株式会社アドバンテストの基本情報

会社名株式会社アドバンテスト
業種電気機器
従業員数連6766名 単2011名
従業員平均年齢46.05歳
従業員平均勤続年数20.44年
平均年収10053648円
1株当たりの純資産450.14円
1株当たりの純利益66.93円
決算時期3月
配当金0円
配当性向51.17%
株価収益率(PER)101.88倍
自己資本利益率(ROE)15.5%
営業活動によるCF326億円
投資活動によるCF▲279億円
財務活動によるCF107億円
研究開発費※1655億円
設備投資額※195億円
販売費および一般管理費※11400.62億円
株主資本比率※256.7%
有利子負債残高(連結)※3※40円
※「▲」はマイナス(赤字)を示す記号です。
経営方針
【経営方針、経営環境および対処すべき課題等】文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。 (1)会社の経営の基本方針<The Advantest Way> 当社グループは、経営理念として「先端技術を先端で支える」を掲げています。すなわち、「世界中の顧客にご満足いただける製品・サービスを提供するためにたえず自己研鑽に励み、最先端の技術開発を通して社会の発展に貢献する」ことが当社グループの使命であり、またこれを追求し続けることで当社グループの社会的な存在意義は拡大するものと認識しています。 また過去からの事業拡大に向けた取り組みの結果、当社グループは多様な文化、言語、慣習、価値観を内包する組織となっていることから、経営理念に即した事業活動を行う前提として、共通価値観の醸成や共通の行動原則が重要となっています。 これらを総合し、当社グループは2019年に、過去から有していた企業理念体系「The Advantest Way」を発展させ、当社グループが今後進むべき方向性と大切にすべき価値観を包含するものへ改定しました。現在の当社グループの中長期的な経営戦略や事業活動は、すべてこの改定版「The Advantest Way」に沿って展開されています。当社グループは、「The Advantest Way」に沿った活動を実践し続けることで顧客や社会への提供価値を最大化し、各ステークホルダーからより厚い信頼を得られるよう努めます。  「The Advantest Way」は、以下の6要素から構成されます。 1. 経営理念(パーパス&ミッション):「先端技術を先端で支える」2. ビジョン・ステートメント:「半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーへ(Be the most trusted and valued test solution company in the semiconductor value chain)」3. コア・バリュー:「INTEGRITY」4. 「サステナビリティ基本方針」5. 「行動指針」:「本質を究める」6.「行動基準」 1~3は、社会発展への貢献と中長期的な企業価値向上に向けて当社グループがどうありたいか、なにをなすべきかを規定しています。4~6は、望まれるステークホルダーとの関係性や、業務遂行にあたり役員や従業員に求める価値観やふるまいなどを定めています。  なお当社グループは、ビジョン・ステートメントとサステナビリティ基本方針を2024年度より更新しています。ビジョン・ステートメントについては「(2) 中長期経営方針「グランドデザイン」」を、サステナビリティに関する最新の基本的な方針については「2 サステナビリティに関する考え方および取組 (1)サステナビリティ全般」をそれぞれご参照ください。 (2)中長期経営方針「グランドデザイン」<2023年度までの経営方針振り返り> 当社グループは、経営理念である「先端技術を先端で支える」を体現する会社であり続けるため、長期的にどうありたいか、そしてそのために何をなすべきかを定めた10年間の中長期経営方針「グランドデザイン(10年)(2018年度~2027年度)」を2018年度に策定しました。そしてこの「グランドデザイン」で描いたありたい姿を実現すべく、2018年度以降、「第1期中期経営計画(2018~2020年度)」と「第2期中期経営計画(2021~2023年度)」の2つの中期経営計画をこれまで推進してきました。  この2つの中期経営計画を通じて、当社グループは、過去主力としてきた半導体量産テスト用システム事業の強化に加え、半導体量産工程の前後工程にある半導体設計・評価工程や製品・システムレベルテスト工程といった近縁市場へ事業領域を広げることで、業容を拡大することに取り組みました。その結果、当社の事業ポートフォリオと製品ポートフォリオは充実し、それが顧客からの評価拡大につながり、さらに時宜を得た新製品投入や半導体市場の成長とあいまって業容を想定以上に拡大することができました。  しかし将来に目を転じれば、半導体市場および半導体テスト市場は2018年の「グランドデザイン」策定時に予想した方向に概ね沿って推移しているものの、現下の生成AIの急速な普及に代表されるように、半導体やエレクトロニクス関連産業はダイナミックに進化し続けています。また、当社グループが対応すべきサステナビリティ関連の課題も、過去に想定したよりも急ピッチで対応の強化・深化が求められていくと思われます。 こうした状況を総合し、当社グループが今後さらに発展を遂げるためには、より長期の視点に基づく経営方針が必要な状況にあると判断いたしました。そこで当社グループは、「グランドデザイン」の時間軸を延長するとともに、その内容をこれまでの経営・事業体制の変化や最新の長期事業環境見通しを踏まえたものへ2024年6月に更新しました。 <「グランドデザイン」2024年度改定版> 最新の長期事業環境見通しを下敷きとしつつ、どうすれば当社グループが顧客や社会にとって価値ある存在であり続けるかを、改めて見直しました。その結果として、今後当社グループがありたい姿を示すビジョン・ステートメントを下記の内容に更新しました。また、当社グループが主要なステークホルダーに対して提供すべき経済的・社会的価値を改めて定義し、それら提供価値の拡大を当社グループの経営における長期的な目標とすることを決定しました。 [ビジョン・ステートメント]「半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーへ」(Be the most trusted and valued test solution company in the semiconductor value chain)当社グループは、提供価値の拡大を通じ、すべてのステークホルダーから半導体バリューチェーンで最も信頼され、最も価値あるテスト・ソリューション・カンパニーとなることを目指します。 [長期事業環境認識と対処すべき課題] マクロ的な事業環境における将来の不確実性は、今後も高い状態が継続すると予想されます。気候変動、地政学、人口動態の変化など、世界を取り巻く問題はより深刻化しており、エネルギーや人的資本の不足、サプライチェーンの再配置など、社会課題の複雑化が飛躍的に増しています。 一方で、AIを代表としてこれら社会課題を解決するためのイノベーションが各産業で進行しており、それらのイノベーションを支える基盤である半導体に対しては、さらなる性能改善と経済合理性の確保に向けた企業間もしくは地域間連携の拡大や、域内供給体制の強化なども今後見込まれます。これらに沿い、半導体バリューチェーンは、その複雑さをさらに増しつつ、中長期的な発展を遂げていくものと想定しています。 さらに半導体テストの技術的な潮流について展望すると、さらなる微細化、新アーキテクチャの採用、先端パッケージ採用など、半導体の高性能化とエネルギー効率向上を実現するための技術進化が、設計検証や性能試験などの半導体テストの複雑性を今後も持続的に引き上げていく見通しです。とりわけ、今後の半導体市場の最大の成長牽引役と予想されるAIやHPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)関連の半導体において、テストの複雑性は一層顕著なものになると目しています。 このように複雑性の進行が業界のキートレンドとなる中、半導体テスト関連市場は、顧客のテスト能力増強投資を通じて中長期的な市場成長を遂げると予想しています。また今後のテスト・ソリューションにおいては、半導体の品質保証プロセスにおける効率性の向上、すなわち半導体バリューチェーンを横断して工数や作業負荷低減をもたらすような、より高度な自動化 が望まれる方向と分析しています。こうした潮流下において、当社グループは、より性能に優れる製品の開発・販売に加え、それら製品群を発展・統合した新たなソリューションやサービスを提供することがさらなる中長期の成長機会となると見込んでおり、その機会の具体化を今後の成長施策の基軸とする方針です。また業界全体が複雑化する中にあっては当社グループ自身においても効率が重要であり、経営および事業全般にわたってさまざまな効率性の向上に取り組みます。 [経営における長期的目標] 半導体は、サステナブルな社会の実現や多様な産業の発展に向けて今後も不可欠な存在とされています。そして現在の当社グループにおけるほぼ全ての事業は、より性能に優れた半導体の実現と普及に深く結びつくものとなっています。このことから当社グループが経営理念に基づき、先端の技術開発を通じてより良い半導体の開発と普及に寄与していくことは、自社の持続的な成長のみならず、さらなる「安全・安心・心地よい」社会実現に向けても直接的に貢献する行為であり続けると考えます。 この考えに基づき、今後当社グループは、「グランドデザイン」のもと、先述のテストの複雑化への対応などを含めた顧客課題の解決を軸としながらサステナブルな社会実現につながる取り組みを推進し、それを通じて各ステークホルダーに対して提供する経済的・社会的価値を多面的かつバランスよく拡大することを当社グループの経営における長期的な目標とします。  当社グループの主要なステークホルダー、および今後拡大を図るステークホルダー提供価値の詳細については、「2 サステナビリティに関する考え方および取組 (1)サステナビリティ全般」をご覧ください。 (3)中期経営計画<「第2期中期経営計画〔MTP2、2021~2023年度〕」の成果> 当社グループは、MTP2期間を「中長期的にますます発展が見込まれる半導体市場の中で当社グループが成長するための基盤固めを進める3年間」と位置付け、成長投資を通じた事業強化と株主還元拡大の双方に向け取り組みました。目標とした経営指標の実績、MTP2における取組みの主な成果、および成長投資と株主還元の実績は以下のとおりです。 [経営指標] 当社グループは当初、2021年度期首時点の中期的な市場動向の予測に基づき算出した財務指標の見通しを2021年5月に公表しました。その後、半導体テスト関連市場が当初の想定以上に規模が拡大したことを背景に、2022年7月に経営指標を上方修正いたしました。しかしながら、MTP2期間の後半から半導体市況が弱含んだことにより、2023年度の主要な民生品向けの半導体試験装置需要は2022年度と比べて大きく落ち込みました。その結果、当初設定したMTP2の経営指標についてはすべて達成することができましたが、改定後の目標においては、売上高に関しては達成することができた一方で利益を含むその他の指標については未達となりました。 MTP2(2021~2023年度)(平均目標)MTP22021~2023年度(平均実績)*3 2021年5月公表値*12022年7月修正値*2売上高3,500~3,800億円4,800~5,200億円4,879億円営業利益率23~25%27~30%24.7%当期利益620~700億円980~1,200億円933億円親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)20%以上30~35%28.4%基本的1株当たり当期利益(EPS)*480~93円128~158円124円*1 2021年5月の公表時において前提とした為替レートは1米ドル=105円、1ユーロ=130円*2 2022年7月の改訂時において2022年度第2四半期~第4四半期および2023年度の業績予想の前提とした為替レートは1米ドル=130円、1ユーロ=140円(2021年度実績は1米ドル=112円、1ユーロ=130円。2022年度第1四半期実績は1米ドル=124円、1ユーロ=134円)*3 2021~2023年度(平均実績)の為替レートは、2021年度実績は1米ドル=112円、1ユーロ=130円、2022年度実績は1米ドル=134円、1ユーロ=140円、2023年度実績は1米ドル=143円、1ユーロ=155円*4 当社は、2023年10月1日付で普通株式1株につき4株の割合で株式分割を行っております。「基本的1株当たり当期利益(EPS)」は、2021年度期首に当該株式分割が行われたと仮定して、期中平均の発行済株式総数から自己株式数を控除した株式数に基づいて算出しております [MTP2における主な取り組み成果] 半導体市場やテスト需要の変化を先読みした効果的な製品戦略や顧客・地域戦略を通じ、主力SоC半導体用試験装置「V93000」、メモリ・テスト・プラットフォーム、およびその他製品の売上を拡大するとともに、半導体テスタ市場において市場シェアを伸長することができました。とりわけ、半導体テスタ市場において過半のシェアを得られたことは、今後の当社グループのさらなる成長に向けた大きな成果と考えています。また今後の中長期的な半導体市場・技術展望に基づき、先端パッケージ等の新たな成長領域に向けた研究開発投資やマーケティング施策を積極的に実施しました。 さらにこれらオーガニックな成長に向けた取り組みと並行し、さらなる飛躍に向けた戦略の一環として、ノン・オーガニック成長に向けた投資機会も精力的に探索しました。その結果、ここ3年間でパワー半導体用試験装置大手のイタリア・CREA – Collaudi Elettronici Automatizzati S.r.l.社、テスト・インタフェース用PCBに定評ある米国・R&D Altanova, Inc.社と台湾・Shin Puu Technology Co., Ltd.社を買収しました。 これらの取り組みを通じて当社グループの成長基盤はより堅固なものとなりました。この成果は、半導体市場の拡大あるいは進化に沿って、順次業績に顕在化していくと想定しています。 ESG方面の取り組みについては、CxO制を導入することでグローバル経営体制の強化を行ったほか、サステナビリティ関連の活動深化や開示充実を通じ外部機関からのESG評価が向上しました。主な外部からの評価については「サステナビリティ・データブック」(https://www.advantest.com/ja/sustainability/report/)を参照ください。 [成長投資と株主還元実績]MTP2期間累計の成長投資と株主還元実績は以下となります。 MTP1(2018~2020年度)実績MTP2(2021~2023年度)実績研究開発費1,206億円1,740億円設備投資302億円639億円M&A等の戦略投資477億円407億円株主還元額 (配当額+自己株式取得額)617億円1,934億円総還元性向39%69%(※) 総還元性向:(配当額+自己株式取得額)÷連結当期利益 <「第3期中期経営計画〔MTP3、2024~2026年度〕」の概要> 半導体テスト関連市場は、短期的なダウンサイクルを織り込みつつも、中長期的に成長を続けると見込んでいます。MTP3期間においてもそのシクリカルグロース構造に変化はなく、目下の半導体テスト関連市場は調整局面を未だ脱しきれていないものの、2024年度から再び成長サイクルを迎えると見込んでいます。また先述のとおり、半導体市場の拡大に加えて半導体の複雑性への対応が業界における構造課題となる中で、当社グループの事業機会は中長期的に拡大するものと考えています。そうした環境下、当社グループは新たに策定したビジョン・ステートメントに沿い、下記の4つの戦略を推し進めることで中長期的なステークホルダーへの提供価値拡大に取り組みます。 [戦略]1. Outpace the growth in our core market (コア市場の成長率を上回る成長実現) これまでの成長戦略に沿い、当社グループは事業領域を年々拡大してまいりました。その結果、かつては半導体テスタ(ATE)市場が注力すべき市場の大半を占めていましたが、MTP3以降はATEを中核としつつも、これまで広げた領域をコア市場としながらさらなる成長に取り組みます。この拡大したコア市場においては今後、半導体の生産量増加、半導体の高性能化対応、そして半導体の複雑性進行への対応が重要な成長機会となると想定しています。これに対しては、個々のテスト・ソリューションの性能向上に加え、顧客に“Automation of Test”、すなわち半導体テストの効率性向上をもたらす新たな価値を、当社が擁する多様な製品・ソリューション群の有機的な結合や社外パートナーとの連携などを通じて創造します。これらにより、当社の今後のコア市場において、市場成長率を上回る事業成長を引き続き実現することを目指します。 2. Expand adjacently / new businesses (近縁市場・新規事業領域への展開) 半導体の高性能化や複雑性が進行する中では、より広く、統合されたテスト・ソリューションが望まれます。当社グループはこれまでもシステムレベルテストやテスト周辺機器への事業展開を進めてきましたが、今後もこのアプローチを継続することで顧客への提供価値をさらに拡大します。具体的には、当社製品のインストールベースを活用したフィールド・サービスやAdvantest Cloud SolutionsTMの販促に取り組むほか、Applied Research Teamによる事業機会創生にも挑戦します。 3. Drive operational excellence (オペレーショナル・エクセレンスへの取り組みを推進) 当社グループは、Chief Technology OfficerをはじめとしたCxOがグループ全体のオペレーションを管掌するCxO体制へ既に移行しています。今後、各CxOの強いオーナーシップのもと社内技術の活用を部門横断的に進めることで、半導体業界におけるテスト課題を解決していきます。また、当社グループのステークホルダー全てにとって価値がある企業となるためには、製品や技術面の優秀さだけではなく、あらゆるオペレーションの効率性と効果性を高めていく必要があると認識しています。それに向け、DXを通じた社内オペレーションの迅速化と省人化、強靭なサプライチェーンの構築、有能人財の登用や社員教育の拡充などによる人的資本強化、AIやデータ・アナリティクスを活用した社内生産性向上などに取り組みます。 4. Enhance sustainability (サステナビリティの取り組み強化) 当社グループにおける長期的な経営の目標は、ステークホルダーに対する提供価値をバランスよく多面的に拡大することにあります。気候変動や人権問題をはじめとするサステナビリティ課題に対する能動的かつ積極的なアクション、法令遵守や企業倫理の徹底を含めた責任ある事業活動の遂行、リスクマネジメントの強化やコーポレート・ガバナンスの高度化などを通じて企業価値向上基盤をさらに強化するとともに、各ステークホルダーからより厚い信頼を得られるよう努めます。これらによりサステナビリティ、すなわち現在の生活水準を維持しつつ、未来の世代が同等またはそれ以上の生活水準を享受できるようにすることに貢献します。またサステナビリティに関する取り組みの推進にあたっては、その根源となるものは企業内の共通カルチャーや価値観であることから、これらの醸成と浸透にも努めます。 [経営指標] MTP3では、上記の4つの戦略を通じて収益拡大、収益性改善、資本効率向上を図ることで、企業価値の向上に取り組みます。これに沿い、MTP3において重視する経営指標を売上高、営業利益率、当期利益、投下資本利益率(ROIC)、基本的1株当たり当期利益(EPS)とし、これらの向上に努めます。なお各指標の進捗を中長期視点で評価するため、経営指標には市場変動の影響を平準化できる3か年平均の値を用います。 MTP2(2021~2023年度)平均実績MTP3(2024~2026年度)平均目標*1売上高4,879億円5,600~7,000億円営業利益率24.7%22~28%当期利益933億円930~1,470億円投下資本利益率*2(ROIC) *21.2%18~28%基本的1株当たり当期利益(EPS)124円127~202円*1 MTP3財務目標値の前提とした為替レートは1米ドル=140円、1ユーロ=155円*2 投下資本利益率:NOPAT÷投下資本(期首・期末平均)。NOPAT:営業利益×(1-税負担率25%)。  投下資本:借入金+社債+資本合計(リース負債含まず) [コスト・利益構造] 優れたテスト・ソリューションの販売促進、サプライチェーン・マネジメントや製造オペレーションの最適化などを通じ、売上総利益率の改善に取り組みます。また研究開発投資や人的資本強化投資など、持続的な価値創造の源泉となる費用については積極的に投下する一方、DX化などの経営効率や業務生産性を高める施策を展開することで収益構造の継続的な改善に努めます。他方で、世界経済や当社の市場環境における将来の不確実性は高い状態にあります。環境変化に即した機動的な財務マネジメントを遂行していくことで、上記経営目標の達成に努めます。 [資本政策、株主還元] 資本政策として、研究開発、設備増強、M&A等の成長に向けた事業投資を優先します。半導体市場の長期的拡大と半導体のさらなる高性能化に即して当社グループの将来キャッシュ創出力が拡大するよう、MTP3期間中に予想される累計6,000億円以上の営業キャッシュ・フロー(研究開発費控除前)を、中核事業におけるオーガニック成長投資ないしノン・オーガニック成長投資、および近縁市場への事業展開の加速に振り向けます。また、資本効率と資本コストに配慮したバランスシート管理の見地から負債(デット)も柔軟に活用してまいります。さらに経営基盤の強化および持続的企業価値創造のために財務健全性を維持した上で適正な資本構成を図る方針であります。 2024年4月から始まるMTP3の3年間における株主還元方針は、安定した事業環境を前提として、配当については1株当たり通期30円を最低限とする方針のもと、安定的・継続的な配当実施に努めてまいります。総還元性向※に関しては、MTP3期間の3年間合計で50%以上を目途といたします。 また手元現金水準については、平時における目安を1,000~1,200億円と見積もっています。成長投資や運転資本への資金需要を超えて余裕資金が生じる場合は、配当や自己株式取得を通じて株主に還元します。(※) 総還元性向:(配当額+自己株式取得額)÷連結当期利益 (4)2024年度の経営環境および重点施策 今後の当社グループを取り巻く事業環境を展望しますと、暦年2024年は半導体需給の改善が期待されるとともに、生成AI関連の投資の活発化が予想され、半導体市場は暦年後半から活況に転じると考えます。半導体試験装置市場においても、生成AIに向けた半導体の需要の高まりに連動して、関連する半導体試験装置需要の増加が見込まれます。具体的には高性能DRAMに向けた旺盛な試験装置需要が通年継続するとともに、SoC半導体用試験装置においても暦年後半以降に徐々に需要が立ち上がることを予想しています。一方で、自動車や産業機器関連では半導体試験装置への投資に一服感が見られることや、スマートフォン市況の回復の不透明感も継続する中、関連する半導体試験装置の回復には時間を要するものと想定しています。このようなことから暦年2024年の半導体試験装置市場は前年からやや上向くものと見込んでいます。他方、世界経済を俯瞰すると、景気後退に対する懸念は払拭されておらず、加えて地政学的リスクの拡大や急激な為替変動リスクなど、不確実性の高い状況が継続すると見ています。 中長期的には、半導体は社会の隅々まで広がるインフラストラクチャーとして、生産量の増加やさらなる高性能化、品質・信頼性向上への要求もより一層高まっていくものと予想します。また社会要請としての気候変動対策を背景に、エネルギー効率改善を実現する半導体技術の重要度も増しています。半導体メーカーは、技術開発を通じてこのような社会課題の解決に向けて日々取り組みを進めていますが、特に先端半導体においては、設計難易度、製造難易度は年々増しており、まさに複雑性の時代(Era of Complexity)を迎えています。 このような中、当社グループの経営理念である「先端技術を先端で支える」を忠実に遂行し、最先端のテスト・ソリューションで顧客の課題解決に貢献することで、半導体のイノベーションを支えながら、より良い社会の実現に寄与していきます。今後とも、すべてのステークホルダーに対する責任を果たすべく、誠心誠意取り組んでまいります。 <2024年度重点施策>? 半導体の複雑化が進む高成長領域に向け、付加価値の高いソリューションの提供と供給体制の拡充 – HBMなどの高成長領域の急峻なテスタ需要の高まりに応じる供給体制のさらなる増強 – 先端技術の確立に挑むリーダー顧客の課題を把握し、最先端の試験技術開発と統合テスト・ソリューションを拡充 – 複雑な半導体の設計からシステムレベル、データ・アナリティクスまで、テスト工程を一貫してカバーする”Automation”の取り組みを通じさらなる顧客価値を創造? 収益性改善の施策を推進 – HPC/AI,先端メモリなど高機能半導体における優位性の維持 – 今後の需要変動にも柔軟に追随するサプライチェーン管理および生産体制の高度化
経営者による財政状態の説明
【経営者による財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況の分析】(1)経営成績の状況の分析① 業績 前連結会計年度(百万円)当連結会計年度(百万円)前年度比(百万円)前年度比(%)売上高560,191486,507△73,684△13.2 売上原価 販売費および一般管理費 その他の損益△241,130△152,042668△240,477△158,963△5,439653△6,921△6,107△0.34.6-営業利益167,68781,628△86,059△51.3 営業利益率29.9%16.8%△13.1%- 金融損益3,583△3,458△7,041-税引前利益171,27078,170△93,100△54.4 法人所得税費用△40,870△15,88024,990△61.1当期利益130,40062,290△68,110△52.2当期利益の帰属: 親会社の所有者 130,400 62,290 △68,110 △52.2 当連結会計年度における世界経済は、コロナ後の正常化が進んだものの、欧米を中心とした金融引き締め政策や中国経済の成長鈍化などから、全体としては減速感が強まりました。 このような世界経済情勢のもと、スマートフォンやパソコン、テレビなど主要な民生機器の需要は停滞し、データセンタへの投資も減速したことから、それらに関連する半導体の需要が落ち込みました。一方で半導体市場においては、生成AI関連などの一部の半導体では需要の増加が見られ、半導体売上も下半期には増加に転じましたが、年間を通しては前年度と同水準となりました。 当社の半導体試験装置ビジネスにおいては、過去3年度にわたり顧客の旺盛な投資が行われてきました。しかし半導体市況が弱含んだことで、多くの顧客サプライチェーンにおける設備の余剰が発生し、当社製品の需要は前年度に比べて大きく落ち込みました。  当連結会計年度の平均為替レートは米ドルが143円(前年度134円)、ユーロが155円(前年度140円)となりました。(売上高) 2022年度までの過去3年度にわたり多くのテスタを顧客に納入していたことと、市場の停滞が相まって、顧客設備の稼働率が低く推移したことから、当社製品の需要が落ち込みました。事業別でみると、SoCテスタでは、車載や産業機器などの成熟プロセス品向けの販売は堅調だったものの、スマートフォンやパソコンなどの主要な民生機器やデータセンタに関連した先端プロセス品向けの売上が減少しました。以上の結果、当連結会計年度の売上高は、前年度に比べ73,684百万円(13.2%)減少の486,507百万円となりました。 (売上原価) 当連結会計年度の売上原価は、前年度に比べ売上高の減少により、653百万円(0.3%)減少の240,477百万円となりました。売上原価率は、製品ミックスの変化および原材料費の上昇により、前年度に比べ6.4ポイント増加の49.4%となりました。 (販売費および一般管理費) 当連結会計年度の販売費および一般管理費は、前年度に比べ6,921百万円(4.6%)増加の158,963百万円となりました。(その他の損益) 当連結会計年度のその他の損益は、第4四半期にのれんの一部減損損失8,998百万円を計上したことなどから、前年度668百万円の利益から6,107百万円悪化し5,439百万円の損失となりました。 (営業利益) 以上の結果、当連結会計年度の営業利益は、前年度に比べ86,059百万円(51.3%)減少の81,628百万円となり、売上高に対する営業利益の比率は、前年度比13.1ポイント減少の16.8%となりました。 (金融損益) 当連結会計年度の金融収益と金融費用を合わせた金融損益は、前年度3,583百万円の利益から7,041百万円悪化し3,458百万円の損失となりました。これは主に、為替差損による金融費用が増加したことによります。 (税引前利益) 以上の結果、当連結会計年度の税引前利益は、前年度に比べ93,100百万円(54.4%)減少の78,170百万円となりました。 (法人所得税費用) 当社グループの法人所得税費用の実際負担税率は、当連結会計年度は20.3%、前年度は23.9%でありました。将来一定期間に日本国内において実現する可能性が高い繰延税金資産約38億円を第4四半期に計上した結果、実際負担税率がやや低くなりました。当社グループの当連結会計年度および前年度の法人所得税に関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記」(以下、「連結財務諸表の注記」という。)の注記15に記載しております。 (親会社の所有者に帰属する当期利益) 以上の結果、当連結会計年度の親会社の所有者に帰属する当期利益は、前年度に比べ68,110百万円(52.2%)減少の62,290百万円となり、売上高に対する親会社の所有者に帰属する当期利益の比率は、前年度比10.5ポイント減少の12.8%となりました。 ② 生産、受注および販売の実績 a.生産、受注実績 当社グループは、原則として受注に基づいた生産を行っており、生産実績については販売実績と傾向が類似しているため、記載を省略しております。受注実績については、短期の受注動向が顧客の投資動向により大きく変動する傾向にあり、中長期の会社業績を予測するための指標として必ずしも適切ではないため、記載しておりません。  b.販売実績 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。セグメントの名称金額(百万円)前年度比(%)半導体・部品テストシステム事業部門331,542△18.0メカトロニクス関連事業部門52,695△12.0サービス他部門102,2706.4内部取引消去--合計486,507△13.2 (注)1.セグメント間の内部売上高(振替高)を含めて表示しております。    2.当連結会計年度において、主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。相手先金額 (百万円)割合 (%)Samsung Electronics Co., Ltd.55,32511.4% (注)前連結会計年度において、外部顧客への売上高のうち連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載を省略しております。 ③ セグメントの業績(半導体・部品テストシステム事業部門) 当部門は、当連結会計年度において売上高の68.1%を占めております。 当部門では、SoC半導体用試験装置は自動車や産業機器関連などの成熟半導体に向けた売上は堅調でした。しかしながらスマートフォン市況の停滞やサーバー投資の減速から、それらに関連する高性能な半導体に向けた売上が落ち込みました。メモリ半導体用試験装置の売上については、高性能DRAMに向けた旺盛な試験装置需要や中国メモリ企業向け売上の伸長により前年度を上回りました。利益面においては、減収に加え、製品ミックスの変化や原材料費の上昇もあり、当セグメントの収益性が低下しました。 以上の結果、当部門の当連結会計年度の売上高は、前年度に比べて72,710百万円(18.0%)減少の331,542百万円、セグメント利益は前年度に比べて71,270百万円(43.7%)減少の91,916百万円となりました。 (メカトロニクス関連事業部門) 当部門は、当連結会計年度において売上高の10.8%を占めております。 当部門では、半導体試験装置の需要減少を背景に、関連するデバイス・インタフェース製品、テスト・ハンドラの売上が減少しました。 以上の結果、当部門の当連結会計年度の売上高は、前年度に比べて7,179百万円(12.0%)減少の52,695百万円、セグメント利益は前年度に比べて5,793百万円(38.7%)減少の9,171百万円となりました。 (サービス他部門) 当部門は当連結会計年度において売上高の21.0%を占めております。 当部門では、当社製品の設置台数の増加に伴い保守サービスの売上は伸長しました。しかしながら、システムレベルテスト事業においては、中長期的な事業成長を見越した生産体制強化の取り組みによるコストが増加しました。加えて、テストソケットに関連するEssai, Inc.のビジネスにおいて大口顧客向け売上予想が落ち込み、想定していた将来キャッシュ・フローの見通しが悪化したことで、のれんの一部減損損失8,998百万円を計上しました。これらの結果、当セグメントの利益額は前年度を大幅に下回りました。なお当連結会計年度のセグメント損失は、取引先との係争に関する受取和解金等による利益3,179百万円を含んでいます。 以上の結果、当部門の当連結会計年度の売上高は、前年度に比べて6,166百万円(6.4%)増加の102,270百万円、セグメント損失は前年度7,629百万円の利益から10,457百万円悪化し2,828百万円の損失となりました。 ④ 地域別売上高 当連結会計年度の海外売上比率は95.9%(前連結会計年度96.3%)となりました。 (日本) 当連結会計年度の日本における売上高は、前年度に比べ799百万円(3.9%)減少の19,723百万円となりました。 (日本以外のアジア) 当連結会計年度の日本以外のアジアにおける売上高は、前年度に比べ67,939百万円(14.2%)減少の411,520百万円となりました。これは主に、台湾と韓国において、SoC半導体用試験装置が低調だったことによります。 (米州) 当連結会計年度の米州における売上高は、前年度に比べ5,261百万円(12.3%)減少の37,621百万円となりました。 (欧州) 当連結会計年度の欧州における売上高は、前年度に比べ315百万円(1.8%)増加の17,643百万円となりました。 (2)財政状態およびキャッシュ・フローの状況の分析① 流動性および資金源 当社グループの資金・財務政策は、当社の経理部門が所管しております。当社は資金需要に関して、営業活動により稼得した現預金ならびに手許の現金および現金同等物から充当するほか、必要に応じて債券の発行および株式等の発行ならびに金融機関からの借入れにより資金を調達することが可能であります。 また、中期的に半導体業界および半導体・部品テストシステム業界の状況が低迷する場合、当社は将来の設備投資またはその他の運転資金需要のために債券の発行または希薄化効果を伴う株式等の発行等を行う可能性があります。 ② キャッシュ・フロー 当連結会計年度末の現金および現金同等物は前年度末より21,165百万円増加の106,702百万円となりました。(営業活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度は、32,668百万円の収入となり、前連結会計年度と比べ37,556百万円の収入の減少となりました。これは税引前利益78,170百万円、法人所得税の支払額(△45,984百万円)、棚卸資産の増加(△30,923百万円)、営業債権およびその他の債権の減少(17,400百万円)、営業債務およびその他の債務の減少(△16,857百万円)の他、減価償却費などの非資金項目等の損益を調整した結果によります。(投資活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度は、27,940百万円の支出となり、前連結会計年度と比べ1,234百万円の支出の増加となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出(△19,592百万円)と子会社の取得による支出(△8,260百万円)によるものであります。(財務活動によるキャッシュ・フロー) 当連結会計年度は、10,760百万円の収入となり、前連結会計年度と比べ88,194百万円の収入の増加となりました。これは主に、長期借入れによる収入(54,665百万円)、配当金の支払額(△24,881百万円)、長期借入金の返済による支出(△14,667百万円)によるものであります。③ 資産、負債および資本 当連結会計年度末の資産は、前年度末に比べ71,005百万円増加の671,229百万円となりました。この主な要因は、棚卸資産が35,307百万円、現金および現金同等物が21,165百万円、有形固定資産が14,838百万円それぞれ増加したことなどによります。 負債は、前年度末に比べ8,521百万円増加の240,051百万円となりました。この主な要因は、借入金が41,786百万円増加したものの、未払法人所得税が20,373百万円、営業債務およびその他の債務が12,399百万円それぞれ減少したことなどによります。 資本または親会社の所有者に帰属する持分は、前年度末に比べ62,484百万円増加の431,178百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は前年度末比2.8ポイント増加の64.2%となりました。 (3)経営成績に重要な影響を与える要因について 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載しております。(4)重要な会計上の見積りおよび当該見積りに用いた仮定 当社の連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しております。 この連結財務諸表を作成するために、会計方針の適用ならびに資産、負債、収益および費用の報告額に影響を及ぼす会計上の判断、見積りおよび仮定を用いております。見積りおよび仮定は、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づく経営者の最善の判断に基づいております。しかしながら実際の結果は、その性質上、見積りおよび仮定と異なることがあります。 重要性がある会計方針および重要な会計上の見積りは、連結財務諸表の注記3、注記4および「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項」の(重要な会計方針)、(重要な会計上の見積り)に記載しております。

※本記事は「株式会社アドバンテスト」の令和6年3月期 有価証券報告書を参考に作成しています。

※1.値が「ー」の場合は、XBRLから該当項目のタグが検出されなかったものを示しています。 一部企業では当該費用が他の費用区分(販管費・原価など)に含まれている場合や、報告書には記載されていてもXBRLタグ未設定のため抽出できていない可能性があります。

※2. 株主資本比率の計算式:株主資本比率 = 株主資本 ÷ (株主資本 + 負債) × 100

※3. 有利子負債残高の計算式:有利子負債残高 = 短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + リース債務(流動+固定) + コマーシャル・ペーパー

※4. この企業は、連結財務諸表ベースで見ると有利子負債がゼロ。つまり、グループ全体としては外部借入に頼らず資金運営していることがうかがえます。なお、個別財務諸表では親会社に借入が存在しているため、連結上のゼロはグループ内での相殺消去の影響とも考えられます。

この記事についてのご注意

本記事のデータは、EDINETに提出された有価証券報告書より、機械的に情報を抽出・整理して掲載しています。 数値や記述に誤りを発見された場合は、恐れ入りますが「お問い合わせ」よりご指摘いただけますと幸いです。 内容の修正にはお時間をいただく場合がございますので、予めご了承ください。

報告書の全文はこちら:EDINET(金融庁)

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