旭化成株式会社の基本情報

会社名旭化成株式会社
業種化学
従業員数連49295名 単8810名
従業員平均年齢41.5歳
従業員平均勤続年数14.3年
平均年収7528168円
1株当たりの純資産1308.2円
1株当たりの純利益31.6円
決算時期3月
配当金36円
配当性向29.3%
株価収益率(PER)35.19倍
自己資本利益率(ROE)2.5%
営業活動によるCF2953億円
投資活動によるCF▲1425億円
財務活動によるCF▲943億円
研究開発費※11065.97億円
設備投資額※11705.5億円
販売費および一般管理費※16752.23億円
株主資本比率※230.1%
有利子負債残高(連結)※39255.61億円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1) 経営方針・経営戦略等① 当社グループミッション等当社グループでは、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します。」というグループミッション(存在意義)のもと、「健康で快適な生活」と「環境との共生」の実現を通して、社会に新たな価値を提供することをグループビジョン(目指す姿)として掲げています。また、グループバリュー(共通の価値観)として「誠実」「挑戦」「創造」を定めており、すべてのステークホルダーの皆様に対し「誠実」に経営することを通じて、社会の課題解決や事業環境の変化に積極果敢に「挑戦」し、絶えず新たな価値を「創造」することで、事業を通じて企業の社会的責任を果たしていくことを基本方針としています。 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等<経営環境・経営課題>当社グループは、創業以来100年間、「生活基盤の確立」「物資豊富な生活」「豊かで便利・快適な生活」「新興国での需要」といった各時代のニーズに応えてきました。国連で採択された「SDGs」(持続可能な開発目標)に象徴されるように、社会課題に対する意識は世界的に高まっています。近年、人びとの価値観は大きく変化し、社会課題や環境課題が顕在化しています。いのちや健康、衛生に対する意識が高まるとともに、リモートワークの普及などを通じて人びとの働き方や暮らしが大きく変わり、個人の生きがい、働きがいがより一層重要視されるようになりました。また、「誰一人取り残さない」というSDGsの原則にあるように、自社のみならず、取引先を含めたサプライチェーン全体における人権尊重の取り組みが、企業活動の前提として求められています。地球環境への関心も高まっており、特に気候変動リスクの主要因である温室効果ガスの排出量の削減は、人類の喫緊の課題です。また、プラスチックについて、不適切な廃棄による環境汚染問題や資源の有効活用の観点などから、海洋プラスチック汚染対策やサーキュラーエコノミー(循環型社会)に向けた取り組みが求められるなど、各国での規制がより一層強化されています。これらの課題は1つの企業・産業で解決できないものも多く、企業や産業を超えた共創が益々重要になってきます。例えば、住宅とエネルギー、医療と住宅等のように、これまでの産業の境界を越えて相互に関連しあうテーマ・課題が多く存在しています。また、デジタル技術の急速な進歩普及が、これらの共創を加速させ、産業間の垣根は益々低くなっていくことが予想されます。このような環境は、マテリアル・住宅・ヘルスケアの3つの領域を持つ当社にとっては大きな事業機会であると認識しています。当社は、3つの領域にまたがり人財・コア技術・マーケティングチャネル等、多様な資産を有しており、これらをデジタルの力で繋げ、活かすことで、当社独自のアプローチで社会課題の解決に貢献できると考えています。不確実性の高い時代だからこそ、当社の持つ多様な資産を最大限活用しながら先手を打ち、「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の2つのサステナビリティの好循環を追求していきます。 ⅰ サステナビリティマネジメントの強化当社グループは、2021年度に「サステナビリティ基本方針」を制定しました。これは、サステナビリティに関する方針をより具体的に記述することで、当社グループの方針を明示するとともに、サステナブルな社会の実現に向けた行動を一段と推進していくことを狙いとするものです。 <経営方針・経営戦略>● 旭化成の2030年の目指す姿COVID-19をはじめとする社会の大きな変化は、人類が取り組むべき課題を浮き彫りにしました。その課題は、当社が掲げてきた「Care for People」「Care for Earth」(人と地球の未来を想う)と重なるものであり、世界共通の課題の解決に向けた貢献を加速させていきます。当社は5つの価値提供分野として、カーボンニュートラル/循環型社会に貢献する「Environment & Energy」、安全・快適・エコなモビリティに貢献する「Mobility」、より快適・便利なくらしに貢献する「Life Material」、人生を豊かにする住まい・街に貢献する「Home & Living」、生き生きとした健康長寿社会に貢献する「Health Care」にフォーカスして事業展開を進めています。 我々が直面する課題は、産業の垣根が低くなるにつれて、様々な業界にわたって相互に関連してきます。これは多様な事業を持つことで、様々な分野での知見を有する当社にとって大きな事業機会であると認識し、この事業機会に対して当社グループの「コア技術」「変革のDNA」「多様な人財」を以て、更なる成長を目指します。その結果として、2030年近傍には、営業利益4,000億円、ROE15%以上、ROIC10%以上を展望します。また、当社グループのGHG排出量目標として2013年度比で30%以上の削減を目指します。 ・ 中期経営計画2024 ~Be a Trailblazer~の進捗状況2022年4月に発表しました中期経営計画2024 ~Be a Trailblazer~(以下、「中計」)は、2030年の目指す姿に向けたファーストステップと位置づけ、利益成長、ROE、ROICを重要指標として、「次の成長事業への重点リソース投入」と「成長投資の刈り取りと戦略再構築事業の改革」による事業ポートフォリオ進化を進めています。中計2年目となる2023年度は、石油化学品における市況・需要の低迷や、LIBセパレータ事業における車載向けの拡販遅延、及び民生向け需要の低迷が影響し、営業利益は1,407億円と当初の想定を下回りました。経営環境は徐々に改善すると見込んでおり、中期的な視点で成長を目指すスタンスは変わっておらず、再び成長軌道へ回帰させることを目指します。2024年度の業績予想は営業利益:1,800億円、ROE:5.5%、ROIC:4.5%となっています。 ⅰ 事業ポートフォリオ進化の基本方針事業ポートフォリオの進化にあたっては、“成長の為の挑戦的な投資”と“構造転換や既存事業強化によるフリー・キャッシュ・フローの創出”の両輪を回すことが重要と考え、「スピード」「アセットライト」「高付加価値」の3つを強く意識して推進しています。「アセットライト」については、旧来の設備産業的な考えにこだわらず、各事業に応じて最適なビジネスモデル、スキームを追求していきます。この考え方には2つの視点があり、既存事業の視点では、既に保有しているアセットの最大活用による利益創出を目指します。特にマテリアル領域ではカーボンニュートラルに向けたGHG排出量削減の視点から、EXITの可能性等も含めた検討を進めています。また、新規事業の立ち上げの視点では、研究開発投資を一から自前で行い、事業化の設備も自己所有で行うことにはこだわらず、他社資本の活用など、最適な資本のかけ方を追求していきます。新規事業展開において「アセットライト」を志向することは「スピード」の向上にも繋がり、結果的に旭化成が優位なポジションを築ける分野にフォーカスされ「高付加価値」に繋がると考えています。具体的な事業ポートフォリオマネジメントとしては、事業を主に「成長性」と「収益性・資本効率」の2軸で評価を実施し、4象限それぞれのポジションに応じた戦略を立案しアクションを実行しています。4象限の右上を「重点成長」と位置づけ、M&Aも活用しながら積極的な拡大施策を展開しています。また将来の成長事業としての潜在性が高い事業が右下の「戦略的育成」事業であり、本中計期間においては特に蓄エネルギーのセパレータについての拡大施策に注力しています。一方、4象限の中でも左下に位置する「収益改善・構造転換」事業については構造改革を加速させており、次の2つのアプローチで進めています。① より筋肉質な事業への転換や、これまで培ってきたノウハウや顧客基盤の最大活用を通じて資本効率の改善② 事業売却や撤退を通じて、今後成長が期待される事業に人財、資金、技術・事業基盤をシフトさせる事でのグループとしての生産性向上現状では②の視点を重視し、先手を打って事業の撤退や売却を進め、リソースをハイポア?やヘルスケア等の分野へシフトさせる事に注力しています。 ⅱ 成長戦略中期経営計画2024においては、次の成長を牽引する10の事業を「10のGrowth Gears(以下、GG10)」として設定しました。Growth Gearには旭化成の成長を回すギアとともに、社会の変革を回していくギアという2つの意味を込めており、持続可能な社会の実現への貢献を加速していきます。「次の成長の為の挑戦的な投資」をGG10にフォーカスする考え方は変わりませんが、業績が想定を下回っている状況も踏まえGG10の中でもリソースアロケーションの優先順位をより明確にして推進しています。ヘルスケア領域における「クリティカルケア」、「グローバルスペシャリティファーマ」、「バイオプロセス」と、マテリアル領域のライフイノベーション事業の「デジタルソリューション」を“重点成長”分野と位置づけ、過去投資からの利益刈取りに注力しながらも、非連続成長を含む積極投資を継続させる予定です。環境ソリューション事業における「水素関連」、「CO2ケミストリー」、「蓄エネルギー(セパレータ)」の3つは、先行的投資の側面が強い“戦略的育成”分野と位置付けています。GG10のそれ以外の事業は“収益基盤拡大”分野と位置づけ、安定収益創出を維持しながら、その収益基盤を確度高く強化できる投資を検討しています。各事業分野の進捗については、ヘルスケア、住宅の成長事業については計画に沿った利益成長を見込んでおり、拡大投資も想定通りに実施予定です。一方、マテリアルの環境ソリューションはハイポア?における中期視点での成長機会がよりクリアになったことを踏まえ、投資額が増加する一方で利益が低迷しています。足元では電気自動車の市場に不透明感が出ていますが、中期的な成長期待は変わらず、設備の稼働を高めて販売を拡大させることでの利益回復を目指します。デジタルソリューションについては汎用的な製品が市場の影響を受けたことで利益成長が鈍化しましたが、最先端半導体プロセス向けでの高い成長が期待できる感光性樹脂材料「パイメル」の増産を決定するなど、中期的な成長を追求します。自動車内装材については市場の成長鈍化の影響で一時低迷していましたが、需要の回復にあわせて順調に成長しています。 ⅲ 構造転換や既存事業強化からのフリー・キャッシュ・フロー創出当初計画より業績が下回る状況を鑑み、事業の構造転換をこれまで以上に加速しています。中計期間中においては売上高で合計1,000億円以上の事業の改革実行を目指しています。既に約400億円の事業は実行済であり、追加で約1,000億円程度に相当する複数の事業の検討に着手しており、目標は達成できる見通しです。また、中期視点での石油化学チェーン関連事業(売上高6,000億円規模)に関しては、水島のナフサクラッカーを起点とした事業は、西日本におけるパートナー候補と検討を開始しており、2024年度中には改革の方向性を明確にする予定です。ナフサクラッカーとつながりが薄い事業についてはベストオーナー視点での検討を加速しており、早ければ2024年度中の意思決定を目指します。 ⅳ 財務・資本政策(外部環境・課題)2022~2023年度は事業環境悪化により、営業キャッシュ・フローは当初想定より減少しました。このような状況においても、中長期的な成長に資する案件への投資は、採算性をより精査しながら着実に実行しています。財務健全性を示すD/Eレシオは想定の水準を維持できているものの、生産性向上やコスト削減などによる体質強化を図り、アセットライトを意識した事業モデルへの転換などを通じて、当社グループのキャッシュ創出力や資本効率を持続的に高めていきます。 (具体的な方針・戦略)■ 資金の源泉と使途の枠組み中計3年間のトータルとして、営業キャッシュ・フロー、投資キャッシュ・フローのいずれも、計画していた水準と変わっていません。投資キャッシュ・フローに関しては、中計で計画している成長戦略に沿った、M&Aを含む投資を実行した場合の想定として8,000~9,000億円と見立てています。また株主還元については、3年間累計の還元総額で1,500億円~となる見込みです。資金調達は有利子負債で行うことを基本とし、現段階では2,500~4,500億円の増加を見込んでいますが、事業売却や投資の際の他社資本活用など、より戦略的観点でのキャッシュ手当も積極的に検討しています。D/Eレシオは0.7程度、ネットD/Eレシオ0.6程度を見込んでおり、十分な財務健全性を維持できると考えています。 ■ 設備投資・投融資意思決定ベースの投資額として、中計3年間の累計として約1兆円超を計画し、その中でGG10は約6,000億円と見立てていました。現時点での見通しとしましては、ハイポア?の北米展開によりGG10の投資規模が約7,000億円と増加する一方、GG10ではない事業については必要性を精査して圧縮を進めています。総額としては円安の影響もあり、当初計画よりも微増という水準になりますが、他社資本や補助金を戦略的に活用し、また案件ごとにハードルレートを明確に定めた上で「環境価値」「投資効率」「投資スキーム」の視点を重視することで、財務規律を更に強化した投資判断を徹底していきます。 ■ 株主還元2023年度は石油化学関連事業を中心とした減損損失計上により当期純利益が大きく落ち込みましたが、配当を通じた安定的な株主還元を実現する方針を重視し、1株当たり配当金は36円と前年と同額としています。引き続き安定的な株主還元を行う方針は堅持し、1株当たり配当金は現状水準の維持・向上を予定しています。自己株取得は資本構成適正化に加え、投資案件や株価の状況等を総合的に勘案して検討・実施していきます。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」と合わせてご参照ください。 ■ 資本効率の改善と企業価値の向上現中期経営計画ではこれまで以上に資本効率を重要視しています。PBRについては2021年度以降1倍を下回る状況が続いていますが、2022年度末のPBRと比較して2023年度末は改善しています。自己資本は当期純利益が低迷している中で、還元は維持しているものの、為替換算調整勘定の影響でここ数年増加しています。PBRを分解したROEとPERについては、収益低迷と減損によりROEが想定株主資本コストの8%を下回っています。これらの指標の状況を踏まえて、改善に向けて次の5つの取り組みに注力しています。①ポートフォリオ変革加速②収益力向上③投資マネジメント強化④資本コスト低減⑤資本構成の最適化この中でも特に「ポートフォリオ変革加速」と「収益力向上」に重点的に取り組んでおり、それらを通じたPBR水準の向上を追求します。 ⅴ 経営基盤の強化経営環境の不透明さが増す中では、事業を支える土台となる経営基盤をより強固にすることが重要であると考えています。経営基盤強化として、「無形資産の最大活用」「Green(グリーントランスフォーメーション)」「Digital(デジタルトランスフォーメーション)」「People(人財のトランスフォーメーション)」「リスクマネジメントの強化」「コーポレート・ガバナンスの最適化」について重点的に取り組んでいます。 ■ 無形資産の最大活用当社グループでは、3領域にまたがり、人財、コア技術、マーケティングチャネル等、多様な無形資産を持ち、活用できることが強みであり、デジタルを活用し、これらの無形資産を最大限コネクトさせることによって、戦略構築や新事業の創出を推進しています。具体例はマテリアル領域の取り組みである「P-PaaS: Product based Platform as a Service」です。単なるモノ売りではなく、当社ノウハウや、顧客接点等の無形資産を活かしたソリューション型事業への転換に取り組んでいます。旭化成の素材・製品の付加価値をベースとして、顧客の価値向上となるプラットフォームを提供するというコンセプトをP-PaaSと表現し、その可能性を追求しています。例えばイオン交換膜法食塩電解プロセスにおいてスマート電解槽により予兆保全・最適運転提案といったデータドリブン型サービスを提供するなど、単なるモノ売りではないソリューション型事業も拡大させています。無形資産の更なる活用に向けて、従来のモノ売りビジネスとは異なる新たな収益モデルのアプローチとして、テクノロジーバリュー事業開発(TBC)の取り組みも開始しました。これは、当社グループに蓄積した膨大なテクノロジーからなる、パテント、ノウハウ、データ、アルゴリズム等の無形資産を価値化し、ライセンスに限定しない様々な形態で、スピード&アセットライトを両立する収益化を目指すものです。従来型のビジネスモデルに比べて、TBCでは、設備投資の抑制、共創の段階から早期収益化、環境変化への迅速な対応が可能になると考えています。現在取り組んでいる事例としては、リチウムイオンキャパシタ(LiC)技術のライセンスを中心とした多用途展開や、超イオン伝導性電解液技術の電池メーカーへのオファー実施等の実績があります。また、当社グループでは、従来から知財情報の戦略的活用を志向しており、事業戦略に知財情報を活用するIPランドスケープ(以下、IPL)活動を全社的に推進してきました。知財部門の強みであるIPLと知財の実務能力を融合させることで、知財部独自の視点に立った事業戦略モデル案の策定・提言活動を実施しています。企業の強みとなる無形資産を活用して競争力の維持・強化を図り、中長期的な企業価値を創造するサステナブルなビジネスモデルを構築し、それを巡る企業経営者と投資家との間の相互理解と対話・エンゲージメントを促進させる必要性が増し、企業価値向上に知財面から貢献する意義が益々高まってきました。上記の背景から、当社グループでは2022年度に社長直下に知財インテリジェンス室を創設し、無形資産の多面的な可視化による情報解析等を通して、経営・事業戦略策定に貢献しています。今後も、グループ全体での無形資産の活用をさらに加速し、企業価値向上に繋げていきます。 ■ Green(グリーントランスフォーメーション)・ カーボンニュートラルでサステナブルな社会の実現に向けた活動(温室効果ガス(GHG)の削減)当社グループは持続可能な社会の実現に向けて、2050年時点でのカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)を目指すこと、また、2030年に2013年度対比でGHG排出量を30%以上削減する目標を、2021年に表明しました。当社グループの事業活動に直接関わるGHG排出量であるScope1(自社によるGHGの直接排出)、Scope2(他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出)の排出量が対象です。カーボンニュートラルの実現に向け、エネルギー使用量の削減、エネルギーの脱炭素化、製造プロセスの革新、高付加価値/低炭素型事業へのシフトなど、様々な取り組みを加速させていきます。取り組みにおいては、グループ全体を俯瞰して進めるために2022年度に設置したカーボンニュートラル担当の役員(2024年度からは「GX担当」役員)とカーボンニュートラル推進プロジェクトを中心に、施策等を整理しながら進めています。カーボンニュートラル推進プロジェクトでは、グループ内のGHG削減計画やその前提となるシナリオ分析を取りまとめ、グループ全体の観点での妥当性の検討などを実施しています。 GHG排出量削減への具体的な取り組みの重要な柱であるエネルギーの低炭素化・脱炭素化においては、次のような取り組みを進めています。まず、自社で保有している火力発電所の燃料の転換等の施策を進めており、燃料を従来の石炭から液化天然ガス(LNG)に転換する工事を行ってきた火力発電所を2022年3月に完工させ、発電所の運転に伴うGHG排出量の削減を実現させました。また、過去数十年にわたって活用してきた水力発電設備について、グリーンボンドによる資金も活用しながら、今後も長く活用できるよう、設備の更新と効率化の工事を順次進めています。太陽光発電に関する取り組みも進めており、事業子会社の旭化成ホームズ㈱では、賃貸住宅「ヘーベルメゾン?」の屋根に太陽光発電設備を設置し、発電した電気を事業に活用しています。さらに、社外から電力を購入している国内外の工場では、証書、クレジット等を活用し、電力に関するGHG排出量の削減に取り組んでいます。以上のような自社のGHG排出量の削減への注力に加え、当社グループでは製品やサービスでバリューチェーン全体のGHG排出量削減に貢献することも重要なテーマとして取り組んでいます。当社では第三者専門家の視点を入れて妥当性を確認した、GHG排出量削減効果を期待できる製品・サービスを「環境貢献製品」として拡大・普及することを進めています。2023年度までの累計で、23の「環境貢献製品」を社内認定しています。これらの「環境貢献製品」によるGHG削減貢献量を、2030年度には2020年度の2倍以上とし、また売上高に占める割合も高めていくことを目標としています。「環境貢献製品」に位置づけられていくような新たな事業の創出は当社グループが注力するところです。例えば、持続可能な炭素・水素循環型社会の実現へ向けて、当社は事業化への取り組みを進めています。詳細は、「6 研究開発活動 3 主な研究開発活動 (1) 当社グループ全体(「全社」) ①炭素・水素循環型社会実現への貢献」をご参照ください。水素に関しては、米国の連邦、州、自治体の各政府機関の脱炭素化を水素を活用して支援するために設立された「日本水素フォーラム」へも参画しました。持続可能な社会に向けては、社外との連携を含めた様々な切り口からの取り組みが考えられます。そこで当社グループでは、新たな取り組みとして、「Care for Earth」投資枠を設定しました。水素、蓄エネルギー、カーボンマネジメントなどの環境分野の課題解決に取り組むアーリーステージのスタートアップ企業を対象に、2027年度までの5年間にグローバルで1億ドルの出資を実施していこうというものです。2023年10月には、第一号案件となる、非化石由来のレザーを開発する米国のスタートアップNFW社への出資に参画しました。以上のような事業活動での取り組みの他、関連する基盤の整備も進めています。当社グループのGHG排出量の削減はもとより、製品のバリューチェーン全体でのGHG排出量削減を進めるためには、当社製品に関わるGHG排出量を的確に把握することが必要です。そこで、製品のカーボンフットプリント(原料採掘から製品生産までのGHG排出量)算定に関する取り組みを主要製品で推進するとともに、算定のシステム化も進めました。なお、当社では、気候変動が企業の財務に与える影響を分析し開示するよう求める「TCFD提言」の枠組みに基づく検討を行い、結果を開示しています。詳細は、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (1) サステナビリティ共通 ②気候変動関連」をご参照ください。 (サーキュラーエコノミーへの対応)当社グループでは、限りある資源を持続可能なものとして活用していくための取り組みを進めています。例えば、世界で広く用いられている汎用プラスチックの1つであるポリスチレンについて、グループ会社のPSジャパン㈱が2023年8月にケミカルリサイクルの実証プラントを本格稼働しました。また、同様に汎用プラスチックであるポリエチレンについては、消費財メーカー、成型メーカー、リサイクル業者等のサプライチェーンの関係者や大学と協力し、リサイクル技術の開発に関する取り組みを推進しています。さらに、自動車向けエアバッグや自動車部品等に使用されるポリアミド66について、マイクロ波化学株式会社と共同で、マイクロ波を用いたケミカルリサイクルの実証試験を開始しました。使用済みプラスチックを廃棄物とせずに資源として活用していくためには、消費者も含めた社会全体での資源循環の取り組みが必要です。そこで当社では、プラスチックの循環を可視化するプラットフォーム「BLUE Plastics(Blockchain Loop to Unlock the value of the circular Economy、ブルー・プラスチックス)」の開発を進めています。2023年6月には、株式会社ファミリーマート、伊藤忠商事株式会社、伊藤忠プラスチックス株式会社、コカ・コーラ ボトラーズジャパン株式会社との協業で、株式会社ファミリーマートの都内店舗での実証を行いました。消費者が使用済みペットボトルを回収BOXに投函したあと、それがリサイクル素材に加工されるまでを、消費者のスマートフォンのアプリでトレース(追跡)できるサービスの実証実験です。この取り組み等を通じて、デジタルプラットフォームによるトレーサビリティの価値の確認など、プラスチック資源循環の可能性を引き続き検討していきます。また、当社グループでは複数の製品について、持続可能な製品の国際的な認証制度の一つであるISCC PLUS認証を取得しました。当認証は、製品がバイオマス原料や再生原料等を使用して製造されていることを、サプライチェーンでのマスバランス方式管理の観点も含め、第三者機関が確認・認証するものです。今後、当社グループは、顧客や社会からの期待に応じ、当認証取得製品を提供していきます。なお、プラスチックや循環経済に関する諸課題への対応は、同業他社を含むバリューチェーンの各社での共通的なテーマでもあることから、当社グループはCLOMA(クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス)、循環経済パートナーシップ(J4CE)、サーキュラーパートナーズ(CPs)、一般社団法人 日本化学工業協会、日本プラスチック工業連盟等のアライアンスや業界団体の活動にも参画し、課題への取り組みを他社と推進しました。 ■ Digital(デジタルトランスフォーメーション)DX戦略による構造転換と成長牽引事業の成長加速、無形資産の価値最大化に注力しています。推進にあたっては、「デジタル導入期」「デジタル展開期」「デジタル創造期」「デジタルノーマル期」からなるデジタル変革ロードマップを策定し、Asahi Kasei DX Vision 2030の達成に向けた取り組みを進めています。2023年度は「デジタル創造期」として、「デジタル基盤強化」「経営の高度化」「ビジネス変革」の3つを柱に成果結実を目指した取り組みを実施し、2024年度からの「デジタルノーマル期」に繋げています。また、DXの成功要因である「人」「データ」「組織風土」により一層注力し、DXの“X”である「変革」をさらに加速し、全社横断型の経営基盤づくり、事業モデルの変革や新規事業の創出を目指していきます。これまでの取り組みにより、当社は経済産業省が東京証券取引所と共同で選定する「DX銘柄2021」から「DX銘柄2024」まで4年連続で選出されました。また、当社グループ全体でのDXに関する活動が認められ、様々な団体からの表彰等、評価を頂いています。・オープンバッジ大賞 一般社団法人オープンバッジ・ネットワーク(人材育成)・日経クロステックCIO/CDOオブ・ザ・イヤー2023特別賞 株式会社日経BP(DX全般)・日本DX大賞2023 UX部門 優秀賞 日本DX大賞実行委員会(DX全般)・IT賞 IT最優秀賞 公益社団法人企業情報化協会IT賞審査委員会(サステナビリティ)・GOODFACTORY賞 ファクトリーマネージメント賞 一般社団法人日本能率協会(DX全般) (DX推進体制の強化)グループ全体でDXを加速していくために、推進体制の強化に継続して取り組んできました。2021年4月にデジタル共創本部を設立後、いくつかの組織改編を経て、2023年7月にDX経営推進センターにプロダクト開発部、2024年4月にはCXトランスフォーメンション推進センターにCX共創推進部加入と、旭化成内のDX関連部場のさらなる集約、強化をしています。また、各事業部門のトップとデジタル共創本部の連携体制(リレーションシップマネージャー制度)を継続運営し、各事業における課題・重点テーマ等を共有し、密に連携して具体的な取り組みを進めています。 (人財の育成)デジタル人財の育成も積極的に実施しており、グループ全従業員がデジタルリテラシーを身につけ、デジタル活用のマインドセットで働く「4万人デジタル人財化」構想の下、DXオープンバッジ教育プログラムを進めています。このプログラムはレベル1から5までの5段階で、デジタルリテラシーとスキルを向上させていく構成になっています。このような育成プログラムの実施や採用を通じて、高度なデジタル技術とデータを活用し、事業の課題解決や、新しい価値・ビジネスモデルを創出できるデジタルプロフェッショナル人財の育成・獲得を積極的に進めています。2023年度末にデジタルプロフェッショナル人財1,728名を育成・獲得しています。また、2023年度には、本プログラムに「生成AIコース」を新設したことで、受講者数も急増、業務への貢献にもつながり、今後もデジタル技術の進化に合わせたプログラムの拡充を続けていきます。また、企業のデジタル人材育成を目的とした有志団体「未来のデジタル人材の会」が2023年12月より本格的に活動開始、会長が旭化成で他8社の企業が参加しています。デジタル人材育成に取り組む企業間の相互協力・連携により、デジタル人材の育成をより活発なものにするとともに、将来的には社会全体のデジタル人材育成に貢献します。 (デジタル変革ロードマップにおける創造期)2023年度まで「デジタル創造期」として、デジタル基盤強化、経営の高度化、ビジネスモデル変革を推進していました。デジタル基盤の強化では、デジタル人財の育成・獲得の加速、デザイン思考等を活用したアジャイル開発のグループ全体への浸透、データ活用促進等を進めてきました。経営の高度化では、経営の見える化/意思決定への活用、知的財産活用の高度化、人財を活かすための活用、先端研究開発、カーボンフットプリントの見える化等に取り組んでいます。ビジネスモデル変革では、無形資産の価値化/共創の加速、マーケティングの革新、サプライチェーン連携、新事業創出、スマートファクトリー等に取り組んできました。この3つの視点で共通の技術やノウハウを生かし、グループを横断するプロジェクトとして行うとともに、領域毎に具体的テーマを継続して進めています。また、DXの進捗を測るKPI(2024年度目標)として「DX-Challenge 10-10-100」を定めました。2023年度末で、デジタルプロフェッショナル人財を2021年比で10倍(グローバル全従業員のうち2,500名程度)の目標に対し1,728名、グループ全体のデジタルデータ活用量を2021年比で10倍の目標に対し11倍、そして通常活動のDX活用による利益貢献に加え、選定した重点テーマで100億円の増益貢献(2024年度までの3年累計)に対して70億円の実績となっています。今後も、デジタルで多様な資産を最大限に活用し、ビジネスモデルを最速で変えていきます。 ■ People(「人財」のトランスフォーメーション)当社は1922年に創業し、2022年に100周年を迎えましたが、この間事業ポートフォリオを大きく変革してきました。1960年代には石油化学事業と繊維事業が売上高の大半を占めていましたが、社会課題の解決に向けた事業展開により、現在は3領域経営を進めています。大きな変革を遂げながら成長してきましたが、今後も、持続可能な社会に向けてさらなる変革が必要です。そのなかで現中計では、従業員に求める心構えとして「A-Spirit」という言葉を掲げています。旭化成の「A」と、アニマルスピリットの「A」をかけたもので、具体的には、野心的な意欲、健全な危機感、迅速果断、進取の気風、という4つのことを強く意識し、チャレンジングな人間、チャレンジングな人財であってほしいと伝えています。また、そのような想いから、挑戦・成長を自ら求めていく「終身成長」と、多様性を促す「共創力」を人財戦略の柱としています。これらは、当社グループが100年かけて培ったグループバリュー、多様性、自由闊達な風土などの無形資産をさらに磨き、活かしきるということでもあります。A-Spiritsの体現に向けて、課題と考えているのは次の3つです。① 自律的なキャリア形成A-Spiritsや「終身成長」は、他律的、受動的な姿勢では体現できません。実現したい夢や意思、自身で思い描くキャリア、それらを原動力にして様々なテーマにチャレンジすることが重要です。今後事業ポートフォリオ転換を進め、高付加価値事業を創出するためには、自ら成長・挑戦機会を求め自律的に動く人財が、従来以上に必要と考えています。② 個とチームの力を引き出すマネジメント力の向上失敗を恐れず思い切って挑戦し、その挑戦(失敗も含め)から学び、また次の挑戦に繋げていくためには、マネージャーによる支援が不可欠です。当社には高い専門性を持った人財や挑戦心あふれる人財が数多く在籍していますが、それを最大限に生かし切りビジネス上の成果に繋げられるよう、マネジメント力の向上も課題と考えています。③ 多様性を活かす当社は幅広い技術、多様な事業、多様な市場との接点を有しており、これらをつなげ、活かすことで、当社ならではの価値を創造できると考えています。各事業がそれぞれ責任をもって自分の事業を伸ばしつつ、シナジーによって独自の新しい価値を創出することにもより一層力を入れていきます。 以上の課題認識に対して、現中計の中では様々な人事施策を講じています。具体的な施策概要は「2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 人的資本に関する開示」に記載しているほか、当社統合報告書及びサステナビリティウェブサイトにも記載しています。統合報告書;https://www.asahi-kasei.com/jp/ir/library/asahikasei_report/pdf/23jp_68.pdfサステナビリティウェブサイト;https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/social/human_resources/主要KPIとしては、「高度専門職任命者数」「従業員エンゲージメント(成長行動指標)」「ラインポスト+高度専門職における女性比率」を掲げており、下図のとおり順調に推移しています。 また、2022年度より次の3点を役員報酬に連動させ、取り組みを推進しています。指標指標の算定方法2023年度目標値・基準値2023年度実績値働きがいメンタルヘルス不調による休業者率0.70%1.16%DXデジタルプロフェッショナル人財総人数1,750名1,728名ダイバーシティラインポスト及び高度専門職における女性の占める割合4.4%4.4% 具体的な取組みについては、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2) 人的資本に関する開示」を参照ください。 ■ リスクマネジメントの強化詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。 ■ コーポレート・ガバナンスの最適化詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。 ⅵ 財務・非財務主要KPI中期経営計画2024の実行、そして、その先の目指す姿の実現のために、財務・非財務のKPIを明確にして、各施策を実行していきます。財務KPIにおいては、利益成長・資本効率・事業ポートフォリオ転換の視点で、2024年度目標・2030年度目標を設定し、具体的な施策の実行を進めていきます。非財務KPIに関しては、10の成長を牽引する事業(GG10)における有効特許件数の割合、デジタルプロフェッショナル人財と高度専門職の育成・獲得、そして、当社GHG排出量、環境貢献製品を通じたGHG削減貢献量を主要なKPIとして設定し推進を加速していきます。 中期経営計画2024で設定した財務・非財務主要KPI一覧 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等各セグメントにおいて次の成長を牽引する事業(GG10)に重点的にリソースを投入していきます。GG10の詳細は「②当社グループ全体の経営方針・経営戦略等 <経営方針・経営戦略> ⅱ 成長戦略」をご参照ください。各セグメントの経営方針・経営戦略は以下のとおりです。 Ⅰ 「マテリアル」セグメント本セグメントにおいては石油化学関連の収益安定化を図りながら、付加価値の高い事業の構成比を高めることで利益成長を目指します。 ●価値提供分野:「Environment & Energy」、「Mobility」、「Life Material」●基本戦略:カーボンニュートラルの実現に向け、既存の延長線ではない戦略・戦術でポートフォリオ変革を図り、収益性と投資効率の向上を目指す●経営指標:営業利益、営業利益率、ROIC <経営環境・経営課題>本セグメントにおいては、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおり、セパレータ、イオン交換膜、石油化学関連製品を中心とする環境ソリューション事業、自動車用途向け製品を中心とするモビリティ&インダストリアル事業、電子部品・電子材料、繊維、消費財を中心とするライフイノベーション事業を運営しています。これらの事業において、ビジネスモデルや市場の状況、競争優位性等の事業環境は、製品群によって大きく異なるため、各事業が置かれている環境認識に基づいた経営課題に対して取り組んでいます。本セグメント全体の観点では、事業ポートフォリオの転換を最も重要な経営課題と認識し、次の成長分野への重点的な投資を行う一方で、既存アセットを最大活用することでのキャッシュ創出や事業の構造改革を推進しています。本セグメントにおける経営環境は以下のとおりと認識しています。ⅰ 環境ソリューション事業・主要国における電気自動車等の環境対応車の需要の急速な立ち上がりと、それに向けたリチウムイオン電池需要の高まり・カーボンニュートラルの動きを受けた、石化関連製品の中長期視点でのサステナビリティ対応の加速・脱炭素に貢献する技術やソリューションに対するニーズの急速な高まり ⅱ モビリティ&インダストリアル事業・次世代モビリティで求められる安全、快適、環境特性に優れた素材ニーズの高まり ⅲ ライフイノベーション事業・電気自動車の普及やAIを活用したデジタル社会への進展に伴う、先端半導体技術のニーズの高まり・通信技術の高度化や衛生意識の変容等、新たなライフスタイルによる様々なセンシングニーズの高まり <経営方針・経営戦略>本セグメントにおける主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。ⅰ 環境ソリューション事業■ 価値提供の方向性:独自の技術・知見を活かした新しい価値の創出・これまでに培った技術や知見などの事業基盤を活かした、旭化成が目指す2つのサステナビリティ(“持続可能な社会への貢献”と“持続的な企業価値向上”)の好循環の実現への貢献■ 主な取り組み・グリーンソリューション推進(水素関連の事業化推進、CO2ケミストリーの多面的展開)・蓄エネルギー分野の深耕(セパレータ事業の成長追求、知見を活かした新しい事業展開)・カーボンニュートラルに向けた取り組み推進(石化事業の中期的な転換、バイオ製造品化学技術による石化製品のグリーン化)・イオン交換膜によるリカーリングサービスの拡充ⅱ モビリティ&インダストリアル事業■ 価値提供の方向性:提案型事業へのシフト・電気自動車等の環境対応車に求められるサステナビリティ要求に対する、軽量かつ安全な製品のコンセプト提案、環境調和型素材の提案・キーカスタマーへの横断的なマーケティング強化■ 主な取り組み・自動車内装材事業:Sage Automotive Interiors, Inc.の事業を軸にして、買収したAdient plcのファブリック、中国の合弁会社のパートナーであるOmnova社の合成皮革、更に環境特性に優れた人工皮革「DinamicaR」を加えた幅広い素材ラインナップと高いデザイン力を融合させた内装材プラットフォームの構築・エンジニアリング樹脂事業:自動車構造部品や自動車用リチウムイオン電池構造部品に向けたエンジニアリング樹脂発泡体「サンフォースR」や連続繊維複合材料「レンセンR」の展開加速やCAE(Computer Aided Engineering)等のデジタル技術活用を通じた自動車メーカーの開発パートナーとしての価値提供 ⅲ ライフイノベーション事業■ 価値提供の方向性:先進・独自技術による高付加価値素材の提供・デジタル社会の進展で求められるニーズへの、特徴ある部品・部材、ソリューションの提供・生活者の視点に立った、健康で快適な暮らしに貢献する製品・サービスの提供■ 主な取り組み・電子材料、基板材料事業:AI活用等、DXの加速による先端半導体の進化を支える革新材料開発の強化・電子部品:省エネ・快適市場において競争力のあるセンシングデバイス・ソリューションの展開・電子材料と電子部品との融合による特徴ある部材・部品、ソリューションの展開・新事業の展開加速:半導体プロセス材料の事業拡大に向けた共同研究・開発の促進、次世代パワーデバイス用途に最適な電流センシングデバイスの製品展開、ミリ波センシングや高音質オーディオICなどを活用した快適・安全・安心な車室空間ソリューションの提供・ヘルスケアマテリアル事業:医薬品添加剤、食品添加物用途としての結晶セルロース「セオラスR」の安定供給向上及び海外展開の加速 Ⅱ 「住宅」セグメント●価値提供分野:「Home & Living」●基本戦略  :国内事業では高付加価値化の推進・顧客価値の最大化、海外事業では市場変動に左右されない強い経営基盤を構築し、収益性の向上と更なるキャッシュ創出を目指す●経営指標  :営業利益、営業利益率、売上高FCF率 <経営環境・経営課題>国内の建築請負事業では、住宅展示場来場者数の減少やお客様ニーズの多様化により、新規集客・受注活動に影響が出ていますが、DXを活用したweb集客・紹介活動の拡大等集客におけるビジネスモデルの転換や都市・近郊・郊外それぞれのエリア特性・お客様のニーズに合わせたサービスの実施、高付加価値化へシフトしていくことで引続き高品質な住まいの提案に努めていきます。また、気候変動に伴う自然災害の多発化、人生100年時代におけるライフスタイル・ワークスタイルの多様化、脱炭素化の加速、及び省エネ性能の高い住宅による環境への配慮等、住宅を取り巻くニーズは変化し続けています。今後は、災害に強く安心できるレジリエンス(防災力)の高い住宅、環境負荷を低減する住宅やシニア、子育て世帯が安心かつ快適に生活できる住宅等の事業機会は益々広がっていくと考えています。海外事業では、住宅価格や住宅ローン金利高止まりの影響はあるものの、供給不足を背景とする潜在的な需要は高く、今後も海外市場で事業展開の拡大を行っていく必要があると考えています。 <経営方針・経営戦略>本セグメントにおける主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。ⅰ デジタル技術を活用したマーケティング等による集客、受注活動の推進や生産性の向上ⅱ サステナビリティ活動の推進・旭化成ホームズ㈱が参加しているRE100目標達成に向けた早期実現の推進・2023年7月SBT(Science Based Targets)認定書の取得・2023年7月TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)への賛同を表明・2024年4月環境省の「エコ・ファースト制度」において、「エコ・ファースト企業」に認定・ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEH-M(ゼッチ・マンション)普及に向けた取り組みの推進・環境貢献度の高い断熱材「ネオマフォーム?」の拡販・30by30の取り組みとして環境省が認定する自然共生サイトに「あさひ・いのちの森」が認定ⅲ レジリエンスの強化・耐震性、耐火性の高い住宅や防災科学技術研究所とのリアルタイム地震被害推定システム研究など、安心できる住まいを実現させる取り組みの推進・「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2024」において、以下の3つのテーマが「最優秀賞」を受賞-国立研究開発法人防災科学技術研究所と共同で開発中の防災情報システム「LONGLIFE AEDGiS」-マンションの防災共助DX+リアルサポート「GOKINJO」-マンション建替え研究所ⅳ 海外事業の展開加速・豪州事業事業を開始したニューサウスウェールズ州のほか、新たにビルダーを買収するなど他州にも事業エリアを拡大し、豪州ビルダー着工ランキング3位になるまでに成長しています。ビルダー単独・サプライヤー単独では成しえない多様な価値提供による競争優位性の高い豪州モデルを確立させることで、豪州における注文住宅の建築請負及び分譲住宅の販売においてトップブランドを目指します。・北米事業大手建築部材サプライヤーErickson社、基礎工事や設備工事を行うAustin社、配管工事を行うBrewer社、住宅の建築工事を行うサプライヤーFocus社とともにシナジーの効果を目指す体制の構築に努めます。そして、旭化成ホームズ㈱が持つ工業化住宅のノウハウを通じて、米国の戸建て住宅建築工程の中核となる業種(配管・基礎・躯体・電気・空調)を結合し工業化建築を推進することで、施工合理化と高品質な建物の提供を目指します。今後は、更なるエリア拡大も目指して事業を拡大していきます。 Ⅲ 「ヘルスケア」セグメント●価値提供分野:「Health Care」●基本戦略  :医薬・医療機器の双方でグローバル市場の幅広い事業機会を捉え、グループの利益成長を牽引●経営指標  :EBITDA、EBITDAマージン、ROIC <経営環境・経営課題>医薬事業においては、COVID-19感染拡大を契機としたオンラインでの企画の強化やチャネルの拡大など、病院訪問を前提としないMR(医薬情報担当者)活動の推進に加え、COVID-19の5類感染症への移行後は対面活動も強化するとともに、日米における主力医薬品の販売が伸長することにより売上は堅調に増加しています。また、医療事業においては、生物学的製剤市場の継続的な成長と製薬会社における新薬の開発及び商業生産化へのニーズの高まりにより、ウイルス除去フィルターの需要が増加しています。足元ではCOVID-19関連特需の一服やそれに伴う顧客の在庫調整により一時的な需要の停滞が見られますが、調整局面終了後は需要増加基調が継続するものと予測しており、安定生産と生産能力増強を通じて供給責任を果たしていきます。クリティカルケア事業においては、半導体等の部材調達難や北米景気後退などを背景に除細動器の受注、販売の成長が一時的に停滞していましたが、足元では部材調達難が改善しており、今後は市場環境回復に合わせた成長を継続していく見通しです。中長期的には、医療費削減圧力が高まることによる国内の市場成長の鈍化が予想される一方、先進諸外国においては、より良い医療に対するニーズの高まりや長寿社会の進展に伴い、引き続き安定的な市場成長が継続すると認識しています。そのため、「ヘルスケア」セグメントの中長期的な成長のための課題は、グローバルにおける事業展開を加速することであり、当社グループに足りない経営資源を追加・補強する手段としてM&Aやライセンス導入による事業開発を位置付けています。今後は、2021年度にクリティカルケア事業のZOLL Medical Corporationが買収したRespicardia,Inc.とItamar Medical Ltd.や、2022年度に医療事業の旭化成メディカル㈱が買収したBionova Scientific, LLCなど、過去に投資実行した案件の収益成長による投資成果の刈り取りを図るとともに、既存事業の成長とM&A等の事業開発の活用を継続することで成長を続け、医薬・医療機器の双方でグローバル市場における幅広い事業機会を捉え、当社グループの成長を牽引する柱となることを目指します。 <経営方針と経営戦略>本セグメントにおける主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。ⅰ クリティカルケア事業・心肺蘇生、心疾患、睡眠時無呼吸症などの重篤な心肺関連疾患領域をターゲットとし、既存事業の持続的成長、及び企業買収を通じた既存事業強化と周辺領域への拡大により成長を追求します。・医療従事者向け除細動器や公共施設向けAED(自動除細動器)などの救命救急医療の市場リーダーとして、引き続き技術革新や製品・サービス開発に投資して製品ポートフォリオを多様化するとともに、米国外も含めたグローバルでの市場成長を着実に捉えていきます。・着用型除細動器「LifeVest」は臨床的価値の訴求により市場浸透率を更に高め、標準的な治療法として確立させることを目指します。・2021年度にRespicardia,Inc.(中枢性睡眠時無呼吸症治療 植え込み型神経刺激デバイス)及びItamar Medical Ltd.(睡眠時無呼吸症在宅検査・診断ソリューション)の買収により、心疾患患者が併発することの多い睡眠時無呼吸症の診断や治療のための画期的なデバイスを獲得し、新たな分野に進出しました。当該2社の事業拡大と既存の心疾患関連事業とのシナジー創出により、確実な成果の結実を目指します。ⅱ 医薬事業(海外)・免疫・移植周辺を中心とした疾患領域、及び大病院市場へフォーカスし、旭化成ファーマ㈱とVeloxis Pharmaceuticals, Inc.の連携のもとで事業開発、臨床開発、販売を推進していきます。・Veloxis Pharmaceuticals, Inc.の腎移植手術患者向け免疫抑制剤「Envarsus XR」の販売が着実に伸長しています。また将来に向けたパイプライン強化のため、OSE Immunotherapeutics SAから導入したCD28阻害薬「VEL-101」(臓器移植における新規免疫抑制薬)の開発を進めています。 ⅲ 医薬事業(国内)重点領域(整形外科領域、救急集中治療、免疫)における新薬上市と販売の拡大を継続します。整形外科領域においては、骨粗鬆症治療薬「テリボンRオートインジェクター」の更なる市場への浸透を図ります。免疫領域においては、関節リウマチ治療剤「ケブザラR」と、2021年度にサノフィ株式会社より導入した免疫調整剤「プラケニルR」の更なる市場浸透を図ります。研究開発においては、オープンイノベーションや事業開発を活用し、重点領域におけるパイプラインを拡充しています。2022年度には、発作性夜間ヘモグロビン尿症に対する補体C3阻害薬「エムパベリR」及び慢性肝疾患における血小板減少症改善薬「ドプテレットR」に関して、日本国内における独占販売契約をSwedish Orphan Biovitrum Japanと締結し、2023年度に薬価基準収載と発売を開始しました。 ⅳ 医療事業生物学的製剤の市場成長に合わせたウイルス除去フィルター「プラノバ?」の市場ポジション・販売拡大を目指し、生産能力増強、生産効率化及び製品開発を引き続き進めていきます。2019年度のVirusure Forschung und Entwicklung GmbH (ウイルス等安全性試験受託サービス等)の買収、2021年度のBionique Testing Laboratories LLC (マイコプラズマ試験受託サービス)の買収により、製薬企業向けバイオセーフティ試験受託サービス事業へ参入しています。更に2022年度のBionova Scientific, LLC (次世代抗体医薬品CDMO)の買収により、バイオ医薬品CDMO事業へも参入しています。これらの多様な事業展開を通じて、製剤の安全性と生産性向上に貢献する製薬企業にとってのプレミアムパートナーとなることで製薬市場の成長を取り込みます。 (2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題① 事業上の課題「(1) 経営方針・経営戦略等 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等」に記載の項目に加えて、以下の事業上の課題があります。 Ⅰ 「マテリアル」セグメントⅰ 環境ソリューション事業環境ソリューション事業は、石油化学製品において中国の設備増強と内製化が進展することによりアジアの輸出需要が大きく減少する可能性があります。そのため、石化事業の再編を推進していくとともに、適正な生産計画に基づく収益性管理やキャッシュ管理を推進していきます。一方で、中長期的には世界的な脱炭素化の流れの中で、当社の触媒技術を活用したバイオ化学品製造技術を確立し、新たな価値提供を追求していきます。リチウムイオン電池用セパレータは、急激に成長する電気自動車の需要とともに競合他社のキャパシティ増加や販売政策により価格競争が激化していく可能性があります。米国でIRA法が成立したことで、競争優位な北米に先行して生産拠点を構え、顧客と強いパートナーシップを結びつつ、安定的かつ高水準の品質を強みに、様々な顧客ニーズに対応していきます。また、米国、日本、韓国での増強を図りつつ、生産技術の大幅な改良を図り、コスト競争力の高い製品を追求していきます。また、同事業は、各国の規制・環境問題や供給制約の顕在化等によるサプライチェーンの変化、テクノロジーの変化により、事業環境が急激に変化することが中期的なリスク要因と考えられるため、事業環境の動向の把握と迅速な対応を続けていきます。 ⅱ モビリティ&インダストリアル事業モビリティ&インダストリアル事業は、世界の自動車業界の動向に影響を受ける場合があります。2023年度の自動車関連部材については、COVID-19、半導体不足による影響が改善したこともあり、自動車生産台数の増加による関連製品の需要増が見られました。事業運営は、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢等の影響によるサプライチェーン混乱及び米国ストライキや中国経済の減速等、年間を通じて見通しづらい環境下にあります。そのような中で各国の自動車関連市場を注視するとともに、サプライチェーンと在庫管理を強化し、変化する需要に柔軟に対応していきます。一方、中長期的には自動車の「CASE」と呼ばれる技術革新の進展が加速し、又は変化していくことにより、新たなニーズが生まれてくると考えています。特に低炭素社会の実現に向けて、電気自動車等の環境対応車の需要拡大や資源の有効活用など、欧州を中心に自動車業界における環境負荷低減の動きが今後継続するものと考えており、このような社会ニーズに向けた対応が必要です。車室空間には、これまでにない快適性やデザイン性に加えて、リサイクル原料の使用、車体軽量化による自動車燃費の向上、電動化等、環境負荷低減に繋がる製品が求められています。環境特性に優れた人工皮革「DinamicaR」は、需要増加に対応するため供給能力を増強するとともに、米国子会社のSage Automotive Interiors, Inc.との連携を強化し、2020年に買収した大手自動車シートサプライヤーの米国Adient plcのファブリック事業や、中国の合弁会社のパートナーであるOmnova社の合成皮革事業との統合効果を発現させていきます。また、車体軽量化に寄与する構造部品向けのエンジニアリング樹脂製品や樹脂発泡体の展開もグローバルに加速していきます。今後も顧客要求に迅速に対応するべく、グローバル市場におけるキーカスタマーへの事業横断的なアプローチやデジタルマーケティングを強化し、持続的に成長できるビジネスモデルの構築を推進していきます。 ⅲ ライフイノベーション事業ライフイノベーション事業は、AI需要の高まり、デジタルトランスフォーメーションの進展や次世代通信の普及に伴う情報通信高度化の需要が益々拡大しており、情報通信機器に用いられる電子材料や電子部品のニーズは年々増加しています。特に自動車の電動化がもたらす変化として、車両の高機能化だけでなく、充電設備の整備も急速に進められており、様々なセンシングデバイスの高度化・高信頼性化が求められています。半導体のニーズが益々拡大する一方で、米中デカップリングによるサプライチェーンの混乱や分断がもたらす影響を的確に捉えて、対応を進めていきます。特に世界各国の半導体ファウンドリ(foundry)やOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly & Test)を活用する分業体制が業界全体として展開されているため、半導体製造に関わるサプライチェーンの動向に影響を受ける可能性があります。半導体生産に必要なレアガス(希ガス)やレアメタル(希少金属)などの原材料不足や、大規模災害・パンデミック・地政学問題などの影響を受けての需要変化による製造リードタイムの長期化など、電子部品事業において環境変化が見通しにくい状況となっています。そのような中で、半導体製造関連の主要サプライチェーンの状況(特に米国、中国、台湾)の動向をモニタリングし、リスクの発生状況を常時評価し、迅速に対応していきます。今後も市場動向を注視しながらデジタル社会で求められる最先端のニーズを捉えて、電子材料と部品の双方を有するユニークさを活かし、特徴ある材料・部品、ソリューションを提供していきます。 Ⅱ 「住宅」セグメント国内事業においては、日本国内の個人消費動向・金利・地価・住宅関連政策ないし税制の動向や地政学問題等の発生によりサプライヤーからの部材調達に影響を受ける場合があります。当社は、発注情報の早期確定やスペックの見直し、内製化、複数社からの購買等リスク軽減を検討し対応していきます。また、カーボンニュートラルに向けた対応や脱炭素等の環境意識が高まる中、対応の遅れにより競争優位性や企業ブランド・製品ブランドへの影響が考えられます。RE100やSBTのフレームワークに基づいた評価・管理・報告を実施し継続的にPDCAを循環させ、定期的な状況報告を実施することでサステナビリティへの取り組みを推進し対応していきます。加えて、事業の特性上、大量の個人情報を扱っているため、個人情報の漏洩等があれば、当社グループの信用を毀損するリスクがあります。そのため、情報を端末に置かないデータ保存のクラウド化等個人情報保護の徹底した対策を講じています。 Ⅲ 「ヘルスケア」セグメント医薬品や医療機器等の事業においては、一般的に、その販売数量や販売単価等が定期的な薬価・保険償還価格の改定の影響を受ける場合があります。特に新薬の研究開発期間は長期にわたることに加え、新薬が承認取得に至る確率が高くないことなどから、製品化の確度や時期について正確な予測が困難な状況にあり、計画どおりに製品化できなかった場合は業績に影響を与える可能性があります。医薬品や医療機器が製品化した場合でも、競合品の開発・上市の動向、有害事象の報告、後発品の上市等により、業績に影響を与える可能性があります。そのため、当社グループでは医薬事業と医療事業の両方を持つことで、多様な成長力・競争力を獲得し、イノベーション獲得機会の増加を図るとともに、医療規制等将来の不確実性への対応力を高めていきます。また、パイプラインの拡充、製品導出・導入、共同開発、グローバル展開の加速等に努めることで持続的な安定成長を図ります。加えて、大規模自然災害・パンデミック・地政学問題などによる原材料・部品の不足、調達リードタイムの長期化、調達コストの増加の影響を受ける可能性があります。弊社の医薬品、医療機器を必要とする患者や医療従事者へ安定的に製品供給するため、原材料や製品在庫の管理、サプライヤーとの関係強化などサプライチェーン強化を進めていきます。 ② 財務上の課題「(1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等」 <経営方針・経営戦略> ⅳ 財務・資本政策の項目をご参照ください。
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】本項の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、将来のリスク、不確実性及び仮定を伴う予測情報を含んでいます。これらの記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた一定の前提条件や見解に基づくものであり、「3 事業等のリスク」等に記載された事項及びその他の要因により、当社グループの実際の業績はこれらの予測された内容とは大幅に異なる可能性があります。なお、2022年10月31日(米国東部時間)に行われたFocus Plumbing LLC、Focus Framing, Door & Trim LLC、Focus Electric LLC、Focus Concrete, LLC及びFocus Fire Protection LLCとの企業結合について前連結会計年度において暫定的な会計処理を行っていましたが、当連結会計年度に確定したため、前連結会計年度との比較・分析にあたっては、暫定的な会計処理の確定による見直し後の金額を用いています。 (1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容① 経営成績Ⅰ 当社グループ全体当社グループの当連結会計年度(2023年4月1日~2024年3月31日、以下、「当期」)における世界経済は、欧州においては金融引締めによる消費者マインド悪化により景気が弱含みを見せ、また、中国ではCOVID-19収束により経済活動の正常化が進みつつも、不動産市場の引き続きの低迷を受けて生産・消費の回復は緩やかとなる一方で、米国においては実質賃金上昇を受けた消費増加によって景気回復が続きました。このような環境の中で、当社グループの当期における連結業績は、「マテリアル」セグメントで中国を中心とした想定以上の需要減速や市況下落の影響を受けましたが交易条件が改善し、「住宅」及び「ヘルスケア」セグメントは堅調に推移したことから、売上高は2兆7,849億円で前連結会計年度(以下、「前期」)比584億円の増収となり、営業利益は1,407億円で前期比130億円の増益となりました。一方、持分法による投資損失381億円を計上したことなどにより経常利益は901億円で前期比308億円の減益となりました。汎用石化・樹脂資産グループに関連する設備等の減損損失を計上しましたが、前期比では減損損失が減少したこと、Asahi Kasei Energy Storage Materials, Inc.株式譲渡に伴う税金費用の減少等があったことから、親会社株主に帰属する当期純利益は438億円と黒字に転換しました。その結果、EPS(1株当たり当期純利益)は31.60円と前期比97.90円の増加となりました。資本効率について、当期のROICは5.9%で前期比2.0%の改善、ROEは2.5%で前期比8.0%の改善となりました。米国連結子会社間の株式譲渡による法人税等の益がある一方、「マテリアル」セグメントでの業績低迷や基盤マテリアル事業等の一部事業で減損損失を計上したことなどから低水準となりました。財務健全性については、有利子負債の減少と純資産の増加を受けて、D/Eレシオは0.51となりました。 〈当社グループの業績〉 経営指標2021年度2022年度2023年度前期との差異収益性売上高(億円)24,61327,26527,849+584営業利益(億円)2,0261,2771,407+130売上高営業利益率(%)8.24.75.1+0.4EBITDA(億円)3,5083,0503,229+179売上高EBITDA率(%)14.311.211.6+0.4親会社株主に帰属する当期純利益又は当期純損失(△)(億円)1,619△919438+1,358EPS(円)116.68△66.3031.60+97.90資本効率ROIC(%)6.64.05.9+2.0ROE(%)10.3△5.52.5+8.0財務健全性D/Eレシオ 0.450.570.51△0.06 Ⅱ セグメント別ⅰ 「マテリアル」セグメント売上高は1兆2,617億円で前期比549億円の減収となり、営業利益は426億円で前期比15億円の増益となりました。需要減速による数量因やその他因(在庫影響、操業度など)によるマイナスの影響を受けましたが、市況下落による売値因のマイナスを原燃料因や円安による為替因で大きくカバーしたことで交易条件が改善し、減収増益となりました。 ・ 環境ソリューション事業基盤マテリアル事業は、中国を中心とする石化関連全般の需要低迷による販売量の減少や、在庫受払差、定修影響などにより、減益となりました。主力事業であるアクリロニトリル事業についても、販売価格の原材料連動フォーミュラ化を進め安定的な収益を創出できるよう努めているものの、販売数量の減少や市況の下落により交易条件が悪化したことにより、減益となりました。セパレータ事業は、前期の操業度悪化による在庫影響や価格改定があった一方で、前期のPolypore減損に伴う広義ののれん(無形固定資産・のれん)の償却費減少により、増益となりました。なお、リチウムイオン電池用セパレータは、電気自動車等の環境対応車やスマートフォン等の民生機器、また蓄電システム(ESS)等の需要動向に影響を受けますが、販売数量は車載・民生用途ともに前期比で概ね横ばいとなりました。 ・ モビリティ&インダストリアル事業本事業は、自動車内装材やエンジニアリング樹脂等、自動車用途の製品の割合が大きいため、その業績は、グローバルでの自動車生産台数増減の影響を強く受けます。自動車内装材については、自動車減産影響の改善や能力増強を受けて販売量が増加したことに加え、交易条件が改善し、増益となりました。エンジニアリング樹脂については、自動車用途や太陽電池用途の販売量が増加したことに加え、交易条件が改善し、増益となりました。 ・ ライフイノベーション事業電子部品や電子材料を中心とするデジタルソリューション事業は、AIサーバーやハイエンドスマートフォン向け製品が堅調に推移した一方で、在庫受払差の影響等により減益となりました。その他の事業(繊維事業や消費財事業等)は、生活関連製品が堅調な国内需要に支えられたことに加え、原料高に伴う価格改定が進捗したこと、ベンベルグが生産復旧により堅調に推移していることにより、増益となりました。 ⅱ 「住宅」セグメント売上高は9,544億円で前期比554億円の増収となり、営業利益は830億円で前期比76億円の増益となりました。・ 住宅事業建築請負部門は、物件の大型化・高付加価値化による平均販売単価の上昇や固定費の削減が進んだものの、資材価格の高騰や工事数量の減少により、減益となりました。不動産部門は、賃貸管理事業の堅調な推移に加え、分譲マンション事業も都心部の高額物件の販売が多かったことから、増益となりました。海外事業部門は、北米事業は木材市況下落に対し高い売値を維持できた前年度に対して収益率が悪化し減益となった一方、豪州事業が資材費・労務費高騰の影響を大きく受けた前年同期に対して、当期は価格転嫁が進捗し、増益となりました。 ・ 建材事業原燃料価格高騰の影響を受けた前期に対して、当期は価格転嫁が進捗し、増益となりました。 ⅲ 「ヘルスケア」セグメント売上高は5,538億円で前期比569億円の増収となり、営業利益は485億円で前期比66億円の増益となりました。 ・ 医薬・医療事業医薬事業においては、免疫抑制剤「Envarsus XR」など主力製剤の販売が順調に推移しましたが、前期に計上されたライセンス一時金収入の減少や、Veloxisの販管費増加により、減益となりました。医療事業においては、次世代抗体医薬品CDMO事業を手掛けるBionova Scientific, LLCの新規連結による減益影響に加え、ウイルス除去フィルター「プラノバ」の顧客の在庫調整に伴う販売量減少により減益となりました。 ・ クリティカルケア事業「LifeVestR」の保険償還状況の改善や、除細動器の価格転嫁の進捗、部材調達難の改善に伴うAED(自動体外式除細動器)の販売量の増加により、増益となりました。 Ⅲ 生産、受注及び販売の状況ⅰ 生産実績当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではないため、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。このため、生産の状況については、「Ⅱ セグメント別」における各セグメントの業績に関連付けて示しています。 ⅱ 受注状況当社グループは注文住宅に関して受注生産を行っており、その受注状況は次のとおりです。その他の製品については主として見込生産を行っているため、特記すべき受注生産はありません。セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)住宅393,947110.8520,357103.4 ⅲ 販売実績当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称販売実績(百万円)前期比(%)マテリアル1,261,72995.8住宅954,405106.2ヘルスケア553,786111.5その他14,958106.7合計2,784,878102.1 (注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。2 前期及び当期において、主要な販売先として記載すべきものはありません。 ② 財政状態当期末の総資産は、為替の円安や期末日の休日要因などにより、現金及び預金や、受取手形、売掛金及び契約資産が増加したことなどから、前期比2,088億円増加し、3兆6,627億円となりました。流動資産は、現金及び預金が869億円、受取手形、売掛金及び契約資産が432億円、棚卸資産が363億円増加したことなどから、前期比1,618億円増加し、1兆6,500億円となりました。固定資産は、投資有価証券が243億円、有形固定資産が184億円減少したものの、繰延税金資産が386億円、無形固定資産が186億円、退職給付に係る資産が160億円増加したことなどから、前期比470億円増加し、2兆127億円となりました。流動負債は、コマーシャル・ペーパーが410億円減少したものの、支払手形及び買掛金が327億円、前受金が155億円増加したことなどから、前期比24億円増加し、9,146億円となりました。固定負債は、繰延税金負債が76億円減少したものの、社債が300億円、長期借入金が165億円、退職給付に係る負債が47億円増加したことなどから、前期比532億円増加し、8,995億円となりました。有利子負債は、前期比224億円減少し、9,170億円となりました。純資産は、配当金の支払500億円があったものの、為替換算調整勘定が1,524億円増加したことや親会社株主に帰属する当期純利益を438億円計上したことなどから、前期末の1兆6,954億円から1,532億円増加し、1兆8,486億円になりました。その結果、1株当たり純資産は前期比110.36円増加し1,308.20円となり、自己資本比率は前期末の48.1%から49.5%となりました。D/E レシオは前期末から0.06ポイント改善し0.51となりました。 ③ キャッシュ・フローの状況Ⅰ キャッシュ・フローの状況当期における営業活動によるキャッシュ・フローは2,953億円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは1,426億円の支出となり、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は1,527億円の収入となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは943億円の支出となり、これらに加え、現金及び現金同等物に係る換算差額による増加297億円、会社分割に伴う現金及び現金同等物の減少24億円がありました。以上の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、前連結会計年度末に比べ856億円増加し、3,335億円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)当期における営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払348億円、投資有価証券売却益271億円、売上債権及び契約資産の増加191億円などの支出があったものの、減価償却費1,526億円、減損損失928億円、持分法による投資損失381億円、のれん償却額296億円、税金等調整前当期純利益288億円、仕入債務の増加186億円などの収入があったことから、2,953億円の収入(前期比2,045億円の収入の増加)となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)当期における投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入376億円、貸付金の回収による収入81億円、事業譲渡による収入73億円などの収入があったものの、有形固定資産の取得による支出1,477億円、無形固定資産の取得による支出242億円、貸付けによる支出139億円などの支出があったことから、1,426億円の支出(前期比710億円の支出の減少)となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)当期における財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入655億円、社債の発行による収入600億円などの収入があったものの、長期借入金の返済による支出545億円、配当金の支払500億円、コマーシャル・ペーパーの減少410億円、社債の償還による支出400億円、短期借入金の減少237億円、リース債務の返済による支出93億円などの支出があったことから、943億円の支出(前期比2,061億円の支出の増加)となりました。 当社グループの連結キャッシュ・フローの推移(単位:億円) 2021年度2022年度2023年度営業活動によるキャッシュ・フロー①1,8339082,953投資活動によるキャッシュ・フロー②△2,210△2,136△1,426フリー・キャッシュ・フロー③(①+②)△377△1,2281,527財務活動によるキャッシュ・フロー④4231,118△943現金及び現金同等物に係る換算差額⑤210157297現金及び現金同等物の増減額⑥(③+④+⑤)25647880現金及び現金同等物の期首残高⑦2,1622,4292,479連結の範囲の変更に伴う増減額⑧112-会社分割に伴う減少額⑨–△24現金及び現金同等物の期末残高(⑥+⑦+⑧+⑨)2,4292,4793,335 Ⅱ 流動性と資金調達の源泉(資本の財源及び資金の流動性について)2025年3月31日に終了する連結会計年度においては、各セグメントが安定的なキャッシュ・フローを創出することを見込んでいます。加えて、財務規律の強化や事業ポートフォリオ転換などを通じた収益体質の強化にも取り組み、更なるキャッシュの創出に継続的に努めています。また、当社グループでは、D/Eレシオ0.7を目安に健全な財務体質を維持しつつ、これを背景に金融情勢に機動的に対応し、金融機関借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行など多様な調達手段により、安定的かつ低コストの資金調達を図ります。同時に資金の年度別返済の集中を避けることで借り換えリスクの低減も図っています。これらの資金を、経営基盤の強化・変革、持続可能な社会の実現と企業価値の継続的な向上のための戦略的な投資、及び株主の皆様への還元に活用していきます。なお、当社グループでは、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)とグローバル・ノーショナル・キャッシュ・プーリングを導入しており、国内外の金融子会社、海外現地法人などにおいて集中的な資金調達を行い、子会社へ資金供給するというグループファイナンスの考え方を基本としています。グローバル拡大への対応とグループ経営の深化の視点から、今後も連結ベースでの資金管理体制の更なる充実と資金効率化を図ります。 (2) 重要な判断を要する会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。当社グループは、退職給付会計、税効果会計、貸倒引当金、棚卸資産の評価、投資その他の資産の評価、訴訟等の偶発事象などに関して、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。 ① 棚卸資産の評価当社グループで保有する棚卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とし、収益性の低下により期末における回収可能価額が取得原価よりも下落している場合には、回収可能価額まで棚卸資産の評価を切り下げています。回収可能価額は、商品及び製品については正味売却価額に基づき、原材料等については再調達原価に基づいています。経営者は、棚卸資産の評価に用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、当社グループは、主に「マテリアル」セグメントを中心として市場価格の変動リスクに晒されており、将来、経営環境の悪化等により市場価格が下落した場合には棚卸資産の簿価を切り下げることになります。 ② 企業結合取引の結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価当社グループは、企業結合取引の結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価について、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどの合理的に算定された価額を基礎として算定しています。経営者は、無形固定資産の時価の見積りに用いられた、事業計画に含まれる将来の販売数量の見込みや割引率等についての主要な仮定について合理的であると判断しています。 ③ 有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の減損当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)について、帳簿価額が回収できない可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に、減損の兆候があるものとして、減損損失の認識の判定を行っています。減損の存在が相当程度に確実と判断した場合、減損損失の測定を行い、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のうち、いずれか高い金額としています。使用価値は、将来の市場の成長度合い、収益と費用の予想、資産の予想使用期間、割引率等の前提条件に基づき将来キャッシュ・フローを見積もることにより算出しています。経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断、及び回収可能価額の見積りに関する評価は合理的であると判断しています。ただし、予測不能な市場環境の悪化等により有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の評価に関する見積りの前提に重要な変化が生じた場合には、減損損失を計上する可能性があります。 ④ 繰延税金資産の評価当社グループは、繰延税金資産のうち、回収可能性に不確実性があり、将来において回収が見込まれない金額を評価性引当額として設定しています。繰延税金資産の回収可能性については、課税所得及びタックスプランニングの見積りにより計上していますが、特に課税所得の見積りには将来に関する予測や情報が含まれています。将来の予測や情報に基づき、繰延税金資産の一部又は全部が回収できない可能性が高いと判断した場合には、将来回収が可能と判断される額までを繰延税金資産に計上しています。経営者は、繰延税金資産の回収可能性の判断及び前提となる課税所得やタックスプランニングの見積りは適切であると判断しています。ただし、将来、経営環境の悪化等により、想定していた課税所得が見込まれなくなった場合は、評価性引当額を設定することにより繰延税金資産が取崩される可能性があります。 ⑤ 退職給付債務及び費用当社グループは主として従業員の確定給付制度に基づく退職給付債務及び費用について、割引率、昇給率、退職率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率等の前提条件を用いた数理計算により算出しています。割引率は測定日時点における、従業員の給付が実行されるまでの予想平均期間に応じた長期国債利回りに基づき決定し、各前提条件については定期的に見直しを行っています。長期期待運用収益率については、過去の年金資産の運用実績及び将来見通しを基礎として決定しています。経営者は、年金数理計算上用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、前提条件を変更した場合、あるいは前提条件と実際の数値に差異が生じた場合には、数理計算上の差異が発生し、当社グループの退職給付債務及び費用に影響を与える可能性があります。

※本記事は「旭化成株式会社」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

コメント