会社名 | 旭化成株式会社 |
業種 | 化学 |
従業員数 | 連50352名 単8288名 |
従業員平均年齢 | 41.8歳 |
従業員平均勤続年数 | 14.8年 |
平均年収 | 8000906円 |
1株当たりの純資産 | 1369.16円 |
1株当たりの純利益(連結) | 97.94円 |
決算時期 | 3月 |
配当金 | 38円 |
配当性向 | 141.5% |
株価収益率(PER) | 10.69倍 |
自己資本利益率(ROE)(連結) | 7.4% |
営業活動によるCF | 3014億円 |
投資活動によるCF | ▲3811億円 |
財務活動によるCF | 1445億円 |
研究開発費※1 | 1106.41億円 |
設備投資額※1 | 2001.47億円 |
販売費および一般管理費※1 | 4276.14億円 |
株主資本比率※2 | 24.9% |
有利子負債残高(連結)※3 | 11374.58億円 |
経営方針
1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。 (1) 経営方針・経営戦略等① 当社グループミッション等当社グループでは、「世界の人びとの“いのち”と“くらし”に貢献します。」というグループミッション(存在意義)のもと、「健康で快適な生活」と「環境との共生」の実現を通して、社会に新たな価値を提供することをグループビジョン(目指す姿)として掲げています。また、グループバリュー(共通の価値観)として「誠実」「挑戦」「創造」を定めており、すべてのステークホルダーの皆様に対し「誠実」に経営することを通じて、社会の課題解決や事業環境の変化に積極果敢に「挑戦」し、絶えず新たな価値を「創造」することで、事業を通じて企業の社会的責任を果たしていくことを基本方針としています。 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等<経営環境・経営課題>国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」に示されるように、持続可能な社会に向けては様々な課題があり、世界中で取り組みが進められています。しかし、国連の2024年の報告によれば、持続可能な開発目標(SDGs)のうち、進捗が順調であると評価されたのはわずか17%に過ぎません。課題解決にはなお多くの挑戦が必要です。例えば、2024年には世界の年間平均気温が産業革命以来の上昇幅で初めて1.5℃を超えたと報告されており、地球温暖化は進行し、災害も多発しています。また、世界の人口増加による資源不足、生物多様性の喪失などが広がる一方で、健康や安心・快適な生活への期待がますます高まっています。創業以来の1世紀にわたり、各時代のニーズに応えながら成長してきた当社グループにとって、これらの持続可能な社会に向けた課題は、自らの挑戦課題であると同時に、事業機会として位置づけ、積極的に取り組むものです。これらの課題は1つの企業・産業で解決できないものも多く、企業や産業を超えた共創がますます重要になってきます。例えば、住宅とエネルギー、医療と住宅等のように、これまでの産業の境界を越えて相互に関連しあうテーマ・課題が多く存在しています。このような環境は、マテリアル・住宅・ヘルスケアの3つの領域を持つ当社にとっては大きな事業機会であると認識しています。また当社は100年の歴史で培った人財・コア技術・ブランド・経営ナレッジ等、多様な資産を有しています。グループの特長である多様性(Diversity)を活かし、競合との差別化を重視したアプローチによって高付加価値・高収益(Specialty)のイノベーティブな製品・サービス・ビジネスモデルを持続的に創出していくことを目指します。一方、足元の状況を見ると、経営環境は急激に変化し、不確実性が著しく高まっています。世界各地で発生している紛争、政情不安、社会的分断や、政策予見性の低下は、エネルギーや原材料などのサプライチェーンの不安定化、金融市場の変動、世界経済の下振れなどのリスク要因となっています。そのような経営環境をしっかりと見極めた上で、グループ全体が1つのチームとして力を結集し、お客様や同業他社、投資家など様々なステークホルダーとともに道を切り拓いて、価値を提供することで、「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の2つの持続可能性(サステナビリティ)の好循環を追求していきます。 ⅰ サステナビリティマネジメントの強化当社グループは、2021年度に「サステナビリティ基本方針」を制定しました。これは、サステナビリティに関する方針をより具体的に記述することで、当社グループの方針を明示するとともに、持続可能な社会の実現に向けた行動を一段と推進していくことを狙いとするものです。 ⅱ 「中期経営計画2024 ~Be a Trailblazer~」の振り返り2022年度から2024年度までの「中期経営計画2024 ~Be a Trailblazer~」(以下、「前中計」)では、「スピード」「アセットライト」「高付加価値」の3つを強く意識しながら、成長投資と構造転換の両輪による事業ポートフォリオ変革を進めました。中期視点での持続的な成長に向けて、スウェーデンの製薬企業Calliditas Therapeutics ABの買収や車載リチウムイオン電池用セパレータの工場建設などの投資決定を行いました。一方、構造転換については、血液浄化事業の譲渡など合計売上高800億円以上の事業を対象に意思決定を行いました。石油化学チェーン関連事業では、アクリロニトリル事業等を運営するタイのPTT Asahi Chemical Co., Ltd.(PTTAC)の事業撤退の決定や、中長期視点で西日本におけるエチレン製造設備のグリーン化並びに将来の能力削減も含めた生産体制最適化の検討を開始しました。経営指標に関しては、経営環境の悪化を受けマテリアル領域を中心に収益が低迷した影響で、2022年度には減損を計上しROEが大きく低下しました。最終年度の2024年度においては、住宅領域、ヘルスケア領域の堅調な成長に加え、マテリアル領域の利益回復により、営業利益は過去最高となりました。営業利益、当期純利益等は当初計画未達となりましたが、財務健全性については、積極的な投資を進めながらも概ね高い水準を維持しました。2024年度の業績は営業利益:2,119億円、ROE:7.4%、ROIC:5.5%となっています。今後はこれまでの投資成果の創出と、構造転換や生産性向上の取り組みを通じて、利益成長と資本効率の改善を目指します。 <経営方針・経営戦略>● 旭化成が2030年に目指す姿当社はグループビジョンに掲げている「健康で快適な生活」と「環境との共生」の実現を通して、社会に新たな価値を提供するべく企業活動を行っています。持続可能な社会に貢献すると同時に、それを当社グループの企業価値の向上につなげていく、という2つのサステナビリティの好循環の実現を目指しています。それに向けて、マテリアル、住宅、ヘルスケアの3つの領域がそれぞれのあり方に基づき、様々な課題の解決、及び実現したい姿に向けて事業を展開しています。多様な事業が社会課題に正面から対峙して、価値提供することで、“持続的にイノベーティブな製品・サービス・ビジネスモデルを創出”することを目指しています。その結果として、高い利益成長と資本効率の向上を実現し、当社グループとして2030年近傍には、営業利益3,800億円、ROIC8%以上、ROE12%以上を目指します。 ● 旭化成の特長 「Diversity × Specialty」当社の特長を表す「Diversity × Specialty」は当社の価値提供の源泉となっています。「Diversity」は多様な事業展開による成長機会の豊富さや安定的な収益創出力を、「Specialty」は競合との差別化を重視した事業アプローチを通じた高付加価値、高収益の実現を示しています。DiversityとSpecialtyを掛け合わせる事で、「高い経営安定性」と「成長・新しい事業への挑戦」、「持続的なイノベーションの創出」の好循環が生み出されています。グループの経営基盤を各領域が共有し合い、柔軟に相互活用することで、それぞれが旭化成らしい勝ち筋で価値を提供する、という姿は旭化成独自のエコシステムとなっています。 ● 「中期経営計画2027 ~Trailblaze Together~」の概要2025年4月に発表した「中期経営計画2027 ~Trailblaze Together~」(以下、「本中計」)は、当社が目指す「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」の2つのサステナビリティの好循環の実現に向けた、2025年度から2027年度の3年間の経営計画になります。投資成果創出による利益成長、構造転換や生産性向上による資本効率改善に加え、経営基盤のさらなる強化・活用により、「Diversity × Specialty」を進化させ、最終年度の2027年度には営業利益2,700億円、のれん償却前営業利益3,060億円、ROIC6%、ROE9%を目指します。 ⅰ 投資成果創出による利益成長2027年度の利益目標である2,700億円に向けては、医薬、クリティカルケア、海外住宅が主な利益成長ドライバーとなります。特に医薬と海外住宅については、M&Aを中心とした先行的投資から確実に利益を創出することが極めて重要です。加えてエレクトロニクスの着実な利益成長や、エナジー&インフラにおけるセパレータの収益改善を見込んでいます。中期視点での持続的な利益成長に向けては、リソースアロケーションをより明確にし、成長が期待できる事業へ重点的に投入します。本中計においては、事業を10の区分に分け、事業ポートフォリオの方向性や各事業の戦略をより明確にしています。「重点成長」「戦略的成長」事業への投資継続による利益成長の実現と並行して、「収益改善・事業モデル転換」事業の改革も進めます。 ⅱ 構造転換や生産性向上による資本効率改善収益性・資本効率の低い事業については、構造転換・事業モデルの再構築を進め、資本の最適配置を図ります。本中計においてはマテリアル領域のポートフォリオ変革をさらに加速させ、同領域の2024年度売上高の約20%に相当する事業の構造転換を目指します。特にケミカル事業においては、「ベストオーナー視点での改革」「他社連携による最適化・強化」「自社での構造転換」の3つのアプローチで構造転換を推進しています。これにより、ROICやROEの継続的な改善を目指します。ⅲ 「Diversity × Specialty」の進化前中計期間においては、マテリアル領域は事業環境変化を受け構造転換に注力する一方で、住宅領域、ヘルスケア領域は順調に成長しました。その結果として、2024年度においては住宅領域の営業利益額が3領域の中で最も大きくなり、2030年度に向けては各領域がほぼ同水準の利益目標を目指す形になります。それに合わせる形で今後の成長投資はヘルスケア領域や住宅領域へのアロケーションを増加させます。マテリアル領域は事業ポートフォリオ転換と重点成長事業の投資からの利益創出を通じて2030年度の利益目標の達成を目指します。「Diversity × Specialty」の進化により、マテリアル領域を中心とする事業構成から、3つの領域における高付加価値事業が高水準の利益貢献を果たす姿へシフトさせていきます。 ⅳ 財務・資本政策(外部環境・課題)前中計期間においては、ロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の高騰や中国経済の成長鈍化等の厳しい経営環境の中でも、当初計画に沿った形で中期的な成長に向けた成長投資を決定しました。財務健全性を示すD/Eレシオは想定の水準を維持できているものの、生産性向上やコスト削減などによる体質強化を図り、アセットライトを意識した事業モデルへの転換などを通じてキャッシュ創出力や資本効率を持続的に高めていきます。 (具体的な方針・戦略)■ 資金の源泉と使途の枠組み本中計の3年間においては、約1兆2,000億円のキャッシュ・インとキャッシュ・アウトを計画しています。キャッシュ・インにおいては営業キャッシュ・フローが約75%を占め、残りの約25%は有利子負債、事業売却、他社資本の活用などにより調達する予定です。キャッシュ・アウトに関しては成長に向けた投資と株主還元のバランスを重視し、約80%を事業投資、約20%を株主還元とする計画です。財務健全性指標としてD/Eレシオは0.7程度、有利子負債/EBITDA倍率は3.0程度を目安として、資本のバランスをマネジメントします。 ■ 設備投資・投融資本中計の3年間においては累計で約1兆円の投資(意思決定ベース)を計画しており、そのうち拡大関連投資としては6,700億円を見込んでおります。ヘルスケア領域におけるM&Aを中心とした成長投資に加え、住宅領域においても国内外で中期的成長のための投資を検討する予定です。一方で、マテリアル領域については厳選した事業にフォーカスした投資をすることで、優先順位をより明確にしたリソースアロケーションとしていきます。投資の意思決定にあたっては、他社資本や補助金を戦略的に活用することを検討します。また、主要な案件ごとに事業の収益性・資本効率や事業ポートフォリオ上の位置づけ等を踏まえた上でのハードルレートを定めています。今後も財務規律を強く意識した上で投資判断を行います。■ 株主還元株主還元の基本的な考え方としては、累進配当を特に重視した上で、還元水準の継続的向上を図っていきます。その方針をフォローするため、DOEを指標とした上で、DOE3%程度を目安に中長期的な累進配当を目指します。2024年度は上記の方針に基づき、1株当たり年間配当金として38円と、前期比で2円増配します。2025年度以降も引き続き配当金維持・向上を予定しています。自己株式取得は資本構成適正化に加え、投資案件やキャッシュ・フロー、株価の状況等を総合的に勘案して検討・実施していきます。配当政策については、「第4 提出会社の状況 3 配当政策」と合わせてご参照ください。 ■ 資本効率の改善と企業価値の向上本中計においても、前中計に引き続き資本効率を重視しています。ROEについては、減損を計上した2022年度から改善しているものの、現状では株主資本コストの8%を下回っており、PBRについては2021年度以降1倍を下回る状況が続いています。本中計の最終年度では9%を計画していますが、足元においてもROE改善策を進め、まずPBRが1倍を早急に超えるように最善を尽くします。改善に向けて次の5つの取り組みに注力します。①事業ポートフォリオ変革加速②収益力向上③投資マネジメント強化④資本構成の最適化⑤資本コスト低減この中でも特に「事業ポートフォリオ変革加速」と「収益力向上」に重点的に取り組み、それらの成果創出を通じてPBR水準の向上、及び企業価値の向上を追求します。ⅴ 経営基盤の強化経営環境の不透明さが増す中では、事業の土台となる経営基盤をより強固にすることが重要であると考えています。経営基盤強化として、「グリーントランスフォーメーション」「人財のトランスフォーメーション」「無形資産の活用」「リスクマネジメントの強化」「コーポレート・ガバナンスの最適化」について重点的に取り組んでいます。 ■ グリーントランスフォーメーション当社グループは持続可能な社会の実現に向けて、2050年時点でのカーボンニュートラル(実質排出ゼロ)を目指しています。また、GHG排出量を2013年度対比で2030年には30%以上の削減、2035年には40%以上の削減を目指しています。カーボンニュートラルの実現に向け、エネルギー使用量の削減、エネルギーの脱炭素化、製造プロセスの革新、高付加価値/低炭素型事業へのシフトなど、様々な取り組みを加速させていきます。自社のGHG排出量の削減への注力に加え、製品やサービスでバリューチェーン全体のGHG排出量削減に貢献することも重要なテーマとして取り組んでいます。当社では第三者専門家の視点を入れて妥当性を確認した、GHG排出量削減効果を期待できる製品・サービスを「環境貢献製品」として拡大・普及することを進めています。これらの「環境貢献製品」によるGHG削減貢献量を、2030年度には2020年度の2倍以上、2035年度には2.5倍以上とすることを目標としています。 ■ 人財のトランスフォーメーション当社は挑戦・成長を自ら求めていく「終身成長」と、多様性を促す「共創力」を人財戦略の柱としています。これらは当社が100年かけて培った、グループバリュー、多様性、自由闊達な風土などの無形資産をさらに磨き、活かしきるということでもあります。その取り組みを加速させるために、挑戦的風土の強化を狙った新しい人事制度への移行を進めています。「Fair+Open」のコンセプトの下、社員が新たなことに挑戦したり、高い成果・貢献をあげた場合に、これまで以上に積極的に評価・報酬・昇格につなげる形にしていきます。これらの取り組みが、「従業員の活力と働きがいの向上」と「旭化成グループの持続的成長」の好循環につながると考えています。主要KPIとしては、「従業員エンゲージメント(成長行動指標)」「ラインポスト+高度専門職における女性比率」「従業員エンゲージメント(活力指標)」を掲げています。具体的な施策概要は「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 [個別重要課題] (2) 人的資本・多様性」に記載しているほか、当社統合報告書及びサステナビリティウェブサイトにも記載しています。統合報告書;https://www.asahi-kasei.com/jp/ir/library/asahikasei_report/サステナビリティウェブサイト;https://www.asahi-kasei.com/jp/sustainability/social/human_resources/ ■ 無形資産の最大活用当社は3領域にわたり、人財、コア技術、マーケティングチャネル等、多様な無形資産を持ち、活用できることが強みであり、これらの無形資産を最大限活用することにより、戦略構築や新事業の創出を推進しています。特にマテリアル領域においては「ソリューション型事業」や「ライセンス型事業」の展開を推進しています。中でも「ライセンス型事業」は新たな収益源として期待を寄せており、本中計の3年間で、10件の新規のライセンス契約締結を目標としています。2030年までの累積の利益貢献として100億円以上を目指します。デジタル基盤については、通常の業務の中でDX(デジタルトランスフォーメーション)を当たり前のものとして進める「デジタルノーマル期」に入っており、AIの積極的導入による全社横断型の経営基盤づくりや事業モデルの変革、さらなる業務の高度化や生産性向上などにつなげていきます。当社は経済産業省が東京証券取引所と共同で選定する「DX銘柄」に2021年から2025年まで5年連続で選出されました。 ■ リスクマネジメントの強化詳細は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。 ■ コーポレート・ガバナンスの最適化詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。 ⅵ 財務・非財務主要KPI本中計の実行にあたっては、財務・非財務のKPIを明確にして各施策を実行していきます。財務KPIにおいては、利益成長・資本効率の視点で、営業利益、ROE、ROICの2027年度の目標と2030年度の展望を設定しています。非財務KPIに関しては、GXの観点では当社GHG排出量、環境貢献製品を通じたGHG削減貢献量、無形資産の活用の観点ではライセンス契約の新規締結件数、人財の観点では従業員エンゲージメント調査の活力指標を主要なKPIとして設定しています。 中期経営計画2027で設定した財務・非財務主要KPI一覧 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等中期経営計画に定める各セグメントの目標に向けて、以下の経営方針・経営戦略を実行していきます。 Ⅰ 「マテリアル」セグメント本セグメントにおいては、3事業本部制から一体運営へ変更し、併せてコーポレートの研究開発とDX関連の機能の一部を本セグメントへ再編することで、構造転換やキャッシュ・フロー及び投下資本管理の徹底など体質強化を図りながら、半導体関連やカーインテリア、エナジー&インフラ分野での事業拡大による利益成長を目指します。●事業の方向性:「カスタマーオリエンテッド型」「ソリューション型」事業の拡大による持続的成長と他社との連携や外部リソースを活用した事業価値の最大化 ●注視する事業環境:DX・AI技術を支える半導体の市場成長、欧米自動車メーカーの動向、グローバルEV市場動向 <経営環境・経営課題>本セグメントにおいては、事業ポートフォリオの転換を最も重要な経営課題と認識し、次の成長分野への重点的な投資を行う一方で、既存アセットを最大活用することでのキャッシュ創出や事業の構造改革を推進しています。なお2025年4月より、本セグメント内の事業をエレクトロニクス、カーインテリア、エナジー&インフラ、コンフォートライフ、パフォーマンスケミカル、エッセンシャルケミカルという6つの事業分野に再編し、運営しています。これらの事業において、ビジネスモデルや市場の状況、競争優位性等の事業環境は、製品群によって大きく異なるため、各事業が置かれている環境認識に基づいた経営課題に対して取り組んでいます。本セグメントにおける経営環境は以下のとおりと認識しています。ⅰ エレクトロニクス事業・生成AIの普及やデータセンター拡大に伴う、先端半導体技術のニーズの高まり・通信技術の高度化等、新たなライフスタイルによる様々なセンシングニーズの高まり ⅱ カーインテリア事業・自動運転の普及に伴う、車室空間の「居心地」に対するニーズの多様化・デザイン性や機能性を両立し、かつ環境負荷の低い素材へのニーズの高まり ⅲ エナジー&インフラ事業・主要国における電気自動車等の環境対応車の需要の立ち上がりと、それに向けたリチウムイオン電池需要の高まり・米国の規制強化によるアスベスト製隔膜法プラントからイオン交換膜法食塩電解へ転換する動きや、インドや東南アジアでの電解プラントの新増設等に伴う、イオン交換膜需要の高まり ⅳ コンフォートライフ事業・欧米ジェネリック医薬品向け製造拠点としてのインドや高齢化が進展する中国など、グローバルな医薬品市場の成長に伴う医薬品添加剤需要の安定成長 ⅴ パフォーマンスケミカル事業・「CASE」と呼ばれる自動車業界の変革と、それに伴う技術革新の進展や新たなニーズの高まり・低炭素社会の実現に向けた電気自動車等の環境対応車の需要拡大や資源の有効活用など、自動車業界における環境負荷低減の動き ⅵ エッセンシャルケミカル事業・中国の設備増強と内製化進展による石油化学製品のアジア輸出需要の変化、またこれに伴う日本国内の石油化学コンビナート再編の動き・カーボンニュートラルの動きを受けた、石油化学関連製品の中長期視点でのサステナビリティ対応の加速、脱炭素に貢献する技術やソリューションに対するニーズの高まり <経営方針・経営戦略>本セグメントにおける主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。ⅰ エレクトロニクス事業■ 価値提供の方向性:カスタマーオリエンテッド型による高付加価値素材の提供・デジタル社会の進展で求められるニーズへの、特徴ある部品・部材、ソリューションの提供■ 主な取り組み・電子材料、基板材料事業:AI活用等、DXの加速による先端半導体の進化を支える革新材料開発の強化・電子部品:省エネ・快適市場において競争力のあるセンシングデバイス・ソリューションの展開・電子材料と電子部品との融合による特徴ある部材・部品、ソリューションの展開 ⅱ カーインテリア事業■ 価値提供の方向性:カスタマーオリエンテッド型の商品ラインアップ、対応力による提案力強化・キーカスタマーへの横断的なマーケティング強化■ 主な取り組み・Sage Automotive Interiors, Inc.の事業を軸にして、ファブリック、合成皮革、さらに環境特性に優れたスエード調人工皮革「DinamicaR」を加えた幅広い素材ラインアップと高いデザイン力を融合させた内装材プラットフォームの構築・地域、素材ごとの最適な生産供給体制構築による、コスト競争力の強化・環境に配慮した製法による高級感ある新素材、新製品の開発 ⅲ エナジー&インフラ事業■ 価値提供の方向性:独自の技術・知見を活かしたソリューション提供・これまでに培った技術や知見などの事業基盤を活かした、旭化成が目指す2つのサステナビリティ(「持続可能な社会への貢献」と「持続的な企業価値向上」)の好循環の実現への貢献■ 主な取り組み・グリーンな素材とソリューションの提供(水素関連の事業化推進、CO2ケミストリーの多面的展開)・蓄エネルギー分野の深耕(セパレータ事業の成長追求、知見を活かした新しい事業展開)・イオン交換膜法食塩電解事業を起点とした製造型リカーリングビジネスの拡充と高度化 Ⅱ 「住宅」セグメント●事業の方向性:国内住宅は継続的な収益力強化に加え、中期的な成長機会を探索。海外住宅は独自のビジネスモデルによる展開を通じた持続的成長を追求 ●注視する事業環境:国内の戸建住宅、不動産関連の市場動向、米国・豪州における景気や金利政策の住宅需要影響 <経営環境・経営課題>国内の住宅市場では、住宅ローン金利が上昇傾向にあることに加え、資材価格高騰や労務費の増加による建設コストの上昇及び物価上昇による消費マインドの低下などもあり、住宅需要について引き続き注視が必要な状況が続いています。このような状況の中、引き続き社会課題の解決と、お客様満足のさらなる向上に取り組んでいます。国内の住宅事業においては、DXを活用したオンライン集客・紹介活動の拡大等による集客におけるビジネスモデルの転換や、都市・近郊・郊外それぞれのエリア特性・お客様のニーズに合わせたサービスの実施、高付加価値化へのさらなるシフトを通じ、引き続き高品質な住まいの提案に努めていきます。また、気候変動に伴う自然災害の多発化、脱炭素化の加速、環境への配慮による省エネ性能の高い住宅の需要の高まり等、住宅を取り巻くニーズは変化し続けており、環境関連においても積極的に取り組みを行っています。海外の住宅市場では、経済政策の動向や為替変動、住宅価格の高騰、住宅ローン金利高止まりの影響等について引き続き注視が必要な状況が続いていますが、供給不足を背景とする潜在的な需要は高く、今後も事業展開の拡大を行っていく必要があると考えています。 <経営方針・経営戦略>本セグメントにおける主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。ⅰ デジタル技術を活用したマーケティング等による集客、受注活動の推進や生産性の向上ⅱ サステナビリティ活動の推進・旭化成ホームズ㈱が、事業活動で消費する電力を100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする国際的イニシアチブである「RE100」において、2023年度に「RE100」達成・旭化成ホームズ㈱が、国際的イニシアチブ「RE100」が主催する「RE100 Leadership Awards 2024」において、「RE100 enterprising leader」を受賞・旭化成ホームズ㈱が、一般社団法人産業環境管理協会主催の「令和6年度 資源循環技術・システム表彰」において、経済産業大臣賞を受賞・旭化成ホームズ㈱が、環境省の「エコ・ファースト制度」において、「エコ・ファースト企業」に認定・旭化成ホームズ㈱が、環境省主催の令和6年度「気候変動アクション環境大臣表彰」において、「ハウスメーカー由来の電力事業による循環型エネルギー社会の実現」の取り組みを評価され先進導入・積極実践部門 緩和分野を受賞・旭化成ホームズ㈱が、経済産業省の「GX率先実行宣言」の枠組みに賛同し、2025年1月に同宣言を公表・旭化成富士支社の工場跡地に設けた環境再生ゾーンである「あさひ・いのちの森」が、公益財団法人都市緑化機構が主催する「SEGES(シージェス:社会・環境貢献緑地評価システム)そだてる緑」においてSuperlative Stage認定を取得・ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)・ZEH-M(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス・マンション)普及に向けた取り組みの推進・環境貢献度の高い断熱材「ネオマフォーム?」の拡販ⅲ レジリエンスの強化・耐震性、耐火性の高い住宅の提供や防災科学技術研究所とのリアルタイム地震被害推定システム研究など、安心できる住まいを実現させる取り組みの推進・旭化成ホームズ㈱の「HEBEL HAUS トータルレジリエンス2.0」(総合防災力強化の取り組み)が、一般社団法人レジリエンスジャパン推進協議会主催の「第11回ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2025」において、「ジャパン・レジリエンス・アワード 優秀賞」を受賞 ⅳ 海外事業の展開加速・豪州事業大手戸建住宅会社であるNEX Building Group Pty Ltdを中心に、同社の創業の地であるニューサウスウェールズ州以外にも新たなビルダーの買収を通じてエリアを広げ、現在は計5州で事業を展開しています。引き続き生産性・収益性向上に向けた業務プロセスの高度化や、拡販による各エリアのシェアアップでの利益拡大を目指し、ビルダー単独・サプライヤー単独では成しえない多様な価値提供による競争優位性の高い豪州モデルを確立させることで、豪州における注文住宅の建築請負及び分譲住宅の販売においてトップブランドを目指します。・北米事業北米のホールディングカンパニーであるSynergos Companies LLCは、建築部材を手掛けるErickson Framing Operations LLCやFocus Companies LLC、基礎・電気・空調設備工事を行うAustin Companies LLC、配管工事を行うBrewer Operations LLCなどのサブコンストラクターを中心に、建築工程の中核となる業種を統合し工業化建築を推進することで、米国の建築業界に施工の効率化という新たな価値を生み出し、高品質な住まいの提供に貢献しています。また、住宅需要の高いアリゾナ州、ネバダ州、フロリダ州に厳選して地域展開を図り事業規模を拡大しています。今後さらなる成長を追求すべく、テキサス州への展開等さらなるエリア拡大も検討し、より一層の成長に向けて事業を推進していきます。 Ⅲ 「ヘルスケア」セグメント●事業の方向性:医薬を中心にこれまでの成長投資を結実させ、グループの利益成長を牽引。中期視点での持続的高成長に向けた拡大投資を継続 ●注視する事業環境:対象疾患の患者数・ガイドライン、血漿製剤・バイオ医薬品の市場動向、米国の景気動向・保険会社の動向 <経営環境・経営課題>医薬事業においては、2024年5月にCalliditasの買収を発表し、2020年に買収したVeloxisと合わせてグローバルな事業展開を進めており、日米における主力医薬品の販売が伸長したことにより売上高は堅調に増加しています。医療事業においては、生物学的製剤市場の継続的な成長と製薬会社における新薬の開発及び商業生産化へのニーズの高まりにより、ウイルス除去フィルターの需要が増加しています。顧客の在庫調整による一時的な需要停滞は落ち着き、既に増加基調へと転じており、安定生産と生産能力増強を通じて供給責任を果たしていきます。クリティカルケア事業においては、主力のAED(自動体外式除細動器)の販売が前期の出荷増加に伴う在庫調整により一時的に停滞していましたが、足元では改善しており、今後は市場環境回復に合わせた成長を継続していく見通しです。なお、2024年度は医薬事業において診断薬事業などの、医療事業においては血液浄化事業の事業譲渡を決定致しました。中長期的には、国内では医療費削減圧力が高まることによる市場成長の鈍化が予想される一方、先進諸外国においては、より良い医療に対するニーズの高まりや長寿社会の進展に伴い、引き続き安定的な市場成長が継続すると認識しています。そのため、本セグメントの中長期的な成長のための課題は、グローバルにおける事業展開を加速することであり、当社グループに足りない経営資源を追加・補強する手段としてM&Aやライセンス導入による事業開発を推進していきます。今後は、2021年度にクリティカルケア事業のZOLLが買収したRespicardia, Inc.やItamar Medical Ltd.、2022年度に医療事業の旭化成メディカル㈱が買収したBionova Scientific, LLC、2024年度に当社が買収したCalliditasなど、過去に投資実行した案件の収益成長による投資成果の刈り取りを図るとともに、既存事業の成長とM&A等の事業開発の活用を継続し、医薬・医療機器の双方でグローバル市場における幅広い事業機会を捉え、当社グループの成長を牽引することを目指します。 <経営方針と経営戦略>本セグメントにおける主な取り組みの方針・進捗は、以下のとおりです。ⅰ 医薬事業・旭化成ファーマ㈱とVeloxisの強みを活かしたグローバルスペシャリティファーマへの進化が着実に進んでいます。事業開発、臨床開発における両社の知見を統合し、免疫・移植の周辺領域での成長の可能性を最大限に追求します。2024年度からは日米の医薬事業を統合した「One AK (Asahi Kasei)Pharma体制」への移行を開始しています。免疫・移植周辺を中心とした疾患領域、及び大病院市場へフォーカスし、旭化成ファーマ㈱、VeloxisとCalliditasの連携のもとで事業開発、臨床開発、販売を推進していきます。・Veloxisの腎移植手術患者向け免疫抑制剤「Envarsus XR?」の販売が着実に伸長しています。また将来に向けたパイプライン強化のため、OSE Immunotherapeutics SAから導入したCD28阻害薬「VEL-101」(臓器移植における新規免疫抑制薬)の開発を進めています。・Calliditasを買収し、IgA腎症の治療薬として初めて承認された医薬品「TARPEYO?」の販売拡大を目指します。・国内市場では重点領域(整形外科領域、救急集中治療、免疫)における新薬上市と販売の拡大を継続します。整形外科領域においては、骨粗鬆症治療薬「テリボンRオートインジェクター」のさらなる市場への浸透を図ります。免疫領域においては、関節リウマチ治療剤「ケブザラR」と、2021年度にサノフィ㈱より導入した免疫調整剤「プラケニルR」のさらなる市場浸透を図ります。研究開発においては、オープンイノベーションや事業開発を活用し、重点領域におけるパイプラインを拡充しています。2022年度には、発作性夜間ヘモグロビン尿症に対する補体C3阻害薬「エムパベリR」及び慢性肝疾患における血小板減少症改善薬「ドプテレットR」に関して、日本国内における独占販売契約をSwedish Orphan Biovitrum Japanと締結し、2023年度に販売を開始しました。2023年度よりBasilea Pharmaceutica International Ltdより導入した深在性真菌症治療剤「クレセンバR」の販売を開始し、さらなる市場浸透を図ります。ⅱ 医療事業・生物学的製剤の市場成長に合わせたウイルス除去フィルター「プラノバ?」の市場ポジション・販売拡大を目指し、生産能力増強、生産効率化及び製品開発を引き続き進めていきます。・2019年度にウイルス等安全性試験受託サービス等を手掛けるVirusure Forschung und Entwicklung GmbHを、2021年度にマイコプラズマ試験受託サービスを手掛けるBionique Testing Laboratories LLCを買収し、製薬企業向けバイオセーフティ試験受託サービス事業へ参入しています。・2022年度に次世代抗体医薬品CDMOのBionova Scientific, LLCを買収し、バイオ医薬品CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization)事業へも参入しています。これらの多様な事業展開を通じて、製剤の安全性と生産性向上に貢献する製薬企業にとってのプレミアムパートナーとなることで製薬市場の成長を取り込みます。ⅲ クリティカルケア事業・心肺蘇生、心疾患、睡眠時無呼吸症などの重篤な心肺関連疾患領域をターゲットとし、既存事業の持続的成長、及び企業買収を通じた既存事業強化と周辺領域への拡大により成長を追求します。・医療従事者向け除細動器や公共施設向けAEDなどの救命救急医療の市場リーダーとして、引き続き技術革新や製品・サービス開発に投資して新製品を投入し、製品ポートフォリオを多様化するとともに、米国外も含めたグローバルでの市場成長を着実に捉えていきます。・着用型自動除細動器「LifeVestR」は臨床的価値の訴求により市場浸透率をさらに高め、標準的な治療法として確立させることを目指します。・2021年度に、中枢性睡眠時無呼吸症の治療用機器を手掛けるRespicardia, Inc.、及び睡眠時無呼吸症の在宅検査・診断ソリューションを手掛けるItamar Medical Ltd.の買収により、心疾患患者が併発することの多い睡眠時無呼吸症の診断や治療のための画期的なデバイスを獲得し、新たな分野に進出しました。当該2社の事業拡大と既存の心疾患関連事業とのシナジー創出により、確実な成果の結実を目指します。 (2) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題① 事業上の課題「(1) 経営方針・経営戦略等 ③ 各セグメントの経営方針・経営戦略等」に記載の項目に加えて、以下の事業上の課題があります。 Ⅰ 「マテリアル」セグメントⅰ エレクトロニクス事業情報通信機器に用いられる電子材料や電子部品のニーズは、AI需要の高まり、デジタルトランスフォーメーションの進展や次世代通信の普及に伴う情報通信高度化の需要が益々拡大することに伴い、年々増加しています。特に自動車の電動化がもたらす変化として、車両の高機能化だけでなく、充電設備の整備も急速に進められており、様々なセンシングデバイスの高度化・高信頼性化が求められています。半導体のニーズが益々拡大する一方で、米中デカップリングによるサプライチェーンの混乱や分断がもたらす影響を的確に捉えて、対応を進めていきます。特に世界各国の半導体ファウンドリやOSAT(Outsourced Semiconductor Assembly & Test)を活用する分業体制が業界全体として展開されているため、半導体製造に関わるサプライチェーンの動向に影響を受ける可能性があります。半導体生産に必要なレアガス(希ガス)やレアメタル(希少金属)などの原材料不足や、大規模災害・パンデミック・地政学的問題などの影響を受けての需要変化による製造リードタイムの長期化など、電子部品事業において環境変化を見通しにくい状況となっています。そのような中で、半導体製造関連の主要サプライチェーンの状況(特に米国、中国、台湾)の動向をモニタリングし、リスクの発生状況を常時評価し、迅速に対応していきます。今後も市場動向を注視しながらデジタル社会で求められる最先端のニーズを捉えて、電子材料と部品の双方を有するユニークさを活かし、特徴ある材料・部品、ソリューションを提供していきます。 ⅱ カーインテリア事業車室空間には、これまでにない快適性やデザイン性に加えて、リサイクル原料の使用、車体軽量化による自動車燃費の向上、電動化等、環境負荷低減に繋がる製品が求められています。環境特性に優れたスエード調人工皮革「DinamicaR」は、需要増加に対応するため供給能力を増強するとともに、米国子会社のSage Automotive Interiors, Inc.との連携を強化し、2020年に買収した米国Adient plcのファブリック事業や、中国の合弁会社のパートナーであるOmnova社の塩化ビニル樹脂系合成皮革事業との統合効果を発現させていきます。今後も顧客要求に迅速に対応するべく、グローバル市場におけるキーカスタマーへのアプローチやデジタルマーケティングを継続するとともに、価値提供領域をカーシートに加えて天井やドア等の車室空間全体に拡大することで、持続的に成長できるビジネスモデルの構築を推進していきます。本事業は世界の自動車業界の動向に影響を受ける場合があります。2024年度の自動車内装材事業については自動車生産台数の回復による関連製品の需要増が見られました。事業運営は、ロシア・ウクライナ情勢や中東情勢等の影響によるサプライチェーンの混乱、及び米国関税政策や中国景気の減速に伴う世界経済の成長鈍化等、年間を通じて見通しづらい環境下にあります。そのような中で各国の自動車関連市場を注視するとともに、サプライチェーンと在庫管理を強化し、変化する需要に柔軟に対応していきます。 ⅲ エナジー&インフラ事業リチウムイオン電池用セパレータは、着実に成長する電気自動車の需要とともに競合他社のキャパシティ増加や販売政策により価格競争が激化していく可能性があります。需要の拡大及び新たなサプライチェーン構築が見込まれる北米に生産拠点を先行して構え、顧客と強いパートナーシップを結びつつ、安定的かつ高水準の品質を強みに、リチウムイオン電池用セパレータのリーディングサプライヤーとして、様々な顧客ニーズに対応していきます。併せて、米国、日本での塗工能力増強を図りつつ、生産技術の大幅な改良を図り、コスト競争力の高い製品を追求していきます。イオン交換膜法食塩電解は、米国の規制強化によるアスベスト製隔膜法プラントからのプロセス転換や、インド・東南アジアでの電解プラントの新増設等で需要が高まるなか、競合他社の能力増強による競争激化が見込まれます。さらなる事業価値向上に向けて、2020年に買収したRecherche?2000?Inc.の食塩電解用モニタリング装置・システムから、モノ売りとサービスを融合させたソリューションの提供を加速させていきます。本事業は、各国の規制・環境問題や関税政策、供給制約の顕在化等によるサプライチェーンの変化、テクノロジーの変化により、事業環境が急激に変化することが中期的なリスク要因と考えられるため、事業環境の動向の把握と迅速な対応を続けていきます。 Ⅱ 「住宅」セグメント国内の住宅市場では、税制の動向や地政学的問題等の発生によりサプライヤーからの部材調達に影響を受ける場合があります。当社は、発注情報の早期確定やスペックの見直し、内製化、複数社からの購買等リスク軽減を検討し対応していきます。北米の住宅市場では、高水準で推移する住宅ローン金利や関税政策が、住宅着工に影響を与える可能性があります。豪州の住宅市場では、住宅価格やローン金利の高止まりにより、住宅着工は調整局面にあります。このような状況の中、供給不足を背景とする潜在的な需要は高いため、北米事業では施工の効率化という新たな価値を生み出し、高品質な住まいの提供に貢献し、豪州事業ではビルダー単独・サプライヤー単独では成しえない多様な価値提供による競争優位性の高い事業モデルの確立に引き続き注力していきます。また、カーボンニュートラルに向けた対応や脱炭素等の環境意識が高まる中、対応の遅れにより競争優位性や企業ブランド・製品ブランドへの影響が考えられます。「RE100」や「SBT(Science Based Targets)」のフレームワークに基づいた評価・管理・報告を実施し継続的にPDCAを循環させ、サステナビリティへの取り組みを推進しながらビジネスを成長させることで、持続可能な社会貢献に取り組んでいきます。 Ⅲ 「ヘルスケア」セグメント医薬品や医療機器等の事業においては、一般的に、その販売数量や販売単価等が定期的な薬価・保険償還価格の改定の影響を受ける場合があります。また新薬の研究開発については、期間が長期にわたることに加え、承認取得に至る確率が高くないことなどから、製品化の確度や時期について正確な予測が困難であり、計画どおりに製品化できなかった場合は業績に影響を与える可能性があります。医薬品や医療機器が製品化した場合でも、競合品の開発・上市の動向、有害事象の報告、後発品の上市等により、業績に影響を与える可能性があります。そのため、当社グループでは医薬事業と医療事業の両方を持つことで、多様な成長力・競争力を獲得し、イノベーション獲得機会の増加を図るとともに、医療規制等将来の不確実性への対応力を高めていきます。また、パイプラインの拡充、ライセンス導出・導入、共同開発、グローバル展開の加速等に努めることで持続的な安定成長を図ります。加えて、大規模自然災害・パンデミック・地政学的問題などによる原材料・部品の不足、調達リードタイムの長期化、調達コストの増加の影響を受ける可能性があります。当社の医薬品、医療機器を必要とする患者や医療従事者へ安定的に製品供給するため、原材料や製品在庫の管理、サプライヤーとの関係強化などサプライチェーン強化を進めていきます。 ② 財務上の課題「(1) 経営方針・経営戦略等 ② 当社グループ全体の経営方針・経営戦略等」 <経営方針・経営戦略> ⅳ 財務・資本政策の項目をご参照ください。 |
経営者による財政状態の説明
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】本項の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、将来のリスク、不確実性及び仮定を伴う予測情報を含んでいます。これらの記述は、現時点で当社が入手している情報を踏まえた一定の前提条件や見解に基づくものであり、「3 事業等のリスク」等に記載された事項及びその他の要因により、当社グループの実際の業績はこれらの予測された内容とは大幅に異なる可能性があります。 (1) 経営成績等の状況の概要及び経営者の視点による分析・検討内容① 経営成績Ⅰ 当社グループ全体当社グループの当連結会計年度(2024年4月1日~2025年3月31日、以下、「当期」)における連結業績は、「マテリアル」が石化市況の上昇による交易条件の改善や、半導体・電子機器関連市場の好調な需要に伴う拡販などにより改善し、「住宅」「ヘルスケア」は堅調に推移したことから、売上高は3兆373億円で前連結会計年度(以下、「前期」)比2,524億円の増収となり、営業利益は2,119億円で前期比712億円の増益となりました。経常利益は1,935億円で持分法による投資損失の減少などにより前期比1,033億円の増益となりました。また、前期比で減損損失は減少しましたが、税金費用が増加したことなどにより、親会社株主に帰属する当期純利益は1,350億円で、912億円の増益となりました。その結果、EPS(1株当たり当期純利益)は97.94円と前期比66.34円の増加となりました。資本効率について、当期のROICは5.5%で前期比0.4%の悪化、ROEは7.4%で前期比4.8%の改善となりました。財務健全性については、有利子負債の増加を受けて、D/Eレシオは0.62となりました。 〈当社グループの業績〉 経営指標2022年度2023年度2024年度前期との差異収益性売上高(億円)27,26527,84930,373+2,524営業利益(億円)1,2771,4072,119+712売上高営業利益率(%)4.75.17.0+1.9EBITDA(億円)3,0503,2293,980+751売上高EBITDA率(%)11.211.613.1+1.5親会社株主に帰属する当期純利益又は当期純損失(△)(億円)△9194381,350+912EPS(円)△66.3031.6097.94+66.34資本効率ROIC(%)4.05.95.5△0.4ROE(%)△5.52.57.4+4.8財務健全性D/Eレシオ 0.570.510.62+0.12 Ⅱ セグメント別ⅰ 「マテリアル」セグメント売上高は1兆3,688億円で前期比1,070億円の増収となり、営業利益は874億円で前期比448億円の増益となりました。環境ソリューション事業は、セパレータ事業における分社や北米投資に伴う費用の増加、経時的な価格対応などによる減益影響を受けましたが、基盤マテリアル事業における交易条件の改善や固定費低減により、大幅な増益となりました。モビリティ&インダストリアル事業は、円安影響や価格転嫁が進捗したことによる交易条件の改善に加え、自動車内装材事業の販売量も増加したことから、増益となりました。ライフイノベーション事業についても、円安影響に加え、AIサーバーやハイエンドスマホ向けの電子材料や電子部品など、デジタルソリューション事業を中心に主力製品の販売が堅調に推移し、増益となりました。 ⅱ 「住宅」セグメント売上高は1兆359億円で前期比815億円の増収となり、営業利益は959億円で前期比130億円の増益となりました。住宅事業は、建築請負部門が、数量が減少する一方で、物件の大型化・高付加価値化による平均単価の上昇やコストダウンによる限界利益率の改善により、増益となりました。不動産部門は、開発事業の営業利益は前年並みとなったものの、賃貸管理事業が管理戸数を順調に伸ばし、増益となりました。海外事業部門は、円安に加えて、北米事業の数量回復と豪州事業の価格転嫁により、増益となりました。建材事業についても、価格転嫁が進み、増益となりました。 ⅲ 「ヘルスケア」セグメント売上高は6,159億円で前期比621億円の増収となり、営業利益は640億円で前期比155億円の増益となりました。医薬・医療事業は、スウェーデンの製薬会社Calliditas Therapeutics ABの買収に伴う費用の計上があった一方、「Envarsus XR?」など主力製剤が好調に販売数量を伸ばし、増益となりました。クリティカルケア事業は、円安影響に加え、除細動器の価格転嫁や原価低減、「LifeVestR」の新規患者数が増加したこと等により、増益となりました。 Ⅲ 生産、受注及び販売の状況ⅰ 生産実績当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではないため、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしていません。このため、生産の状況については、「Ⅱ セグメント別」における各セグメントの業績に関連付けて示しています。 ⅱ 受注状況当社グループは注文住宅に関して受注生産を行っており、その受注状況は次のとおりです。その他の製品については主として見込生産を行っているため、特記すべき受注生産はありません。セグメントの名称受注高(百万円)前期比(%)受注残高(百万円)前期比(%)住宅426,399108.2567,132109.0 ⅲ 販売実績当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。セグメントの名称販売実績(百万円)前期比(%)マテリアル1,368,770108.5住宅1,035,860108.5ヘルスケア615,901111.2その他16,781112.2合計3,037,312109.1 (注) 1 セグメント間の取引については、相殺消去しています。2 前期及び当期において、主要な販売先として記載すべきものはありません。 ② 財政状態当期末の総資産は、Calliditas Therapeutics ABを買収したことなどにより、前期比3,525億円増加し、4兆152億円となりました。流動資産は、現金及び預金が554億円、棚卸資産が405億円増加したことなどから、前期比1,194億円増加し、1兆7,694億円となりました。固定資産は、投資有価証券が199億円、繰延税金資産が153億円減少したものの、無形固定資産が1,758億円、有形固定資産が673億円、退職給付に係る資産が323億円増加したことなどから、前期比2,331億円増加し、2兆2,458億円となりました。流動負債は、支払手形及び買掛金が197億円減少したものの、未払費用が291億円、短期借入金が252億円、前受金が213億円増加したことなどから、前期比500億円増加し、9,646億円となりました。固定負債は、退職給付に係る負債が118億円減少したものの、長期借入金が1,413億円、社債が800億円、繰延税金負債が354億円増加したことなどから、前期比2,371億円増加し、1兆1,367億円となりました。有利子負債は、前期比2,404億円増加し、1兆1,575億円となりました。純資産は、配当金の支払500億円や自己株式の取得300億円があり、為替換算調整勘定が226億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益を1,350億円計上したことや退職給付に係る調整累計額が289億円増加したことなどから、前期末の1兆8,486億円から653億円増加し、1兆9,139億円になりました。その結果、1株当たり純資産は前期比60.96円増加し1,369.16円となり、自己資本比率は前期末の49.5%から46.3%となりました。D/E レシオは前期末から0.12ポイント増加し0.62となりました。 ③ キャッシュ・フローの状況Ⅰ キャッシュ・フローの状況当期における営業活動によるキャッシュ・フローは3,015億円の収入、投資活動によるキャッシュ・フローは3,811億円の支出となり、フリー・キャッシュ・フロー(営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローの合計)は797億円の支出となりました。財務活動によるキャッシュ・フローは1,446億円の収入となり、これらに加え、現金及び現金同等物に係る換算差額による減少85億円などがありました。以上の結果、現金及び現金同等物の当期末残高は、前連結会計年度末に比べ565億円増加し、3,900億円となりました。 (営業活動によるキャッシュ・フロー)当期における営業活動によるキャッシュ・フローは、法人税等の支払455億円、投資有価証券売却益325億円、棚卸資産の増加321億円、仕入債務の減少267億円などの支出があったものの、税金等調整前当期純利益1,946億円、減価償却費1,535億円、のれん償却額326億円、未払費用の増加211億円、前受金の増加210億円などの収入があったことから、3,015億円の収入(前期比62億円の収入の増加)となりました。 (投資活動によるキャッシュ・フロー)当期における投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入369億円、貸付金の回収による収入128億円などの収入があったものの、有形固定資産の取得による支出2,017億円、Calliditas Therapeutics AB及びODC Construction, LLCの買収による連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出1,912億円、無形固定資産の取得による支出163億円、貸付けによる支出92億円などの支出があったことから、3,811億円の支出(前期比2,386億円の支出の増加)となりました。 (財務活動によるキャッシュ・フロー)当期における財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出725億円、配当金の支払500億円、自己株式の取得による支出300億円、社債の償還による支出300億円などの支出があったものの、長期借入れによる収入2,061億円、社債の発行による収入1,000億円、非支配株主からの払込みによる収入163億円などの収入があったことから、1,446億円の収入(前期比2,389億円の収入の増加)となりました。 当社グループの連結キャッシュ・フローの推移(単位:億円) 2022年度2023年度2024年度営業活動によるキャッシュ・フロー①9082,9533,015投資活動によるキャッシュ・フロー②△2,136△1,426△3,811フリー・キャッシュ・フロー③(①+②)△1,2281,527△797財務活動によるキャッシュ・フロー④1,118△9431,446現金及び現金同等物に係る換算差額⑤157297△85現金及び現金同等物の増減額⑥(③+④+⑤)47880564現金及び現金同等物の期首残高⑦2,4292,4793,335連結の範囲の変更に伴う増減額⑧2-1会社分割に伴う減少額⑨-△24-現金及び現金同等物の期末残高(⑥+⑦+⑧+⑨)2,4793,3353,900 Ⅱ 流動性と資金調達の源泉(資本の財源及び資金の流動性について)2026年3月31日に終了する連結会計年度においては、各セグメントが安定的なキャッシュ・フローを創出することを見込んでいます。加えて、財務規律の強化や事業ポートフォリオ転換などを通じた収益体質の強化にも取り組み、更なるキャッシュの創出に継続的に努めています。また、当社グループでは、D/Eレシオ0.7を目安に健全な財務体質を維持しつつ、これを背景に金融情勢に機動的に対応し、金融機関借入、社債やコマーシャル・ペーパーの発行など多様な調達手段により、安定的かつ低コストの資金調達を図ります。同時に資金の年度別返済の集中を避けることで借り換えリスクの低減も図っています。これらの資金を、経営基盤の強化・変革、持続可能な社会の実現と企業価値の継続的な向上のための戦略的な投資、及び株主の皆様への還元に活用していきます。なお、当社グループでは、CMS(キャッシュ・マネジメント・システム)とグローバル・ノーショナル・キャッシュ・プーリングを導入しており、国内外の金融子会社、海外現地法人などにおいて集中的な資金調達を行い、子会社へ資金供給するというグループファイナンスの考え方を基本としています。グローバル拡大への対応とグループ経営の深化の視点から、今後も連結ベースでの資金管理体制の更なる充実と資金効率化を図ります。 (2) 重要な判断を要する会計方針及び見積り当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。当社グループは、退職給付会計、税効果会計、貸倒引当金、棚卸資産の評価、投資その他の資産の評価、訴訟等の偶発事象などに関して、過去の実績や当該取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。当社グループの財政状態又は経営成績に対して重大な影響を与え得る会計上の見積り及び判断が必要となる項目は以下のとおりです。なお、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。 ① 棚卸資産の評価当社グループで保有する棚卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とし、収益性の低下により期末における回収可能価額が取得原価よりも下落している場合には、回収可能価額まで棚卸資産の評価を切り下げています。回収可能価額は、商品及び製品については正味売却価額に基づき、原材料等については再調達原価に基づいています。経営者は、棚卸資産の評価に用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、当社グループは、主に「マテリアル」セグメントを中心として市場価格の変動リスクに晒されており、将来、経営環境の悪化等により市場価格が下落した場合には棚卸資産の簿価を切り下げることになります。 ② 企業結合取引の結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価当社グループは、企業結合取引の結果取得した無形固定資産の企業結合日時点における時価について、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどの合理的に算定された価額を基礎として算定しています。経営者は、無形固定資産の時価の見積りに用いられた、事業計画に含まれる将来の販売数量の見込みや割引率等についての主要な仮定について合理的であると判断しています。 ③ 有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の減損当社グループは、有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)について、帳簿価額が回収できない可能性を示す事象や状況の変化が生じた場合に、減損の兆候があるものとして、減損損失の認識の判定を行っています。減損の存在が相当程度に確実と判断した場合、減損損失の測定を行い、当該資産の帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しています。回収可能価額は、使用価値と正味売却価額のうち、いずれか高い金額としています。使用価値は、将来の市場の成長度合い、収益と費用の予想、資産の予想使用期間、割引率等の前提条件に基づき将来キャッシュ・フローを見積もることにより算出しています。経営者は、減損の兆候及び減損損失の認識に関する判断、及び回収可能価額の見積りに関する評価は合理的であると判断しています。ただし、予測不能な市場環境の悪化等により有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の評価に関する見積りの前提に重要な変化が生じた場合には、減損損失を計上する可能性があります。 ④ 繰延税金資産の評価当社グループは、繰延税金資産のうち、回収可能性に不確実性があり、将来において回収が見込まれない金額を評価性引当額として設定しています。繰延税金資産の回収可能性については、課税所得及びタックスプランニングの見積りにより計上していますが、特に課税所得の見積りには将来に関する予測や情報が含まれています。将来の予測や情報に基づき、繰延税金資産の一部又は全部が回収できない可能性が高いと判断した場合には、将来回収が可能と判断される額までを繰延税金資産に計上しています。経営者は、繰延税金資産の回収可能性の判断及び前提となる課税所得やタックスプランニングの見積りは適切であると判断しています。ただし、将来、経営環境の悪化等により、想定していた課税所得が見込まれなくなった場合は、評価性引当額を設定することにより繰延税金資産が取崩される可能性があります。 ⑤ 退職給付債務及び費用当社グループは主として従業員の確定給付制度に基づく退職給付債務及び費用について、割引率、昇給率、退職率、死亡率、年金資産の長期期待運用収益率等の前提条件を用いた数理計算により算出しています。割引率は測定日時点における、従業員の給付が実行されるまでの予想平均期間に応じた長期国債利回りに基づき決定し、各前提条件については定期的に見直しを行っています。長期期待運用収益率については、過去の年金資産の運用実績及び将来見通しを基礎として決定しています。経営者は、年金数理計算上用いられた方法及び前提条件は適切であると判断しています。ただし、前提条件を変更した場合、あるいは前提条件と実際の数値に差異が生じた場合には、数理計算上の差異が発生し、当社グループの退職給付債務及び費用に影響を与える可能性があります。 |
※本記事は「旭化成株式会社」の令和7年3月期の有価証券報告書を参考に作成しています。(データが欠損した場合は最新の有価証券報告書より以前に提出された前年度等の有価証券報告書の値を使用することがあります)
※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。
※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100
※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー
連結財務指標と単体財務指標の違いについて
連結財務指標とは
連結財務指標は、親会社とその子会社・関連会社を含めた企業グループ全体の経営成績や財務状況を示すものです。グループ内の取引は相殺され、外部との取引のみが反映されます。
単体財務指標とは
単体財務指標は、親会社単独の経営成績や財務状況を示すものです。子会社との取引も含まれるため、企業グループ全体の実態とは異なる場合があります。
本記事での扱い
本ブログでは、可能な限り連結財務指標を掲載しています。これは企業グループ全体の実力をより正確に反映するためです。ただし、企業によっては連結情報が開示されていない場合もあるため、その際は単体財務指標を代替として使用しています。
この記事についてのご注意
本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。
報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)
コメント