億円となり、営業利益は4,402億円(退職給付における数理計算上の差異等を除く営業利益では過去最高の3,936億円)となりました。創業者・石橋信夫の夢である「創業100周年に売上高10兆円の企業グループ」の折り返しとなる5兆円を、70周年(2025年)を迎える前に達成できたことは感慨深いものがあります。社員一人ひとりの働きに感謝するとともに、創業者の “世の中の役に立つからやる”という言葉を大切にして、現状に満足せず、さまざまな領域に挑戦してきた結果を誇りに感じています。一方、市場環境に目を向けると、国内においては、日銀のマイナス金利政策の解除に伴い、今後は金利のある社会へ変化していくことが予想されます。CFOとしては、さまざまな事業への挑戦や新たなエリアへの進出を続けるなかで、リスクマネジメントの観点からも、金利上昇局面に対する強固な財務基盤の構築は重要な課題の一つであると考えています。そこで当社は、金利上昇を見据え、投資のハードルレートを、2023年2月に引き上げました。また、直接金融と間接金融、変動金利と固定金利など状況に応じた多様な資金調達を常に検討しています。現在の格付はAA格を取得していますが、我々にとって安定的な資金調達に向けて、格付の維持は重要なテーマです。格付会社との対話では、不動産開発事業が拡大する状況下で、どのようにD/Eレシオ0.6倍程度を達成するのかが問われています。成長への投資とともに、保有している不動産の回転率や稼働状況をしっかりと管理しながら、財務健全性の維持に努めています。 また国内では人口、世帯数の減少が一層進行し、深刻な人手不足が課題となる中、人財の確保と労務管理は今まで以上に厳しくなるでしょう。絶えず社会環境が変化する中でも、当社は業界のトップランナーとして、社会からの期待に応え続けていくために、2024年問題という労働時間規制への対応をしっかりと進めていきながら、ガバナンスへの意識を更に高めていかなければなりません。さらに成長の柱である海外事業においては、RC(リージョナル・コーポレート)機能を、アメリカ、オーストラリア、ASEAN、中国、ヨーロッパ等、世界各地で設置し、各エリアの事業や子会社、プロジェクトに合わせた体制を整え、現地の商慣習やリスク、ノウハウをRC機能に蓄積することで、持続的な成長を支える経営体制とリスク管理を推進しています。加えて、本部と海外各社との役割と責任を明確化したうえで、現場により近い位置(業務内容、物理的距離)でモニタリングし、適切なサポートを行っています。 7次中計の進捗2021年頃から鉄をはじめとする資材価格の高騰や、労務費の上昇等により、建設コストが上昇してきた中、利益率の悪化に対する策を講じてきました。各事業で価格転嫁などの取り組みは進めていますが、価格高騰以前に締結した契約案件の交渉は想定通り進まず、比較的工期の長い事業施設と商業施設事業は、その影響を受けています。しかし直近では、改めて契約締結時にお客さまへ資材価格高騰時の価格転嫁に関して丁寧に説明し、契約書の特約に記載するなどしていますので、今後は徐々に利益率が改善していくものと見ています。加えて7次中計では、グループ購買によるコスト低減の取り組みも進めています。従来はグループ会社が個別に調達していたものを、国内の主要なグループ企業(大和ハウス工業、大和リース、フジタ等)が共同で調達することにより、参加グループ企業における最優遇価格の展開が可能になりました。スケールメリットによるコストダウンも期待でき、2026年度グループ集中購買額1兆円、コスト削減効果額1,000億円に向けて取り組みは順調に進捗しています。また、海外においてもオフサイト化(工場生産)の推進や、米国戸建住宅3社(Stanley Martin社、Trumark社、CastleRock社)による共同調達の取り組みが始まっています。 投資と回収開発不動産については、7次中計の投資額2.2兆円に対する進捗率は約30%となりました。2.2兆円のうち、物流施設を中心とした事業施設への投資は1.5兆円と計画しています。物流施設用地仕入れにおける競争環境の激化や大型の土地入札案件の一巡感などが影響し、投資スピードは当初見込みよりも遅れていますが、テナントからの確かな需要は確認できています。開発不動産の売却については、国内の物流施設を中心に、安定して売却できており、今後も継続的に実施していきます。米国においては、近年の金利上昇などにより、賃貸住宅をはじめとする投資不動産の流通市場環境が悪化しました。その影響で、2023年度は売却を見送りましたが、市場環境が回復してきた際により良い条件で売却できるよう、NOI利回りの向上を図りながら、運営、開発を継続していきます。一方、販売用不動産については、国内各事業で積極的に分譲事業の拡大を進めているため、7次中計策定時の見込みより投資が進んでいます。特に、戸建住宅事業では、国内で事業モデルの改革を行い、分譲事業を強化しており、また、米国では、現地3社の強みである土地情報力や地主、土地開発会社との強力なリレーション等を活用しながら、順調に優良な土地の確保を進めています。賃貸住宅事業では、土地を取得し、アパートを建設後、ご入居者様を募り、投資家や節税対策を目的としたオーナー様向けに販売しています。商業施設事業や事業施設事業についても豊富な土地情報力や顧客基盤を活かしながら、様々なアセットを開発し、売却を実施しています。分譲事業は請負事業と比較し、土地や建物に投資するリスクがありますが、土地取得から建物仕様、アセットによってはテナント誘致まで、当社がデザインすることで、収益率の向上が期待できます。各事業で回転率や滞留する不動産の状況、市況や分譲事業のパフォーマンスなどを注視しながら、効率的な投資を行っています。 資金調達2024年1月に転換社債型新株予約権付社債(CB)を発行しました。7次中計における積極的な不動産投資を遂行するための戦略的な資金調達です。金利上昇など資金調達環境の不透明な状況が続く中、金利0.00%で調達を行っており、普通社債での調達と比較して約7~80億円程度の金利コストの削減が実現できたと考えています。また、転換制限条項及び額面現金決済条項の付与により転換の可能性及び希薄化を抑制しうる商品設計にしています。更に当CBにより得た低コストの資金を原資に自己株式取得を実施しましたので、資本政策の達成に向け、ROEや1株当たり当期純利益(EPS)等の資本効率の向上も企図されています。なお、額面現金決済取得条項については、当社のオプションであるため、行使に関しては、株価やD/Eレシオの水準、ROEの状況など、その時点での財政状況や資本政策を考慮して判断していきたいと考えています。 資本コストと株価を意識した経営を推進する常にエクイティスプレッドを意識した経営を推進しておりますが、成長分野への投資を継続しながら、ROE13%以上を実現することは決して容易ではありません。しかし、既存事業での確実な成長と、生産性向上による更なる利益の創出に加えて、安定的な株主配当や機動的な自己株式の取得による株主還元との両輪で、ROE13%以上を達成したいと考えています。また、事業ポートフォリオの見直しという観点から実行した、2023年7月のリゾートホテル事業の譲渡や、2024年2月のコスモスイニシアの株式一部譲渡、さらに政策保有株式の売却など、積極的に保有資産の資金化を図ることもROEの目標達成に向けての手段の1つだと考えています。株価については、一時、日経平均が4万円超となる中、当社も年初には4,718円の上場来最高値を更新することができましたが、2024年5月の決算発表後には、併せて公表した2024年度の計画が市場コンセンサスに対して未達であったことなどから、株価を下げることとなりました。現状のPBR、PERの水準を考えれば、物足りなさを感じていますので、しっかりと実績を積み上げて市場の期待に応えていきたいと考えています。昨今言われているPBR向上に向けては、ROEの向上と株主資本コストの低減の両面で取り組む必要があります。株主資本コスト低減に向けては、更なるガバナンス強化と、IR活動を通じた株主・機関投資家との対話が鍵となります。まずは7次中計最終年度の利益達成の蓋然性をご説明するとともに、豊富な土地情報を有する強みと、そして地方行政や各企業を含む顧客基盤から生まれる事業機会を活かす当社の稼ぐ力を改めてご理解いただき、当社が持続的に成長し続ける企業であることを再認識いただけるよう努めていきます。 環境、人的資本に積極投資する環境については、2050年にカーボンニュートラルを実現すべく、原則、建築するすべての屋根に太陽光発電パネルを設置し、2030年度にはZEH・ZEB率を100%とする取り組みを進めています。GHG排出量については、2023年度は響灘火力発電所(※)の子会社化により、事業活動(スコープ1・2)は一時的に増加しました。一方、カーボンニュートラル戦略のもと、太陽光発電パネルの設置率、ZEB、ZEH率が順調に向上したことにより、販売建物の使用(スコープ3カテゴリ11)における排出量の削減が進んだことから、バリューチェーン全体のGHG排出量は、計画を上回る39.5%削減を達成しました。お客さまとともに進めるカーボンニュートラルに向けた取り組みが進んでいることを実感しています。当社の持続的成長、そして“将来の夢”の実現に向けた人的資本経営においては、多様な人財が活躍し、従業員一人ひとりが働きがいを実感できることが生産性の向上につながります。従業員が「誇り」と「働きがい」を持ち、個々が「強み・らしさ」を発揮して活躍できる人財育成と、公平・公正な場の整備を進めています。特に現場における人財育成や組織運営の要となるミドルマネジメント層への教育を強化しており、労務管理だけでなく、「人が活きるマネジメント」と「業績が上がるマネジメント」の好循環を生み出すための意識、知識、リテラシーを高めるための教育支援を行っています。また物価上昇が続くなかで、従業員が安心して働ける環境整備と、中長期的な人財の採用・確保につなげるため、従業員への投資として継続的な給与改定を実施しています。加えて、建設業の2024年問題に向けた建設DX投資なども推進し、現場の負荷低減による生産性向上も進めていきます。※ 響灘火力発電所:石炭とバイオマス燃料(木質ペレット)の混焼による発電を行っており、石炭専焼のプラントと比べCO?排出量を最大で年間約30%削減可能。なお、2024年3月に稼働を停止したため、2024年度以降のGHG排出量は再び目標達成水準に達する見込み。今後は、バイオマス燃料を100%利用したバイオマス専焼発電所へ転換、2026年4月の運転開始を目指している。 引き続き安定的な株主還元を実現する当社は、事業活動を通じて創出した利益を株主の皆さまに還元するとともに、中長期的な企業価値最大化のために不動産開発投資、海外事業展開、M&A、研究開発や生産設備などの成長投資に資金を投下し、1株当たり当期純利益(EPS)を増大させ、株主価値向上を図ることを株主還元の基本方針としています。2023年度の年間配当金額は143円、配当性向は35.1%(退職給付会計における数理計算上の差異の影響を除く)となりました。2024年度の年間配当額は145円の計画とし、15期連続の増配を計画しています。また2024年5月には7次中計における株主還元方針の一部を変更させていただき、安定的な配当の観点から、配当金の下限設定を130円から145円へと変更させていただきました。なお、自己株式の取得については、市場環境や資本効率等を勘案し、状況に応じて機動的に実施する方針で、7次中計ではこれまでに総額で871億円の自己株式の取得を実施いたしました。 ステークホルダーとともに“将来の夢”を実現する大和ハウスグループは、利益を創出する事業価値と “世の中の役に立つ”という考え方のもとで生み出される社会価値の両立により、企業価値向上を図っています。創業以来当社は、戦後の木材不足から鉄パイプで組み立てた「パイプハウス」やプレハブ住宅の原型となる「ミゼットハウス」、日本初の住宅ローン、1970年代にはロードサイドの遊休地利用による流通店舗事業など、次々と新たな商品・事業を生み出してきましたが、次のステージに向けて、新しい事業との創出にも本格的に挑戦していきます。アントレプレナー(起業家)とイントレプレナー(社内起業家)の共創機会を創出し、新規事業へ挑戦するための仕組みとして、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)と社内起業制度を設立しました。“世の中の役に立つ”新たなサービスや付加価値がこの制度を通じて生まれることを大いに期待しています。社会価値を創造する事例の一つとして「リブネスタウンプロジェクト」があります。建物を引き渡して終わりではなく、その後のお客さまの暮らしにも寄り添うという点で、非常に大和ハウスらしい取り組みです。業績は大切ですが、それだけを目標とせずに、今後も全てのステークホルダーの皆さまにとって何が良いかを常に考えながら、“夢”の実現に向けて事業を進めていきます。 Ⅰ.財政状態 財務の状況 2023年度末の総資産は、2022年度末比で3,916億円増加し、6兆5,337億円となりました。その主な要因は、各事業で分譲事業を推進するため販売用不動産の仕入れを強化し、特に戸建住宅事業及び商業施設事業において棚卸資産が増加したことによるものです。負債合計については、2022年度末比で2,568億円増加となり、4兆99億円となりました。その主な要因は、販売用不動産や投資用不動産の取得等のために社債の発行や借入金による資金調達を行ったことによるものです。純資産合計については、2022年度末比で1,348億円増加し、2兆5,237億円となりました。その主な要因は、株主配当金875億円の支払いや自己株式871億円の取得により株主還元を進めたものの、2,987億円の親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによるものです。リース債務等を除く有利子負債残高は、2022年度末比で2,383億円増加し、2兆878億円となりました。D/Eレシオについては、0.77倍(※1)となり、0.6倍程度としている財務規律を上回っておりますが、これは成長のための積極的な投資を進めたことによるものであり、第7次中期経営計画最終年度においては掲げた財務規律を遵守すべく、資本政策を検討してまいります。資産内訳については、棚卸資産の残高が2兆2,877億円となり、大きな割合を占める状況となっております。今後も、棚卸資産や投資用不動産の取得等により、資産が増加することが見込まれますが、最適資本構成の検証により財務の健全性維持に努めてまいります。※1.ハイブリッドファイナンス(2019年9月に発行した公募ハイブリッド社債(劣後特約付社債)1,500億円、及び2020年10月に調達したハイブリッドローン(劣後特約付ローン)1,000億円)について、格付上の資本性50%を考慮して算出しております。 [ 図1 ] 第5次中期経営計画の最終年度(2018年度)との比較を行っております。 ①流動比率は137%から238%へと上昇②固定比率は151%から118%へと低下③固定長期適合率は84%から59%へと低下④自己資本は1兆5,959億円から2兆4,378億円へと成長 [ 図2 ] ①棚卸資産は9,556億円から2兆2,877億円へ増加(図3参照)②賃貸等不動産は1兆560億円から1兆2,800億円へ増加③リース債務等を除く有利子負債は7,785億円から2兆878億円へ増加、また自己資本に対する比率(D/Eレシオ)も0.49倍から0.77倍へ上昇(ハイブリッドファイナンスの資本性考慮後) 資産増加の分析 2023年度末の棚卸資産は2兆2,877億円となり、2018年度対比で139%の増加となりました。主な増加要因は、各事業で当社の強みの一つである「土地を起点とした複合的な事業提案力」の強化を図り、投資不動産の購入を検討されているお客様に向けた販売用不動産の仕入を増加させたことにより、特に賃貸住宅や商業施設事業において残高が増加したものです。また米国戸建住宅3社(Stanley Martin社、Trumark社、CastleRock社)において、米国住宅市場の進出エリアが順調に拡大していることも棚卸資産の増加につながっております。セグメント別には、積極的に展開している海外で分譲事業が中心となる戸建住宅、国内で開発した物流施設等の売却を進めている事業施設事業の割合が高くなっております。投資不動産は1兆5,950億円となり、2018年度対比で48%の増加となっております。内訳としては流動化不動産(※2)が1兆2,350億円で68%の増加、収益不動産(※3)が3,600億円で6%の増加となっており、流動化不動産の増加が投資不動産の増加につながっております。主な増加要因は収益ドライバーの一つである物流施設の開発投資を拡大してきたことによるものです。資産の増加は棚卸資産や投資不動産の増加によるところが大きくなっていますが、これは成長のための投資を積極的に行っていることによるものです。投資に際しては、IRRを重要な指標として意思決定しており、売却時には資金回収及び収益獲得に寄与するものと考えております。今後も、市場の環境等を踏まえながら最適なタイミングで売却を実施し、資本効率の向上に努めてまいります。※2.流動化不動産:値上がり益を得る目的で投資後、早期に売却可能な不動産。※3.収益不動産:賃貸収益を得る目的で投資・開発した不動産。 [ 図3 ] [ 図4 ] Ⅱ.キャッシュ・フロー(CF) 基本的な考え方 キャッシュ・マネジメントについては、事業活動によるキャッシュ創出額を基準として投資を行うことを基本的な考え方としております。第7次中期経営計画において、財務規律としてD/Eレシオを0.6倍程度に設定しておりますが、優良な投資機会に対しては、積極的な投資を行う必要があり、成長のための投資が先行し一時的に規律を上回ることがあります。中長期的には、0.6倍程度に有利子負債の水準をコントロールするため、社内の投資判断基準を設定、厳格に運用し、成長投資と財務健全性の維持の均衡を図っております。 キャッシュ・フローの状況 2023年度における営業活動CF(休日調整後)は2,928億円となり、2022年度に比べ625億円増加し、自己資本を1とした場合の営業活動CF比率は、2022年度の0.10から0.02ポイント上昇し0.12となりました。その主な要因は、法人税等の支払いや販売用不動産の取得を行ったものの、4,558億円の税金等調整前当期純利益を計上したことによるものです。投資活動CFについては、第7次中期経営計画における投資計画に基づき、賃貸等不動産等の取得や、不動産開発事業への投資を2,486億円実行したことなどにより、△3,104億円となりました。その結果、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動CF+投資活動CF)は△176億円となりました。財務活動CFについては、株主配当金の支払いや自己株式の取得により株主還元を進めたものの、棚卸資産や投資用不動産の取得等のために、社債の発行や借入金による資金調達を行ったことなどにより、財務活動CFは973億円となりました。これらの結果、現金及び現金同等物の2023年度末残高は2022年度末から934億円増加し、4,395億円となりました。 [ 図5 ] [ 図6 ] Ⅲ.損益の状況 自己資本利益率(ROE) 自己資本利益率(ROE)は12.7%となりました。当社は、第7次中期経営計画においてはROE13%以上を経営目標に掲げております。2023年度においては、リゾートホテル事業の売却や、上場会社であるコスモスイニシアの連結除外等を行いましたが、引き続き事業ポートフォリオの最適化や非効率資産の圧縮等、さまざまな観点から資本効率の改善に向けて取組み、利益の上積みと株主還元の両輪で達成してまいります。 [ 図7 ] (ROE分解)売上高当期純利益率 親会社株主に帰属する当期純利益は2,987億円となり、2018年度からの6年間の年平均成長率は4.7%となりました。当期純利益率については5.7%となり、退職給付会計における数理計算上の差異の影響もありますが、それを除いても改善傾向にあります。依然として資材価格や燃料費の高騰による影響を受けていますが、新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けたホテル事業等の業績回復が利益率改善につながっております。 [ 図8 ] (ROE分解)総資産回転率 売上高は5兆2,029億円となり、2018年度からの6年間の年平均成長率は4.7%となりました。総資産回転率(※4)については、前期の0.84回より0.02回低下し0.82回となりました。当社グループの事業は、投資が不要な建設請負事業が中心だったところから、不動産開発事業のように先行投資が必要な事業の割合が増加してきており、売上高に占める開発物件売却の割合も増加してきております(図10参照)。さらに土地建物を販売する分譲事業を強化しており、このビジネスモデルの変革により回転率は低下することが見込まれますが、ストックとフローのバランスを取りながら棚卸資産の販売促進や投資不動産の売却、政策保有株式の売却等、資産の効率的な活用の徹底に引き続き取組み、改善を図ってまいります。※4.総資産は期中平均で算出。 [ 図9 ] [ 図10 ] (ROE分解)財務レバレッジ 自己資本は2兆4,378億円となり、2018年度からの6年間の年平均成長率は8.8%となりました。財務レバレッジ(※5)は、前期と比べて2.6ポイント低下し、268.4%となりました。D/Eレシオを財務規律として設定することで、財務レバレッジをコントロールしながら、成長投資への資金を確保し、財務基盤の強化に努めます。※5.総資産及び自己資本は期中平均で算出。 [ 図11 ] 投下資本利益率(ROIC) 税引後営業利益(NOPAT)(※6)は、3,055億円となり、投下資本(自己資本+有利子負債)(※7)4兆3,296億円に対する利益率(ROIC)は7.1%となりました。株主資本コストを上回る資本効率でリターンに結び付けるために、現場においては図13に示すような通常業務の改善に「凡事徹底」で取組み、ROICの向上に努めてまいります。※6.税引後営業利益(NOPAT):営業利益×(1-実効法人税率)※7.投下資本は期中平均で算出。 [ 図12 ] [ 図13 ] 海外業績 海外事業における売上高は7,059億円、営業利益は304億円となり、2018年度からの6年間における年平均成長率は売上高20.4%、営業利益18.8%となりました。当社業績に占める海外事業の割合も上昇傾向にあり、売上高についてはコンスタントに10%を上回る水準となりました。当社は米国の住宅会社のM&Aや海外での不動産開発等、海外事業に積極的に取組んでおります。第7次中期経営計画において、地域密着型の海外事業による成長の加速を重点テーマの一つとし、最終年度には、海外売上高1兆円・営業利益1,000億円を目指してまいります。 [ 図14 ] [ 図15 ] Ⅳ.事業別経営成績 収益性分析 営業利益においては、賃貸住宅、商業施設、事業施設事業の3つのセグメントで全体の85%以上を占めております。環境エネルギー事業においては、売上高構成比としては2%にとどまるものの、脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーの普及の貢献に積極的に取組んでおります。また、戸建住宅事業においては、新設住宅着工戸数の減少が見込まれますが、分譲事業強化を軸とした経営改革を進め、利益率の改善を図ってまいります。 [ 図16 ] セグメント資産に対する営業利益率 セグメント資産に対する営業利益率については、分譲事業の推進により棚卸資産残高は増えているものの、請負事業や賃貸管理事業の利益貢献度の高い賃貸住宅事業が高い数値を示しております。事業施設事業については、物流施設やデータセンター等の市場の成長に対応し、長期大型開発へ積極的な投資を行っております。現在は取得済みの土地に係る建設投資を進めていることから、現時点における資産利益率は低い水準となっておりますが、今後の投資回収期にはキャッシュ・フローに大きく寄与してくることを見込んでおります。 [ 図17 ] 事業投資の状況 事業投資の状況としては、持続的成長を見据え積極投資を維持し、収益ドライバーである物流施設を中心とした事業施設事業と地域ポテンシャルを引き出し雇用創出や賑わいに貢献する商業施設事業への開発投資を拡大しております。また、これらの事業によって創出された資金を活用し、新たな収益の柱として育成すべく新規事業や海外事業等への投資も併せて実施しております。 [ 図18 ] Ⅴ.株主還元及び株価の状況 株主還元 2023年度は、年間配当金額143円、配当性向31.3%とし、14期連続の増配を実現いたしました。配当性向は31.3%となりましたが、退職給付会計における数理計算上の差異の影響を除くと35.1%となります。第7次中期経営計画では配当性向を従来の30%以上から5ポイント引き上げ35%以上とし、業績に連動した利益還元を行い、また2024年度からは130円としていた年間の配当金額の下限を145円に変更し、より安定的な配当の維持に努めてまいります。また、2023年5月に700万株の自己株式消却を実施し、2024年1月には1,718万株(取得価額799億円)の自己株式の取得を行いました。 [ 図19 ] 注 2015年度及び2022年度の配当性向の増減は、主に退職給付債務算定に用いる割引率を変更したことによるものです。 株価純資産倍率(PBR) 1株当たり純資産(BPS)は3,810.21円となり、2018年度からの6年間の年平均成長率は9.6%となりました。株価純資産倍率(PBR)は、1.19倍となり、前期は1.00倍を下回る結果となっていましたが、当期は上回っております。しかしながら、現状の株価には満足せず、継続してROEの向上と事業ポートフォリオの最適化による資本効率の向上への取組みを進め、加えて財務健全性やガバナンスの強化、IR活動を通じた投資家との対話により、今後も企業価値の最大化を図ってまいります。 [ 図20 ] [ 図21 ] 2014201520162017201820192020202120222023時価総額(億円)15,62021,01621,20627,25423,35917,77921,20320,98720,51728,971最高株価(円)2,467.53,6543,3674,5944,2933,8193,5523,9003,3204,718最低株価(円)1,673.02,326.02,500.53,0963,1192,230.52,332.03,0372,907.53,080 注 最高・最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所市場第一部におけるものであり、2022年4月4日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものです。なお、時価総額は期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)としています。 Ⅵ.中期経営計画進捗 当社は、2022年度を初年度とする5ヵ年計画「第7次中期経営計画」をスタートいたしました。2年目となる2023年度は、売上高は5兆円を突破し、退職給付会計における数理計算上の差異等の影響を除いては、営業利益・当期純利益とともに過去最高を更新することができました。D/Eレシオについては、投資が先行しており、財務規律を上回っておりますが、最終年度に向けてコントロールしてまいります。原材料・エネルギー価格の高騰や金融資本市場の変動等の影響により厳しい事業環境が続きますが、計画達成に向けて、「収益モデルの進化」「経営効率の向上」「経営基盤の強化」の3つの経営方針を掲げ、持続的な成長モデルの実現に向け、海外事業の更なる進展や、地域を活性化させる複合再開発の推進、カーボンニュートラルの実現に向けた取組み等、各施策を実施してまいります。 財務目標 [ 図22 ] 注 営業利益・当期純利益・配当性向は退職給付会計における数理計算上の差異等の影響を除く。当期純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。D/Eレシオは、ハイブリットファイナンスの資本性考慮後。 事業別業績目標 [ 図23 ] 注 営業利益は退職給付会計における数理計算上の差異等の影響を除く。

※本記事は「大和ハウス工業株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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