大日本印刷株式会社の基本情報

会社名大日本印刷株式会社
業種その他製品
従業員数連36911名 単9589名
従業員平均年齢44.2歳
従業員平均勤続年数20.3年
平均年収8043096円
1株当たりの純資産4866.17円
1株当たりの純利益443.12円
決算時期年3
配当金64円
配当性向15.7%
株価収益率(PER)10.54倍
自己資本利益率(ROE)9.85%
営業活動によるCF725億円
投資活動によるCF183億円
財務活動によるCF▲1186億円
研究開発費※193.4億円
設備投資額※1246億円
販売費および一般管理費※12382.42億円
株主資本比率※244.1%
有利子負債残高(連結)※31734.09億円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】DNPグループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、DNPグループが判断したものです。 (1)会社の経営の基本方針DNPグループは、サステナブルな社会の実現を目指し、「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する。」ことを企業理念に掲げています。また、この理念に基づき、持続可能なより良い社会と、より心豊かな暮らしを実現するために、長期を見据えて、自らがより良い未来をつくり出すための事業活動を展開していくことを「経営の基本方針」としています。さまざまな活動を通じて、社会課題を解決するとともに、人々の期待に応える新しい価値を創出し、それらの価値を生活者の身近に常に存在する「あたりまえ」のものにしていきます。人々にとって「欠かせない価値」を生み出し続けることで、DNP自身が「欠かせない存在」になるように努めており、こうした姿勢を「未来のあたりまえをつくる。」というブランドステートメントで表明しています。DNPグループは、「経営の基本方針」に沿った取り組みを通じて、持続的に事業価値・株主価値を創出していきます。また、事業活動の評価指標としてROEとPBRを用いて、価値向上の達成状況を評価していきます。 (2)中長期的な会社の経営戦略DNPグループは、「経営の基本方針」に基づき、2026年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画を2023年4月から実行しています。この計画では、「事業戦略」を中心に持続的な価値創出の具体策を実行するとともに、それを支える経営基盤の強化に向けて「財務戦略」と「非財務戦略」を推進し、事業価値・株主価値を高めていきます。 <三つの戦略>〔1:事業戦略〕〔1-1:中長期の事業ポートフォリオの考え方〕「事業戦略」では、市場成長性・魅力度と事業収益性を基準として、目指すべき中長期の事業ポートフォリオを明確に示しました。市場成長性・魅力度が高い「成長牽引事業」(*1)と「新規事業」(*2)を「注力事業領域」と位置付けています。この「注力事業領域」の五つの事業にリソース(経営資源)を集中的に投入し、必要な組織・体制なども十分に整備して、利益の創出を一層加速・拡大させていきます。また、DNP独自の強みの進化と深耕のほか、DNPとは異なる強みを持った企業との連携・M&Aを含む、DNPならではの社会・関係資本である多様なパートナーとの共創などによって、「No.1」を獲得していく戦略を推進していきます。 *1 成長牽引事業:デジタルインターフェース関連、半導体関連、モビリティ・産業用高機能材関連  *2 新規事業:コンテンツ・XR(Extended Reality)コミュニケーション関連、メディカル・ヘルスケア関連一方、市場成長性・魅力度の伸び率は低水準ながら収益性の高い「基盤事業」(*3)については、事業効率の向上などによって、安定的なキャッシュの創出に努めていきます。また、現状では市場成長性が低く収益性が厳しい「再構築事業」(*4)については、生産能力や拠点の縮小・撤退を含めた最適化を進めるとともに、注力事業領域へのリソースの再配分や、当事業のなかでも独自の強みを有した製品・サービスの強化などによる構造改革を推進していきます。 *3 基盤事業:イメージングコミュニケーション関連、情報セキュア関連 *4 再構築事業:既存印刷関連、飲料事業 〔1-2:各セグメントにおける戦略〕〇スマートコミュニケーション部門当部門では、投下資本とキャッシュ創出のバランスを見ながら効率的・効果的な投資を行うほか、DNP独自の強みを活かし、国内外の企業との協業・サービス開発を進めていきます。また、紙メディア印刷関連は、再構築事業の一つとして市場規模に対応した合理化・適正化を進めます。当部門の注力事業領域である「コンテンツ・XRコミュニケーション関連」では、リアルとバーチャルの空間をシームレスかつセキュアに行き来できるメタバース等を実現し、人々の体験価値を拡大していきます。国内外の多様なIP(Intellectual Property:知的財産)ホルダーやクリエイターとのネットワーク、アーカイブ事業、高精細画像処理技術や版権処理の実績と信頼、そして、個人や情報を安全に認証しながら大量のデータを流通させ、複雑なビジネスプロセスを統合・最適化させる能力などのDNPならではの強みを活かしていきます。また、着実に収益を積み上げる基盤事業として、写真プリント等の多様な製品・サービスをグローバルに展開する「イメージングコミュニケーション関連」、企業・団体等の最適な業務プロセスを設計して関連業務を受託するBPO(Business Process Outsourcing)事業、国内トップシェアのICカードや各種認証サービス等の「情報セキュア関連」の事業を推進していきます。具体策として、「イメージングコミュニケーション関連」や「情報セキュア関連」でグローバルな投資を拡大するほか、企業・自治体等の業務効率化やDX(デジタルトランスフォーメーション)化のニーズを捉えたBPO事業の拡大を図ります。「コンテンツ・XRコミュニケーション関連」では、国内外の多数のパートナーとの連携を深めて、新規市場を創出していきます。 〇ライフ&ヘルスケア部門当部門の注力事業領域の一つ「モビリティ・産業用高機能材関連」では、世界シェアトップのリチウムイオン電池用バッテリーパウチのEV向けのグローバル展開を積極的な設備投資によって推進します。この製品とモビリティ(移動用車両)向けの多様な内外装加飾材を中心に、数十年先を見据えてEVの航続距離の延伸や自動運転、快適な移動空間の実現に取り組んでいきます。もう一つの注力事業領域の「メディカル・ヘルスケア関連」では、出版・包装・半導体等の事業で培った画像処理技術やカラーマネジメント技術、無菌・無酸素充填技術、ミクロ・ナノ造形技術、精密有機合成技術等を掛け合わせ、原薬製造・製剤・剤形変更・医療パッケージ製造などの製薬サポート事業を展開していきます。また、画像診断やオンライン診療などのスマートヘルスケア事業の拡大に努め、人々の健康寿命の延伸に貢献していきます。一方、市場環境が厳しい包装関連事業等では拠点の再編などによる収益性の改善・向上を図るとともに、「DNP透明蒸着フィルム IB(Innovative Barrier)-FILMR」等の独自製品や環境配慮包材の拡大を進めます。具体策としては、リチウムイオン電池用バッテリーパウチの米国拠点への投資、バリアフィルムや環境配慮包材等のグローバル供給能力拡大のほか、メディカル・ヘルスケア関連のパートナーとの相乗効果の最大化などにも取り組んでいきます。 〇エレクトロニクス部門当部門では、積極的な設備投資を推進するほか、DNP独自の強みを活かした新製品開発や、社外のパートナーとのアライアンスによる半導体サプライチェーンへの提供価値拡大などによって、事業の拡大を加速させていきます。注力事業領域の一つ「デジタルインターフェース関連」では、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクやディスプレイ用光学フィルムなど、世界トップシェアの製品を中心に、技術革新の潮流も捉えて、リアルとバーチャル、アナログとデジタルをつなぐ新しい価値を創出していきます。もう一つの注力事業領域「半導体関連」では、自動運転や遠隔教育・遠隔医療、クラウド環境やデータセンターの広がりなどによって全世界のデータ流通量が飛躍的に増大するなか、半導体サプライチェーン全体に不可欠なファインデバイスを開発・提供していきます。 〔2:財務戦略〕持続的な事業価値と株主価値の創出に向けて、安定的な財務基盤を構築・維持した上で、キャッシュを成長投資に振り向けるとともに、株主還元にも適切に配分していきます。 〇キャッシュ・アロケーション戦略注力事業領域への積極的な投資とそれぞれの事業の効率化を推進し、成長投資の原資となる営業キャッシュ・フローを安定的に創出していきます。資産効率の改善に向けて、政策保有株式の売却を加速し、遊休不動産の縮減にも着実に取り組んでいます。また、有利子負債の活用を含む適切な資金調達方法を検討するなど、資金効率の最大化に努めていきます。創出したキャッシュは、注力事業領域に集中的に投資するとともに、経営基盤の構築に向けた投資にも配分していきます。長期にわたって企業活動を推進し、社会や人々に価値を提供し続けていくため、成長投資の推進と株主還元のバランスを考慮した上で、株主還元にも積極的に配分していきます。 〔3:非財務戦略〕〇人的資本の強化DNPグループは、「人への投資」を積極的に進めるなかで、2022年に「人的資本ポリシー」を策定し、「人への投資」を企業価値の向上にさらに明確に結びつけ、グローバルでの「人的創造性(付加価値生産性)」を飛躍的に高めていくため、以下の取り組みを進めています。価値創造に向けた社員のキャリア自律支援と組織力の強化に向けて、DNP版「よりジョブ型も意識した処遇と関連施策」を展開しており、複線型のポスト型処遇、キャリア自律支援に向けた人的投資、競争力の高い報酬水準・体系の維持・確保、組織開発の充実などを進めています。また、「DNPグループ健康宣言」に基づき、多様な個の強みを引き出すチーム力の強化とマネジメント改革に向けて、「DNP価値目標(DVO)制度」の浸透や組織のエンゲージメントを高める施策を展開し、社員の幸せ(幸福度)を高める健康経営を推進しています。事業戦略に基づく適材適所の人材配置の実現については、タレントマネジメントシステムを活用したICT人材・DX人材のスキルレベルの可視化、人材ポートフォリオに基づく採用・育成、人材再配置に必要なリスキリングの強化などを進めていきます。DNPグループはまた、多様な社員を活かし、一人ひとりの強みを掛け合わせることが価値の創出に欠かせないと考え、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)の推進を重要な経営課題の一つとしています。D&I推進の基本方針である「多様な人材の育成」「多様な働き方の実現」「多様な人材が活躍できる風土醸成」の具現化に向けた施策をさらに進めていきます。 〇知的資本の強化DNP独自の強みと社外のパートナーとの連携を活かして、知的資本を強化していきます。研究開発の方針として、DNP自身がつくり出したい「より良い未来」の姿を描き、それを起点とした“未来シナリオ”を実現するため、独自の技術等の強みを強化・連動させて、新製品・新サービスの開発・提供につなげていきます。注力事業領域を中心とした新規テーマの創出、基盤技術の強化と新製品開発、オープンイノベーションによる戦略的な技術の獲得と製品化・事業化などを推進していきます。また、ライフ&ヘルスケア部門を中心とした海外での事業展開・マーケティング・研究開発の強化にも努めます。多様な事業を通じて獲得してきた特許等の知的資本の新製品・新サービスへの展開、社内外の強みを積極的に掛け合わせる組織風土の構築・醸成なども進めて、既存事業と新規事業の両方で新しい価値を創出していきます。また、DNPグループにとってのDXは、アナログとデジタル、リアルとバーチャル、モノづくりとサービスなど、両極端ともいえる強みを融合し、独自のビジネスモデルや価値を生み出すことだと位置付けています。DXに関するこの基本方針に沿って、新規事業の創出と既存事業の変革、生産性の飛躍的な向上、社内の情報基盤の革新などを進めていきます。 〇環境への取り組みDNPグループは常に、事業活動と地球環境の共生を考え、環境問題への対応を重要な経営課題の一つに位置付けています。「価値の創出(事業の推進)」と「基盤の強化」の両輪で環境課題の解決に取り組むことで、「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現に貢献していきます。「価値の創出(事業の推進)」については、環境負荷の低減と事業の付加価値の向上をともに実現する事業ポートフォリオへの転換、環境をテーマとした新規事業の創出、低炭素材料・素材の開発・活用、製品単位のCO2排出量の算定と削減、循環型社会に向けたリサイクルスキームの構築、リサイクル材の活用促進などに取り組んでいきます。「基盤の強化」では、環境負荷の見える化、再生可能エネルギーの導入、環境負荷を考慮した省エネ設備への投資、生産拠点の最適化、プラスチックを中心とした資源の効率的な利用、原材料のトレーサビリティの確保、生態系への負荷の低減などに取り組んでいきます。 〔4:ガバナンス〕DNPグループは、環境・社会・経済の急激な変化等、経営に大きな影響を与えるリスクを評価して中長期的な経営戦略に反映し、また、そのリスクを事業機会に転換していくプロセスの強化に取り組んでいます。この取り組みを一層加速させるため、2022年4月に代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」を始動させました。当委員会では、中期経営計画を実行していく過程で、環境・社会・経済の急激な変化を捉え、適切に経営戦略に反映していくため、経営会議・取締役会に報告・提言していきます。
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】 (1)経営成績等の状況の概要当連結会計年度におけるDNPグループの状況の概要は次のとおりであります。 ① 経営成績の状況当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内の雇用・所得環境の改善、インバウンド需要の回復等により、景気の緩やかな回復が見られました。一方、地政学リスクの長期化や世界各地の金融政策の影響、国内の物価上昇や人手不足など、先行きが不透明な状況が続いています。また、国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰化」と表現したような気候変動や、能登半島地震をはじめとする自然災害の影響も、引き続き懸念されます。DNPグループは、環境・社会・経済が急激に変わるなかでも、変化やリスクに対応するだけでなく、長期を見据えて変革を起こし、自らが「より良い未来」をつくり出す事業活動を展開しています。独自の「P&I」(印刷と情報)の強みを掛け合わせ、多様なパートナーとの連携を深めて、事業領域の拡大に努めています。現在は2023-2025年度の3か年の「中期経営計画」を推進しており、「事業戦略」「財務戦略」「非財務戦略」に基づく具体的な取り組みを通じて、持続的な事業価値・株主価値の創出に注力しています。事業戦略では、中長期にわたって強みを発揮できる事業ポートフォリオの構築を進めるとともに、注力事業領域を中心とした新しい価値の創出を加速させています。財務戦略では、創出したキャッシュを事業のさらなる成長のための投資と株主還元に適切に配分していきます。非財務戦略としては、「人への投資の拡大」「知的資本の強化」「環境への取り組み」を中心に推進し、サステナブルな成長を支える経営基盤の強化を図っていきます。三つの戦略のより詳細な内容は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中長期的な会社の経営戦略 <三つの戦略>」に記載しています。また、自然災害等の不測の事態に対しても、事業継続マネジメント(BCM)の徹底を図り、グループを挙げてさまざまな企業活動を持続的に推進していきます。 これらの結果、当連結会計年度のDNPグループの売上高は1兆4,248億円(前期比3.8%増)、営業利益は754億円(前期比23.2%増)、経常利益は987億円(前期比18.0%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、投資有価証券の売却にともなう特別利益の計上もあり、1,109億円(前期比29.5%増)となりました。また、DNPグループが収益性指標の一つとしている自己資本利益率(ROE)は9.8%となりました。 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。 なお、当連結会計年度から、部門(事業セグメント)の名称について、「情報コミュニケーション部門」を「スマートコミュニケーション部門」に、「生活・産業部門」を「ライフ&ヘルスケア部門」に変更し、「飲料事業」を「ライフ&ヘルスケア部門」に移行しています。前連結会計年度との比較・分析は、変更後の区分に基づいています。 (スマートコミュニケーション部門)イメージングコミュニケーション関連は、写真プリント用部材が欧州・アジア市場を中心に好調に推移しました。情報セキュア関連は、BPOの大型案件に加え、ICカードでは、1つのICチップで接触型と非接触型の規格に対応可能なデュアルインターフェイスカードが特に堅調に推移しました。マーケティング関連は、企業等に向けたマーケティング施策の実績や知見とデジタルの強みを掛け合わせた価値の提供に努めたものの、カタログ・パンフレット等の紙メディアの縮小の影響を受け、前年を下回りました。 出版関連は、リアル書店やネット販売のハイブリッドな書籍の流通販売事業、指定管理者としての受託館数が増加した図書館運営業務が堅調に推移したものの、雑誌等の市場縮小の影響により、当事業全体では前年並みとなりました。コンテンツ・XRコミュニケーション関連では、リアルとバーチャルの空間の融合等によって人々の体験価値を高めるXRコミュニケーション事業の強化に努めました。その一環として、脳神経科学とITの融合によるブレインテック事業とXR事業に強みを持つ株式会社ハコスコとの連携を進めるなど、新規事業の創出に注力しています。教育関連では、レノボ・ジャパン合同会社とともに、東京都の「バーチャル・ラーニング・プラットフォーム事業に係るプラットフォーム構築・運営組織」に採択されました。今後も、国が掲げる“誰一人取り残すことのない”多様な教育機会の提供に取り組み、全国の自治体や教育現場の活動を支援していきます。その結果、部門全体の売上高は7,194億円(前期比0.1%減)となりました。営業利益は、情報セキュア関連の売上増加や人的資本の再配置などの事業構造改革の進展などはあったものの、紙媒体を中心とした減収の影響を受けたことにより、261億円(前期比2.1%減)となりました。 (ライフ&ヘルスケア部門)モビリティ・産業用高機能材関連は、リチウムイオン電池用バッテリーパウチが、車載向けで下期に電気自動車(EV)需要停滞の影響を受けたものの、IT向けではスマートフォンの新機種での採用が進むなど需要が回復し、全体で堅調に推移しました。太陽電池関連は、世界的な需要の高まりによって封止材を中心に好調に推移しました。自動車用の加飾フィルムは、内装用に加えて、塗装工程短縮と環境負荷低減を実現する、デザイン性に優れた外装用の製品の販売が堅調に推移しました。包装関連は、原材料値上げ等を一因とする物価高騰による生活者の買い控えの影響を受けたものの、プラスチック成型品の増加などにより、前年並みとなりました。また、「DNP環境配慮パッケージング GREEN PACKAGINGR」をはじめとする機能性包材の開発・販売に注力したほか、製造拠点の再編などによる体質強化を進めました。生活空間関連は、高い耐久性とデザイン性を両立させた外装材「アートテックR」が国内外で堅調に推移したものの、国内の新設住宅(持家)着工戸数の減少によって住宅向けの内装材が減少し、前年を下回りました。飲料事業は、コロナ禍からの人流の回復や昨年夏の暑さが長引いたことなどによって販売数量が増加したほか、価格改定が寄与し、前年を上回りました。メディカル・ヘルスケア関連では、当連結会計年度より、シミックCMO株式会社を連結子会社とし、2023年6月からシミックグループと共同で原薬から製剤までの一貫製造や付加価値型医薬品の開発などを行っています。その結果、部門全体の売上高は4,723億円(前期比4.6%増)となりました。営業利益は、原材料費やエネルギー費の上昇ペースが落ち着き、十分に価格転嫁できなかった影響が緩和されたことにより、133億円(前期比67.2%増)となりました。 (エレクトロニクス部門)デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが、スマートフォンでの有機ELディスプレイ採用拡大にともなって堅調に推移しました。光学フィルムも、サプライチェーン全体の前年度の在庫調整の影響の一巡による需要回復に加え、主にテレビのパネルサイズの大型化にともなう出荷面積の拡大もあり、当事業全体で前年を上回りました。半導体関連は、半導体製造用フォトマスクが顧客企業の製品開発需要によって前年並みとなったものの、市場全体の減速によって半導体パッケージ用のリードフレーム等が減少し、当事業全体で前年を下回りました。その結果、部門全体の売上高は2,353億円(前期比15.6%増)となりました。営業利益は、半導体関連の売上の減少に加え、原材料費等のコスト上昇の影響を受けたものの、デジタルインターフェース関連が好調に推移し、581億円(前期比23.9%増)となりました。 ② 財政状態の状況当連結会計年度末の資産、負債、純資産については、総資産は、投資有価証券や退職給付に係る資産の増加などにより、前連結会計年度末に比べ1,252億円増加し、1兆9,556億円となりました。負債は、繰延税金負債の増加などにより、前連結会計年度末に比べ368億円増加し、7,189億円となりました。純資産は、自己株式の取得や剰余金の配当による減少の一方、当期利益による増加やその他有価証券評価差額金、退職給付に係る調整累計額の増加などにより、前連結会計年度末に比べ884億円増加し、1兆2,366億円となりました。 ③ キャッシュ・フローの状況当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ237億円減少し、2,345億円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益1,430億円、減価償却費559億円などにより725億円の収入(前連結会計年度は379億円の収入)となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出594億円、投資有価証券の売却による収入816億円などにより183億円の収入(前連結会計年度は250億円の支出)となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出885億円、配当金の支払額164億円などにより1,186億円の支出(前連結会計年度は524億円の支出)となりました。 ④ 生産、受注及び販売の実績a.生産実績当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)スマートコミュニケーション部門453,943△1.6ライフ&ヘルスケア部門387,460+5.2エレクトロニクス部門230,194+16.5合 計1,071,598+4.3 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。 b.受注実績当連結会計年度における受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)スマートコミュニケーション部門589,602△0.5116,837+3.0ライフ&ヘルスケア部門438,017+8.4115,761+34.1エレクトロニクス部門244,197+22.241,685+28.6合 計1,271,817+6.3274,284+18.1 (注)金額は販売価格によっており、セグメント間取引については相殺消去しております。 c.販売実績当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。 セグメントの名称金額(百万円)前期比(%)スマートコミュニケーション部門717,279△0.2ライフ&ヘルスケア部門472,240+4.7エレクトロニクス部門235,303+15.6合 計1,424,822+3.8 (注)セグメント間取引については相殺消去しております。 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容経営者の視点によるDNPグループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。 ①当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容DNPグループの当連結会計年度の経営成績等は、売上高は、前連結会計年度(以下「前期」)に比べて516億円増加し、1兆4,248億円(前期比3.8%増)となりました。売上原価は、前期に比べて298億円増加して1兆1,111億円(前期比2.8%増)となり、売上高に対する比率は前期の78.7%から78.0%となりました。販売費及び一般管理費は、前期に比べて75億円増加して2,382億円(前期比3.3%増)となり、この結果、営業利益は前期に比べて142億円増加して754億円(前期比23.2%増)となりました。営業外収益は、受取配当金の減少や持分法による投資利益の増加等により前期に比べて17億円増加して284億円(前期比6.5%増)となり、営業外費用は、前期に比べて9億円増加して51億円(前期比21.5%増)となりました。この結果、経常利益は前期に比べて150億円増加して987億円(前期比18.0%増)となりました。特別利益は、投資有価証券売却益の増加等により、前期に比べて414億円増加して859億円(前期比93.2%増)となり、特別損失は、減損損失の増加等により前期に比べて331億円増加して415億円(前期比395.0%増)となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は1,109億円(前期比29.5%増)となりました。 DNPグループの経営成績に重要な影響を与えた要因は以下のとおりです。当連結会計年度におけるDNPグループを取り巻く状況は、国内の雇用・所得環境の改善、インバウンド需要の回復等により、景気の緩やかな回復が見られました。一方、地政学リスクの長期化や世界各地の金融政策の影響、国内の物価上昇や人手不足など、先行きが不透明な状況が続いています。また、国連のグテーレス事務総長が「地球沸騰化」と表現したような気候変動や、能登半島地震をはじめとする自然災害の影響も、引き続き懸念されます。 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりです。スマートコミュニケーション部門については、イメージングコミュニケーション事業やBPOの大型案件、金融機関向けのICカードが増加したほか、リアル書店やネット販売のハイブリッドな書籍の流通販売事業、図書館運営業務も堅調に推移しましたが、紙媒体の市場縮小の影響を受けて出版印刷物や商業印刷物が伸び悩んだ結果、部門全体の売上高は前期比0.1%減の7,194億円となりました。営業利益は、事業構造改革の進展などはあったものの、紙媒体を中心とした減収の影響を受け、前期比2.1%減の261億円となりました。営業利益率は、前期の3.7%から0.1ポイント低下し、3.6%となりました。ライフ&ヘルスケア部門については、包装関連事業は、物価高騰による買い控えの影響を受けたものの、プラスチック成型品の増加などにより、前年並みとなりました。生活空間関連事業は、国内の新設住宅(持家)着工戸数の減少によって住宅向けの内装材が減少し、前年を下回りました。モビリティ・産業用高機能材関連は、車載向けのバッテリーパウチが下期から得意先の在庫調整の影響を受けたものの、IT向けは増加し、全体では堅調に推移しました。また、太陽電池関連の封止材が増加したほか、自動車用の加飾フィルムも堅調でした。飲料事業は、人流の回復や価格改定が寄与し、前年を上回りました。メディカル・ヘルスケア関連は、当連結会計年度より、シミックCMO株式会社を連結子会社としています。その結果、部門全体の売上高は前期比4.6%増の4,723億円となりました。営業利益は、原材料費やエネルギー費の上昇ペースが落ち着き、これまで十分に価格転嫁できなかった影響が緩和されたことにより、前期比67.2%増の133億円となりました。営業利益率は、前期の1.8%から1.0ポイント上昇し、2.8%となりました。 エレクトロニクス部門については、デジタルインターフェース関連は、有機ELディスプレイ製造用メタルマスクが堅調に推移したほか、光学フィルムも需要回復に加えてテレビの大型化にともなう出荷面積の拡大もあり、前年を上回りました。半導体関連は、フォトマスクが顧客企業の製品開発需要によって前年並みとなったものの、市場全体の減速により半導体パッケージ用のリードフレーム等が減少し、前年を下回りました。その結果、部門全体の売上高は前期比15.6%増の2,353億円となりました。営業利益は、デジタルインターフェース関連が好調に推移し、前期比23.9%増の581億円となりました。営業利益率は、前期の23.1%から1.6ポイント上昇し、24.7%となりました。 セグメント資産の状況については、スマートコミュニケーション部門は前期末に比べて、32億円減少して8,145億円(前期末比0.4%減)となりました。ライフ&ヘルスケア部門は前期末に比べて、467億円増加して5,479億円(前期末比9.3%増)となりました。エレクトロニクス部門は前期末に比べて、476億円増加して2,901億円(前期末比19.6%増)となりました。報告セグメント合計では前期末に比べて、912億円増加して1兆6,525億円(前期末比5.8%増)となりました。 ②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資本の流動性に係る情報DNPグループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、前期末に比べ237億円減少し、2,345億円となりました。営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整当期純利益1,430億円、減価償却費559億円などにより725億円の収入(前期は379億円の収入)となりました。投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出594億円、投資有価証券の売却による収入816億円などにより183億円の収入(前期は250億円の支出)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは、自己株式の取得による支出885億円、配当金の支払額164億円などにより1,186億円の支出(前期は524億円の支出)となりました。 a.財務戦略の基本的な考え方DNPグループは、社会課題を解決し、人々の期待に応える新しい価値の創出のため、成長領域を中心とした事業へ集中的に事業投資(研究開発投資、設備投資、戦略的提携やM&A投資)を行うとともに、それらを支える人財投資に経営資源を投入していきます。そのほか、資本効率の向上、財務基盤の安定化と株主還元の実施など、さまざまな資本政策を総合的に勘案して推進していきます。 b.DNPグループの資本の財源DNPグループは、主に営業活動により確保されるキャッシュ・フローにより、成長を維持・発展させていくために必要な資金を確保しております。設備投資資金などの資金需要については自己資金で賄うことを基本としておりますが、自己資金に加え、他人資本も活用し、成長投資資金を調達していきます。 c.DNPグループの経営資源の配分に関する考え方DNPグループは、成長領域を中心とした注力事業への投資などを進めていきます。重要な資本的支出の予定及びその資金の調達源泉等については、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)新設等」に記載のとおりであります。また、利益の配分については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」に記載のとおりであります。 ③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定DNPグループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

※本記事は「大日本印刷株式会社」の令和6年年3期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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